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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】近接検出アッセイのための制御
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6804 20180101AFI20231012BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20231012BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20231012BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20231012BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20231012BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20231012BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20231012BHJP
【FI】
C12Q1/6804 Z ZNA
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6876 Z
G01N33/53 N
C12N15/11 Z
C07K16/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022558355
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2021058025
(87)【国際公開番号】W WO2021191450
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】2004469.9
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517014583
【氏名又は名称】オリンク プロテオミクス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ブロベルグ、ジョン
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-533944(JP,A)
【文献】国際公開第2018/108328(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/104261(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/107743(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12Q
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の複数の分析物を検出する方法であって、各分析物は、タンパク質であるか、またはタンパク質を含み、
該方法は、多重近接に基づく検出アッセイを行うことを含み、前記アッセイは、
(i)前記試料を、近接プローブの複数の対に接触させる工程であって、各近接プローブ対は、第1の近接プローブと第2の近接プローブとを含み、各近接プローブは、
(a)分析物に特異的な抗体またはその抗原結合断片と、
(b)核酸ドメインとを含み、
各対における両方のプローブは、同じ分析物に特異的な抗体またはその抗原結合断片を含み、前記分析物に同時に結合することができ、かつ、各プローブ対は異なる分析物に特異的であり、
各近接プローブの前記核酸ドメインは、ID配列と、少なくとも第1のハイブリダイゼーション配列とを含み、各近接プローブの前記ID配列は異なり、
各近接プローブ対において、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブは、対になったハイブリダイゼーション配列を含み、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブがその分析物に結合すると、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブのそれぞれの対になったハイブリダイゼーション配列が、互いにハイブリダイズするか、または、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブの前記対になったハイブリダイゼーション配列の各々に対して相補的なハイブリダイゼーション配列を含む共通のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、
少なくとも一対のハイブリダイゼーション配列が、少なくとも二対の近接プローブによって共有される、工程と、
(ii)前記近接プローブの核酸ドメインを、互いにハイブリダイズさせるか、または、前記スプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせ、第1の近接プローブのハイブリダイゼーション配列と第2の近接プローブのハイブリダイゼーション配列とを含む連続二重鎖または不連続二重鎖を形成する工程であって、前記二本鎖は少なくとも1つの遊離3'末端を有する工程と、
(iii)前記二重鎖を伸長反応および/またはライゲーション反応させて、前記第1の近接プローブのID配列と第2の近接プローブのID配列とを含む伸長生成物および/またはライゲーション生成物を生成する工程と、
(iv)前記伸長生成物またはライゲーション生成物を増幅する工程と、
(v)前記伸長生成物またはライゲーション生成物を検出する工程であって、前記伸長生成物またはライゲーション生成物の検出は、その中の前記ID配列の識別を含み、各伸長生成物またはライゲーション生成物の相対的な量を決定する工程と、
(vi)前記試料にどの分析物が存在するかを決定する工程であって、
(a)第1の近接プローブ対に属する第1の近接プローブからの第1のID配列と、第2の近接プローブ対に属する第2の近接プローブからの第2のID配列と、を含む伸長生成物および/またはライゲーション生成物は、バックグラウンドとみなされ、
(b)近接プローブ対からの第1のID配列と第2のID配列とを含み、かつ前記バックグラウンドよりも多い量で存在する伸長生成物またはライゲーション生成物は、前記近接プローブ対が特異的に結合する前記分析物が前記試料中に存在することを示す、工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記工程(i)は、さらに、前記試料を、分析物に結合しない1つ以上のバックグラウンドプローブと接触させる工程を含み、前記バックグラウンドプローブは、ID配列と、少なくとも一つの近接プローブとともに共有するハイブリダイゼーション配列と、を含む核酸ドメインを含み、
バックグラウンドプローブと近接プローブとの間の相互作用の結果として生成された伸長生成物および/またはライゲーション生成物が、前記工程(v)で検出され、前記工程(vi)でバックグラウンドとみなされる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ID配列は、バーコード配列である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一対のハイブリダイゼーション配列が、単一の近接プローブ対に固有である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
近接プローブ対の少なくとも75%が、それらのハイブリダイゼーション配列対を、別の近接プローブ対と共有する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記近接基づく検出アッセイは、近接伸長アッセイであり、各近接プローブ対の前記核酸ドメインは、互いにハイブリダイズして二重鎖を形成する相補的なハイブリダイゼーション配列を含み、
前記二重鎖は伸長反応が施され、前記伸長反応は、少なくとも1つの遊離3'末端を伸長させて、前記第1の近接プローブのID配列と前記第2の近接プローブのID配列とを含む伸長生成物を生成する工程を含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記近接基づく検出アッセイは、近接ライゲーションアッセイであり、各近接プローブ対の核酸ドメインは、スプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズして二重鎖を形成するための、対になったハイブリダイゼーション配列を含み、前記工程(iii)は、前記第1の近接プローブの核酸ドメインを前記第2の近接プローブの核酸ドメインに直接的または間接的にライゲーションさせ、前記第1の近接プローブのID配列と前記第2の近接プローブのID配列とを含むライゲーション生成物を生成する工程を含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記核酸ドメインはDNAドメインである、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記工程(iv)において、前記伸長生成物またはライゲーション生成物がPCRによって増幅される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記伸長生成物またはライゲーション生成物が核酸シーケンシングによって検出される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記試料は血漿試料または血清試料である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
下記複数の近接プローブ対含む製品であって、
記複数の近接プローブ対において、各近接プローブ対は、第1の近接プローブと第2の近接プローブとを含み、各近接プローブは、
(a)タンパク質に特異的抗体またはその抗原結合断片と、
(b)核酸ドメインとを含み、
各対における両方のプローブは、同じタンパク質に特異的な抗体またはその抗原結合断片を含み、前記タンパク質に同時に結合することができ、かつ、各プローブ対は異なるタンパク質に特異的であり、
各近接プローブの前記核酸ドメインは、ID配列と、少なくとも第1のハイブリダイゼーション配列とを含み、各近接プローブの前記ID配列は異なり、各近接プローブ対において、前記第1の近接プローブと前記第2の近接プローブとは、対になったハイブリダイゼーション配列を含み
各近接プローブ対の前記ハイブリダイゼーション配列は、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブタンパク質に結合すると、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブのそれぞれの対になったハイブリダイゼーション配列が、互いにハイブリダイズす構成であり、
少なくとも一対のハイブリダイゼーション配列が、少なくとも二対の近接プローブによって共有される、製品。
【請求項13】
複数のスプリントオリゴヌクレオチドをさらに含み、
前記複数のスプリントオリゴヌクレオチドの各々は、近接プローブ対の前記対になったハイブリダイゼーション配列の各々に対して相補的なハイブリダイゼーション配列を含み、
各々の近接プローブ対のハイブリダイゼーション配列は、第1および第2の近接プローブ対がそのタンパク質に結合すると、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブのそれぞれの対になったハイブリダイゼーション配列が、スプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、請求項12記載の製品。
【請求項14】
前記製品は、複数のスプリントオリゴヌクレオチドを含み、各々のスプリントオリゴヌクレオチドは、近接プローブ対の前記対になったハイブリダイゼーション配列の各々に対して相補的なハイブリダイゼーション配列を含む、請求項12記載の製品。
【請求項15】
前記各近接プローブ対の前記ハイブリダイゼーション配列は、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブがそのタンパク質に結合すると、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブのそれぞれの対になったハイブリダイゼーション配列が、互いにハイブリダイズする構成である、請求項12記載の製品。
【請求項16】
前記ID配列はバーコード配列である、請求項12~1のいずれかに記載の製品。
【請求項17】
少なくとも一対のハイブリダイゼーション配列が、単一の近接プローブ対に固有である、請求項12~1のいずれかに記載の製品。
【請求項18】
近接プローブ対の少なくとも75%が、それらのハイブリダイゼーション配列対を、別の近接プローブ対と共有する、請求項12~1のいずれかに記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、多重近接に基づく検出アッセイ(multiplex proximity-based detection assay)を行うことを含む、試料中の複数の分析物を検出する方法を提供する。前記アッセイは、共有されたハイブリダイゼーション部位を有する近接プローブの対(すなわち、異なる近接プローブ対の間で共有されたハイブリダイゼーション部位を有する近接プローブの対)を利用する。また、共有されたハイブリダイゼーション部位を有する複数の近接プローブ対を含む製品も提供され、当該製品は本明細書に開示される方法に使用されてもよい。
【0002】
背景技術
現代のプロテオミクス法は、少量の試料の中で多数の異なるタンパク質(またはタンパク質複合体)を検出する能力を必要とする。これを達成するために、多重分析を行う必要がある。試料中のタンパク質の多重検出ができるであろう一般的な方法としては、近接伸長アッセイ(proximity extension assay、PEA)および近接ライゲーションアッセイ(proximity extension assay、PLA)がある。PEAおよびPLAは、WO01/61037に記載され、PEAはさらに、WO03/044231、WO2004/094456、WO2005/123963、WO2006/137932、およびWO2013/113699に記載されている。
【0003】
PEAおよびPLAは近接アッセイであり、「近接プロービング」の原理に依拠するものである。これらの方法において、分析物は、複数(すなわち、2つ以上、一般には2つまたは3つ)のプローブの結合によって検出され、プローブが分析物と結合することで近接する(ゆえに「近接プローブ」と称される)と、シグナルが生成される。典型的には、近接プローブの少なくとも1つが、当該プローブの分析物結合ドメイン(または分析物結合部)に連結した(linked)核酸ドメイン(または核酸部)を含み、シグナルの生成には、核酸ドメイン間の相互作用、および/または、それらと他のプローブ(単数または複数)に保持されているさらなる機能部(functional moiety)との間の相互作用が関与する。したがって、シグナルの生成は、プローブ間の(より具体的には、これらのプローブが保持している核酸またはその他の機能部/機能性ドメイン間の)相互作用によって決まり、よって、シグナルは、必要なプローブが分析物に結合した場合にのみ生成され、このようにして検出システムの特異性を向上している。
【0004】
PEAにおいて、プローブ対の分析物結合ドメインに連結した核酸部は、前記プローブが近接すると(すなわち、標的に結合すると)互いにハイブリダイズし、核酸ポリメラーゼを使用して伸長する。プローブ対の中の前記プローブの核酸部は、相補的な「ハイブリダイゼーション部位」を含み、それらは互いにハイブリダイズする。その伸長生成物はレポーター核酸を形成し、それを検出することによって、対象試料中に特定の分析物(関連するプローブ対が結合した分析物)が存在することを示す。
