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特許7365505静電入力装置、及び、ドアハンドルセンサシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】静電入力装置、及び、ドアハンドルセンサシステム
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20231012BHJP
【FI】
G01B7/00 101C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022524499
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2021018870
(87)【国際公開番号】W WO2021235455
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2020087577
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 哲
(72)【発明者】
【氏名】小松 勝
(72)【発明者】
【氏名】大下 和人
(72)【発明者】
【氏名】天神 学
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-524904(JP,A)
【文献】特開2006-249672(JP,A)
【文献】特開2016-173299(JP,A)
【文献】特開2010-239587(JP,A)
【文献】国際公開第2019/139093(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0325066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00- 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるドアハンドルセンサシステムであって、
前記車両のドアに取り付けられるドアハンドル装置と、
前記ドアのアンラッチ状態を制御する制御装置と
を含み、
前記ドアハンドル装置は、
前記車両の外側に設けられる外側ケースの内側に設けられる内側ケースと、
前記外側ケース又は前記内側ケースに対する操作者の近接又は接触を検出するための静電センサと、
前記外側ケース又は前記内側ケースに掛かる操作力を検出するための圧力センサと
を有し、
前記制御装置は、
前記操作者による操作の位置が、前記外側ケース及び前記内側ケースの第1端部領域、第2端部領域、又は、前記第1端部領域と前記第2端部領域との間の中央領域のいずれにあるかを判定する判定部を有し、
前記判定部の判定結果と前記圧力センサの検出値とに基づいて前記アンラッチ状態を制御し、
前記静電センサは、
前記第1端部領域と前記第2端部領域とを結ぶ第1方向に沿って間隔を隔てて配置される複数の第1電極部と、平面視において前記第1方向に直交する第2方向における第1側で前記複数の第1電極部を接続する第1接続部とを有する第1電極と、
前記第1方向に沿って前記複数の第1電極と交互に配置される複数の第2電極部と、平面視において前記第2方向における第2側で前記複数の第2電極部を接続する第2接続部とを有する第2電極と、
を有し、
前記複数の第1電極部のうち、前記第1方向における前記第1端部領域側の端の第1電極部以外の第1電極部は、前記中央領域内に配置され、
前記複数の第2電極部のうち、前記第1方向における前記第2端部領域側の端の第2電極部以外の第2電極部は、前記中央領域内に配置される、ドアハンドルセンサシステム。
【請求項2】
前記複数の第1電極部のうち、前記第1方向における前記第1端部領域側の端の第1電極部のうちの少なくとも前記第1方向において前記第1端部領域が位置する側の端部は、前記第1端部領域内に配置され、
前記複数の第2電極部のうち、前記第1方向における前記第2端部領域側の端の第2電極部のうちの少なくとも前記第1方向において前記第2端部領域が位置する側の端部は、前記第2端部領域内に配置される、請求項1に記載のドアハンドルセンサシステム。
【請求項3】
前記複数の第1電極部は2つの第1電極部であり、
前記複数の第2電極部は2つの第2電極部である、請求項1又は2に記載のドアハンドルセンサシステム。
【請求項4】
前記2つの第1電極部のうち前記中央領域内に配置される第1電極部の面積と、前記2つの第2電極部のうち前記中央領域内に配置される第2電極部の面積とは等しい、請求項3に記載のドアハンドルセンサシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記圧力センサの検出値が閾値以上になると前記ドアをラッチ状態から前記アンラッチ状態に切り替える切替制御部をさらに有し、
前記切替制御部は、前記判定部の判定結果によって前記閾値を変更する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のドアハンドルセンサシステム。
【請求項6】
前記圧力センサは、前記第1方向において、前記第1端部領域側の端の第1電極部が位置する側に設けられ、
前記切替制御部は、前記判定部によって前記操作者による操作の位置が前記第1端部領域内にあると判定される場合よりも前記中央領域内にあると判定される場合の方が前記閾値を大きな値に設定し、前記判定部によって前記操作者による操作の位置が前記中央領域内にあると判定される場合よりも前記第2端部領域内にあると判定される場合の方が前記閾値を大きな値に設定する、請求項5に記載のドアハンドルセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電入力装置、及び、ドアハンドルセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、平面視で互いに等しい直角三角形状の第1電極と第2電極との斜辺同士を合わせて、第1電極と第2電極とが全体で矩形をなすように配置されたタッチセンサがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-333302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のタッチセンサは、第1電極と第2電極の2つの電極によって矩形の第1軸方向(例えばX方向)に沿った操作位置を求めるものであり、第1軸方向に沿った操作が行われた場合に第1電極及び第2電極のうちの一方の電極と手等の被検出物との静電容量が増大するとともに他方の電極と被検出物との静電容量が減少する。そして両方の電極の合計に対する一方の電極の比率を求めることで、電極からの垂直方向の距離が多少変動したとしても、第1軸方向(X方向)に沿った操作位置を求めることができる。ところで、電極の出力を大きくする目的などの為に、電極の第1軸方向と直行する第2軸方向(Y方向)の幅を広く設定する要求があるが、その場合、第2軸方向に沿った操作をしても両方の電極の合計に対する一方の電極の比率が変動する為、第1軸方向への移動として判定してしまい1軸方向の被検出物の移動方向及び移動量を正しく特定できない場合がある。また、この結果、操作が行われた位置を正しく特定できない場合がある。
【0005】
そこで、操作が行われた位置を正しく特定できる静電入力装置、及び、ドアハンドルセンサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態のドアハンドルセンサシステムは、車両に搭載されるドアハンドルセンサシステムであって、前記車両のドアに取り付けられるドアハンドル装置と、前記ドアのアンラッチ状態を制御する制御装置とを含み、前記ドアハンドル装置は、前記車両の外側に設けられる外側ケースの内側に設けられる内側ケースと、前記外側ケース又は前記内側ケースに対する操作者の近接又は接触を検出するための静電センサと、前記外側ケース又は前記内側ケースにかかる操作力を検出するための圧力センサとを有し、前記制御装置は、前記操作者による操作の位置が、前記外側ケース及び前記内側ケースの第1端部領域、第2端部領域、又は、前記第1端部領域と前記第2端部領域との間の中央領域のいずれにあるかを判定する判定部を有し、前記判定部の判定結果と前記圧力センサの検出値とに基づいて前記アンラッチ状態を制御し、前記静電センサは、前記第1端部領域と前記第2端部領域とを結ぶ第1方向に沿って間隔を隔てて配置される複数の第1電極部と、平面視において前記第1方向に直交する第2方向における第1側で前記複数の第1電極部を接続する第1接続部とを有する第1電極と、前記第1方向に沿って前記複数の第1電極と交互に配置される複数の第2電極部と、平面視において前記第2方向における第2側で前記複数の第2電極部を接続する第2接続部とを有する第2電極と、を有し、前記複数の第1電極部のうち、前記第1方向における前記第1端部領域側の端の第1電極は、前記第1端部領域内に配置され、前記第1端部領域側の端の第1電極以外の第1電極部は、前記中央領域内に配置され、前記複数の第2電極部のうち、前記第1方向における前記第2端部領域側の端の第2電極は、前記第2端部領域内に配置され、前記第2端部領域側の端の第2電極以外の第2電極部は、前記中央領域内に配置される。
【発明の効果】
【0007】
操作が行われた位置を正しく特定できる静電入力装置、及び、ドアハンドルセンサシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両に取り付けられたドアハンドルを示す図である。
