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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20231013BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20231013BHJP
   B60N 2/16 20060101ALI20231013BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20231013BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/06
B60N2/16
B60N2/90
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019177992
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021054197
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 康夫
【審査官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-153248(JP,A)
【文献】実開昭62-188258(JP,U)
【文献】特開2019-77232(JP,A)
【文献】特開2019-43294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00- 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレーム(23)と、
前記シートフレーム(23)の外側に配置される音発生源(34)と、
少なくとも部分的に前記シートフレーム(23)を覆って、前記音発生源(34)を覆い隠すカバー部材(18;63;66;76)と、
前記音発生源(34)および前記カバー部材(18;63;66;76)の間に配置される仕切り部材(55;67;77)と
を備える車両用シート(11)において、前記仕切り部材(55;67;77)は、
前記音発生源(34)に向き合いながら鉛直面に沿って配置され、前記カバー部材(18;63;66;76)との間に空間(Sm)を形成する板形状の板状部(57;68;78)と、
前記板状部(57;68;78)の端から前記音発生源(34)側に水平方向に延び、前記カバー部材(18;63;66;76)との間に空間(Su)を形成し、前記音発生源(34)に向き合う位置で前記空間(Su)に通じる貫通孔(61;72;86)を形成する立壁部(58;69;85)と
を有することを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記シートフレーム(23)は、シートクッションパッド(44)を受け止め、前記音発生源(34)を支持するサイドフレーム(24a)を備え、前記立壁部(58;69;85)は、前記音発生源(34)よりも上方に配置される上立壁部(58a;69a;85a)を含むことを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記シートフレーム(23)は、シートクッションパッド(44)を受け止め、前記音発生源(34)を支持するサイドフレーム(24a)を備え、前記立壁部(58;69;85)は、前記音発生源(34)よりも上方に位置する上立壁部(58a;69a;85a)と、前記音発生源(34)よりも下方に位置する下立壁部(58b;69b;85b)とを含み、前記上立壁部(58a;69a;85a)の水平方向長さ(Lu)は前記下立壁部(58b;69b;85b)の水平方向長さ(Ld)よりも大きいことを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記シートフレーム(23)は、シートクッションパッド(44)を受け止め、前記音発生源(34)を支持するサイドフレーム(24a)を備え、前記立壁部(58;69;85)は、前記音発生源(34)よりも上方に位置する上立壁部(58a;69a;85a)と、前記音発生源(34)よりも下方に位置する下立壁部(58b;69b;85b)とを含み、前記上立壁部(58a;69a;85a)の端縁は、前記下立壁部(58b;69b;85b)の端縁に接する仮想鉛直面よりも水平方向に前記板状部(57;68;78)から遠ざかることを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、前記仕切り部材(55;67;77)は、前記上立壁部(58a;69a;85a)の端縁から折り返されて、前記音発生源(34)から遠ざかる方向に延びる折り返し部(62;73;87)を有することを特徴とする車両用シート。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用シートにおいて、前記折り返し部(62;73;87)は、孔なしの連続体に形成されることを特徴とする車両用シート。
【請求項7】
請求項5または6に記載の車両用シートにおいて、前記折り返し部(62;73;87)の端縁は隙間なく前記カバー部材(18;63;66;76)に接触することを特徴とする車両用シート。
【請求項8】
