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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】浴室床の施工方法及び浴室床構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/00 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
E04F15/00 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022132209
(22)【出願日】2022-08-23
(62)【分割の表示】P 2017088555の分割
【原出願日】2017-04-27
(65)【公開番号】P2022166267
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥丸 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】古谷 伸一
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-063554(JP,A)
【文献】特開昭53-105027(JP,A)
【文献】特開2002-161642(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0014009(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
E03C 1/12-1/298
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室のリフォームを目的として浴室の床上に新たな床シート材を敷設する浴室床の施工方法であって、
前記浴室の床の全面ではなく一部分の複数箇所に両面テープを貼り付ける貼付工程と、
前記浴室の床の一部分に貼り付けられた前記両面テープを介して前記浴室の床上に新たな床シート材を敷設する敷設工程と、
を少なくとも有し、
前記貼付工程では、前記浴室の床の周縁に沿って前記両面テープが貼り付けられ、
前記敷設工程において、前記新たな床シート材は、その端部の端面が浴室壁面と向かい合うようにして、前記浴室の床上の浴室壁面との境界よりも内側に敷設され、
前記新たな床シート材の端部と浴室壁面との間にシール材又はシール剤が設けられる、浴室床の施工方法。
【請求項2】
前記浴室の床がユニットバスの床である、請求項1に記載の浴室床の施工方法。
【請求項3】
前記浴室の床の周縁内に前記両面テープが貼り付けられる、請求項1又は2に記載の浴室床の施工方法。
【請求項4】
前記両面テープは、前記浴室の床上の浴室壁面との境界から隙間をあけて貼り付けられる、請求項3に記載の浴室床の施工方法。
【請求項5】
浴室壁面、浴槽壁面及び排水溝の少なくともいずれかと前記新たな床シート材の端部との間に介在する第1シール材、及び/又は、便器壁面と前記新たな床シート材の開口縁部との間に介在する第2シール材、を前記浴室の床上に設けるシール材設置工程をさらに有する請求項1~4のいずれか一項に記載の浴室床の施工方法。
【請求項6】
浴室の床と、
前記浴室の床の全面ではなく一部分の複数箇所に貼り付けられた両面テープと、
浴室のリフォームを目的として前記浴室の床上に前記浴室の床の一部分に貼り付けられた前記両面テープを介して敷設された新たな床シート材と、を備え、
前記両面テープは、前記浴室の床の周縁に沿って貼り付けられ、
前記新たな床シート材は、その端部の端面が浴室壁面と向かい合うようにして、前記浴室の床上の浴室壁面との境界よりも内側に敷設され、
前記新たな床シート材の端部と浴室壁面との間にシール材又はシール剤が設けられる、浴室床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の床上に床シート材を施工する浴室床の施工方法及び浴室床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一戸建て、マンション、寮、ホテル、老人保健施設、介護福祉施設、病院などでは、部屋、廊下、トイレ、浴室などのリフォームが盛んに行われている。ここで、浴室のリフォームを行う場合、浴室全体を取り壊して新規に浴室を施工するあるいはユニットバスを設置する方法、既設のユニットバスを新規のユニットバスに取り替える方法が従来から行われている。しかし、これらの方法は施工に多大なコスト及び時間を要するため、出願人は、簡易な浴室のリフォームとして、既設の床上に新しい床シート材を施工する方法を提案している(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5977312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した既設の浴室の床上に床シート材を施工する方法により、リフォームの施工時間及びコストは低減される。しかし、従来は、浴室の既設の床と、その上に新たに敷設する床シート材との間を完全に接合する必要があると考えられていた。このため、上記方法では、浴室の既設の床の全面に接着剤を塗布して床シート材を敷設しているため、接着剤の塗布作業に時間及び工数を要する上、接着剤を床面に塗布した後、床シート材を敷設するまでに一定時間の待ち時間(オープンタイム)が必要となる。そのため、施工作業開始から浴室が使用可能となるまでに相当の時間を要することとなる。また、床シート材が接着剤により強固に床面に接着されるため、次回のリフォーム等の際に床シート材を張り替えようとした場合、床シート材を床から剥がす作業、及び、硬化した接着剤を床から剥ぎ取る作業に労力及び時間を要する上、浴室の既設の床の破損も免れない。
【0005】
本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、効率よく床シート材を浴室の床上に施工可能であり、かつ、床上に施工した床シート材を容易に貼り替え可能な浴室床の施工方法及び浴室床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、従来考えられていた浴室の既設の床と床上に新たに敷設する床シート材との間を完全に接合する必要があるという考えを打ち破り、本発明に係る浴室床の施工方法及び浴室床構造を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明に係る浴室床の施工方法は、浴室の床上の複数箇所に両面テープを貼り付ける貼付工程と、貼り付けられた前記両面テープを介して前記床上に床シート材を敷設する敷設工程と、を少なくとも有し、前記貼付工程では、少なくとも前記床の周縁に沿って前記両面テープが貼り付けられることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る浴室床の施工方法においては、前記貼付工程では、前記床上に備えられた便器の長手方向と垂直な幅方向の両側に前記両面テープが貼り付けられることが好ましい
【0009】
また、本発明に係る浴室床の施工方法においては、前記床シート材には、前記床上に備えられた便器の外形に応じた開口と、前記開口から延びる切り込みとが設けられており、前記貼付工程では、前記切り込みと重なるように前記両面テープが貼り付けられることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る浴室床の施工方法においては、前記床の縦方向及び横方向の少なくともいずれか一方向において、隣り合う両面テープの間隔が70cm以下となるように、前記両面テープが貼り付けられることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る浴室床の施工方法においては、浴室壁面、浴槽壁面及び排水溝の少なくともいずれかと前記床シート材の端部との間に介在する第1シール材、及び/又は、便器壁面と前記床シート材の開口縁部との間に介在する第2シール材、を前記床上に設けるシール材設置工程をさらに有することが好ましい。
【0012】
本発明に係る浴室床構造は、浴室の床と、前記床上の複数箇所に貼り付けられた両面テープと、前記床上に前記両面テープを介して敷設された床シート材と、を備え、前記両面テープは、少なくとも前記床の周縁に沿って貼り付けられることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る浴室床構造においては、浴室壁面、浴槽壁面及び排水溝の少なくともいずれかと前記床シート材の端部との間に介在するよう前記床上に設けられた第1シール材、及び/又は、便器壁面と前記床シート材の開口縁部との間に介在するよう前記床上に設けられた第2シール材、をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、従来考えられていたように浴室の既設の床の全面に接着剤を塗布することなく、両面テープを用いて床シート材を床上に施工するので、接着剤を用いた場合の待ち時間(オープンタイム)なしで床シート材を施工することができる上、両面テープの貼付作業は、接着剤の塗布作業のように長時間を要しない。よって、床シート材の施工作業を効率よく行うことができる。
【0015】
また、両面テープを用いて床シート材を床上に施工することで、次回のリフォーム等の際に床シート材を張り替えようとした場合に、床シート材を床面から剥がして張り替えが容易となる。よって、接着剤だけを用いた場合のような床シート材を床面から剥がし難い、接着剤を床面から剥ぎ取り難いということがなく、床シート材を床面から剥がす作業、及び、硬化した接着剤を床面から剥ぎ取る作業に労力及び時間を要することがなくなる。そのため、リフォーム時の作業性を改善することができる。また、浴室の既設の床も保全されるため、床面を削り取ったり、レベリング材で埋めるなどして、平滑化する必要もない。
【0016】
また、両面テープを用いて床シート材を床上に施工することで、接着剤を用いる場合と比べて、接着剤の硬化・乾燥時間が不要となる。よって、床シート材の施工完了後、短時間で浴室が使用可能となる。
【0017】