図2】静電入力装置の構成を示す図である。
図3】静電センサを示す図である。
図4】静電センサのシミュレーションモデルの一例を示す図である。
図5A】操作(1)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S0、S1の特性を示す図である。
図5B】操作(2)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S0、S1の特性を示す図である。
図6A】操作(1)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S1の比率の特性を示す図である。
図6B】操作(2)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S1の比率の特性を示す図である。
図7】比較用の静電センサを示す図である。
図8A】操作(1)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S0、S1の特性を示す図である。
図8B】操作(2)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S0、S1の特性を示す図である。
図9A】操作(1)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S1の比率の特性を示す図である。
図9B】操作(2)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S1の比率の特性を示す図である。
図10A】静電センサにおける自己容量S1の比率を示す図である。
図10B】比較用の静電センサにおける自己容量S1の比率を示す図である。
図11】静電センサと比較用の静電センサとにおける自己容量S1の最大値と最小値の差分を示す図である。
図12】実施形態の変形例の静電センサを示す図である。
図13】実施形態2のドアハンドルシステムを示す図である。
図14】ドアハンドルシステムのうちのドアハンドル装置を分解して示す図である。
図15】実施形態2の静電センサを示す図である。
図16】ドアハンドルにおけるX方向の指の位置に対する2つの電極の自己容量の比の特性を示す図である。
図17】変形例の静電センサを含むドアハンドルにおけるX方向の指の位置に対する2つの櫛歯状の電極の自己容量の比の特性を示す図である。
図18】ECUが実行する処理を表すフローチャートを示す図である。
図19】実施形態2の変形例の静電センサを示す図である。
図20】ドアハンドルにおけるX方向の指位置に対する2つの電極の自己容量の比の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の静電入力装置、及び、ドアハンドルセンサシステムを適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態1>
図1は、車両1に取り付けられたドアハンドル10を示す図である。車両1のドア2には、ドアハンドル10が取り付けられている。ドアハンドル10は、人の手の指等で掴みやすいように細長い形状を有している。ドアハンドル10の内部には静電センサ110が設けられている。なお、図1では、ドアハンドル10の長手方向は、ドアハンドル10が細長く延在する横方向である。
【0011】
図2は、静電入力装置100の構成を示す図である。静電入力装置100は、静電センサ110と位置特定部120とを有する。図2では、静電センサ110と位置特定部120とを簡略化して示すが、静電センサ110の2つの電極は位置特定部120に接続されており、位置特定部120は、2つの電極の静電容量の比に基づいて、ドアハンドル10に手等が接触する第1軸上の位置(操作位置)を特定する。位置特定部120は、アンプ、ADC(Analog-to-digital converter:ADコンバータ)、演算部、及び制御部等を有するが、ここでは省略する。
【0012】
図3は、静電センサ110を示す図である。静電センサ110は、電極110Aと電極110Bと基板110Cとを有する。電極110Aは第1電極の一例であり、電極110Bは第2電極の一例である。電極110A、110Bは、ともに櫛歯状の形状を有する。以下では、XYZ座標系を定義して説明する。また、以下では、平面視とはXY面視のことであり、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。なおX軸が第1軸に相当する。
【0013】
電極110Aは、複数の電極部111Aと、接続部112Aとを有し、端子113Aが接続されている。複数の電極部111Aは、一例として3つ以上あればよく、図3には6個の電極部111Aを示す。3つ以上であればよい理由は、静電センサ110は、X方向に交互に配置される電極部111Aと電極部111Bの静電容量の変化に基づいてX方向における操作位置を検出するため、少なくとも3つあればよいとの考え方によるものである。
【0014】
複数の電極部111Aは、複数の第1電極部の一例であり、互いにX方向の幅が異なり、Y方向の長さは互いに等しい。また複数の電極部111Aの個々はY方向に細長い矩形状であり、Y方向の電極の幅が一定に形成されている。複数の電極部111Aの個々は、Y方向に延在する二辺を有する矩形状の形状を有する。最も-X方向側に位置する電極部111AのX方向の幅が最も広く、最も+X方向側に位置する電極部111AのX方向の幅が最も狭い。複数の電極部111AのX方向の幅は、X方向において-X方向から+X方向にかけて順番に狭くなるように設定されている。このため、最も-X方向側に位置する電極部111Aの面積が最も大きく、最も+X方向側に位置する電極部111AのX方向の面積が最も小さい。なお、複数の電極部111AのX方向のピッチPはすべて等しい。ピッチPは、隣り合う電極部111A同士のX方向の幅の中心同士の間隔である。
【0015】
このような複数の電極部111Aは、所定方向の一例であるX方向において、電極110Bの複数の電極部111Bと交互に(互い違いに)配置され、Y方向で重なる位置に配置される。隣り合う電極部111Aと電極部111BとのX方向の間隔は、指の位置がX方向のどの位置にあっても電極部111A及び電極部111Bの少なくともいずれか一方と指とに容量結合が生じるような間隔に設定すればよい。このような間隔は、一例として0.5mm以下であり、0.5mmはシミュレーションによって求めた値である。
【0016】
接続部112Aは、第1接続部の一例であり、複数の電極部111Aの+Y方向側の端部をX方向に接続する線状のパターンである。接続部112AのY方向の幅は、X方向において一定である。X方向に延在する接続部112Aの-Y方向側に複数の電極部111Aが接続されていることにより、電極110Aは、平面視で櫛歯状の形状を有する。このような電極110Aは、一例として、基板110Cの上面に設けられた銅箔等の金属箔をエッチング等でパターニングすることによって作製可能である。
【0017】
電極110Bは、電極110Aの櫛歯状の形状と入れ子式になる櫛歯状の形状を有する。電極110Bは、複数の電極部111Bと、接続部112Bとを有し、端子113Bが接続されている。複数の電極部111Bは、一例として3つ以上あればよいことは、電極110Aと同様である。
【0018】
複数の電極部111Bは、複数の第2電極部の一例であり、複数の電極部111Aの配列をX方向において反転させたように配置されている。複数の電極部111Bは、互いにX方向の幅が異なり、Y方向の長さは互いに等しい。また複数の電極部111Aの個々はY方向に細長い矩形状であり、Y方向の電極の幅が一定に形成されている。複数の電極部111Bの個々は、Y方向に延在する二辺を有する矩形状の形状を有する。最も-X方向側に位置する電極部111BのX方向の幅が最も狭く、最も+X方向側に位置する電極部111BのX方向の幅が最も広い。複数の電極部111BのX方向の幅は、X方向において-X方向から+X方向にかけて順番に広くなるように設定されている。このため、最も-X方向側に位置する電極部111Bの面積が最も小さく、最も+X方向側に位置する電極部111BのX方向の面積が最も大きい。なお、複数の電極部111BのX方向のピッチPであることも複数の電極部111Aと同様である。
【0019】
接続部112Bは、第2接続部の一例であり、複数の電極部111Bの-Y方向側の端部をX方向に接続する線状のパターンである。接続部112BのY方向の幅は、X方向において一定である。X方向に延在する接続部112Bの+Y方向側に複数の電極部111Bが接続されていることにより、電極110Bは、平面視で櫛歯状の形状を有する。このような電極110Bは、一例として、基板110Cの上面に設けられた銅箔等の金属箔をエッチング等でパターニングすることによって作製可能である。
【0020】
なお、ここでは、接続部112A、112Bに対して、平面視で直交する方向に複数の電極部111A、111Bが延在する形態について説明するが、複数の電極部111A、111Bは、接続部112A、112Bに対して平面視で直交以外の角度(90度未満の角度、又は、90度よりも大きい角度)の方向に延在していてもよく、また、平面視で湾曲した形状であってもよい。
【0021】
基板110Cは、一例としてFR4(Flame Retardant type 4)規格の配線基板であり、電極110A、110Bは、一例として基板110Cの上面に形成されている。なお、基板110Cはフレキシブル基板であってもよく、また、電極110A、110Bは、基板110Cの上面と下面にそれぞれ形成されていてもよい。また、電極110A、110Bは、2枚の基板にそれぞれ形成されていて、電極110A、110Bを互いに絶縁した状態で2枚の基板を重ねて設けてもよい。