【0005】
PLAにおいて、プローブ対のプローブが標的と連結すると、前記プローブ対の分析物結合ドメインに結合した核酸部が近接し、それらは共にライゲーションしてもよく、あるいは、近接すると前記核酸ドメインにハイブリダイズすることが可能な、個別に添加されたオリゴヌクレオチドのライゲーションの鋳型として共に働いてもよい。PLA法において、少なくとも1つの「スプリント」オリゴヌクレオチドが提供され、それは近接プローブ核酸部を架橋する。前記スプリントオリゴヌクレオチドは、プローブ核酸ドメイン上の「ハイブリダイゼーション部位」に対して相補的な配列を含む。プローブ核酸部をスプリントオリゴヌクレオチドへ結合することは、前記2つのプローブ核酸部のライゲーションを可能にする。あるいは、上記のように、第2のスプリント分子が第1のスプリントに付加またはライゲーションされてもよい。前記ライゲーション生成物は増幅され、レポーター核酸として働く。
【0006】
バーコード配列またはプライマーもしくはプローブ結合部位などの固有の識別子(ID)配列を各プローブの核酸部に含めることにより、PEAまたはPLAを使用した多重分析物検出を達成してもよい。特定の分析物に対応するレポーター核酸分子を、それが含むID配列によって識別してもよい。
【0007】
近接アッセイでは、いくつかの「バックグラウンド」(すなわち偽陽性)シグナルは避けられない。反応液中の結合していない近接プローブとの、またはそれらの間での、ランダムな相互作用の結果、バックグラウンドシグナルが発生することがある。現在は、近接反応におけるバックグラウンドシグナルのレベルを、別のネガティブコントロールを使用して決定する。前記ネガティブコントロールは、近接アッセイを緩衝剤のみ(すなわち、試料無し)のものを使用して行うため、シグナルがすべてバックグラウンドシグナルとなる。前記ネガティブコントロールに対して実験のアッセイを比較することにより、真のポジティブシグナルが決定できる。
【0008】
本発明は、改良されたバックグラウンドコントロールを使用して多重近接アッセイを行う方法を提供する。この方法において、異なる近接プローブ対が、ハイブリダイゼーション部位を共有する。これにより、同じハイブリダイゼーション部位を共有する非結合プローブすべての間で「バックグラウンド」シグナルの形成が促される。生成されたレポーター核酸からのシグナルはすべて、まとめて(真陽性も偽陽性も)読まれる。前記の結果得られたレポーター核酸が、対になっているバーコード配列(すなわち、それぞれが、同じ分析物に対応し、真陽性シグナルを示しているバーコード配列)か、または対になっていないバーコード配列(すなわち、異なる分析物に対応し、偽陽性シグナルを示しているバーコード配列)かのどちらを有しているのかに基づいて、真陽性シグナルを偽陽性シグナルから見分けることができる。前記反応で生じた偽陽性シグナルのレベルはバックグラウンドのレベルを示し、これは、バックグラウンドのレベルを決定するための別のネガティブコントロールはもう行う必要が無く、アッセイ全体を簡便にするということを意味する。
【0009】
バックグラウンドを決定するために共有されたハイブリダイゼーション部位を使用することはまた、異なるハイブリダイゼーション部位の間のパフォーマンスの違いを軽減することにもなる。異なるハイブリダイゼーション部位の対は、他と比較して多かれ少なかれ強く相互に作用し、その結果、異なるレベルのバックグラウンドがハイブリダイゼーション部位のそれぞれの対から生じる。前記共有されたハイブリダイゼーション部位は、各ハイブリダイゼーション部位対から生じたバックグラウンドのレベルがそれぞれ個々に決定できるようにし、その結果、バックグラウンドのレベルのより正確な判定が算出される。本発明はこのように、近接アッセイにおける偽陽性の結果の制御のための、より簡単で正確な手段を提供する。
【0010】
発明の概要
このために、本発明は第一の態様において、多重の近接度に基づく検出アッセイを行うことを含む、試料中の複数の分析物を検出する方法を提供し、前記アッセイは、
(i)前記試料を、近接プローブの複数の対に接触させる工程であって、各近接プローブ対は、第1の近接プローブと第2の近接プローブとを含み、各近接プローブは、
(a)分析物に特異的な分析物結合ドメインと、
(b)核酸ドメインとを含み、
各対における両方のプローブは、同じ分析物に特異的な分析物結合ドメインを含み、前記分析物に同時に結合することができ、かつ、各プローブ対は他とは異なる分析物に特異的であり、
各近接プローブの前記核酸ドメインは、ID配列と、少なくとも第1のハイブリダイゼーション配列とを含み、各近接プローブの前記ID配列は異なり、
各近接プローブ対において、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブは、対になったハイブリダイゼーション配列を含むため、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブがその分析物に結合すると、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブのそれぞれの対になったハイブリダイゼーション配列が、互いにハイブリダイズするか、または、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブの前記対になったハイブリダイゼーション配列の各々に対して相補的なハイブリダイゼーション配列を含む共通のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするようになっており、
少なくとも一対のハイブリダイゼーション配列が、少なくとも二対の近接プローブによって共有される、工程と、
(ii)前記近接プローブの核酸ドメインを、互いにハイブリダイズさせるか、または、前記スプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせ、第1の近接プローブのハイブリダイゼーション配列と第2の近接プローブのハイブリダイゼーション配列とを含む連続二重鎖または不連続二重鎖を形成する工程であって、前記二本鎖は少なくとも1つの遊離3’末端を有する工程と、
(iii)前記二重鎖を伸長反応および/またはライゲーション反応させて、前記第1の近接プローブのID配列と第2の近接プローブのID配列とを含む伸長生成物および/またはライゲーション生成物を生成する工程と、
(iv)前記伸長生成物またはライゲーション生成物を増幅する工程と、
(v)前記伸長生成物またはライゲーション生成物を検出する工程であって、前記伸長生成物またはライゲーション生成物の検出は、その中の前記ID配列の識別を含み、各伸長生成物またはライゲーション生成物の相対的な量を決定する工程と、
(vi)前記試料にどの分析物が存在するかを決定する工程であって、
(a)第1の近接プローブ対に属する第1の近接プローブからの第1のID配列と、第2の近接プローブ対に属する第2の近接プローブからの第2のID配列と、を含む伸長生成物および/またはライゲーション生成物がバックグラウンドとみなされ、
(b)近接プローブ対からの第1のID配列と第2のID配列とを含み、かつ前記バックグラウンドよりも多い量で存在する伸長生成物またはライゲーション生成物は、前記近接プローブ対が特異的に結合する前記分析物が前記試料中に存在することを示す、工程とを含む。
【0011】
第二の態様において、本発明は、下記の(i)複数の近接プローブ対と、場合によっては(ii)複数のスプリントオリゴヌクレオチドとを含む製品を提供し、
(i)前記複数の近接プローブ対において、各近接プローブ対は、第1の近接プローブと第2の近接プローブとを含み、各近接プローブは、
(a)タンパク質に特異的な、タンパク質結合ドメインと、
(b)核酸ドメインとを含み、
各対における両方のプローブは、同じタンパク質に特異的なタンパク質結合ドメインを含み、前記タンパク質に同時に結合することができ、かつ、各プローブ対は異なるタンパク質に特異的であり、
各近接プローブの前記核酸ドメインは、ID配列と、少なくとも第1のハイブリダイゼーション配列とを含み、各近接プローブの前記ID配列は異なり、各近接プローブ対において、前記第1の近接プローブと前記第2の近接プローブとは、対になったハイブリダイゼーション配列を含み、
(ii)前記複数のスプリントオリゴヌクレオチドの各々は、近接プローブ対の前記対になったハイブリダイゼーション配列の各々に対して相補的なハイブリダイゼーション配列を含み、
各近接プローブ対の前記ハイブリダイゼーション配列は、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブがそのタンパク質に結合すると、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブのそれぞれの対になったハイブリダイゼーション配列が、互いにハイブリダイズするか、または、スプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする構成であり、
少なくとも一対のハイブリダイゼーション配列が、少なくとも二対の近接プローブによって共有される。
【0012】
詳細な説明
上記に詳述したように、本発明の第一の態様は、試料中の複数の分析物を検出する方法を提供する。本明細書中で使用される「分析物」という用語は、本発明の方法によって検出されることが望まれる、あらゆる物質(たとえば、分子)または物体(entity)を意味する。前記分析物はしたがって、本発明のアッセイ方法の「標的」、すなわち本発明の方法を使用して検出またはスクリーニングされる物質である。
【0013】
したがって、分析物は、検出されることが望まれるいかなる生体分子または化合物であってもよく、たとえば、ペプチドもしくはタンパク質または核酸分子、あるいは低分子であってもよく、有機分子および無機分子を含みうる。分析物は、細胞であってもよいし、ウイルスを含む微生物であってもよいし、これらの断片または生成物であってもよい。したがって、分析物は、特異的な結合パートナー(たとえば、親和性結合パートナー)を開発できるいかなる物質または物体であってもよいことがわかるであろう。必要とされることは、分析物が、少なくとも2つの結合パートナー(特に、少なくとも2つの近接プローブの分析物結合ドメイン)を同時に結合できるということだけである。
【0014】
近接プローブに基づくアッセイは、タンパク質またはポリペプチドを検出するのに特に有用である。したがって、特定の対象となる分析物は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、もしくはプリオンなどのタンパク質性の分子、またはタンパク質成分もしくはポリペプチド成分などを含むあらゆる分子、あるいはこれらの断片を含む。本発明の特に好適な実施形態において、前記分析物は、完全にタンパク性の分子または部分的にタンパク質性の分子であり、特に、タンパク質である。すなわち、前記分析物は、タンパク質であるか、または、タンパク質を含むことが好ましい。
【0015】
前記分析物は、単一の分子であってもよいし、2つ以上の分子サブユニットを含む複合体であってもよい。分子サブユニットは、互いに共有結合していてもよいし、していなくてもよい、また、分子サブユニットは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。したがって、このような複合分析物は、細胞または微生物だけでなく、タンパク質複合体であってもよく、または、タンパク質と1つ以上のその他の種類の生体分子とを含む生体分子複合体であってもよい。したがって、このような複合体は、ホモ多量体であってもよいし、ヘテロ多量体であってもよい。タンパク質などの分子の凝集体、たとえば、同じタンパク質の会合体または異なるタンパク質の凝集体が、標的分析物であってもよい。前記分析物はまた、タンパク質またはペプチドと、DNAまたはRNAなどの核酸分子との複合体であってもよい。特定の対象としては、タンパク質と核酸との相互作用、たとえば、転写因子などの制御因子とDNAまたはRNAとの相互作用であってもよい。特定の実施の形態においてはこのように、前記分析物はタンパク質-核酸複合体(たとえば、タンパク質-DNA複合体またはタンパク質-RNA複合体)である。他の実施形態において、前記分析物は非核酸分析物であり、これは、核酸分子を含まない分析物を意味する。非核酸分析物としては、上述のようにタンパク質およびタンパク質複合体があり、また、小分子および脂質がある。
【0016】
本発明の方法は、試料中の複数の分析物を検出するためのものである。前記複数の分析物は、同じ種類であってもよく(たとえば、分析物がすべてタンパク質であってもよく、またはタンパク質複合体であってもよく)、または異なる種類であってもよい(分析物の一部がタンパク質であり、他がタンパク質複合体、脂質、タンパク質-DNA複合体、もしくはタンパク質-RNA複合体など、または、かかる種類の分析物のいずれの組み合わせであってもよい)。
【0017】
本開示で使用される「複数の(a plurality of)」という用語は、その標準的な定義通り、1より多い(すなわち、2以上)ということを意味する。用語「複数の(a plurality of)」と「多数の(multiple)」は、互いに言い換えが可能である。本発明の方法は、試料中の少なくとも2つの分析物を検出するために使用される。しかしながら、2つよりかなり多い分析物が、本発明の方法に従って検出されることが好ましい。好ましくは、少なくとも10、20、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、または1500個の分析物が、本方法によって検出される。
【0018】
「検出すること(detecting)」、または「検出された(detected)」という用語は、本明細書において、分析物の有無を決定する(すなわち、標的分析物が、対象試料中に存在するか否かを決定する)あらゆる手段を含んで広く使用される。したがって、本発明の方法が行われて試料中に目的の特定の分析物を検出する試みがなされたが、前記分析物が試料中に存在せず検出されなくても、前記試料からの分析物の有無が評価されているため、分析物を「検出する」工程は行われている。分析物を「検出する」工程は、検出が成功したこと、すなわち、前記分析物が実際に検出されたことに依存しない。
【0019】
分析物を検出することは、さらに、試料中の分析物の濃度または存在量を測定するあらゆる形態を含んでもよい。標的分析物の絶対的な濃度を決定してもよく、または、前記標的分析物の濃度を、前記試料中または別の試料中の他の標的分析物(単数または複数)の濃度と比較するために、前記分析物の相対的濃度を決定してもよい。
このように、「検出すること」は、分析物の有無、またはその量をなんらかの方法で、決定、測定、調査、または解析することを含んでもよい。定量的および定性的決定、測定、または評価が含まれ、半定量的決定も含まれる。かかる決定、測定、または評価は、たとえば試料中に2つ以上の異なる分析物が検出されているときは相対的でもよく、または絶対的でもよい。このように、試料中の標的分析物を定量する文脈で使用される時の「定量する」という用語は、絶対的定量化または相対的定量化を指すことができる。絶対的定量化は、既知の濃度(単数または複数)のコントロール分析物を1つ以上含ませることにより、および/または、前記標的分析物の検出されたレベルを既知のコントロール分析物と照合することにより(たとえば、標準曲線を生成することにより)、達成してもよい。あるいは、相対的定量化は、2つ以上の異なる標的分析物の間で検出されたレベル又は量を比較して前記2つ以上の異なる標的分析物のそれぞれの相対的定量化、すなわち、互いに対する定量化を提供することにより、達成できる。同様に、2つの異なる試料における特定の分析物の相対的なレベルを定量化してもよい。本発明の方法において定量化が達成できる方法を、さらに以下に論ずる。