請求項5または6に記載の車両用シートにおいて、前記折り返し部(62;73;87)の端縁は隙間なく前記カバー部材(18;63;66;76)に固着されることを特徴とする車両用シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、車両の前後方向に前記仕切り部材(55;67)から外れた位置で前記カバー部材(63;66)に取り付けられ、側方からの衝突荷重を前記シートフレーム(23)に伝達する荷重伝達部材(64;74)を備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用シートにおいて、前記仕切り部材(67)は前記荷重伝達部材(74)に一体に形成されることを特徴とする車両用シート。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の車両用シートにおいて、
車体フレーム(12)に固定されるスライドレール(13)に沿って前後方向に前記シートフレーム(23)を駆動する動力を生成する駆動源(31)と、
車両の前後方向に前記仕切り部材(55;67)から外れた位置で前記カバー部材(18;63;66)の外面に取り付けら、前記駆動源(31)の制御にあたって操作される操作部材(19a;19b)と、
備えることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートフレームと、シートフレームの外側に配置される音発生源と、少なくとも部分的にシートフレームを覆って、音発生源を覆い隠すカバー部材と、音発生源およびカバー部材の間に配置される仕切り部材とを備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートクッションに対してシートバックの前後位置を変更するリクライニング装置を備える車両用シートが開示される。リクライニング装置は、シートクッションのシートクッションパッドを支持するサイドフレームに取り付けられる電動モーターを備える。サイドフレームには、電動モーターを覆い隠すカバー部材が取り付けられる。カバー部材の外面には、リクライニング装置の制御にあたって乗員によって操作される操作部材が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-152348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カバー部材の内側には、側方から電動モーターに向き合わせられる中間部材が取り付けられる。中間部材はレゾネーターを備える。レゾネーターは、電動モーターに向き合いながら鉛直面に沿って広がる板材に形成された共鳴管を有する。レゾネーターの働きで電動モーターから水平方向に伝わる音は低減されることができる。しかしながら、こうした構造ではシートクッションに腰を下ろす乗員は期待されるとおりに静寂を体験することができない。
【0005】
本発明は、音発生源から生じる騒音から乗員をさらに良好に解放することができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、シートフレームと、前記シートフレームの外側に配置される音発生源と、少なくとも部分的に前記シートフレームを覆って、前記音発生源を覆い隠すカバー部材と、前記音発生源および前記カバー部材の間に配置される仕切り部材とを備える車両用シートにおいて、前記仕切り部材は、前記音発生源に向き合いながら鉛直面に沿って配置され、前記カバー部材との間に空間を形成する板形状の板状部と、前記板状部の端から前記音発生源側に水平方向に延び、前記カバー部材との間に空間を形成し、前記音発生源に向き合う位置で前記空間に通じる貫通孔を形成する立壁部とを有する車両用シートが提供される。
【0007】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記シートフレームは、シートクッションパッドを受け止め、前記音発生源を支持するサイドフレームを備え、前記立壁部は、前記音発生源よりも上方に配置される上立壁部を含む。
【0008】
第3側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記シートフレームは、シートクッションパッドを受け止め、前記音発生源を支持するサイドフレームを備え、前記立壁部は、前記音発生源よりも上方に位置する上立壁部と、前記音発生源よりも下方に位置する下立壁部とを含み、前記上立壁部の水平方向長さは前記下立壁部の水平方向長さよりも大きい。
【0009】
第4側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記シートフレームは、シートクッションパッドを受け止め、前記音発生源を支持するサイドフレームを備え、前記立壁部は、前記音発生源よりも上方に位置する上立壁部と、前記音発生源よりも下方に位置する下立壁部とを含み、前記上立壁部の端縁は、前記下立壁部の端縁に接する仮想鉛直面よりも水平方向に前記板状部から遠ざかる。
【0010】
第5側面によれば、第2~第4側面のいずれか1の構成に加えて、前記仕切り部材は、前記上立壁部の端縁から折り返されて、前記音発生源から遠ざかる方向に延びる折り返し部を有する。
【0011】
第6側面によれば、第5側面の構成に加えて、前記折り返し部は、孔なしの連続体に形成される。
【0012】
第7側面によれば、第5または第6側面の構成に加えて、前記折り返し部の端縁は隙間なく前記カバー部材に接触する。
【0013】
第8側面によれば、第5または第6側面の構成に加えて、前記折り返し部の端縁は隙間なく前記カバー部材に固着される。
【0014】
第9側面によれば、第1~第8側面のいずれか1の構成に加えて、車両用シートは、車両の前後方向に前記仕切り部材から外れた位置で前記カバー部材に取り付けられ、側方からの衝突荷重を前記シートフレームに伝達する荷重伝達部材を備える。
【0015】
第10側面によれば、第9側面の構成に加えて、前記仕切り部材は前記荷重伝達部材に一体に形成される。
