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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】遠隔操作式排水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/23 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
E03C1/23 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019199440
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021071018
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内川 篤
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特公昭60-000599(JP,B1)
【文献】特開2016-158774(JP,A)
【文献】特開2015-081497(JP,A)
【文献】特開2012-097545(JP,A)
【文献】特開2000-110219(JP,A)
【文献】特開平06-319662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/22-1/23
A47K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の排水口2と、
前記排水口2を開閉するための弁体5と、
開閉操作を行うための操作装置8を有する遠隔操作式排水栓装置において、
前記操作装置8への一の操作によって複数の前記排水口2が時間差により開口するように構成し
一の前記排水口2の開口が完了後、他の前記排水口2が開口することを特徴とする遠隔操作式排水栓装置。
【請求項2】
複数の排水口2と、
前記排水口2を開閉するための弁体5と、
開閉操作を行うための操作装置8を有する遠隔操作式排水栓装置において、
前記操作装置8への一の操作によって複数の前記排水口2が時間差により開口するように構成し、
前記操作装置8は電気信号に基づいて駆動する電動操作部であることを特徴とする遠隔操作式排水栓装置。
【請求項3】
前記遠隔操作式排水栓装置において、一の前記排水口2の開口が完了後、他の前記排水口2が開口するように構成した請求項に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項4】
前記遠隔操作式排水栓装置において、一の前記排水口2が開口している途中に、他の前記排水口2が開口するように構成した請求項に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項5】
前記遠隔操作式排水栓装置において、前記操作装置8からの一の操作を受けて、複数の前記排水口2への開口動作に分岐させる分岐機構を備えると共に、
前記分岐機構に、複数の前記排水口2が時間差により開口する時間差機構9を設けてなることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽及び洗面の排水口の開閉に用いられる遠隔操作式排水栓装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
浴槽や洗面ボウル等、槽体の排水口を開口するために、排水口から離れた位置に設けた操作装置に操作を行うことで排水口の弁体を押し上げる遠隔操作式排水栓装置が用いられる。一般的に、槽体の内部に貯水が行われていた場合、弁体を押し上げる際に操作装置にかかる荷重は、開口が始まる瞬間が最も大きくなり、開口している間又は開口が完了し、通水が生じていると押し上げを継続するための荷重が下がる。例えば、開口の瞬間に弁体に約25Nの力が必要であれば、開口して通水が生じている場合には約6Nの力で押し上げが済むといったものである。
上記は排水口と操作装置が一つの場合の遠隔操作式排水栓装置について述べたものであるが、特開2016-158774号の図11のように一つの操作装置で複数の排水口が開閉できる遠隔操作式排水栓装置も存在する。この複数の排水口を一つの操作装置で開口する遠隔操作式排水栓装置において、排水口を開口するのに必要な荷重が、段落0002と同様である場合に、開口が始まる瞬間に各排水口を開口するためそれぞれ約25Nの力が必要であり、操作装置にこの力を加えることで排水口が開口する場合、2つの排水口を同時に開口するには操作装置に合計約50Nの力が必要となるため、使用者の操作装置を押す負担が増加してしまう。
【0003】
