(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
(21)【出願番号】P 2022503199
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2021003582
(87)【国際公開番号】W WO2021171920
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2020031925
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】永吉 麻衣子
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-010530(JP,A)
【文献】特開2005-033070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体と、
前記積層体の表面に位置し、前記内部電極層に電気的に接続された外部電極と、を有するコンデンサであって、
前記誘電体層は、チタン酸バリウムと添加物元素とを含む複数の結晶粒子で構成されており、
前記複数の結晶粒子は、第1結晶粒子と、前記第1結晶粒子より粒子径が大きい第2結晶粒子とを含み、
前記第1結晶粒子の粒子径をd1とし、前記第2結晶粒子の粒子径をd2としたとき、0.13μm≦d1<0.30μmであり、0.30μm≦d2<0.50μmであり、
前記第2結晶粒子の添加物元素含有量が、前記第1結晶粒子の添加物元素含有量より多
く、
前記誘電体層の断面における、単位面積あたりの前記第2結晶粒子が占める面積の割合が、4%以上18%以下であるコンデンサ。
【請求項2】
前記誘電体層の断面における、前記第2結晶粒子同士が連なる個数が2個以下である、請求項
1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記第2結晶粒子は、チタン酸バリウム結晶で構成されるコア部と、前記コア部を取り囲み、チタン酸バリウム結晶に添加物元素が拡散したシェル部と、を含むコアシェル構造を有する、請求項1
または2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記第1結晶粒子の算術平均粒子径をD1とし、前記第2結晶粒子の算術平均粒子径をD2としたとき、2D1≦D2<3D1である、請求項1~
3のいずれか1つに記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記添加物元素が、ジスプロシウム、マグネシウムおよびカルシウムから選ばれる1種以上である、請求項1~
4のいずれか1つに記載のコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層型のコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一例は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示のコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体と、
前記積層体の表面に位置し、前記内部電極層に電気的に接続された外部電極と、を有するコンデンサであって、
前記誘電体層は、チタン酸バリウムと添加物元素とを含む複数の結晶粒子で構成されており、
前記複数の結晶粒子は、第1結晶粒子と、前記第1結晶粒子より粒子径が大きい第2結晶粒子とを含み、
前記第1結晶粒子の粒子径をd1とし、前記第2結晶粒子の粒子径をd2としたとき、0.13μm≦d1<0.30μmであり、0.30μm≦d2<0.50μmであり、
前記第2結晶粒子の添加物元素含有量が、前記第1結晶粒子の添加物元素含有量より多く、
前記誘電体層の断面における、単位面積あたりの前記第2結晶粒子が占める面積の割合が、4%以上18%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
電子機器に搭載される電子部品の1つである本開示の基礎となる構成のコンデンサには、高い静電容量が求められるとともに、種々の特性向上が望まれている。
【0008】
