IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パシフィックコンサルタンツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図1
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図2
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図3
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図4
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図5
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図6
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図7
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図8
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図9
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図10
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図11
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図12
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図13
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図14
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図15
  • 特許-プログラム、方法、およびシステム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】プログラム、方法、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20231012BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20231012BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G06Q50/10
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023078993
(22)【出願日】2023-05-12
【審査請求日】2023-05-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592090555
【氏名又は名称】パシフィックコンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】札本 太一
(72)【発明者】
【氏名】横川 恵美
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-86386(JP,A)
【文献】特開2021-129459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備えたコンピュータを有するシステムに実行させるプログラムであって、
前記プログラムは、前記プロセッサに、
携帯端末の位置情報を通信時刻に沿って並べることで作成され、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データであって、前記携帯端末の利用において設定されている前記ユーザの識別情報であるユーザIDを含む前記移動データを取得するステップと、
高速道路の利用実績を示し、利用したインターチェンジの地点と通過時刻に関する情報、および走行車両の車種に関する情報と、を含む、ETCの利用明細を取得するステップと、
前記利用明細および前記移動データを対比することで、前記利用明細が示す走行ログに対応する前記移動データを特定し、前記走行ログの車両特定情報と前記移動データの前記ユーザIDとを紐づけるステップと、
既に対応関係が特定された前記走行ログと前記移動データとの組み合わせを参照して、対応する前記移動データが特定されていない前記走行ログに対して、該当する前記ユーザIDを補完するステップと、を実行させる、プログラム。
【請求項2】
前記移動データを特定するステップでは、
利用明細および前記移動データそれぞれにおける通過ノードの通過時刻の一致の度合いから、複数の前記移動データのうち、車両の走行ログに対応する移動データの候補となる移動候補データを複数選別するステップと、
選別された一群の前記移動候補データを、一又は複数の車両における複数の前記利用明細が示す走行ログと対比することで、特定の前記利用明細が示す走行ログに対応する、ユーザの前記移動データを特定するステップと、を実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記移動候補データを複数選別するステップでは、
前記移動データが、前記利用明細が示す走行ログにおける高速道路の進入インターチェンジおよび退出インターチェンジそれぞれと近隣する通過ノードを通過している場合において、前記利用明細が示す進入インターチェンジおよび退出インターチェンジそれぞれの通過時刻と、移動データが示す各通過ノードの通過時刻と、が所定の時間差以内である場合に、当該移動データを前記移動候補データとして選別する、請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記時間差は、進入インターチェンジおよび退出インターチェンジそれぞれの沿道状況の違いにより、異なる値に設定されている、請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
ユーザの前記移動データを特定するステップでは、
一つの車両に関する複数の前記利用明細が示す走行ログが、同一のユーザについての複数の前記移動候補データと一致する場合には、当該複数の前記利用明細が示す走行ログに対応する移動候補データとして、当該複数の前記移動候補データを特定する、請求項2に記載のプログラム。
【請求項6】
ユーザの前記移動データを特定するステップでは、
複数の車両に関する複数の前記利用明細が示す走行ログが、複数のユーザについての複数の前記移動候補データと一致する場合には、通過時刻の時刻差に従って、当該複数の前記利用明細が示す走行ログそれぞれについて、対応する移動候補データとして、当該複数の前記移動候補データそれぞれを特定する、請求項2に記載のプログラム。
【請求項7】
ユーザの移動データを特定するステップでは、
同日における同区間での一つの前記利用明細が示す走行ログが、一又は複数のユーザについての前記移動候補データと一致する場合には、当該前記利用明細が示す走行ログに対応する移動候補データとして、一又は複数のユーザについての前記移動候補データを特定する、請求項2に記載のプログラム。
【請求項8】
ユーザの前記移動データを特定するステップでは、
同区間での一又は複数の前記利用明細が示す走行ログが、一又は複数のユーザについての前記移動候補データと一致する場合には、通過時刻の時刻差に従って、当該前記利用明細が示す走行ログに対応する移動候補データとして、一又は複数のユーザについての前記移動候補データを特定する、請求項2に記載のプログラム。
【請求項9】
前記ユーザIDを補完するステップでは、前記プロセッサに、さらに、
一つの車両に関する時系列に並ぶ2つの前記利用明細に係る車両特定情報に、第1のユーザIDが既に紐づけられている場合には、時系列に沿って当該2つの前記利用明細の間に位置する前記利用明細に係る車両特定情報に対して、前記第1のユーザIDを補完する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項10】
前記ユーザIDを補完するステップでは、前記プロセッサに、さらに、
一つの車両に関する同日の複数の前記利用明細のうち、半数を超える前記利用明細に係る車両特定情報に、第2のユーザIDが既に紐づけられている場合には、同日のその他の前記利用明細に係る車両特定情報に対して、前記第2のユーザIDを補完する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項11】
前記ユーザIDを補完するステップでは、前記プロセッサに、さらに、
一つの旅客車両に関する同日の複数の前記利用明細のうち、時系列に並ぶ2つの前記利用明細に係る車両特定情報に、第3のユーザIDが既に紐づけられている場合には、時系列に沿って当該2つの前記利用明細の間に位置する前記利用明細に係る車両特定情報に対して、前記第3のユーザIDを補完する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項12】
前記プロセッサに、さらに、
車両の車種に関する情報と、当該車両に紐づけられたユーザの前記移動データの集合であるトリップデータにおける始点と終点の情報と、を用いて、車種別の始点と終点ごとの移動の量を表形式で示すOD表を作成するステップを実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項13】
前記プロセッサに、さらに、
前記ユーザ情報に対して紐づけられた前記車両特定情報を用いて、当該ユーザが一般道路を移動した際の前記移動データにおいて使用された車両を推定するステップを実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項14】
前記使用された車両を推定するステップでは、
評価対象である一般道移動データが、高速道路移動データとともに一つのトリップデータを構成している場合において、同じユーザにおける同日の前記高速道路移動データと紐づけられた車両が、1つである場合には、当該車両を評価対象である前記一般道移動データにおいて使用された車両として推定し、複数である場合には、利用頻度の高い車両を、評価対象である一般道移動データにおいて使用された車両として推定する、請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記使用された車両を推定するステップでは、
評価対象である一般道移動データが、高速道路移動データとともに一つのトリップデータを構成していない場合において、同じユーザにおける所定期間内の前記高速道路移動データと紐づけられた車両が、1つである場合には、当該車両を評価対象であるトリップデータにおいて使用された車両として推定し、複数である場合には、所定期間内に利用頻度の高い車両を評価対象であるトリップデータにおいて使用された車両として推定する、請求項13に記載のプログラム。
【請求項16】
プロセッサを備えたコンピュータを有するシステムが実行する方法であって、
前記方法は、前記プロセッサが、
携帯端末の位置情報を通信時刻に沿って並べることで作成され、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データであって、前記携帯端末の利用において設定されている前記ユーザの識別情報であるユーザIDを含む前記移動データを取得するステップと、
高速道路の利用実績を示し、利用したインターチェンジの地点と通過時刻に関する情報、および走行車両の車種に関する情報と、を含む、ETCの利用明細を取得するステップと、
前記利用明細および前記移動データを対比することで、前記利用明細が示す走行ログに対応する、ユーザの前記移動データを特定し、前記走行ログの車両特定情報と前記移動データの前記ユーザIDとを紐づけるステップと、
既に対応関係が特定された前記走行ログと前記移動データとの組み合わせを参照して、対応する前記移動データが特定されていない前記走行ログに対して、該当する前記ユーザIDを補完するステップと、を実行する、方法。
【請求項17】
プロセッサを備えたコンピュータを有するシステムであって、
前記システムは、前記プロセッサが、
携帯端末の位置情報を通信時刻に沿って並べることで作成され、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データであって、前記携帯端末の利用において設定されている前記ユーザの識別情報であるユーザIDを含む前記移動データを取得する手段と、
高速道路の利用実績を示し、利用したインターチェンジの地点と通過時刻に関する情報、および走行車両の車種に関する情報と、を含む、ETCの利用明細を取得する手段と、
