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特許7365528接合基板、回路基板及びその製造方法、並びに、個片基板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-11
(45)【発行日】2023-10-19
(54)【発明の名称】接合基板、回路基板及びその製造方法、並びに、個片基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20231012BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20231012BHJP
【FI】
H05K1/02 R
H05K3/00 X
H05K1/02 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023506314
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2022027620
(87)【国際公開番号】W WO2023008200
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2021121333
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 晃正
【審査官】原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-165727(JP,A)
【文献】特開2011-233648(JP,A)
【文献】特開2007-042934(JP,A)
【文献】国際公開第2021/020471(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路形成部とダミー部とを備える回路基板であって、
セラミック板と、前記セラミック板の主面に接合されている複数の導体部と、を備え、
前記複数の導体部は、前記ダミー部に設けられる第1導体部と、前記回路形成部に設けられる第2導体部と、を含み、
前記第1導体部の表面に第1識別マークを有し、
前記回路形成部を取り囲む前記ダミー部における前記第1導体部の外縁の一部は、前記セラミック板の前記主面よりも外側にはみ出している、回路基板。
【請求項2】
回路形成部とダミー部とを備える回路基板であって、
セラミック板と、前記セラミック板の主面に接合されている複数の導体部と、を備え、
前記複数の導体部は、前記ダミー部に設けられる第1導体部と、前記回路形成部に設けられる第2導体部と、を含み、
前記第1導体部の表面に第1識別マークを有し、
前記複数の導体部は、前記ダミー部に設けられ、前記第1識別マークを有しない第3導体部を含む、回路基板。
【請求項3】
前記回路形成部を取り囲む前記ダミー部における前記第1導体部の外縁の一部は、前記セラミック板の前記主面よりも外側にはみ出している、請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記第2導体部の表面に第2識別マークを有し、当該第2識別マークは、前記第1識別マークに含まれる第1情報に関連する第2情報を含む、請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項5】
前記第1識別マークは、レーザ孔で構成されるコードを含み、前記レーザ孔は1μm以上の深さを有する、請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項6】
回路形成領域とダミー領域とを含む主面を有するセラミック板と、前記主面を覆うように前記セラミック板に接合される金属板と、を備える接合基板であって、
前記金属板は、前記ダミー領域を覆う部分の表面に第3識別マークを有し、
前記金属板の外縁の一部は前記セラミック板の前記主面よりも外側にはみ出しており、
前記セラミック板の角部は前記金属板よりも外側に突出している、接合基板。
【請求項7】
前記回路形成領域を覆う部分の表面に第4識別マークを有し、当該第4識別マークは、前記第3識別マークに含まれる第3情報に関連する第4情報を含む、請求項に記載の接合基板。
【請求項8】
前記第3識別マークは、レーザ孔で構成されるコードを含み、前記レーザ孔は3μm以上の深さを有する、請求項6又は7に記載の接合基板。
【請求項9】
第1導体部を有するダミー部と第2導体部を有する回路形成部とを備える回路基板から前記ダミー部を切り離して得られる、前記第2導体部を有する個片基板であって、
前記第2導体部の表面は、前記第1導体部の表面における第1識別マークに含まれる第1情報に関連する第2情報を含む第2識別マークを有し、
前記第2識別マークは凹部で構成され、前記第2識別マークはめっき膜で覆われている、個片基板。
【請求項10】
前記凹部はレーザ孔であり、前記レーザ孔は1μm以上の深さを有する、請求項に記載の個片基板。
【請求項11】
請求項6又は7の接合基板に少なくともエッチング処理を施して、前記ダミー領域及び前記回路形成領域に、第1導体部及び第2導体部をそれぞれ形成し、前記第1導体部を含むダミー部と前記第2導体部を含む回路形成部とを有する回路基板を得る工程を有し、
前記第1導体部の表面は、前記第3識別マークに由来する第1識別マークを有する、回路基板の製造方法。
【請求項12】
請求項6又は7の接合基板に少なくともエッチング処理を施して、前記ダミー領域及び前記回路形成領域に、第1導体部及び第2導体部をそれぞれ形成し、前記第1導体部を含むダミー部と前記第2導体部を含む回路形成部とを有する回路基板を得る工程と、
前記回路基板から前記ダミー部を切り離し、前記第2導体部を有する個片基板を得る工程と、を有し、
前記第1導体部の表面は、前記第3識別マークに由来する第1識別マークを有する、個片基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合基板、回路基板及びその製造方法、並びに、個片基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスに搭載される個片基板には、絶縁性のセラミック基板が用いられる場合がある。このような個片基板を得るための多数個取り配線基板としては、複数の配線基板領域を縦横に配列するとともに外周部にダミー領域を設け、各配線基板領域の内層に空隙からなる記号パターンを備えるものが知られている(例えば、特許文献1)。このような記号パターンを、超音波探傷装置又はX線等を用いて解析すれば、配線基板領域の配列位置を検知することができる。
【0003】
また、個片基板の材料に用いられるセラミックグリーンシートの一部にレーザ光を照射してバーコード又は二次元コードを描画する工程と、このセラミックグリーンシートを焼成して、複数の基板形成領域を備えるセラミック基板を得る工程と、セラミック基板を分割する工程とを有する製造方法が知られている(例えば、特許文献2及び3)。これによって、成形ロット番号と最終製品とを紐づけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-210028号公報