【0016】
第11側面によれば、第1~第10側面のいずれか1の構成に加えて、車両用シートは、車体フレームに固定されるスライドレールに沿って前後方向に前記シートフレームを駆動する動力を生成する駆動源と、車両の前後方向に前記仕切り部材から外れた位置で前記カバー部材の外面に取り付けら、前記駆動源の制御にあたって操作される操作部材と備える。
【発明の効果】
【0017】
第1側面によれば、音発生源から水平方向に伝わる音は板状部で遮られる。音発生源から鉛直方向に伝わる音は立壁部で遮られる。貫通孔から空間に漏れる音は空間内で共鳴し音漏れは防止されることができる。こうして水平方向の音漏れだけでなく鉛直方向の音漏れも防止されることができる。車両用シートに座る乗員は音発生源から生じる騒音から解放されることができる。
【0018】
第2側面によれば、音発生源から上向きに伝わる音は上立壁部で遮られることから、シートクッションに腰を下ろす乗員は音発生源から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。
【0019】
第3側面によれば、音発生源から上向きに伝わる音は上立壁部で遮られる。音発生源から下向きに伝わる音は下立壁部で遮られる。下方から反射して上向きに伝わる音の発生は防止されることができる。シートクッションに腰を下ろす乗員は音発生源から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。
【0020】
第4側面によれば、音発生源から上向きに伝わる音は上立壁部で遮られる。音発生源から下向きに伝わる音は下立壁部で遮られる。下方から反射して上向きに伝わる音の発生は防止されることができる。シートクッションに腰を下ろす乗員は音発生源から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。
【0021】
第5側面によれば、折り返し部の働きで上立壁部の剛性は高められることができる。
【0022】
第6側面によれば、貫通孔から空間に漏れる音は折り返し部で遮られる。音発生源から上向きに伝わる音は効率的に低減されることができる。シートクッションに腰を下ろす乗員は音発生源から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。
【0023】
第7側面によれば、上立壁部とカバー部材との間に形成される空間は閉塞されることから、音発生源から上向きに伝わる音は効率的に低減されることができる。シートクッションに腰を下ろす乗員は音発生源から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。
【0024】
第8側面によれば、上立壁部とカバー部材との間に形成される空間は閉塞されることから、音発生源から上向きに伝わる音は効率的に低減されることができる。シートクッションに腰を下ろす乗員は音発生源から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。
【0025】
第9側面によれば、荷重伝達部材の配置にあたって仕切り部材および荷重伝達部材は前後方向にずれて配置されることから、外側に向かってカバー部材の張り出しの増加は回避されることができる。荷重伝達部材は良好にシートフレームに外側からの衝突荷重を伝達することができる。シートフレームから車体フレームに良好に衝突荷重は支持されることができる。
【0026】
第10側面によれば、荷重伝達部材および仕切り部材の配置にあたって分点数の増加は回避されることができる。車両用シートの組み立て作業は効率化されることができる。
【0027】
第11側面によれば、操作部材の配置にあたって操作部材および仕切り部材は前後方向にずれて配置されることから、外側に向かってカバー部材の張り出しの増加は回避されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用シートの全体構成を概略的に示す斜視図である。
図2】シートフレームの構造を概略的に示す斜視図である。
図3】シートクッションパッドおよびシートバックパッドの構成を概略的に示す斜視図である。
図4図3の4矢視図に相当し、シートクッションフレームの拡大左側面図である。
図5】左サイドカバーの拡大右側面図である。
図6】仕切り部材の拡大斜視図である。
図7図4の7-7線に沿った拡大断面図である。
図8図5に対応し、本発明の第2実施形態に係る車両用シートに組み込まれる左サイドカバーの拡大右側面図である。
図9図5に対応し、本発明の第3実施形態に係る車両用シートに組み込まれる左サイドカバーの拡大右側面図である。
図10図5に対応し、本発明の第4実施形態に係る車両用シートに組み込まれる左サイドカバーの拡大右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、前後、左右および上下は通常の着座姿勢(運転時の基本姿勢)で車両用シートに着座した乗員から見た方向をいう。
【0030】
図1は本発明の第1実施形態に係る車両用シートの全体構成を概略的に示す。車両用シート11は、例えば車両のモノコック構造の1構成要素として機能するフロアパネル12に結合されるスライドレール13と、前後方向に移動可能にスライドレール13に支持されて、乗員の臀部および大腿を受け止めるシートクッション14と、揺動軸線SX回りで前後方向に揺動可能にシートクッション14に連結されて、乗員の背中を受け止めるシートバック15と、シートバック15の上端に支持されて、乗員の頭を受け止めるヘッドレスト16とを備える。シートクッション14、シートバック15およびヘッドレスト16は個別に内部のパッドを包み込む表皮材14a、15a、16aを有する。表皮材15a、16aは、吊り込み糸17の働きでパッドの窪みに倣ってパッドの外面に密着する。パッドの詳細は後述される。車両用シート11は左座席用に構成される。車両用シート11が右座席用に用いられる場合には、車両用シート11で左右が入れ替えられればよい。