【0020】
本発明の方法は、試料中の複数の分析物を検出するためのものである。あらゆる目的の試料は、本発明にしたがって解析されてもよい。これは、すなわち、目的の分析物を含むか、または含んでいてもよいあらゆる試料であって、目的の分析物を含むかどうか決定するために、および/またはその中の目的の分析物の濃度を決定するために、解析することが望まれる、あらゆる試料である。
【0021】
このように、あらゆる生体試料もしくは臨床試料が本発明にしたがって解析されてもよく、たとえば、生物のあらゆる細胞試料もしくは組織試料、もしくは生物由来の、あらゆる細胞試料もしくは組織試料、またはそれら由来のあらゆる体液もしくは調製物のみならず、細胞培養物、細胞標本、細胞破砕物などの試料等が、本発明にしたがって解析されてもよい。たとえば土壌試料や水試料などの環境試料、または食品試料も、本発明にしたがって解析されてもよい。試料は、新たに調製されたものであってもよいし、たとえば保存用に、なんらかの簡便な手法で前処理されたものであってもよい。
【0022】
したがって、代表的な試料としては、生体分子またはその他の所望の分析物もしくは標的分析物を含有しうるあらゆる物質が挙げられ、たとえば食品および関連製品、臨床試料および環境試料などを含まれる。試料は生体試料であってもよく、前記生体試料は、原核細胞または真核細胞、ウイルス、バクテリオファージ、マイコプラズマ、プロトプラスト、およびオルガネラを含む、あらゆるウイルス物質または細胞物質を含有していてもよい。したがって、このような生体物質は、あらゆる種類の哺乳類細胞および/または非哺乳類細胞、植物細胞、藍藻を含む藻類、菌類、細菌類、原生動物などを含み得る。
【0023】
前記試料は臨床試料であることが好ましく、たとえば、全血や、血漿、血清、バッフィコート、および血液細胞などの血液由来の生成物、尿、糞便、脳脊髄液またはその他の体液(たとえば、呼吸器の分泌物、唾液、乳など)、組織、生検組織などが挙げられる。前記試料は血漿試料または血清試料であることが特に好ましい。よって、本発明の方法は、たとえば、バイオマーカーの検出において使用されてもよく、または、病原体由来の分析物について試料を解析するために使用されてもよい。試料は、特に、ヒト由来であってもよいが、本発明の方法は、非ヒト動物由来の試料(すなわち、獣医学的試料)にも同じく適用されてもよい。試料は、本発明の方法で使用するためになんらかの簡便なまたは望ましい手法、たとえば、細胞溶解または除去などで前処理され、調製されたものであってもよい。
【0024】
本発明の方法は、多重近接に基づく検出アッセイを行うことを含む。本明細書において、「多重」という用語は、複数の(すなわち、少なくとも2つの)異なる分析物が同じ反応混合物中で同時に解析されるアッセイのことをいうために使用される。しかしながら、本発明によると、好ましくは、2つよりもかなり多い分析物が多重反応で解析される。たとえば、多重反応が、少なくとも5個、10個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、60個、またはそれよりも多くの分析物を解析してもよい。ある一定の多重反応が、この数よりも多い分析物を解析してもよく、たとえば少なくとも70個、80個、90個、100個、110個、120個、130個、140個または150個、またはそれよりも多くの分析物を解析してもよい。
【0025】
「近接に基づく検出アッセイ(proximity-based detection assay)」とは、試料中の分析物を検出するために近接プローブを利用するアッセイである。概して言えば、近接プローブは、少なくとも互いに同系(cognate)の近接プローブと相互に作用し、分析物を検出するために検出されてよいシグナルを生成するプローブである。近接プローブは、当該技術分野においてよく知られている。本開示および本発明に従って使用され本開示の請求項に定義される近接プローブは、分析物に特異的な分析物結合ドメインと、核酸ドメインと、を含む実体である。「分析物に特異的」とは、分析物結合ドメインが特定の標的分析物を特異的に認識しそれに結合する、すなわち、他の分析物や部分に対して結合するよりも高いアフィニティでその標的分析物に結合することを意味する。前記分析物結合ドメインは、好ましくは抗体であり、特にモノクローナル抗体である。前記抗原抗原結合ドメインを含む抗体の抗体断片または誘導体は、また、分析物結合ドメインとしての使用にも好適である。かかる抗体断片または誘導体の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびscFv分子がある。
【0026】
Fab断片は、抗体の抗原結合ドメインからなる。個々の抗体は、それぞれが軽鎖およびそれに結合した重鎖のN末端部からなる2つのFab断片を含有するものとみなされてもよい。したがって、Fab断片は、軽鎖全体と、これが結合する重鎖のVHドメインおよびCH1ドメインとを含有する。抗体をパパインで消化することによって、Fab断片が得られてもよい。
【0027】
F(ab’)2断片は、抗体のFab断片2つと重ドメインのヒンジ領域とからなり、2本の重鎖を連結するジスルフィド結合を含む。換言すると、F(ab’)2断片は、2つのFab断片が共有結合したものとみなすことができる。抗体をペプシンで消化することによって、F(ab’)2断片が得られてもよい。F(ab’)2断片を還元すると、2つのFab’断片が得られる。これらは、断片を他の分子に接合させるのに有用であり得るさらなるスルフヒドリル基を含有するFab断片とみなすことができる。ScFv分子は、抗体の軽鎖および重鎖の可変ドメインを融合することにより産生される合成コンストラクトである。典型的には、この融合は、抗体遺伝子を操作し、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの両方を含む融合タンパク質を産生することによって、組み換えで行うことができる。
【0028】
近接プローブの前記核酸ドメインは、DNAドメインまたはRNAドメインであってもよい。好ましくは、前記拡散ドメインはDNAドメインである。それぞれの対の前記近接プローブの核酸ドメインは、典型的には、互いにハイブリダイズするか、または1つ以上の共通のオリゴヌクレオチド分子にハイブリダイズしてもよい(対になっている両方の近接プローブの核酸ドメインがこの共通のオリゴヌクレオチド分子にハイブリダイズしてもよい)ように設計されている。したがって、前記核酸ドメインは、少なくとも部分的に一本鎖でなければならない。ある実施形態において、前記近接プローブの核酸ドメインは、全体が一本鎖である。他の実施形態においては、前記近接プローブの核酸ドメインは、部分的に一本鎖であり、一本鎖の部位と二本鎖の部位との両方を含む。
【0029】
近接プローブは、典型的には対で提供され、各対は標的分析物に特異的である。前述のように、標的分析物は単一の物体であってもよく、特に個別のタンパク質であってもよい。本実施形態において、近接対における両方のプローブが標的分析物(たとえばタンパク質)に結合するが、異なるエピトープにおいてである。前記エピトープは重なりがない(non-overlapping)ので、対のうちの一方のプローブがそのエピトープに結合することが、前記対の他方のプローブがそのエピトープに結合することを干渉したり遮断したりすることがない。あるいは、前述のように、標的分析物は複合体であってもよく、たとえばタンパク質複合体であってもよく、その場合、前記対のうちの一方のプローブは前記複合体の一方の構成要素に結合し、前記対のうちの他方のプローブは前記複合体の他方の構成要素に結合する。前記プローブは、前記複合体の中で、タンパク質の相互作用部位(すなわち、タンパク質がそこを介して互いに相互作用する部位)とは異なる部位で、タンパク質に結合する。
【0030】
前述のように、近接プローブは対で提供され、各対は標的分析物に特異的である。これは、各近接プローブ対において、両方のプローブが、同一の分析物に特異的な分析物結合ドメインを含むことを意味する。使用されている検出アッセイが多重アッセイであるので、多数の異なるプローブ対が各検出アッセイで使用され、各プローブ対は他とは異なる分析物に特異的である。すなわち、各々他とは異なるプローブ対のおける分析物結合ドメインは、他とは異なる標的分析物に特異的である。近接プローブを利用したいずれの検出方法が本発明に従って、使用されてもよい。上記に詳述したように、特に好適な近接度に基づく検出アッセイは、近接伸長アッセイ(PEA)および近接ライゲーションアッセイ(PLA)である。
【0031】
本発明の方法は、前記試料を、近接プローブの複数の(すなわち多数の)対に接触させる第1の工程を含む。各近接プローブ対は、第1の近接プローブと第2の近接プローブとを含み、各近接プローブは、(a)分析物に特異的な分析物結合ドメインと、(b)核酸ドメインとを含む。各近接プローブ対において、両方のプローブが同じ分析物に特異的な分析物結合ドメインを含み、前記プローブ対は他とは異なる分析物に特異的である(すなわち、各プローブ対は、他とは異なる分析物に特異的な分析物結合ドメインを含む)。
【0032】
各近接プローブの前記核酸ドメインは、識別(ID)配列を含む。各近接プローブは、固有ID配列を含む(すなわち、他とは異なるID配列が各近接プローブに存在する)。ただし、これは個々のプローブ分子がそれぞれ固有のID配列を有することを意味しない。むしろ、各プローブ種が固有のID配列を有する。「プローブ種」とは、特定の分析物結合ドメインを有するプローブを意味し、換言すると、同じ分析物結合ドメインを有するプローブ分子はすべて同じ固有ID配列を有する。他とは異なるプローブ種はどれも、他とは異なるID配列を有する。さらに以下に論じる通り、前記ID配列により、本発明の方法において生成されるレポーター核酸の識別が可能になる。
【0033】
各近接プローブの前記核酸ドメインは、また、少なくとも1つの(または少なくとも第1の)ハイブリダイゼーション配列を含む。前記第1のハイブリダイゼーション配列(使用されるプローブの構造によっては、近接プローブ中ではこれらのみかもしれないハイブリダイゼーション配列)は、各近接プローブ対の中で対にされる。「対になったハイブリダイゼーション配列」とは、前記対の中の2つのハイブリダイゼーション配列が直接的または間接的に互いに相互作用できるため、本発明の方法が行われて一対の近接プローブがその標的分析物に結合する時、前記2つのプローブの核酸ドメインが直接的または間接的に互いに連結するようになることを意味する。
【0034】
特定の好ましい実施の形態において、対になったハイブリダイゼーション配列は互いに相補的であるため、互いにハイブリダイズする。本実施形態において、一対の第1の近接プローブの前記ハイブリダイゼーション配列は、前記対の第2の近接プローブの反転相補するハイブリダイゼーション配列の逆相補である。
別の実施の形態において、前記対になったハイブリダイゼーション配列は、互いに直接的にハイブリダイズせず、かわりに、その両方が、本明細書においてスプリントオリゴヌクレオチドと称される、別個の架橋するオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。前記別個のオリゴヌクレオチドは、本アッセイ方法において第3のオリゴヌクレオチドとみなしてもよい。しかしながら、1つ以上のスプリントオリゴヌクレオチドが使用されてもよく、したがって、前記対になったハイブリダイゼーション配列がハイブリダイズしてもよい第3の、またはそれ以上のオリゴヌクレオチドがあってもよい。換言すれば、前記対になったハイブリダイゼーション配列は、共通オリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができる。これは、前記核酸ドメインのライゲーションおよび/または伸長の鋳型として働くことができる鋳型オリゴヌクレオチドであってもよく、または、前記第3または場合によってはそれ以上のオリゴヌクレオチドの伸長および/またはライゲーションを前記核酸ドメインが鋳型となって行うものであってもよい。
【0035】
かかる1つの実施形態において、前記近接プローブの対とともに前記スプリントオリゴヌクレオチドが、各近接アッセイセットの第3の構成要素を形成してもよい。前記スプリントオリゴヌクレオチドは、2つのハイブリダイゼーション配列を有している。一方は、前記プローブ対における第1のプローブのハイブリダイゼーション配列に対して相補的であり、他方は、前記プローブ対における第2のプローブのハイブリダイゼーション配列に対して相補的である。前記スプリントオリゴヌクレオチドはこのように、その近接アッセイセットにおける近接プローブの対になったハイブリダイゼーション配列の両方に対してハイブリダイズできる。とりわけ、前記スプリントオリゴヌクレオチドは、その近接アッセイセットにおける近接プローブの対になったハイブリダイゼーション配列の両方に対して、同時にハイブリダイズできる。したがって、一対の近接プローブはそれらの分析物に結合して近接し、前記プローブの核酸ドメインが前記スプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、それにより、前記2つのプローブ核酸ドメインと前記スプリントオリゴヌクレオチドとを含む複合体を形成する。
【0036】
本方法において、少なくとも一対のハイブリダイゼーション配列が、少なくとも二対の近接プローブによって共有される。換言すると、少なくとも二対の近接プローブ(異なる分析物に結合する近接プローブ)が、同じハイブリダイゼーション配列を有する。一対のハイブリダイゼーション配列を共有する対からのプローブは、互いにハイブリダイズできるか、または共に複合体を形成できる。ハイブリダイゼーションは、一対の近接プローブがどちらもその分析物に結合している場合にその近接プローブ核酸ドメイン間に最も生じやすく、これは前記プローブ分析物への結合が前記核酸ドメインを近接させるからである。しかしながら、溶液中の未結合の近接プローブの核酸ドメイン(すなわち、分析物に結合していない近接プローブの核酸ドメイン)の対になったハイブリダイゼーション配列間で不可避的に相互作用が形成されることがあり、または一方のみの近接プローブがその標的分析物に結合している場合、溶液中の他のプローブと相互作用することもある。とりわけ、溶液では、未結合の近接プローブの核酸ドメインが、対になったハイブリダイゼーション配列を有するいずれの近接プローブの核酸ドメインにもハイブリダイズしがち(または複合体を形成しがち)な傾向を等しく有し、これには前記近接プローブが同じ分析物に結合するか、異なる分析物に結合するかは関わらない。かかる非特異的なハイブリダイゼーションの結果(すなわち、溶液中の未結合の近接プローブ間でのハイブリダイゼーションの結果)生成されたレポーター核酸は、以下にさらに記載するように、バックグラウンドを形成する。
【0037】
プローブ対のかなりの割合が、それらのハイブリダイゼーション配列を、少なくとも1つの他の近接プローブ対と共有することが好ましい。特定の実施形態において、近接プローブ対の少なくとも25%、50%、または75%は、それらのハイブリダイゼーション配列を、別の近接プローブ対と(すなわち、少なくとも1つの他の近接プローブ対と)共有する。特定の実施形態において、すべてのプローブ対は、それらのハイブリダイゼーション配列を、少なくとも1つの他の近接プローブ対と共有する。しかしながら、上記から明らかであるように、別の実施形態では、少なくとも一対のハイブリダイゼーション配列が、単一の近接プローブ対に固有である。すなわち、少なくとも近接プローブのうちの一対はそのハイブリダイゼーション配列を、他のいずれかの近接プローブ対と共有しない。特定の実施形態において、近接プローブ対の少なくとも75%、50%、または25%は、それらのハイブリダイゼーション配列を、別の近接プローブ対と(すなわち、他のいずれかの近接プローブ対と)共有しない。
