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特許7365479製薬用水製造システムの滅菌方法及び製薬用水製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】製薬用水製造システムの滅菌方法及び製薬用水製造システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20231012BHJP
   B01D 61/20 20060101ALI20231012BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20231012BHJP
   A61L 2/07 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
C02F1/44 C
B01D61/20
B01D65/02 500
C02F1/44 J
A61L2/07
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022162437
(22)【出願日】2022-10-07
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕充
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】水澤 利介
(72)【発明者】
【氏名】木本 洋
【審査官】松本 要
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-164328(JP,A)
【文献】特開平09-253643(JP,A)
【文献】特開平05-293469(JP,A)
【文献】特開昭61-242605(JP,A)
【文献】特開昭61-242604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/42,1/44
B01D53/22
B01D61/00-71/82
A61L2/00-2/28;11/00-12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留タンクから送られた被処理水を限外濾過膜を備えた膜濾過装置で濾過する製薬用水製造システムの滅菌方法であって、
前記貯留タンク及び前記膜濾過装置から前記被処理水を排出し、
前記貯留タンク及び前記膜濾過装置を蒸気により滅菌した後に、前記被処理水の供給源から前記貯留タンクを経由せずに前記膜濾過装置に前記被処理水を送り前記限外濾過膜に前記被処理水を接触させる、
製薬用水製造システムの滅菌方法。
【請求項2】
前記膜濾過装置に前記被処理水を送った後に前記供給源から前記貯留タンクに前記被処理水を送り前記貯留タンクに前記被処理水を貯留する、請求項1に記載の製薬用水製造システムの滅菌方法。
【請求項3】
被処理水を貯留する貯留タンクと、
限外濾過膜を備え前記貯留タンクから送られた前記被処理水を濾過する膜濾過装置と、
前記貯留タンク及び前記膜濾過装置を滅菌する蒸気を発生させる蒸気発生装置と、
前記被処理水の供給源から延在されて前記膜濾過装置に接続され前記被処理水を前記膜濾過装置に供給するための第一供給配管と、
前記被処理水を前記供給源から前記貯留タンクに供給するための第二供給配管と、
を有し、
前記膜濾過装置を前記蒸気発生装置からの蒸気により滅菌した後に、前記供給源から前記貯留タンクを経由せずに前記第一供給配管によって前記膜濾過装置に前記被処理水を送る製薬用水製造システム。
【請求項4】
前記第二供給配管が、前記第一供給配管から分岐し前記貯留タンクに接続されている請求項3に記載の製薬用水製造システム。
【請求項5】
前記貯留タンクから延在されて前記第一供給配管の途中に合流し前記膜濾過装置に前記被処理水を送る送水配管、を有する請求項3に記載の製薬用水製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、製薬用水製造システムの滅菌方法及び製薬用水製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
注射用水を含む製薬用水を製造するにあたって、限外濾過膜(UF膜)によって被処理水を濾過することで、被処理水を蒸留させずに製造することが行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-123897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
注射用水を含む製薬用水を製造するにあたって、限外濾過膜を用いる製薬用水製造システムでは、限外濾過膜を蒸気滅菌する場合がある。一般的には、蒸気滅菌は金属系の配管や蒸留器等の金属製機器に対し適用される。ところが、限外濾過膜は金属製機器と比較して温度に対する耐性が低い。したがって、従来行われてきた蒸気滅菌をそのまま適用することが可能であるか否かは不明であった。
【0005】
本願は、限外濾過膜の蒸気滅菌を限外濾過膜の劣化なく行うことが可能な製薬用水製造システムの滅菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