【0022】
図4は、静電センサ110のシミュレーションモデルの一例を示す図である。図4では静電センサ110の符号のみを示し、電極110A、110B、電極部111A、111Bの符号については図3を援用する。図4に示すシミュレーションモデルは、電極部111A、111Bを19個ずつ含む。また、電極110A、110BのX方向の長さは120mmであり、Y方向の幅は20mmである。
【0023】
このような静電センサ110のシミュレーションモデルにおいて、人間の指を模擬した指治具で(1)~(3)の操作を行う。指治具の位置は、一例として静電センサ110の60mm上方であり、ドアハンドル10(図1参照)に触れながら(1)~(3)の操作を行うものとしてシミュレーションを行った。このような操作は、所謂スワイプ操作である。
【0024】
操作(1)は、静電センサ110のX方向の中心から-X方向に80mmの位置から+80mmの位置まで指治具を移動させる操作であり、ドアハンドル10の長手方向(X方向)に指を動かしている操作に相当する。操作(2)は、静電センサ110のX方向の中心において、静電センサ110のY方向の中心から+20mmの位置から-20mmの位置まで指治具を移動させる操作である。操作(3)は、静電センサ110のX方向の中心から-40mmの位置において、静電センサ110のY方向の中心から+20mmの位置から-20mmの位置まで指治具を移動させる操作である。なお、操作(1)~(3)の始点に示す円は、指治具のスタート地点を示し、指は円柱形状として、直径は一例として12mmであるものとしてシミュレーションを行った。また、操作(2.5)として、操作(2)と操作(3)との中間の位置である静電センサ110のX方向の中心から-20mmの位置において、静電センサ110のY方向の中心から+20mmの位置から-20mmの位置まで指治具を移動させる操作も行った。
【0025】
図5Aは、操作(1)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S0、S1の特性を示す図である。図5Bは、操作(2)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S0、S1の特性を示す図である。自己容量S0、S1は、それぞれ、自己容量式の静電センサ110の端子113A、113Bの電位に基づいて取得される静電容量(pF)である。
【0026】
図5Aに示すように、操作(1)を行ったときには、自己容量S0は、指治具位置がX方向における中心から-40mmにおいて最大値を取る特性であり、自己容量S1は、指治具位置がX方向における中心から+40mmにおいて最大値を取る特性であった。このように、自己容量S0、S1は、X軸方向において対称的な特性を示した。また、図5Bに示すように、操作(2)を行ったときには、自己容量S0、S1は、略同一の特性を示し、指治具位置がY方向における中心である0mmにおいて最大値を取る特性であった。このように、自己容量S0、S1は、操作(1)、(2)において全く異なる特性を示すため、X方向の操作とY方向の操作を区別可能であることが分かった。なお、操作(3)を行った場合の特性は、操作(2)と類似した傾向を示した。
【0027】
図6Aは、操作(1)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S1の比率の特性を示す図である。図6Bは、操作(2)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S1の比率の特性を示す図である。自己容量S1の比率は、S1/(S0+S1)を百分率(%)で表す値である。
【0028】
図6Aに示すように、操作(1)を行った場合には、自己容量S1の比率は、X方向における中心に対して-60mm~+60mmまで良好な値を示す。-60mmよりも-X方向側と+60mmよりも+X方向側では、自己容量S1の比率の絶対値が低下しているが、電極110A、110Bが存在しない領域である。このため、静電センサ110は、予め比率とX方向の位置を演算式或いは対比表で対応させておくことによって、-60mm~+60mmの範囲でX方向における指治具の位置を検出可能である。
【0029】
図6Bに示すように、操作(2)を行った場合には、自己容量S1の比率は、Y方向における中心から-20mm~+20mmの範囲で略一定であった。このように、自己容量S1の比率は、操作(1)、(2)において全く異なる特性を示すため、X方向の操作とY方向の操作を区別可能であることが分かった。そして、操作(2)においては、比率は変わらないので、X方向に操作がされたとは判定はされない。なお、操作(3)を行った場合の特性は、操作(2)と類似した傾向を示した。これは個々の電極がY方向に延在する二辺を有する形状を有する為、指治具をY方向に移動させても、指治具と容量結合する電極部分と、指治具との距離及び面積の変化が少ない為と認められる。なお、個々の電極がY方向に延在する二辺を有する形状として、矩形状としたがY方向に延在する二辺を有する形状であれは良く、Y方向の端部に丸みを持たせる等の形状としても良い。
【0030】
図7は、比較用の静電センサ50を示す図である。静電センサ50は、平面視で互いに等しい直角三角形状の電極50Aと電極50Bとの斜辺同士を合わせて、電極50Aと電極50Bとが全体で矩形をなすように配置されている。寸法は、図4で示した第1シミュレーションモデルの一例と同様、電極50A、50BのX方向の長さは120mmであり、Y方向の幅は20mmとしてシミュレーションを行った。
【0031】
ここで、比較用の静電センサ50についての操作(1)は、静電センサ50のX方向の中心から-X方向に指治具を移動させる操作であり、操作(2)は、静電センサ50のX方向の中心において、静電センサ50の+Y方向側から-Y方向側に指治具を移動させる操作である。
【0032】
図8Aは、操作(1)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S0、S1の特性を示す図である。図8Bは、操作(2)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S0、S1の特性を示す図である。自己容量S0、S1は、それぞれ、電極50A、50Bの電位に基づいて取得される静電容量(pF)である。
【0033】
図8Aに示すように、操作(1)を行ったときには、自己容量S0は、指治具位置がX方向における中心から-40mmにおいて最大値を取る特性であり、自己容量S1は、指治具位置がX方向における中心から+40mmにおいて最大値を取る特性であった。このように、自己容量S0、S1は、X軸方向において対称的な特性を示した。また、図8Bに示すように、操作(2)を行ったときには、自己容量S0は、指治具位置がY方向における中心から-5mmにおいて最大値を取る特性であり、自己容量S1は、指治具位置がX方向における中心から+5mmの範囲において最大値を取る特性であった。このように、自己容量S0、S1は、Y軸方向において対称的な特性を示した。このように図8A図8Bを比較して明らかなように、操作(1)と操作(2)においては自己容量S0、S1の関係は、いずれも対象的な特性を示すため区別しにくいことが分かった。
【0034】
図9Aは、操作(1)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S1の比率の特性を示す図である。図9Bは、操作(2)を行ったときの指治具の位置に対する自己容量S1の比率の特性を示す図である。自己容量S1の比率は、S1/(S0+S1)を百分率(%)で表す値である。
【0035】
図9Aに示すように、操作(1)を行った場合には、自己容量S1の比率は、X方向における中心に対して-60mm~+60mmまで良好な値を示す。-60mmよりも-X方向側と+60mmよりも+X方向側では、自己容量S1の比率の絶対値が低下しているが、電極50A、50Bが存在しない領域である。このため、静電センサ50は、予め比率とX方向の位置を演算式或いは対比表で対応させておくことによって、-60mm~+60mmの範囲でX方向における指治具の位置を検出可能である。
【0036】
図9Bに示すように、操作(2)を行った場合には、自己容量S1の比率は、Y方向における中心から-20mm~+20mmの範囲で大きく変化した。特に、Y方向の中心(0mm)の前後での変化が非常に大きく、30%程の変化が認められた。これは、図9Aで示す特性と類似する特性であることが確認できた。
【0037】
図10Aは、静電センサ110における自己容量S1の比率を示す図である。図10Bは、比較用の静電センサ50における自己容量S1の比率を示す図である。図10A図10Bには、操作(2)、(2.5)、(3)を行った場合の自己容量S1の比率を示す。図10Aには静電センサ110における自己容量S1の比率を示し、図10Bには比較用の静電センサ50における自己容量S1の比率を示す。
【0038】
図10Aに示すように、操作(2)、(2.5)、(3)を行った場合の静電センサ110における自己容量S1の比率は、操作(2.5)、(3)の場合に多少の変動が見られたが、図6Aに示す操作(1)の特性とは全く異なる特性であり、操作(1)と操作(2)、(2.5)、(3)とを区別可能であることが確認できた。