【0031】
シートクッション14はサイドカバー(カバー部材)18を備える。サイドカバー18には第1スイッチ(操作部材)19aおよび第2スイッチ(操作部材)19bが取り付けられる。第1スイッチ19aは、前後方向に長い摘まみで形成される。第1スイッチ19aが前方に操作されると、シートクッション14およびシートバック15は前方に移動する。第1スイッチ19aが後方に操作されると、シートクッション14およびシートバック15は後方に移動する。第1スイッチ19aが上方に操作されると、シートクッション14およびシートバック15は上方に移動する。第1スイッチ19aが下方に操作されると、シートクッション14およびシートバック15は下方に移動する。第2スイッチ19bは、上下方向に長い摘まみで形成される。第2スイッチ19bが前方に操作されると、シートバック15は揺動軸線SX回りで前方に揺動する。第2スイッチ19bが後方に操作されると、シートバック15は揺動軸線SX回りで後方に揺動する。
【0032】
ヘッドレスト16は、シートバック15の上端から上方に延びるヘッドレストピラー21に固定される。ヘッドレストピラー21は、上下方向に軸方向に変位自在にシートバック15に支持される。ヘッドレストピラー21の変位に応じてヘッドレスト16の高さは調整されることができる。
【0033】
図2に示されるように、車両用シート11は、パッドを支持するシートフレーム23を備える。シートフレーム23は、シートクッション14のパッドを支持するシートクッションフレーム24と、揺動軸線SX回りに揺動可能にシートクッションフレーム24に連結されて、シートバック15のパッドを支持するシートバックフレーム25と、長手方向に前後移動自在にスライドレール13に案内されて、スライドレール13上でシートクッションフレーム24を支持するベースフレーム26とを備える。シートクッションフレーム24はリンク機構27でベースフレーム26に連結される。リンク機構27は、左右方向に延びる水平軸線FH回りで回転自在にベースフレーム26に結合される一端と、水平軸線FHに平行に左右方向に延びる水平軸線SH回りで回転自在にシートクッションフレーム24に結合される他端とを有するリンク部材28を備える。リンク部材28は水平軸線FH回りでベースフレーム26に対してシートクッションフレーム24の上下移動を案内する。
【0034】
シートクッションフレーム24は、個々のスライドレール13に並んで延びるサイドフレーム24aと、シートクッション14の前端でサイドフレーム24a同士を接続するパンフレーム24bと、シートクッション14の後端でサイドフレーム24a同士を連結する連結パイプ24cとを備える。パンフレーム24bと連結パイプ24cとの間には複数のSばね(図示されず)が配置される。個々のSばねはジグザグ形状で前後に延びる。ジグザグ形状は、前後方向に延びる線材と、左右方向に延びる線材とが交互に組み合わせられて形成される。
【0035】
ベースフレーム26には電動式前後移動装置29が取り付けられる。電動式前後移動装置29は、ベースフレーム26に支持される電動モーター(駆動源)31を備える。電動モーター31は電力の供給に応じて動力を生成する。電力は第1スイッチ19aの操作に基づき供給される。電動モーター31の動力はスライドレール13に沿ってベースフレーム26の前後移動を引き起こす。
【0036】
シートクッションフレーム24のサイドフレーム24aには電動式上下移動装置32が取り付けられる。電動式上下移動装置32は、サイドフレーム24aに支持されて、リンク機構27に連結されるアクチュエーター33を備える。アクチュエーター33は、サイドフレーム24aの外側に配置されて、電力の供給に応じて動力を生成する電動モーター(音発生源)34と、電動モーター34の動力に応じて、水平軸線SH回りにサイドフレーム24aに対してリンク部材28の回転を引き起こす伝達機構35とを含む。伝達機構35は、例えば電動モーター34の駆動軸に固定される駆動ギアと、水平軸線SH回りでリンク部材28に固定される被動ギアとを含み、順番に相互に噛み合うギア群で構成される。電力は第1スイッチ19aの操作に基づき供給される。電動モーター34の動力は水平軸線FH回りでサイドフレーム24aの上下移動を引き起こす。
【0037】
シートクッションフレーム24には、連結パイプ24cの後上方で揺動軸線SXに同軸に支軸36が組み込まれる。支軸36は例えば中空の金属管から成形される。金属管は軸方向に高い剛性を有する。支軸36は左右のサイドフレーム24aに挟まれる。支軸36にシートバックフレーム25は支持される。
【0038】
シートバックフレーム25は、支軸36で個々のサイドフレーム24aの内側に連結される板金フレーム25aと、板金フレーム25aの上端を相互に接続するアッパーフレーム25bとを備える。板金フレーム25aは例えば1枚の金属板から成形される。アッパーフレーム25bは例えば金属管から成形される。アッパーフレーム25bには上下方向にスライド可能にヘッドレストピラー21を支持するヘッドレストピラーガイド37が固定される。
【0039】
