(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 17/242 20060101AFI20231013BHJP
H01C 1/032 20060101ALI20231013BHJP
H01C 7/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01C17/242
H01C1/032
H01C7/00 320
(21)【出願番号】P 2019043292
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】大山 千晶
(72)【発明者】
【氏名】中山 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】河野 猛
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-026204(JP,A)
【文献】特開平08-288111(JP,A)
【文献】特開2018-195637(JP,A)
【文献】特開2002-270402(JP,A)
【文献】特開平8-124729(JP,A)
【文献】特開平6-326246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 17/242
H01C 1/032
H01C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板の上面の両端部に設けられた一対の電極と、前記絶縁基板の上面に設けられ、かつ前記一対の電極間に形成された抵抗体と、前記抵抗体に設けられた第1トリミング溝、第2トリミング溝と、前記抵抗体を覆う第1の保護膜と、前記第1の保護膜を覆う第2の保護膜とを備え、前記第1の保護膜は前記抵抗体の一部を覆い、前記第1の保護膜で覆われた前記抵抗体に
前記第1の保護膜を貫通するように、前記第1トリミング溝が設けられ、前記第1の保護膜で覆われていない前記抵抗体に前記第2トリミング溝が設けられているチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に使用されるチップ抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のチップ抵抗器は、
図3、
図4に示すように、絶縁基板1と、この絶縁基板1の上面の両端部に設けられた一対の電極2と、絶縁基板1の上面に設けられ、かつ一対の電極2間に形成された抵抗体3と、少なくとも抵抗体3を覆うように設けられた保護膜4と、一対の電極2と電気的に接続されるように絶縁基板1の両端面に設けられた一対の端面電極5と、一対の電極2の一部と一対の端面電極5の表面に形成されためっき層6とを備えていた。
【0003】
また、保護膜4はガラスで構成された第1の保護膜4aと、第1の保護膜4aを覆う樹脂で構成された第2の保護膜4bとで構成されていた。そして、抵抗体3には抵抗値調整用のトリミング溝7が設けられ、トリミング溝7の全面を覆う箇所に第1の保護膜4aが位置し、さらに、第1の保護膜4aを形成した後、トリミング溝7を形成するようにしていた。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来のチップ抵抗器においては、トリミング溝7の形状、および形成可能な範囲には限界があるため、抵抗値の微調整が困難となり、抵抗値精度を高くするのが困難になるという課題を有していた。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、抵抗値精度を高くすることが可能なチップ抵抗器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係るチップ抵抗器は、絶縁基板と、前記絶縁基板の上面の両端部に設けられた一対の電極と、前記絶縁基板の上面に設けられ、かつ前記一対の電極間に形成された抵抗体と、前記抵抗体に設けられた第1トリミング溝、第2トリミング溝と、前記抵抗体を覆う第1の保護膜と、前記第1の保護膜を覆う第2の保護膜とを備え、前記第1の保護膜は前記抵抗体の一部を覆い、前記第1の保護膜で覆われた前記抵抗体に前記第1トリミング溝が設けられ、前記第1の保護膜で覆われていない前記抵抗体に前記第2トリミング溝が設けられている。
【0009】
第2の態様に係るチップ抵抗器は、第1の態様において、前記第2トリミング溝が前記抵抗体の側辺を長手方向に切欠くように設けられている。
【0010】
第3の態様に係るチップ抵抗器は、第1の態様において、前記第2トリミング溝が前記抵抗体の前記第1トリミング溝と対向する箇所には設けられていない。
【発明の効果】
【0011】
本開示のチップ抵抗器は、第2トリミング溝によって抵抗値の微調整が可能となるため、抵抗値精度を高くすることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施の形態におけるチップ抵抗器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本開示の一実施の形態におけるチップ抵抗器の断面図、
図2は同チップ抵抗器の主要部の上面図である。
【0014】
本開示の一実施の形態におけるチップ抵抗器は、
図1、
図2に示すように、絶縁基板11と、この絶縁基板11の上面の両端部に設けられた一対の電極12と、絶縁基板11の上面に設けられ、かつ一対の電極12間に形成された抵抗体13と、抵抗体13に設けられた第1トリミング溝14、第2トリミング溝15と、抵抗体13を覆う第1の保護膜16と、第1の保護膜16を覆う第2の保護膜17とを備えている。
【0015】