本発明の実施形態において、ハイブリダイゼーション配列の一対は、ハイブリダイゼーション配列を共有しているプローブ対のすべてにわたって共有されている。すなわち、そのハイブリダイゼーション配列を他のプローブ対と共有するすべてのプローブ対は、同じハイブリダイゼーション配列対を有している。本実施形態では、可能性としては多重アッセイに使用されているすべてのプローブ対が、同じハイブリダイゼーション配列対を有してもよい。
【0038】
しかしながら、同じハイブリダイゼーション配列対を共有するプローブ対が多すぎると、生じるバックグラウンド相互作用が多すぎて真陽性シグナルを隠すことになりかねない。したがって、ハイブリダイゼーション配列の各対が、より限定された数のプローブ対によって共有されることが好ましい。特定の実施形態において、20個、15個、10個、または5個以下の近接プローブ対が、同じハイブリダイゼーション配列対を共有する。このように、本発明の多重アッセイが近接プローブ対の多数のセットを使用し、各近接プローブ対がハイブリダイゼーション配列の特定の対を共有することが好ましい。このように、特定の近接プローブ対セット中のすべての近接プローブ対が、同じハイブリダイゼーション配列対を共有するが、ハイブリダイゼーション配列の他とは異なる対が、各々他とは異なる近接プローブ対セットによって使用される。これは、各プローブ対セット内のすべてのプローブ対の間での非特異的なハイブリダイゼーションを可能にするが、異なるプローブ対セットにおけるプローブ対の間でのハイブリダイゼーションを防止する。概して、各プローブ対セットは、2つ~5つの範囲のプローブ対を含むが、好ましければもっと大きなセットが使用されてもよい。
【0039】
任意の多重アッセイに使用されるプローブ対の数は、前記アッセイで使用されるプローブ対の総数、すなわち、前記アッセイで検出される異なる分析物の数で決まる。不可避的に、前記アッセイに使用されるプローブ対の数が多くなればなるほど、プローブ対セットの数も多くなる。
【0040】
本発明の方法の第1の工程は、前記試料を、前述の近接プローブの複数の対に接触させる工程を含む。対になっている近接プローブは、対として事前に混合して試料に添加してもよいし、または個々の近接プローブとして添加してもよい。すなわち、前記試料は対になっている近接プローブとそれぞれ別々に接触してもよいし、前記プローブを同時に接触させるか、または同じ反応混合物中で接触させるかすることによって、まとめて同時に接触してもよい。もし前記近接プローブが、プローブ対の両方のプローブが(お互いにハイブリダイズするのではなく)共通のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする構成であれば、前記様々なスプリントオリゴヌクレオチドを、前記近接プローブ対と一緒に含んでもよく、または、対になっている近接プローブの内の1つと一緒に含んでもよく、またはそれぞれ同時にもしくは前記近接プローブの後に添加してもよい。「試料に接触させる」とは、試料と近接プローブ対とを混合する、という意味である。近接プローブ対を試料に添加してもよいし、または逆に、試料を近接プローブ対に添加してもよい。試料は、近接プローブ対に接触する前に希釈してもよい。試料の希釈が必要であれば、希釈は適切な希釈剤を使用して、たとえば緩衝剤を使用して行えばよい。希釈剤としての使用に好適な緩衝剤の例としては、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、TBS(Tris緩衝生理食塩水)、HBS(HEPES緩衝生理食塩水)などがある。使用される前記緩衝剤(またはその他の希釈剤)は、汚染分析物(contaminant analyte)を含有しないように精製溶媒(たとえば水)中で作らなければならない。前記希釈剤はこのように滅菌されているべきであり、もし希釈剤として、または希釈剤の主成分として水が使用されるなら、使用される水は好ましくは超純水(たとえば、Milli-Q水)である。
【0041】
試料を近接プローブ対に接触させた後、適宜、前記近接プローブの核酸ドメインを、互いにハイブリダイズさせるかまたは、スプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる。核酸ドメインを、互いにハイブリダイズさせるか、またはスプリントオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせた結果、連続二重鎖または不連続二重鎖が形成される。本明細書において「二重鎖」とは、二本鎖核酸の部分である。前記二重鎖は、第1の近接プローブのハイブリダイゼーション配列と第2の近接プローブのハイブリダイゼーション配列とを含む。前記ハイブリダイゼーション配列が、互いにハイブリダイズするよりもむしろ、共通のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするなら、前記二重鎖もまた前記共通のスプリントオリゴヌクレオチドを含む。
【0042】
この工程において、核酸ドメインを互いにハイブリダイズさせると、その結果、連続二重鎖が形成され、すなわち、両方の核酸ドメインのハイブリダイゼーション配列の全体を含む単一の二重鎖が形成される。前記プローブ核酸ドメインを共通のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイゼーションさせると、その結果、不連続二重鎖が形成されるが、前記不連続二重鎖は、前記スプリントオリゴヌクレオチドと第1のプローブのハイブリダイゼーション配列との間に形成された第1の部位と、前記スプリントオリゴヌクレオチドと第2のプローブのハイブリダイゼーション配列との間に形成された第2の部位と、前記二重鎖の前記第1の部位と前記第2の部位との間に(すなわち、前記2つのプローブのハイブリダイゼーション配列の間に)位置するギャップとを含む。前記不連続二重鎖は、あるいは、2つの別々の二重鎖とみなされてもよい(すなわち、前記不連続二重鎖の第1の部位と第2の部位は、あるいは、別々の第1の二重鎖および第2の二重鎖としてみなされてもよい)。このようにとらえると、前記プローブ核酸ドメインを共通のスプリントオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせた結果、2つの連結された二重鎖が形成されたことになる。前記二重鎖は、前記共通のスプリントオリゴヌクレオチドによって接合されて連結される。
【0043】
前記核酸ドメインを互いにハイブリダイズさせることにより生成された前記二重鎖、または前記核酸ドメインを共通のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせることにより生成された前記二重鎖は、遊離3’末端を含む(または少なくとも1つの遊離3’末端ー前記二重鎖は、多数の遊離3’末端を含んでもよい。ある実施形態において、前記二重鎖は、2つの遊離3’末端を含む)。遊離3’末端は、ポリメラーゼによる伸長が可能な二重鎖の核酸鎖の3’末端である。
【0044】
この工程において、ハイブリダイゼーションは一般的に、および最も頻繁に、標的分析物に結合する近接プローブ対の中の核酸プローブの核酸ドメインの間に生じる。しかしながら、上述したように、バックグラウンドハイブリダイゼーションもまた、溶液中の結合していないかまたは対になっていないプローブの核酸ドメインに対して、またはそれらの間に、生じる。共通のハイブリダイゼーション配列を共有するプローブ対からのプローブの核酸ドメインの間に、かかるバックグラウンドハイブリダイゼーションが生じる。
【0045】
前記核酸ドメインをハイブリダイズさせて前記二重鎖を形成した後に、前記二重鎖に伸長反応および/またはライゲーション反応を施し、前記第1の近接プローブのID配列と第2の近接プローブのID配列とを含む伸長生成物および/またはライゲーション生成物を生成する。実施される反応の性質は、実施される近接アッセイがPLAであるかPEAであるかで決まる。PEAでは、伸長反応のみが行われ、したがって伸長生成物を生じる。数々のPEAの変形例を以下に論じる。PLAでは、ライゲーション反応が行われるが、伸長反応も行われてもよい。PLAの変形例もまた以下に論じる。好ましくは、前記伸長生成物および/またはライゲーション生成物は、直鎖状伸長生成物および/または直鎖状ライゲーション生成物である(すなわち、環状生成物ではない)。
【0046】
前記伸長生成物またはライゲーション生成物が生成されると、それが増幅される。増幅は、なんらかの周知の核酸増幅技術を使用して行われてもよい。好ましくは、増幅はPCRによって行われるが、核酸増幅のなんらかの他の方法が利用されてもよく、たとえばループ介在等温増幅法(Loop-Mediated Isothermal Amplification、LAMP法)が利用されてもよい。
【0047】
好ましい実施形態において、多重アッセイで生成されるレポーター核酸(すなわち、伸長生成物および/またはライゲーション生成物)は、共通のプライマー結合部位を含む。すなわち、生成されたレポーター核酸はすべて、プライマー結合部位の同じ対を含む。これは、生成されたすべてのレポーター核酸を、単一のプライマー対を使用した単一の増幅反応中で増幅させるため、有利である。
【0048】
いったん増幅されれば、前記レポーター核酸が検出される。レポーター核酸の検出は、その中にID配列を検出することにより達成される。伸長生成物またはライゲーション生成物の中にID配列を検出することにより、互いにハイブリダイズしたどのプローブが前記生成物を生成するのか決定できる。各伸長生成物またはライゲーション生成物の相対的な量も、この工程で決定される。当該技術分野において知られているいずれかの好適な検出方法を使用してもよい。
【0049】
前記ID配列は、近接プローブを区別または識別させるなんらかの配列であってもよい。したがってそれは、特定の近接プローブを検出させるタグ配列である。前記ID配列は、直接検出されてもよく、または、その検出を可能にするさらなる物体のための、たとえば、特定のプライマーまたは検出プローブのための、結合部位を提供してもよい。
本発明の好ましい実施形態において、前記ID配列は、バーコード配列である。バーコード配列は、特定の分析物に対応すると定義されている特定のヌクレオチド配列である。もし各プローブが1つのバーコード配列を有していれば、各レポーター核酸は2つのバーコード配列を含むみ、これは組み合わせられて前記生成物を産する前記2つのプローブの各々から1つずつである。前記2つのバーコード配列が検出される場合、組み合わせられて前記レポーター核酸を産する前記2つのプローブが識別される。もし前記2つのバーコード配列が近接プローブ対由来であれば(すなわち、同じ標的分析物に結合する一対のプローブ由来であれば)、前記レポーター核酸は、前記試料中の標的分析物の存在を示しうるか、またはバックグラウンドでありうる。もし前記2つのバーコード配列が対になっていない近接プローブ由来であれば(すなわち、前記2つのバーコード配列が異なる分析物を示していれば)、前記レポーター核酸はバックグラウンドであるとみなされる。
【0050】
前記バーコード配列は、プローブの核酸ドメインの中に位置する。前記バーコード配列は第1のハイブリダイゼーション配列の中には位置しない。上記に詳述したように、各近接プローブは他と異なるバーコード配列を含み、前記ハイブリダイゼーション配列は、多数の異なるプローブの間で共有される。バーコード配列はまた、共通のプライマー結合部位には位置しない。前述のように、各プローブは固有のバーコード配列を含み、その一方で、すべてのプローブが共通のプライマー結合部位を含むことが好ましい。
【0051】
バーコード配列は、様々な方法で検出できる。まず、特異的バーコード配列は、多重検出アッセイ中に生成されるすべてのレポーター核酸分子をシーケンスすることにより検出してもよい。生成されたすべてのレポーター核酸分子をシーケンスすることにより、生成されたすべての異なるレポーター核酸分子が、そのバーコード配列により識別されてもよい。核酸シーケンシングは、好ましいレポーター核酸検出/分析方法である。
【0052】
レポーター核酸分子の中のバーコードを検出するその他の好適な方法としては、PCRに基づく方法がある。たとえば、「TaqMan」プローブを利用した定量的PCRを行ってもよい。この例では、前記レポーター核酸分子(または少なくともバーコード配列を含む各レポーター核酸分子の一部)を増幅し、各バーコード配列に対して相補的なプローブを、各々他とは異なるプローブが他とは異なる区別可能な蛍光体に接合している(conjugate)状態で、提供する。各バーコードの有無は、前記特定のバーコードが増幅されているかどうかに基づいて決定することができる。しかしながら、バーコード配列を解読するためにプローブを使用する組み合わせ方法が知られており、多重容量をある程度拡張するために使用してもよいが、上記のように、PCRに基づく方法は、比較的数の少ない異なる配列を同時に解析することのみに好適であることは明らかである。核酸シーケンシングは、一回のシーケンシングで識別できる配列の数に何らかの実際の制限をかけることが無く、PCRを使用した検出よりも高いレベルの多重反応を可能にするため、シーケンシングがレポーター核酸分子検出のための好ましい方法である。
【0053】
好ましくは、ハイスループットDNAシーケンシングの形態が、レポーター核酸分子の中のバーコードを検出するために使用される。合成によるシーケンシングが、好ましいDNAシーケンシング方法である。合成技術によるシーケンシングの例としては、パイロシーケンシング、可逆的ダイターミネーターシーケンシング、およびイオントレントシーケンシングがあり、いずれも本方法に利用できる。好ましくは、レポーター核酸を、超並列DNAシーケンシングを使用してシーケンスする。超並列DNAシーケンシングは、特に、合成によるシーケンシング(上述のように、たとえば、可逆的ダイターミネーターシーケンシング、パイロシーケンシング、またはイオントレントシーケンシング)に適用してもよい。可逆的ダイターミネーター法を使用した超並列DNAシーケンシングは、好ましいシーケンシング方法である。可逆的ダイターミネーター法を使用した超並列DNAシーケンシングは、たとえば、Illumina(R) NovaSeqTMシステムを使用して行われてもよい。
【0054】
当該技術分野において知られているように、超並列DNAシーケンシングは、多数の(たとえば、数千、または数百万、またはそれ以上の)DNA鎖が並行して、すなわち同時にシーケンスされる技術である。超並列DNAシーケンシングは、標的DNA分子が固体表面に、たとえば、フローセルの表面やビーズに、固定化されることを必要とする。各固定化DNA分子をその後、個別にシーケンスする。一般的に、可逆的ダイターミネーターシーケンシングを使用した超並列DNAシーケンシングは、フローセルを固定化表面として利用し、パイロシーケンシングまたはイオントレントシーケンシングを使用した超並列DNAシーケンシングは、ビーズを固定化表面として利用する。
【0055】
当業者に知られているように、超並列シーケンシングにおけるDNA分子の表面への固定化は、一般的に、1つ以上のシーケンシングアダプターを前記分子の末端に付着(attach)させることにより達成でき、前記DNA分子を標的表面に付着させることができる。本発明の方法は、このように、1つ以上のシーケンシング用アダプター(シーケンシングアダプター)をレポーター核酸分子に付加することを含んでもよく、これは以下にさらに詳細に記載されている。
【0056】
別の実施の形態において、前記ID配列はバーコード配列ではない。前記ID配列は、むしろ、他の手段によるプローブの識別を可能にしてもよい。ID配列の性質に応じて、ID配列を識別するためにいずれかの好適な方法が使用されてもよい。たとえば、前記ID配列は、制限部位(すなわち、制限酵素によって認識されるヌクレオチド配列)であってもよい。本実施形態において、各近接プローブの前記核酸ドメインは、(他とは異なる制限酵素によって認識され切断されるように)他とは異なる制限部位を含む。多重アッセイから生成されたレポーター核酸に対して、制限酵素の異なる組み合わせをこのように適用して、プローブのどんな組み合わせが相互作用しているかを決定してもよい。適用された対の制限酵素の両方によってレポーター核酸が切断されるなら、このことは、前記酵素に対応するそれぞれの制限部位を含む2つのプローブが相互作用してレポーター核酸を生じている、ということを示している。