例えば、特許文献1記載の積層セラミックコンデンサは、平均粒径が異なる2種類の粒子で構成された誘電体層であって、それぞれの平均粒径が特定の関係を満足することで、高い静電容量と、耐電圧性およびDCバイアス特性を向上させている。
【0009】
以下、本開示のコンデンサについて、図面を基に説明する。なお、本開示のコンデンサは、以下に記述する特定の実施形態に限定されるものではない。本開示のコンデンサは、添付の特許請求の範囲によって定義される総括的な概念の精神または範囲に沿ったものであれば、様々な態様を含むものとなる。
【0010】
図1は、コンデンサの外観斜視図である。
図2は、
図1の切断面線における断面図である。本開示の実施形態の一例として示すコンデンサ100は、積層体1と、その表面に位置する外部電極3とを備える。積層体1は、誘電体層5と内部電極層7とを有しており、誘電体層5と内部電極層7とは交互に複数層積層されている。本実施形態の積層体1は、例えば、直方体形状であって、誘電体層5と内部電極層7とは、積層方向から見た平面視において、いずれも矩形状である。内部電極層7は、一辺が積層体1の側面に露出しており、外部電極3が、この側面を覆うことによって内部電極層7と外部電極3とが電気的に接続される。
図2では、誘電体層5と内部電極層7との積層数を数層に簡略して描いているが、誘電体層5および内部電極層7の積層数は、例えば、数百層に及ぶ積層数であってもよい。
【0011】
図3は、誘電体層断面の拡大模式図である。誘電体層5は、チタン酸バリウムと添加物元素とを含む複数の結晶粒子6で構成されている。複数の結晶粒子6は、第1結晶粒子6Aと、第1結晶粒子6Aより粒子径が大きい第2結晶粒子6Bとを含む。結晶粒子6は、チタン酸バリウムを主成分とする結晶粒子であって、添加物元素を含む。ここで、主成分とは、結晶粒子6中に最も多く含まれている成分のことである。チタン酸バリウムを主成分とするとは、結晶粒子6中にチタンおよびバリウムの含有量が他の成分よりも多く含まれている状態のことである。
【0012】
添加物元素は、例えば、ジスプロシウム(Dy)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)およびシリカ(Si)から選ばれる1種以上の元素である。添加物元素は、例えば、チタン酸バリウム結晶に拡散して結晶粒子6中に存在している。
【0013】
複数の結晶粒子6は、小径の第1結晶粒子6Aと、大径の第2結晶粒子6Bとを含んでおり、第1結晶粒子6Aの粒子径をd1とし、第2結晶粒子6Bの粒子径をd2としたとき、0.13μm≦d1<0.30μmであり、0.30μm≦d2<0.50μmである。結晶粒子6の粒子径の測定方法については、誘電体層5の断面の電子顕微鏡写真を画像解析することで測定することができる。例えば、断面の電子顕微鏡写真において、結晶粒子6が200~300個含まれる領域を指定し、既存の画像解析プログラムを用いて、領域内に含まれる各結晶粒子6の輪郭を抽出して断面積を求める。得られた断面積に基づいて、各結晶粒子6の円相当直径を算出し、粒子径とする。なお、誘電体層5を構成する結晶粒子6には、粒子径が0.13μm未満の結晶粒子、粒子径が0.50μm以上の結晶粒子が含まれていてもよい。
【0014】
このような第1結晶粒子6Aおよび第2結晶粒子6Bにおいて、第2結晶粒子6Bの添加物元素含有量が、第1結晶粒子6Aの添加物元素含有量より多いものとしている。第2結晶粒子6Bのような比較的粒子径が大きい結晶粒子を用いることによって、誘電体層5の比誘電率を高めることができ、コンデンサ100として所望の静電容量を得ることができる。一方で、第2結晶粒子6Bのような比較的粒子径が大きい結晶粒子が存在すると、誘電体層5の単位体積における粒界の割合が小さく、コンデンサ特性の劣化が生じやすい。コンデンサ特性の劣化は、内部電極層7間で酸素空孔が移動することによって生じるとされている。結晶粒子6内は、酸素空孔が移動し易く、粒界は、酸素空孔の移動抵抗が大きいので、粒界の割合が小さいほど特性劣化が生じ易くなる。第2結晶粒子6Bの添加物元素含有量を第1結晶粒子6Aより多くすることで、第2結晶粒子6B内における酸素空孔の移動抵抗が大きくなり、特性の劣化を抑制してコンデンサの信頼性を向上させることができる。本実施形態におけるコンデンサ特性は、例えば、高温条件下における直流電圧特性である。