また、浴室の既設の床がタイルなどであって床面に深い目地や目地の段差が形成されている場合、浴室の既設の床が繊維強化プラスチック(FRP)などであって床面に深い排水溝や段差などが形成されている場合、床面に何らかの原因で割れ目や窪みなどが発生している場合など、床面に比較的大きい凹凸が存在する場合において、床シート材をそのまま接着剤で貼り付けると、このような凹凸が床シート材の上に表出することがある。その
ため、このような凹凸がある床面に接着剤を用いて施工を行う場合には、接着剤を塗布する前に下地である床を平滑に補修する必要がある。床を平滑に補修するためには、相当の人手及び時間を要する上、施工者には高い技量が求められるので、費用及び手間が掛かることとなる。これに対して、両面テープを用いて床シート材を床上に施工することで、床シート材への目地の表出を抑制することができる。よって、施工前に下地である床を平滑に補修する必要がないので、人手及び時間を大幅に削減して工期を短縮することができる。その上、施工者に高い技量も求められないので、より広い範囲の施工者が施工を行うことが可能となる。
【0018】
なお、床上には、少なくとも周縁に沿って両面テープが貼り付けられており、この両面テープに床シート材の端部が接着しているので、止水効果を有し、床シート材の下に水が回り込むことを抑制できる。よって、両面テープを用いて床シート材を床上に施工しても、床シート材を良好に床に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】床シート材の施工前の浴室床の平面図である。
図2】浴室床に施工する床シート材の平面図である。
図3】シート端部部材の平面図である。
図4図3のシート端部部材の縦断面図である。
図5】便器周り部材の底面図である。
図6図5の便器周り部材の縦断面図である。
図7】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図8】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図9】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図10】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図11】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図12】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図13】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図14】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図15】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図16】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図17】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図18】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図19】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図20】床シート材を浴室床に施工する手順を示す説明図である。
図21】シート端部部材の変形例の縦断面図である。
図22】便器周り部材の変形例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。本発明は、浴室のリフォームなどで、浴室の既設の床上に床シート材を施工する浴室床の施工方法、及び、浴室の既設の床上に床シート材が施工された浴室床構造に関する。
【0021】
本実施形態の浴室床の施工方法は、(i)両面テープの貼付工程と、(ii)第1シール
材の設置工程と、(iii)床シート材の敷設工程と、(iv)床シート材の押圧工程と、を
有する。なお、便器を備える既設の床上に床シート材を施工する場合には、本実施形態の浴室床の施工方法は、(i)両面テープの貼付工程と、(ii)第1シール材の設置工程と
、(iii)床シート材の敷設工程と、(iv)第2シール材の設置工程と、(v)床シート材の押圧工程と、を有する。なお、本発明に係る浴室床の施工方法は、各工程が必ずしも上述した順番で行わるものに限定されるものではない。
【0022】
以下、本実施形態の浴室床の施工方法、浴室床構造、及び、当該施工方法に用いられる各種の部材、具体的には、床シート材、第1シール材としてのシート端部部材、第2シール材としての便器周り部材について、説明する。
【0023】
まず、図1(a)及び図1(b)は、本実施形態の浴室床の施工方法が適用される浴室の例を示す。図1(a)では、浴槽10及び洗面台11が床13、壁面(浴室壁面)14、天井(図示せず)などと一体になっている2点ユニットバスを例にしており、図1(b)では、浴槽10、洗面台11及び便器12が床13、壁面(浴室壁面)14、天井(図示せず)などと一体になっている3点ユニットバスを例にしている。なお、以下の説明では、図1(a)及び図1(b)において、上下方向を床13の縦方向とし、左右方向を床13の横方向としている。
【0024】
3点ユニットバスは、浴槽10、洗面台11及び便器12の3つが一体となったものをいい、2点ユニットバスは、浴槽10及び洗面台11の2つ、あるいは、浴槽10及び便器12の2つが一体となったものをいう。図1(a)の床13においては、浴槽10の壁面(浴槽壁面)10Aに隣接する位置に排水溝15が設けられ、排水溝15には排水口16が設けられている。なお、排水溝15は浴室壁面14に沿っても延びていて、床13を全周にわたって取り囲むように設けられていてもよい。また、図1(b)の床13においては、浴槽壁面10Aに隣接する位置に排水溝15がなく、排水口16だけが設けられており、浴室の床13が浴槽壁面10Aと繋がっている。
【0025】
なお、図1(a)の床13においては、浴槽壁面10Aに隣接する位置に排水溝15がなく、ユニットバスの床13が浴槽壁面10Aと繋がっていてもよく、図1(b)の床においては、浴槽壁面10Aに隣接する位置に排水溝15が設けられていてもよい。また、本発明の適用範囲は必ずしも3点ユニットバスや2点ユニットバスに限られるものではなく、浴槽10のみのユニットバスの他、在来工法で造られた浴室についても、本発明の適用範囲に含まれる。特に、本発明は、狭い空間での施工の作業性に優れるので、2点ユニットバス及び3点ユニットバスにおいて好適に用いることができる。
【0026】
次に、床シート材2は、図2(a)及び図2(b)に示すように、浴室の床13上に施工されて浴室の意匠性や機能性を向上させるシート材である。床シート材2の平面視形状は、特に限定されるものではなく、長尺状に形成されていてもよいし、床タイルのように矩形状又は多角形状に形成されていてもよいが、止水性及び施工性の観点から、床シート材2は、目地のない1枚のシートからなることが好ましい。長尺状に形成された床シート材2は、通常、ロールに巻かれて保管・運搬に供される。
【0027】
床シート材2の表面の形状は、特に限定されるものではないが、例えば防滑性を有する突部や傾斜面を有する凹凸形状などとすることができる。
【0028】
また、床シート材2の表面層は、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料などの着色剤、溶剤などを含んでいてもよい。
【0029】
また、床シート材2の表面は、光沢度を高く構成するよりも低く構成するほうが、下地の不陸や凹凸が床シート材2の表面へ表出した際、人の目で視認し難くする効果があるので好ましい。表出した凹凸などを人の目で視認し難くするためには、光沢度(60°)が0.3以上60以下とするのが好ましく、0.5以上30以下とするのがより好ましい。なお、光沢度(60°)は、例えばGM-3D(株式会社村上色彩技術研究所製)などの光沢度測定器を用いて測定することができる。光沢度を低くする方法としては、例えば、床シート材2の表面層中にシリカ、又はプラスチックビーズなどの艶消剤を添加する方法
や、防滑性を付与するために設ける突部や傾斜面とは別に表面に微細な凹凸を形成する方法などを挙げることができる。微細エンボスは、大きいよりも小さい方が、光沢度をより抑える傾向を持つ。微細な凹凸が形成されていることにより、床シート材2の表面にあたった光が乱反射して光沢性が低くなる。微細な凹凸の表面粗さは、特に限定されないが、粗過ぎると光の反射方向によっては高い光沢を有するように見える場合があり、一方、細かすぎると鏡面状と殆ど変わらなくなる場合がある。このような観点から、表面粗さ(JIS B 0601に準拠した中心線平均粗さ(Ra))は、好ましくは5μm以上15μm以下であり、より好ましくは6μm以上10μm以下である。床シート材2の表面の凹凸や突部などは、通常はエンボス加工を行って形成するが、エンボス加工方法は特に限定されず、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機を用いることができる。凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面など)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝、Vカット状、微細網状、微細点状、ストライプ状などを挙げることができる。微細な凹凸は、エンボス加工以外に、サンドブラストや鑢がけなどによって表面を粗くしたり、フィラーなどの微粒子を表面に埋め込むなどの方法によっても形成することができる。
【0030】
床シート材2の機能性としては、防滑性、クッション性、遮熱性、接触温熱感の向上などが挙げられる。床シート材2は、防痛性を高めるため適度なクッション性を有し、さらに、浴室におけるヒートショックの低減及び温感を高めるため断熱性を有することが好ましいことから、発泡層を含むことが好ましい。床シート材2は、その全体が発泡層で形成されていてもよいが、防滑性を増すためにシート本体の表面に潰れにくい突部や傾斜面を形成する場合は、非発泡の表層を有することが好ましい。また、簡易に保管・運搬できる上、施工時に浴室内に容易に搬入できるため、ロールに巻き取ることができるような柔軟性を有することが好ましい。