製薬用水製造システムを蒸気により滅菌する場合、滅菌後に限外濾過膜に被処理水が接触していない状態が継続すると、限外濾過膜が乾燥して劣化することがある。例えば、新品の限外濾過膜に交換した直後であれば、製薬用水製造システムを運転することで、限外濾過膜の乾燥は抑制される。しかしながら、製薬用水製造システムに組み込まれた限外濾過膜を蒸気滅菌する場合には、蒸気滅菌後の製薬用水製造システムにおいて、限外濾過膜に被処理水が接触していない時間が継続することがある。
【0007】
本開示の技術の発明者らは、鋭意検討した結果、限外濾過膜に蒸気が接触している際には限外濾過膜の劣化は殆ど進まないが、高温の状態で空気に接触している時間が継続すること、及び蒸気の供給停止後の放熱による急激な温度低下が生じること、によって劣化が激しくなることを見出した。特に、本来的には限外濾過膜が乾燥に至るはずのない短時間で限外濾過膜の強度低下や分離性能低下などの劣化が進む。このことから、限外濾過膜の劣化は、空気中の酸素に起因する不可逆的な劣化であるとの結論に至り、限外濾過膜の蒸気滅菌を限外濾過膜の劣化なく行うことが可能な解決手段を得た。
【0008】
第一態様は、貯留タンクから送られた被処理水を限外濾過膜を備えた膜濾過装置で濾過する製薬用水製造システムの滅菌方法であって、前記貯留タンク及び前記膜濾過装置から前記被処理水を排出し、前記貯留タンク及び前記膜濾過装置を蒸気により滅菌した後に、前記被処理水の供給源から前記貯留タンクを経由せずに前記膜濾過装置に前記被処理水を送り前記限外濾過膜に前記被処理水を接触させる。
【0009】
第一態様の製薬用水製造システムの滅菌方法では、貯留タンク及び膜濾過装置から被処理水を排出し、貯留タンク及び膜濾過装置を蒸気により滅菌した後に、被処理水の供給源から貯留タンクを経由せずに膜濾過装置に被処理水を送る。そして、限外濾過膜に被処理水を接触させる。このため、たとえば、滅菌後の貯留タンクに被処理水を貯留し、その後に貯留タンクから被処理水を膜濾過装置に送る構成と比較して、短時間で膜濾過装置に被処理水を送って限外濾過膜に被処理水を接触させることができる。また、熱交換器等の温度調整手段を用いて被処理水の温度を調整することで、被処理水の温度を調整しない構成と比較して、短時間で膜濾過装置の温度低下速度の調整をすることが可能となる。滅菌後の限外濾過膜に被処理水が接触していない時間が継続しないので、限外濾過膜が乾燥により空気中の酸素に接触する時間も継続しない。すなわち、限外濾過膜の蒸気滅菌を限外濾過膜の劣化なく行うことが可能である。
【0010】
第二態様では、第一態様において、前記膜濾過装置に前記被処理水を送った後に前記供給源から前記貯留タンクに前記被処理水を送り前記貯留タンクに前記被処理水を貯留する。
【0011】
これにより、貯留タンクにも被処理水を送り、貯留タンクに被処理水を貯留することができる。なお、貯留タンクに被処理水を送る動作の開始タイミングは、膜濾過装置に被処理水を送る動作の開始タイミングと実質的の同じであってもよい。
【0012】
第三態様は、被処理水を貯留する貯留タンクと、限外濾過膜を備え前記貯留タンクから送られた前記被処理水を濾過する膜濾過装置と、前記貯留タンク及び前記膜濾過装置を滅菌する蒸気を発生させる蒸気発生装置と、前記被処理水の供給源から前記膜濾過装置に接続され前記被処理水を前記膜濾過装置に供給するための第一供給配管と、前記被処理水を前記供給源から前記貯留タンクに供給するための第二供給配管と、を有する製薬用水製造システムである。
【0013】
第三態様の製薬用水製造システムは、第一供給配管を有している。第一供給配管は、被処理水の供給源から延在されて膜濾過装置に接続されており、被処理水を供給源から貯留タンクを経由せずに膜濾過装置に供給することができる。したがって、貯留タンク及び膜濾過装置を蒸気により滅菌した後に、被処理水の供給源から第一供給配管を通じて膜濾過装置に被処理水を送ることができる。このため、第一供給配管がなく、たとえば貯留タンクに被処理水を貯留した後にこの貯留タンクの被処理水を膜濾過装置に送る構成と比較して、短時間で膜濾過装置に被処理水を送って限外濾過膜に被処理水を接触させることができる。滅菌後の限外濾過膜に被処理水が接触していない時間が継続しないので、限外濾過膜が乾燥により空気中の酸素に接触する時間も継続しない。すなわち、限外濾過膜の蒸気滅菌を限外濾過膜の劣化なく行うことが可能である。
【0014】
また、第三態様の製薬用水製造システムは、第二供給配管を有している。たとえば通常運転時等には、第二供給配管を通じて被処理水を貯留タンクに供給することができる。
【0015】
第四態様では、第三態様において、前記第二供給配管が、前記第一供給配管から分岐し前記貯留タンクに接続されている。
【0016】
これにより、供給源から貯留タンクまで被処理水を供給する第二供給配管の一部が第一供給配管と共通化されるので、第一供給配管と第二供給配管とを別々に設けた場合と比較して、構成を簡素化できる。
【0017】
第五態様では、第三又は第四態様において、前記貯留タンクから前記第一供給配管の途中に接続され前記膜濾過装置に前記被処理水を送る送水配管、を有する。
【0018】
送水配管を通じて、貯留タンクから膜濾過装置へ被処理水を送ることができる。送水配管は、第一共通配管の途中に接続されているので、送水配管の一部、すなわち接続部分から膜濾過装置側は、第一供給配管と共通化される。第一供給配管と送水配管とを別々に設けた場合と比較して、構成を簡素化できる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の技術では、限外濾過膜の蒸気滅菌を限外濾過膜の劣化なく行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は第一実施形態の製薬用水製造システムの構成図である。