【0057】
他の実施形態において、前記ID配列はプライマー結合部位である。本実施形態において、各近接プローブの前記核酸ドメインは、固有のプライマー結合部位を含む。プライマーの組み合わせの異なるものを使用してレポーター核酸分子を増幅して、プローブのどんな組み合わせが相互作用しているかを決定する。特定のプライマー対を使用した増幅反応が増幅生成物を生じていれば、このことは、前記それぞれのプライマー結合部位を含む2つのプローブが相互作用してレポーター核酸を生じていることを示している。なんらかの方法で特定のプローブを識別するよう機能する他の配列を、代わりにID配列として使用してもよい。
【0058】
バーコード配列をID配列として使用することが特に好ましく、なぜなら、これによってすべてのレポーター核酸分子が単一のシーケンシング反応で検出できるようになるからである。ユニークな制限部位やプライマー結合部位など、ID配列の別の形態を使用することは効率が悪く、これは、制限酵素やプライマーの各組み合わせを別個の反応でテストして、どのプローブが相互作用してレポーター核酸を生成するか決定する必要があるからである。しかしながら、ID配列のこのような別のタイプが好ましい場合もありうる。
【0059】
このように、レポーター核酸分子(すなわち、伸長生成物またはライゲーション生成物が検出され、上記に詳述したように、当該検出は各レポーター核酸の中のID配列(好ましくはバーコード配列)を識別することを含む。前記検出工程は、生成された様々なレポーター核酸分子の検出のみならず、各レポーター核酸分子の相対的な量の決定をも含む。これは、いずれかの好適な手段によって達成されればよい。ハイスループットDNAシーケンシングは、上記に詳述したようにレポーター核酸検出の好ましい手段であるが、レポーター核酸分子の相対的な定量化に好適であり、これは、各特定のレポーター核酸の数がシーケンシング反応によって定量化されるからである。前述のように、定量的PCRは別の好適な手段であり、それによってレポーター核酸が検出できる。定量的PCRによってレポーター核酸分子を検出することにより、各レポーター核酸分子の相対的な量の定量化が可能になる。各レポーター核酸分子の相対的な量を定量化する他の好適な方法を使用してもよい。
【0060】
レポーター核酸が検出されれば、試料にどの分析物が存在するかを決定する工程が行われる。この工程において、まず、バックグラウンドのレベルが決定される。非特異的なプローブの相互作用の結果として生成されるレポーター核酸のすべてが、バックグラウンド相互作用とみなされてもよい。これらバックグラウンド相互作用の各々の相対的な量を決定し、バックグラウンド相互作用のレベルを決定する。「非特異的なプローブの相互作用」とは、対になっていないプローブの間の相互作用、すなわち異なる分析物に結合するプローブの間の相互作用を意味する。かかるレポーター核酸は、第1の近接プローブ対に属する第1の近接プローブからの第1のID配列(たとえば、バーコード配列)と、第2の近接プローブ対に属する第2の近接プローブからの第2のID配列(たとえば、バーコード配列)とを含む伸長生成物および/またはライゲーション生成物である。かかるレポーター核酸は、あるいは、第1の分析物に特異的な近接プローブからの第1のID配列(たとえば、バーコード配列)と、第2の(または異なる)分析物に特異的な近接プローブからの第2のID配列(たとえば、バーコード配列)とを含む伸長生成物および/またはライゲーション生成物と称されてもよい。上述したように、対になっていない近接プローブの間の非特異的な相互作用は、溶液中で遊離しているプローブの間に生じるか、または、一方のプローブのみがその分析物に結合している場合、そのハイブリダイゼーション部位の共有の結果生じてもよい。
【0061】
その後、特異的なプローブの相互作用によって生成されたレポーター核酸を解析する。「特異的なプローブの相互作用」とは、プローブ対の中のプローブの間の相互作用、すなわち同じ分析物に結合する2つのプローブの間の相互作用を意味する。かかるレポーター核酸は、近接プローブ対からの第1のID配列と第2のID配列と(たとえば、第1のバーコード配列と第2のバーコード配列と)を含む伸長生成物および/またはライゲーション生成物である。かかるレポーター核酸は、あるいは、同じ分析物に特異的な近接プローブ対からの第1のID配列と第2のID配列と(たとえば、第1のバーコード配列と第2のバーコード配列と)を含む伸長生成物および/またはライゲーション生成物と称されてもよい。
【0062】
プローブ対の中のプローブはまた、溶液中で相互作用してもよく、特異的なプローブの相互作用によって生成されるレポーター核酸もバックグラウンドをなす(すなわち、バックグラウンド相互作用の結果として生成される)。したがって、特異的なプローブの相互作用によって生成された各レポーター核酸の量を、非特異的なプローブの相互作用の結果として生成されたレポーター核酸の量によって決定されたものとしてのバックグラウンド相互作用のレベルと比較する。特異的なプローブの相互作用によって生成されたレポーター核酸が、バックグラウンド相互作用のレベル(すなわち、非特異的なバックグラウンドレポーター核酸のレベル)よりも高いレベルで存在するなら、このことは、関連するプローブ対が結合した分析物が試料中に存在することを示す。一方で、特異的なプローブの相互作用によって生成されたレポーター核酸が、非特異的なバックグラウンドレポーター核酸よりも高くはないレベルで存在するなら(たとえば、特異的なプローブの相互作用によって生成されたレポーター核酸が、非特異的なバックグラウンドレポーター核酸と同じレベル、またはそれよりも低いレベルで存在するなら)、関連するプローブ対の間の前記相互作用はバックグラウンドにすぎないとみなされる。この場合、プローブ対のプローブの間の相互作用がバックグラウンドにすぎないという事実は、前記プローブ対が結合する分析物が試料中には存在しないことを示す。
【0063】
あるいは、個々の標的分子について、バックグラウンド相互作用を、その標的分子に結合するプローブを含む非特異的な相互作用としてのみ定義してもよい。すなわち、各標的分子について、バックグラウンド相互作用を、前記標的分子を認識するプローブと、対になっていないプローブであって前記標的分子を認識するプローブ対とハイブリダイゼーション部位を共有するプローブ(すなわち前記標的分子を認識しないプローブ)との間の、非特異的な相互作用として定義してもよい。このように、この場合、どちらも標的分子を認識しないプローブの間の非特異的な相互作用は、前記特定の標的分子についてのバックグラウンド相互作用としては考慮されない。
【0064】
特定の実施形態において、特異的なプローブの相互作用のレベルの比較対象となったバックグラウンドのレベルは、考慮されたバックグラウンド相互作用の平均レベルであり、特に、考慮されたバックグラウンド相互作用の中間レベルである。
【0065】
特定の実施形態において、前記方法の第1の工程(すなわち、試料を近接プローブの複数の対と接触させる工程)は、さらに、前記試料を、分析物に結合しない1つ以上のバックグラウンドプローブと接触させる工程を含み、前記バックグラウンドプローブは、ID配列と、少なくとも一つの近接プローブとともに共有するハイブリダイゼーション配列と、を含む核酸ドメインを含む。「バックグラウンドプローブ」はまた、本明細書において、「不活性プローブ」と称されてもよい。前述のように、前記不活性プローブは分析物に結合しない。不活性プローブは、それにもかかわらず、もし前記試料中に存在しないことがわかっている分析物に、特に抗体に、特異的であるのであれば、分析物結合ドメインを含んでもよい。前記不活性プローブは、機能的近接プローブの分析物結合ドメインに相当するが、分析物結合機能を発揮することがない、すなわち、結合ドメイン等価物が不活性である「結合ドメイン」を、事実上含んでもよい。一実施形態において、前記不活性ドメインはバルクIgGによって提供されてもよい。あるいは、不活性プローブは、非アクティブな分析物結合ドメイン、すなわち非機能的分析物結合ドメインを含んでもよい。たとえば、不活性プローブは、抗体の定常領域や、抗体の一方の鎖(重鎖または軽鎖のどちらかのみ)などの疑似分析物結合ドメインを含んでもよい。あるいは、不活性プローブは、核酸ドメインが付着しているが機能を有さずアクティブプローブの分析物結合ドメインとは関連しない、不活性ドメインを含んでもよい。不活性ドメインはたとえば、血清アルブミン(たとえばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン)などの、前記アッセイ反応に緩衝することなく前記アッセイに添加できるタンパク質であってもよい。別の実施形態において、前記不活性プローブは、単なる核酸分子であり、非核酸ドメインを含んでいない。
【0066】
各不活性プローブは、その核酸ドメインの中にID配列を含む。ID配列の同じタイプを、アクティブ(すなわち近接)プローブの中と同様に、不活性プローブの中で使用する。たとえば、前記アクティブプローブがバーコード配列をID配列として使用するなら、前記不活性プローブもまた、バーコード配列をID配列として使用する。前記不活性プローブは各々、少なくとも1つの近接プローブとともに共有するハイブリダイゼーション配列を含む。好ましくは、前記不活性プローブは各々、多数の近接プローブとともに共有するハイブリダイゼーション配列を含む。不活性プローブが使用される場合、不活性プローブの単一の種類のみを使用する、すなわち、不活性プローブすべてが同じハイブリダイゼーション配列を有する構成であってもよい。しかしながら、好ましくは、多数の種類の不活性プローブが使用され、各不活性プローブ種は、(他とは異なる近接プローブと共有する、または近接プローブの他とは異なるグループと共有する)他とは異なるハイブリダイゼーション配列を含む。不活性プローブの各々他とは異なる種類は、他とは異なる、固有のID配列を有する構成であってもよい。あるいは、すべて異なる種類の不活性プローブのすべてによって、共通の不活性プローブID配列が使用されてもよい。いずれにせよ、不活性プローブに使用されるID配列(単数または複数)は、いずれの近接プローブとも共有されることがないのは明らかである。
【0067】
不活性プローブと、ある近接プローブとの間で共有されるハイブリダイゼーション部位によって、不活性プローブと近接プローブとの間の溶液中でのバックグラウンド相互作用が可能である。不活性プローブが近接プローブと相互作用する場合、その結果、前記2つのプローブの核酸ドメイン同士の間で二重鎖が形成される。伸長反応および/またはライゲーション反応が起こる結果、前記2つのプローブによって形成された二重鎖からの伸長生成物および/またはライゲーション生成物が形成される。この伸長生成物および/またはライゲーション生成物が増幅され、処理され、アッセイの他の生成物すべてとともに検出される。不活性プローブと近接プローブとの間の相互作用から生成された伸長生成物および/またはライゲーション生成物(すなわちレポーター核酸)が、前記決定工程においてバックグラウンドとみなされる。
【0068】
試料中の分析物を検出するために使用される多重アッセイは、好ましくPEAである。本実施形態において、前述のように、各近接プローブ対の核酸ドメインは、互いにハイブリダイズして二重鎖を形成する相補的なハイブリダイゼーション配列を含む。形成された二重鎖は、伸長反応を施され、伸長生成物を生じる。特に、PEAの前記伸長生成物は直鎖状伸長生成物である。
【0069】
PEAのいくつかの異なる変形例があり、その各々が少しずつ異なる設計の近接プローブを使用している。各近接プローブの前記核酸ドメインは、前記プローブが使用される方法に応じて設計される。近接伸長アッセイフォーマットの代表的な試料を模式的に図1に示し、これらの実施形態を以下に詳述する。概して、近接伸長アッセイにおいて、一対の近接プローブがその標的分析物に結合する時に、前記2つのプローブの核酸ドメインは互いに近接し、相互作用する(すなわち、直接的または間接的に互いにハイブリダイズする)。前記2つの核酸ドメインの間の相互作用によって、少なくとも1つの遊離3’末端を有する核酸二重鎖を生じる(すなわち、二重鎖の中の核酸ドメインの少なくとも1つが、伸長できる3’末端を有する)。前記アッセイ混合物の中の核酸ポリメラーゼ酵素の添加または活性化により、少なくとも1つの遊離3’末端の伸長が生じる。このように、前記二重鎖の中の核酸ドメインの少なくとも1つが、その対となっている核酸ドメインを鋳型として使用して、伸長される。得られた伸長生成物は、2つのプローブのうちどちらから前記伸長生成物が生成されたかを示すID配列を含む。
【0070】
近接プローブの前記核酸ドメインは、一本鎖であってもよく、または部分的に二本鎖であってもよい。前記核酸ドメインは互いにハイブリダイズしてもよく、または一方のドメインが他方のドメインの伸長の鋳型となってもよい。一方または両方のドメインが伸長してもよい。核酸ドメインが部分的に二本鎖になっている場合、前記ドメインの一本鎖の部分は互いにハイブリダイズしてもよい。前記一本鎖部分は、このように鎖の3’末端にあってもよい。核酸ドメインが部分的に二本鎖である場合、一方の鎖が分析物結合ドメインに接合してもよく、他方の鎖が、前記接合した鎖とハイブリダイズしてもよい。特定の実施形態において、前記部分的に二本鎖のドメインの一本鎖部分は、前記接合した鎖にハイブリダイズした鎖の一部であってもよい。以下にさらに詳細に記載するように、前記部分的に二本鎖の核酸ドメインのハイブリダイズした鎖(前記接合した鎖の反対側)を、「スプリント鎖」またはスプリントオリゴヌクレオチドとみなしてもよい。
【0071】
図1のバージョン1は、「従来の」近接伸長アッセイを図示している。そこでは、各近接プローブの核酸ドメイン(矢印として示す)を5’末端によって分析物結合ドメイン(反転した「Y」として示す)に付着させ、それによって2つの遊離3’末端を残している。前記近接プローブがそれぞれの分析物に結合すると(分析物は図示省略)、3’末端で相補的である前記プローブの核酸ドメインが、ハイブリダイゼーションによって相互作用することが可能となり、すなわち、二重鎖を形成する。アッセイ混合物中で核酸ポリメラーゼ酵素を添加または活性化すると、各核酸ドメインを、他方の近接プローブの核酸ドメインを鋳型として伸長させ、伸長生成物を生じる。
【0072】
図1のバージョン2は、別の近接伸長アッセイを図示している。そこでは、第1の近接プローブの核酸ドメインを5’末端によって分析物結合ドメインに付着させ、第2の近接プローブの核酸ドメインを3’末端によって分析物結合ドメインに付着させている。前記第2の近接プローブの核酸ドメインは、したがって、典型的な核酸ポリメラーゼ酵素(3’末端のみを伸長させる)を使用しても伸長させることができない遊離5’末端(鈍頭矢印(blunt arrow)で示す)を有する。前記第2の近接プローブの3’末端は、効果的に「遮断され」、すなわち、「遊離」ではなく、伸長させることができない。これは、分析物結合ドメインに接合し、したがってそれにより遮断されているからである。本実施形態において、前記近接プローブがそれぞれの分析物の析物結合標的に結合すると、3’末端の相補領域を共有する前記プローブの核酸ドメインが、ハイブリダイゼーションによって相互作用することが可能となり、すなわち、二重鎖を形成する。しかしながら、バージョン1とは対照的に、前記第1の近接プローブの核酸ドメイン(遊離3’末端を有する)のみを、第2の近接プローブの核酸ドメインを鋳型として使用して伸長させて、伸長生成物を生じてもよい。
【0073】