前記利用明細および前記移動データを対比することで、前記利用明細が示す走行ログに対応する、ユーザの前記移動データを特定し、前記走行ログの車両特定情報と前記移動データの前記ユーザIDとを紐づける手段と、
既に対応関係が特定された前記走行ログと前記移動データとの組み合わせを参照して、対応する前記移動データが特定されていない前記走行ログに対して、該当する前記ユーザIDを補完する手段と、を備える、システム。
【請求項18】
プロセッサを備えたコンピュータを有するシステムに実行させるプログラムであって、
前記プログラムは、前記プロセッサに、
携帯端末の位置情報を通信時刻に沿って並べることで作成され、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データであって、前記携帯端末の利用において設定されている前記ユーザの識別情報であるユーザIDを含む前記移動データを取得するステップと、
鉄道交通機関の利用実績を示し、乗客が乗車および降車した駅の地点と改札時刻に関する情報、および当該乗客に関する情報と、を含む、ICカード乗車券の改札明細を取得するステップと、
前記改札明細および前記移動データを対比することで、前記改札明細が示す乗車ログに対応する、ユーザの前記移動データを特定し、前記乗車ログのICカード乗車券の識別情報と前記移動データの前記ユーザIDとを紐づけるステップと、
既に対応関係が特定された前記乗車ログと前記移動データとの組み合わせを参照して、対応する前記移動データが特定されていない前記乗車ログに対して、該当する前記ユーザIDを補完するステップと、を実行させる、プログラム。
【請求項19】
プロセッサを備えたコンピュータを有するシステムに実行させる方法であって、
前記方法は、前記プロセッサが、
携帯端末の位置情報を通信時刻に沿って並べることで作成され、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データであって、前記携帯端末の利用において設定されている前記ユーザの識別情報であるユーザIDを含む前記移動データを取得するステップと、
鉄道交通機関の利用実績を示し、乗客が乗車および降車した駅の地点と改札時刻に関する情報、および当該乗客に関する情報と、を含む、ICカード乗車券の改札明細を取得するステップと、
前記改札明細および前記移動データを対比することで、前記改札明細が示す乗車ログに対応する、ユーザの前記移動データを特定し、前記乗車ログのICカード乗車券の識別情報と前記移動データの前記ユーザIDとを紐づけるステップと、
既に対応関係が特定された前記乗車ログと前記移動データとの組み合わせを参照して、対応する前記移動データが特定されていない前記乗車ログに対して、該当する前記ユーザIDを補完するステップと、を実行する、方法。
【請求項20】
プロセッサを備えたコンピュータを有するシステムに実行させるシステムであって、
前記システムは、前記プロセッサが、
携帯端末の位置情報を通信時刻に沿って並べることで作成され、前記携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データであって、前記携帯端末の利用において設定されている前記ユーザの識別情報であるユーザIDを含む前記移動データを取得するモジュールと、
鉄道交通機関の利用実績を示し、乗客が乗車および降車した駅の地点と改札時刻に関する情報、および当該乗客に関する情報と、を含む、ICカード乗車券の改札明細を取得するモジュールと、
前記改札明細および前記移動データを対比することで、前記改札明細が示す乗車ログに対応する、ユーザの前記移動データを特定し、前記乗車ログのICカード乗車券の識別情報と前記移動データの前記ユーザIDとを紐づけるモジュールと、
既に対応関係が特定された前記乗車ログと前記移動データとの組み合わせを参照して、対応する前記移動データが特定されていない前記乗車ログに対して、該当する前記ユーザIDを補完するモジュールと、を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、方法、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路の管理において、現在の交通状況を把握したうえで将来の交通状況を予測し、将来にわたって必要となる整備計画を検討することが一般的に行われている。この際、高速道路の利用者に対するウェブアンケートなどを定期的に実施し、高速道路の利用状況をサンプリングすることが行われている。
また、下記特許文献1には、走行車両を撮影することで道路交通調査を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-138861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の交通状況の調査では、交通量に対して有意な情報となりえる充分なサンプル数を取得することが難しかった。
【0005】
本発明は、交通量に対して有意な情報となりえる充分なサンプル数となる高速道路の利用履歴を取得することができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプログラムは、プロセッサに、携帯端末の位置情報を通信時刻に沿って並べることで作成され、携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データを取得するステップと、高速道路の利用実績を示し、利用したICの地点と通過時刻に関する情報、および当該車両の車種に関する情報と、を含む、ETCの利用明細を取得するステップと、利用明細および移動データを対比することで、利用明細が示す走行ログに対応する、ユーザの移動データを特定し、走行ログの車両特定情報と移動データのユーザIDとを紐づけるステップと、既に対応関係が特定された走行ログと移動データとの組み合わせを参照して、対応する移動データが特定されていない走行ログに対して、該当するユーザ情報を補完するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、交通量に対して有意な情報となりえる充分なサンプル数となる高速道路の利用履歴を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の人流解析システムの概要を示す図である。
図2図1に示すユーザ端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図1に示す管理者端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4図1に示すサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図4に示すサーバの機能的構成を示すブロック図である。
図6】ユーザ端末の利用において管理されるデータベースを示す図である。
図7】ユーザの移動履歴として管理されるデータベースを示す図である。
図8】本実施形態におけるトリップデータの構造を示す図である。
図9】高速道路の利用において管理されるデータベースを示す図である。
図10】マッチング処理の結果として管理されるデータベースを示す図である。
図11】本実施形態の概要を説明する図である。
図12】本実施形態の処理の全体を示すフローである。
図13】走行ログに対応する移動情報の特定処理の詳細を示すフローである。
図14】ユーザ情報の補完処理の詳細を示すフローである。
図15】人流解析システムのその他の機能を説明する図である。
図16】OD表の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
(1)システム1の概要
本発明の一実施形態に係る人流解析システム1(以下、単にシステム1という)の概要について説明する。図1は、本実施形態のシステム1の概要を示す概念図である。
図1に示すように、システム1は、管理者からの操作指示に応答して、高速道路の利用実績を示すETC利用明細(以下、本稿において単に利用明細ということがある)と、ユーザが携帯する携帯電話(ユーザ端末10)の通信ログから得られた移動データと、を比較してマッチングすることで、高速道路の利用実績の分析に資する情報を提供するシステムである。ここで、移動データとは、携帯電話の位置情報の経時的な変化により特定される、ユーザの移動経路(位置情報の推移)を示す情報であり、移動手段により以下のとおり細分化される。
・高速道路移動データ
・一般道移動データ
・空路移動データ
・徒歩移動データ
【0011】
具体的には、システム1は、利用明細に含まれる高速道路の走行経路の履歴を示す走行ログと、ユーザの移動経路の履歴を示す移動データと、をマッチングすることで、利用明細に含まれる車両特定情報と、移動データから特定される移動主体となるユーザのユーザIDと、を紐づける。
ここで、車両特定情報とは、本実施形態では、走行車両に搭載されたETC車載器の車載器IDを用いる。また、ユーザIDとは、携帯電話の利用において設定されているユーザの識別情報を指す。
【0012】
システム1は、このように、ユーザIDと当該ユーザが使用する車両とを特定することで、高速道路の利用実績を集計するとともに、後述する処理により、一般道を利用している際の移動データ(一般道移動データ)に対しても、車両特定情報を紐づけることで、多岐にわたる交通状況の分析を行う。このようなシステム1の構成について説明する。
【0013】
(2)システム1の全体構成
図1に示すように、システム1は、ユーザ端末10と、管理者端末20と、情報処理サーバ30(以下、単にサーバ30という)と、を備える。
ユーザ端末10、管理者端末20、およびサーバ30は、ネットワーク(例えば、インターネット又はイントラネット)80を介して接続されている。
ユーザ端末10、管理者端末20、およびサーバ30は、ネットワーク80を介して、基地局データベース40、交通ネットワークデータベース50と接続されている。
【0014】
ユーザ端末10は、ユーザが携帯する携帯電話等の情報処理装置である。ユーザ端末10は、基地局(固定測位機器81)とモバイル通信を行うように構成される。ユーザ端末10は、ユーザに携行されて移動する通信機器であり、移動端末と言い換えることもできる。このような移動端末としては、携帯電話のほかに、ユーザに携行されて使用されるwifiビーコン、レーダー測位に用いられる移動アンテナ、ITSスポット(DSRC)に対応する車載のカーナビゲーション端末、Bluetooth(登録商標)を利用した通信端末等が含まれる。なお、移動端末は、移動しながら通信を行うその他の機器であってもよい。
【0015】
固定測位機器81とは、定位置に固定されて通信機器との通信を行う機器を指し、携帯電話の基地局の他、例えば携帯電話の基地局や、wifiビーコンとの通信を行う測位機器、レーダー測位を行う測位機器、ITSspotにおける測位機器等が含まれる。なお、固定測位機器81は、定位置に固定されて通信機器との通信を行う機器であれば、その他の機器であってもよい。
【0016】
ユーザ端末10は、固定測位機器81とのモバイル通信を行う機器として、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブルデバイス(例えば、スマートウォッチ、又はスマートグラス)、などの種々のコンピュータを含み得る。本実施形態では、ユーザ端末10は、携帯電話のモバイル通信に利用されるアンテナが設けられた固定測位機器81とモバイル通信を行うスマートフォンを例に挙げて説明する。
【0017】
管理者端末20は、システム1の管理者が使用する情報処理装置である。管理者端末20は、基地局データベース40に蓄積された移動データと、高速道路の利用実績を示すETC利用明細と、の分析を行う管理者が、マッチング処理に必要な指示操作を行う端末である。管理者端末20は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ(例えば、Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバ、又はそれらの組み合わせ)などの種々のコンピュータを含みえる。本実施形態では、管理者端末20は、管理者が使用するパーソナルコンピュータを例に挙げて説明する。
【0018】
サーバ30は、入力された情報に対して後述する各種の処理を行う情報処理装置である。サーバ30は主に、ユーザ端末10の位置情報を、高速道路の利用明細とマッチングする処理を実行する。