【文献】国際公開第2020/179699号
【文献】国際公開第2021/020471号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に記載されるような記号パターン及び二次元コード等の識別マークは、トレーサビリティを図るうえで有用であると考えられる。そこで、本開示は、トレーサビリティに優れる回路基板及びその製造方法を提供する。また、トレーサビリティに優れる接合基板を提供する。また、トレーサビリティに優れる個片基板及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、幾つかの側面において[1]~[13]を提供する。
[1]回路形成部とダミー部とを備える回路基板であって、
セラミック板と、前記セラミック板の主面に接合されている複数の導体部と、を備え、
前記複数の導体部は、前記ダミー部に設けられる第1導体部と、前記回路形成部に設けられる第2導体部と、を含み、
前記第1導体部の表面に第1識別マークを有する、回路基板。
[2]前記回路形成部を取り囲む前記ダミー部における前記第1導体部の外縁の一部は、前記セラミック板の前記主面よりも外側にはみ出している、[1]に記載の回路基板。
[3]前記複数の導体部は、前記ダミー部に設けられ、前記第1識別マークを有しない第3導体部を含む、[1]又は[2]に記載の回路基板。
[4]前記第2導体部の表面に第2識別マークを有し、当該第2識別マークは、前記第1識別マークに含まれる第1情報に関連する第2情報を含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載の回路基板。
[5]前記第1識別マークは、レーザ孔で構成されるコードを含み、前記レーザ孔は1μm以上の深さを有する、[1]~[4]のいずれか一つに記載の回路基板。
[6]回路形成領域とダミー領域とを含む主面を有するセラミック板と、前記主面を覆うように前記セラミック板に接合される金属板と、を備える接合基板であって、前記金属板は、前記ダミー領域を覆う部分の表面に第3識別マークを有する、接合基板。
[7]前記金属板の外縁の一部は前記セラミック板の前記主面よりも外側にはみ出しており、前記セラミック板の角部は前記金属板よりも外側に突出している、[6]に記載の接合基板。
[8]前記回路形成領域を覆う部分の表面に第4識別マークを有し、当該第4識別マークは、前記第3識別マークに含まれる第3情報に関連する第4情報を含む、[6]又は[7]に記載の接合基板。
[9]前記第3識別マークは、レーザ孔で構成されるコードを含み、前記レーザ孔は3μm以上の深さを有する、[6]~[8]のいずれか一つに記載の接合基板。
[10]第1導体部を有するダミー部と第2導体部を有する回路形成部とを備える回路基板から前記ダミー部を切り離して得られる、前記第2導体部を有する個片基板であって、
前記第2導体部の表面は、前記第1導体部の表面における第1識別マークに含まれる第1情報に関連する第2情報を含む第2識別マークを有する、個片基板。
[11]前記第2識別マークは、レーザ孔で構成されるコードを含み、前記レーザ孔は1μm以上の深さを有する、[10]に記載の個片基板。
[12]前記[6]~[9]のいずれか一つの接合基板に少なくともエッチング処理を施して、前記ダミー領域及び前記回路形成領域に、第1導体部及び第2導体部をそれぞれ形成し、前記第1導体部を含むダミー部と前記第2導体部を含む回路形成部とを有する回路基板を得る工程を有し、
前記第1導体部の表面は、前記第3識別マークに由来する第1識別マークを有する、回路基板の製造方法。
[13]前記[6]~[9]のいずれか一つの接合基板に少なくともエッチング処理を施して、前記ダミー領域及び前記回路形成領域に、第1導体部及び第2導体部をそれぞれ形成し、前記第1導体部を含むダミー部と前記第2導体部を含む回路形成部とを有する回路基板を得る工程と、
前記回路基板から前記ダミー部を切り離し、前記第2導体部を有する個片基板を得る工程と、を有し、
前記第1導体部の表面は、前記第3識別マークに由来する第1識別マークを有する、個片基板の製造方法。
【0007】
上記[1]の回路基板は、第1識別マークを有する第1導体部をダミー部に設けることによって、回路形成部に識別マークを設けなくてもトレーサビリティを確保することができる。また、第1導体部の表面に第1識別マークを有するため、回路基板の内部に識別マークが設けられる場合に比べて読み取り精度を高くすることができる。このため、上記回路基板はトレーサビリティに優れる。
【0008】
上記回路基板は[2]の構成を有していてもよい。これによって、第1導体部とセラミック板の主面とがろう材層を介して接合されている場合であっても、ろう材が第1導体部の表面に染み出して第1識別マークが汚染されることを抑制できる。したがって、第1識別マークの読み取り精度を十分に高く維持することができる。
【0009】
上記回路基板は[3]の構成を有していてもよい。第3導体部を含むことによって、エッチングによって第1導体部及び第2導体部を形成するときに、エッチング速度のばらつきを低減し、回路形成部に設けられる第2導体部の形状の均一性を向上することができる。
【0010】
上記回路基板は[4]の構成を有していてもよい。このような回路基板は、第2導体部の表面に第2識別マークを有するため、回路形成部の内部に識別マークが設けられる場合に比べて読み取り精度を高くすることができる。また、第2識別マークは、第1識別マークに含まれる第1情報に関連する第2情報を含んでいるため、回路基板からダミー部を切り離して得られる回路形成部(個片基板)のトレーサビリティも確保することができる。また、回路基板と、回路基板からダミー部を切り離して得られる回路形成部(個片基板)とを紐づけて管理することができる。したがって、トレーサビリティの範囲を拡張することができる。
【0011】
上記回路基板は[5]の構成を有していてもよい。これによって、表面処理を行っても、読み取り精度を十分に維持することができる。したがって、トレーサビリティの信頼性を十分に高くすることができる。
【0012】
上記[6]の接合基板は、金属板の表面に第3識別マークを有することから、トレーサビリティに優れる。また、金属板は、ダミー領域を覆う部分の表面に第3識別マークを有することから、回路形成部となる部分に識別マークを設けなくてもトレーサビリティを確保することができる。
【0013】
上記接合基板は[7]の構成を有していてもよい。金属板の外縁の一部がセラミック板の主面からはみ出していることによって、金属板とセラミック板の主面とがろう材層を介して接合されている場合であっても、ろう材が金属板の表面に染み出して第3識別マークが被覆されることを抑制できる。したがって、第3識別マークの読み取り精度を十分に高く維持することができる。また、セラミック板の角部が露出していることによって、当該角部を用いて位置合わせを行うことができる。このような接合基板、並びに、これから得られる回路基板及び個片基板は、寸法精度に優れる。