【0031】
床シート材2の素材は、浴室の床13上に施工可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂などの柔軟性を有する樹脂製シートを用いることができる。これらの中でも、柔軟性を有する加工性、耐久性、コストに優れることから、主たる樹脂成分として塩化ビニル樹脂を用いることが好ましい。塩化ビニル系樹脂は、柔軟性に優れることにより、柔軟な浴室床面を構成できるほか、ロールに巻き取って床シート材2を簡易に保管・運搬できる上、施工時に浴室内に容易に搬入できるというメリットもある。また、リフォーム時に下地面との密着性に優れるという点においても、塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。
【0032】
床シート材2は、単層構造であっても良いし、複数の層が積層されてなる多層構造であってもよい。多層構造の場合は、2層又はそれ以上の層構成を採用することができる。
【0033】
床シート材2の厚みは、特に限定されないが、通常は1.8mm以上5.0mm以下程度の範囲とすれば良く、特に2.0mm以上4.0mm以下とすることが好ましい。床シート材2の厚みは、エンボス加工が施されている場合などのように厚みが不均一な場合、その最大層厚みを指す。厚みが1.8mm以上であると強度を確保しやすく、厚みが5mm以下であると柔軟性が高まるので、狭い浴室内で施工する際の作業性が向上する。また、リフォームの際に、浴室の既設の床上に床シート材2を施工した場合でも、厚みを5mm以下とすることで、リフォーム後の床面高さの変動が支障の出ない範囲に抑えられる上、リフォーム後の美観も保つことができる。さらに、床シート材2の厚みが上記範囲内であれば、下地の不陸や凹凸が床シート材2の表面に表出するのを抑制することができる。
【0034】
床シート材2には、その剛性を高め、寸法安定性を付与するための補強層を単数又は複数設けられてもよい。補強層が厚み方向に複数設けられていると、床面に比較的大きい凹凸が存在する場合であっても、床シート材2が床面の凹凸に追随しにくく、床シート材2
の表面に凹凸が表出するのをさらに抑制することができる。補強層としては、例えば、ガラスマット、ガラスネット、樹脂製マット、樹脂製ネット、無機繊維又は有機繊維からなる不織布又はフェルト、及び、織布などが挙げられるが、強度に優れ、かつ、寸法変化が小さいという点から、特にガラス繊維を用いることが好ましい。ガラス繊維を用いる場合、目付量が10g/m以上100g/m以下ガラス繊維織布又は不織布が特に好ましい。また、例えばポリエステル等の他の繊維を用いた織布又は不織布についても、同程度の目付量が好ましい。リフォーム施工時に剛性度が高まると、下地面に全面で接着していない場合でもずれ難くなり、変形もし難い。また、ガラス繊維の目付量が上記範囲内であれば、下地の不陸や凹凸が床シート材2の表面に表出するのを抑制することができる。
【0035】
また、床シート材2の最も下側に両面テープ3A~3Dとの接着強度を高めるとともに、非接着部分のずれを防ぐことを目的として基材層を設けてもよい。前記基材層としては、特に限定されないが、例えば、不織布、織布、紙、フェルトなどの従来公知のシート材を用いることができる。不織布や織布を構成する繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。前記不織布としては、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布などが挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を併用できる。中でも、薄くて強いことから、スパンボンド不織布が好ましく、さらに、ポリプロピレンスパンボンド不織布がより好ましい。
【0036】
前記基材層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上0.5mm以下であり、好ましくは0.2mm以上0.4mm以下である。また、前記基材層の目付量は、特に限定されず、例えば、30g/m以上70g/m以下である。前記基材層の厚み及び目付量が上記範囲内であれば、下地の不陸や凹凸が床シート材2の表面に表出するのを抑制することができる。
【0037】
なお、図2(b)に示すような便器12を備える床13に施工される床シート材2には、便器12の外形に応じた開口21と、四方のいずれかの端部20から開口縁部22に延びる切り込み23と、が予め形成されている。また、図2(b)の床シート材2には、排水口16の外形に応じた切欠24も形成されている。
【0038】
次に、シート端部部材4(第1シール材)は、浴室の床13上に施工される床シート材2の端部20に装着される。ここで、浴室の床13上に床シート材2を施工する際には、施工者が床シート材2を床13の大きさに合わせてカットして、床シート材2の端部20を排水溝13や浴室壁面14などに沿わせて固定する必要がある。ただし、床シート材2を事前にカットすると、施工者の技量によって床シート材2の端部20のカット精度にばらつきが生じる。床シート材2の端部20のカット精度が悪いと、床シート材2の端部20にうねりや凹凸、傾斜が生じ、排水溝15や浴室壁面14などに綺麗に沿わない、あるいは、床シート材2の端部20と排水溝15や浴室壁面14などとの隙間にバラツキが生じたり、隙間が大きくなる場合がある。そのため、施工後の浴室床の仕上がりの低下を招くことになる。これに対して、シート端部部材4が床シート材2の端部20に装着されると、シート端部部材4が床シート材2の端部20を上方から覆うので、施工者の技量によって床シート材2の端部20のカット精度にばらつきが生じても、カット精度の良し悪しに関わらず一様に浴室床を良好に仕上げることができ、浴室の美観を損ねることを防止できる。
【0039】
シート端部部材4は、図3及び図4に示すように、所定の長さを有する長尺状に形成されている。長尺状とは、一方向における長さが、前記一方向と直交する他の方向における長さよりも十分に長い形状をいう。長尺状のシート端部部材4は、施工に際して適切な長
さに切断されて、床13上の排水溝15、浴室壁面14、浴槽壁面10Aなどとの境界に配置される。また、シート端部部材4は、可撓性を有していて人手で容易に曲げることが可能であり、例えば排水溝15などが曲線状である場合には排水溝15などに沿うように曲げて床13上に配置することができる。なお、シート端部部材4は、曲げた後、力を解除すると元の状態に復帰しようとする弾性を有することが好ましい。
【0040】
シート端部部材4は、可撓性を有していればその素材は特に限定されないが、耐水性、耐摩耗性、耐衝撃性など、浴室の床に用いるために必要な耐久性を満足する材料で形成されていることが好ましい。シート端部部材4の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)などの軟質又は半硬質樹脂材料を挙げることができる。特に、加工性に優れ、硬度の調整が容易でコストにも優れるため、ポリ塩化ビニル樹脂でシート端部部材4を形成することが好しい。シート端部部材4は、上述した構成材料を用いた押出成形などにより形成することができる。
【0041】
シート端部部材4は、長尺状の本体部5と、本体部5の前記一方向(長さ方向)の全長にわたって本体部5に一体形成される薄板状のカバー部6Aと、本体部5の長さ方向の全長にわたって本体部5にカバー部6Aと上下対をなすように一体形成される薄板状の支持部6Bと、を備えている。
【0042】
カバー部6Aは、本体部5の上部において、本体部5から側方に略水平に突き出ており、上面が本体部5の上面50と面一で連続している。また、支持部6Bは、本体部5の下部において、本体部5から側方に略水平に突き出ており、下面が本体部5の下面51と面一で連続している。本体部5の側方のカバー部6Aの下方には、床シート材2の端部20が配置される凹みD1が形作られている。凹みD1に配置された床シート材2の端部20は、支持部6B上に載置され、カバー部6Aにより上方から覆われる。
【0043】
本体部5は、図4(a)に示すように、中身の詰まった中実形状であってもよいし、図4(b)に示すように、内部に空洞Oを有する中空形状であってもよい。シート端部部材4を曲げ易く、また、カバー部6Aを上方へ持ち上げ易い点で、本体部5は中空形状のほうが好ましい。本体部5は、上面50、下面51及び垂直面52を有している。
【0044】
本体部5の下面51は、平坦な面で浴室の床面と両面テープ3A(図7に示す)を介して当接する。本体部5の垂直面52は、凹みD1に配置された床シート材2の端部20と対向する。
【0045】
本体部5の上面50は、図4(a)に示すように、本実施形態では、平坦面50Aと、カバー部6Aとは反対側に向けて下る傾斜面50Bとが連設された構成であり、本体部5は、断面視三角形状のスロープ部53を有している。スロープ部53は、傾斜面50Bと下面51とのなす角度αが鋭角であり、例えば、5°以上60°以下であり、好ましくは15°以上40°以下である。このスロープ部53(傾斜面50B)により、床シート材2上の水をスムーズにシート端部部材4を介して排水溝15などにスムーズに流すことができる。加えて、スロープ部53(傾斜面50B)により本体部5を先端の角部を尖らせた断面視略三角形状とすることで、上面50が平坦面でスロープ部53(傾斜面50B)がなく先端の角部が直角となる断面視矩形状の本体部5よりも、シート端部部材4を床面の排水溝15、浴室壁面14、浴槽壁面10Aなどとの境界に貼り付けた際に、先端の角部が容易に捲れることを防止できる。これによって、段差を解消し、側方からの圧力付与
を低減させ、シート端部部材4を床面から剥がれ難くすることができる。また、本体部5が断面視略三角形状であり、本体部5の先端部に歩行者の足先が当たっても、足先をスロープ部53(傾斜面50B)の斜面に沿って滑らせることができるため、違和感なく歩行を進めることができる。なお、傾斜面50Bの傾斜角度αは、下り勾配であれば、平面状であっても曲面(凹曲面、凸曲面)状であっても構わない。