図2図2は第一実施形態の製薬用水製造システムの制御装置を成すコンピュータを示す構成図である。
図3図3は第一実施形態の製薬用水製造システムにおける滅菌処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して第一実施形態に係る製薬用水製造システム12について説明する。この製薬用水製造システム12は、注射用水を含む製薬用水を製造するためのシステムであり、本開示の技術の製薬用水製造システムの一例である。
【0022】
第一実施形態の製薬用水製造システム12は、蒸気発生装置14、貯留タンク16、膜濾過装置18、製薬用水タンク20及びユースポイント22を有している。製薬用水製造システム12に導入され、製薬用水製造システム12によって処理されてユースポイント22まで流れる水は、本開示の技術の「被処理水」である。
【0023】
蒸気発生装置14は、本開示の技術では過熱水蒸気を発生させる装置である。過熱水蒸気は、沸点を超える温度まで加熱された水蒸気である。この過熱水蒸気を貯留タンク16及び膜濾過装置18に送ることで、貯留タンク16及び膜濾過装置18を含む部分を滅菌することができる。ただし、貯留タンク16及び膜濾過装置18を滅菌することが可能であれば、蒸気としては過熱水蒸気に限定されない。
【0024】
膜濾過装置18には、前処理装置82によって前処理された前処理水が第一供給配管30を通じて供給される。また、貯留タンク16には、同じく前処理装置82によって前処理された前処理水が第一供給配管30及び後述する第二供給配管76を通じて供給される。前処理装置82は、本開示の技術における被処理水の供給源の一例である。
【0025】
前処理装置82では、市水、井水、工業用水、常水等に対し、たとえば、濾過装置による濾過(逆浸透装置による濾過を含む)、イオン交換装置によるイオン交換等の前処理がなされる。前処理水は、製薬用水製造システム12によって処理される水であり、被処理水に含まれる。
【0026】
第一供給配管30は、前処理装置82から延在されて膜濾過装置18に接続されている。第一供給配管30には開閉弁68が設けられている。この開閉弁68が開弁することで、前処理水を前処理装置82から被処理水として、貯留タンク16を経由することなく膜濾過装置18内に導入することができる。
【0027】
第一供給配管30からは、分岐配管80が分岐している。分岐配管80の下流側は、貯留タンク16に接続されている。分岐配管80には開閉弁78が設けられている。この開閉弁78を開弁することで、第一供給配管30を流れる被処理水の一部又は全部を、貯留タンク16に送ることができる。図1に示す例では、第一供給配管30からの分岐配管80の分岐部B1は、開閉弁68よりも上流側で、且つ開閉弁68に近い位置に設定されている。第一供給配管30において分岐配管80の分岐部B1よりも上流側(前処理装置82側)の部分は、貯留タンク16に送る被処理水が流れる配管でもあり、第二供給配管76を兼ねる部分である。前処理装置82から前処理水を貯留タンク16に供給する第二供給配管76の一部が第一供給配管30と共通化されている。これにより、第二供給配管76の全体を第一供給配管30と別々に設けた場合と比較して、構造の簡素化が図られている。
【0028】
貯留タンク16には、圧力センサ16P、温度センサ16T、水位センサ16L及び導電率センサ16Cが設けられている。圧力センサ16Pは貯留タンク16の内部の圧力を検出する。温度センサ16Tは、貯留タンク16の内部の温度を検出する。水位センサ16Lは、貯留タンク16の内部の水位を検出する。導電率センサ16Cは、貯留タンク16に貯留された被処理水の導電率を検出する。これらのセンサによって検出された各種データは、図2に示すコンピュータ102に送信される。
【0029】
貯留タンク16と膜濾過装置18とは第一送水配管32で接続されている。本開示の技術では、貯留タンク16の水面が膜濾過装置18の内部の限外濾過膜18Mの上端よりも鉛直方向で高くなるように、貯留タンク16の鉛直方向の位置が設定されている。第一送水配管32には第一ポンプ24が設けられている。第一ポンプ24を駆動することで、被処理水を、第一送水配管32を通して貯留タンク16から膜濾過装置18へ送ることができる。第一送水配管32は、第一供給配管30に合流しており、合流部よりも下流側は、第一供給配管30が第一送水配管32を兼ねている。第一送水配管32は本開示の技術の送水配管の一例である。貯留タンク16から被処理水を膜濾過装置18に送る第一送水配管32の一部、すなわち合流部よりも膜濾過装置18側が第一供給配管30と共通化されている。これにより、第一送水配管32の全体を第一供給配管30と別々に設けた場合と比較して、構造の簡素化が図られている。
【0030】
本開示の技術では、第一送水配管32は、貯留タンク16から延在されて第一供給配管30の途中の位置で第一供給配管30に合流している。実質的に、合流部C1よりも下流側(膜濾過装置18側)は、第一送水配管32と第一供給配管30とが共通化されている。図1に示す例では、第一供給配管30と第一送水配管32との合流部C1は、後述する開閉弁38よりも下流側(膜濾過装置18側)である。
【0031】