【0015】
第2結晶粒子6Bの添加物元素含有量が、第1結晶粒子6Aの添加物含有量より多いとは、複数の第1結晶粒子6Aのうちで最も多い添加物元素含有量と、複数の第2結晶粒子6Bのうちで最も少ない添加物元素含有量とを比較したとき、第2結晶粒子6Bの最も少ない添含有量の方が多い場合を言う。
【0016】
第1結晶粒子6Aおよび第2結晶粒子6Bの添加物元素含有量は、誘電体層5の断面に存在する結晶粒子に対して、元素分析機器を付設した透過電子顕微鏡(EDX-TEM)を用いて元素分析を行うことで測定する。測定箇所は、粒界から100nmとし、添加物元素ごとの濃度(atomic%)を測定する。第1結晶粒子6Aおよび第2結晶粒子6Bの添加物元素含有量は、元素ごとの濃度の総和を算出することで得られる。
【0017】
また、誘電体層5における第2結晶粒子6Bの割合については、例えば、誘電体層5の断面において、単位面積あたりの第2結晶粒子6Bが占める面積の割合を4%以上18%以下とすればよい。第2結晶粒子6Bが占める面積の割合は、例えば、次のようにして測定できる。コンデンサ100において、予め定める断面(任意の誘電体層5の縦断面など)の全面積をS0とし、当該断面に含まれる第2結晶粒子6Bの断面積の総和をS2とする。第2結晶粒子6Bの断面積は、粒子径の測定と同様に電子顕微鏡写真を画像解析することで測定できる。これらの面積を用いて、第2結晶粒子6Bの面積割合A2=(S2/S0)×100[%]で算出することができる。第2結晶粒子6Bの面積割合を上記の範囲内とすることで、特性の劣化を抑制してコンデンサの信頼性をさらに向上させることができる。なお、第2結晶粒子6Bの面積割合が上記の範囲外であっても、特性劣化の抑制効果が弱いものの実用上、問題は無い。
【0018】
さらに、誘電体層5における第2結晶粒子6Bの存在位置については、例えば、誘電体層5の断面において、第2結晶粒子6B同士が連なる個数が2個以下であればよい。第2結晶粒子6Bが連なる個数が多いほど、第2結晶粒子6Bが偏って存在していることとなる。第2結晶粒子6Bが偏って存在しているところでは、第1結晶粒子6Aは少なく、粒界の割合が局所的に小さくなる。第2結晶粒子6B同士が連なる個数を2個以下とする、言い換えると、第2結晶粒子6B同士が3個以上は連なることがないようにすることで、特性の劣化を抑制してコンデンサの信頼性をさらに向上させることができる。
【0019】
第1結晶粒子6Aおよび第2結晶粒子6Bは、上記のとおり、粒子径が0.3μm未満の小径粒子および粒子径が0.3μm以上の大径粒子である。誘電体層5における結晶粒子6の粒子径のばらつきが大きいと、コンデンサ特性にばらつきが生じ易くなり、特性が大きく低下するようなものが発生するおそれがある。粒子径のばらつきを小さくするためには、第1結晶粒子6Aの算術平均粒子径をD1とし、第2結晶粒子6Bの算術平均粒子径をD2としたとき、2D1≦D2<3D1とすればよい。算術平均粒子径D1,D2は、粒子径d1,d2の測定と同様に、誘電体層5の断面の電子顕微鏡写真を画像解析することで測定できる。第1結晶粒子6Aに属する結晶粒子に対して粒子径の算術平均値を算出し、第2結晶粒子6Bに属する結晶粒子に対して粒子径の算術平均値を算出すればよい。算術平均粒子径D1,D2が、2D1≦D2であれば、第1結晶粒子6Aおよび第2結晶粒子6Bの粒子径は、適度に差があり、D2<3D1であれば、粒子径のばらつきが小さく抑えられている。これにより、コンデンサ特性のばらつきを低減させることができる。
【0020】
内部電極層7は、金属材料で構成されており、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)および銀(Ag)などを用いることができる。また。これらの金属材料を含む合金を用いることもできる。外部電極3も内部電極層7と同様の金属材料を用いることができる。
【0021】
本開示のコンデンサの他の実施形態について説明する。本実施形態は、第2結晶粒子6Bがコアシェル構造を有しており、第2結晶粒子6B以外の構成は、前述の実施形態の構成と同じであるので、詳細な説明は省略する。