【0046】
なお、本体部5は、図4(b)に示す実施形態のように、上部5Aと下部5Bとを有し、上部5A及び下部5Bが開閉可能に連結されるように構成することができる。この図4(b)の実施形態では、上部2Aにカバー部6Aが設けられ、下部2Bに支持部6Bが設けられている。上部5A及び下部5Bは、本体部5内の空洞Oと、凹みD1から空洞Oに延びる空隙Gとで分割されており、後述する図12に示すように、上部5Aの下部5Bと連結される根元側の部分を折り曲げの支点(ヒンジ)にして上部5Aが折れ曲がることで、上部5Aが下部5Bに対して開閉可能である。
【0047】
ここで、上部5Aを開閉し易くするためには、上部5Aの下部5Bと連結される根元側の一部分54を、上部5Aの残部分よりも軟質とすることが好ましい。これにより、上部5Aの根元側の部分が折れ曲がり易くなり、上部5Aが開閉し易くなる。
【0048】
この場合、上部5Aの上記一部分(軟質部分)54の硬度は、特に限定されるものではないが、上部5Aが閉じた状態において、上方からの荷重で容易に軟質部分54が変形することを防止できる程度の硬さが必要である。一方で、軟質部分54を硬くしすぎないことで、上部5Aが開き易くなる。そのため、軟質部分54の硬度は、例えば、ショアD硬度で20以上60以下とすることが好ましく、35以上45以下とするのがさらに好ましい。また、上部5Aの軟質部分54以外の残部分及び下部5Bは、軟質部分54よりも硬ければ、その硬度は特に限定されるものではないが、硬くしすぎないことによって、排水溝15、浴室壁面14、浴槽壁面10Aなどが曲線状である場合にシート端部部材4を排水溝15などに沿うように曲げて配置することが容易になる一方で、排水溝15などが直線状である場合にシート端部部材4を排水溝15などに沿って真っ直ぐ直線状に配置するためには適度な硬さが必要である。そのため、上部5Aの軟質部分54以外の残部分及び下部5Bの硬度は、ショアD硬度で40以上80以下とすることが好ましく、55以上65以下とするのがさらに好ましい。ショアD硬度は、JIS K7215によって、デュロメーター型式Dのアスカーゴム硬度計(高分子計器株式会社製)を用いて測定することができる。
【0049】
本体部5の上部5Aに軟質部分54を設ける場合は、軟質部分54と上部5Aの軟質部分54以外の残部分及び下部5Bとで同一の材料同士の組み合わせで形成することが、強固に一体成形加工し易くて好ましい。例えば、軟質ポリ塩化ビニル樹脂及び半硬質ポリ塩化ビニル樹脂などを好適な組み合わせとして挙げることができる。軟質ポリ塩化ビニル樹脂及び半硬質ポリ塩化ビニル樹脂を組み合わせた場合、一体成形加工を容易に行なうことができ、かつ接合面が強固であるので、特に好適である。
【0050】
なお、図4(b)の実施形態のシート端部部材4は、本体部5の上部5Aに軟質部分54が設けられているが、軟質部分54を設けることなく構成することもできる。
【0051】
上部5A及び下部5Bの連結部分には、曲面が形成されており、例えば、本体部5の長さ方向に延びる断面視円形状の空洞55が設けられている。これにより、上部5Aの開閉時に作用する応力を緩和させることができるので、上部5Aの耐久性を向上することができる。空洞55は、断面視円形状である必要はなく、断面視惰円形状であってもよい。
【0052】
なお、図4(b)の実施形態のシート端部部材4は、本体部5の上部5A及び下部5B
の連結部分に空洞55が設けられているが、空洞55を設けることなく構成することもできる。
【0053】
下部5Bは、凹みD1に配置される床シート材2の端部20が対向する壁部56を有している。壁部56は、凹みD1と隣接する位置に本体部5の長さ方向の全長にわたって設けられ、壁部56の凹みD1側の端面が本体部5の垂直面52をなしている。この壁部56は、詳細は後述するが、床シート材2を本体部5の長さ方向に沿ってカットして床シート材5の端部50が凹みD1内からズレ出ないようにするために、後述する図14に示すように、カッターCなどの切断器具を当てて床シート材2をカットすることが可能な切断用のガイドとして機能する。なお、図4(b)の実施形態では、壁部56は、下部5Bの一部として形成されているが、上部5Aの一部として形成されていてもよい。
【0054】
また、壁部56は、図4(b)の実施形態では、上端部が鉤状(直角)に折れ曲がった断面視L字状をなしており、上部5Aが有する第1係合部57と互いに係脱可能に係合する第2係合部としても機能する。すなわち、上部5Aは、閉じた状態で下部5Aの壁部56(第2係合部)と空隙Gを介して隣り合う第1係合部57を有している。第1係合部57は、下端部が鉤状(直角)に折れ曲がった断面視L字状をなしており、簡易な構成で第2係合部である壁部56に係合させることができる。上部5Aが閉じた状態で、端部同士が引っ掛かることで第1係合部57及び壁部56(第2係合部)が互いに係合することで、上部5Aは閉じた状態が維持される。
【0055】
上記構成のシート端部部材4において、カバー部6Aの厚みは、特に限定されるものではないが、薄すぎると耐久性が劣る一方、厚すぎると床シート材2上を流れ落ちてくる水がカバー部6Aとの境界における段差で滞留し、スムーズにシート端部部材4から排水溝15に排出できなくなる。そのため、カバー部6Aの厚みは、好ましくは0.2mm以上1.0mm以下であり、さらに好ましくは0.3mm以上0.5mm以下である。
【0056】
また、カバー部6Aの幅l2は、特に限定されるものではないが、狭すぎると、床シート材2の端部20のカット精度が悪い場合に床シート材2の端部20が凹みD1からはみ出て隙間が生じてしまい、施工不良となるおそれがある一方、広すぎると、シート端部部材4の見栄え悪くなる。そのため、カバー部6Aの幅l2は、好ましくは3mm以上15mm以下であり、さらに好ましくは5mm以上10mm以下である。
【0057】
また、支持部6Bの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは0.2mm以上1.0mm以下であり、さらに好ましくは0.3mm以上0.5mm以下である。下限値以上であると、支持部6Bの耐久性が十分となる一方、上限値以下であると、床シート材2が支持部6Bへ無理なく乗り上がり、床シート材2と床13との間の隙間を小さくすることができる。なお、支持部6Bは、先端に向けて厚みが次第に薄くなるようにテーパー状に形成されていてもよく、床シート材2が浴室の床面から支持部6Bへスムーズに乗り上げることができる。
【0058】
また、シート端部部材4の下面の幅L1(本体部5の下面51の幅l1及び支持部6Bの幅l3の合計)は、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは10mm以上50mm以下であり、さらに好ましくは15mm以上25mm以下である。下限値以上であると、シート端部部材4と床13との接着面積が十分となり、シート端部部材4が床13から剥がれ難くなる。一方、上限値以下であると、それに伴い床13に貼る両面テープ3Aの幅を広げる必要がなくなり、両面テープ3Aの貼り付けが容易になり、また浴室内の作業スペースを確保することができるため、施工時の作業効率が良好となる。
【0059】
また、凹みD1の高さH1(本実施形態ではカバー部6A及び支持部6Bの間の高さ)
は、特に限定されるものではなく、床シート材2の厚みに対応して種々の高さとすることができるが、床シート材2の厚みよりも、0.2mm以上0.6mm以下の範囲で高く設定されることが好ましく、0.3mm以上0.5mm以下の範囲で高く設定されることがより好ましい。これによって、床シート材2の端部20の凹みD1への嵌めこみが容易になり、かつ、水が浸入し難くなる。なお、床シート材2は、防滑性を高めるために、表面にエンボスが形成されていることが多いが、凹みD1の高さHを上記範囲に設定することで、床シート材2の端部20の嵌めこみの容易さと水の浸入抑制を両立させることができる。
【0060】
次に、便器周り部材7(第2シール材)は、浴室の床13上に施工される床シート材2の開口縁部22に装着される。ここで、便器12を備える浴室の床13上に床シート材2を施工する際には、施工者が床シート材2の便器12の当たる部分を事前に切り抜いて、便器12の外形に応じた開口21を床シート材2に形成する必要がある。ただし、床シート材12を事前にカットすると、施工者の技量によって床シート材2の開口縁部22のカット精度にばらつきが生じる。床シート材2の開口縁部22のカット精度が悪いと、床シート材2の開口縁部22にうねりや凹凸、傾斜が生じ、便器壁面12Aに綺麗に合わない、あるいは、床シート材2の開口縁部22と便器壁面12Aとの隙間にバラツキが生じたり、隙間が大きくなる場合がある。そのため、施工後の浴室床の仕上がりの低下を招くことになる。さらに床シート材2の便器12の周りに位置する開口縁部22に隙間があると、水や尿、汚物などが隙間に侵入して床シート材の裏面に回り込んで汚染するなど、不具合が生じる。特に、便器12及び浴槽10を有するユニットバスの場合、浴槽12からあふれた水が上記隙間に入り込むことも懸念される。これに対して、便器周り部材7が床シート材2の開口縁部22に装着されると、便器周り部材7が床シート材2の開口縁部22を上方から覆うので、施工者の技量によって床シート材2の開口縁部22のカット精度にばらつきが生じても、カット精度の良し悪しに関わらず一様に浴室床を良好に仕上げることができ、浴室の美観を損ねることを防止できる。
【0061】
便器周り部材7は、図5及び図6に示すように、所定の長さを有する長尺状に形成されている。便器周り部材7は、施工に際して適切な長さに切断されて使用される。また、便器周り部材7は、可撓性を有していて人手で容易に曲げることが可能である。便器周り部材7を曲げることで、便器周り部材7を、後述する図19に示すように便器壁面12Aの周方向に沿わせることができ、床13上の便器12の周囲に配置することができる。なお、便器周り部材7は、曲げた後、力を解除すると元の状態に復帰しない程度の柔軟性を有することが好ましい。なお、図6(及び後述する図9)中、Vは鉛直方向を示し、Pは水平方向を示している。また、便器周り部材7においては、便器壁面12A側を内側(後方)とし、その反対の床シート材2側を外側(前方)としている。