【0014】
上記接合基板は[8]の構成を有していてもよい。これによって、トレーサビリティの範囲を拡張することができる。例えば、エッチングによって、ダミー部と回路形成部とを形成し、これらを切り離した後もトレーサビリティを確保することができる。
【0015】
上記接合基板は[9]の構成を有していてもよい。これによって、接合基板に表面処理及びエッチング処理を施した後であっても、第3識別マークに由来する識別マークの読み取り精度を十分に維持することができる。これによって、トレーサビリティの信頼性を十分に高くすることができる。
【0016】
上記[10]の個片基板は、第2導体部における表面に第2識別マークを有する。このような第2識別マークは、個片基板の内部に識別マークが設けられる場合に比べて読み取り精度を高くすることができる。また、第2識別マークは第1識別マークに含まれる第1情報に関連する第2情報を含むことから、回路基板又はダミー部と、個片基板とを紐づけて管理することが可能となり、トレーサビリティの範囲を拡張することができる。したがって、上記個片基板はトレーサビリティに優れる。
【0017】
上記個片基板は[11]の構成を有していてもよい。これによって、読み取り精度を向上してトレーサビリティの信頼性を十分に高くすることができる。
【0018】
上記[12]の回路基板の製造方法では、接合基板が金属板の表面に第3識別マークを有し、回路基板が第1導体部の表面に第3識別マークに由来する第1識別マークを有する。このため、接合基板から回路基板までのトレーサビリティを確保することができる。また、第1識別マーク及び第3識別マークは、導体部及び金属板の表面に設けられることから読み取り精度に優れる。したがって、上記回路基板の製造方法は、トレーサビリティに優れる。
【0019】
上記[13]の個片基板の製造方法では、接合基板が金属板の表面に第3識別マークを有し、回路基板が第1導体部の表面に第3識別マークに由来する第1識別マークを有する。このため、接合基板から回路基板までのトレーサビリティを確保することができる。また、第1識別マーク及び第3識別マークは読み取り精度に優れる。したがって、上記個片基板の製造方法は、トレーサビリティに優れる。
【発明の効果】
【0020】
トレーサビリティに優れる回路基板及びその製造方法を提供することができる。また、トレーサビリティに優れる接合基板を提供することができる。また、トレーサビリティに優れる個片基板及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係る接合基板の斜視図である。
図2】識別マークの一例を示す図である。
図3図1の接合基板のIII-III線断面図である。
図4】セラミック板の平面図である。
図5】一実施形態に係る回路基板の平面図である。
図6図5の回路基板のVI-VI線断面図である。
図7】別の実施形態に係る接合基板の平面図である。
図8】別の実施形態に係る回路基板の平面図である。
図9】一実施形態に係る個片基板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、場合により図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。本明細書に明示される数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されるいずれかの値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせてもよい。
【0023】
図1は、一実施形態に係る接合基板100の斜視図である。図1の接合基板100は、セラミック板10と、セラミック板10の両方の主面をそれぞれ覆うようにセラミック板10に接合されている一対の金属板20,30と、を備える。一対の金属板20,30は例えば銅板又はアルミニウム板であってよい。接合基板100は、金属板20の表面20Aに、第3識別マーク23を有する。金属板30の表面にも、同様の識別マークを有していてもよいし、有していなくてもよい。表面20Aには、2つの第3識別マーク23が示されているが、その数は限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0024】
第3識別マーク23は、金属板20及び接合基板100を識別可能なものであればよい。例えば、バーコード等の一次元コードであってよく、二次元コードであってもよい。第3識別マーク23は、表面20Aに印刷されたものであってよく、凹凸形状で構成されたものであってもよい。例えば、凹部と模様が組み合わされたものであってもよい。複数ある第3識別マーク23は、互いに同じであってよく、異なっていてもよい。
【0025】
第3識別マーク23は、例えば、カメラ又はビデオ等の撮像装置によって検出可能に構成される。撮像装置は、例えば撮像した画像と予め記録された情報とを照合し、照合結果に基づいて情報を出力する情報処理部を有していてよい。本開示における他の識別マークも同様であってよい。
【0026】
第3識別マーク23は、接合基板100及び後述の回路基板200を識別するために用いられてよい。また、接合基板100を作製する前に、金属板20,30の表面に設けておけば、金属板20,30を識別することができる。第3識別マーク23は何らかの情報と関連付けられたコードであってよい。情報としては、例えば、ロット、製造履歴、製品の種類、用途、品質、及び製造条件に関するものが挙げられる。第3識別マーク23を用いることによって、金属板20,30、接合基板100及びこれから得られる各種生産品のトレーサビリティを向上することができる。例えば、第3識別マーク23を用いて、品質管理及び工程管理を行ってよい。
【0027】
第3識別マーク23は、例えば、以下(a),(b),(c),(d),(e)及び(f)の情報のうち1又は2以上がコード化されたものであってよい。
(a)金属板に関する情報
(b)接合基板の製造情報(製造日、製造条件、及び製造設備等)
(c)接合基板の品質情報
(d)接合基板の表面処理条件
(e)接合基板のエッチング条件
(f)接合基板のシリアル番号
【0028】
図2は、第3識別マーク23の一例を示す図である。第3識別マーク23は、二次元コードであり、複数の凹部23aが所定の規則に従って並んで構成される。第3識別マーク23は、例えばQRコード(登録商標)等の二次元バーコードであってよい。また、例えば凹部23aの深さに関する情報も利用して三次元コードとしてもよい。凹部23aは、レーザ光によって形成されるレーザ孔であってよい。レーザ源としては、例えば、炭酸ガスレーザ及びYAGレーザ等を用いることができる。なお、第3識別マーク23は、凹部23aで構成されるものに限定されない。
【0029】