本開示の技術では、膜濾過装置18は、疎水性の限外濾過膜18Mを有している。膜濾過装置18の内部は限外濾過膜18Mによって区画されており、区画された一方の領域に流される被処理水を限外濾過膜18Mによって濾過する。そして、限外濾過膜18Mを通過しなかった被処理水が濃縮水として外部に排出される。限外濾過膜18Mを通過した被処理水は製薬用水タンク20に送られる。限外濾過膜18Mとしては、たとえば、分画分子量6000の中空糸膜等を用いることができるが、これに限定されない。
【0032】
膜濾過装置18には、圧力センサ18P、温度センサ18T及び導電率センサ18Cが設けられている。圧力センサ18Pは膜濾過装置18の内部の圧力を検出する。温度センサ18Tは、膜濾過装置18の内部の温度を検出する。導電率センサ18Cは、膜濾過装置18内の被処理水の導電率を検出する。これらのセンサによって検出されたデータは、図2に示すコンピュータ102に送信される。
【0033】
第一送水配管32では、第一ポンプ24の上流側及び下流側から排出配管34が分岐している。排出配管34のそれぞれには開閉弁36が設けられている。開閉弁36の少なくとも一方を開弁することで、第一送水配管32から被処理水を製薬用水製造システム12の外部に排出することができる。開閉弁36の両方を閉弁することで、被処理水を排出することなく貯留タンク16から膜濾過装置18へ送ることができる。
【0034】
第一送水配管32には開閉弁38が設けられている。本開示の技術では、貯留タンク16は膜濾過装置18よりも鉛直方向で高い位置に設けられている。したがって、貯留タンク16内の水位が膜濾過装置18内に水位よりも高ければ、第一ポンプ24を駆動しなくても、開閉弁38を開弁することで、重力により貯留タンク16から膜濾過装置18へ被処理水が流れる。開閉弁38を閉弁することで、貯留タンク16から膜濾過装置18への被処理水の流れを遮断できる。
【0035】
膜濾過装置18と製薬用水タンク20とは、第二送水配管46で接続されている。第二送水配管46からは排出配管48が分岐している。排出配管48には開閉弁50が設けられている。開閉弁50を開弁することで、第二送水配管46から被処理水を製薬用水製造システム12の外部に排出することができる。開閉弁50を閉弁することで、被処理水を排出することなく、膜濾過装置18から製薬用水タンク20に送ることが可能となる。なお、排出配管48に代えて、あるいは併用して、貯留タンクへの還流配管52において、貯留タンク16付近に排出配管を設けた構成としてもよい。
【0036】
製薬用水タンク20には、圧力センサ20P、温度センサ20T及び水位センサ20Lが設けられている。圧力センサ20Pは製薬用水タンク20の内部の圧力を検出する。温度センサ20Tは、製薬用水タンク20内の温度を検出する。水位センサ20Lは、製薬用水タンク20内の水位を検出する。これらのセンサによって検出されたデータは、図2に示すコンピュータ102に送信される。
【0037】
第二送水配管46において、排出配管48の分岐部分よりも下流側からは、還流配管52が分岐している。還流配管52の先端は貯留タンク16に接続されている。
【0038】
第二送水配管46において、還流配管52の分岐部分よりも下流側には開閉弁54が設けられている。開閉弁54を開弁することで、被処理水を膜濾過装置18から製薬用水タンク20に送ることができる。開閉弁54を閉弁することで、膜濾過装置18から製薬用水タンク20への被処理水の流れを遮断できる。なお、製薬用水タンク20に送られる被処理水は、膜濾過装置18によって濾過されており、製薬用水として利用可能な程度に異物が除去されている。
【0039】
還流配管52には開閉弁56が設けられている。開閉弁56を開弁することで、製薬用水を膜濾過装置18から貯留タンク16に戻す流路が構成される。開閉弁56を閉弁することで、膜濾過装置18から貯留タンク16への製薬用水の流れ(戻り)を遮断することができる。
【0040】
本開示の技術では、製薬用水タンク20には、製造された製薬用水が貯留される。この製薬用水が加熱されていない場合、製薬用水タンク20には、精製水、又はコールドWFI(Water fot Injention:注射用水)が貯留される。これに対し、貯留タンク16から製薬用水タンク20に至る配管、たとえば第一送水配管32又は第二送水配管46に設けられた不図示の熱交換器により被処理水を加熱した場合、製薬用水タンク20には、たとえば60℃以上85℃以下の温度範囲に加熱された注射用水が貯留される。
【0041】
製薬用水タンク20には、循環配管60が設けられている。循環配管60には、第二ポンプ26及び熱交換器62が設けられている。第二ポンプ26を駆動することで、製薬用水タンク20に貯留された製薬用水を、一旦製薬用水タンク20の外部に排出し、循環配管60によって、製薬用水タンク20に戻す(循環させる)ことができる。
【0042】
熱交換器62には図示しない熱源から熱媒が供給されるようになっている。熱交換器62は、この熱媒と、循環配管60を流れる製薬用水との間で熱交換を行い、製薬用水の温度を所定以上に昇温または維持する。このように製薬用水の温度を所定以上とすることで、製薬用水は注射用水として利用可能な状態に維持される。
【0043】
循環配管60において、熱交換器62の下流側からは供給配管64が分岐している。供給配管64の先端はユースポイント22に接続されている。供給配管64には、開閉弁66が設けられている。開閉弁66を開弁することで、循環配管60を流れる製薬用水を、供給配管64を通じてユースポイント22に送ることができる。
【0044】