【0062】
便器周り部材7は、可撓性を有していればその素材は特に限定されないが、耐水性、耐摩耗性、耐衝撃性など、トイレ回りの床に用いるために必要な耐久性を満足する材料で形成されることが好ましい。便器周り部材7の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマーなどの軟質樹脂材料を挙げることができる。特に、加工性に優れ、硬度の調整が容易でコストにも優れるため、ポリ塩化ビニル樹脂で便器周り部材7を形成することが好しい。便器周り部材7は、上述した構成材料を用いた押出成形などにより形成することができる。
【0063】
便器周り部材7は、長尺状の本体部8と、本体部8の前記一方向(長さ方向)の全長にわたって本体部8に一体形成される板状の脚部9と、を備えている。本体部8は、底壁面
80、内壁面81及び外壁面82を有しており、本実施形態では断面視略三角形状をなしている。脚部9は、本体部8から下方に突き出ており、床シート材2の開口縁部22が配置される凹みD2を本体部8の下方に形作る。凹みD2は、本体部8の底壁面80と脚部9の外側面90とによって囲まれる空間である。
【0064】
本体部8の底壁面80は、凹みD2に配置された床シート材2の開口縁部22を上方より覆う。凹みD2の高さT1(脚部9の外側面90の高さ)は、特に限定されるものではなく、床シート材2の厚みに対応して種々の高さとすることができるが、床シート材2の厚みよりも、0.5mm以上0.9mm以下の範囲で高く設定されることが好ましく、0.6mm以上0.8mm以下の範囲で高く設定されることがさらに好ましい。これによって、床シート材2の開口縁部22の凹みD2への嵌めこみが容易になり、かつ、水が浸入し難くなる。なお、ユニットバスの場合、床シート材2は、防滑性を高めるために、表面にエンボスが形成されていることが多いが、凹みD2の高さT1を上記範囲に設定することで、床シート材2の開口縁部22の嵌めこみの容易さと水の浸入抑制を両立させることができる。
【0065】
底壁面80は、本実施形態では、脚部9と反対側に向けて下るように傾斜する傾斜面とされている。底壁面80の傾斜角度βは特に限定されるものではないが、例えば、2°以上10°以下に設定される。また、底壁面80は、下り勾配であれば、平坦面であっても、曲面(凹曲面又は凸曲面)であっても構わないが、床シート材2との密着性が高まることから、平坦面にすることが好ましい。これにより、凹みD2に床シート材2の開口縁部22が配置された際に、底壁面80の脚部9と反対側の端部(先端部)が上方に適度に弾性変形し、弾性力によって床シート材2の開口縁部22の表面に密着するので、底壁面80の先端部と床シート材2との間隙を良好に塞ぐことができる。なお、底壁面80は、必ずしも傾斜している必要はない。
【0066】
また、底壁面80の先端部には、下方に突き出る凸部83が一体形成されている。凸部83は、本体部8の長さ方向の全長にわたって設けられている。この凸部83の存在により、底壁面80の先端部と床シート材2の開口縁部22の表面との密着性を向上することができ、底壁面80の先端部と床シート材2との間隙をより良好に塞ぐことができる。よって、水や尿などが本体部8及び床シート材2の間に浸入することを確実に防止できるという効果を有する。また、止水性や接着性を向上させるために、本体部8と床シート材2の開口縁部22との間をコーキング剤で充填した場合、コーキング剤を隠蔽して施工後の美観を向上させる効果も有する。
【0067】
凸部83の形状は、特に限定されるものではなく、本実施形態では頂部が平坦な断面視台形状とされているが、頂部が尖った断面視三角形状や頂部が丸みを帯びた断面視円形状など、種々の形状とすることができる。特に、頂部が平坦な断面視台形状であると、床シート材2との接触面積を大きくし止水性を向上させ、さらに、本体部8と床シート材2の開口縁部22との間をコーキング剤で充填した場合に、コーキング剤が漏れ出ることを防止することができるので、好ましい。なお、凸部83の高さT2は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.2mm以上1.0mm以下、さらに好ましくは0.3mm以上0.5mm以下である。また、底壁面80の先端部における床面からの高さ(凸部83を有する場合は凸部83の頂部の床面からの高さ)T3は、特に限定されるものではない。高さT3は、好ましくは、床シート材2の厚みよりも、-0.6mm以上-0.3mm以下、さらに好ましくは-0.5以上-0.3mm以下であり、この範囲内であると、止水性を向上させ、コーキング剤の漏れを防止することができる。
【0068】
底壁面80の幅L2は、特に限定されるものではないが、好ましくは3mm以上10mm以下であり、さらに好ましくは5mm以上7mm以下である。下限値以上であると、床
シート材2の開口縁部22のカット精度が悪い場合でも床シート材2の開口縁部22が凹みD2からはみ出ることを防止する一方、上限値以下であると、便器周り部材7が大きくなりすぎることなく、目立たず見栄えがよい。
【0069】
本体部8の内壁面81は、脚部9の内側面91から連続して上方に延びており、便器壁面12Aと対向する。内壁面81は、便器壁面12Aにおける本体部8が当たる下端近傍の上下方向に沿う形状に対応した形状とすることができる。具体的に、一般的な便器12においては、便器壁面12Aは、後述する図9図1(b)のB-B断面図)に示すように、上下方向に沿って凸曲面状であることが多い。そのため、本実施形態では、これに対応させて、内壁面81は、少なくとも一部が凹曲面とされており、凹状に湾曲している。なお、本実施形態では、内壁面81は、一定の曲率半径の円弧状面で構成された凹曲面とされているが、曲率半径の同じ又は異なる2つ以上の円弧状面が滑らかに連続した構成の凹曲面であってもよいし、曲率半径を徐々に変化させた構成の凹曲面であっても構わない。一定の曲率半径の円弧状面で構成された凹曲面で内壁面81を形成すると、内壁面81を便器壁面12Aへ沿わせて密着性を高めることができるので、好ましい。また、内壁面81は、必ずしも凹曲面である必要はなく、便器壁面12Aに形状によっては、凸曲面であってもよいし、平端面であっても構わない。便器周り部材7は柔軟性を有するので、便器壁面12Aが平面状であっても、内壁面81が便器壁面12Aの形状に追随し、密着することができる。
【0070】
また、内壁面81は、便器壁面12Aにおける本体部8が当たる下端近傍の鉛直方向Vに対する傾斜具合I1に応じて、鉛直方向Vに対して傾斜させることができる。具体的に、一般的な便器12においては、便器壁面12Aは、図9に示すように、鉛直方向Vに対して上方に向かうにしたがい内向きに傾斜している。そのため、本実施形態では、これに対応させて、内壁面81は、鉛直方向Vに対して底壁面80と反対側に開くように傾斜しており、上方に向かうにつれて鉛直方向Vから後方(便器壁面12A側)へ離れた、後方斜め上向きに延びる傾斜面とされている。なお、内壁面81は、必ずしも鉛直方向Vに対して後方斜め上向きに延びる傾斜面である必要はなく、便器壁面12Aの形状によっては、上方に向かうにつれて鉛直方向Vから前方(床シート材2側)へ離れた、前方斜め上向きに延びる傾斜面であってもよい。また、内壁面81は、鉛直方向Vを上向きに延びる垂直面であっても構わない。
【0071】
本体部8の外壁面82は、底壁面80の先端部と内壁面81の上端部との間に延設されており、本実施形態では、少なくとも一部が凹曲面とされており、凹状に湾曲している。本体部8は、外壁面82が凹曲面を含むことで、上方へと向かうにしたがい肉厚が薄くなる肉厚移行部8Aを含んでいる。なお、肉厚移行部8Aは、前方へと向かうにしたがっても肉厚が薄くなっている。
【0072】
また、外壁面82は、上端側の一部は、内壁面81に合わせて凸曲面82Aとされており、これにより、本体部8は、肉厚移行部8Aと連続して設けられる上方薄肉部8Bを含んでいる。この上方薄肉部8Bは、厚み(外壁面82及び内壁面81の間の長さ)が肉厚移行部8Aよりも薄いために撓みやすく、図6のX1方向及びY1方向により折れ曲がりやすくなっている。よって、便器壁面12Aの鉛直方向Vに対する傾斜度合いI1が急であったり緩やかであるなど、あらゆる傾斜度合いI1であっても、本体部8の内壁面81の上端部を傾斜度合いI1に容易に追随させて便器壁面12Aに沿わせて当接させることができる。その結果、内壁面81の上端部と便器壁面12Aとの間隙を良好に塞ぐことができ、水や尿などが本体部8及び便器壁面12Aの間に浸入することを確実に防止できるという効果を有する。
【0073】
上方薄肉部8Bは、本実施形態では、厚みが一定となるよう形成されている。上方薄肉
部8Bの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは0.2mm以上1.0mm以下であり、さらに好ましくは0.4mm以上0.7mm以下である。下限値以上であると、上方薄肉部8Bの耐久性が十分となる一方、上限値以下であると、上方薄肉部8Bが曲がり易くなる。なお、上方薄肉部8Bは、上端に向けて厚みが次第に薄くなるようにテーパー状に形成されていてもよい。
【0074】
また、外壁面82は、先端側の一部は、底壁面80に合わせて平坦面82Dとされており、これにより、本体部8は、肉厚移行部8Aと連続して設けられる前方薄肉部8Cも含んでいる。この前方薄肉部8Cは、厚み(外壁面82及び底壁面80の間の長さ)が肉厚移行部8Aよりも薄いために撓みやすく、図6のX2方向及びY2方向により折れ曲がりやすくなっている。よって、上述したように、凹みD2に床シート材2の開口縁部22を配置した際に、本体部8の底壁面80の先端部が上方に弾性変形しやすく、弾性力によって床シート材2の開口縁部22の表面に良好に密着する。よって、底壁面80の先端部と床シート材2との間隙を効果的に塞ぐことができる。
【0075】