【文献】特開2016-158774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は上記課題に鑑み発明されたものであって、複数の排水口を一つの操作で開口する遠隔操作式排水栓装置において、排水口の開口時に必要となる応力の最大値を軽減させる遠隔操作式排水栓装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の請求項1に記載の本発明は、複数の排水口2と、前記排水口2を開閉するための弁体5と、開閉操作を行うための操作装置8を有する遠隔操作式排水栓装置において、前記操作装置8への一の操作によって複数の前記排水口2が時間差により開口するように構成し、一の前記排水口2の開口が完了後、他の前記排水口2が開口することを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0006】
上記課題を解決する為の請求項2に記載の本発明は、複数の排水口2と、前記排水口2を開閉するための弁体5と、開閉操作を行うための操作装置8を有する遠隔操作式排水栓装置において、前記操作装置8への一の操作によって複数の前記排水口2が時間差により開口するように構成し、前記操作装置8は電気信号に基づいて駆動する電動操作部であることを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0007】
上記課題を解決する為の請求項3に記載の本発明は、前記遠隔操作式排水栓装置において、一の前記排水口2の開口が完了後、他の前記排水口2が開口するように構成した請求項2に遠隔操作式排水栓装置である。
【0008】
上記課題を解決する為の請求項4に記載の本発明は、前記遠隔操作式排水栓装置において、一の前記排水口2が開口している途中に、他の前記排水口2が開口するように構成した請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0009】
上記課題を解決する為の請求項5に記載の本発明は、前記遠隔操作式排水栓装置において、前記操作装置8からの一の操作を受けて、複数の前記排水口2への開口動作に分岐させる分岐機構を備えると共に、前記分岐機構に、複数の前記排水口2が時間差により開口する時間差機構9を設けてなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の遠隔操作排水栓装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1乃至5に記載の遠隔操作式排水栓装置により、複数の排水口2を時間差で開口することができるため、同時に開口する場合と比較し、排水口の開口時に必要となる応力の最大値を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一実施形態の、全ての排水口が閉口している状態の参考図である。
図2】第一実施形態の、一つ目の排水口が開口した状態の参考図である。
図3】第一実施形態の、全ての排水口が開口した状態の参考図である。
図4】第二実施形態における、両方の排水口が閉口した状態の参考図である。
図5】第二実施形態における、一つ目の排水口が開口を開始した状態の参考図である。
図6】第二実施形態における、二つ目の排水口が開口を開始した状態の参考図である。
図7】第二実施形態における、一つ目の排水口が開口を完了した状態の参考図である。
図8】第二実施形態における、二つ目の排水口が開口を完了した状態の参考図である。
【0012】
以下、図面を参考しながら本発明の遠隔操作式排水栓装置を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にする為のものであり、これによって本発明が制限して理解されるものではない。
【0013】
図1に示すように、本発明に係る遠隔操作式排水栓装置は大きく分けて、槽体4の底部に開口する複数の排水口2と、該排水口2内に設けられた上下動することで排水口2を開閉する複数の弁体5と、使用者が排水口2を開閉するための操作を行う槽体4の縁部に設けられた操作装置8と、操作装置8と弁体5を連結するレリースワイヤー6と、操作装置8に備えられた排水口2同士の開口を時間差で行う時間差機構9とで構成されている。
【0014】
排水口2は、円筒状の部材である排水栓本体1の内部に形成される開口であって、槽体4である浴槽の底面に複数、本実施形態では2つ設けられてなる。また、排水口2の内部に後述する弁体5を上下動可能に支持する支持部3を備えてなる。尚、排水口から流れた排水は、浴槽下方に設けられた図示しない水受けパン上に排出され、水受けパンの排水口から下水側に排出される。
【0015】
弁体5は、円盤状であってその周囲にパッキン51が嵌着されており、下降状態において当該パッキン51と排水口2周縁が当接することで、排水口2を閉塞状態にすることが可能となる。本実施形態では、排水口2の数に合わせて2つ使用する。
【0016】
レリースワイヤー6は、円筒状のアウターチューブと、アウターチューブ内を進退するインナーワイヤと、インナーワイヤを操作装置8側に付勢する戻りスプリングと、からなる、軸方向に剛性を有し、側面方向に可撓性を有するワイヤー部材である。インナーワイヤの弁側端部には、弁体5と嵌合する弁軸61を備えてなる。インナーワイヤが進退することで弁体5が昇降し、排水口2を開閉する。本実施形態では、排水口2の数に合わせて2本使用する。