蒸気発生装置14には、蒸気供給配管72の一端が接続されている。蒸気供給配管72は3本に分岐しており、分岐した配管の先端(他端)はそれぞれ貯留タンク16、膜濾過装置18及び製薬用水タンク20に接続されている。蒸気供給配管72には図示しない流路切換弁が設けられており、蒸気発生装置14で発生された蒸気を、貯留タンク16、膜濾過装置18及び製薬用水タンク20のうちの任意の1つ又は複数に供給することができる。
【0045】
さらに、製薬用水製造システム12は、圧縮気体配管74を有している。圧縮気体配管74の一端はコンプレッサー84に接続されている。圧縮気体配管74は3本に分岐しており、分岐した配管の先端(他端)はそれぞれ貯留タンク16、膜濾過装置18及び製薬用水タンク20に接続されている。圧縮気体配管74には図示しない流路切換弁が設けられており、コンプレッサー84で発生された圧縮気体を、貯留タンク16、膜濾過装置18及び製薬用水タンク20のうちの任意の1つ又は複数に供給することができる。圧縮気体としては、たとえば圧縮空気であってもよく、また、圧縮された窒素ガスであってもよい。これらの圧縮気体からは、製薬用水製造システム12に供給されても、製造される製薬用水の品質に問題がない程度に、不純物が除去されている。
【0046】
貯留タンク16には、排気配管28の一端が接続されている。排気配管28の他端は大気に開放されている。排気配管28には、開閉弁40が設けられている。開閉弁40は、貯留タンク16側の圧力が、大気側の圧力よりも所定以上高くなった場合に開放される、いわゆるフリーザー弁、例えば孔径0.2μmの疎水性フィルター等である。これにより、貯留タンク16内の圧力は所定の圧力以下に保たれる。
【0047】
なお、図面において、蒸気発生装置14で発生された蒸気が流れる配管を破線で示している。また、コンプレッサー84で発生された圧縮気体が流れる配管を一点鎖線で示している。さらに、被処理水が流れる配管を実線で示している。ただし、処理水が流れる配管に、圧縮空気を流す場合もある。
【0048】
図2には、第一実施形態において、製薬用水製造システム12の滅菌処理を制御するコンピュータ102の内部構成が示されている。
【0049】
コンピュータ102は、プロセッサ104、メモリ106、ストレージ108、表示部110、入力部112、受付部114及び通信部116を有している。
【0050】
ストレージ108には、コンピュータ102を制御装置として機能させるための制御プログラムが記憶されている。この制御プログラムがメモリ106上で展開され、さらにプロセッサ104において実行されることにより、コンピュータ102は制御装置として機能する。本願の開示の技術では、制御プログラムは、製薬用水製造システム12に対し滅菌処理を行う滅菌プログラム70を含んでいる。
【0051】
表示部110は、たとえばディスプレイ及び表示ランプ等である。表示部110は、コンピュータ102の状態や、このコンピュータ102に接続された各種機器の状態等を表示する。
【0052】
入力部112は、たとえばキーボード、マウス及びスイッチ等である、入力部112は、作業者からコンピュータ102に対する各種の入力を受け付ける。
【0053】
受付部114は、後述するように、製薬用水製造システム12の立ち上げ時に、本願の開示の技術の立ち上げ方法を実行する指示を受け付ける。実質的に、入力部112の一部が受付部114の機能を有するように構成できる。表示部110をタッチパネルとして構成し、入力部112及び受付部114を兼ねるようにしてもよい。
【0054】
通信部116は、たとえば、圧力センサ16P、温度センサ16T、水位センサ16L、圧力センサ18P、温度センサ18T、圧力センサ20P、温度センサ20T及び水位センサ20Lと通信し、これらのセンサとデータの送受信を行う。また、通信部116は、第一ポンプ24及び第二ポンプ26と通信し、これらのポンプを制御する信号の送受信を行う。さらに、図2では図示を省略しているが、製薬用水製造システム12に設けられた各種の弁と信号の送受信を行い、これらの弁の開閉を制御する。
【0055】
第一実施形態の製薬用水製造システム12では、製薬用水製造工程が実行されることで、製薬用水が製造される。製薬用水を製造する場合は、まず、前処理装置82で製造された前処理水が貯留タンク16に被処理水として供給される。貯留タンク16に貯留された被処理水は、開閉弁38が開弁された状態で第一ポンプ24が駆動されることで、第一送水配管32を通って膜濾過装置18に供給される。この被処理水は、膜濾過装置18で処理(濾過)されることで、製薬用水となる。製薬用水の一部は、開閉弁56が開弁された状態で還流配管52によって貯留タンク16に戻され、他は開閉弁54が開弁された状態で、製薬用水タンク20に送られる。
【0056】
次に、第一実施形態の製薬用水製造システム12の滅菌方法、及び作用について説明する。
【0057】
図3には、第一実施形態の製薬用水製造システム12の滅菌方法を行う場合のフローチャートの一例が示されている。この滅菌方法では、ストレージ108に記憶された滅菌プログラム70がメモリ106上で展開され、プロセッサ104において実行される。滅菌処理は、貯留タンク16と膜濾過装置18とを含む系を蒸気により滅菌することを含む。
【0058】
[貯留タンク内及び膜濾過装置内の水抜き工程]
第一実施形態の製薬用水製造システム12の滅菌処理を行う場合、コンピュータ102は、ステップS102において、貯留タンク16及び膜濾過装置18の水抜きを行う。たとえば、貯留タンク16の水抜きは、開閉弁36を開弁することで、貯留タンク16内の被処理水が重力により、排出配管34を通じて排出される。また、膜濾過装置18を水抜きする場合は、たとえば、開閉弁50を開弁することで、膜濾過装置18内の被処理水が重力により、排出配管48を通じて排出される。