シートバックフレーム25の板金フレーム25aには電動式リクライニング装置38が取り付けられる。電動式リクライニング装置38は、揺動軸線SX周りでシートバックフレーム25の板金フレーム25aに取り付けられるアクチュエーター39を備える。アクチュエーター39は、電力の供給に応じて動力を生成する電動モーター41と、電動モーター41の動力を揺動軸線SX回りの駆動力に変換する伝達機構42とで形成される。電動モーター41は電力の供給に応じて動力を生成する。電力は第2スイッチ19bの操作に基づき供給される。電動モーター41の動力はシートクッションフレーム24に対して揺動軸線SX回りでシートバックフレーム25の前後揺動を引き起こす。
【0040】
図3に示されるように、シートクッション14は、シートクッションフレーム24に支持されて、表皮材14aに包み込まれるシートクッションパッド44をさらに備える。シートバック15は、シートバックフレーム25に支持されて、表皮材15aに包み込まれるシートバックパッド45をさらに備える。シートクッションパッド44およびシートバックパッド45は例えば発泡ウレタンといった弾力性を有する素材から形成される。
【0041】
図4に示されるように、シートクッションフレーム24の左サイドフレーム24aは、揺動軸線SXに直交する鉛直面に沿って前後方向に延びる鉛直板46と、鉛直板46の上端および下端から折り曲げ成形され、前後方向に延びる湾曲域の効果で鉛直板46の剛性を高める曲げ域47a、47bとを有する。鉛直板46では上端および下端は前後方向(長手方向)にスライドレール13に並行に延びる。鉛直板46にアクチュエーター33は取り付けられる。曲げ域47a、47bは、鉛直板46の板面に接する空間を挟み込む上下対に形成される。曲げ域47aの前端および後端は曲げ域47bの前端および後端に剛体域48a、48bでそれぞれ接続される。こうして鉛直板46の剛性は高められる。剛体域48a、48bは鉛直板46から立ち上がる湾曲域で形成される。
【0042】
アクチュエーター33には雌カプラー49が取り付けられる。雌カプラー49は電動モーター34の上方に配置される。雌カプラー49には、サイドフレーム24aの外側でハーネス51に連結される雄カプラー52が嵌め込まれる。ハーネス51はサイドフレーム24aの内側から外側に向かって開口53を通過する。リンク機構27は、水平軸線FHに平行に左右に延びる水平軸線GH回りで回転自在にベースフレーム26に結合される一端と、水平軸線GHに平行に左右方向に延びる水平軸線TH回りで回転自在にシートクッションフレーム24に結合される他端とを有するリンク部材28bを備える。リンク部材28は前述のリンク部材28と協働して水平軸線FH回りでベースフレーム26に対してシートクッションフレーム24の上下移動を案内する。
【0043】
図5に示されるように、左サイドカバー18の内側には電動モーター34に向き合う位置で仕切り部材55が固定される。車両の前後方向に仕切り部材55から外れた位置で左サイドカバー18の内面には電動モーター31および電動モーター34の制御ユニット56が固定される。制御ユニット56に左サイドカバー18の外側から前述の第1スイッチ19aおよび第2スイッチ19bが接続される。制御ユニット56は、第1スイッチ19aの操作に応じて電動モーター31の動作を制御し、第2スイッチ19bの操作に応じて電動モーター34の動作を制御する。
【0044】
図6に示されるように、仕切り部材55は、前後に長い長方形の輪郭を有する板形状の板状部57と、板状部57の外周から連続し、板状部57から湾曲しながら板状部57の表面から垂直方向に立ち上がる立壁部58とを有する。図7に示されるように、板状部57は、電動モーター34を含むアクチュエーター33に向き合いながら鉛直面に沿って配置される。板状部57と左サイドカバー18との間には空間Smが形成される。板状部57には、電動モーター34に向き合う位置で空間Smに通じる1以上の貫通孔59が形成される。
【0045】
立壁部58は、電動モーター34よりも上方に配置される上立壁部58aと、電動モーター34よりも下方に配置される下立壁部58bとを含む。上立壁部58aおよび下立壁部58bは電動モーター34に外側から接する仮想鉛直面Vpを超えてサイドフレーム24aに接近する。ここでは、図6に示されるように、立壁部58は板状部57の外周に沿って途切れなく連続する。立壁部58は、板状部57から湾曲しながら内側に(アクチュエーター33側に)水平方向に延び、板状部57の表面(内向き面)に接する空間を囲む。
【0046】
図7に示されるように、上立壁部58aは左サイドカバー18との間に空間Suを形成する。空間Suは空間Smから連続する。空間Suおよび空間Smは共鳴空間を形成する。上立壁部58aには、電動モーター34に向き合う位置で空間Suに通じる1以上の貫通孔61が形成される。上立壁部58a以外の立壁部58は孔なしの連続体で形成される。ここでは、上立壁部58aの水平方向長さLuは下立壁部58bの水平方向長さLdよりも大きい。上立壁部58aの端縁は、下立壁部58bの端縁に接する仮想鉛直面よりも水平方向に板状部57から遠ざかる。
【0047】
図6に示されるように、仕切り部材55は、立壁部58の端縁から折り返されて、アクチュエーター33から遠ざかる方向に延びる折り返し部62を有する。折り返し部62は、端縁で左サイドカバー18の内面に全周にわたって隙間なく固着される。ただし、折り返し部62の端縁は、少なくとも左サイドカバー18の内面に全周にわたって隙間なく接触すればよい。折り返し部62は孔なしの連続体で形成される。折り返し部62はサイドカバー18および仕切り部材55で挟まれる空間を塞ぐ。こうして共鳴空間は区画される。
【0048】
図7に示されるように、左サイドカバー18は外方からサイドフレーム24aを覆う。アクチュエーター33は左サイドカバー18で覆い隠される。電動モーター34を含むアクチュエーター33から水平方向に伝わる音は板状部57で遮られる。音は貫通孔59から空間Smに進入する。貫通孔59から空間Smに漏れる音は空間Sm内で共鳴し音漏れは防止されることができる。ここで、貫通孔59は、相違する径を有する複数の貫通孔として形成されてもよい。個々の径ごとに固有の周波数で音は低減されることができる。