【0017】
ロック機構7はスラストロック機構と呼ばれる公知の部材であって、各レリースワイヤー6の操作装置側端部にそれぞれ1つずつ設けられている。
上記ロック機構7は、筒状のロック機構本体71と、本体内部を進退するロック軸72からなり、内部に備えられた歯車等の作用により、ロック軸72に上側から押し操作を行う都度、ロック軸72がインナーワイヤを前進させて固定/固定を解除してインナーワイヤと共に後退、を繰り返す部材である。
【0018】
操作装置8は、排水口2の開閉操作を行うために使用者が操作を行う部材であって、操作を行うことで、後述する駆動部材91を駆動させることができる。
【0019】
時間差機構9は、駆動部材91と回転部材92とから構成されており、操作装置に行った一つの操作を、複数の排水口2の開閉動作に分岐する分岐機構も兼ねている。
駆動部材91は操作装置8への操作により伝達される電気信号に基づいて回転するモーターであり、回転する駆動軸911の先端に駆動ギア912が取り付けられ、この駆動ギア912が後述する回転部材92のラック部材921に歯合してなる。
回転部材92は円筒形状であって、上面部分には、駆動ギア912と歯合するラック部材921を設けてなり、また下方は円筒を切断したような傾斜を備えることで、円周に沿って凸形状を備えてなる。駆動部材91の駆動軸911が回転すると、駆動軸911に備えられた駆動ギア912を介して回転部材92が回転部材92の中心軸を中心として回転する。
ここで、各排水口2に合わせ2つ用意されたレリースワイヤー6端部のロック機構3のロック軸72は、回転部材92の下方に備えられる。
上から見た際の各ロック軸72の位置は、回転部材92の円周上であって、回転部材92の中心軸を中心とした180度対称位置に配置されている。
また、回転部材92とロック軸72の高さ方向の位置関係は、回転部材92が回転すると、回転部材92の下方の凸形状の先端が、ロック軸72を下方に押し込んでロック機構3を作動させるような位置関係である。尚、逆に凸形状の反対側はロック軸72が上昇していても、ロック軸72に接することの無い高さ位置となるように構成されている。
回転部材92が中心軸から回転することによって駆動部材91の動作が2つのロック軸72に分岐するようになっている。
【0020】
上記本発明の第一実施形態の構成は以上のものであり、遠隔操作式排水栓装置は以下のように作動することで弁体5を上昇/下降させ、排水口2を開閉する。
なお、以下の実施形態において、排水口2を開口させる際に、槽体内に貯水された状態で、一つの排水口2を開口させるのに必要な力は、従来例と同様に、開口の開始時が25Nであり、開口した後に弁体5を更に上昇させるのには6Nの力が必要なものとする。
また、以下の説明において、排水口を開口する際には、槽体である浴槽の内部に浴湯等が貯水されているものとする。
まず、図1に示したように、排水口2を閉口状態とする。この時、回転部材92の下端面は、どちらのロック軸72にも接しない位置に移動しており、凸形状の部分は、上から見た時、両ロック軸72の中間位置に移動している。
使用者が操作装置8を操作し、駆動部材91を動作させると、駆動軸911及び駆動ギア912が回転する。当該回転は駆動ギア912と歯合するラック部材921を通じて回転部材92へと伝達されて、回転部材92が360°回転される。
回転の際、図2に示したように、約90度回転した時点で、回転部材92の下端の凸形状の部分が、2つあるロック軸72の一方に当接してロック軸72を押し込み、ロック機構3を動作させる。これにより、動作したロック機構3側のインナーワイヤが排水口2側に前進して弁体5を押し上げ、2つある排水口2の一方を開口した状態で固定する。
この時、排水口2を開口させるのに必要な力は、排水口1つ分なので、ロック軸72に25N以上の力を作用させることで排水口2を開口することができる。
更にこの状態から図3に示したように、回転部材92が180度(回転が始まってから270度)回転すると、一つ目のロック軸72の対向位置にあったもう一つのロック軸72に回転部材92の下端の凸形状の部分が当接してロック軸72を押し込み、同様にロック機構3を動作させて2つ目の排水口2を開口した状態で固定する。この時、一つ目の排水口2は開口が完了しているため、開口させるのに必要な力は0Nであり、2つ目の排水口2を開口させるためには、ロック軸72に25N以上の力を加えるだけで開口できる。
2つ目の排水口2を開口させた後、更に回転部材92は90度回転して当初の位置に戻る。
この一連の動作で操作装置8に加えた操作は一つの操作だけなので、本実施形態の遠隔操作式排水栓装置は、一つの操作で2つ、即ち複数の排水口2を、一方の排水口2の開口が完了してから、もう一方の排水口2を開口させる、つまり時間差で開口させる遠隔操作式排水栓装置である。