【0059】
貯留タンク16と膜濾過装置18とで水抜き開始の時間的な前後は問わない。ただし、貯留タンク16の方が膜濾過装置18よりも被処理水の容量が多い場合は、貯留タンク16から先に水抜きを開始すると、貯留タンク16と膜濾過装置18とのトータルでの水抜き時間を短くできる。
【0060】
[貯留タンク内及び膜濾過装置内の蒸気滅菌工程]
次に、コンピュータ102は、ステップS104において、貯留タンク16内及び膜濾過装置18内を蒸気滅菌する。たとえば、貯留タンク16内を蒸気滅菌する場合は、開閉弁36を開弁した状態でコンプレッサー84から圧縮空気を貯留タンク16に供給する。これにより、貯留タンク16に残存している被処理水が排出配管34から排出される。その後、圧縮気体配管74の図示しない開閉弁を閉じることで、コンプレッサー84からの圧縮空気の供給を停止する。さらに、蒸気発生装置14から過熱水蒸気を貯留タンク16に供給することで、貯留タンク16内が滅菌される。実際には、貯留タンク16に接続されている第一送水配管32において、貯留タンク16に通じている部分も蒸気により滅菌される。
【0061】
膜濾過装置18内を蒸気滅菌する場合は、開閉弁50を開弁した状態でコンプレッサー84から、圧縮空気を膜濾過装置18に供給する。これにより、膜濾過装置18内に残存している被処理水が排出配管48から排出される。その後、圧縮気体配管74の図示しない開閉弁を閉じることで、コンプレッサー84からの圧縮空気の供給を停止する。さらに、蒸気発生装置14から過熱水蒸気を膜濾過装置18に供給することで、膜濾過装置18内が滅菌される。実際には、膜濾過装置18に接続されている第一送水配管32及び第二送水配管46において、膜濾過装置18に通じている部分も蒸気により滅菌される。なお、排出配管48に代えて、あるいは併用して、還流配管52における貯留タンク16付近に排出配管を設ける構成とした場合には、膜濾過装置18の蒸気滅菌と同時に、この排出配管も蒸気滅菌可能である。この場合、貯留タンク16、膜ろ過装置18、還流配管52で構成される循環系全体を滅菌できる。
【0062】
また、本開示の技術では、貯留タンク16及び膜濾過装置18を同時に蒸気滅菌することも可能である。この場合、例えば、蒸気発生装置14から過熱水蒸気を貯留タンク16及び膜濾過装置18に同時に供給することで行われる。
【0063】
貯留タンク16と膜濾過装置18との蒸気滅菌の前後は問わないが、本実施形態では、先に貯留タンク16に蒸気を導入し、貯留タンク16内の温度が上昇した後に、膜濾過装置18に蒸気を徐々に導入することで、緩やかに膜濾過装置18が昇温されるようにしている。
【0064】
[貯留タンク内及び膜濾過装置内の冷却・置換工程]
貯留タンク16内及び膜濾過装置18内の滅菌が終了した後、コンピュータ102は、ステップS106において、貯留タンク16内及び膜濾過装置18内を冷却しつつ、気体の置換を行う。たとえば、貯留タンク16内を冷却・置換する場合は、蒸気発生装置14から貯留タンク16への蒸気の供給を停止する。そして、コンプレッサー84から、圧縮気体配管74を通じて貯留タンク16に圧縮気体を供給する。圧縮気体によって貯留タンク16内が冷却されると共に、貯留タンク16内の気体が蒸気から圧縮気体に置換される。貯留タンク16内の蒸気は排出配管34から排出される。貯留タンク16内の冷却が終了すると、開閉弁36が閉弁される。
【0065】
膜濾過装置18内を冷却・置換する場合は、蒸気発生装置14から膜濾過装置18への蒸気の供給を停止する。そして、コンプレッサー84から、圧縮気体配管74を通じて膜濾過装置18内に圧縮気体を供給する。圧縮気体によって膜濾過装置18内が冷却されると共に、膜濾過装置18内の気体が蒸気から圧縮気体に置換される。膜濾過装置18内の蒸気は排出配管48から排出される。なお、排出配管48に代えて、あるいは併用して、還流配管52における貯留タンク16付近に排出配管を設ける構成とした場合には、膜濾過装置18の蒸気滅菌と同時に、この排出配管も蒸気滅菌可能である。膜濾過装置18内の冷却が終了すると、開閉弁50が閉弁される。
【0066】
貯留タンク16と膜濾過装置18とで、冷却及び気体の置換を行う処理の前後は問わない。たとえば、貯留タンク16と膜濾過装置18に対し同時に、または時間的に重なるように、冷却及び気体の置換を行うことが可能である。
【0067】
[膜濾過装置内の水張り工程]
次に、コンピュータ102は、ステップS108において、膜濾過装置18内への水張りを行う。具体的には、開閉弁68を開弁する。これにより、前処理装置82から前処理水が、貯留タンク16を経由することなく膜濾過装置18内に送られる。
【0068】
なお、膜濾過装置18内への水張りは、膜濾過装置18内の温度が100℃以下になった時点、好ましくは65℃以上85℃以下の所定の温度になった時点で開始すると、膜濾過装置18内の限外濾過膜18Mが圧縮気体にさらされている時間を短くできる。この場合、前処理装置82から送られる前処理水の温度を、貯留タンク16内の被処理水の温度と概ね同じ(±10℃の範囲)になるように、前処理水装置82において前処理水を加熱しておくか、又は前処理装置82と膜濾過装置18との間の第一供給配管30に加熱装置を設けて加熱することで、加熱した被処理水を膜濾過装置18内に供給することが可能である。