【0039】
また、図10Bに示すように、操作(2)、(2.5)、(3)を行った場合の比較用の静電センサ50における自己容量S1の比率は、いずれの場合もY方向における中心から-20mm~+20mmの範囲で大きく変化した。いずれの特性も図9Aに示す操作(1)のY方向における中心の動きと似ている。
【0040】
図11は、静電センサ110と比較用の静電センサ50とにおける自己容量S1の比率の最大値と最小値の差分を示す図である。図11には、操作(2)、(2.5)、(3)における自己容量S1の比率の最大値と最小値の差分を示す。静電センサ110の操作(2)、(2.5)、(3)における自己容量S1の比率の差分は、1%(最小値49%と最大値50%の差分)、6%(最小値28%と最大値34%の差分)、10%(最小値15%と最大値25%の差分)であった。比較用の静電センサ50の操作(2)、(2.5)、(3)における自己容量S1の比率の差分は、30%(最小値35%と最大値65%の差分)、32%(最小値26%と最大値58%の差分)、13%(最小値27%と最大値40%の差分)であった。このように静電センサ110の方が比較用の静電センサ50に比べて、Y方向に移動した際の位置に対応する比率S1/(S0+S1)の変動が小さい。
【0041】
本実施例においてはXY座標を特定するものでは無く、2つの電極の出力から第1軸上(X軸)の位置を求めるものであり、比率の変動は全て第1軸上での変位に対応させて判定しているが、このように、静電センサ110においては、手などをY方向へ移動しても、比率は大きく変わらない。よってY軸方向の移動を、第1軸方向への移動として誤認識する可能性を少なく、或いは、誤認識される移動量を少なくすることができる。
【0042】
なお、櫛歯状の電極110A、110Bを有する静電センサ110を用いることにより、図6A図10Aに示すようX方向の操作(例えば操作(1))とY方向の操作(例えば操作(2)、(2.5)、(3))とを自己容量S0、S1の波形に基づいて区別することができる。そのためこの波形から、X方向への移動か、Y方向への移動かを判定し、例えば、X軸方向のスワイプ動作を検知した場合のみドアを開くなどの所定の動作を行わせることができる。又、加えてY軸方向へのスワイプを検知するとドアロックの施解錠を行わせるなども可能である。なお、X軸方向のスワイプ動作は波形から見ても良いが前述のX軸方向の位置の特定を連続的に特定することでスワイプ動作を判定するようにしても良い。
【0043】
以上のように被検出物の移動方向及び移動量を正確に特定可能な静電入力装置100を提供することができる。すなわち、操作が行われた位置を正しく特定できる静電入力装置100を提供することができる。また、以上では、ドアハンドル10に接触して行うスワイプ操作を行う場合について説明したが、ドアハンドル10に触れなくても、ドアハンドル10の表面に指を近づけてX方向又はY方向に移動させても同様に区別して検出可能である。
【0044】
なお、以上では、静電入力装置100をドアハンドル10に適用する形態について説明したが、静電入力装置100はドアハンドル10以外にも適用可能であり、静電容量の変化に応じて指等の生体の位置を検出する様々な装置等に適用可能である。また、静電センサ110のX方向を深さ方向にして液体に浸漬、或いは対向させれば、液体中の部分と、空気中の部分とで比誘電率が異なり電極との静電容量が異なるため、液面の高さを検出可能である。
【0045】
また、以上では、電極110Aの複数の電極部111Aを接続部112Aで接続する形態について説明したが、基板110Cの内層とビアを用いて接続してもよい。
【0046】
図12は、実施形態1の変形例の静電センサ110Mを示す図である。静電センサ110Mは、電極110MAと電極110MBとを有する。ここでは基板を省略する。電極110MAは第1電極の一例であり、電極110MBは第2電極の一例である。電極110MAは、複数の電極部111MAを有し、端子113MAが接続されている。複数の電極部111MAは、基板の内層やビアを介して互いに接続されている。複数の電極部111MAの個々は、Y方向に延在する二辺を有する矩形状の形状を有する。電極110MBは、複数の電極部111MBを有し、端子113MBが接続されている。複数の電極部111MBは、基板の内層やビアを介して互いに接続されている。複数の電極部111Bの個々は、Y方向に延在する二辺を有する矩形状の形状を有する。
【0047】
複数の電極部111MAと、複数の電極部111MBとは、X方向においてX軸上に交互に配置されており、X方向の幅はすべて等しい。複数の電極部111MAは、最も-X方向側の電極部111MAがY方向の長さが最も長く、最も+X方向側の電極部111MAのY方向の長さが最も短い。このため、複数の電極部111MAの面積は、-X方向側から+X方向側に向かって順番に小さくなっている。また、複数の電極部111MBは、最も-X方向側の電極部111MBがY方向の長さが最も短く、最も+X方向側の電極部111MBのY方向の長さが最も長い。このため、複数の電極部111MBの面積は、-X方向側から+X方向側に向かって順番に大きくなっている。このような静電センサ110Mを図3に示す静電センサ110の代わりに用いてもよい。
【0048】
<実施形態2>
図13は、実施形態2のドアハンドルシステム200を示す図である。図14は、ドアハンドルシステム200のうちのドアハンドル装置200Aを分解して示す図である。ドアハンドルシステム200は、ドアハンドル装置200A、ECU(Electronic Control Unit)250、及びラッチ機構2Aを含む。ドアハンドル装置200Aは、車両1(図1参照)のドア2に、実施形態1のドアハンドル10と同様に取り付けられる。ドアハンドル装置200Aの詳細については、図14を用いて後述する。
【0049】
ラッチ機構2Aは、ドアハンドル装置200Aの近くに設けられる。ラッチ機構2Aは、ドア2の掛け金等であり、ドア2を車両1の車体に対して閉じた状態に保持可能な機構である。ラッチ機構2Aによってドア2が閉じられた状態をラッチ状態と称し、ラッチ状態が解除されてドア2を開けることができる状態をアンラッチ状態と称す。ラッチ機構2Aは、ドアハンドル装置200Aのドアハンドル201が引っ張られると、ドアハンドルシステム200によってアンラッチ状態に切り替えられる。一例として、ラッチ機構2Aは、ラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える切替指令がECU250から入力されると、ラッチ機構2Aの電動アクチュエータを駆動してアンラッチ状態に切り替わる。また、ラッチ機構2Aは、ドア2が閉じられるとドア2が閉じられた状態に保持する。この状態でラッチ機構2Aは、ラッチ状態である。
【0050】
ドアハンドル装置200Aは、図14に示すように、静電センサ210、歪センサ220、内側ケース230、及び外側ケース240を有する。歪センサ220は圧力センサの一例である。内側ケース230及び外側ケース240は、ドアハンドル装置200Aのドアハンドル201を構成する。このため、図14では内側ケース230及び外側ケース240に括弧書きで符号201を記す。
【0051】
ドアハンドルシステム200のうち、静電センサ210、歪センサ220、内側ケース230、及びECU250は、ドアハンドルセンサシステム200Bを構成する。ドアハンドルセンサシステム200Bは、車両1(図1参照)に搭載されている。
【0052】
ここでは、まず、内側ケース230及び外側ケース240について説明する。内側ケース230及び外側ケース240が構成するドアハンドル201は、図13に示すようにドア2に取り付けられており、ドア2を開けようとする操作者が手で握って引っ張る部分である。ドアハンドル201は、X方向に延在する長手方向を有する。
【0053】
ここでは一例として、ドアハンドル201自体は、可動部を有さず、ドア2に対して固定された状態で動かない。すなわち、ドアハンドル201は、操作者が手で引っ張ってもドア2に対して動く部分を有しない。
【0054】
外側ケース240は、ドアハンドル201のうち、車両1の外側に設けられる部分であり、X方向に延在する長手方向を有する。外側ケース240は、図14に示すように、-X方向側の基部241と、+X方向側の基部242と、ブリッジ部243とを有する。ブリッジ部243は、基部241及び242との間に位置し、基部241及び242よりも-Z方向側(ドア2の表面から離間する方向)に湾曲している。外側ケース240は、-X方向側の基部241と+X方向側の基部242とがドア2に取り付けられることでドア2に固定される。
【0055】
内側ケース230は、ドアハンドル201のうち外側ケース240の内側に設けられる部分である。内側ケース230は、図14に示すように、X方向に延在する長手方向を有する。内側ケース230は、-X方向側の基部231と+X方向側の基部232と、ブリッジ部233とを有する。内側ケース230は、基部231、基部232、ブリッジ部233が外側ケース240の基部241、基部242、ブリッジ部243の内部にそれぞれ収容された状態で、-X方向側の基部231と+X方向側の基部232とがドア2に取り付けられることで、外側ケース240とともにドア2に固定される。
【0056】
外側ケース240のブリッジ部243と内側ケース230のブリッジ部233とは、ドア2の表面から離間しており、操作者がドア2の表面との間に手を掛けることができる部分である。
【0057】