前方薄肉部8Cは、本実施形態では、厚みが一定となるよう形成されている。前方薄肉部8Cの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは0.2mm以上1.0mm以下であり、さらに好ましくは0.4mm以上0.7mm以下である。下限値以上であると、前方薄肉部8Cの耐久性が十分となる一方、上限値以下であると、前方薄肉部8Cが曲がり易くなる。なお、前方薄肉部8Cは、先端に向けて厚みが次第に薄くなるようにテーパー状に形成されていてもよい。
【0076】
なお、本実施形態では、外壁面82の一部の凹曲面は、一定の曲率半径の円弧状面で構成された凹曲面とされているが、曲率半径の同じ又は異なる2つ以上の円弧状面が滑らかに連続した構成の凹曲面であってもよいし、曲率半径を徐々に変化させた構成の凹曲面であっても構わない。また、外壁面82は、一部が凹曲面であることで、本体部8の肉厚移行部8Aが形成されているが、外壁面82の当該部分を凸曲面あるいは平端面とすることで肉厚移行部8Aを形成して、上方薄肉部8B及び前方薄肉部8Cを連続して設けるようにしても構わない。
【0077】
次に、脚部9は、本体部8の底壁面81から長く突き出ており、脚部9の外側面90が、側方の凹みD2に配置された床シート材2の開口縁部22と対向している。脚部9は、本実施形態では、底壁面80の後端部(便器壁面12A側の端部)から突き出ており、便器壁面12Aと対向する側の内側面91が本体部8の内壁面81と面一で連続している。
【0078】
脚部9の内側面91は、便器壁面12Aにおける脚部9が当たる下端の鉛直方向Vに対する傾斜度合いI2に応じて、鉛直方向Vに対して傾斜させることができる。本実施形態では、内側面91は、鉛直方向Vに対して底壁面80と反対側に開くように傾斜しており、下方に向かうにつれて鉛直方向Vから後方(便器壁面12A側)へ離れた、後方斜め下向きに延びる傾斜面とされている。これにより、図9に示すように、便器壁面12Aの下端が鉛直方向Vに対して下方に向かうにしたがい内向きに傾斜している場合に、内側面91を便器壁面12Aに良好に沿わせることができる。
【0079】
なお、内側面91は、本実施形態では平坦面とされているが、曲面(凹曲面又は凸曲面)であっても構わない。また、内側面91は、便器壁面12Aの形状によっては、下方に向かうにつれて鉛直方向Vから後方(便器壁面12A側)へ離れた、後方斜め下向きに延びる傾斜面であってもよい。また、内側面91は、鉛直方向Vに下向きに延びる垂直面であっても構わない。
【0080】
一方、脚部9の床シート材2の開口縁部22と対向する側の外側面90は、鉛直方向V
を下向きに延びる垂直面とされている。
【0081】
脚部9の厚みは、特に限定されるものではなく、上端において好ましくは0.5mm以上1.3mm以下、さらに好ましくは0.7以上1.1mm以下であり、下端において好ましくは0.7mm以上1.5mm以下、さらに好ましくは0.9以上1.3mm以下である。図9に示すように、便器壁面12Aは、下端において内方へ凹んでいる形状が多いので、脚部9の厚みを上記範囲内で上端より下端の厚みを大きくすることによって、脚部9と便器壁面12Aとの密着性を高めることができる。また、便器周り部材7は柔軟性を有するので、便器壁面12Aが平面状であっても、脚部9が便器壁面12Aの形状に追随し、密着することができる。
【0082】
上記構成の便器周り部材7の高さH2は、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは7mm以上20mm以下であり、さらに好ましくは10mm以上15mm以下である。下限値以上であると、便器周り部材7と便器壁面12Aとの接触面積が十分となり、便器周り部材7が便器壁面12Aから剥がれ難くなる一方、上限値以下であると、便器周り部材7の見栄えが良好となる。
【0083】
また、便器周り部材7の硬さは、特に限定されるものではないが、例えば、ショアD硬度で20以上60以下とすることが好ましく、35以上45以下とするのがさらに好ましい。下限値以上であると、高温時に便器周り部材7を施工し易くなる一方、上限値以下であると、便器周り部材7を便器壁面12Aの周方向に沿うように曲げて配置し易くなる。ショアD硬度は、JIS K7215によって、デュロメーター型式Dのアスカーゴム硬度計(高分子計器株式会社製)を用いて測定することができる。
【0084】
次に、本実施形態の浴室床の施工方法について説明する。
【0085】
まず、浴室の既設の床13に大きな不陸や亀裂がある場合など必要に応じて、下地補修材を用いて平滑化処理を行う。浴室の既設の床13が繊維強化プラスチック(FRP)の場合、下地補修材としては、例えば「バスナパテEPO(東リ株式会社製)」を好適に用いることができる。浴室の既設の床13がタイルの場合、下地補修材としては、例えば「クイックレベラー(東リ株式会社製)」を好適に用いることができる。
【0086】
次に、図7に示すように、床13上の複数箇所に両面テープ3A~3Dを貼り付ける(両面テープの貼付工程)。両面テープ3A~3Dは、床13の全面に貼り付ける必要はなく、床面の一部分だけに貼り付けることができる。
【0087】
具体的には、少なくとも床13の周縁に沿って、つまりは、床13上の排水溝15、浴室壁面14、浴槽壁面10A、排水口16との境界において、その長さ方向に沿いかつ境界から所定の間隔dで両面テープ3Aを貼り付ける。これにより、両面テープ3Aを介して床シート材2の端部20を良好に床面に接着させることができる。上記間隔dは、例えば0mm以上100mm以下である。具体的に、排水溝15及び排水口16との境界において間隔dは、0mm以上100mm以下、好ましくは0mm以上10mm以下である。浴室壁面14及び浴槽壁面10Aとの境界において間隔dは、3mm以上20mm以下、好ましくは5mm以上10mm以下である。
【0088】
床13の周縁に沿う両面テープ3Aは、本実施形態では、床13の周縁を一周にわたって隙間なく連続している。なお、図7では、床13の縦方向に延びる両面テープ3Aと、床13の横方向に延びる両面テープ3Aとの複数の両面テープで隙間なく連続して貼り付けられているが、一つの両面テープで連続して貼り付けられていてもよい。また、床13の縦方向に延びる両面テープ3Aと、床13の横方向に延びる両面テープ3Aとにより、
不連続に(断続して)貼り付けられていてもよい。ただし、床13の周縁に沿う両面テープ3Aは、一体または別体で床13の周縁を一周にわたって隙間なく連続している方が、止水効果が高まるために好ましい。
【0089】
床13の周縁に沿って貼り付けられる両面テープ3Aにおいて、排水溝15及び排水口16に沿う両面テープ3Aは、本実施形態では、図7及び図8に示すように、床13の排水溝15及び排水口16との境界B(図8に示す)から隙間をあけずに(上記間隔dを0mmにして)貼り付けられている。一方で、浴室壁面14及び浴槽壁面10Aに沿う両面テープ3Aは、本実施形態では、図7及び図17に示すように、浴室壁面14及び浴槽壁面10Aに隣接して排水溝がない場合には、床13の浴室壁面14及び浴槽壁面10Aとの境界B(図17に示す)から隙間をあけて(上記間隔dを0mmより大きくして)貼り付けられている。これにより、後述する図10に示すように、両面テープ3A上にシート端部部材4の設置後、浴室壁面14及び浴槽壁面10Aとシート端部部材4との間に排水部18を設けることができる。よって、排水部18により床13の排水機能が高められるとともに、埃やゴミを取り易い形状となるので清掃性が向上する。
【0090】
また、図7(b)に示す便器12を備えた床13については、便器12を囲むように、両面テープ3Bを貼り付ける。例えば、便器12の長手方向と垂直な幅方向の一方側又は両側に、長手方向に沿って延びるように両面テープ3Bを貼り付けることができる。また、便器12の長手方向の一方側又は両側に、幅方向に沿って延びるように両面テープ3Bを貼り付けることができる。これにより、両面テープ3Bを介して床シート材2の開口縁部22を良好に床面に接着させることができる。なお、本実施形態では、便器12の長手方向が床13の縦方向に、幅方向が床13の横方向に一致している。便器12を囲む両面テープ3Bは、便器12の縦(長手方向の長さt1)及び横(幅方向の長さt2)の各寸法に対して、0.5倍以上1.0倍以下の長さとなるように床面に貼り付けられることが好ましい。
【0091】
なお、便器12を囲む両面テープ3Bは、図7(b)に示すように、便器12の四方の全てに貼り付けられることが好ましいが、必ずしも便器12の四方全てに貼り付けられる必要はない。ただし、少なくとも便器12の幅方向の両側の二方に両面テープ3Bが貼り付けられていることが好ましい。また、便器12の長手方向の両側の二方については、少なくとも一方側(好ましくは便器12の手前側(図7(b)では下方))に両面テープ3Bが貼り付けられていることが好ましい。
【0092】
便器12を囲む両面テープ3Bは、図7(b)及び図9に示すように、床13上の便器12との境界から間隔Sをあけて貼り付けられる。上記間隔Sは、例えば0mm以上20mm以下である。なお、後述する図12(b)に示す床シート材2を床13上に敷設した後、便器12の周囲に便器周り部材7を設置しない場合においては、床シート材2の開口縁部22と両面テープ3Bとの間隔R(図12(c)に示す)を3mm以下とすることが好ましい。なお、図12(c)は、図12(b)の便器12周りの拡大図である。
【0093】
また、図7(b)に示す便器12を備えた床13については、後述する図12に示す床シート材2が床13上に敷設された際に、床シート材2に形成された切り込み23と重なるように両面テープ3Cを貼り付けることが好ましい。これにより、両面テープ3Cを介して床シート材2の切り込み23を開くことなく良好に床面に接着させることができ、また、切り込み23からの水の浸入を抑制して止水効果を高めることもできる。この床シート材2の切り込み23と重なる位置に貼り付けられる両面テープ3Cは、少なくとも切り込み23の一部を覆っていればよく、必ずしも切り込み23の全てを覆っている必要はない。なお、便器12の長手方向の両側の両面テープ3Bのうち、便器12の背後側(図7(b)では上方)に両面テープ3Bが貼り付けられていない場合には、床シート材2の切