【0069】
さらに、この方法を用いた場合には、限外濾過膜18Mが圧縮気体にさらされている時間を短くできると共に、膜濾過装置18内の水張り後には限外濾過膜18Mの急激な温度低下を抑制できるため、急激な温度低下による限外濾過膜18Mの劣化の抑制も期待できる。
【0070】
[貯留タンク内の水張り工程]
また、コンピュータ102は、ステップS110において、貯留タンク16内への水張りを行う。具体的には、開閉弁78を開弁する。これにより、前処理装置82から前処理水が貯留タンク16内に送られる。
【0071】
なお、貯留タンク16内への水張りは、膜濾過装置18内への水張りが終了した後に行ってもよいが、膜濾過装置18内への水張りと並行して行ってもよい。すなわち、貯留タンク16内へ前処理水を送る動作の開始タイミングは、膜濾過装置18に前処理水を送る動作の開始タイミングと実質的に同時であってもよい。要するに、膜濾過装置18内への水張りによって、限外濾過膜18Mに短時間で被処理水を接触させることができればよい。
【0072】
貯留タンク16内への水張りを、膜濾過装置18内への水張りが終了した後に行う場合は、まず、開閉弁68を開弁すると共に、開閉弁78を閉弁して、膜濾過装置18内のみに水張りを行う。そして、膜濾過装置18内への水張りが終了した段階で、開閉弁68を閉弁すると共に開閉弁78を開弁する、これにより、貯留タンク16内のみへ水張りが行わるように、前処理水の導入先が切り替えられる。
【0073】
これに対し、貯留タンク16内への水張りを膜濾過装置18内への水張りと並行して行う場合は、開閉弁68、78の両方を開弁する。そして、貯留タンク16内と膜濾過装置18内のうち、水張りが終了した側に対応する開閉弁68、78を閉弁する。これにより、水張りが終了していない側では、引き続き水張りが行われる。一般的には、膜濾過装置18よりも貯留タンク16の方が大容量であるので、先に開閉弁68を閉弁する。特に、前処理装置82から供給される前処理水の供給量が十分である場合は、貯留タンク16内への水張りと膜濾過装置18内への水張りとを並行して行っても、短時間で限外濾過膜18Mに被処理水を接触させることが可能である。この場合、第一供給配管30において開閉弁68が設けられた部分から第一送水配管32(合流部C1よりも下流側の部分)を経由して、及び分岐配管80を経由して、膜濾過装置18と貯留タンク16の両方に被処理水を供給することが可能である。また、貯留タンク16への被処理水の貯留は、膜濾過装置18及び還流配管52を経由して行うことが可能である。この場合、膜濾過装置18内の限外濾過膜18Mへの被処理水の接触が優先的に行われるため、限外濾過膜18Mに被処理水が接触しない状態を避けることができ、膜の劣化を最小限にとどめられる。
【0074】
以上により、製薬用水製造システム12の滅菌が終了する。
【0075】
なお、貯留タンク16内及び膜濾過装置18内の被処理水の水質が所望の水質になっている場合は、開閉弁38及び開閉弁54を開弁し、開閉弁36、50、68を閉弁する。そして、第一ポンプ24を駆動することにより、貯留タンク16から膜濾過装置18を経て製薬用水タンク20まで、第一送水配管32及び第二送水配管46を通じて被処理水を送ることができる。
【0076】
また、この状態で、開閉弁54を閉弁し開閉弁56を開弁すれば、貯留タンク16から膜濾過装置18を経て貯留タンク16まで、第一送水配管32、第二送水配管46の一部、及び還流配管52を通じて被処理液を循環させることができる。
【0077】
開閉弁66を閉弁した状態で第二ポンプ26を駆動することで、製薬用水タンク20に貯留された製薬用水を、製薬用水タンク20から循環配管60を通り、製薬用水タンク20に循環させることが可能である。また、この状態で開閉弁66を開弁することで、製薬用水タンク20からユースポイント22へ、循環配管60の一部及び供給配管64を通じて製薬用水を送ることが可能である。循環配管60には熱交換器62が設けられており、熱交換器62によって製薬用水を所定の温度に昇温することで、製薬用水を注射用水として使用することも可能である。
【0078】
以上説明したように、第一実施形態の製薬用水製造システムでは、前処理装置82から前処理水を膜濾過装置18内に送るための第一供給配管30を有している。そして、第一実施形態の製薬用水製造システムの滅菌方法では、蒸気により膜濾過装置18の滅菌を行った後に、被処理水としての前処理水を前処理装置82から膜濾過装置18に導入する。
【0079】
ここで、比較例として、前処理装置82から前処理水を膜濾過装置18内に送るための第一供給配管30を有していない構成の製薬用水製造システムを想定する。比較例の構成では、膜濾過装置18の蒸気滅菌を行った後に、膜濾過装置18の限外濾過膜18Mに被処理水を接触させるためには、たとえば、貯留タンク16から被処理水を膜濾過装置18に送る方法が考えられる。比較例の構成においてこの方法を採る場合、貯留タンク16に被処理水が貯留されていなければ、貯留タンク16に被処理水を貯留した後に、この貯留された被処理水を膜濾過装置18に導入するので、被処理水が膜濾過装置18の限外濾過膜18Mに接触するまでの時間が長くなる。しかし、第一実施形態では、蒸気により貯留タンク16の滅菌を行った後に、前処理装置82から被処理水を膜濾過装置18に直接的に導入するので、限外濾過膜18Mに被処理水が接触していない時間が継続しない。このため、従来から金属製機器に対して行われてきた蒸気滅菌を限外濾過膜18Mに適用した場合でも、限外濾過膜18Mに被処理水が接触しない時間が継続することに起因する限外濾過膜18Mの劣化を抑制できる。すなわち、本開示の技術によれば、限外濾過膜18Mの蒸気滅菌を、限外濾過膜18Mの劣化なく行うことが可能な製薬用水製造システム12の滅菌方法が得られる。特に、本開示の技術における限外濾過膜18Mとして用いられる中空糸膜は、糸状であるために劣化しやすいが、このような中空糸膜を用いた限外濾過膜18Mであっても、蒸気滅菌を劣化なく行うことが可能である。