第3識別マーク23を構成する凹部23aの深さは3μm以上であってよく、5μm以上であってもよい。これによって、化学研磨等の表面処理を施した後も、十分な読み取り精度を確保することができる。凹部23aの深さは、50μm以下であってよく、30μm以下であってよく、10μm未満であってもよい。このように深さを小さくすることによって、レーザ孔を形成する時間を短縮するとともに、レーザ孔の形成に伴う異物(ドロス)の発生量を低減することができる。
【0030】
第3識別マーク23のコードサイズは、平面視で、各辺の長さが1~4mmであってよい。これによって、撮像装置による検知精度を十分に維持しつつ、後述するセラミック板10のダミー領域15を覆う部分の表面に十分に収まるサイズとすることができる。このようなサイズとしつつ情報量を確保する観点から、セル数(一方向に沿って並ぶ凹部23aの最大数)は、5~30であってよく、10~20であってよい。
【0031】
図3の断面図に示すように、金属板20及び金属板30は、ろう材層52及び53を介して、セラミック板10の主面10A及び主面10Bにそれぞれ接合されている。金属板20及び金属板30の外縁27及び外縁37は、セラミック板10の主面10A及び主面10Bよりも外側にはみ出している。これによって、金属板20の表面20A及び金属板30の表面30Aに、ろう材成分がしみ出すことを抑制できる。したがって、金属板20の表面20Aの第3識別マーク23がろう材成分で覆われることを抑制できる。このような第3識別マーク23は読み取り精度に優れる。また、金属板30の表面30Aに識別マークを設けた場合も、当該識別マークがろう材成分で覆われることを抑制できる。
【0032】
図3では、ろう材層52,53は、回路基板を作製したときの導体部となる部分に対応する部分にのみ設けられている。すなわち、隣り合うろう材層の間には空隙部がある。変形例では、このような空隙部を設けなくてもよい。
【0033】
図4に示すように、セラミック板10の主面10Aは、矩形であり、区画線によって複数に区画されている。主面10Aには、区画線として、第1の方向に沿って延在し且つ等間隔で並ぶ複数の区画線L1と、第1の方向に直交する第2の方向に沿って延在し且つ等間隔で並ぶ複数の区画線L2と、が設けられている。区画線L1と区画線L2とは互いに直交している。
【0034】
区画線L1,L2は、例えば、複数の凹みが直線状に並んで構成されていてもよいし、線状に溝が形成されていてもよい。具体的には、レーザ光で形成されるスクライブラインであってよい。レーザ源としては、例えば、炭酸ガスレーザ及びYAGレーザ等が挙げられる。このようなレーザ源からレーザ光を間欠的に照射することによってスクライブラインを形成することができる。なお、区画線L1,L2は、等間隔で並んでいなくてもよく、また、直交するものに限定されない。また、直線状ではなく、曲線状であってもよいし、折れ曲がっていてもよい。図4には、セラミック板10の一方の主面10Aのみに区画線L1,L2が設けられているが、セラミック板10の他方の主面10Bにも、区画線L1,L2が形成されていてもよい。
【0035】
図4に示すように、セラミック板10は、最も外側に配置される2本の区画線L1及び最も外側に配置される2本の区画線L2によって画定される、6個の区画部18を含む回路形成領域16と、回路形成領域16を取り囲むダミー領域15と有する。6個の区画部18には、それぞれ回路となる導体部が形成されてよい。図1の接合基板100における金属板20は、表面20Aのうち、セラミック板10のダミー領域15を覆う部分の表面に第3識別マーク23を有する。すなわち、図1及び図2に示す第3識別マーク23は、セラミック板10のダミー領域15の上方に設けられる。一方、金属板20は、表面20Aのうち、セラミック板10の回路形成領域16を覆う部分の表面に識別マークを有しない。これによって、セラミック板10の回路形成領域16に設けられる、回路となる導体部と主面10Aとの接合状態を検査する際に、識別マークが障害となることを回避できる。したがって、導体部の接合状態の検査精度を十分に高くすることができる。これによって、信頼性に優れる回路基板及び個片基板を得ることができる。
【0036】
図1に示すように、接合基板100において、セラミック板10の角部11は、一対の金属板20,30よりも外側に突出している。一対の金属板20,30は、それぞれ4つの角部が面取り加工されている。一対の金属板20,30の面取り部26,36の間から、セラミック板10の角部11が露出している。面取り部26,36の形状は特に限定されず、例えば、C面取り形状であってもよいし、R面取り形状であってもよい。一対の金属板20,30の形状は同じであってよく、異なっていてもよい。
【0037】
セラミック板10の角部11の位置は、接合基板100を平面視したときに、容易に検知することができる。このため、角部11を接合基板100の位置合わせの基準とすることによって、接合基板100の加工を円滑に且つ高精度に行うことができる。その結果、寸法精度に優れる加工品を円滑に製造することができる。
【0038】
図5及び図6に示す回路基板200からは、セラミック板10を区画線L1,L2に沿って分割することによって、複数の個片基板が得られる。この場合、セラミック板10は、図6示す仮想線VLに沿って切断される。このような回路基板200は、多数個取り回路基板とも称される。回路基板200は、図1の接合基板100を加工して得てもよい。回路基板200は、セラミック板10の回路形成領域16を含む回路形成部216と、セラミック板10のダミー領域15を含むダミー部215とを備える。回路形成部216は、主面10A,10B上に、それぞれ6個の第2導体部42を有している。複数の第2導体部42は、区画部18毎に独立して設けられている。
【0039】
図5に示すように、回路形成部216を取り囲むダミー部215は、第1導体部41及び第3導体部43を有している。第1導体部41及び第3導体部43は、セラミック板10の矩形の主面10Aの外縁をなす各辺に沿って合計4個設けられている。このうち、主面10A上において互いに対向する2個の第1導体部41は、表面に第1識別マーク21を有する。回路基板200が接合基板100を加工して得られるものである場合、第1識別マーク21は、図1の第3識別マーク23に由来するものであってよい。すなわち、第1識別マーク21と第3識別マーク23は全く同じものであってもよいし、接合基板100から回路基板200を得るための加工プロセスを得ることによって、変色したり変形したりしたものであってもよい。第1識別マーク21及び第3識別マーク23の形状及び機能は同じであってよい。
【0040】
第1識別マーク21は、回路基板200を識別可能なものであればよい。例えば、バーコード等の一次元コードであってよく、二次元コードであってもよい。第1識別マーク21は、第1導体部41の表面に印刷されたものであってよく、凹凸形状で構成されたものであってもよい。例えば、凹部と模様が組み合わされたものであってもよい。複数ある第1識別マーク21は、互いに同じであってよく、異なっていてもよい。
【0041】