り込み23と重なる位置の両面テープ3Cは、切り込み23に沿って便器12まで又は便器12の近傍まで延びるように床13上に貼り付けられることが好ましい。これによって、床シート材2の剛性度が比較的低い場合であっても、床シート材2の切り込み23の端部が浮き上がることなく、好適に床面に貼り付けることができる。また、両面テープ3Cによって、切り込み23から水や尿などの液体が浸入して床シート材2の裏面に回りこむことを防止できるという効果も奏する。
【0094】
さらに、図7(a)及び図7(b)のいずれの床13においても、床13の周縁内に所定の間隔をあけて複数の両面テープ3Dを貼り付ける。床13の周縁内に貼り付けられる両面テープ3Dは、床13の縦方向又は横方向に延びるように床面に貼り付けられ、各両面テープ3A~3Cと並行又は略並行である。床13の周縁内に貼り付けられる両面テープ3Dは、各両面テープ3A~3Dについて床13の縦方向及び横方向の少なくともいずれか一方において隣り合う両面テープとの間隔iが所定値以下となるように、床面に貼り付けられている。つまり、該両面テープ3Dは、床13の縦方向及び横方向の少なくともいずれか一方において所定値より大きい間隔iがあく部分に貼り付けられ、各両面テープ3A~3Dは所定値以下の間隔iに他の両面テープが存在し、隣り合う両面テープとの間隔iが所定値より大きくあかない状態となっている。本実施形態では、床13の縦方向に延びる両面テープ3A~3Dについては、床13の横方向に隣り合う両面テープとの間隔iが所定値以下となり、床13の横方向に延びる両面テープ3A~3Dについては、床13の縦方向に隣り合う両面テープとの間隔iが所定値以下となっている。間隔iを所定値以下にすることよって、床シート材2の剛性度が比較的低い場合であっても、床シート材2が部分的に浮き上がることなく、好適に床面に貼り付けることができる。なお、浴室の既設の床13がタイルなどであって目地が形成されている場合に、両面テープ3Dは、当該目地を覆うように貼ってもよく、当該目地を避けるように貼ってもよい。
【0095】
両面テープ3A~3Dの間隔iは、特に限定されるものではないが、床シート材2の床13との接着面積を十分にし、床シート材2が床13から剥がれ難くして、長期間、床シート材2を床13に固定する必要がある。一方、接触面積を大きくしすぎないことによって、床13への両面テープ3の貼り付けを容易にし、また、浴室内の作業スペースを十分に確保することができるため、施工時の作業効率が良好となる。そのため、両面テープ3A~3Dの間隔iは、例えば、好ましくは70cm以下であり、さらに好ましくは50cm以下とすることができる。
【0096】
両面テープ3A~3Dの幅は、特に限定されるものではないが、床シート材2の床13との接着面積を十分にし、床シート材2が床13から剥がれ難くして、長期間、床シート材2を床13に固定する必要がある。一方、接触面積を大きくしすぎないことによって、床13への両面テープ3の貼り付けを容易にし、また、浴室内の作業スペースを十分に確保することができるため、施工時の作業効率が良好となる。そのため、両面テープ3の幅は、例えば、好ましくは25mm以上80mm以下であり、さらに好ましくは40mm以上60mm以下とすることができる。
【0097】
両面テープ3A~3Dの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは0.5mm以下であり、さらに好ましくは0.1mm以上0.4mm以下である。上限値以下にすることによって、床面の両面テープ3が存在する領域と存在しない領域との間の段差が床シート材2の表面側に伝わり難くなり、床シート材2の足触りに違和感が生じることを抑制できる。下限値以上にすることによって、床シート材2と床13との接着を強固にすることができる。また、施工時の両面テープ3の意図しない切断を防止し、施工時の作業効率が向上する上、床シート材2の貼り替え時に両面テープ3を途中で切断することなく剥がすことが容易となり、リフォーム時の作業効率も向上する。
【0098】
両面テープ3A~3Dとしては、下地である床13と床シート材2とを接着することができるものであれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができるが、接着性、耐水性、下地不陸追従性、耐可塑剤性、クリープ性、剥離容易性などに優れるものを用いることが好ましい。例えば、「NO.5000ND(日東電工株式会社製)」を好適に用いることができる。
【0099】
両面テープの貼付工程が終わると、次に、図10に示すように、床13上の排水溝15、浴室壁面14、浴槽壁面10Aとの境界に、第1シート材としてのシート端部部材4を、排水溝15、浴室壁面14、浴槽壁面10Aの長さ方向に沿って配置して、両面テープ3Aにより床13上に貼り付ける(第1シール材の設置工程)。本実施形態では、シート端部部材4として、図4(b)に示す実施形態のものを用いている。シート端部部材4は、図11及び図17に示すように、本体部5を、床13の排水溝15、浴室壁面14、浴槽壁面10Aとの境界B側に向けて設置される。なお、上部5Aが開いた状態でシート端部部材4を床13上に貼り付けてもよいし、上部5Aが閉じて下部5Bと係合した状態でシート端部部材4を床13上に貼り付けた後、上部2Aを上方へ開いてもよい。
【0100】
第1シール材の設置工程が終わると、次に、図12に示すように、床シート材2を、両面テープ3A~3Dを介して床13上に敷設する(床シート材の敷設工程)。
【0101】
具体的には、まず、図13に示すように、床シート材2を、上部5Aが開いた状態のシート端部部材4上に乗り上げるようにして配置し、床13上に固定する。次に、図14に示すように、カッターCなどの切断器具を下部5Bの壁部56に当てながら壁部56に沿わせて床シート材2をカットすることにより、図15に示すように、床シート材2の端部20を支持部6B上に配置させる。そして、図16に示すように、シート端部部材4の上部5Aを閉じて、上部5Aの第1係合部57及び下部5Bの第2係合部(壁部56)を係合させることで、床シート材2は、その端部20がシート端部部材4の凹みD1に配置されてカバー部6Aにより覆われた状態となる。浴室の床13の浴室壁面14、浴槽壁面10Aとの境界Bについても、同様の工程を行うことで、図17に示すように、床シート材2は、その端部20がシート端部部材4の凹みD1に配置されてカバー部6Aにより覆われた状態となる。
【0102】
なお、図16に示すシート端部部材4の上部5Aを閉じる前に、図示は省略するが、床シート材2の端部20とシート端部部材4の本体部5との間がコーキング剤で充填されるとともに、床シート材2の端部20とカバー部6Aとの間にコーキング剤が充填されるように、コーキング剤を塗布してもよい。
【0103】
また、図4(a)に示す実施形態のシート端部部材4を用いた場合には、フックカッターなどを用いて、シート端部部材4の上方で、床シート材2を所望の寸法にカットすることができる。その後、床シート材2の端部20を、側方から凹みD1に挿入することで、端部20がシート端部部材4の凹みD1に配置されてカバー部6Aにより覆われた状態となる。なお、床シート材2を予め所望の寸法にカットしておいてもよい。図4(b)に示す実施形態のシート端部部材4を用いた場合においても、床シート材2を予め所望の寸法にカットし、床シート材2の端部20を、上部5Aが閉じた状態のシート端部部材4の凹みD1に側方から挿入して、カバー部6Aで覆った状態としてもよい。
【0104】
図1(a)に示す浴室の床13については、これにより、床シート材2が床13上に敷設される。
【0105】
一方、図1(b)に示す便器12を備える床13については、床シート材2の切り込み23を開くことで開口21内に便器12を位置させ、その後、切り込み23を閉じる。こ
れにより、図18に示すように、床シート材2の開口縁部22が便器壁面12Aの周囲に間隔をあけて位置するように、床シート材2が床13上に敷設される。なお、床シート材2の敷設後、床シート材2の切り込み23の部分に止水処理を行なってもよい。例えば、シーム液、継ぎ目処理剤、コーキング剤、溶接棒などを用いて止水処理を行うことができる。シーム液としては、具体的に、東リ株式会社製の「東リシーム液」、「東リスーパーシーム液」、「東リシームシーラー」を好適に用いることができ、継ぎ目処理剤としては、具体的に、東リ株式会社製の「東リ ジョイントシールド」を好適に用いることができる。
【0106】
床シート材の敷設工程が終わると、図1(b)に示す便器12を備える床13については、次に、図19及び図20に示すように、便器周り部材7を床13上の便器壁面12Aの周囲に設置する(第2シール材の設置工程)。具体的には、便器周り部材7を曲げて便器壁面12Aに一周沿わせながら、本体部8の内壁面81を便器壁面12A側に向けて脚部9を、床シート材2の開口縁部22及び便器壁面12Aの間に差し込む。これにより、床シート材2は、その開口縁部22が便器周り部材7の凹みD2に配置されて底壁面80により覆われた状態となる。便器廻り部材7は、便器壁面12Aの周囲の寸法に合わせて、事前にカットしておいてもよく、施工現場でカットしておいてもよい。
【0107】
なお、図20において、図示は省略するが、床シート材2の開口縁部22と本体部8との間がコーキング剤で充填されるとともに、床シート材2の開口縁部22と脚部9との間にコーキング剤が充填されるように、コーキング剤を塗布してもよい。
【0108】
便器周り部材7は、内壁面81や内側面91に接着剤又は両面テープを塗布又は貼り付けることで接着層17が形成され、接着層17を介して便器壁面12Aに貼り付けられる。特に、両面テープを内壁面81や内側面91に予め貼り付けておくことが好ましく、現場にて剥離シートを剥がすだけで、簡単に短時間で施工することができる。ここでの両面テープは、床シート材2を床13に貼り付ける両面テープ3A~3Dと同じものを使用してもよいが、接着面積が小さいことから、より接着力の強い両面テープを選択するほうが好ましく、例えば、日東電工株式会社製の「H9004」、「H9008」などを好適に挙げることができる。両面テープ及び接着剤の上下の幅は、特に限定されるものではないが、便器周り部材2の便器壁面12Aとの接着面積を十分にして便器周り部材7が便器壁面12Aから剥がれ難くする必要がある一方、接触面積を大きくしすぎないことによって、接着剤又は両面テープを塗布又は貼り付けを容易にすることができる。例えば、両面テープを用いる場合には、その幅は好ましくは4mm以上10mm以下であり、さらに好ましくは8mm以上10mm以下とすることができる。また、接着剤又は両面テープの厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.2mm以上1.0mm以下であり、さらに好ましくは0.4mm以上0.8mm以下である。