ここで、駆動部材91(モーター)が出力する力は、駆動ギア912やラック部材921、回転部材92の傾斜面と凸形状などで変換されてロック軸72を押し込む力とは異なる値になるため、本発明では、ロック軸72をXNで押し込むのに必要な駆動部材91の出力を、以下「XNに対応する力」と記載する。例えば、ロック軸72をX=25、つまり25Nで押し込むのに必要な駆動部材91の出力は、「25Nに対応する力」と記載する。
この第一実施形態の遠隔操作式排水栓装置では、時間差で複数の排水口2を開口するようにしたため、駆動部材91が排水口2を開口させるために必要な力(出力)の最小値は、2つの排水口2を一つの操作で開口するにも関わらず、開口の開始時の25Nの倍の50Nではなく、1つの排水口2を開口させるのに必要な25Nに対応する力だけで済む。
排水口2を閉口する場合、再度操作装置8に操作を行い、回転部材92を360度回転させると、開口時と同じ手順にて順番にロック軸72が押し込まれて固定状態が解除され、インナーワイヤが後退してそれぞれの排水口2が順番に閉口する。
以降、操作装置8に操作を行うことで、2つの排水口2を開閉することができる。
以上が第一実施形態である。
【0021】
次に第二実施形態に係る遠隔操作式排水栓装置について説明する。
【0022】
排水口2は、槽体4(本実施例では浴槽)に取り付けられる円筒状の部材である排水栓本体1の内部に形成される開口であって、槽体4の底面に複数、本実施形態では2つ設けられてなる。排水口2の内部には、後述する弁体5を上下動可能に支持する支持部3を備えてなる。尚、排水口から流れた排水は、槽体4下方に設けられた図示しない水受けパン上に排出され、水受けパンの排水口から下水側に排出される。
【0023】
弁体5は、円盤状であってその周囲にパッキン51が嵌着されており、また円盤部分の下面中央に、下方に垂下した弁軸52を備えてなる。弁軸52下端は半円球形状を成す。施工完了時、支持部3にて弁軸52が上下動可能に支持される。また、下降状態において当該パッキン51と排水口2周縁が当接することで、排水口2を閉塞状態にすることが可能となる。本実施形態では、排水口2の数に合わせて2つ使用する。
【0024】
操作装置8は、排水口2の開閉操作を行うために使用者が操作を行う部材であって、操作を行うことで、後述する駆動部材を駆動させることができる。
【0025】
第二実施形態に係る遠隔操作式排水栓装置は大きく分けて、槽体4の底部に開口する複数の排水口2内に支持された複数の弁体5と、一本のケーブル線10と、槽体4の縁部に設けられた操作装置8と一の操作を分岐させる分岐機構であると共に、排水口2を時間差で開口する時間差機構9を弁体5近傍に構成している。
本発明の第二実施形態に係る遠隔操作式排水栓装置は、前記操作装置8の操作を、ケーブル線10と押上部材93を介して弁体5へと伝えることによって弁体5が上昇/下降し、複数の排水口2を開放/閉塞する。
【0026】
操作装置8は弁体5を開閉するための電動のスイッチであり、操作を行う都度、駆動部材を動作させて、押上部材93を前進/後退させるように構成されている。
【0027】
時間差機構9は、以下に記載する、駆動部材を内蔵した押上部材93及びレール部材94から構成されてなる。
押上部材93は、上面に傾斜面932と平坦面931をそれぞれ備えた部材であって、下面に、後述するレール部材94上に載置される溝部を備えてなる。該溝部には後述する駆動部材によって動作する駆動ギアが配置されてなる。尚、傾斜面932の水平方向の長さは、2つの弁体5の弁軸52間の水平方向の長さ幅よりも長い。
駆動部材(図示せず)は操作装置8への操作により伝達される電気信号に基づいて回転するモーターであり、回転する駆動軸の先端に駆動ギアが取り付けられ、この駆動ギアが後述するレール部材94側面のラック部材に歯合してなる。
レール部材94は、側面に駆動ギアに歯合するラック部材(図示せず)を側面に備えてなり、浴槽が載置される床面上であって、浴槽に備えられた2つの排水口2の直下位置に配置される。
施工完了時、レール部材94上に押上部材93を配置し、駆動部材に通電して駆動ギアが回転すると、駆動ギアとラック部材の歯合によって、押上部材93はレール部材94に沿って進退動作する。
具体的には、操作装置8に対して操作が行われると、押上部材93は、操作が行われる都度、排水口2側に前進して複数の弁軸52の全てが平坦面931上に配置されるまで移動/全ての弁軸52が押上部材93上に無い位置まで操作装置側に後退、を交互に繰り返すようにプログラムされてなる。
また、押上部材93と弁体5の弁軸52との高さ方向の位置関係は、押上部材93の傾斜面932が弁軸52下方にある場合は弁軸52が傾斜面932に押し上げられて上昇する途中の状態/又は降下する途中の状態となり、押上部材93の平坦面931が弁軸52下方にある場合は弁軸52が最上の位置まで上昇して排水口2が完全に開口するように配置・構成されてなる。
【0028】
上記本発明の第二実施形態の構成は以上のものであり、遠隔操作式排水栓装置は以下のように作動することで弁体5を上昇/下降させ、排水口2を開閉する。
なお、以下の実施形態において、排水口2を開口させる際に、槽体内に貯水された状態で、一つの排水口2を開口させるのに必要な力は、従来例と同様に、開口の開始時が25Nであり、開口した後に弁体5を更に上昇させるのには6Nの力が必要なものとする。