【0080】
上記では、貯留タンク16内を蒸気滅菌している状態で、貯留タンク16に接続されている各種配管についても、貯留タンク16と通じている部分には蒸気が流れるので、蒸気滅菌できる。同様に、膜濾過装置18内を蒸気滅菌している状態で、膜濾過装置18に接続されている各種配管についても、膜濾過装置18と通じている部分を蒸気滅菌できる。たとえば、膜濾過装置18内を蒸気滅菌している状態で、開閉弁56を開弁すれば、蒸気が第二送水配管46の一部を経て還流配管52を流れる。すなわち、膜濾過装置18内の蒸気滅菌に併せて、第二送水配管46の一部及び還流配管52も蒸気滅菌できる。
【0081】
上記では、本開示の技術における滅菌方法を適用する製薬用水製造システムとして、製薬用水製造システムを例示したが、製薬用水製造システムは、製薬用水製造システムに限定されない。たとえば、各種機器の洗浄水を製造する洗浄水製造システム、食品用の原材料水を製造する食品用水製造システム、化学実験・分析用の化学用水製造システム等に適用してもよい。
【0082】
本開示の技術において、第一供給配管30に、熱交換器等の温度調整手段を設けてもよい。これにより、膜濾過装置18内に送られる被処理水の温度を所望の温度に調整できる。たとえば、膜濾過装置18内に送る被処理水の温度調整をしない構成と比較して、第一供給配管30に温度調整手段を設けた構成では、短時間で膜濾過装置18内の温度低下速度の調整をすることが可能である。
【0083】
上記では、本開示の技術における滅菌方法を適用する製薬用水製造システムとして、製薬用水製造システムを例示したが、製薬用水製造システムは、製薬用水製造システムに限定されない。たとえば、各種機器の洗浄水を製造する洗浄水製造システム、食品用の原材料水を製造する食品用水製造システム、化学実験・分析用の化学用水製造システム等に適用してもよい。
【実施例
【0084】
本開示の技術を実施例により、比較例と比較しつつ具体的に説明する。
【0085】
実施例及び比較例では、第一実施形態の製薬用水製造システムを用い、以下の表1に示す条件で貯留タンク16及び膜濾過装置18の蒸気滅菌を行っている。そして、これらの場合の、限外濾過膜18Mの劣化の程度を評価している。評価にあたっては、JIS-L1013に規定される化学繊維フィラメント糸試験方法の引張伸度保持率を用いた。また、蒸気温度は、排出配管48にて測定した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1の引張伸度保持率は、限外濾過膜18Mの劣化の程度を示す指標の一つであり、たとえば限外濾過膜18Mが劣化していない状態では、この数値は100%である。
【0088】
この表1に示すように、比較例では、蒸気滅菌回数が10回に達した段階で、限外濾過膜18Mの引張伸度保持率は約70%減少している。これは、比較例の方法では、貯留タンク16内に被処理水を所定量まで貯留する時間を約30分要するため、その間に、限外濾過膜18Mが乾燥し、透水性が低下すること、及び伸長伸度が低下し、限外濾過膜18Mの強度が低下するためであると考えられる。これに対し、実施例では、蒸気滅菌回数が50回に達した段階であっても、限外濾過膜18Mの引張伸度保持率に変化はなく、限外濾過膜18Mの劣化が抑制されていることが分かる。
【符号の説明】
【0089】
12 製薬用水製造システム(製薬用水製造システムの一例)
14 蒸気発生装置
16 貯留タンク
16C 導電率センサ
16L 水位センサ
16P 圧力センサ
16T 温度センサ
18 膜濾過装置
18C 導電率センサ
18M 限外濾過膜
18P 圧力センサ
18T 温度センサ
20 製薬用水タンク
20L 水位センサ
20P 圧力センサ
20T 温度センサ
22 ユースポイント
24 第一ポンプ
26 第二ポンプ
30 第一供給配管
32 第一送水配管(送水配管の一例)
34 排出配管
36 開閉弁
38 開閉弁
40 開閉弁
46 第二送水配管
48 排出配管
50 開閉弁
52 還流配管
54 開閉弁
56 開閉弁
60 循環配管
62 熱交換器
64 供給配管
66 開閉弁
68 開閉弁
70 滅菌プログラム
72 蒸気供給配管
74 圧縮気体配管
74 蒸気供給配管
76 第二供給配管
78 開閉弁
80 分岐配管
82 前処理装置
84 コンプレッサー
102 コンピュータ
【要約】
【課題】限外濾過膜の蒸気滅菌を限外濾過膜の劣化なく行う。
【解決手段】貯留タンク16から送られた被処理水を限外濾過膜18Mを備えた膜濾過装置18で濾過する製薬用水製造システム12の滅菌方法であって、貯留タンク16及び膜濾過装置18から被処理水を排出し、貯留タンク16及び膜濾過装置18を蒸気により滅菌した後に、被処理水の供給源から膜濾過装置18に被処理水を送り限外濾過膜18Mに被処理水を接触させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3