サーバ30は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ(例えば、Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバ、又はそれらの組み合わせ)などの種々のコンピュータを含みえる。本実施形態では、サーバ30は、サーバコンピュータを例に挙げて説明する。
【0019】
基地局データベース40は、複数のユーザ端末10が、固定測位機器81とのモバイル通信により取得された膨大な位置情報を蓄積するデータベースである。基地局データベース40には、通信ログとして、ユーザの端末情報と、通信時刻における位置情報と、が蓄積されている。
【0020】
固定測位機器81が通信可能な通信エリアにユーザ端末10が位置すると、固定測位機器81は、ユーザ端末10から受信した電波から推定される位置情報を、時刻情報とともに基地局データベース40に蓄積する。基地局データベース40は、携帯電話のキャリアが運用するデータベースであり、固定測位機器81が取得した位置情報を、時刻情報とともに通信ログとして、使用端末毎に蓄積している。
【0021】
交通ネットワークデータベース50は、鉄道、高速道路、空路等の移動手段の情報を記憶するデータベースである。交通ネットワークデータベース50は、移動手段の情報として、以下の情報を格納している。
・各交通拠点の施設名称、施設番号、位置、該当する移動手段
・各交通拠点を結ぶ路線名、道路名、空路名
・各交通拠点を結ぶ交通リンクの位置情報(道路および線路の位置を含む)
ここで、交通拠点には、空港、駅、高速バス、高速道路のインターチェンジ(以下、ICという)のように、各移動手段の利用において通過地点(通過ノード)となる各種の交通施設が含まれる。
【0022】
(1-1)ユーザ端末10の構成
ユーザ端末10の構成について説明する。図2は、本実施形態のユーザ端末10の構成を示すブロック図である。
【0023】
図2に示すように、ユーザ端末10は、記憶装置11と、プロセッサ12と、入出力インタフェース13と、通信インタフェース14と、を備える。ユーザ端末10は、入力デバイス15および出力デバイス16の少なくとも1つと接続可能である。
【0024】
記憶装置11は、プログラムおよびデータを記憶するように構成される。記憶装置11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0025】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ)のプログラム
【0026】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0027】
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶されたプログラムを起動することによって、ユーザ端末10の機能を実現するように構成される。プロセッサ12は、コンピュータの一例である。
【0028】
入出力インタフェース13は、入力デバイス15から信号(例えば、ユーザの指示、センシング信号、又はそれらの組み合わせ)を取得し、かつ、出力デバイス16に信号(例えば、画像信号、音声信号、又はそれらの組み合わせ)を出力するように構成される。
【0029】
入力デバイス15は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、物理ボタン、センサ(例えば、カメラ、バイタルセンサ、又はそれらの組み合わせ)、又は、それらの組合せである。
【0030】
出力デバイス16は、例えば、ディスプレイ、スピーカ、印刷装置、又はそれらの組み合わせである。
【0031】
通信インタフェース14は、ユーザ端末10と外部装置との間の通信を制御するように構成される。
【0032】
(1-2)管理者端末20の構成
管理者端末20の構成について説明する。図3は、本実施形態の管理者端末20の構成を示すブロック図である。
【0033】
図3に示すように、管理者端末20は、記憶装置21と、プロセッサ22と、入出力インタフェース23と、通信インタフェース24と、を備える。管理者端末20は、入力デバイス25および出力デバイス26の少なくとも1つと接続可能である。
【0034】
記憶装置21は、プログラムおよびデータを記憶するように構成される。記憶装置21は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0035】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ)のプログラム
【0036】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0037】
プロセッサ22は、記憶装置21に記憶されたプログラムを起動することによって、管理者端末20の機能を実現するように構成される。プロセッサ22は、コンピュータの一例である。
【0038】
入出力インタフェース23は、入力デバイス25から信号(例えば、ユーザの指示、センシング信号、又はそれらの組み合わせ)を取得し、かつ、出力デバイス26に信号(例えば、画像信号、音声信号、又はそれらの組み合わせ)を出力するように構成される。
【0039】
入力デバイス25は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、物理ボタン、センサ(例えば、カメラ、バイタルセンサ、又はそれらの組み合わせ)、又は、それらの組合せである。
【0040】
出力デバイス26は、例えば、ディスプレイ、スピーカ、印刷装置、又はそれらの組み合わせである。
【0041】
通信インタフェース24は、管理者端末20と外部装置との間の通信を制御するように構成される。
【0042】
(1-3)サーバ30のハードウェア構成
サーバ30の構成について説明する。図4は、本実施形態のサーバ30の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、サーバ30は、記憶装置31と、プロセッサ32と、通信インタフェース34とを備える。
【0043】
記憶装置31は、プログラムおよびデータを記憶するように構成される。記憶装置31は、例えば、ROM、RAM、および、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0044】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OSのプログラム
・情報処理を実行するアプリケーションのプログラム
【0045】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理の実行結果
【0046】
プロセッサ32は、記憶装置31に記憶されたプログラムを起動することによって、サーバ30の機能を実現するように構成される。プロセッサ32は、コンピュータの一例である。
【0047】
通信インタフェース34は、サーバ30と外部装置との間の通信を制御するように構成される。
【0048】
(1-4)サーバ30の機能的構成
次に、サーバ30の機能的構成について説明する。図5は、サーバ30の機能的構成を示すブロック図である。
図5に示すように、サーバ30は、通信部301と、記憶部302と、制御部303としての機能を発揮する。
【0049】
(1-4-1)通信部301および記憶部302の機能
通信部301は、サーバ30が外部の装置と通信するための処理を行う。
【0050】
記憶部302は、サーバ30が使用するデータおよびプログラムを記憶する。記憶部302は、例えば以下のデータを記憶している。
・ユーザデータベース(ユーザDB)
・端末データベース(端末DB)
・通信ログデータベース(通信ログDB)
・人流ノードデータベース(人流ノードDB)
・人流リンクデータベース(人流リンクDB)
・トリップグループデータベース(トリップグループDB)
・トリップデータベース(トリップDB)
・利用明細データベース(利用明細DB)
・車載器データベース(車載器DB)
・料金所データベース(料金所DB)
・走行ログデータベース(走行ログDB)
・移動候補データベース(移動候補DB)
・判定結果データベース(判定結果DB)
・補完結果データベース(補完結果DB)
【0051】
ユーザDBとは、ユーザ端末10を使用するユーザに関する情報を格納するデータベースである。ユーザDBの詳細は後述する。
【0052】
端末DBとは、ユーザ端末10に関する情報を格納するデータベースである。端末DBの詳細は後述する。
【0053】
人流ノードDBとは、ユーザ端末10の位置情報から得られる移動データのうち、通信ログにより特定される位置情報に対応する結節点(ノード)に関する情報を格納するデータベースである。人流ノードDBの詳細は後述する。
【0054】
人流リンクDBとは、ユーザ端末10の位置情報から得られる移動データのうち、ノード間の経路(リンク)に関する情報を格納するデータベースである。人流リンクDBの詳細は後述する。
【0055】
トリップグループDBとは、ユーザ端末10の位置情報から得られる移動データのうち、移動手段を示す情報であるトリップモードごとに、ノードとリンクをグルーピングした集合(トリップグループ)に関する情報を格納するデータベースである。トリップグループDBの詳細は後述する。
【0056】
トリップDBとは、ユーザ端末10の位置情報から得られる移動データのうち、特定のユーザの始点から終点に至る一連の移動行動ごとの移動経路を示すトリップデータに関する情報を格納するデータベースである。トリップDBの詳細は後述する。なお、トリップデータは、始点から終点に至る一連の移動行動ごとの移動データの集合であるため、1日の中に複数のトリップデータが存在することもある。
【0057】
利用明細DBとは、高速道路の利用実績を示すETC利用明細に関する情報を格納するデータベースである。ユーザDBの詳細は後述する。
【0058】
車載器DBとは、高速道路を利用する車両に搭載された車載器に関する情報を格納するデータベースである。車載器DBの詳細は後述する。
【0059】
料金所DBとは、高速道路の料金所に関する情報を格納するデータベースである。料金所DBの詳細は後述する。
【0060】
走行ログDBとは、高速道路を利用した車両の走行ログに関する情報を格納するデータベースである。走行区間DBの詳細は後述する。
【0061】
移動候補DBとは、移動候補データに関する情報を格納するデータベースである。移動候補データとは、トリップデータを構成する複数の移動データのうち、車両の走行ログに対応する移動データの候補となるデータである。移動候補DBの詳細は後述する。
【0062】
判定結果DBとは、高速道路の走行ログと、移動データと、のマッチングの判定結果を格納するデータベースである。判定結果DBの詳細は後述する。
【0063】
補完結果DBとは、高速道路の走行ログに対応するユーザ情報の補完結果を格納するデータベースである。補完結果DBの詳細は後述する。
【0064】
(1-4-2)制御部303の機能
図5に示す制御部303は、サーバ30のプロセッサ32が、プログラムに従って処理を行うことにより、送受信制御モジュール3031、取得モジュール3032、生成モジュール3033、選別モジュール3034、特定モジュール3035、推定モジュール3036、作成モジュール3037、および出力モジュール3038としての機能を発揮する。
【0065】
<送受信制御モジュール3031の機能>
送受信制御モジュール3031は、サーバ30が外部の装置から通信プロトコルに従って信号を送受信する処理を制御する。
【0066】
<取得モジュール3032の機能>
取得モジュール3032は、外部の基地局データベース40から通信ログを取得して、記憶部302の通信ログDBの新たなレコードを記録する。
また、取得モジュール3032は、ETCの利用明細を取得して、記憶部302における利用明細DBの新たなレコードとして記録する。利用明細には、利用したICの入口および出口の地点と通過時刻に関する情報、および当該車両の車種に関する情報と、が含まれる。
【0067】
<生成モジュール3033の機能>
生成モジュール3033は、通信ログDBに含まれる通信ログを加工して、以下の各DBに格納されるデータを生成する。
・人流ノードDB
・人流リンクDB
・トリップグループDB
・トリップDB
これらの詳細については、各DBの構造とともに後述する。
【0068】
<選別モジュール3034の機能>
選別モジュール3034は、利用明細および移動データそれぞれにおける通過ノードの通過時刻の一致の度合いから、複数の移動データのうち、車両の走行ログに対応する移動データの候補となる移動候補データを複数選別する。この処理の詳細については後述する。
【0069】
<特定モジュール3035の機能>