第1識別マーク21は、回路基板200を識別するために用いられてよい。第1識別マーク21は何らかの情報と関連付けられたコードであってよい。情報としては、例えば、ロット、製造履歴、製品の種類、用途、品質、及び製造条件に関するものが挙げられる。第1識別マーク21を用いることによって、回路基板200のトレーサビリティを向上することができる。第1識別マーク21を用いて、品質管理及び工程管理を行ってよい。
【0042】
第1識別マーク21は、例えば、以下(a),(b),(c)及び(d)の情報のうち1又は2以上がコード化されたものであってよい。
(a)用いた接合基板の情報(金属板の情報)
(b)回路基板の製造情報(製造日、製造条件、及び製造設備等)
(c)回路基板の品質情報
(d)回路基板の分割条件
【0043】
回路基板200の第1識別マーク21は、第1導体部41の表面に設けられるため、読み取りが容易で且つ正確である。第1識別マーク21のコードサイズ及びセル数は、第3識別マーク23と同じであってよい。なお、第1識別マーク21が図2に示す凹部23aのような凹部で構成される場合、当該凹部の深さは1μm以上であってよく、3μm以上であってもよい。第1識別マーク21を構成する凹部の深さは、第3識別マーク23を構成する凹部23aの深さよりも小さくてよい。これは、回路基板200には、接合基板100のような表面処理が施されないためである。第1識別マーク21の凹部の深さは、凹部23aと同様の観点から、50μm以下であってよく、30μm以下であってよく、10μm未満であってもよい。
【0044】
第1導体部41は、セラミック板10の主面10A及び主面10Bから外側にはみ出していてよい。このような第1導体部41の表面(上面)に設けられる第1識別マーク21は、ろう材成分に覆われることが抑制される。このような第1識別マーク21は読み取り精度に優れる。
【0045】
ダミー部215に設けられる4個の導体部のうち、互いに対向する残りの2個の第3導体部43は、表面に識別マークを有しない。このように、ダミー部215に識別マークを有しない第3導体部43を設けることの利点は以下のとおりである。回路基板200をエッチングによって得る場合、エッチング速度は、溶解する金属板の露出面積が大きいほど速くなる。このため、第3導体部43を設けない場合、回路基板200の回路形成部216における第2導体部42の各側面のうち、ダミー部215に近接する側面近傍のエッチング速度が大きくなって第2導体部42の側面形状及び厚みのばらつきが生じる。そこで、第3導体部43を設けることによって、ダミー部215に近接する部分と、ダミー部から離れている部分とのエッチング速度の差を小さくすることができる。これによって、回路形成部216における第2導体部42の形状の均一性を向上することができる。すなわち、第3導体部43をダミー部215に設けることによって、第2導体部42の形状のばらつきを低減することができる。なお、第3導体部43の形状は特に限定されない。
【0046】
図7は別の実施形態に係る接合基板110の平面図である。図7の接合基板110は、第3識別マーク23に加えて、6個の第4識別マーク24を金属板20の表面20Aに有する点で、接合基板100と異なっている。接合基板110のその他の構成は、接合基板100と同じであってよい。第4識別マーク24は、セラミック板10の主面10Aにおける回路形成領域16上に設けられる。図4に示すとおり、回路形成領域16は、複数の区画部18を含む。第4識別マーク24は、複数の区画部18のそれぞれの上方に1個ずつ設けられる。
【0047】
第4識別マーク24の形状及び機能は、第3識別マーク23と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第4識別マーク24は、金属板20及び接合基板110を識別可能なものであればよい。例えば、バーコード等の一次元コードであってよく、二次元コードであってもよい。第4識別マーク24は、表面20Aに印刷されたものであってよく、凹凸形状で構成されたものであってもよい。例えば、凹部と模様が組み合わされたものであってもよい。複数ある第4識別マーク24は、互いに同じであってよく、異なっていてもよい。
【0048】
第4識別マーク24は、金属板20の表面20Aのうち、回路形成領域16を覆う部分の表面に設けられる。これによって、エッチング等によって得られた回路基板を区画線L1,L2に沿って分割して個片基板を得た後も、トレーサビリティを確保することができる。
【0049】
接合基板110の第4識別マーク24は、金属板20の表面20Aに設けられるため、読み取りが容易で且つ正確である。第4識別マーク24のコードサイズ及びセル数は、第3識別マーク23と同じであってよい。なお、第4識別マーク24が図2に示す凹部23aのような凹部で構成される場合、当該凹部の深さは3μm以上であってよく、5μm以上であってもよい。第4識別マーク24を構成する凹部の深さは、凹部23aと同様の観点から、50μm以下であってよく、30μm以下であってよく、10μm未満であってもよい。
【0050】
変形例では、第4識別マーク24は、接合基板110に表面処理等を施すことによって消失するものであってよい。これによって、回路形成部及び個片基板に識別マークが残存しない回路基板及び個片基板を得ることができる。この場合、第4識別マーク24を構成する凹部の深さは、第3識別マーク23を構成する凹部の深さよりも小さくてよい。また、第4識別マーク24は二次元マークであり、第3識別マーク23は三次元マークであってもよい。
【0051】
図8は別の実施形態に係る回路基板210の平面図である。図8の回路基板210は、第1導体部41の表面に第1識別マーク21を有することに加えて、第2導体部42の表面に第2識別マーク22を有する点で、図5及び図6の回路基板200と異なっている。回路基板210のその他の構成は、図5及び図6の回路基板200と同じであってよい。回路基板210は、接合基板110を加工して得てもよい。回路基板210が接合基板110を加工して得られるものである場合、第1識別マーク21及び第2識別マーク22は、図7の第3識別マーク23及び第4識別マーク24に由来するものであってよい。すなわち、第2識別マーク22と第4識別マーク24は全く同じものであってもよいし、接合基板110から回路基板210を得るための加工プロセスを得ることによって、変色したり変形したりしたものであってもよい。
【0052】
回路基板200,210は、ダミー部215に、第1識別マーク21を有する第1導体部41と、識別マークを有しない第3導体部43とを有するが、これに限定されない。例えば、主面10A上の4個の導体部の全てが第1識別マーク21を有していてもよい。また、セラミック板10の主面10Aの4つの全ての辺に沿って導体部を有することは必須ではない。変形例では、いずれか一つの辺に沿って導体部を有していてよい。別の変形例では、第3導体部43を主面10A上にのみに設け、主面10B上には設けなくてもよい。また、主面10A及び主面10Bに設けられる第2導体部42の形状は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0053】