内側ケース230のブリッジ部233は、図14に示すように、Y方向の幅の中央部においてX方向に沿って延在する溝部233Aと、-X方向側の端部でYZ平面に略平行な端面233Bとを有する。溝部233AのX方向の長さとY方向の幅とは、静電センサ210のX方向の長さとY方向の幅とに合わせられており、静電センサ210が略隙間がない状態で収容される。一例として、静電センサ210は、電極を+Z方向側に向けて溝部233Aに収容される。
【0058】
ブリッジ部233の溝部233AのXY平面に平行な底面と、基部231の-Z方向側の表面との間には、端面233BのZ方向の長さに相当する段差がある。この段差の部分には、歪センサ220が設けられる。すなわち、歪センサ220は、ドアハンドル201の-X方向側に設けられる。
【0059】
ドアハンドルシステム200及びドアハンドルセンサシステム200Bは、ドア2を開けようとする操作者がドアハンドル201を手で握って引っ張ったときに、内側ケース230及び/又は外側ケース240に掛かる力によって内側ケース230及び/又は外側ケース240に生じる歪みを歪センサ220で検出し、ECU250がラッチ機構2Aの電動アクチュエータを駆動してアンラッチ状態にすることで、ドア2を開くことができる状態にする。
【0060】
歪センサ220は、内側ケース230の基部231とブリッジ部233とにわたって設けられている。歪センサ220は、図14に拡大して示すように、基部221、レバー部222、及び歪素子223を有する。
【0061】
基部221は、XZ面視でL字型であり、静電センサ210の-X方向側の端部の+Z方向側の表面に固定されるXY平面に略平行な板状部221Aと、内側ケース230のブリッジ部233の端面233Bの表面上に配置されるYZ平面に略平行な板状部221Bとを有する。
【0062】
レバー部222は、基部221の板状部221Bの-X方向側の表面の中央から-X方向に突出している。レバー部222は、棒状の細長い部材であり、基部221と一体的に設けられている。レバー部222の-X方向側の先端部は、内側ケース230の基部231の-Z方向側の表面に固定される。
【0063】
歪素子223は、一例として、基部221の板状部221Bの+X方向側の表面の中央部に設けられている。一例として、歪素子223とレバー部222とは、YZ面視で重なるように設けられている。
【0064】
ここで、ドア2が閉じられてラッチ機構2Aがラッチ状態にあるときに、ドアハンドル201が-Z方向に引っ張られると、ドアハンドル201を-Z方向に引っ張る力(操作力)によって内側ケース230のブリッジ部233が基部231及び232に対して撓む(歪む)。
【0065】
より具体的には、基部231に対して、ブリッジ部233の端面233Bが変形するように力(圧力)が掛かる。これにより、レバー部222をXZ平面内で傾ける力が掛かり、板状部221Bを湾曲させる力が板状部221Bに掛かる。このような力が作用することによって板状部221Bが歪むため、歪センサ220でブリッジ部233に掛かる力(圧力)を検出することができる。この歪センサ220の検出値が所定の閾値以上となった際にドアハンドルが操作者に対して引っ張られたことを検出する。ここで記載した歪素子についてはあくまでも一例であり、概念としてドアハンドル201に対する操作力を検出することができればどのような形態でもよい。
【0066】
歪センサ220は、内側ケース230の-X方向側の端部に設けられているため、操作者がドアハンドル201を引っ張る位置がX方向において異なると、操作者の操作力が同一であっても歪センサ220の検出値が異なる。梃子の原理において、支点及び作用点になるブリッジ部233の-X方向側の端部に対して、力点になる操作者がドアハンドル201を引っ張る位置が変化するからである。
【0067】
このため、ドアハンドルシステム200は、ドアハンドル201に操作者が触れる位置を検出し、触れる位置のX方向における位置に応じて、ドアハンドル201が引っ張られたかどうかをECU250が判定する閾値を変更する。ドアハンドル201に操作者が操作する位置にかかわらず、操作者にとってドアハンドル201に対して同一の操作力でラッチ状態の解除ができるようにするためである。
【0068】
このような判別を実現するために、ドアハンドル201をX方向において3つの領域に分ける。3つの領域は、第1端部領域201A、中央領域201B、第2端部領域201Cである。図13には、X方向において第1端部領域201A、中央領域201B、第2端部領域201Cが延在する区間を示す。
【0069】
第1端部領域201A、中央領域201B、第2端部領域201Cは、ドアハンドル201を含む三次元的な領域であり、-X方向側から+X方向側にかけて、この順番で規定される。すなわち、第1端部領域201Aは最も-X方向側に位置する領域であり、第2端部領域201Cは最も+X方向側に位置する領域であり、中央領域201Bは、第1端部領域201A及び第2端部領域201Cの間に位置する領域である。
【0070】
第1端部領域201Aは、X方向において、外側ケース240の基部241と、ブリッジ部243の-X方向側の端部とを含む領域である。第2端部領域201Cは、X方向において、外側ケース240の基部242と、ブリッジ部243の+X方向側の端部とを含む領域である。中央領域201Bは、X方向において、外側ケース240のブリッジ部243の-X方向側の端部と+X方向側の端部とを除いた中央部を含む領域である。
【0071】
次に、静電センサ210について説明する。静電センサ210については、図13及び図14に加えて図15を用いて説明する。図15は、実施形態2の静電センサ210を示す図である。静電センサ210は、外側ケース240又は内側ケース230に対する操作者の近接又は接触を検出するために設けられている。
【0072】
静電センサ210は、電極210Aと電極210Bと基板210Cとを有する。電極210Aは第1電極の一例であり、電極210Bは第2電極の一例である。電極210A、210Bは、ともに櫛歯状の形状を有する。XYZ座標系は実施形態1と同様である。X方向は第1方向の一例であり、Y方向は第2方向の一例である。
【0073】
電極210Aは、複数の電極部211A1、211A2と、接続部212Aとを有し、端子213Aが接続されている。複数の電極部211A1、211A2は、一例として2つ以上あればよく、図15には2つの電極部211A1、211A2を示す。複数の電極部211A1、211A2は、3つ以上であってもよいが、2つであることが最も望ましい。
【0074】
複数の電極部211A1、211A2は、複数の第1電極部の一例であり、互いにX方向の幅が異なり、Y方向の長さは互いに等しい。複数の電極部211A1、211A2は、X方向に間隔を隔てて配置されている。複数の電極部211A1、211A2の各々は、Y方向に延在する二辺を有する矩形状の形状を有する。ここでは一例として、-X方向側に位置する電極部211A1のX方向の幅の方が+X方向側の電極部211A2のX方向の幅よりも広い。このため、-X方向側に位置する電極部211A1の面積の方が+X方向側に位置する電極部211A2の面積よりも大きい。なお、図15に示す+X方向側の電極部211A2と同一のサイズ、又は、+X方向側の電極部211A2とはX方向の幅が異なる1又は複数の電極部を+X方向側の電極部211A2よりも+X方向側に追加で設けてもよい。この場合に、+X方向側の電極部211A2と、追加される電極部とのX方向のピッチPをすべて等しくしてもよい。
【0075】
このような複数の電極部211A1、211A2は、第1方向の一例であるX方向において、電極210Bの複数の電極部211B1、211B2と交互に(互い違いに)配置され、Y方向で重なる位置に配置される。隣り合う電極部211A1、211A2と電極部211B1、211B2とのX方向の間隔は、指の位置がX方向のどの位置にあっても電極部211A1又は211A2と、電極部211B1又は211B2との少なくともいずれか一方と指とに容量結合が生じるような間隔に設定すればよい。このような間隔は、一例として0.5mm以下であり、0.5mmはシミュレーションによって求めた値である。
【0076】
接続部212Aは、第1接続部の一例であり、複数の電極部211A1、211A2の+Y方向側の端部をX方向に接続する線状のパターンである。接続部212Aは、X方向において、電極210Bの+X方向側の電極部211B1が存在する区間についても延在している。+Y方向側は第1側の一例である。接続部212AのY方向の幅は、X方向において一定である。X方向に延在する接続部212Aの-Y方向側に複数の電極部211A1、211A2が接続されていることにより、電極210Aは、平面視で櫛歯状の形状を有する。このような電極210Aは、一例として、基板210Cの上面に設けられた銅箔等の金属箔をエッチング等でパターニングすることによって作製可能である。
【0077】
電極210Bは、複数の電極部211B1、211B2と、接続部212Bとを有し、端子213Bが接続されている。複数の電極部211B1、211B2は、一例として2つ以上あればよく、図15には2つの電極部211B1、211B2を示す。複数の電極部211B1、211B2は、3つ以上であってもよいが、2つであることが最も望ましい。
【0078】