特定モジュール3035は、利用明細および移動データを対比することで、走行ログに対応する、ユーザの移動データを特定する。この際、特定モジュール3035は、選別ジュールにより選別された一群の移動候補データを、一又は複数の車両における複数の利用明細が示す走行ログと対比することで、特定の利用明細が示す走行ログに対応する移動データを特定し、走行ログの車両特定情報と移動データのユーザIDとを紐づける。この処理の詳細については後述する。
また、特定モジュール3035は、既に対応関係が特定された走行ログと移動データとの組み合わせを参照して、対応する移動データが特定されていない走行ログに対して、該当するユーザ情報を補完して紐づける。この処理の詳細については後述する。
【0070】
<推定モジュール3036の機能>
推定モジュール3036は、マッチング処理により得られた車両特定情報である車載器IDとユーザ情報との対応関係に基づいて、当該ユーザが一般道路を移動した際のトリップデータにおいて使用された車両を推定する。この処理の詳細については後述する。
【0071】
<作成モジュール3037の機能>
作成モジュール3037は、互いに対応づけられた車両特定情報とユーザ情報とを用いて、車種ごとのOD表(Origin-Destination Table Matrix)を作成して出力する。OD表とは、統計的な道路の利用状況の調査手法の1つであり、車両の流動を調べるために、どの始点(Origin)からどの終点(Destination)にどの程度の量の車両が移動しているかを表形式で示したデータである。OD表およびその作成方法の詳細については後述する。
【0072】
<出力モジュール3038の機能>
出力モジュール3038は、他のモジュールが行った処理の結果を、管理者端末20に対して出力する。
【0073】
(2)データベースの構造
次に、記憶部302に記憶される各データベースの構造の一例について説明する。
【0074】
(2-1)ユーザ端末10の利用において管理されるDB
まず、図6に示すユーザ端末10の利用において管理される以下のDBを説明する。
・ユーザDB
・端末DB
・通信ログDB
【0075】
(2-1-1)ユーザDB
図6Aは、ユーザDBの具体例を示す図である。
図6Aに示すように、ユーザDBは、項目「ユーザID」と、項目「氏名」と、項目「年齢」と、項目「性別」と、項目「居住地」と、項目「職業」と、項目「契約内容」と、を備えている。
【0076】
項目「ユーザID」には、ユーザ端末10を使用するユーザを特定可能な識別情報が格納される。
【0077】
項目「氏名」は、ユーザIDに対応するユーザの氏名に関する情報が格納される。
【0078】
項目「年齢」には、ユーザIDに対応するユーザの年齢に関する情報が格納される。
【0079】
項目「性別」には、ユーザIDに対応するユーザの性別に関する情報が格納される。
【0080】
項目「居住地」には、ユーザIDに対応するユーザの居住地に関する情報が格納される。
【0081】
項目「職業」には、ユーザIDに対応するユーザの職業に関する情報が格納される。
【0082】
項目「契約内容」には、ユーザIDに対応するユーザにおいて、ユーザ端末10の使用に関して締結された使用契約の内容に関する情報が格納される。例えば、契約内容として、契約を識別可能な契約IDが含まれていてもよい。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、ユーザDBは、他のカラムを備えてもよい。
【0083】
(2-1-2)端末DB
図6Bは、端末DBの具体例を示す図である。
図6Bに示すように、端末DBは、項目「端末ID」と、項目「ユーザID」と、項目「契約ID」と、を備えている。
【0084】
項目「端末ID」には、ユーザ端末10を識別可能な端末の識別情報が格納される。
【0085】
項目「ユーザID」は、走行ログIDに対応する走行ログを使用するユーザの識別情報が格納される。
【0086】
項目「契約ID」には、走行ログIDに対応する走行ログの使用に関して締結された使用契約の識別番号が格納される。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、端末DBは、他のカラムを備えてもよい。
【0087】
(2-1-3)通信ログDB
図6Cは、通信ログDBの具体例を示す図である。
図6Cに示すように、通信ログDBは、項目「通信ログID」と、項目「端末ID」と、項目「位置座標」と、項目「通信時刻」と、を備えている。
【0088】
項目「通信ログID」には、ユーザ端末10の通信を特定可能な通信ログの識別情報が格納される。
【0089】
項目「端末ID」は、通信ログIDに対応する通信を行ったユーザ端末10の端末IDが格納される。
【0090】
項目「位置座標」には、通信ログIDに対応する通信において取得されたユーザ端末10の位置座標が格納される。
【0091】
項目「通信時刻」には、通信ログIDに対応する通信が行われた時刻情報が格納される。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、通信ログDBは、他のカラムを備えてもよい。
【0092】
(2-2)ユーザの移動履歴として管理されるDB
次に、図7に示すユーザの移動履歴(移動データ)として管理される以下のDBについて説明する。
・トリップDB
・トリップグループDB
・人流ノードDB
・人流リンクDB
【0093】
(2-2-1)トリップDB
図7Aは、トリップDBの具体例を示す図である。
図7Aに示すように、トリップDBは、項目「トリップID」と、項目「端末ID」と、項目「行動日」と、を備えている。
【0094】
項目「トリップID」には、トリップデータを特定可能なトリップデータのユーザ端末10を識別可能なトリップデータの識別情報が格納される。
【0095】
項目「端末ID」は、トリップIDに対応するトリップデータが取得されたユーザ端末10の端末IDが格納される。
【0096】
項目「行動日」には、トリップIDに対応するトリップデータが示すユーザの移動が行われた日の日付を示す情報が格納される。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、トリップDBは、他のカラムを備えてもよい。
【0097】
(2-2-2)トリップグループDB
図7Bは、トリップグループDBの具体例を示す図である。
図7Bに示すように、トリップグループDBは、項目「トリップグループID」と、項目「トリップID」と、を備えている。
【0098】
項目「トリップグループID」には、トリップグループを特定可能なトリップグループの識別情報が格納される。
【0099】
項目「トリップID」には、トリップグループIDに対応するトリップグループが属するトリップデータの識別情報が格納される。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、トリップグループDBは、他のカラムを備えてもよい。
【0100】
(2-2-3)人流ノードDB
図7Cは、人流ノードDBの具体例を示す図である。
図7Cに示すように、人流ノードDBは、項目「人流ノードID」と、項目「通信ログID」と、項目「トリップグループID」と、項目「基準時刻」と、を備えている。
【0101】
項目「人流ノードID」には、人流ノードを特定可能な人流ノードの識別情報が格納される。
【0102】
項目「通信ログID」は、人流ノードIDに対応する人流ノードが該当する通信ログの識別情報が格納される。人流ノードが該当する通信ログとは、人流ノードが位置情報として記録された通信ログを指す。
【0103】
項目「トリップグループID」には、人流ノードIDに対応する人流ノードが属するトリップグループの識別情報が格納される。
【0104】
項目「基準時刻」には、人流ノードIDに対応する人流ノードの時系列の基準となる時刻情報が格納される。人流ノードの基準時刻には、当該人流ノードが位置情報として取得された通信ログの通信時刻が該当する。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、人流ノードDBは、他のカラムを備えてもよい。
【0105】
(2-2-4)人流リンクDB
図7Dは、人流リンクDBの具体例を示す図である。
図7D示すように、端末DBは、項目「人流リンクID」と、項目「始点ノードID」と、項目「終点ノードID」と、項目「トリップモードID」と、項目「トリップグループID」と、項目「基準時刻ID」と、を備えている。
【0106】
項目「人流リンクID」には、人流リンクを特定可能な人流リンクの識別情報が格納される。
【0107】
項目「始点ノードID」には、人流リンクIDに対応する人流リンクの始点となる人流ノード(始点ノード)の人流ノードIDが格納される。
【0108】
項目「終点ノードID」には、人流リンクIDに対応する人流リンクの終点となる人流ノード(終点ノード)の人流ノードIDが格納される。
【0109】
項目「トリップモード」には、人流リンクIDに対応する人流リンクにおける移動手段を示す情報が格納される。
【0110】
項目「トリップグループID」には、人流リンクIDに対応する人流リンクが含まれるトリップグループの識別情報が格納される。
【0111】
項目「基準時刻」には、人流リンクIDに対応する人流リンクの時系列の基準となる時刻情報が格納される。人流リンクの基準時刻には、当該人流リンクの始点ノード又は終点ノードの少なくともいずれかの位置情報が取得された通信ログの通信時刻が該当する。例えば、始点ノードおよび終点ノード双方の位置情報に対応する通信時刻を、第1基準時刻および第2基準時刻としてそれぞれ管理してもよいし、始点ノードの位置情報に対応する通信時刻のみを基準時刻として管理してもよい。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、人流ノードDBは、他のカラムを備えてもよい。
【0112】
次に、このようなユーザの移動履歴として管理される4つのDBを用いて定義されるトリップデータ(<人流データ)の構造を説明する。図8は、トリップデータの構造を示す図である。
図8に示すように、始点ノードn1から終点ノードn21を含む移動データでは、各ノード間に人流リンクが定義される。人流リンクは移動距離と移動時刻によりトリップモード(移動手段)が判定されて紐づけられている。そして、図示の例では、時系列に並ぶ複数の人流リンクは、トリップモードの違いにより、5つのトリップグループに分類されている。この場合、トリップデータは、5つのトリップグループを備え、それぞれのトリップグループにおけるトリップモードが判定されている。そして、このトリップグループを、本実施形態では、走行ログと対応する移動データの単位として扱う。具体的には、グループBおよびグループDが、走行ログと比較される高速道路移動データとなる。
【0113】
(2-3)高速道路の利用において管理されるDB
次に、図9に示す高速道路の利用実績として管理される以下のDBについて説明する。
・利用明細DB
・車載器DB
・料金所DB
・走行ログDB
【0114】
(2-3-1)利用明細DB
図9Aは、利用明細DBの具体例を示す図である。
図9Aに示すように、利用明細DBは、項目「利用明細ID」と、項目「利用車載器ID」と、項目「利用インター/料金所ID」と、項目「利用日時」と、を備えている。
【0115】
項目「利用明細ID」には、利用明細を特定可能な利用明細の識別情報が格納される。
【0116】
項目「利用車載器ID」は、利用明細IDに対応する高速道路の利用を行った車両に搭載されていたETC車載器の識別情報が格納される。
【0117】
項目「利用インター/料金所ID」には、利用明細IDに対応する高速道路の利用が行われたIC又は料金所の識別番号が格納される。
【0118】
項目「利用日時」には、利用明細IDに対応する高速道路の利用が行われた日時に関する情報が格納される。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、利用明細DBは、他のカラムを備えてもよい。
【0119】
(2-3-2)車載器DB
図9Bは、車載器DBの具体例を示す図である。
図9Bに示すように、車載器DBは、項目「車載器ID」と、項目「車種」と、を備えている。
【0120】
項目「車載器ID」には、車両に搭載されるETC車載器を特定可能な車載器の識別情報が格納される。
【0121】
項目「車種」には、車載器IDに対応する車載器が搭載された車両の車種を示す情報が格納される。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、車載器DBは、他のカラムを備えてもよい。
【0122】
(2-3-3)料金所DB
図9Cは、料金所DBの具体例を示す図である。
図9Cに示すように、料金所DBは、項目「IC/料金所ID」と、項目「施設名称」と、項目「所在地」と、項目「位置座標」と、を備えている。