また、第一実施形態と同様に、押上部材93が、弁軸52をXNで押し上げるのに必要な駆動部材の出力を、以下「XNに対応する力」と記載する。例えば、弁軸52をX=25、つまり25Nで押し上げるのに必要な駆動部材の出力は、「25Nに対応する力」と記載する。
また、以下の説明において、排水口を開口する際には、槽体4である浴槽の内部に浴湯等が貯水されているものとする。
まず、図4に示したように、排水口2を閉口状態とする。この時、押上部材93は、どちらの弁軸52にも接しない位置に移動している。
使用者が操作装置8を操作し、駆動部材を動作させると、駆動軸及び駆動ギアが回転する。当該回転は駆動ギアと歯合するラック部材を通じて押上部材93をレール部材94に沿って排水口2側に前進させる。
押上部材93が前進し、図5に示したように、一つ目の排水口2の弁軸52下方に傾斜面932が到達すると、弁軸52の下端が傾斜面932の上面に接するため、弁軸52と共に弁体5全体が押し上げられ、一つ目の排水口2が開口する。この一つ目の排水口2の開口の瞬間に駆動部材に必要な力は25Nに対応する力である。
更にこの状態から押上部材93が前進すると、図6に示したように、一つ目の排水口2の弁体5が上昇しつつ、二つ目の排水口2の弁軸52の下端に押上部材93の傾斜面932が当接し、二つ目の排水口2の開口が開始される。この時、一つ目の排水口2の弁軸52は傾斜面932上あり、排水口2は開口途中のため、一つ目の排水口2の開口を継続するために6Nに対応する力が必要である。更に、2つ目の排水口2を開口させるために、25Nに対応する力が必要である。従って、2つ目の排水口2を開口させる際に、駆動部材には、6N+25N=31Nに対応する力が必要となる。
更にこの状態から押上部材93が前進すると、図7に示したように、一つ目の排水口2の弁軸52が平坦面931の位置に達して一つ目の排水口2の開口が完了し、二つ目の弁体5が上昇するのみの状態となる。この時には、一つ目の排水口2の開口に必要な力は0Nであり2つ目の排水口2を開口させるのに必要な6Nに対応する力のみが必要となる。
更にこの状態から押上部材93が前進すると、図8に示したように、2つの排水口2の両方の弁軸52が平坦面931の位置に達して両方の排水口2の開口が完了して押上部材93の前進が終了する。この時には、両方の排水口2の開口に必要な力は0Nであり、駆動部材は出力を行う必要はない。
この一連の動作で操作装置8に加えた操作は一つの操作だけで、押上部材93の動作も単純に前進だけなので、本実施形態の遠隔操作式排水栓装置は、一つの操作で2つ、即ち複数の排水口2を、一方の排水口2の開口動作中に、もう一方の排水口2の開口を開始させる、つまり時間差で開口させる遠隔操作式排水栓装置である。
この第二実施形態の遠隔操作式排水栓装置では、時間差で複数の排水口2を開口するようにしたため、駆動部材が排水口2を開口させるために必要な力(出力)は、2つの排水口2を一つの操作で開口するにも関わらず、開口の開始時の25Nの倍の50Nではなく、上記した通り31Nに対応する力だけで済む。
排水口2を閉口する場合、再度操作装置8に操作を行うと、押上部材93が、弁軸52が押上部材93上に無い位置まで操作装置側に後退するため、弁体5が降下して排水口2を順次閉塞する。以降、操作装置8に操作を行うことで、2つの排水口2を開閉することができる。
【0029】
本発明の各実施形態は上記のようであるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、主旨を変更しない範囲で自由に変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、槽体4は全て浴室の浴槽であったが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、洗面台の洗面ボウルや、流し台のシンク等、どのような槽体4に採用されても構わない。
また、遠隔操作式排水栓装置の構成において、第一実施形態、第二実施形態ともに、電力を利用して駆動部材91を動作させて排水口2を開閉させる電動式の遠隔操作式排水栓装置であったが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、使用者の力を利用した、手動式遠隔操作式排水栓装置としても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 排水栓本体
2 排水口
3 支持部
4 槽体
5 弁体
51 パッキン
52 弁軸
6 レリースワイヤー
61 弁軸
7 ロック機構
71 ロック機構本体
72 ロック軸
8 操作装置
9 時間差機構
91 駆動部材
911 駆動軸
912 駆動ギア
92 回転部材
921 ラック部材
93 押上部材
931 平坦面
932 傾斜面
94 レール部材
10 ケーブル線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8