複数の電極部211B1、211B2は、複数の第2電極部の一例であり、互いにX方向の幅が異なり、Y方向の長さは互いに等しい。複数の電極部211B1、211B2は、X方向に間隔を隔てて配置されている。複数の電極部211B1、211B2の各々は、Y方向に延在する二辺を有する矩形状の形状を有する。ここでは一例として、+X方向側に位置する電極部211B1のX方向の幅の方が-X方向側の電極部211B2のX方向の幅よりも広い。このため、+X方向側に位置する電極部211B1の面積の方が-X方向側に位置する電極部211B2の面積よりも大きい。なお、図15に示す-X方向側の電極部211B2と同一のサイズ、又は、-X方向側の電極部211B2とはX方向の幅が異なる1又は複数の電極部を-X方向側の電極部211B2よりも-X方向側に追加で設けてもよい。この場合に、-X方向側の電極部211B2と、追加される電極部とのX方向のピッチPをすべて等しくしてもよい。
【0079】
このような複数の電極部211B1、211B2は、第1方向の一例であるX方向において、電極210Aの複数の電極部211A1、211A2と交互に(互い違いに)配置され、Y方向で重なる位置に配置される。隣り合う電極部211B1、211B2と電極部211A1、211A2とのX方向の間隔は、指の位置がX方向のどの位置にあっても電極部211B1又は211B2と、電極部211A1又は211A2との少なくともいずれか一方と指とに容量結合が生じるような間隔に設定すればよい。このような間隔は、一例として上述のように0.5mm以下であり、0.5mmはシミュレーションによって求めた値である。
【0080】
接続部212Bは、第2接続部の一例であり、複数の電極部211B1、211B2の-Y方向側の端部をX方向に接続する線状のパターンである。接続部212Bは、X方向において、電極210Aの-X方向側の電極部211A1が存在する区間についても延在している。-Y方向側は第2側の一例である。接続部212BのY方向の幅は、X方向において一定である。X方向に延在する接続部212Bの+Y方向側に複数の電極部211B1、211B2が接続されていることにより、電極210Bは、平面視で櫛歯状の形状を有する。このような電極210Bは、一例として、基板210Cの上面に設けられた銅箔等の金属箔をエッチング等でパターニングすることによって作製可能である。
【0081】
なお、ここでは、接続部212A、212Bに対して、平面視で直交する方向に複数の電極部211A1、211A2、211B1、211B2が延在する形態について説明するが、複数の電極部211A1、211A2、211B1、211B2は、接続部212A、212Bに対して平面視で直交以外の角度(90度未満の角度、又は、90度よりも大きい角度)の方向に延在していてもよく、また、平面視で湾曲した形状であってもよい。
【0082】
基板210Cは、一例としてFR4規格の配線基板であり、電極210A、210Bは、一例として基板210Cの上面に形成されている。なお、基板210Cはフレキシブル基板であってもよく、また、電極210A、210Bは、基板210Cの上面と下面にそれぞれ形成されていてもよい。また、電極210A、210Bは、2枚の基板にそれぞれ形成されていて、電極210A、210Bを互いに絶縁した状態で2枚の基板を重ねて設けてもよい。
【0083】
このような静電センサ210と、第1端部領域201A、中央領域201B、第2端部領域201Cとの関係は、図15に示す通りである。第1端部領域201Aは、静電センサ210によって操作の位置をX方向における-X方向側で検出可能な領域である。このため、第1端部領域201Aの-X方向側の端部は、電極210A及び210Bの-X方向側の端部よりも-X方向側に位置し、第1端部領域201Aと中央領域201Bとの境界は、電極210Aの-X方向側の電極部211A1のX方向における途中に位置する。すなわち、第1端部領域201Aは、-X方向側の電極部211A1のうちの少なくとも-X方向側の端部を含む。
【0084】
同様に、第2端部領域201Cは、静電センサ210によってX方向における+X方向側で検出可能な領域である。このため、第2端部領域201Cの+X方向側の端部は、電極210A及び210Bの+X方向側の端部よりも+X方向側に位置し、中央領域201Bと第2端部領域201Cとの境界は、電極210Bの+X方向側の電極部211B1のX方向における途中に位置する。第2端部領域201Cは、+X方向側の電極部211B1のうちの少なくとも+X方向側の端部を含む。
【0085】
中央領域201Bは、静電センサ210によってX方向における中間部分で検出可能な領域であり、X方向において第1端部領域201Aと第2端部領域201Cとの間に位置する。中央領域201Bは、電極210Aの+X方向側の電極部211A2と、電極210Bの-X方向側の電極部211B2とを含む。電極210Aの+X方向側の電極部211A2は、電極210Aに含まれる2つの電極部211A1、211A2のうち第1端部領域201A側(第1端部領域側)の端の電極部211A1以外の電極部である。電極210Bの-X方向側の電極部211B2は、電極210Bに含まれる2つの電極部211B1、211B2のうち第2端部領域201C側(第2端部領域側)の端の電極部211B1以外の電極部である。なお、第1端部領域201A、中央領域201B、第2端部領域201CのX方向における範囲は、静電センサ210のX方向の長さや、電極部211A1、211Aと電極部211B1、211B2のX方向の幅及び位置等によって変わりうるものである。
【0086】
ECU250は、制御装置の一例であり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。ECU250は、車両1の各種電子機器等の制御を行うECUとCAN(Controlled Area Network)やETHERNET(登録商標)等の車載ネットワークによって接続されていてよい。
【0087】
ECU250は、主制御部251、判定部252、切替制御部253、及びメモリ254を有する。主制御部251、判定部252、及び切替制御部253は、ECU250が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ254は、ECU250のメモリを機能的に表したものである。
【0088】
主制御部251は、ECU250の制御を統括する処理部であり、判定部252及び切替制御部253が実行する処理以外の処理を実行する。
【0089】
判定部252は、静電センサ210の電極210A、210Bの自己容量の比に基づいて、操作者によるドアハンドル201への操作の位置が、ドアハンドル201(外側ケース240及び内側ケース230)の第1端部領域201A、中央領域201B、又は、第2端部領域201Cのいずれにあるかを判定する。電極210A、210Bの自己容量の比は、電極210A、210Bのいずれか一方の自己容量に対する他方の自己容量の比である。静電センサ210は、自己容量式であり、自己容量とは、自己容量式の静電センサで得られた静電容量である。
【0090】
切替制御部253は、歪センサ220の検出値が閾値以上になるとドア2をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える切替制御部である。また、切替制御部253は、判定部252の判定結果に応じて閾値を切り替える。具体的には、切替制御部253は、判定部252によって操作者による操作の位置が第1端部領域201A内にあると判定される場合よりも中央領域201B内にあると判定される場合の方が閾値を大きな値に設定する。また、切替制御部253は、判定部252によって操作者による操作の位置が中央領域201B内にあると判定される場合よりも第2端部領域201C内にあると判定される場合の方が閾値を大きな値に設定する。上述した梃子の原理を考慮したものである。
【0091】
メモリ254は、ECU250が上述の処理を実行するために利用するプログラムやデータを格納する他、処理によって生じる自己容量等のデータを少なくとも一時的に格納する。
【0092】
ところで、ドアハンドル201に対する操作者の手のX方向における実際の位置が同一であっても、ドアハンドル201の表面から操作者の手までの距離が変わると静電センサ210で検出する自己容量が変わる。このため、ドアハンドル201に対する操作者の手のX方向における実際の位置が同一であっても、ドアハンドル201の表面から操作者の手までの距離が異なることによって、操作者の手の位置がX方向において変化したと判定されるおそれがある。
【0093】
例えば、操作者が素手でドアハンドル201に触れる場合と、手袋を嵌めた手でドアハンドル201に触れる場合とでは、静電センサ210から手までの距離が異なるため、X方向における手の位置の検出結果が変わるおそれがある。なお、ドアハンドル201の表面から操作者の手までの距離が変わると静電センサ210で検出する自己容量が変わる理由については、図16を用いて後述する。
【0094】
このような検出結果のX方向におけるばらつきは、静電センサ210の電極210Aと電極210Bとの自己容量(寄生容量)が大きいほど顕著になる。電極210Aと電極210Bとの間の電圧は、電極210Aと電極210Bとの自己容量に反比例するからである。
【0095】
このため、検出結果のX方向におけるばらつきを低減するには、電極210Aと電極210Bとの間の自己容量を小さくすればよい。電極210Aと電極210Bとは、平面視において櫛歯状で入れ子式に配置されるため、電極210A及び電極210Bの各々が近接して配置される区間の長さを短くすれば、電極210Aと電極210Bとの自己容量を小さくすることができる。
【0096】
このような観点から、電極210A及び電極210Bは、それぞれ2つの電極部211A1、211A2及び電極部211B1、211B2を有し、図15に示すように入れ子式に配置される電極部211A1、211A2及び211B1、211B2の個数を少なくしている。