【0109】
第2シール材の設置工程が終わると、最後に、押圧ローラーやしごき棒によって、床13上に敷設した床シート材2を押圧する(床シート材の押圧工程)。これにより、床シート材2と床面と間の空気を抜くことで、床シート材2と床面との接着を強固なものとする。この押圧は、必ずしも最後でなくてもよく、床13上に床シート材2を敷設した後であれば、任意のタイミングで行うことができる。
【0110】
以上説明した施工方法により、浴室の床13の全面に両面テープ3A~3Dを用いて床シート材2が施工された浴室床構造が完成する。
【0111】
なお、本実施形態では、浴室の浴室壁面14に隣接する位置に排水溝がない場合の浴室床の施工方法を説明しているが、浴室壁面14に隣接して排水溝がある浴室では、図示は省略するが、図16に示す浴槽壁面17と同様に、床13上の浴室壁面14と隣接する排
水溝との境界にシート端部部材4を設置後、床シート材2を施工する。
【0112】
また、本実施形態では、第1シール材の設置工程及び第2シール材の設置工程により、浴室壁面14や浴槽壁面10Aと床シート材2の端部20との間にシート端部部材4が設けられ、便器壁面12Aと床シート材2の開口縁部22との間に便器周り部材7が設けられることで、床シート材2の端部20や開口縁部22からの水の浸入を防止している。しかし、シート端部部材4及び便器周り部材7の替わりに、シール剤で、浴室壁面14や浴槽壁面10Aと床シート材2の端部20との間、及び、便器壁面12Aと床シート材2の開口縁部22との間を埋めて、水などの浸入を防止してもよい。この場合には、床シート材の押圧工程の後、第1シール材の設置工程及び第2シール材の設置工程により、シール剤の塗布作業が行われる。
【0113】
以上説明した本実施形態の浴室床の施工方法及び浴室床構造1によれば、従来考えられていたように浴室の既設の床13の全面に接着剤を塗布することなく、両面テープ3A~3Dを必要箇所に貼り付けて床シート材2を床13上に施工している。そのため、接着剤を用いた場合の待ち時間(オープンタイム)なしで床シート材2を施工することができる上、両面テープ3A~3Dの貼付作業は、接着剤の塗布作業のように長時間を要しない。よって、床シート材2の施工作業を効率よく行うことができる。
【0114】
また、両面テープ3A~3Dを用いて床シート材2を床13上に施工することで、次回のリフォーム等の際に床シート材2を張り替えようとした場合に、床シート材2を床面から剥がして張り替えが容易となる。よって、接着剤だけを用いた場合のような床シート材2を床面から剥がし難い、両面テープ3A~3Dを床面から剥ぎ取り難いということがなく、床シート材2を床面から剥がす作業、及び、硬化した接着剤を床面から剥ぎ取る作業に労力及び時間を要することがなくなる。そのため、リフォーム時の作業性を改善することができる。また、浴室の既設の床13も保全されるため、床面を削り取ったり、レベリング材で埋めるなどして、平滑化する必要もなくなる。
【0115】
また、両面テープ3A~3Dを用いて床シート材2を床13上に施工することで、接着剤を用いる場合と比べて、接着剤の硬化・乾燥時間が不要となる。よって、床シート材2の施工完了後、短時間で浴室が使用可能となる。
【0116】
また、浴室の既設の床13がタイルなどであって床面に深い目地や目地の段差が形成されている場合、浴室の既設の床13が繊維強化プラスチック(FRP)などであって床面に深い排水溝や段差などが形成されている場合、床面に何らかの原因で割れ目や窪みなどが発生している場合など、床面に比較的大きい凹凸が存在する場合において、床シート材2をそのまま接着剤で貼り付けると、このような凹凸が床シート材2の上に表出することがある。そのため、このような凹凸がある床面に接着剤を用いて施工を行う場合には、接着剤を塗布する前に下地である床13を平滑に補修する必要がある。床13を平滑に補修するためには、相当の人手及び時間を要する上、施工者には高い技量が求められるので、費用及び手間が掛かることとなる。これに対して、両面テープ3A~3Dを用いて床シート材2を床13上に施工することで、床シート材2への目地の表出を抑制することができる。これは、既設の床13の目地の凹み部分において、接着剤は、目地の凹みに入り込んで床シート材2と強く接着するため、床シート材2を下方へ強く引っ張るが、両面テープは、目地の凹みに入り込まず、目地の凹み部分で床シート材2との接着が弱いため、床シート材2を下方へ引っ張る力が弱いからである。よって、施工前に下地である床13を平滑に補修する必要がないので、人手及び時間を大幅に削減して工期を短縮することができる。その上、施工者に高い技量も求められないので、より広い範囲の施工者が施工を行うことが可能となる。
【0117】
なお、水掛かりが想定される浴室では、水の接触に伴う両面テープの接着力の低下が懸念されていたために、これまで床シート材2の施工に両面テープを用いることは全く想定されていなかった。これに対して、本発明者の検討の結果、床シート材2の端部20から浸入する水の接触によっては両面テープの接着力の低下は少なく、少なくとも床13の周縁に両面テープ3Aを貼り付けて床シート材2の端部20を床面に接着させることで、一定の止水効果が得られることが判明した。よって、両面テープ3A~3Dを用いて床シート材2を床13上に施工しても、床シート材2を良好に床13に固定することができる。
【0118】
その上で、本実施形態のように、浴室壁面14や浴槽壁面10Aと床シート材2の端部20との間に第1シール材(例えばシート端部部材4)を設け、便器壁面12Aと床シート材2の開口縁部22との間に第2シール材(例えば便器周り部材7)を設けることで、床シート材2の端部20や開口縁部22からの水の浸入を確実に防止することができる。よって、両面テープ3A~3Dが水に接触することを防止できるため、安定的な止水効果をより長期に渡って持続することができ、さらに、床シート材2をより強固に床13に固定することができる。
【0119】
さらに、本実施形態の浴室床の施工方法及び浴室床構造1によれば、第1シール材及び第2シール材として、シート端部部材4及び便器周り部材7を用いて床シート材2を床13上に施工することで、シート端部部材4及び便器周り部材7により、床シート材2の端部20や開口縁部22が隠される。よって、施工者の技量によって床シート材2の端部20や開口縁部22のカット精度にばらつきが生じても、カット精度の良し悪しに関わらず一様に浴室床を良好に仕上げることができる。
【0120】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないため、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0121】
例えば、上記実施形態のシート端部部材4では、下部5Bの壁部56が断面視L字状をなすことで、上部5Aの断面視L字状をなす第1係合部57と係脱可能な第2係合部を兼ねている。しかしながら、図21に示すように、下部5Bの壁部56に隣接する位置に、第2係合部として本体部5の長さ方向に延びる凹溝58を設け、凹溝58に上部5Aが有する第1係合部57を嵌め込むことで、互いに係脱可能に係合させてもよい。なお、図21のシート端部部材4においても、上記実施形態と同様、本体部5に空洞O及び空洞55を設けたり、上部5Aに軟質部分54を設けてもよい。
【0122】
また、上記実施形態のシート端部部材4では、本体部5は上面50に傾斜面50B(断面視三角形状のスロープ部53)を有しており、傾斜面50B(スロープ部53)がカバー部6Aとは反対側に向けて下っているが、傾斜面50B(スロープ部53)がカバー部6Aとは反対側に向けて上る(カバー部6A側に向けて下る)ように本体部5が形成されていてもよい。なお、本体部5は必ずしも上面50に傾斜面50B(スロープ部53)を有している必要はなく、上面50が平坦面でスロープ部53のない断面視矩形状に形成されていてもよい。
【0123】
また、上記実施形態のシート端部部材4では、支持部6Bを備えているが、必ずしも支持部6Bを備える必要はない。
【0124】
また、上記実施形態の便器周り部材7では、本体部8の底壁面80の先端部に凸部83が設けられているが、必ずしも凸部83は設ける必要はない。
【0125】
また、上記実施形態の便器周り部材7では、本体部8が上方薄肉部8B及び前方薄肉部
8Cを含んでいるが、必ずしも上方薄肉部8B及び前方薄肉部8Cを含む必要はなく、例えば図22に示すように、本体部8が肉厚移行部8Aのみを含む構成であっても構わない。なお、図22においては、本体部8の外壁面82は凸曲面とされているが、凹曲面あるいは平端面としても構わない。
【0126】
また、上記実施形態では、床13の周縁内の両面テープ3Dは、床13の縦方向又は横方向に延びるように床面に貼り付けられているが、床13の縦方向又は横方向に対して斜め方向に延びるように床面に貼り付けられていてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、接着剤を使用していないが、両面テープ3A~3Dに加えて、接着剤を床13上の両面テープ3の隙間に追加的に塗布して、床13上に床シート材2を敷設してもよく、接着剤を用いた浴室床の施工方法及び浴室床構造も本発明の範囲に入るものとする。
【符号の説明】
【0128】
2 床シート材
3A~3D 両面テープ
4 シート端部部材
7 便器周り部材
10 浴槽
10A 浴槽壁面
12 便器
12A 便器壁面
13 床
14 浴室壁面
15 排水溝
20 床シート材の端部
21 床シート材の開口
22 床シート材の開口縁部
23 床シート材の切り込み
図1
図2
図3
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図5
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図22