【0049】
アクチュエーター33から鉛直方向に伝わる音は上立壁部58aで遮られる。貫通孔61から空間Suに漏れる音は空間Su内で共鳴し音漏れは防止されることができる。こうして水平方向の音漏れだけでなく鉛直方向の音漏れも防止されることができる。車両用シート11に座る乗員はアクチュエーター33から生じる騒音から解放されることができる。アクチュエーター33から上向きに伝わる音は上立壁部58aで遮られることから、シートクッション14に腰を下ろす乗員はアクチュエーター33から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。ここで、貫通孔61は、相違する径を有する複数の貫通孔として形成されてもよい。個々の径ごとに固有の周波数で音は低減されることができる。
【0050】
本実施形態に係る車両用シート11では、立壁部58は、電動モーター34よりも上方に位置する上立壁部58aと、電動モーター34よりも下方に位置する下立壁部58bとを含み、上立壁部58aの水平方向長さLuは下立壁部58bの水平方向長さLdよりも大きい。電動モーター34から上向きに伝わる音は上立壁部58aで遮られる。電動モーター34から下向きに伝わる音は下立壁部58bで遮られる。下方から反射して上向きに伝わる音の発生は防止されることができる。シートクッション14に腰を下ろす乗員は電動モーター34から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。
【0051】
同様に、本実施形態では、上立壁部58aの端縁は、下立壁部58bの端縁に接する仮想鉛直面よりも水平方向に板状部から遠ざかる。したがって、電動モーター34から上向きに伝わる音は上立壁部58aで遮られる。電動モーター34から下向きに伝わる音は下立壁部58bで遮られる。下方から反射して上向きに伝わる音の発生は防止されることができる。シートクッション14に腰を下ろす乗員は電動モーター34から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。
【0052】
本実施形態では、仕切り部材55は、上立壁部58aの端縁から折り返されて、電動モーター34から遠ざかる方向に延びる折り返し部62を有する。折り返し部62の働きで上立壁部58aの剛性は高められることができる。しかも、折り返し部62は、孔なしの連続体に形成されることから、貫通孔61から空間Suに漏れる音は折り返し部62で遮られる。電動モーター34から上向きに伝わる音は効率的に低減されることができる。シートクッション14に腰を下ろす乗員は電動モーター34から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。
【0053】
本実施形態に係る車両用シート11では、折り返し部62の端縁は隙間なく左サイドカバー18に接触する。上立壁部58aと左サイドカバー18との間に形成される空間Suは閉塞されることから、電動モーター34から上向きに伝わる音は効率的に低減されることができる。シートクッション14に腰を下ろす乗員は電動モーター34から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。
【0054】
本実施形態では、折り返し部62の端縁は隙間なく左サイドカバー18に固着される。上立壁部58aと左サイドカバー18との間に形成される空間Suは閉塞されることから、電動モーター34から上向きに伝わる音は効率的に低減されることができる。シートクッション14に腰を下ろす乗員は電動モーター34から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。
【0055】
図8は本発明の第2実施形態に係る車両用シート11に組み込まれる左サイドカバー63の構造を概略的に示す。左サイドカバー63の内側には電動モーター34に向き合う位置で仕切り部材55が固定される。車両の前後方向に仕切り部材55から外れた位置で左サイドカバー63の内面には電動モーター31および電動モーター34の制御ユニット56が固定される。制御ユニット56に左サイドカバー63の外側から前述の第1スイッチ19aおよび第2スイッチ19bが接続される。制御ユニット56は、第1スイッチ19aの操作に応じて電動モーター31の動作を制御し、第2スイッチ19bの操作に応じて電動モーター34の動作を制御する。左サイドカバー63は前述の左サイドカバー18と同様に車両用シート11の左サイドフレーム24aに取り付けられる。その他、左サイドカバー63の構造は前述の左サイドカバー18と同様である。
【0056】
車両の前後方向に仕切り部材55から外れた位置で左サイドカバー63の内面には荷重伝達部材64が固定される。荷重伝達部材64は、シートバック15の揺動軸線SXの延長線上で左サイドカバー63の内側に配置される。荷重伝達部材64は支軸36の延長上で左サイドフレーム24aおよび左サイドカバー18の間に挟まれる。
【0057】
荷重伝達部材64は、揺動軸線SXに平行に広がって網目様に配置される壁64aを備える。壁64aは荷重伝達部材64の内側に複数の小室を仕切る。荷重伝達部材64は高強度の樹脂材料から成形されることができる。壁64aの働きで揺動軸線SXの軸方向に荷重伝達部材64の剛性は高められる。荷重伝達部材64は、車両用シート11の側方から左サイドカバー63に作用する衝突荷重を左サイドフレーム24aに伝達する。サイドフレーム24aはスライドレール13を通じてフロアパネル12に連結されることから、フロアパネル12、2つのサイドフレーム24aおよび支軸36で形成される剛体構造で側方からの衝突荷重は支持されることができる。支軸36の働きでフロアパネル12の剛性は高められることができる。