図1のバージョン3では、バージョン2と同様に、第1の近接プローブの核酸ドメインを5’末端によって分析物結合ドメインに付着させ、第2の近接プローブの核酸ドメインを3’末端によって分析物結合ドメインに付着させている。前記第2の近接プローブの核酸ドメインは、したがって、伸長させることができない遊離5’末端(鈍頭矢印で示す)を有する。しかしながら、本実施形態において、それぞれの近接プローブの分析物結合ドメインに付着した前記核酸ドメインは、相補領域を有しておらず、したがって直接的に二重鎖を形成できない。そのかわり、各近接プローブの核酸ドメインと相同部分を有する第3の核酸分子が提供される。この第3の核酸分子は、核酸ドメイン間の「分子架橋」または「スプリント」として働く。前記スプリントオリゴヌクレオチドは、核酸ドメイン間のギャップを架橋し、前記拡散ドメインを間接的に互いに相互作用させる、すなわち、各核酸ドメインは、スプリントオリゴヌクレオチドで二重鎖を形成する。
【0074】
このように、前記近接プローブがそれぞれの分析物の析物結合標的に結合すると、前記プローブの核酸ドメインの各々がハイブリダイゼーションによって相互作用し、すなわち、前記スプリントオリゴヌクレオチドと二重鎖を形成する。したがって、第3核酸分子またはスプリントは、近接プローブの一方に提供される、部分的に二本鎖の核酸ドメインの第2の鎖としてみなされてもよい、と考えることができる。たとえば、近接プローブの1つには、部分的に二本鎖の核酸ドメインが設けられてもよく、前記部分的に二本鎖の核酸ドメインは、一方の鎖の3’末端を介して分析物結合ドメインに付着し、他方の(付着していない)鎖は遊離3’末端を有する。このように、かかる核酸ドメインは、遊離3’末端を有する末端一本鎖領域を有する。本実施形態において、前記第1の近接プローブの核酸ドメイン(遊離3’末端を有する)を、「スプリントオリゴヌクレオチド」(またはもう一方の核酸ドメインの一本鎖3’末端領域)を鋳型として使用して伸長させてもよい。その代わりにまたはそれに加えて、スプリントオリゴヌクレオチドの遊離3’末端(すなわち、付着していない鎖、または3’末端一本鎖領域)を、前記第1の近接プローブの核酸ドメインを鋳型として使用して伸長させてもよい。
【0075】
上記記載から明らかであるように、一実施形態において、前記スプリントオリゴヌクレオチドは、前記アッセイの別個の構成部分として提供されてもよい。換言すれば、反応混合物に別個に前記スプリントオリゴヌクレオチドを添加してもよい(すなわち、近接プローブとは別に、分析物を含有する試料に添加してもよい)。このことがあるものの、近接プローブの一部である核酸分子とハイブリダイズし、また、かかる核酸分子と接触するとハイブリダイズするため、前記スプリントオリゴヌクレオチドは、別に添加されてもやはり、部分的に二本鎖の核酸ドメインの鎖としてみなされてもよい。あるいは、前記スプリントは、前記近接プローブの核酸ドメインの1つにプレハイブリダイズさせてもよい、すなわち、前記近接プローブを試料に接触させる前にハイブリダイズさせてもよい。この実施形態では、スプリントオリゴヌクレオチドを直接、近接プローブの核酸ドメインの一部としてみなすことができる。すなわち、核酸ドメインは、部分的に二本鎖の核酸分子で、たとえば、近接プローブは二本鎖の核酸分子を分析物結合ドメインに連結させ(好ましくは、核酸ドメインが一本鎖によって分析物結合ドメインに接合される)、その核酸分子を修飾して、(他方の近接プローブの核酸ドメインとハイブリダイズ可能な一本鎖オーバーハング(overhang)を有する)部分的に二本鎖の核酸ドメインを生成することにより生成されてもよい。
【0076】
そのため、本明細書で定義する近接プローブの核酸ドメインの伸長は、「スプリント」オリゴヌクレオチドの伸長も包含する。有利には、スプリントオリゴヌクレオチドの伸長から伸長生成物が生じた場合、得られた伸長核酸鎖が、核酸分子の2つの鎖の相互作用によって(2つの核酸鎖のハイブリダイゼーションによって)のみ近接プローブ対に結合する。そのため、これらの実施形態では、たとえば、温度を上げる、塩濃度を下げる等の変性条件を用いて伸長生成物が近接プローブ対から分離されてもよい。
【0077】
図1のバージョン3で図示されたスプリントオリゴヌクレオチドは第2の近接プローブの核酸ドメインの全長に対して相補的であるものとして示されているが、これは単なる一例であり、スプリントは、近接プローブの核酸ドメインの末端(または末端付近)と二重鎖を形成することができれば、すなわち、2つのプローブの核酸ドメインの間の架橋を形成することができれば、十分である。
【0078】
他の実施形態において、WO2007/107743(この参照により本明細書に援用される)に記載のように、スプリントオリゴヌクレオチドを第3の近接プローブの核酸ドメインとして提供してもよい。この文献には、上記構成が、近接プローブアッセイの感受性と特異性とをさらに改善できることが示されている。
【0079】
図1のバージョン4はバージョン1の変形例であり、第1の近接プローブの核酸ドメインが、その3’末端において、第2の近接プローブの核酸ドメインに対して完全に相補的というわけではない配列を含んでいる。そのため、前記近接プローブがそのそれぞれの分析物に結合すると、プローブの核酸ドメインがハイブリダイゼーションにより相互作用可能になる、すなわち、二重鎖を形成できるようになるが、しかし第1の近接プローブの核酸ドメインの3’末端の先端(extreme 3' end)(遊離3’ヒドロキシル基を含む核酸分子の部分)は第2の近接プローブの核酸ドメインにハイブリダイズできず、したがって、一本鎖の、ハイブリダイズしていない、「フラップ(flap)」として存在する。核酸ポリメラーゼ酵素の添加または活性化の際に、第2の近接プローブの核酸ドメインのみが、第1の近接プローブの核酸ドメインを鋳型として使用して伸長され得る。このように本実施形態において、第2の近接プローブの核酸ドメインの3’末端のみが「遊離」である―第1の近接プローブの核酸ドメインの3’末端は「遊離」ではなく、なぜなら、それが第2の近接プローブの核酸ドメインに対して相補的ではなく、したがってそれにハイブリダイズされず、伸長され得ないからである。
【0080】
図1のバージョン5は、バージョン3の変形例であるとみなすことができる。しかしながら、バージョン3とは異なり、両方の近接プローブの核酸ドメインは、それらの5’末端によってそれぞれの分析物結合ドメインに付着している。本実施形態において、核酸ドメインの3’末端は互いに相補的ではないため、近接プローブの核酸ドメインは相互作用できないかまたは二重鎖を直接形成することができない。そのかわり、各近接プローブの核酸ドメインと相同部分を有する第3の核酸分子が提供される。この第3の核酸分子は、核酸ドメイン間の「分子架橋」または「スプリント」として働く。この「スプリント」オリゴヌクレオチドは、核酸ドメイン間のギャップを架橋し、前記拡散ドメインを間接的に互いに相互作用させる、すなわち、各核酸ドメインは、スプリントオリゴヌクレオチドで二重鎖を形成する。このように、前記近接プローブがそれぞれの分析物に結合すると、前記プローブの核酸ドメインの各々がハイブリダイゼーションによって相互作用し、すなわち、前記スプリントオリゴヌクレオチドと二重鎖を形成する。
【0081】
したがって、バージョン3によると、第3核酸分子またはスプリントは、近接プローブの一方に提供される、部分的に二本鎖の核酸ドメインの第2の鎖としてみなされてもよい、と考えることができる。好ましい例では、近接プローブの1つには、部分的に二本鎖の核酸ドメインが設けられてもよく、前記部分的に二本鎖の核酸ドメインは、一方の鎖の5’末端を介して分析物結合ドメインに付着し、他方の(付着していない)鎖は遊離3’末端を有する。このように、かかる核酸ドメインは、少なくとも1つの遊離3’末端を有する末端一本鎖領域を有する。本実施形態において、前記第2の近接プローブの核酸ドメイン(遊離3’末端を有する)を、「スプリントオリゴヌクレオチド」を鋳型として使用して伸長させてもよい。その代わりにまたはそれに加えて、スプリントオリゴヌクレオチドの遊離3’末端(すなわち、付着していない鎖、または第1の近接プローブの3’末端一本鎖領域)を、前記第2の近接プローブの核酸ドメインを鋳型として使用して伸長させてもよい。
【0082】
バージョン3に関連して上述したように、前記スプリントオリゴヌクレオチドは、前記アッセイの別個の構成部分として提供されてもよい。その一方で、近接プローブの一部である核酸分子とハイブリダイズし、またかかる核酸分子と接触するとハイブリダイズするため、前記スプリントオリゴヌクレオチドは、別に添加されても、部分的に二本鎖の核酸ドメインの鎖としてみなされてもよい。あるいは、前記スプリントは、前記近接プローブの核酸ドメインの1つにプレハイブリダイズさせてもよい、すなわち、前記近接プローブを試料に接触させる前にハイブリダイズさせてもよい。この実施形態では、スプリントオリゴヌクレオチドを直接、近接プローブの核酸ドメインの一部としてみなすことができる。すなわち、核酸ドメインは、部分的に二本鎖の核酸分子で、たとえば、近接プローブは二本鎖の核酸分子を分析物結合ドメインに連結させ(好ましくは、核酸ドメインが一本鎖によって分析物結合ドメインに接合される)、その核酸分子を修飾して、(他方の近接プローブの核酸ドメインとハイブリダイズ可能な一本鎖オーバーハング(overhang)を有する)部分的に二本鎖の核酸ドメインを生成することにより生成されてもよい。
【0083】
そのため、本明細書で定義する近接プローブの核酸ドメインの伸長は、「スプリント」オリゴヌクレオチドの伸長も包含する。有利には、スプリントオリゴヌクレオチドの伸長から伸長生成物が生じた場合、得られた伸長核酸鎖が、核酸分子の2つの鎖の相互作用によって(2つの核酸鎖のハイブリダイゼーションによって)のみ近接プローブ対に結合する。そのため、これらの実施形態では、たとえば、温度を上げる、塩濃度を下げる等の変性条件を用いて伸長生成物が近接プローブ対から分離されてもよい。
【0084】
図1のバージョン5で図示されたスプリントオリゴヌクレオチドは第1の近接プローブの核酸ドメインの全長に対して相補的であるものとして示されているが、これは単なる一例であり、スプリントは、近接プローブの核酸ドメインの末端(または末端付近)と二重鎖を形成することができれば、すなわち、近接プローブの核酸ドメインの間の架橋を形成することができれば、十分である。
【0085】
他の実施形態において、WO2007/107743(この参照により本明細書に援用される)に記載のように、スプリントオリゴヌクレオチドを第3の近接プローブの核酸ドメインとして提供してもよい。この文献には、上記構成が、近接プローブアッセイの感受性と特異性とをさらに改善できることが示されている。
【0086】
図1のバージョン6は、本発明の最も好ましい実施形態である。図示されているように、対の両方のプローブが、部分的に一本鎖の核酸分子に接合している。各プローブにおいて、短い核酸鎖がその5’末端を介して分析物結合ドメインに接合している。分析物結合ドメインに接合している短い核酸鎖は、互いにハイブリダイズしないで、各々、長い核酸鎖にハイブリダイズする。前記長い核酸鎖は、その3’末端に一本鎖オーバーハングを有する(すなわち、長い核酸鎖の3’末端が、分析物結合ドメインに接合している短い鎖の5’末端を超えて伸長している)。2つの長い核酸鎖のオーバーハングが互いにハイブリダイズし、二重鎖を形成している。前記長い核酸鎖が互いにハイブリダイズし、これは本明細書において「ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチド」と称される。図示されているように、2つの長い核酸分子の3’末端が全体的に互いにハイブリダイズするなら、二重鎖は2つの遊離3’末端を有し、一方で長い核酸分子の3’末端はバージョン4のように設計されていてもよく、長い核酸分子の一方の3’末端の先端(extreme 3’ end)
は他方に対して相補的ではなく、フラップを形成し、これは前記二重鎖が遊離3’末端を1つだけ含むことを意味している。
【0087】
このように、本発明の方法がPEAを使用して行われると、いくつかの実施形態において、各近接プローブ対で、少なくとも1つの核酸ドメインが部分的に二本鎖になることがわかる。各近接プローブ対で、1つの核酸ドメインが部分的に二本鎖になる(バージョン3および5のような)構成であってもよい。各近接プローブ対で、両方の核酸ドメインが部分的に二本鎖になる(バージョン6のような)構成であることが好ましい。
【0088】
バージョン6について詳述されているように、好ましくは、前記部分的に二本鎖の核酸ドメインは、
(i)分析物結合ドメインに接合している第1のオリゴヌクレオチドと、
(ii)前記第1のハイブリダイゼーション配列と、前記ID配列および第2のハイブリダイゼーション配列とを含むハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドであって、前記第1のハイブリダイゼーション配列は前記ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの3’末端に位置する、ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドと、を含み、
前記核酸ドメインの二本鎖部分は、前記ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの第2のハイブリダイゼーション配列と前記第1のオリゴヌクレオチドとの間に二重鎖を含み、前記核酸ドメインの一本鎖部分は前記ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの第1のハイブリダイゼーション配列を含む。
【0089】
特定の実施形態において、前記ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドは、5’末端から3’末端へ、前記第2のハイブリダイゼーション配列と、前記ID配列(好ましくはバーコード配列)と、前記第1のハイブリダイゼーション配列とを含み、前記ID配列(好ましくはバーコード配列)は前記核酸ドメインの一本鎖部分に位置する。
【0090】
すべての近接プローブが、同じ第1のオリゴヌクレオチドと同じ第2のハイブリダイゼーション配列とを(前記ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの中に)含む場合もある。換言すると、すべての近接プローブが、一般的な(universal)第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のハイブリダイゼーション配列を共有してもよい。この結果、プローブのより直接的な製造プロセスが実現されるだろう。
【0091】
上記に詳述したように、前記第1のオリゴヌクレオチドと前記第2のハイブリダイゼーション配列とは、互いに相補的であるため、前記2つの配列は互いにハイブリダイズすることが可能である。特定の実施形態において、前記第2のハイブリダイゼーション部位は、前記第1のオリゴヌクレオチドの全体に対して相補的であるため、それらの間に形成される二重鎖は前記第1のオリゴヌクレオチドの全体を含む。しかしながらこれは必須ではなく、前記第2のハイブリダイゼーション部位が、前記第1のオリゴヌクレオチドの一部のみに対して相補的であり、それらの間に形成される二重鎖は前記第1のオリゴヌクレオチドの一部のみを含む構成であってもよい。また上記のように、前記第1のハイブリダイゼーション配列はハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの3’末端に位置するため、第1のハイブリダイゼーション配列に対して相補的な2つのプローブが近接すると、それらのハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの3’末端が互いにハイブリダイズする。「3’末端に位置する」とは、前記第1のハイブリダイゼーション配列が、各ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの3’末端へ伸長する、すなわち、前記第1のハイブリダイゼーション配列が、各ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの3’核酸を含んでもよいことを意味しうる。しかしながら、これは必須ではなく、前記第1のハイブリダイゼーション配列が各プローブ対における一方のハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの3’末端へのみ伸長してもよい。上記PEAのバージョン6で使用される前記核酸ドメインは、このように、バージョン4と同様に設計されてもよいため、各プローブ対のハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの一方が、その3’末端に、他方の近接プローブのハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドに対して完全に相補的というわけではない配列を含み、したがって一本鎖の、ハイブリダイズしていない、「フラップ」を形成する。