回路基板200,210は、セラミック板10の区画線L1,L2に沿って分割され、回路形成部216とダミー部215とが切り離される。回路形成部216は、区画部18単位に分割され、6個の個片基板となる。個片基板は例えばパワーモジュール等の部品として用いられる。回路基板200,210は、セラミック板10の角部11が露出していることから、例えば、分割して個片基板を得る際の位置合わせ精度を向上することができる。なお、回路基板200,210からは、6個の個片基板を得ることができるが、この個数は特に限定されない。例えば、回路形成部に第2導体部42が一つのみ設けられており、回路基板200,210から一つのみの個片基板が得られてもよい。また例えば、回路形成部が区画部18及び第2導体部42を9個(3行×3列)又はそれ以上含んでおり、分割によって9個又はそれ以上の個片基板が得られてもよい。
【0054】
図9に示す個片基板300は、例えば回路基板210を区画線L1,L2に沿って分割して得られたものであってよい。すなわち、回路基板210からダミー部215を切り離して得られたものであってよい。個片基板300は、セラミック板10の区画部18に由来する分割板18a(セラミック板)と、分割板18aを挟むように一対の第2導体部42とを備える。個片基板300は、少なくとも一方の第2導体部42の表面に第2識別マーク22を有する。このような第2識別マーク22は、第2導体部42の表面に設けられるため、個片基板の内部に識別マークが設けられる場合に比べて読み取り精度を高くすることができる。したがって、トレーサビリティに優れる。
【0055】
個片基板300における第2識別マーク22に含まれる第2情報と、ダミー部215の第1導体部41の表面に設けられる第1識別マーク21に含まれる第1情報とは、互いに関連する情報を含んでいてよい。「互いに関連する情報」とは、第1識別マーク21と第2識別マーク22とが同じ回路基板210に属していたことを把握できる情報であればよい。
【0056】
例えば、n個の回路基板210がある場合を想定する。1個目の回路基板210が有する第1識別マーク21と第2識別マーク22が、「互いに関連する情報」として共通の固有情報1を含む。k個目の回路基板210が有する第1識別マーク21と第2識別マーク22が、「互いに関連する情報」として共通の固有情報kを含む。固有情報1と固有情報kとが互いに異なっているため、n個の回路基板210を分割して6n個の個片基板300が得られた後も、6n個の個片基板300のそれぞれが、n個の回路基板200のどれに由来するものであるかを把握することができる。ここで、n及びkは、それぞれ1以上の整数であり、n≧kである。
【0057】
第1識別マーク21と第2識別マーク22とが互いに関連する情報を含むことによって、回路基板210又はダミー部215と、個片基板300とを紐づけて管理することが可能となり、トレーサビリティの範囲を拡張することができる。したがって、個片基板300はトレーサビリティに優れる。
【0058】
接合基板110における第4識別マーク24に含まれる第4情報と、第3識別マーク23に含まれる第3情報も、第1情報及び第2情報と同様に、互いに関連する情報を含んでいてよい。すなわち、「互いに関連する情報」とは、第4識別マーク24と第3識別マーク23とが同じ接合基板110に属していたことを把握できる情報であればよい。上述のk個目の回路基板210を得るための接合基板110の第3識別マーク23及び第4識別マーク24に含まれる第3情報及び第4情報は、共通の固有情報kを含んでよい。これによって、接合基板110(金属板20)から個片基板300までのトレーサビリティを確保することができる。
【0059】
個片基板300における一対の第2導体部42の形状及びサイズは同じであってもよいし異なっていてもよい。第2識別マーク22は、一方の第2導体部42の表面にのみ設けられてもよいし、両方の第2導体部42の表面に設けられてもよい。両方の第2導体部42に識別マークを設ければ、個片基板300の裏表を容易に識別することができる。一方面側の第2導体部42が、パワーモジュール等の電気回路を構成し、他方面側の第2導体部42が放熱部を構成してもよい。個片基板300には例えば半導体素子が実装されてもよい。この場合、実装後も、第2識別マーク22が外部に露出するようにしてもよい。これによって、実装後もトレーサビリティを確保することができる。個片基板300の一例としては、セラミック板が窒化アルミニウム又は窒化ケイ素で構成され、第2導体部42が銅又はアルミニウムで構成されるものが挙げられる。
【0060】
接合基板100,110の製造方法の例を説明する。まず、セラミック板10を準備する。セラミック板10の製造方法は、セラミック基材の主面にレーザ光を照射して主面を複数に区画する区画線L1,L2を形成してセラミック板10を得る工程を有する。区画線L1,L2は、後工程において、回路基板を分割する際の切断線となる。区画線L1,L2は、スクライブラインであってよい。スクライブラインは、例えば、炭酸ガスレーザ及びYAGレーザ等をセラミック基材の表面に照射して形成してよい。
【0061】
セラミック基材は、グリーンシートを焼成して得ることができる。グリーンシートは、例えば、無機化合物の粉末、バインダ樹脂、焼結助剤、可塑剤、分散剤、及び溶媒等を含むスラリーを成形して得ることができる。無機化合物の例としては、窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素、及び酸化アルミニウム等が挙げられる。焼結助剤としては、希土類金属、アルカリ土類金属、金属酸化物、フッ化物、塩化物、硝酸塩、及び硫酸塩等が挙げられる。これらは一種のみ用いてもよいし二種以上を併用してもよい。焼結助剤を用いることにより、無機化合物粉末の焼結を促進させることができる。バインダ樹脂の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、及び(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0062】
可塑剤の例としては、精製グリセリン、グリセリントリオレート、ジエチレングリコール、ジ-n-ブチルフタレート等のフタル酸系可塑剤、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等の二塩基酸系可塑剤等が挙げられる。分散剤の例としては、ポリ(メタ)アクリル酸塩、及び(メタ)アクリル酸-マレイン酸塩コポリマーが挙げられる。溶媒としては、エタノール及びトルエン等の有機溶媒が挙げられる。
【0063】
次に、グリーンシートの脱脂及び焼結を行って、セラミック基材が得られる。脱脂は、例えば、400~800℃で、0.5~20時間加熱して行ってよい。これによって、無機化合物の酸化及び劣化を抑制しつつ、有機物(炭素)の残留量を低減することができる。焼結は、窒素、アルゴン、アンモニア又は水素等の非酸化性ガス雰囲気下、1700~1900℃に加熱して行う。このようにして、得られるセラミック基材を加工することによって、図4に示すようなセラミック板10が得られる。