【0123】
項目「IC/料金所ID」には、高速道路のIC又は料金所を特定可能な識別情報が格納される。
【0124】
項目「施設名称」は、IC/料金所IDに対応するIC又は料金所の施設名称が格納される。
【0125】
項目「所在地」には、IC/料金所IDに対応するIC又は料金所の所在地に関する情報が、例えば地番表記により格納されている。
【0126】
項目「位置座標」には、IC/料金所IDに対応するIC又は料金所の位置座標を示す緯度および経度の情報が格納されている。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、IC/料金所DBは、他のカラムを備えてもよい。
【0127】
(2-3-4)走行ログDB
図9Dは、走行ログDBの具体例を示す図である。
図9Dに示すように、走行ログDBは、項目「走行ログID」と、項目「車載器ID」と、項目「進入施設ID」と、項目「進入日時」と、項目「通過施設ID」と、項目「通過日時」と、項目「退出施設ID」と、項目「退出日時」と、を備えている。
【0128】
項目「走行ログID」には、高速道路の走行ログを特定可能な走行ログの識別情報が格納される。
【0129】
項目「車載器ID」は、走行ログIDに対応する高速道路の利用を行った車両に搭載されていた車載器の識別情報が格納される。
【0130】
項目「進入施設ID」には、走行ログIDに対応する高速道路の利用において、車両が高速道路に進入したIC又は料金所の識別情報が格納される。
【0131】
項目「進入日時」には、走行ログIDに対応する高速道路の利用において、車両が高速道路に進入した日時を示す情報が格納される。
【0132】
項目「通過施設ID」には、走行ログIDに対応する高速道路の利用において、走行区間中に通過したIC又は料金所の識別情報が格納される。なお、通過施設IDは、高速道路の管轄会社の境界となる料金所等の施設(乗継箇所)を通過した場合にのみ記録される。この情報は、その前後の区間における料金体系の変更に乗継箇所の情報を用いられる。
【0133】
項目「通過日時」には、走行ログIDに対応する高速道路の利用において、車両が通過施設IDに相当するIC又は料金所を通過した日時を示す情報が格納される。
【0134】
項目「退出施設ID」には、走行ログIDに対応する高速道路の利用において、車両が高速道路から退出したIC又は料金所の識別情報が格納される。
【0135】
項目「退出日時」には、走行ログIDに対応する高速道路の利用において、車両がIC又は料金所を退出した日時を示す情報が格納される。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、走行ログDBは、他のカラムを備えてもよい。
【0136】
(2-4)マッチング処理の結果として管理されるDB
次に、図10に示すマッチング処理の結果として管理される以下のDBについて説明する。
・移動候補DB
・判定結果DB
・補完結果DB
【0137】
(2-4-1)移動候補DB
図10Aは、移動候補DBの具体例を示す図である。
図10Aに示すように、移動候補DBは、項目「移動候補ID」と、項目「走行ログID」と、項目「トリップグループID」と、を備えている。
【0138】
項目「移動候補ID」には、移動候補データを特定可能な移動候補データの識別情報が格納される。
【0139】
項目「走行ログID」には、移動候補IDに対応する移動候補データにおいて、評価対象となる走行ログの識別情報が格納される。
【0140】
項目「トリップグループID」には、移動候補IDに対応する移動候補データとして、該当する走行ログに対応する移動データの候補として推定されたトリップグループの識別情報が格納される。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、移動候補DBは、他のカラムを備えてもよい。
【0141】
(2-4-2)判定結果DB
図10Bは、判定結果DBの具体例を示す図である。
図10Bに示すように、判定結果DBは、項目「判定結果ID」と、項目「車載器ID」と、項目「ユーザID」と、を備えている。
【0142】
項目「判定結果ID」には、走行ログと移動データとのマッチング処理の判定結果を特定可能な判定結果の識別情報が格納される。
【0143】
項目「車載器ID」には、判定結果IDに対応する判定において評価対象とされた走行ログを記録した車載器の識別情報が格納される。
【0144】
項目「ユーザID」には、判定結果IDに対応する判定において、車載器IDに紐づけられたユーザ端末10の識別情報が格納される。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、判定結果IDは、他のカラムを備えてもよい。
【0145】
(2-4-3)補完結果DB
図10Cは、補完結果DBの具体例を示す図である。
図10Cに示すように、補完結果DBは、項目「補完結果ID」と、項目「走行ログID」と、項目「ユーザID」と、を備えている。
【0146】
項目「補完結果ID」には、走行ログに対するユーザ情報の補完処理の結果を特定可能な補完結果の識別情報が格納される。
【0147】
項目「走行ログ」には、補完結果IDに対応する補完処理において、評価対象とされた走行ログの識別情報が格納される。
【0148】
項目「ユーザID」には、補完結果IDに対応する補完処理において、該当する走行ログに対して紐づけられたユーザIDが格納される。
なお、これらの構成はあくまで一例であり、補完結果IDは、他のカラムを備えてもよい。
【0149】
(3)実施形態の概要
本実施形態の概要について説明する。
システム1は、管理者からの操作指示に応答して、ユーザ端末10の通信ログから生成されるユーザの移動データと、高速道路の利用明細から得られる車両の走行ログと、を比較して、走行ログに対応する移動データを特定することで、移動データと走行ログとのマッチング処理を行う。この処理について具体例を挙げて説明する。
【0150】
図11は、本実施形態の概要を説明する図である。
図11に示すように、ユーザ端末10の通信ログから生成された人流データは、人流ノード1を始点として、人流ノード18を終点とする一連の移動経路を示している。この一連の移動経路を、ユーザのトリップデータと呼ぶ。トリップデータには、複数の人流リンクが含まれており、図示の例では、破線で表現されている。
【0151】
このトリップデータには、以下のトリップグループが含まれる。
・人流ノード1~人流ノード3に対応するグループX(一般道移動データ)
・人流ノード3~人流ノード15に対応するグループY(高速道路移動データ)
・人流ノード15~人流ノード18に対応するグループZ(一般道移動データ)
これらの各移動データに関する詳細は、図8に示す4つのDBにより管理されている。
【0152】
一方、システム1は、高速道路の利用明細に基づいて、図11のマップ上において白矩形で示される通過ノードを示す走行ログを生成する。
具体的には、走行ログは、入口となったICを通過したときに記録された利用明細1の情報と、出口となったICを通過したときに記録された利用明細2の情報と、を用いて生成される。また、乗継箇所がある場合には、通過施設を通過したときに記録された利用明細3の情報もさらに用いられる。利用明細から複数の通過ノードが特定されることで、図11に一点鎖線で示す経路を、当該車両の走行経路として推定することができる。
【0153】
次に、システム1は、管理者からの操作指示に応答して、走行ログRに対して対応する移動データをマッチングする処理を行う。図示は省略しているが、実際には、評価対象日おいて検知された膨大な移動データと、同日に記録された膨大な利用明細の中から、それぞれの通過ノードの位置と時間の一致の度合いから、システム1は走行ログに対応する移動データを推定する。
【0154】
図示の例では、以下の観点から、トリップグループYと、走行ログと、が一致する蓋然性が高いことが推定される。
・人流ノード3の位置と、利用明細1が記録されたICの位置と、が近いこと
・人流ノード3の基準時刻と、利用明細1が記録されたICの通過時刻と、が近いこと
・人流ノード15の位置と、利用明細2が記録されたICの位置と、が近いこと
・人流ノード3の基準時刻と、利用明細1が記録されたICの通過時刻と、が近いこと
【0155】
システム1は、それぞれ膨大に蓄積される移動データおよび走行ログから、それぞれに含まれる通過ノードと通過時刻の一致の度合いに基づいて、評価対象となる走行ログに対して、対応する蓋然性の高い移動データを、移動候補データとして複数選別する。
【0156】
システム1は、選別された移動候補データから、該当する蓋然性が最も高いものを選出し、評価対象となる走行ログに対応する移動データとして特定する。そしてシステム1は、走行ログに対応する車載器と、移動データに対応するユーザ端末10のユーザIDと、を紐づける。これにより、車載器IDに紐づけられた車種と、ユーザIDと、が対応づけられる。このようなシステム1の処理について以下に詳述する。
【0157】
(4)システム1の処理について
次に、システム1の処理について説明する。
【0158】
(4-1)システム1の全体処理
図12は、システム1の処理の全体を示すフローである。
図12に示すように、システム1ではまず、通信ログを取得する(ステップS30)。具体的には、サーバ30の取得モジュール3032は、基地局データベース40に蓄積されている通信ログを取得する。取得モジュール3032は、取得した通信ログを、通信ログDBに記憶させる。
【0159】
ステップS30の後に、システム1は、取得した通信ログを加工することで、トリップデータを取得する(ステップS31)。
具体的には、サーバ30の生成モジュール3033はまず、ユーザ端末および移動日ごとに、新たなトリップデータの識別番号を設定し、トリップDBの新たなレコードとして記録する。
【0160】
次に、生成モジュール3033は、通信ログデータベースから読み込んだユーザ端末10の位置情報について、通信時刻を用いて時系列に沿って並べることで、ユーザ端末10の移動経路における人流ノードを定義する。この際、生成モジュール3033は、取得した位置情報の一部を除去する処理(クレンジング処理)を実行してもよい。生成モジュール3033は、クレンジング処理を行った場合には、時系列に並ぶ一連の通信ログに対応する一群の位置情報のうち、除去されずに残った位置情報を、人流ノードDBに新たな人流ノードのレコードとして記憶させる。
【0161】
次に、生成モジュール3033は、人流ノードDBを参照して、人流ノード間をつなぐ人流リンクを定義する。生成モジュール3033は、定義した人流リンクについて、人流リンクDBの新たなレコードとして記憶させる。
【0162】
次に、生成モジュール3033は、トリップデータの生成において、位置情報と時刻情報とを用いて、人流リンクごとの移動速度を算出する。生成モジュール3033は、算出した移動速度を用いて、移動経路において使用された交通手段を判定する。交通手段の判定においては、交通ネットワークデータベース50に蓄積された交通拠点に関する各種の情報を用いて、該当する蓋然性が高い交通手段が判定される。
生成モジュール3033は、人流リンクごとに交通手段の判定を行い、人流リンクDBにおけるトリップモードに判定結果を入力する。
【0163】
次に、生成モジュール3033は、人流リンクDBを参照して、トリップグループを定義する。生成モジュール3033は、互いに同じトリップモードとなり時系列に並ぶ一群の人流リンクについて、一つのトリップグループとして定義する。生成モジュール3033は、人流ノードDBおよび人流リンクDBにおけるトリップグループIDのカラムを更新し、トリップグループDBに新たなレコードを記録する。これにより、トリップデータの生成処理が終了する。
【0164】
ステップS31の後に、システム1は、高速道路のETC利用明細を取得する(ステップS32)。
具体的には、サーバ30の取得モジュール3032は、例えば、高速道路会社が管理する外部サーバから、ETC利用明細に関する情報を取得する。取得サーバは、取得した利用明細に関する情報を、利用明細DBに記憶させる。サーバ30の生成モジュール3033は、利用明細DB、並びに予め記憶されている車載器DBおよび料金所DBを参照して、走行ログデータを生成する。生成モジュール3033は生成した走行ログデータを、走行ログDBにおける新たなレコードとして記憶させる。
【0165】
ステップS32の後に、システム1は、利用明細から得られた走行ログに対応する移動データを特定(マッチング)する(ステップS33)。移動データの特定処理の詳細は後述する。
【0166】