【0097】
図16は、ドアハンドル201におけるX方向の指の位置に対する電極210A及び電極210Bの自己容量の比の特性を示す図である。図16に示す特性は、電磁界シミュレーションで求めたものである。ここでは、操作者がX方向において隣り合う2本の指でドアハンドル201に触れる場合について検討する。2本の指に模擬した2本の棒状の誘電体を用い、誘電体の太さは11mmである。以下ではX方向における指の位置(指位置)とは、X方向において隣り合う2本の指同士の間の位置のX座標である。
【0098】
ドアハンドル201におけるX方向の指位置は、静電センサ210のX方向における中心の位置を0mmとし、-X方向側を負の値、+X方向側を正の値で示す。
【0099】
また、図16における自己容量の比は、操作の位置が第1端部領域201A、中央領域201B、又は、第2端部領域201Cのいずれにあるかを判定部252が判定する際に用いる自己容量の比(電極210A、210Bのいずれか一方の自己容量に対する他方の自己容量の比)とは異なる。図16における自己容量の比は、電極210A、210Bの2つの自己容量のうち、小さい方の自己容量を大きい方の自己容量で除算した値(小さい方の自己容量/大きい方の自己容量)である。自己容量の比が100%になるのは、操作の位置が静電センサ210のX方向における中心の位置(0mm)にあるときであり、このときは電極210A、210Bの2つの自己容量は等しいため、どちらの値を分子、分母にしても同じ値になる。なお、電極210A、210Bの自己容量としては、一例として相互容量式で検出した値(アナログ値)をデジタル変換した値を用いた。
【0100】
また、ドアハンドル201の表面から-Z方向に0mm、3mm、6mmの3種類のZ方向における位置に指が位置する場合について自己容量の比の特性を求めた。0mmの場合の特性を実線で示し、3mmの場合の特性を破線で示し、6mmの場合の特性を一点鎖線で示す。
【0101】
図16に示すように、ドアハンドル201の表面からの高さによって自己容量の比が異なり、全体的に表面から0mmの位置での自己容量の比が最も小さく、表面から6mmの位置での自己容量の比が最も大きくなる傾向を示した。ドアハンドル201の表面からの指の高さによって自己容量の比が異なるのは、電極210Aと指との自己容量については、ドアハンドル201の表面からの指の高さによって、+X方向側の電極部211A1、211A2と指との間の距離と、-X方向側の電極部211A1、211A2と指との間の距離との比率が変化するからである。また、電極210Bと指との自己容量については、ドアハンドル201の表面からの指の高さによって、+X方向側の電極部211B1と指との間の距離と、-X方向側の電極部211B2と指との間の距離との比率が変化するからである。
【0102】
一例として、X方向における指の位置がX=-11.5mmでは、表面から0mmの位置での自己容量の比は37%であった。また、表面から6mmの位置での自己容量の比が37%になるのは、X方向における指の位置がX=-13mmであり、両者の差は1.5mmであった。すなわち、ドアハンドル201を素手で操作する場合と、厚さ6mmの手袋などを嵌めて操作する場合とで、X方向における指位置の検出に1.5mm程度の誤差が生じうることが分かった。
【0103】
図17は、実施形態1の変形例の静電センサを含むドアハンドルにおけるX方向の指の位置に対する2つの櫛歯状の電極の自己容量の比の特性を示す図である。変形例の静電センサの2つの櫛歯状の電極は、実施形態1の図4のシミュレーションモデルと同様に、電極部を19個ずつ含むものである。2つの櫛歯状の電極が19個ずつの電極部を含むことにより、2つの櫛歯状の電極同士が近接して配置される区間の長さは実施形態2の静電センサ210の電極210A及び210Bに比べて大幅に長く、2つの櫛歯状の電極の自己容量(寄生容量)は大幅に増大している。また、図17における自己容量の比は、図16における自己容量の比と同様に、2つの櫛歯状の電極の2つの自己容量のうち、小さい方の自己容量を大きい方の自己容量で除算した値(小さい方の自己容量/大きい方の自己容量)である。
【0104】
図17に示す特性は、図16に示す特性と同様に電磁界シミュレーションで求めたものである。ドアハンドルにおけるX方向及びZ方向の指の位置は、図16に示す特性と同様であり、0mmの場合の特性を実線で示し、3mmの場合の特性を破線で示し、6mmの場合の特性を一点鎖線で示す。
【0105】
図17に示すように、ドアハンドルの表面からの高さによる自己容量の比の相違は、図16に示す特性よりも大きく、全体的に高い値を示した。全体的に表面から0mmの位置での自己容量の比が最も小さく、表面から6mmの位置での自己容量の比が最も大きくなる傾向を示したのは図16に示す特性と同様であった。
【0106】
一例として、X方向における指の位置がX=-11.5mmでは、表面から0mmの位置での自己容量の比は61%であった。また、表面から6mmの位置での自己容量の比が61%になるのは、X方向における指の位置がX=-14mmであり、両者の差は2.5mmであった。すなわち、比較用の静電センサを含むドアハンドルを素手で操作する場合と、厚さ6mmの手袋などを嵌めて操作する場合とで、X方向における指位置の検出に2.5mm程度の誤差が生じうることが分かった。
【0107】
これは、実施形態2の静電センサ210を含むドアハンドル201を操作する場合に比べて、X方向における検出誤差が約67%増加することを意味する。換言すれば、実施形態2のドアハンドルシステム200及びドアハンドルセンサシステム200Bは、比較用の静電センサを含むドアハンドルシステムに比べて、X方向における検出誤差を40%低減できることを意味する。
【0108】
なお、図17のシミュレーションに用いた変形例の静電センサと、図16のシミュレーションに用いた静電センサ210とを実際に作製して、2本の指に模擬した2本の棒状の誘電体を第1端部領域201A、中央領域201B、第2端部領域201Cに配置して自己容量を測定したところ、次のような結果を得た。ここで示す自己容量は、変形例の静電センサと静電センサ210から得られる自己容量(アナログ値)をデジタル変換した値のカウント値である。変形例の静電センサと静電センサ210は、ともに自己容量式であり、自己容量をカウント値で表す場合には単位はない。
【0109】
変形例の静電センサの第1端部領域で得られた自己容量が213であるのに対して、静電センサ210の第1端部領域201Aで得られた自己容量は263であった。変形例の静電センサの中央領域で得られた自己容量が235であるのに対して、静電センサ210の中央領域201Bで得られた自己容量は311であった。変形例の静電センサの第2端部領域で得られた自己容量が212であるのに対して、静電センサ210の第2端部領域201Cで得られた自己容量は263であった。第1端部領域201Aと第2端部領域201Cでの自己容量は約23%増大しており、中央領域201Bでの自己容量は約32%増大したことが分かった。静電センサ210は、比較例の静電センサに対して電極210A、210Bの自己容量(寄生容量)が小さいため、2本の指に模擬した2本の棒状の誘電体を配置した場合の検出値が増大したものと考えられる。
【0110】
図18は、ECU250が実行する処理を表すフローチャートを示す図である。ECU250は、車両1のバッテリ等の電源から電力が供給されているときに、図18に示す処理を実行する。
【0111】
判定部252は、静電センサ210の2つの電極210A、210Bの自己容量の比を取得する(ステップS1)。
【0112】
判定部252は、操作の位置が第1端部領域201A、中央領域201B、及び第2端部領域201Cのいずれにあるかを判定する(ステップS2)。
【0113】
切替制御部253は、ステップS2において判定部252によって操作の位置が第1端部領域201Aにあると判定されると、メモリ254から第1端部領域201A用の閾値を読み出して、閾値として設定する(ステップS3A)。
【0114】
また、切替制御部253は、ステップS2において判定部252によって操作の位置が中央領域201Bにあると判定されると、メモリ254から中央領域201B用の閾値を読み出して、閾値として設定する(ステップS3B)。
【0115】
また、切替制御部253は、ステップS2において判定部252によって操作の位置が第2端部領域201Cにあると判定されると、メモリ254から第2端部領域201C用の閾値を読み出して、閾値として設定する(ステップS3C)。
【0116】
切替制御部253は、ステップS3A、S3B、又はS3Cの処理を終えると、歪センサ220の検出値が設定した閾値以上であるかどうかを判定する(ステップS4)。
【0117】
切替制御部253は、閾値以上である(S4:YES)と判定すると、ラッチ機構2Aをアンラッチ状態に切り替える指令をラッチ機構2Aに出力する(ステップS5)。ステップS5の処理を終えると、制御周期の一周期分の処理が終了し、スタートにリターンする。ECU150は、以上の処理を繰り返し実行する。
【0118】
以上のように、実施形態2のドアハンドルシステム200及びドアハンドルセンサシステム200Bでは、静電センサ210の電極210A、210Bの電極部211A1、211A2、211B1、211B2を2つずつにした。このような静電センサ210で電極210A及び210Bの自己容量(寄生容量)を低減することによって、ドアハンドル201の表面に対する指の高さの違いに対するX方向における指の検出位置の検出誤差を低減した。このため、ドアハンドル201の第1端部領域201A、中央領域201B、第2端部領域201Cのいずれで操作が行われているかを判定する際の判定精度を向上させることができる。