【0092】
このように、2つの核酸ドメインを互いにハイブリダイズさせた後に、少なくとも1つのハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドを伸長させて伸長生成物を生成する(換言すると、一方または両方のハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドを伸長させて伸長生成物を生成する)。第1のハイブリダイゼーション配列が各プローブ対における両方のハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの3’末端へ伸長するのであれば、両方のハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドが伸長されて伸長生成物を生成する構成であってもよい。一方、もし、(上記に詳述したように)ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの一方が3’末端にハイブリダイズされないフラップを有するのであれば、ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドの一方のみを伸長させて伸長生成物(すなわちフラップの無いハイブリダイザーションオリゴヌクレオチド)を生成する。
【0093】
行われた多重アッセイがPEAである場合、伸長反応がPCR増幅について行われ、換言すると、PCR増幅を含む単一の反応が行われ、近接プローブ核酸ドメインを伸長してレポーター核酸分子を生成することと、生成されたレポーター核酸分子を増幅することとの両方を達成することが好ましい。本実施形態において、前記反応は(通常、PCRの場合でも行われる)変性工程を最初に行うよりもむしろ、伸長工程を最初に行い、そこでレポーター核酸分子が生成される。その後、標準PCRを行ってレポーター核酸分子を増幅し、レポーター分子の変性を開始する。上記に詳述したように、前記PCRは好ましくは、レポーター核酸分子の末端で共通の配列に結合する共通プライマーを使用して行われる。下記に詳述するように、プライマーの一方または両方が、シーケンシングアダプターを含んでいてもよい。換言すれば、本発明の方法の前記伸長工程および増幅工程は、単一の反応中に行われてもよい。
【0094】
他の実施形態において、試料中の分析物を検出するために使用される多重アッセイは、好ましくPLAである。使用されるPLAは、「標準」PLAであってもよい。これは、2つの近接プローブの核酸ドメインを接合するために単一のスプリントオリゴヌクレオチドを使用したPLAを意味する。標準PLAにおいて、各近接プローブ対の核酸ドメインは、スプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズして二重鎖を形成するための、対になったハイブリダイゼーション配列を含む。近接プローブ対の核酸ドメインは、各対において、一方の近接プローブが遊離3’末端を有する核酸ドメインを有し、他方の近接プローブが5’末端を有する核酸ドメインを有するようにそれぞれのプローブに接合しているため、前記2つのプローブの核酸ドメインの遊離末端は共にライゲーションできる。前記スプリントオリゴヌクレオチドは、その3’末端に伸長ブロッカー(extension blocker)を含んでもよく、そのため伸長できない。前記二重鎖を形成した後に、前記2つの近接プローブの核酸ドメインを互いに直接的または間接的にライゲーションさせ、前記第1の近接プローブのID配列と第2の近接プローブのID配列とを含むライゲーション生成物を生成する。
【0095】
多重アッセイがPLAである場合、前記2つの近接プローブ対の核酸ドメインの間の二重鎖で区切りがあっても隙間(gap、ギャップ)は無いように、前記核酸ドメインが前記スプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることが好ましい。換言すると、一方の核酸ドメインの3’末端は、他方の核酸ドメインの5’末端がハイブリダイズするスプリントのヌクレオチドに直接隣接しているスプリントのヌクレオチドに、ハイブリダイズしてもよい。これにより、2つの核酸ドメインを互いに直接ライゲーションできる。
あるいは、一方の核酸ドメインの3’末端と他方の核酸ドメインの5’末端との間に隙間ができるように、近接プローブ対の核酸ドメインがスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしてもよい。本実施形態において、スプリントオリゴヌクレオチドと2つのプローブ核酸ドメインとの間に形成された二重鎖は、前記スプリントオリゴヌクレオチドからの一本鎖核酸を一本含み、それが二重鎖の2つの部位を分けている。前記一本鎖ギャップは、いかなるヌクレオチド長であってもよい。本実施形態において、前記2つのプローブ核酸ドメインの末端の間の隙間を埋めるために、隙間を埋める(gap-filling)伸長反応が行われる(すなわち、隙間を埋めるために、前記遊離3’末端のプローブ核酸ドメインを伸長する)。隙間を埋めた後に、前記2つのスプリントオリゴヌクレオチドの核酸ドメインが、リガーゼ酵素を使用して互いにライゲーションされる。隙間を埋めた後に核酸ドメインを互いにライゲーションすることを、本明細書においては、核酸ドメインを互いに「間接的ライゲーション」する、と称する。
【0096】
前記の隙間を埋める伸長反応は、鎖置換能の無いポリメラーゼ酵素を使用して行われるため、前記隙間が埋まると伸長は停止し、前記遊離3’末端より下流のハイブリダイズされた核酸ドメインが置き換えられることは無い。非置換ポリメラーゼ(non-displacing polymerase)の例としては、T4 DNAポリメラーゼがある。その他にもかかるポリメラーゼが当該技術分野において知られている
【0097】
ライゲーション後に、前記ライゲーション生成物が上述のように(たとえばPCRにより)増幅され、検出される。これらのPLAの実施形態では、直鎖状ライゲーション生成物(または伸長・ライゲーション生成物)が生成される。ライゲーション生成物、または、本発明の方法で生成される伸長・ライゲーション生成物は直鎖状であることが好ましい。
【0098】
あるいは、使用されたPLAが、ローリングサークル増幅PLA(PLA-RCA)であってもよい。このPLAフォーマットは、互いにライゲーションする2つのスプリントオリゴヌクレオチドを使用してライゲーション生成物を生成する。PLA-RCAは、たとえばSoderberg et al., Nature Methods 3(12): 995-1000 (2006)に記載されている。本実施形態において、近接プローブは、それぞれ2つのハイブリダイゼーション配列を含む核酸ドメインを含む。第1のハイブリダイゼーション配列は、第1のスプリントオリゴヌクレオチド上のハイブリダイゼーション配列に対して相補的であり、第2のハイブリダイゼーション配列は、第2のスプリントオリゴヌクレオチド上のハイブリダイゼーション配列に対して相補的である。前記第1のハイブリダイゼーション配列は、上述したように対となっており、第1のハイブリダイゼーション配列の同じ対が、多数の近接プローブ対によって共有される。上記に詳述したように、これらは特定の第1のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。前記第2のハイブリダイゼーション配列も対となっていてもよいが、より好ましくは、これらはユニバーサル部位(universal site)であり、多重アッセイにおける近接プローブ核酸ドメインのすべてによって共有されるため、すべての近接プローブ対に必要なのは、1つの第2スプリントオリゴヌクレオチドのみである。
【0099】
PLA-RCAでは、プローブ核酸ドメインのID配列(好ましくはバーコード配列)は、第1のハイブリダイゼーション部位と第2のハイブリダイゼーション部位との間に位置する。2つのスプリントオリゴヌクレオチドをプローブ核酸ドメインに結合する時、上述したように、隙間を埋める伸長反応を行う。その後前記2つのスプリントオリゴヌクレオチドを互いにライゲーションして環状分子を形成し、それをローリングサークル増幅によって増幅し、検出する。
【0100】
前述のように、超並列DNAシーケンシングによってレポーター核酸を検出することが好ましく、これは一般的に、シーケンシングアダプターのDNA分子に対する付加をシーケンスすることを必要とする。上記に詳述したように、シーケンシングアダプターは、DNA分子を表面に固定化するよう機能する。
【0101】
本発明の方法は、このように、1つ以上のシーケンシング用アダプター(シーケンシングアダプター)をレポーター核酸に付加することを含んでもよい。
【0102】
一般的に、シーケンシングアダプターは核酸分子(特にDNA分子)である。この例では、アダプター配列に対して相補的な短鎖オリゴヌクレオチドが、固定化表面(たとえば、ビーズやフローセルの表面)に接合され、標的DNA分子を前記アダプター配列を介して前記表面にアニールすることを可能にする。あるいは、結合パートナーのなんらかの他の対を使用して標的DNA分子を固定化表面に接合してもよい。たとえば、ビオチンおよびアビジン/ストレプトアビジンがある。この場合、シーケンシングアダプターとしてビオチンを使用し、アビジンまたはストレプトアビジンを固定化表面に接合してビオチンシーケンシングアダプターを結合してもよく、またその逆でもよい。
【0103】
シーケンシングアダプターはこのように短鎖オリゴヌクレオチド(好ましくはDNA)であってもよく、一般的に10~30ヌクレオチド長(たとえば15~25ヌクレオチド長、または20~25ヌクレオチド長)であってもよい。上記に詳述したように、シーケンシングアダプターの目的は、標的DNA分子の固定化表面へのアニールを可能にすることであり、したがって、核酸アダプターのヌクレオチド配列は、固定化表面に接合される結合パートナーの配列によって決定される。この他には、核酸シーケンシングアダプターのヌクレオチド配列に対する制約は特に無い。
【0104】
シーケンシングアダプターを、本発明のレポーター核酸に対して、PCR増幅中に付加してもよい。核酸シーケンシングアダプターの場合、これは、一方または両方のプライマーの中にシーケンシングアダプターヌクレオチドを含めることにより行うことができる。あるいは、シーケンシングアダプターが非核酸シーケンシングアダプター(たとえば、タンパク質/ペプチドまたは小分子)であれば、アダプターは一方または両方のPCRプライマーに接合してもよい。あるいは、シーケンシングアダプターをレポーター核酸分子に直接ライゲーションするか接合することにより、シーケンシングアダプターをレポーター核酸分子に付着させてもよい。好ましくは、本方法で使用される前記1つ以上のシーケンシングアダプターは核酸シーケンシングアダプターである。
【0105】
1つ以上のライゲーションおよび/または増幅工程において、1つ以上の核酸シーケンシングアダプターを、このように、レポーター核酸に付加してもよい。このように、もしたとえばシーケンシングアダプターをレポーター核酸分子に付加する(各末端に1つ)なら、1つの工程(たとえば、両方ともシーケンシングアダプターを含む一対のプライマーを使用したPCR増幅によって)で、または2つの工程で、これらを付加してもよい。前記2つの工程は、同じ方法を使用して行ってもよく、異なる方法を使用して行ってもよい。たとえば、第1のシーケンシングアダプターをレポーター核酸分子にライゲーションによって付加し、第2のシーケンシングアダプターをPCR増幅によって付加してもよく、またその逆でもよい。または、第1の増幅反応をおこなって第1のシーケンシングアダプターをレポーター核酸分子に付加し、その後第2の増幅反応を行って第2のシーケンシングアダプターをレポーター核酸分子に付加してもよい。
【0106】
前述のように、1つ以上のシーケンシングアダプターをレポーター核酸分子に付加してもよい。これは、1つまたは2つのシーケンシングアダプターを意味する-シーケンシングアダプターはDNA分子の末端に付加されるので、単一のDNA分子(たとえばレポーター核酸)に付加できるシーケンシングアダプターの最大数は2である。このように、単一のシーケンシングアダプターをレポーター核酸分子の1つの末端に付加してもよく、または、2つのシーケンシングアダプターをレポーター核酸分子の各末端に1つずつ付加してもよい。特定の実施形態において、Illumina p5アダプターおよびIllumina P7アダプターが使用される。すなわち、P5アダプターがレポーター核酸分子の一方の末端に付加され、P7アダプターが他方の末端に付加される。P5アダプターの配列は、配列番号1に示され(AAT GAT ACG GCG ACC ACC GA)、P7アダプターの配列は、配列番号2に示される(CAA GCA GAA GAC GGC ATA CGA GAT)。
【0107】
PCR増幅はこのように、1つ以上のシーケンシングアダプターのレポーター核酸分子への付加と組み合わせてもよい。これは、少なくとも1つのシーケンシングアダプターを含むプライマー対を使用してレポーター核酸分子を増幅させることにより達成してもよい。この例では、前記プライマー対の中の少なくとも1つのプライマーが、レポーター核酸分子に結合する配列の上流に、シーケンシングアダプターを含む。シーケンシングアダプターは、一般的に、それが含有されているプライマーの5’末端に位置する。
【0108】
特定の実施形態において、増幅工程は、シーケンシングアダプターを含む1つのプライマーを含むプライマー対を使用して行われるため、単一のシーケンシングアダプターがレポーター核酸分子の一方の末端に付加される。
【0109】
他の実施形態において、増幅工程は、両方のプライマーがシーケンシングアダプターを含むプライマー対を使用して行われるため、単一の増幅工程においてシーケンシングアダプターがレポーター核酸分子の各末端に付加される。
【0110】
他の実施形態において、シーケンシングアダプターをレポーター核酸分子の各末端に付加するために2つの別々の増幅反応が行われ、各増幅工程が、他とは異なるシーケンシングアダプターを前記分子の他とは異なる末端に付加する。
【0111】
他の実施形態において、最初の増幅工程を、シーケンシングアダプターを含まないプライマーを使用して行う。前記増幅されたレポーター核酸分子にはその後、さらに1つ以上の増幅反応を施し、上述したように、前記分子の各末端にシーケンシングアダプターを付加する。
【0112】