ステップS33の後に、システム1は、対応する移動データが特定されていない走行ログに対して、該当するユーザ情報を補完する(ステップS34)。ユーザIDの補完処理の詳細については後述する。
以上により、システム1の全体の処理が終了する。
【0167】
(4-1)走行ログに対応する移動データの特定処理
次に、図12のステップS33に示す走行ログに対応する移動データの特定処理の詳細について説明する。図13は、マッチング処理の詳細を示すフローである。
図13に示すように、マッチング処理では、まず、サーバ30が移動候補データを複数選別する(ステップS331)。
具体的には、サーバ30の選別モジュール3034は、利用明細および移動データそれぞれにおける通過ノードの通過時刻の一致の度合いから、複数の移動データのうち、車両の走行ログに対応する移動データの候補となる移動候補データを複数選別する。
【0168】
この際、選別モジュール3034は、移動データが、利用明細が示す走行ログにおける高速道路の進入ICおよび退出ICそれぞれと近隣する通過ノードを通過しているかどうかを判定する。選別モジュール3034は、移動データに該当する通過ノードが含まれる場合において、利用明細が示す進入ICおよび退出ICそれぞれの通過時刻と、移動データが示す各通過ノードの通過時刻と、が所定の時間差以内であるかどうかを判定する。選別モジュール3034は、双方の通過時刻が所定の時間差以内である場合に、当該移動データを移動候補データとして選別する。
【0169】
なお、この判定の基準となる通過時刻の時間差は、進入ICおよび退出ICそれぞれの沿道状況の違いにより、異なる値に設定されている。すなわち、進入ICおよび退出ICが山間部である場合には、都市部にある場合と比較して、判定の基準となる時間差が長く設定されている。これは、山間部の方が都市部よりも位置情報のサンプリング頻度が少ないことから、その影響を受けにくくするために、山間部では都市部よりも長い時間差を許容している。
選別モジュール3034は、選別した移動データを、移動候補DBの新たなレコードとして記憶させる。
【0170】
ステップS331の後に、サーバ30は、走行ログに対応する移動データを特定する(ステップS332)。
具体的には、サーバ30の特定モジュール3035は、選別された一群の移動候補データを、一又は複数の車両における複数の利用明細が示す走行ログと対比することで、特定の利用明細が示す走行ログに対応する移動データを特定する。ここで、特定モジュール3035による移動データの特定手法について説明する。
【0171】
まず、特定モジュール3035は、一つの車両に関する複数の利用明細が示す走行ログが、同一のユーザについての複数の移動候補データと一致する場合には、当該複数の利用明細が示す走行ログに対応する移動候補データとして、当該複数の移動候補データを特定する。
【0172】
次に、特定モジュール3035は、複数の車両に関する複数の利用明細が示す走行ログが、複数のユーザについての複数の移動候補データと一致する場合には、通過時刻の時刻差に従って、当該複数の利用明細が示す走行ログそれぞれについて、対応する移動候補データとして、当該複数の移動候補データそれぞれを特定する。
【0173】
次に、特定モジュール3035は、同日における同区間での一つの利用明細が示す走行ログが、一又は複数のユーザについての移動候補データと一致する場合には、当該利用明細が示す走行ログに対応する移動候補データとして、一又は複数のユーザについての移動候補データを特定する。
【0174】
次に、特定モジュール3035は、同区間での一又は複数の利用明細が示す走行ログが、一又は複数のユーザについての移動候補データと一致する場合には、通過時刻の時刻差に従って、当該利用明細が示す走行ログに対応する移動候補データとして、一又は複数のユーザについての移動候補データを特定する。
【0175】
特定モジュール3035は、評価対象となった走行ログの車載器IDと、特定した移動データのユーザIDと、判定結果DBの新たなレコードとして記憶させる。これにより、走行ログに対する移動情報の特定処理が終了する。
【0176】
(4-3)ユーザ情報の補完処理について
次に、図12のステップS34に示すユーザ情報の補完処理の詳細について説明する。図14は、ユーザ情報の補完処理の詳細を示すフローである。
図14に示すように、ユーザ情報の補完処理では、対応する移動データが特定されていない走行ログに対して、ユーザ情報の補完を行う。具体的な補完の手法について以下に説明する。
【0177】
まず、第1の補完処理として、特定モジュール3035は、一つの車両に関する時系列に並ぶ2つの利用明細に係る走行ログの車載器IDに、第1のユーザ情報が既に紐づけられている場合には、時系列に沿って当該2つの利用明細の間に位置する利用明細に係る車載器IDに対して、第1のユーザ情報を補完する処理を行う。一方、一つの車両に関する時系列に並ぶ2つの利用明細に係る車載器IDに、複数のユーザ情報が既に紐づけられている場合には、補完処理は実行しない。
【0178】
次に、第2の補完処理として、特定モジュール3035は、一つの車両に関する同日の複数の利用明細のうち、半数を超える利用明細に係る走行ログの車載器IDに、第2のユーザ情報が既に紐づけられている場合には、同日のその他の利用明細に係る車載器IDに対して、第2のユーザ情報を補完する処理を行う。一方、半数を超えない場合には、補完処理は実行しない。
【0179】
次に、第3の補完処理として、特定モジュール3035は、一つの旅客車両に関する同日の複数の利用明細のうち、時系列に並ぶ2つの利用明細に係る走行ログの車載器IDに、第3のユーザ情報が既に紐づけられている場合には、時系列に沿って当該2つの利用明細の間に位置する利用明細に係る車載器IDに対して、第3のユーザ情報を補完する。
【0180】
上記の第1から第3の補完処理によってもユーザ情報が保管されない走行ログに対しては、特定モジュール3035はユーザ情報の補完を行わない。特定モジュール3035は、補完処理の対象となったトリップグループIDと、当該トリップグループに対して補完したユーザIDと、を判定結果DBの新たなレコードとして記録する。これにより、ユーザ情報の補完処理が終了する。
【0181】
(5)小括
以上説明したように、システム1によれば、サーバ30が、利用明細および移動データを対比することで、利用明細が示す走行ログに対応する、ユーザの移動データを特定し、車載器IDとユーザIDとを紐づける処理を行う。
【0182】
また、サーバ30が、既に対応関係が特定された走行ログと移動データとの組み合わせを参照して、対応する移動データが特定されていない走行ログに対して、該当するユーザ情報を補完することで、トリップグループとユーザIDとを紐づける。
【0183】
これらの処理により、ユーザ端末10の利用者として登録されていたユーザIDに対して、高速道路の利用履歴として管理される車載器IDを紐づけることが可能になり、ユーザが日常的に使用する車両情報を推定することができる。このため、交通量に対して有意な情報となりえる充分なサンプル数となる高速道路の利用履歴を取得することができる。
【0184】
また、サーバ30は、車両の走行ログに対応する移動データの候補となる移動候補データを複数選別したうえで、選別された一群の移動候補データを、一又は複数の車両における複数の利用明細が示す走行ログと対比することで、特定の利用明細が示す走行ログに対応する移動データを特定する処理を行う。このため、走行ログに対応する移動データを特定処理の精度を確保することができる。
【0185】
また、サーバ30は、移動データが、利用明細が示す走行ログにおける高速道路の進入ICおよび退出ICそれぞれと近隣する通過ノードを通過している場合において、利用明細が示す進入ICおよび退出ICそれぞれの通過時刻と、移動データが示す各通過ノードの通過時刻と、が所定の時間差以内である場合に、当該移動データを移動候補データとして選別する。このため、利用明細から得られる走行ログ、および通信ログから得られる移動データそれぞれにおける通過ノードの位置と通過時刻が一致するかを評価して、走行ログに対応する蓋然性の高い移動データを選別することができる。
【0186】
また、サーバ30は、進入ICおよび退出ICそれぞれの沿道状況の違いにより、選別の判定に用いる通過時刻の時間差の範囲を異なる値となるように設定する。このため、沿道状況の違いによる位置情報のサンプリング頻度などを考慮して、適切な判定基準となる時間差を設定することができる。
【0187】
また、サーバ30は、走行ログに対応する移動データを特定する際に、一つの車両に関する複数の利用明細が示す走行ログが、同一のユーザについての複数の移動候補データと一致する場合に、当該複数の利用明細が示す走行ログに対応する移動候補データとして、当該複数の移動候補データを特定する。このため、ユーザが同じ車両を常時使用していることを想定して、車両とユーザとの対応関係を特定することができる。
【0188】
また、サーバ30は、走行ログに対応する移動データを特定する際に、複数の車両に関する複数の利用明細が示す走行ログが、複数のユーザについての複数の移動候補データと一致する場合に、通過時刻の時刻差に従って、当該複数の利用明細が示す走行ログそれぞれについて、対応する移動候補データとして、当該複数の移動候補データそれぞれを特定する。このため、複数の車両で移動をするグループに対して、それぞれの車両に対応するユーザIDを、通過ノードにおける通過時刻を考慮して、高精度に特定することができる。
【0189】
また、サーバ30は、走行ログに対応する移動データを特定する際に、同日における同区間での一つの利用明細が示す走行ログが、一又は複数のユーザについての移動候補データと一致する場合には、当該利用明細が示す走行ログに対応する移動候補データとして、一又は複数のユーザについての移動候補データを特定する。このため、走行ログに対応する移動データを特定処理の精度を確保することができる。
【0190】
また、サーバ30は、走行ログに対応する移動候補データを特定する際に、同区間での一又は複数の利用明細が示す走行ログが、一又は複数のユーザについての移動候補データと一致する場合には、通過時刻の時刻差に従って、当該利用明細が示す走行ログに対応する移動候補データとして、一又は複数のユーザについての移動候補データを特定する。このため、走行ログに対応する移動データを特定処理の精度を確保することができる。
【0191】
また、サーバ30は、前述した各種の補完処理を行うことで、既に対応関係が特定された走行ログと移動データとの組み合わせを参照して、対応する移動データが特定されていない走行ログに対して、該当するユーザ情報を補完する。このため、選別された一群の移動候補データを、一又は複数の車両における複数の走行ログと対比をしても、対応する移動データを特定できない走行ログに対して、対応するユーザ情報を補完することができる。
【0192】
(6)その他の処理
次に、システム1のその他の処理について説明する。図15は、その他の処理を説明する図である。図15に示すように、システム1は、処理1として、前述した車両の走行ログとユーザ端末10の移動データの対応関係を特定又は補完する。これにより、図10Cに示す判定結果DBが得られ、車両を特定可能な車載器IDと、ユーザ端末10の使用者であるユーザIDと、が紐づけられた状態となる。
【0193】
そして、システム1は、処理1による処理を前提として、以下の処理2および処理3を実行する。
・処理2:ユーザIDと車両特定情報(車載器ID)との対応関係を用いて、一般道移動データに対して車両特定情報を推定する処理
・処理3:車種別のOD表を集計する処理
これらの処理について、以下に順番に詳述する。
【0194】
(6-1)一般道移動データに対して車両特定情報を推定する処理
この処理では、サーバ30は、車両特定情報である車載器IDに対して紐づけられたユーザ情報に基づいて、当該ユーザが一般道路を移動した際のトリップデータにおいて使用された車両を推定する。
【0195】
具体的には、サーバ30の推定モジュール3036は、トリップグループDBおよび人流リンクDBを参照し、トリップモードが一般道/車両であるトリップグループを評価対象として選定する。推定モジュール3036は、トリップDBを参照し、選定した当該トリップグループの端末IDを特定したうえで、端末DBを参照してユーザIDを特定する。
次に、推定モジュール3036は、判定結果DBを参照して、特定したユーザIDと紐づけられた車載器IDを特定することで、ユーザIDと対応する車載器IDを推定する。
【0196】
次に、判定結果DBにおいて、一つのユーザIDに対して複数の車載器IDが紐づけられていることがある。このような場合の推定処理について詳述する。
推定モジュール3036は、一般道移動データにおいて使用された車両を推定する際に、評価対象である一般道移動データが、高速道路移動データとともに一つのトリップデータを構成しているかどうかを判定する。