また、一対の電極12と電気的に接続されるように絶縁基板11の両端面に設けられた一対の端面電極18と、一対の電極12の一部と一対の端面電極18の表面に形成されためっき層19とを備えた構成としている。
【0016】
なお、
図2では、第2の保護膜17、一対の端面電極18、めっき層19を省略している。
【0017】
上記構成において、前記絶縁基板11は、Al2O3を96%含有するアルミナで構成され、その形状は矩形状(上面視にて長方形)となっている。
【0018】
また、前記一対の電極12は、絶縁基板11の上面の両端部に設けられ、銀等の金属を有する厚膜材料を印刷、焼成することによって形成されている。なお、一対の電極12の上面に一対の再上面電極(図示せず)を設けてもよく、絶縁基板11の裏面の両端部に一対の裏面電極(図示せず)を設けてもよい。
【0019】
さらに、前記抵抗体13は、絶縁基板11の上面において、一対の上面電極12間に、銅ニッケル、銀パラジウム、または酸化ルテニウムからなる厚膜材料を印刷した後、焼成することによって形成され、一対の電極12と接続されている。なお、
図1では、抵抗体13の両端部が一対の電極12の両端部の上面に形成されているが、一対の電極12の両端部の下面に形成してもよい。一対の電極12間の抵抗体13に電流が流れる。
【0020】
この抵抗体13には、第1トリミング溝14、第2トリミング溝15がレーザ照射することによって形成されている。第1トリミング溝14は、抵抗体13の一対の電極12が形成されていない一側辺13aにL字状に設けられている。第2トリミング溝15は、抵抗体13の第1トリミング溝14が形成された一側辺13aと対向する異なる他方の側辺13bに形成されている。
【0021】
L字状の第1トリミング溝14は、抵抗体13の一対の電極12が並ぶ方向に伸びる平行部を有し、第2トリミング溝15は、前記平行部が伸びる方向と異なる方向に対応する
箇所に設けられている。なお、第1トリミング溝14の形状は、L字状に限定されるものではない。
【0022】
また、第2トリミング溝15は、抵抗体13の一対の電極12が並ぶ方向と直交する方向における第1トリミング溝14と対向する箇所には設けられていない。
【0023】
さらに、第2トリミング溝15は、抵抗体13の他方の側辺13bの一部を長手方向X、すなわち一対の電極12が並ぶ方向に欠落させるように切欠いて形成されている。これにより、第2トリミング溝15の先端部分における抵抗体13に微小クラックが発生するのを低減できる。
【0024】
第2トリミング溝15は、第1トリミング溝14に比べて、形成される箇所の面積が小さい。なお、第2トリミング溝15は、抵抗体13の他方の側辺13bに設けるようにさえすればよいが、上述したように長手方向に切欠くようにするのがより好ましい。
【0025】
前記第1の保護膜16は、抵抗体13の一部を覆い、ガラスを主成分とする絶縁体で構成されている。第1の保護膜16によって、抵抗体13に第1トリミング溝14を形成する際のレーザ照射による衝撃を緩和できる。なお、第2トリミング溝15は、形成される面積が小さいため、レーザ照射による衝撃も小さく、第1の保護膜16で覆わなくても影響は小さい。
【0026】
第1の保護膜16は抵抗体13の第1トリミング溝14が形成される箇所を覆い、第2トリミング溝15が形成される箇所を覆わない。換言すれば、抵抗体13の第1トリミング溝14が形成される箇所を第1の保護膜16で覆い、第1の保護膜16で覆われていない箇所に第2トリミング溝15を形成する。このとき、第1の保護膜16を形成した後、第1トリミング溝14を形成し、その後に、第2トリミング溝15を形成する。
【0027】
第1の保護膜16はガラスで構成されており、抵抗体13は第1の保護膜16よりレーザの吸収がよいため、第2トリミング溝15を第1の保護膜16で覆わないようにすることによって、第2トリミング溝15による抵抗値の修正を精度よく行える。また、レーザ照射で切削する箇所の厚みが薄くなるため、第2トリミング溝15を形成するレーザのパワーを弱くすることができる。
【0028】
前記第2の保護膜17は、第1の保護膜16全体および一対の電極12の一部を覆い、エポキシ樹脂で構成されている。また、第2の保護膜17は、第1の保護膜16で覆われていない第2トリミング溝15を完全に覆うように設けられている。
【0029】
前記一対の端面電極18は、絶縁基板11の両端面に設けられ、第2の保護膜17から露出した一対の電極12の上面と電気的に接続されるように、Agと樹脂からなる材料を印刷することによって形成される。なお、金属材料をスパッタすることにより形成してもよい。
【0030】
さらに、一対の電極12の一部と一対の端面電極18の表面には、Niめっき層、Snめっき層からなるめっき層19が形成されている。このとき、めっき層19は第2の保護膜17と接している。なお、Niめっき層の下層にCuめっき層があってもよい。
【0031】
上記したように本一実施の形態においては、第2トリミング溝15によって抵抗値の微調整が可能となるため、抵抗値精度を高くすることができるという効果が得られる。
【0032】
また、第2トリミング溝15が、抵抗体13の第1トリミング溝14と対向する箇所に
は設けられておらず、また、一対の電極12が並ぶ方向に欠落させるように切欠いて形成されているため、負荷集中する箇所が増加することはない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係るチップ抵抗器は、抵抗値精度を高くすることができるという効果を有するものであり、特に、各種電子機器に使用されるチップ抵抗器等において有用となるものである。
【符号の説明】
【0034】
11 絶縁基板
12 一対の電極
13 抵抗体
14 第1トリミング溝
15 第2トリミング溝
16 第1の保護膜
17 第2の保護膜