図4は、本実施形態の第2結晶粒子の拡大模式図である。コアシェル構造は、一つの結晶粒子がコア部とシェル部とを有する構造である。本実施形態の第2結晶粒子6Bにおいて、コア部6B1は、チタン酸バリウム結晶で構成されており、シェル部6B2は、コア部6B1を取り囲み、チタン酸バリウム結晶に添加物元素が拡散した領域である。コアシェル構造は、誘電体層5の断面の電子顕微鏡写真によって確認できる。チタン酸バリウム結晶で構成されるコア部6B1は、ドメイン構造を示す縞模様が観察されるが、シェル部6B2には、この縞模様が観察されない。シェル部6B2には、添加物元素が拡散されており、粒界と同様に酸素空孔の移動抵抗が大きく、特性の劣化を抑制してコンデンサの信頼性をさらに向上させることができる。第2結晶粒子6Bでは、シェル部6B2の厚さが、例えば、0.05μm~0.13μmであればよい。
【0022】
次に、本開示のコンデンサの製造方法について説明する。まず、積層体を製造する。チタン酸バリウムを主成分とする原料粉末として、Ba/Ti比が異なる2種類を用いる。また、Ba/Ti比が大きい原料粉末の平均粒子径を、Ba/Ti比が小さい原料粉末の粒子径より小さくする。添加物元素となるジスプロシウム(Dy)、マグネシウム(Mg)およびカルシウム(Ca)は、それぞれDy2O3、Mg2CO3、ガラス粉末(例えば、SiO2=55mol%、BaO=20mol%、CaO=15mol%、Li2O3=10mol%の組成を有するもの)として添加する。チタン酸バリウムおよび添加物元素の原料粉末と、分散剤などを溶媒中で混合し、スラリーを得る。スラリーからドクターブレード法によってグリーンシートを作製する。一方、ニッケルなどの金属材料を主成分とする金属ペーストを準備する。グリーンシート表面に金属ペーストを印刷し、金属ペースト付きグリーンシートを作製する。金属ペースト付きグリーンシートを積層し、焼成して積層体を得る。積層体をバレル研磨した後、積層体の両端部に外部電極用の金属ペーストを塗布し、800℃の温度にて焼き付けを行って外部電極を形成する。外部電極用の金属ペーストは、Cu粉末およびガラスを添加したものを用いる。その後、電解バレル機を用いて、この外部電極の表面に順にNiめっき層及びSnめっき層を形成してコンデンサを得る。また、めっき層は、外部電極の表面上に、単一のめっき層で設けても、また、複数のめっき層で設けてもよい。
【0023】
(実施例)
チタン酸バリウムの原料粉末には、Ba/Ti比が1.006のもの(原料1)とBa/Ti比が1.000のもの(原料2)を用いた。原料1および原料2の平均粒子径は、それぞれ0.15μmおよび0.3μmとした。添加物元素には、ジプロシウムとマグネシウムとをそれぞれDy2O3、Mg2CO3として添加した。その他の添加剤として、炭酸カルシウム粉末(CaCO3)、炭酸マンガン粉末(MnCO3)およびガラス粉末(SiO2=55mol%、BaO=20mol%、CaO=15mol%、Li2O3=10mol%の組成を有するもの)を用いた。これらを直径5mmのジルコニアボールを用いて、溶媒としてトルエンとアルコールとからなる混合溶媒を添加し湿式混合した。
【0024】
次に、湿式混合した粉末を、ポリビニルブチラール樹脂を溶解させたトルエンおよびアルコールの混合溶媒中に投入し、直径5mmのジルコニアボールを用いて湿式混合してセラミックスラリを調製し、ドクターブレード法により成形用フィルム上に厚さが約3μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0025】
内部電極層を形成するための金属ペーストの金属としてニッケル粉末を用いた。金属ペーストを調製するための樹脂としてはエチルセルロースを用いた。溶媒としてはジヒドロターピネオール系溶媒とブチルセロソルブとを混合して用いた。
【0026】
次に、作製したセラミックグリーンシートに金属ペーストを印刷して金属ペースト付きグリーンシートを作製した。次に、作製した金属ペースト付きグリーンシートを200層積層し、上面側および下面側にカバー層としてセラミックグリーンシートをそれぞれ重ねて母体積層体を作製した。この後、母体積層体を切断して積層体の成形体を作製した。
【0027】