【0064】
次に、セラミック板10の主面10A,10Bを覆うように金属板20,30をそれぞれ接合して接合基板100を得る。金属板20及び金属板30は、ろう材を介して、セラミック板10の一方の主面10A及び他方の主面にそれぞれ接合される。
【0065】
具体的には、まず、セラミック板10の主面10A及び主面10Bに、ロールコーター法、スクリーン印刷法、又は転写法等の方法によってペースト状のろう材を塗布する。ろう材は、例えば、銀及びチタン等の金属成分、有機溶媒、及びバインダ等を含有する。ろう材の粘度は、例えば5~20Pa・sであってよい。ろう材における有機溶媒の含有量は、例えば、5~25質量%、バインダ量の含有量は、例えば、2~15質量%であってよい。
【0066】
金属板20は、セラミック板10に接合される前に、表面20Aに第3識別マーク23及び/又は第4識別マーク24を有していてよい。これによって、接合前の金属板20のトレーサビリティを確保することができる。金属板30も、金属板20と同様の識別マークを有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0067】
ろう材が塗布されたセラミック板10の主面10A及び主面10Bに、金属板20及び金属板30をそれぞれ貼り合わせる。その後、加熱炉で加熱してセラミック板10と金属板20及び金属板30とを十分に接合させて、接合基板100又は接合基板110を得る。加熱温度は例えば700~900℃であってよい。炉内の雰囲気は窒素等の不活性ガスであってよく、大気圧未満の減圧下で行ってもよいし、真空下で行ってもよい。加熱炉は、複数の接合体を連続的に製造する連続式のものであってもよいし、一つ又は複数の接合体をバッチ式で製造するものであってもよい。加熱は、接合体を積層方向に押圧しながら行ってもよい。
【0068】
本例では、セラミック板10と金属板20,30とを接合する前に、金属板20の表面20Aに第3識別マーク23を設けているが、これに限定されない。変形例では、セラミック板10と金属板20,30とを接合した後に、金属板20の表面20Aに第3識別マーク23及び第4識別マーク24を設けてもよい。これによって、接合の際に、ろう材が金属板20の表面20Aの外縁部にまでしみ出した場合であっても、第3識別マーク23の読み取り精度を十分に高くすることができる。
【0069】
第3識別マーク23よりも内側にある第4識別マーク24の方がろう材のしみ出しの影響を受け難い。このため、別の変形例では、接合前の金属板20の表面20Aには第4識別マーク24のみを設けておき、接合後に表面20Aに第3識別マーク23を設けてもよい。
【0070】
一実施形態に係る回路基板の製造方法は、接合基板に少なくともエッチング処理を施して、ダミー領域及び回路形成領域に第1導体部及び第2導体部をそれぞれ形成し、第1導体部を含むダミー部及び第2導体部を含む回路形成部を備える回路基板を得る工程を有する。この製造方法では、回路形成領域とダミー領域とを含む主面を有するセラミック板と、当該主面を覆うようにセラミック板に接合される金属板と、を備える接合基板を用いる。そのような接合基板の例として、図1の接合基板100及び図7の接合基板110が挙げられる。以下、接合基板110を用いた場合を例にして説明する。
【0071】
この例では、接合基板110における金属板20,30の一部を除去し、ダミー領域15及び回路形成領域16に、第1導体部41,第3導体部43及び第2導体部42を、それぞれ形成して回路基板210を得る工程を行う。この工程は、例えば、フォトリソグラフィによって行ってよい。具体的には、接合基板110の表面20Aに感光性を有するレジストを印刷する。そして、露光装置を用いて、所定形状を有するレジストパターンを形成する。金属板30の表面30Aにも同様のレジストパターンを形成してよい。レジストはネガ型であってもよいしポジ型であってもよい。不要なレジストは、例えば洗浄によって除去する。
【0072】
レジストパターンを形成した後、エッチング処理を施して、金属板20及び金属板30のうちレジストパターンに覆われていない部分を除去する。これによって、当該部分にはセラミック板10の主面10A,10Bが露出する。その後、レジストパターンを除去する。これによって、ダミー部215と回路形成部216とを備える図8の回路基板210が得られる。
【0073】
回路基板210は、ダミー部215に設けられる第1導体部41の表面に、第3識別マーク23に由来する第1識別マーク21を有する。このような第1識別マーク21を有することから、トレーサビリティに優れる。また、回路基板210は、第1識別マーク21に加えて、第2導体部42の表面に、第4識別マーク24に由来する第2識別マーク22を有する。このため、回路基板210を区画線L1,L2に沿って分割した後も、トレーサビリティを確保することができる。
【0074】
レジストパターンを形成する前に、接合基板110の金属板20の表面20Aの表面処理を行ってもよい。表面処理としては、薬剤を用いて表面20Aの一部を溶解除去する化学研磨が挙げられる。このような化学研磨によって、例えば、接合基板110を製造する際に表面20Aに付着するカーボン等の異物を除去することができる。また、表面粗さを大きくして、レジストの付着性を向上することができる。このような表面処理を行う場合に備えて、第3識別マーク23及び第4識別マーク24が凹部で構成される場合、当該凹部の深さは、第1識別マーク21及び第2識別マーク22を構成する凹部の深さよりも大きくしてよい。各凹部の深さの範囲は上述のとおりである。これによって、回路基板210における第1識別マーク21及び第2識別マーク22の読み取り精度を十分に高く維持することができる。
【0075】
接合基板110の代わりに接合基板100を用い、回路基板210と同様にして回路基板200を製造してもよい。変形例では、接合基板110における第4識別マーク24を表面処理によって消失させてもよい。これによって、回路形成部216における第2導体部42の表面に識別マークが残存しない回路基板(つまり、回路基板200)を得ることができる。すなわち、接合基板110から第4識別マーク24が消失しつつ第3識別マーク23が残存するような表面処理を行うことによって、接合基板100を作製する。その後、エッチング処理を行うことによって、第3識別マーク23に由来する第1識別マーク21を有する回路基板200を得ることができる。
【0076】
回路基板200,210の第1導体部41、第2導体部42、及び第3導体部43の少なくとも一つの表面にめっき処理を施してもよい。凹部で構成される第1識別マーク21及び第2識別マーク22は、めっき処理後も第1識別マーク21及び第2識別マーク22を用いてトレーサビリティを確保することができる。変形例では、ソルダーレジスト等の保護層で第1導体部41、第2導体部42及び第3導体部43の表面の一部(例えば第1識別マーク21及び第2識別マーク22が設けられている部分)を被覆し、当該表面の他部のみにめっき膜を形成してもよい。