好ましくは、前記レポーター核酸(すなわち伸長生成物および/またはライゲーション生成物)が、2つのPCR工程で増幅される。第1のPCR反応において、第1のシーケンシングアダプターが、伸長生成物またはライゲーション生成物の一方の末端に付加される。前記第1のPCR反応の生成物が、その後、第2のPCR反応で増幅され、そこで第2のシーケンシングアダプターがレポーター核酸の他方の末端に付加される。特定の実施形態において、WO2012/104261に記載されているように、前記第1のPCR反応は、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性をも有する核酸ポリメラーゼで行われ、前記第2のPCR反応は、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性が欠乏した核酸ポリメラーゼで行われる。3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を持つ核酸ポリメラーゼの好適な例としては、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、ファイ29(Phi 29、Φ29)DNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ I、DNAポリメラーゼ Iのクレノウ(Klenow)断片、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus、Pfu)DNAポリメラーゼ、およびパイロコッカス・ヴェッセイ(Pyrococcus woesei、Pwo)DNAポリメラーゼがある。3’→5’エキソヌクレアーゼ活性が欠乏した核酸ポリメラーゼの好適な例としては、DNAポリメラーゼIIIのαサブユニット、DNAポリメラーゼIのクレノウexo(-)断片、Taqポリメラーゼ、Pfu(exo-)DNAポリメラーゼ、およびPwo(exo-)DNAポリメラーゼがある。
【0113】
他の実施形態において、両方のPCR工程に同じポリメラーゼを使用してもよく、たとえば、Pwoポリメラーゼや、Pfuポリメラーゼを使用してもよい。
【0114】
本発明の方法は、多数の試料を同時に解析するために使用してもよい。この場合、各試料について、別々の多重アッセイを上記のように行う。伸長生成物および/またはライゲーション生成物が生成されると、試料インデックス配列を付加する。試料インデックスは、伸長生成物および/またはライゲーション生成物の由来元の試料を識別するヌクレオチド配列である。各々他とは異なる試料から由来する伸長生成物および/またはライゲーション生成物について、他とは異なるヌクレオチド配列を、試料インデックス配列として使用する。逆に言えば、ある特定の試料からの伸長生成物および/またはライゲーション生成物はすべて、同じ試料インデックス配列で標識される。
【0115】
生成物がすべて、試料インデックスで標識されると、多数の試料の生成物を一緒にプールし解析してもよい。レポーター核酸がシーケンスされる場合、試料インデックスは、個々のレポーター核酸分子の各々がどの試料から由来するのかを示す。ヌクレオチド配列が試料インデックスとして使用されてもよい。試料インデックス配列はどのような長さでもよいが、比較的短いものが好ましく、たとえば3~12ヌクレオチド長、4~10ヌクレオチド長、または4~8ヌクレオチド長である。
【0116】
なんらかの好適な方法で、試料インデックス配列を伸長生成物および/またはライゲーション生成物に付加すればよいが、たとえば、増幅反応(たとえばPCRによるもの)やライゲーション反応において試料インデックスが付加されてもよい。とりわけ、超並列DNAシーケンシングによって前記レポーター核酸分子が解析され、両方の末端にシーケンシングアダプターを必要とするのであれば、試料インデックス配列が最終的にレポーター核酸分子の末端に位置するように付加されてはいけない。
【0117】
好ましい実施形態において、PCR増幅中に、試料インデックス配列が伸長生成物および/またはライゲーション生成物に付加される。前述のように、PCR増幅中に、シーケンシングアダプターも伸長生成物および/またはライゲーション生成物に付加されてもよい。特定の実施形態において、試料インデックスをレポーター核酸分子に付加するためだけに、専用の増幅工程を行ってもよい。他の実施形態において、PCR増幅中に、1つ以上のシーケンシングアダプターと同時に、試料インデックスを付加してもよい。たとえば、単一のPCR増幅を行ってレポーター核酸分子の両方の末端にシーケンシングアダプターを付加するなら、試料インデックスを同時に付加してもよい。あるいは、2つのシーケンシャルPCR増幅工程においてレポーター核酸分子の各々の末端にシーケンシングアダプターを付加するなら、どちらかのPCR増幅工程で試料インデックスを付加してもよい。第1のPCR増幅工程で、試料インデックスを付加してもよく、その場合、レポーター核酸分子に対してシーケンシングアダプターが付加される末端と同じ末端で、(シーケンシングアダプターより内側に)レポーター核酸分子に試料インデックスを付加してもよいし、または、反対の末端に付加してもよい。あるいは、第2のPCR増幅工程で、試料インデックスを付加してもよく、その場合、レポーター核酸分子に対してシーケンシングアダプターが付加される末端と同じ末端で、(シーケンシングアダプターより内側に)レポーター核酸分子に試料インデックスを付加しなければならない。あるいは、増幅の前に、ライゲーション工程を行って各レポーター核酸分子の末端に試料インデックスを付加してもよい。
【0118】
本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様の方法を行うために使用してもよい製品である。特に、上記のように、前記製品は、下記の(i)複数の近接プローブ対と、場合によっては(ii)複数のスプリントオリゴヌクレオチドとを含み、
(i)前記複数の近接プローブ対において、各近接プローブ対は、第1の近接プローブと第2の近接プローブとを含み、各近接プローブは、
(a)タンパク質に特異的な、タンパク質結合ドメインと、
(b)核酸ドメインとを含み、
各対における両方のプローブは、同じタンパク質に特異的なタンパク質結合ドメインを含み、前記タンパク質に同時に結合することができ、かつ、各プローブ対は異なるタンパク質に特異的であり、
各近接プローブの前記核酸ドメインは、ID配列と、少なくとも第1のハイブリダイゼーション配列とを含み、各近接プローブの前記ID配列は異なり、各近接プローブ対において、前記第1の近接プローブと前記第2の近接プローブとは、対になったハイブリダイゼーション配列を含み、
(ii)前記複数のスプリントオリゴヌクレオチドの各々は、近接プローブ対の前記対になったハイブリダイゼーション配列の各々に対して相補的なハイブリダイゼーション配列を含み、
各近接プローブ対の前記ハイブリダイゼーション配列は、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブがそのタンパク質に結合すると、前記第1の近接プローブおよび前記第2の近接プローブのそれぞれの対になったハイブリダイゼーション配列が、互いにハイブリダイズするか、または、スプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする構成であり、
少なくとも一対のハイブリダイゼーション配列が、少なくとも二対の近接プローブによって共有される。
【0119】
この態様の様々な構成要素は、前記第一の態様の同等の構成要素と同じである(たとえば、近接プローブ、ID配列、スプリントオリゴヌクレオチド、ハイブリダイゼーション配列など)。とりわけ、本発明のこの態様において、各プローブ対における両方のプローブは、同じタンパク質に特異的なタンパク質結合ドメインを含む。換言すれば、前記製品の各プローブ対において、両方のプローブが同じタンパク質に結合する.上記に詳述したように、各プローブ対における前記2つのプローブが異なるエピトープで標的タンパク質に結合するので、それらは互いの標的への結合を干渉することがない。本発明のプローブは、上述したように、PEAまたはPLAのいずれの型や変異型にも使用できるよう設計されてもよい。
【0120】
1つの実施形態において、上述したように、本発明の製品はさらに、分析物に結合しない1つ以上のバックグラウンドプローブ(あるいは不活性プローブ)をさらに含む。
本発明の方法のように、プローブ対のかなりの割合が、それらのハイブリダイゼーション配列を、少なくとも1つの他の近接プローブ対と共有することが好ましい。特定の実施形態において、本方法のように、近接プローブ対の少なくとも25%、50%、または75%は、それらのハイブリダイゼーション配列を、別の近接プローブ対と(すなわち、少なくとも1つの他の近接プローブ対と)共有する。特定の実施形態において、すべてのプローブ対は、それらのハイブリダイゼーション配列を、少なくとも1つの他の近接プローブ対と共有する。しかしながら、上記から明らかであるように、別の実施形態では、少なくとも一対のハイブリダイゼーション配列が、単一の近接プローブ対に固有である。すなわち、少なくとも近接プローブのうちの一対はそのハイブリダイゼーション配列を、他のいずれかの近接プローブ対と共有しない。特定の実施形態において、近接プローブ対の少なくとも75%、50%、または25%は、それらのハイブリダイゼーション配列を、別の近接プローブ対と(すなわち、他のいずれかの近接プローブ対と)共有しない。前記方法と同様に、ある実施形態において、前記製品中の20個、15個、10個、または5個以下の近接プローブ対が、同じハイブリダイゼーション配列対を共有する。
【0121】
本発明の製品を、すべての近接プローブ(および、場合によってはスプリントオリゴヌクレオチドおよび/または不活性プローブ)を含む単一の組成物として提供してもよい。あるいは、前記製品のすべての構成部分を、別々の容器中に入れて提供してもよい。たとえば、近接プローブ対、スプリントオリゴヌクレオチド、および不活性プローブをすべて、別々の容器に入れて提供してもよい。必要に応じて、プローブ対ごとに、あるいは近接プローブごとに、別々の容器に入れて提供してもよく、各々異なるスプリントオリゴヌクレオチドや、各々異なる不活性プローブも同様であってもよい。
【0122】
前記製品はまた、本発明の方法に使用するための追加の構成部分もさらに含んでもよい。たとえば、前記製品は、伸長工程および/または増幅工程に使用するための1つ以上の核酸ポリメラーゼ酵素を含んでもよく、および/または、もしライゲーション工程が必要であればリガーゼ酵素を含んでもよい。前記製品は、増幅に使用するためのプライマーを含んでもよい。上記に詳述したように、増幅工程(単数または複数)で使用されるプライマーは、核酸シーケンシングおよび/または試料インデックス配列のためのシーケンシングアダプターを含んでもよい。前記製品はまた、伸長反応/増幅反応に使用するためのヌクレオチド(たとえば、dATP、dCTP、dGTP、およびdTTP)も含んでもよい。前記製品は、シーケンシングのためにレポーター核酸分子を固定化できる固体基材、たとえばフローセルやビーズなどを含んでもよい。
【0123】
前記発明は、以下の限定しない実施例および図面を参照することによって、さらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0124】
図1図1は、上記に詳述されている、近接伸長アッセイの6つの異なるバージョンの概略図を示す。反転した「Y」形状は、近接プローブ分析物結合ドメインの例として、抗体を表している。
図2図2は、6つの異なる試料中の4つの分析物の発現レベルについて、従来のネガティブコントロールを使用するか、または共有ハイブリダイゼーション部位ネガティブコントロールを使用して、多重PEAによって決定して得た結果を対比したものを示している。
図3図3は、6つの異なる試料(図2で使用されたものと同じ試料)中の5つの分析物の発現レベルについて、従来のネガティブコントロールを使用するか、または共有ハイブリダイゼーション部位ネガティブコントロールを使用して、多重PEAによって決定して得た結果を対比したものを示している。
【0125】
実施例
6人のドナー、すなわち健康な被験者3人、乳癌と診断された被験者1人、慢性関節リュウマチ(RA)と診断された被験者1人、および炎症性腸疾患(IBD)と診断された被験者1人から、血漿試料を取得した。
試料中の下記9つのタンパク質を検出するために、多重PEAを行った(上記のバージョン6に記載の構造を有する核酸ドメインに接合した抗体を含むプローブを使用した)。NPDC1(UniProtQ9NQX5);AHCY(UniProtP23526);TM(UniProtP07204);ANGPTL1(UniProtO95841);LOX-1(UniProtP78380);SEMA3F(UniProtQ13275);CDH2(UniProtP19022);CANT1(UniProtQ8WVQ1);およびCA13(UniProtQ8N1Q1)。NPDC1、AHCY、TM、およびANGPTL1を標的とするプローブはすべて、一対のハイブリダイゼーション部位を共有していた。また、LOX-1、SEMA3F、CDH2、CANT1、およびCA13を標的とするプローブはすべて、それとは異なる一対のハイブリダイゼーション部位を共有していた。各プローブは固有のバーコード配列を有していた。試料を含有せず1%ウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝食塩水を含むネガティブコントロールも使用した。
【0126】
PEAを上述したように行った。伸長生成物の増幅中に、各々他とは異なる試料からのレポーター核酸用の固有の試料インデックスと共に、P5シーケンシングアダプターおよびP7シーケンシングアダプターを生成物の各末端に付加し、すべての伸長生成物を、Illumina NovaSeqプラットフォームを使った可逆的ダイターミネーターシーケンシング技術を使用して、超並列DNA配列決定法によって、すべての伸長生成物をシーケンスした。
【0127】
標的に対する標準ネガティブコントロールからのバックグラウンドは、前記標的に対するプローブの、対になっているバーコードの相互作用から決定した。標的に対する共有ハイブリダイゼーション部位からのバックグラウンドは、各試料について、前記標的のプローブ対の各プローブと、そのグループ内の他のプローブ(前記標的のプローブのハイブリダイゼーション部位を共有するプローブ)との間の、一致しない相互作用(mismatched interactions)(一致しないバーコード(mismatched barcodes)によって決定される)の平均値から決定される。換言すれば、各標的について、共有ハイブリダイゼーション部位からのバックグラウンドを、前記標的の各プローブと、共有ハイブリダイゼーション部位を有する他のプローブとの間の、非特異的な相互作用として定義した。どちらも前記標的に結合していないプローブ間の非特異的な相互作用は、バックグラウンドの算出には含めなかった。
【0128】
標的分析物の2つのグループから、下記結果が得られた。
【表1】
【表2】
ロガリズム解析の結果を、図2のグラフに示す。
【0129】
【表3】
【表4】
ロガリズム解析の結果を、図3のグラフに示す。
【0130】
分析物のグループ両方について、バックグラウンドを超えたシグナルの実際の値が前記2種類のコントロールの間で(ネガティブコントロールと共有ハイブリダイゼーション部位のコントロールとの間で)異なりうるが、前記の値は、各試料で、各分析物について、ほぼ等しくシフトする(すなわち、パラレルシフトがある)。このことは、各分析物について得られた結果に対する高いR2の値によって表されており、これらは、前記2つの方法のそれぞれによって決定されたバックグラウンドを超えたシグナルの程度のあいだに非常に高い相関があることを示している。分析物の相対的なシグナルレベルが試料の間で保たれているため、上記の結果は、共有ハイブリダイゼーション部位を使用することが、標準ネガティブコントロールに対する有効な代替手段であることを示している。共有ハイブリダイゼーション部位からのバックグラウンドの決定から得られた結果は、標準ネガティブコントロールを使用する場合と同様に、試料の間の識別を示している。
図1
図2
図3
【配列表】
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