この一次判定において、一日の中で、一般道移動データと高速道路移動データとが併存し、一つのトリップデータが構成されている場合には、推定モジュール3036は、同じユーザにおける同日の高速道路移動データと紐づけられた車両が、1つであるか複数であるかを判定する。
【0197】
この二次判定において、同日の1又は複数の高速道路移動データと紐づけられた車両が、1つである場合には、当該車両を、評価対象である一般道移動データにおいて使用された車両として推定する。
一方、二次判定において、同日の1又は複数の高速道路移動データと紐づけられた車両が、複数である場合には、利用頻度の高い車両を、評価対象である一般道移動データにおいて使用された車両として推定する。
【0198】
また、推定モジュール3036は、前述した一次判定において、一日の中で、一般道移動データと高速道路移動データとが併存せず、一つのトリップデータが構成されていない場合には、同じユーザにおける所定期間内、例えば同月の高速道路移動データと紐づけられた車両が、1つであるか複数であるかを判定する。
【0199】
この二次判定において、同月の1又は複数の高速道路移動データと紐づけられた車両が、1つである場合には、当該車両を、評価対象である一般道移動データにおいて使用された車両として推定する。
一方、二次判定において、同月の1又は複数の高速道路移動データと紐づけられた車両が、複数である場合には、同月内に利用頻度の高い車両を、評価対象である一般道移動データにおいて使用された車両として推定する。この際、同月内の曜日の種別を考慮してもよい。例えば評価対象である一般道移動データが平日の移動を示す場合は、同月内の平日の高速道路移動データを対象として利用頻度の高い車両を特定し、評価対象である一般道移動データが休日の移動を示す場合は、同月内の休日の高速道路移動データを対象として利用頻度の高い車両を特定してもよい。なお、所定期間としては、同月に限られず、数週間内や数か月内を評価対象期間として、同じユーザにおいて、高速道路移動データと紐づけられた車両が、1つであるか複数であるかを判定してもよい。
これにより、一般道移動データに対する車両特定情報の推定処理が終了する。
【0200】
(6-2)OD表の作成処理
この処理では、サーバ30は、これまでの処理により得られたデータを用いて、車種別の始点と終点ごとの移動の量を表形式で示すOD表を作成する。
具体的には、サーバ30の作成モジュール3037は、トリップDBを用いて、評価対象期間に含まれる複数のトリップデータを抽出する。
【0201】
次に、作成モジュール3037は、ユーザの移動履歴として管理される4つのDB、および通信ログDBを参照して、抽出したトリップデータにおける始点と終点の位置を特定する。
【0202】
次に、作成モジュール3037は、抽出したトリップデータについて、主に判定結果DBおよび補完結果DBを参照して、移動に用いられた車載器IDを特定する。作成モジュール3037は、車載器DBを参照して、特定された車載器IDに対応する車種を特定する。
そして、作成モジュール3037は、特定した始点と終点の位置と、該当する車種と、を評価対象期間に含まれる複数のトリップデータ全体について集計することで、OD表を作成する。
【0203】
図16は、都道府県別のOD表の具体例を示す図である。
図16に示すように、OD表では、評価対象期間における一般道移動データおよび高速道路移動データの利用実績として、始点と終点ごとに移動車両数が集計されている。図示の例では都道府県単位で始点と終点を集計されているが、市区町村単位で始点と終点の集計を行ってもよい。
また、緯度・経度に基づき地域を隙間なく網の目(メッシュ)の区域に分け、それぞれの区域に関する統計データを編成する地域メッシュ統計の手法を採用し、地域ごとに割り振ったメッシュエリア単位で始点と終点を集計してもよい。
【0204】
このように、システム1では、一般道移動データに対して車両特定情報を推定する処理を行うことにより、高速道路の利用実績と高速道路移動データとの比較により得られた車両特定情報とユーザIDとの対応関係を活用し、一般道におけるユーザの移動経路を示す一般道移動データに対して、移動に用いられた車両を推定することができる。
これにより、ユーザの始点から終点に至る一連の移動行動における移動経路を示すトリップデータについて、始点および終点の地域とともに、使用された車種を推定することができ、高速道路だけではなく、一般道路も含めた道路利用状況について、効率的に集計することができる。
【0205】
また、システム1では、評価対象期間における一般道移動データおよび高速道路移動データの利用実績として、始点と終点ごとの移動車両数が車種ごとに集計されたOD表の作成処理を行うため、地域間の車種別の移動の傾向を集計することが可能になり、一般道路および高速道路の保守および運用にとどまらず、都市計画などの広範な分野について有益な情報を取得することができる。
【0206】
(7)その他の変形例
なお、システム1のその他の変形例を以下に示す。
上記実施形態では、高速道路の利用実績と、ユーザ端末10の移動経路と、をマッチングさせる処理を説明したが、この限りではない。例えば、システム1は、鉄道の利用実績を示すICカード乗車券の利用実績と、ユーザ端末10の移動経路と、のマッチングを行ってもよい。
なお、以下の説明において、前述した実施形態と同様の構成については、その説明を省略する。
【0207】
変形例1に係るシステム1では、データベースの構造が前述した実勢形態と異なる。
変形例に係るシステム1のサーバ30は、前述した実施形態において、高速道路の利用において管理されるデータベースとして記憶された4つのデータベースに代えて、以下の4つのデータベースを記憶する。それぞれのデータベースの構造の一例について、各データベースに含まれるカラムとともに説明する。
【0208】
1)改札明細DB:改札口での改札履歴の明細を管理するデータベース
・改札明細ID:改札明細を特定可能な識別情報
・利用ICカードID:改札IDに対応する改札が行われたICカード乗車券の識別情報
・改札ID:改札IDに対応する改札を行った改札口の識別情報
・改札日時:改札IDに対応する改札を行った日時
【0209】
2)ICカードDB:ICカード乗車券に関する情報を管理するデータベース
・ICカードID:ICカード乗車券を特定可能な識別情報
・ユーザ氏名:ICカードIDに対応するICカード乗車券の使用者の氏名
・保有残高:ICカードIDに対応するICカードにデポジットされている残高
・定期券情報:ICカードIDに対応するICカード乗車券に設定されている定期券に関する情報(定期区間および有効期間)
【0210】
3)改札口DB:駅の改札口に関する情報を管理するデータベース
・改札口ID:改札口を特定可能な識別情報
・所在駅名:改札口IDに対応する改札口が設置されている駅名
・所在地:改札口IDに対応する改札口が設置されている駅の所在地情報
・位置座標:改札口IDに対応する改札口が設置されている駅名の代表的な緯度・経度情報
【0211】
4)乗車ログDB:乗車履歴を管理するデータベース
・乗車ログID:乗車履歴を特定可能な識別情報
・ICカードID:乗車ログIDに対応する乗車履歴において使用されたICカード乗車券の識別情報
・乗車改札口ID:乗車ログIDに対応する乗車履歴において、乗車駅で改札を行った改札口の識別情報
・乗車改札日時:乗車ログIDに対応する乗車履歴において、乗車駅で改札を行った日時情報
・通過改札口ID:乗車ログIDに対応する乗車履歴において、路線間の乗り換え又は乗り継ぎにおいて改札を行った改札口の識別情報(該当しない場合はNuLLとなる)
・通過改札日時:乗車ログIDに対応する乗車履歴において、路線間の乗り換え又は乗り継ぎにおいて改札を行った日時情報(該当しない場合はNuLLとなる)
・降車改札口ID:乗車ログIDに対応する乗車履歴において、降車駅で改札を行った改札口の識別情報
・降車改札日時:乗車ログIDに対応する乗車履歴において、降車車駅で改札を行った日時情報
【0212】
サーバ30の記憶部302に記憶される移動候補DBでは、走行ログIDに代えて、乗車ログIDが格納されている。
サーバ30の記憶部302に記憶される判定結果DBでは、車載器IDに代えて、ICカードIDが格納されている。
サーバ30の記憶部302に記憶される補完結果DBでは、車載器IDに代えて、ICカードIDが格納されている。
【0213】
サーバ30は、前述した実施形態における図12に示した処理と同様に、通信ログの取得からユーザ情報の補完の処理を順番に実行する。この際、サーバ30はステップS32における「利用明細の取得」に代えて、乗車明細の取得を行う。
また、サーバ30は、ステップS33における「走行ログに対応する移動情報の特定」に代えて、乗車ログに対応する移動情報の特定を行う。
この一連の処理により、判定結果DBにおいて、ICカード乗車券のICカードIDと、ユーザ端末10のユーザIDと、が紐づけられた情報となる。また、補完結果DBにおいて、トリップグループIDと、ICカードIDと、が紐づけられた状態となる。
【0214】
以上のように、変形例に係るサーバ30は、ユーザ端末10の利用者として登録されていたユーザIDに対して、鉄道交通機関のICカード乗車券のICカードIDを紐づけることが可能になり、ユーザが日常的に使用する鉄道施設を推定することができる。このため、鉄道交通機関の利用に対して有意な情報となりえる充分なサンプル数となる鉄道交通機関の利用履歴を取得することができる。
【0215】
また、上記実施形態では、車両特定情報として車載器IDを用いたが、この限りではない。例えば、車体を特定可能な識別情報を、車両特定情報としてもよい。
【0216】
また、上記実施形態では、サーバ30の生成モジュール3033が、取得した通信ログからトリップデータを生成する処理を説明したが、この限りではない。サーバ30は、外部のサーバにおいて生成されたトリップデータを受け付けることで、トリップデータを取得してもよい。
【0217】
また、トリップデータは、前述した実施形態とは異なるデータ構造により生成されていてもよい。例えば、図7Cに示す人流ノードDBにおいて、人流ノードそれぞれに対して、交通拠点との位置マッチングである交通拠点判定の結果が紐づけられていてもよい。この場合における交通拠点判定は、例えば以下の処理により行われる。
【0218】
サーバ30の生成モジュール3033は、図12に示すステップS31において定義した人流ノードそれぞれに対して、交通拠点又は交通リンクとのマッチング処理を行う。具体的には、生成モジュール3033は、人流ノードの位置と、交通ネットワークデータベース50に格納された交通拠点および交通リンクの位置と、の位置関係が所定の閾値以内であるかどうかを判定することで、人流ノードが該当する交通拠点又は交通リンクを推定する。
【0219】
例えば、生成モジュール3033は、評価対象とする人流ノードから200m以内に道路リンクがある場合には、最短距離の道路リンクに人流ノードをマッチングする。
また生成モジュール3033は、空港の区域内に人流ノードが位置する場合には、人流ノードを空港にマッチングする。判定に用いる閾値の値は任意に設定することができる。
生成モジュール3033は、このようなマッチング処理により推定した交通拠点に関する情報を、人流ノードIDと対応づけて人流ノードDBに記録する。
【0220】
そして、システム1では、このように人流ノードに対して行った交通拠点に関する情報を用いて、高速道路の利用明細から得られた走行ログとの対比を行ってもよい。この場合において、走行ログにおける高速道路の進入インターチェンジおよび退出インターチェンジそれぞれと、人流ノードに対する交通拠点判定により推定された交通拠点(対応するインターチェンジ)と、が一致するかどうかを判定することで、移動候補データを複数選別する処理を行ってもよい。
【0221】
また、システム1において、走行ログデータにおいて乗継箇所を示す通過施設IDおよび通過日時に関する情報が含まれる場合には、乗継箇所所の位置および時刻と、移動データにおける通過ノードおよび通過時刻と、の一致の度合いを評価してもよい。これにより、位置のマッチング箇所が多くなることで、判定精度を向上させることができる。
【0222】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。また、上記実施形態および変形例で説明した装置の構成は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせ可能である。
また、本発明のプログラムは、複数のソースコードにより表現されてもよいし、本発明のシステム1は、複数のハードウェア資源により実現されてもよい。
【0223】
(付記)