【0119】
したがって、操作が行われた位置を正しく特定できるドアハンドルセンサシステム200Bを提供することができる。
【0120】
また、複数の電極部211A1、211A2のうち、X方向における第1端部領域201A側の端の電極部211A1のうちの少なくともX方向において第1端部領域201Aが位置する側(-X方向側)の端部は、第1端部領域201A内に配置され、複数の電極部211B1、211B2のうち、X方向における第2端部領域201C側の端の電極部211B1のうちの少なくともX方向において第2端部領域201Cが位置する側(+X方向側)の端部は、第2端部領域201C内に配置される。このため、X方向において、交互に配置される複数の電極部211A1、211A2と複数の電極部211B1、211B2とを第1端部領域201A、中央領域201B、及び第2端部領域201Cに適切に割り振ることができ、判定部252の判定結果と、歪センサ220の検出値とに基づいて適切にアンラッチ状態を制御することができる。
【0121】
また、複数の電極部211A1、211A2は2つの電極部であり、複数の電極部211B1、211B2は2つの電極部211B1、211B2であるので、電極210A及び210Bの自己容量(寄生容量)を低減し、ドアハンドル201の表面に対する指の高さの違いに対するX方向における指の検出位置の検出誤差を低減することができる。この結果、ドアハンドル201の第1端部領域201A、中央領域201B、第2端部領域201Cのいずれで操作が行われているかを判定する際の判定精度を向上させることができる。
【0122】
また、2つの電極部211A1、211A2のうち中央領域201B内に配置される電極部211A2の面積と、2つの電極部211B1、211B2のうち中央領域201B内に配置される電極部211B2の面積とは等しいので、中央領域201B内で操作が行われたときの電極210A、210Bの自己容量のバランスを取ることができる。このため、中央領域201B内で操作が行われたときの自己容量の比を1:1に近い値にすることができ、操作者の手の位置が第1端部領域201A、中央領域201B、第2端部領域201Cのいずれで操作が行われているかを判定する際の判定ロジックを組み立てやすくなる。
【0123】
また、ECU250は、歪センサ220の検出値が閾値以上になるとドア2をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える切替制御部253を有し、切替制御部253は、判定部252の判定結果によって閾値を変更する。このため、歪センサ220がドアハンドル201のX方向の端部にあってドアハンドル201に操作が行われるX方向における位置によって歪センサ220の検出値が異なるような場合でも、操作の位置に応じて適切に操作の有無を判定することができる。
【0124】
また、歪センサ220は、X方向において、第1端部領域201A側(第1端部領域側)の端の電極部211A1が位置する側に設けられ、切替制御部253は、判定部252によって操作者による操作の位置が第1端部領域201A内にあると判定される場合よりも中央領域201B内にあると判定される場合の方が閾値を大きな値に設定し、判定部252によって操作者による操作の位置が中央領域201B内にあると判定される場合よりも第2端部領域201C内にあると判定される場合の方が閾値を大きな値に設定する。このため、X方向における操作の位置の違いに基づいて梃子の原理によって生じる歪センサ220の検出値の違いに対応して、操作の位置を正確に判定することができる。
【0125】
図19は、実施形態2の変形例の静電センサ210Mを示す図である。静電センサ210Mは、図15に示す静電センサ210の代わりにドアハンドルセンサシステム200Bに用いることができるものである。
【0126】
静電センサ210Mは、電極210AMと電極210BMと基板210Cとを有する。電極210AMは第1電極の一例であり、電極210BMは第2電極の一例である。電極210AM、210BMは、ともに櫛歯状の形状を有する。XYZ座標系は実施形態1と同様である。X方向は第1方向の一例であり、Y方向は第2方向の一例である。
【0127】
電極210AMは、複数の電極部211AM1、211AM2と、接続部212AMとを有し、端子213Aが接続されている。電極210AMは、図15に示す電極210Aに比べて、+X方向側の電極部211AM2のX方向の幅が広く、-X方向側の電極部211AM1のX方向の幅が狭い。
【0128】
電極210BMは、複数の電極部211BM1、211BM2と、接続部212BMとを有し、端子213Bが接続されている。電極210BMは、図15に示す電極210Bに比べて、-X方向側の電極部211BM2のX方向の幅が広く、+X方向側の電極部211BM1のX方向の幅が狭い。
【0129】
なお、基板210Cは、図15に示す基板210Cと同一である。また、複数の電極部211AM1、211AM2のX方向における幅と、複数の電極部211BM1、211BM2のX方向における幅とに応じて、第1端部領域201AM及び第2端部領域201CMは、図15に示す第1端部領域201A及び第2端部領域201CよりもX方向の幅が狭くなっており、中央領域201BMは中央領域201BよりもX方向の幅が広くなっている。
【0130】
図20は、ドアハンドル201におけるX方向の指位置に対する電極210AM及び電極210BMの自己容量の比の特性を示す図である。図20に示す特性は、電磁界シミュレーションで求めたものである。X方向における指位置とは、図16と同様に、X方向において隣り合う2本の指同士の間の位置のX座標である。
【0131】
ドアハンドル201におけるX方向の指位置は、図16と同様に、静電センサ210のX方向における中心の位置を0mmとし、-X方向側を負の値、+X方向側を正の値で示す。
【0132】
また、図20における自己容量の比は、図16における自己容量の比と同様に、2つの電極210AM、210BMの2つの自己容量のうち、小さい方の自己容量を大きい方の自己容量で除算した値(小さい方の自己容量/大きい方の自己容量)である。また、電極210AM、210BMの自己容量としては、一例として相互容量式で検出した値(アナログ値)をデジタル変換した値を用いた。
【0133】
また、図16と同様に、ドアハンドル201の表面から-Z方向に0mm、3mm、6mmの3種類のZ方向における位置に指が位置する場合について自己容量の比の特性を求めた。0mmの場合の特性を実線で示し、3mmの場合の特性を破線で示し、6mmの場合の特性を一点鎖線で示す。
【0134】
図20に示すように、ドアハンドル201の表面からの高さによって自己容量の比が異なるが、X=0mmでは指のZ方向の位置によらずに略同一の値を示した。X=-16.5mm~X=0mmの区間と、X=0mm~X=16.5mmの区間とでは、指の高さが0mmの場合が最も自己容量の比が大きく、指の高さが3mmと6mmの場合は自己容量の比が同等であった。また、X=-16.5mmよりも-X方向側の区間と、X=16.5mmよりも+X方向側の区間とでは、指の高さが0mmの場合の自己容量の比が最も小さく、表面から6mmの位置での自己容量の比が最も大きくなる傾向を示した。
【0135】
このように、電極部211AM1、211AM2、211BM1、211BM2のX方向の幅が異なると、X方向における指の位置に対する自己容量の比の特性が変化することを確認することができた。図15に示す静電センサ210の代わりに、このような静電センサ210Mを使ってもよく、操作が行われた位置を正しく特定できるドアハンドルセンサシステム200Bを提供することができる。
【0136】
以上、本発明の例示的な実施形態の静電入力装置、及び、ドアハンドルセンサシステムについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0137】
なお、本国際出願は、2020年5月19日に出願した日本国特許出願2020-087577に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。
【符号の説明】
【0138】
100 静電入力装置
110 静電センサ
110A、110B 電極
111A、111B 電極部
112A、112B 接続部
120 位置特定部
200 ドアハンドルシステム
200A ドアハンドル装置
200B ドアハンドルセンサシステム
201 ドアハンドル
201A 第1端部領域
201B 中央領域
201C 第2端部領域
210、210M 静電センサ
210A、210AM 電極(第1電極の一例)
210B、210BM 電極(第2電極の一例)
211A1、211A2、211AM1、211AM2 電極部(第1電極部の一例)
211B1、211B2、211BM1、211BM2 電極部(第2電極部の一例)
212A、212AM 接続部(第1接続部の一例)
212B、212BM 接続部(第2接続部の一例)
220 歪センサ(圧力センサの一例)
230 内側ケース
240 外側ケース
250 ECU(制御装置の一例)
251 主制御部
252 判定部
253 切替制御部
254 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20