次に、積層体の成形体を焼成して積層体を作製した。本焼成は、水素-窒素中、昇温速度を900℃/hとし、最高温度を1190℃に設定した条件で焼成した。この焼成には抵抗加熱方式の焼成炉を用いた。続いて、積層体に対して再酸化処理を行った。再酸化処理の条件は、窒素雰囲気中、最高温度を1000℃に設定し、保持時間を5時間とした。積層体のサイズは、1.0mm×0.5mm×0.5mmであった。誘電体層の平均厚みは1.8μmであった。内部電極層の平均厚みは0.7μmであった。作製したコンデンサの静電容量の設計値は1μFに設定した。
【0028】
次に、積層体をバレル研磨した後、積層体の両端部に外部電極ペーストを塗布し、800℃の温度にて焼き付けを行って外部電極を形成した。外部電極ペーストは、Cu粉末およびガラスを添加したものを用いた。その後、電解バレル機を用いて、この外部電極の表面に順にNiめっきおよびSnめっきを形成してコンデンサを得た。
【0029】
コンデンサ特性は、高温負荷寿命(HALT)によって評価した。高温負荷寿命は、試験条件を直流電圧45V、環境温度を170℃に設定し、故障確率が50%に達したときの時間を平均故障時間(MTTF)として求めた。また、ワイブルプロットにおける形状パラメータ(m値)を求めた。MTTFは、長時間であるほど寿命が長く、m値が大きいほど寿命のばらつきが小さいことを示す。MTTFが、15時間以上であって、m値が3以上であればよい。
【0030】
実施例1~6は、原料1(小粒径)と原料2(大粒径)の混合比を変えたものである。実施例7,8は、原料混合比を実施例3と同じとし、第1結晶粒子6Aの算術平均粒子径D1と、第2結晶粒子6Bの算術平均粒子径D2を異ならせた。実施例7は、D2=1.8D1であり、実施例8は、D2=3.2D1であった。比較例1は、原料1のみを用い、原料2は用いていない。比較例2は、原料2のみを用い、原料1は用いていない。評価結果を表1に示す。表1における原料混合比は、原料1と原料2の全量を100としたときの原料2の割合を示す。
【0031】
【0032】
比較例1および比較例2からわかるように、結晶粒子として、小径粒子のみまたは大径粒子のみである場合は、寿命が短く、寿命ばらつきも大きい。比較例3からわかるように、小径粒子の粒子径が小さ過ぎると、寿命ばらつきが大きい。これに対して、実施例1~8は、いずれも寿命が長く、寿命ばらつきも小さい。また、第2結晶粒子の面積割合が、4%以上18%以下である実施例2~5は、寿命が、20時間以上であり、m値も4以上であり、信頼性に優れたコンデンサであることがわかる。実施例1,6は、面積割合が範囲外であり、実施例2~5より劣る結果となった。実施例7,8は、第1結晶粒子6Aおよび第2結晶粒子6Bの平均粒子径が、2D1≦D2<3D1の範囲外となっており、寿命は十分に長いが、m値がおよそ3であり、ややばらつきが見られた。なお、実施例1~8の第2結晶粒子は、コアシェル構造を有していることが確認できた。
【0033】
本開示は次の実施の形態が可能である。
【0034】
本開示のコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体と、
前記積層体の表面に位置し、前記内部電極層に電気的に接続された外部電極と、を有するコンデンサであって、
前記誘電体層は、チタン酸バリウムと添加物元素とを含む複数の結晶粒子で構成されており、
前記複数の結晶粒子は、第1結晶粒子と、前記第1結晶粒子より粒子径が大きい第2結晶粒子とを含み、
前記第1結晶粒子の粒子径をd1とし、前記第2結晶粒子の粒子径をd2としたとき、0.13μm≦d1<0.30μmであり、0.30μm≦d2<0.50μmであり、
前記第2結晶粒子の添加物元素含有量が、前記第1結晶粒子の添加物元素含有量より多い構成である。
【0035】
本開示のコンデンサによれば、特性の劣化を抑制してコンデンサの信頼性を向上させることができる。
【0036】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、また、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 積層体
3 外部電極
5 誘電体層
6 結晶粒子
6A 第1結晶粒子
6B 第2結晶粒子
7 内部電極層
6B1 コア部
6B2 シェル部
100 コンデンサ