本発明の実施形態について、以下に付記を示す。
【0224】
(付記1)
プロセッサを備えたコンピュータを有するシステムに実行させるプログラムであって、
プログラムは、プロセッサに、
携帯端末の位置情報を通信時刻に沿って並べることで作成され、携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データを取得するステップ(ステップS31)と、
高速道路の利用実績を示し、利用したインターチェンジの地点と通過時刻に関する情報、および当該車両の車種に関する情報と、を含む、ETCの利用明細を取得するステップ(ステップS32)と、
利用明細および移動データを対比することで、利用明細が示す走行ログに対応する移動データを特定するステップ(ステップS33)と、
既に対応関係が特定された走行ログと移動データとの組み合わせを参照して、対応する移動データが特定されていない走行ログに対して、該当するユーザ情報を補完するステップ(ステップS34)と、を実行させる、プログラム。
【0225】
(付記2)
移動データを特定するステップ(ステップS33)では、
利用明細および移動データそれぞれにおける通過ノードの通過時刻の一致の度合いから、複数の移動データのうち、車両の走行ログに対応する移動データの候補となる移動候補データを複数選別するステップ(ステップS331)と、
選別された一群の移動候補データを、一又は複数の車両における複数の利用明細が示す走行ログと対比することで、特定の利用明細が示す走行ログに対応する、ユーザの移動データを特定するステップ(ステップS332)と、を実行させる、付記1に記載のプログラム。
【0226】
(付記3)
移動候補データを複数選別するステップ(ステップS331)では、
移動データが、利用明細が示す走行ログにおける高速道路の進入インターチェンジおよび退出インターチェンジそれぞれと近隣する通過ノードを通過している場合において、利用明細が示す進入インターチェンジおよび退出インターチェンジそれぞれの通過時刻と、移動データが示す各通過ノードの通過時刻と、が所定の時間差以内である場合に、当該移動データを移動候補データとして選別する、請求項2に記載のプログラム。
【0227】
(付記4)
時間差は、進入インターチェンジおよび退出インターチェンジそれぞれの沿道状況の違いにより、異なる値に設定されている、請求項3に記載のプログラム。
【0228】
(付記5)
ユーザの移動データを特定するステップ(ステップS33)では、
一つの車両に関する複数の利用明細が示す走行ログが、同一のユーザについての複数の移動候補データと一致する場合には、当該複数の利用明細が示す走行ログに対応する移動データとして、当該複数の移動候補データを特定する、請求項2に記載のプログラム。
【0229】
(付記6)
ユーザの移動データを特定するステップ(ステップS33)では、
複数の車両に関する複数の利用明細が示す走行ログが、複数のユーザについての複数の移動候補データと一致する場合には、通過時刻の時刻差に従って、当該複数の利用明細が示す走行ログそれぞれについて、対応する移動データとして、当該複数の移動候補データそれぞれを特定する、請求項2に記載のプログラム。
【0230】
(付記7)
ユーザの移動データを特定するステップ(ステップS33)では、
同日における同区間での一つの利用明細が示す走行ログが、一又は複数のユーザについての移動候補データと一致する場合には、当該利用明細が示す走行ログに対応する移動データとして、一又は複数のユーザについての移動候補データを特定する、請求項2に記載のプログラム。
【0231】
(付記8)
ユーザの移動データを特定するステップ(ステップS33)では、
同区間での一又は複数の利用明細が示す走行ログが、一又は複数のユーザについての移動候補データと一致する場合には、通過時刻の時刻差に従って、当該利用明細が示す走行ログに対応する移動データとして、一又は複数のユーザについての移動候補データを特定する、請求項2に記載のプログラム。
【0232】
(付記9)
ユーザ情報を補完するステップ(ステップS33)では、プロセッサに、さらに、
一つの車両に関する時系列に並ぶ2つの利用明細に係る車両特定情報に、第1のユーザ情報が既に紐づけられている場合には、時系列に沿って当該2つの利用明細の間に位置する利用明細に係る車両特定情報に対して、第1のユーザ情報を補完する、請求項1に記載のプログラム。
【0233】
(付記10)
ユーザ情報を補完するステップ(ステップS33)では、プロセッサに、さらに、
一つの車両に関する同日の複数の利用明細のうち、半数を超える利用明細に係る車両特定情報に、第2のユーザ情報が既に紐づけられている場合には、同日のその他の利用明細に係る車両特定情報に対して、第2のユーザ情報を補完する、請求項1に記載のプログラム。
【0234】
(付記11)
ユーザ情報を補完するステップ(ステップS33)では、プロセッサに、さらに、
一つの旅客車両に関する同日の複数の利用明細のうち、時系列に並ぶ2つの利用明細に係る車両特定情報に、第3のユーザ情報が既に紐づけられている場合には、時系列に沿って当該2つの利用明細の間に位置する利用明細に係る車両特定情報に対して、第3のユーザ情報補完する、請求項1に記載のプログラム。
【0235】
(付記12)
プロセッサに、さらに、
車両の車種に関する情報と、当該車両に紐づけられたユーザの移動データの集合であるトリップデータにおける始点と終点の情報と、を用いて、車種別の始点と終点ごとの移動の量を表形式で示すOD表を作成するステップを実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【0236】
(付記13)
プロセッサに、さらに、
ユーザ情報に対して紐づけられた車両特定情報を用いて、当該ユーザが一般道路を移動した際の移動データにおいて使用された車両を推定するステップを実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【0237】
(付記14)
使用された車両を推定するステップでは、
評価対象である一般道移動データが、高速道路移動データとともに一つのトリップデータを構成している場合において、同じユーザにおける同日の高速道路移動データと紐づけられた車両が、1つである場合には、当該車両を評価対象である一般道移動データにおいて使用された車両として推定し、複数である場合には、利用頻度の高い車両を、評価対象である一般道移動データにおいて使用された車両として推定する、請求項13に記載のプログラム。
【0238】
(付記15)
使用された車両を推定するステップでは、
評価対象である一般道移動データが、高速道路移動データとともに一つのトリップデータを構成していない場合において、同じユーザにおける同月の高速道路移動データと紐づけられた車両が、1つである場合には、当該車両を評価対象であるトリップデータにおいて使用された車両として推定し、複数である場合には、同月内に利用頻度の高い車両を評価対象であるトリップデータにおいて使用された車両として推定する、請求項13に記載のプログラム。
【0239】
(付記16)
プロセッサを備えたコンピュータを有するシステムが実行する方法であって、
プログラムは、プロセッサが、
携帯端末の位置情報を通信時刻に沿って並べることで作成され、携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データを取得するステップと、
高速道路の利用実績を示し、利用したインターチェンジの地点と通過時刻に関する情報、および当該車両の車種に関する情報と、を含む、ETCの利用明細を取得するステップと、
利用明細および移動データを対比することで、利用明細が示す走行ログに対応する、ユーザの移動データを特定するステップと、
既に対応関係が特定された走行ログと移動データとの組み合わせを参照して、対応する移動データが特定されていない走行ログに対して、該当するユーザ情報を補完するステップと、を実行する、方法。
【0240】
(付記17)
プロセッサを備えたコンピュータを有するシステムであって、
プログラムは、プロセッサが、
携帯端末の位置情報を通信時刻に沿って並べることで作成され、携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データを取得する手段と、
高速道路の利用実績を示し、利用したインターチェンジの地点と通過時刻に関する情報、および当該車両の車種に関する情報と、を含む、ETCの利用明細を取得する手段と、
利用明細および移動データを対比することで、利用明細が示す走行ログに対応する、ユーザの移動データを特定する手段と、
既に対応関係が特定された走行ログと移動データとの組み合わせを参照して、対応する移動データが特定されていない走行ログに対して、該当するユーザ情報を補完する手段と、を備える、システム。
【0241】
(付記18)
プロセッサを備えたコンピュータを有するシステムに実行させるプログラムであって、
プログラムは、プロセッサに、
携帯端末の位置情報を通信時刻に沿って並べることで作成され、携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データを取得するステップと、
鉄道交通機関の利用実績を示し、乗客が乗車および降車した駅の地点と改札時刻に関する情報、および当該乗客に関する情報と、を含む、ICカード乗車券の改札明細を取得するステップと、
改札明細および移動データを対比することで、改札明細が示す乗車ログに対応する、ユーザの移動データを特定するステップと、
既に対応関係が特定された乗車ログと移動データとの組み合わせを参照して、対応する移動データが特定されていない乗車ログに対して、該当するユーザ情報を補完するステップと、を実行させる、プログラム。
【0242】
(付記19)
プロセッサを備えたコンピュータを有するシステムに実行させる方法であって、
方法は、プロセッサが、
携帯端末の位置情報を通信時刻に沿って並べることで作成され、携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データを取得するステップと、
鉄道交通機関の利用実績を示し、乗客が乗車および降車した駅の地点と改札時刻に関する情報、および当該乗客に関する情報と、を含む、ICカード乗車券の改札明細を取得するステップと、
改札明細および移動データを対比することで、改札明細が示す乗車ログに対応する、ユーザの移動データを特定するステップと、
既に対応関係が特定された乗車ログと移動データとの組み合わせを参照して、対応する移動データが特定されていない乗車ログに対して、該当するユーザ情報を補完するステップと、を実行する、方法。
【0243】
(付記20)
プロセッサを備えたコンピュータを有するシステムに実行させるシステムであって、
プログラムは、プロセッサが、
携帯端末の位置情報を通信時刻に沿って並べることで作成され、携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データを取得するモジュールと、
鉄道交通機関の利用実績を示し、乗客が乗車および降車した駅の地点と改札時刻に関する情報、および当該乗客に関する情報と、を含む、ICカード乗車券の改札明細を取得するモジュールと、
改札明細および移動データを対比することで、改札明細が示す乗車ログに対応する、ユーザの移動データを特定するモジュールと、
既に対応関係が特定された乗車ログと移動データとの組み合わせを参照して、対応する移動データが特定されていない乗車ログに対して、該当するユーザ情報を補完するモジュールと、を備えるシステム。
【符号の説明】
【0244】
1 人流解析システム
10 ユーザ端末
30 情報処理サーバ
40 基地局データベース
50 交通ネットワークデータベース
80 ネットワーク
81 固定測位機器
【要約】
【課題】交通量に対して有意な情報となりえる充分なサンプル数となる高速道路の利用履歴を取得することができるシステムを提供する。
【解決手段】本発明のプログラムは、コンピュータのプロセッサに、携帯端末を携帯するユーザの移動経路を示す移動データを取得するステップと、高速道路の利用実績を示し、利用したICの地点と通過時刻に関する情報、および当該車両の車種に関する情報と、を含む、ETCの利用明細を取得するステップと、利用明細および移動データを対比することで、利用明細が示す走行ログに対応する、ユーザの移動データを特定し、走行ログの車両特定情報と移動データのユーザIDとを紐づけるステップと、既に対応関係が特定された走行ログと移動データとの組み合わせを参照して、対応する移動データが特定されていない走行ログに対して、該当するユーザ情報を補完するステップと、を実行させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16