【0058】
図9は本発明の第3実施形態に係る車両用シート11に組み込まれる左サイドカバー66の構造を概略的に示す。左サイドカバー66の内側には電動モーター34に向き合う位置で仕切り部材67が固定される。仕切り部材67は、前後に長い長方形の輪郭を有する板形状の板状部68と、板状部68の外周から連続し、板状部68から湾曲しながら板状部68の表面から垂直方向に立ち上がる立壁部69とを有する。板状部68は、板状部57と同様に、電動モーター34を含むアクチュエーター33に向き合いながら鉛直面に沿って配置される。板状部68と左サイドカバー66との間には空間Smが形成される。板状部68には、電動モーター34に向き合う位置で空間Smに通じる1以上の貫通孔71が形成される。
【0059】
立壁部69は、立壁部58と同様に、電動モーター34よりも上方に配置される上立壁部69aと、電動モーター34よりも下方に配置される下立壁部69bとを含む。上立壁部69aおよび下立壁部69bは電動モーター34に外側から接する仮想鉛直面Vpを超えてサイドフレーム24aに接近する。ここでは、立壁部69は板状部68の外周に沿って途切れなく連続する。立壁部69は、板状部68から湾曲しながら内側に(アクチュエーター33側に)水平方向に延び、板状部68の表面(内向き面)に接する空間を囲む。
【0060】
上立壁部69aは、上立壁部58aと同様に、左サイドカバー66との間に空間Suを形成する。空間Suは空間Smから連続する。空間Suおよび空間Smは共鳴空間を形成する。上立壁部58aには、電動モーター34に向き合う位置で空間Suに通じる1以上の貫通孔72が形成される。上立壁部69a以外の立壁部69は孔なしの連続体で形成される。ここでは、上立壁部69aの水平方向長さLuは下立壁部69bの水平方向長さLdよりも大きい。上立壁部69aの端縁は、下立壁部69bの端縁に接する仮想鉛直面よりも水平方向に板状部68から遠ざかる。
【0061】
仕切り部材67は、仕切り部材55と同様に、立壁部69の端縁から折り返されて、アクチュエーター33から遠ざかる方向に延びる折り返し部73を有する。折り返し部73は、端縁で左サイドカバー66の内面に全周にわたって隙間なく固着される。ただし、折り返し部73の端縁は、少なくとも左サイドカバー66の内面に全周にわたって隙間なく接触すればよい。折り返し部73は孔なしの連続体で形成される。折り返し部73はサイドカバー66および仕切り部材67で挟まれる空間を塞ぐ。こうして共鳴空間は形成される。
【0062】
左サイドカバー18と同様に、左サイドカバー66は外方からサイドフレーム24aを覆う。アクチュエーター33は左サイドカバー66で覆い隠される。電動モーター34を含むアクチュエーター33から水平方向に伝わる音は板状部68で遮られる。音は貫通孔71から空間Smに進入する。貫通孔71から空間Smに漏れる音は空間Sm内で共鳴し音漏れは防止されることができる。ここで、貫通孔71は、相違する径を有する複数の貫通孔として形成されてもよい。個々の径ごとに固有の周波数で音は低減されることができる。
【0063】
アクチュエーター33から鉛直方向に伝わる音は上立壁部69aで遮られる。貫通孔72から空間Suに漏れる音は空間Su内で共鳴し音漏れは防止されることができる。こうして水平方向の音漏れだけでなく鉛直方向の音漏れも防止されることができる。車両用シート11に座る乗員はアクチュエーター33から生じる騒音から解放されることができる。アクチュエーター33から上向きに伝わる音は上立壁部69aで遮られることから、シートクッション14に腰を下ろす乗員はアクチュエーター33から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。ここで、貫通孔72は、相違する径を有する複数の貫通孔として形成されてもよい。個々の径ごとに固有の周波数で音は低減されることができる。
【0064】
車両の前後方向に仕切り部材67から外れた位置で左サイドカバー66の内面には電動モーター31および電動モーター34の制御ユニット56が固定される。制御ユニット56に左サイドカバー66の外側から前述の第1スイッチ19aおよび第2スイッチ19bが接続される。制御ユニット56は、第1スイッチ19aの操作に応じて電動モーター31の動作を制御し、第2スイッチ19bの操作に応じて電動モーター34の動作を制御する。左サイドカバー66は前述の左サイドカバー18と同様に車両用シート11の左サイドフレーム24aに取り付けられる。その他、左サイドカバー66の構造は前述の左サイドカバー18と同様である。
【0065】
車両の前後方向に仕切り部材55から外れた位置で左サイドカバー66の内面には荷重伝達部材74が固定される。荷重伝達部材74は、シートバック15の揺動軸線SXの延長線上で左サイドカバー66の内側に配置される。荷重伝達部材74は支軸36の延長上で左サイドフレーム24aおよび左サイドカバー66の間に挟まれる。
【0066】
荷重伝達部材74は仕切り部材67から連続する。すなわち、荷重伝達部材74は仕切り部材67に一体化される。仕切り部材67および荷重伝達部材74は1部材として高強度の樹脂材料から成形されることができる。壁74aの働きで揺動軸線SXの軸方向に荷重伝達部材74の剛性は高められる。荷重伝達部材74は、車両用シート11の側方から左サイドカバー66に作用する衝突荷重を左サイドフレーム24aに伝達する。サイドフレーム24aはスライドレール13を通じてフロアパネル12に連結されることから、フロアパネル12、2つのサイドフレーム24aおよび支軸36で形成される剛体構造で側方からの衝突荷重は支持されることができる。支軸36の働きでフロアパネル12の剛性は高められることができる。