【0077】
一実施形態に係る個片基板の製造方法は、接合基板に少なくともエッチング処理を施して、ダミー領域及び回路形成領域に、第1導体部及び第2導体部をそれぞれ形成し、第1導体部を含むダミー部及び第2導体部を含む回路形成部を有する回路基板を得る工程と、回路基板からダミー部を切り離し、第2導体部を有する個片基板を得る工程と、を有する。回路形成部を有する回路基板を得る工程は、上述の回路基板200,210の製造方法で述べたとおりであってよい。以下、回路基板200,210を用いた場合を例にして説明する。
【0078】
回路基板200,210を、区画線L1,L2に沿って分割して、回路基板200,210からダミー部215を切り離す。また、回路形成部216を区画部18毎に分割する。これによって、第2導体部42を有する個片基板が得られる。回路基板210を用いれば、図9に示す、第2導体部42の表面に第2識別マーク22を有する個片基板300を得ることができる。このような個片基板300は、第2識別マーク22を読み取ることによって、製造条件に関する情報を遡って調べることができる。例えば、用いられた金属板20、接合基板110、及び回路基板210等のロット番号、製造情報、及び品質情報等を調べることができる。これによって、工程管理及び品質管理等を行うことが可能となるため、上記製造方法はトレーサビリティに優れる。
【0079】
以上、本開示の幾つかの実施形態及びその変形例について説明したが、本開示は上記実施形態及びその変形例に何ら限定されるものではない。例えば、各区画部18に設けられる第2導体部42の形状は同一である必要はなく、区画部18毎に異なる形状を有していてもよい。セラミック板の一方の主面のみが金属板で覆われていてもよい。セラミック板及び金属板の形状は、特に限定されない。例えば、接合基板100,110では、セラミック板10の4つの角部11が金属板20,30の角部よりも外側に突出していたが、一部の角部11のみが金属板20,30の角部よりも突出していてもよい。
【0080】
各識別マークの数は特に限定されない。例えば、接合基板100及び回路基板200における第3識別マーク23及び第1識別マーク21は、1つであってよく、3つ以上であってもよい。一つの第2導体部42の表面に2個以上の第2識別マーク22が設けられてもよい。ダミー部215は、回路形成部216の周囲以外に設けられてもよい。例えば、セラミック板において隣り合う区画部の間にダミー領域を設け、このダミー領域に第1識別マークを有する導体部を設けてダミー部としてもよい。
【0081】
第1識別マーク21,第2識別マーク22及び第4識別マーク24は、第3識別マーク23と同様に、複数の凹部が所定の規則に従って並んで構成されていてよい。第1識別マーク21,第2識別マーク22及び第4識別マーク24は、第3識別マーク23と同様に、例えばQRコード(登録商標)等の二次元バーコードであってよい。また、例えば凹部の深さに関する情報も利用して三次元コードとしてもよい。凹部は、レーザ光によって形成されるレーザ孔であってよい。レーザ源としては、例えば、炭酸ガスレーザ及びYAGレーザ等を用いることができる。
【実施例
【0082】
実施例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0083】
[二次元コードの形成]
(実施例1)
第1銅板(厚み:0.8mm)、セラミック板(窒化ケイ素板、厚み:0.32mm)及び第2銅板を準備した。第1銅板とセラミック板、及びセラミック板と第2銅板を、それぞれろう材を用いて接合し、第1銅板、セラミック板及び第2銅板がこの順に積層されている接合基板を得た。この接合基板の第1銅板の表面に、レーザ光を照射し、図2に示すような複数のレーザ孔(凹部23a)で構成される二次元コード(第3識別マーク23)を形成した。二次元コードの形成には、市販のレーザーマーカー(株式会社キーエンス製、商品名:MD-X1520)を用いた。二次元コードの概要は、以下のとおりとした。レーザ光の照射条件は、表1に示すとおりとした。
コード種:DMX(ECC200)
コードサイズ:2.2mm×2.2mm
セル数:16×16
【0084】
(実施例2~12)
レーザ光の照射条件を表1に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同じ手順で第1銅板の表面に二次元コード(第3識別マーク23)を形成した。
【0085】
[二次元コードの評価]
各実施例において第1銅板の表面に形成した二次元コードを構成するレーザ孔の深さを測定した。測定には、3D形状測定機(株式会社キーエンス製、型式:VR-3000)を用いた。測定結果は表1の「レーザ孔の深さ(処理前)」に示すとおりであった。固定式コードリーダ(株式会社キーエンス製、型式:SR-2000)を用いて、二次元コードの読み取り可否を評価したところ、いずれの実施例の二次元コードも読み取り可能であった。
【0086】
[接合基板の表面処理]
二次元コードを形成した各実施例の接合基板における第1銅板及び第2銅板の表面処理を行った。具体的には、過酸化水素と硫酸とを含む表面処理剤を用いて、各銅板の表層の一部を溶解し、表面の表面粗さを大きくした。その後、二次元コードを構成するレーザ孔の深さを測定した。測定方法は上述の[二次元コードの評価]と同じ方法とした。測定結果は表1の「レーザ孔の深さ(処理後)」に示すとおりであった。
【0087】
【表1】
【0088】
表面処理を行った後でも、二次元コードが残存することが確認された。なお、表面処理を行うとレーザ孔の深さが小さくなる傾向にある。したがって、レーザ孔の深さを大きくすることによって、読み取りエラーの発生を抑制し、読み取り精度を高くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示によれば、トレーサビリティに優れる回路基板及びその製造方法を提供することができる。また、トレーサビリティに優れる接合基板を提供することができる。また、トレーサビリティに優れる個片基板及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0090】
10…セラミック板、10A,10B…主面、11…角部、15…ダミー領域、16…回路形成領域、18…区画部、18a…分割板、20,30…金属板、20A,30A…表面、21…第1識別マーク、22…第2識別マーク、23…第3識別マーク、24…第4識別マーク、23a…凹部、27,37…外縁、41…第1導体部、42…第2導体部、43…第3導体部、52,53…ろう材層、100,110…接合基板、200,210…回路基板、215…ダミー部、216…回路形成部、300…個片基板、L1,L2…区画線,VL…仮想線。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9