【0067】
図10は第4実施形態に係る車両用シート11に組み込まれる左サイドカバー76の構造を概略的に示す。左サイドカバー76の内側には電動モーター34に向き合う位置で仕切り部材77が固定される。仕切り部材77は、アクチュエーター33に向き合いながら鉛直面に沿って広がる板壁78に形成される貫通孔79で外空間に接続される第1共鳴空間81と、左サイドカバー76に向き合う板壁82に形成される貫通孔83で外空間に接続される第2共鳴空間84とを備えてもよい。アクチュエーター33から生じる騒音は第1共鳴空間81で低減されることができる。路面から反射するロードノイズは第2共鳴空間84で低減されることができる。シートクッション14に腰を下ろす乗員は電動モーター34から発生する音および走行時のロードノイズに拘わらず良好に静寂を体験することができる。
【0068】
仕切り部材77は、板壁78の外周から連続し、板壁78から湾曲しながら板壁78の表面から垂直方向に立ち上がる立壁部85を有する。板壁78は、板状部57と同様に、電動モーター34を含むアクチュエーター33に向き合いながら鉛直面に沿って配置される。立壁部85は、立壁部58と同様に、電動モーター34よりも上方に配置される上立壁部85aと、電動モーター34よりも下方に配置される下立壁部85bとを含む。上立壁部85aおよび下立壁部85bは電動モーター34に外側から接する仮想鉛直面Vpを超えてサイドフレーム24aに接近する。ここでは、立壁部85は板壁78の外周に沿って途切れなく連続する。立壁部85は、板壁78から湾曲しながら内側に(アクチュエーター33側に)水平方向に延び、板壁78の表面(内向き面)に接する空間を囲む。
【0069】
上立壁部85aは、上立壁部58aと同様に、左サイドカバー76との間に空間Suを形成する。空間Suは第1共鳴空間81から連続する。空間Suおよび第1共鳴空間81は1つの共鳴空間を形成する。上立壁部85aには、電動モーター34に向き合う位置で空間Suに通じる1以上の貫通孔86が形成される。上立壁部85a以外の立壁部85は孔なしの連続体で形成される。ここでは、上立壁部85aの水平方向長さLuは下立壁部85bの水平方向長さLdよりも大きい。上立壁部85aの端縁は、下立壁部85bの端縁に接する仮想鉛直面よりも水平方向に板壁78から遠ざかる。
【0070】
仕切り部材77は、仕切り部材55と同様に、立壁部85の端縁から折り返されて、アクチュエーター33から遠ざかる方向に延びる折り返し部87を有する。折り返し部87は、端縁で左サイドカバー76の内面に全周にわたって隙間なく固着される。ただし、折り返し部87の端縁は、少なくとも左サイドカバー76の内面に全周にわたって隙間なく接触すればよい。折り返し部87は孔なしの連続体で形成される。折り返し部87は左サイドカバー76および仕切り部材77で挟まれる空間を塞ぐ。こうして共鳴空間は形成される。
【0071】
左サイドカバー18と同様に、左サイドカバー76は外方からサイドフレーム24aを覆う。アクチュエーター33は左サイドカバー76で覆い隠される。電動モーター34を含むアクチュエーター33から水平方向に伝わる音は板壁78で遮られる。音は貫通孔79から第1共鳴空間81に進入する。貫通孔79から第1共鳴空間81に漏れる音は第1共鳴空間81内で共鳴し音漏れは防止されることができる。ここで、貫通孔79は、相違する径を有する複数の貫通孔として形成されてもよい。個々の径ごとに固有の周波数で音は低減されることができる。
【0072】
アクチュエーター33から鉛直方向に伝わる音は上立壁部85aで遮られる。貫通孔86から空間Su(共鳴空間)に漏れる音は空間Su内で共鳴し音漏れは防止されることができる。こうして水平方向の音漏れだけでなく鉛直方向の音漏れも防止されることができる。車両用シート11に座る乗員はアクチュエーター33から生じる騒音から解放されることができる。アクチュエーター33から上向きに伝わる音は上立壁部85aで遮られることから、シートクッション14に腰を下ろす乗員はアクチュエーター33から発生する音に拘わらず静寂を体験することができる。ここで、貫通孔86は、相違する径を有する複数の貫通孔として形成されてもよい。個々の径ごとに固有の周波数で音は低減されることができる。
【符号の説明】
【0073】
11…車両用シート、12…車体フレーム(フロアパネル)、13…スライドレール、18…カバー部材(サイドカバー)、19a…操作部材(第1スイッチ)、19b…操作部材(第2スイッチ)、23…シートフレーム、24a…サイドフレーム、31…駆動源(電動モーター)、34…音発生源(電動モーター)、44…シートクッションパッド、55…仕切り部材、57…板状部、58…立壁部、58a…上立壁部、58b…下立壁部、61…貫通孔、62…折り返し部、63…カバー部材(左サイドカバー)、64…荷重伝達部材、66…カバー部材(左サイドカバー)、67…仕切り部材、68…板状部、69…立壁部、69a…上立壁部、69b…下立壁部、72…貫通孔、73…折り返し部、74…荷重伝達部材、76…カバー部材(左サイドカバー)、77…仕切り部材、78…板状部(板壁)、85…立壁部、85a…上立壁部、85b…下立壁部、86…貫通孔、87…折り返し部、Ld…(下立壁部の)水平方向長さ、Lu…(上立壁部の)水平方向長さ、Sm…(板状部に接する)空間、Su…(上立壁部に接する)空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10