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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】電動車両の操作システム
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/00 20060101AFI20231013BHJP
   A61G 5/04 20130101ALI20231013BHJP
   B62J 6/16 20200101ALI20231013BHJP
   B62K 23/02 20060101ALI20231013BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B62B5/00 L
A61G5/04 703
B62J6/16
B62K23/02
B62B5/00 Z
B62B3/00 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020023555
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127029
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ラージャー ゴピナート
(72)【発明者】
【氏名】和田 昌祥
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-154312(JP,A)
【文献】実開昭58-180382(JP,U)
【文献】特開2001-025101(JP,A)
【文献】特開平07-010061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/00
A61G 5/04
B62J 6/16
B62K 23/02
B62B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両を制御するように操作可能に構成され、かつハンドル軸線に沿って延びるハンドルを有する操作装置と、
前記電動車両の走行動作に用いられる電動機を有する駆動装置と、
前記操作装置の操作に応じて前記駆動装置を制御可能とするように構成される制御装置と
を備え、
前記ハンドルが、ユーザによって把持可能に構成されるグリップを有する、電動車両の操作システムであって、
前記操作装置が、前記グリップに対して前記ハンドルの延在方向の一方側に配置されるスイッチ部材と、前記スイッチ部材の操作を検出可能に構成される操作検出器とを有するスイッチ機構を含み、
前記スイッチ部材が、前記ハンドルの周方向にて前記ハンドルの外周に沿って延びるように湾曲するベルト部と、前記ハンドルの外周から離れるように前記ベルト部から突出する操作突起部と、前記スイッチ部材を前記ハンドルに固定するように構成される固定部とを有し、
前記操作突起部及び前記固定部が、前記ハンドルの周方向に互いに間隔を空けるように前記ハンドルの周方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置され、かつ前記ハンドル軸線に対して車両上下方向の一方及び他方にそれぞれ配置され、
前記ベルト部が、前記ハンドルの外周の一部を前記電動車両の後方から覆うと共に前記操作突起部及び前記固定部を連結するように延びており、
前記操作検出器が、前記スイッチ部材のベルト部と接触可能となるように前記ハンドルの外周に配置され、かつ前記ハンドルの周方向にて前記操作突起部及び前記固定部間における前記操作突起部寄りに配置され、
前記制御装置は、前記操作検出器によって検出される前記スイッチ部材の操作に応じて前記駆動装置を制御可能とするように構成されている、電動車両の操作システム。
【請求項2】
前記操作検出器が、前記ハンドルの周方向にて前記操作突起部と隣接するように配置されている、請求項1に記載の電動車両の操作システム。
【請求項3】
前記スイッチ部材が、前記ベルト部から前記操作検出器に向かって突出する押し部を有し、
前記操作検出器は、前記押し部によって押されたときに、前記スイッチ部材の操作を検出するように構成されている、請求項1又は2に記載の電動車両の操作システム。
【請求項4】
前記ハンドルが、前記ハンドルの外周から突出するように形成される2つのガイド部を有し、
前記2つのガイド部が、前記ハンドルの延在方向にて前記スイッチ部材のベルト部の両側に隣接している、請求項1~3のいずれか一項に記載の電動車両の操作システム。
【請求項5】
前記ハンドルの延在方向の一方端部が車両幅方向の中央を向き、かつ前記ハンドルの延在方向の他方端部が車両幅方向の外方を向く、請求項1~4のいずれか一項に記載の電動車両の操作システム。
【請求項6】
前記操作装置が、その車両幅方向の中央部分に配置される本体ケースと、前記電動車両のブレーキを解除するように操作可能に構成されるブレーキ解除操作機構とを有し、
前記ハンドルの延在方向の一方側部分が前記本体ケースによって支持され、
前記ブレーキ解除操作機構が前記本体ケースに配置されている、請求項5に記載の電動車両の操作システム。
【請求項7】
前記グリップが、前記スイッチ部材に対して前記ハンドルの延在方向の他方側に位置し、
前記操作装置が、ユーザによって前記グリップが把持されたことを検出可能に構成される把持検出器を有し、
前記制御装置は、ユーザによって前記グリップが把持されたことを前記把持検出器が検出している間に、前記駆動装置の電動機を作動可能とするように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の電動車両の操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル軸線に沿って延びるハンドルと、電動車両の走行動作に用いられる駆動装置とを有し、ハンドルの操作に応じて駆動装置を制御可能とするように構成される電動車両の操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動車椅子、電動カート等の電動車両においては、走行動作に用いられる駆動装置を制御するために、車両幅方向に互いに間隔を空けた一対のハンドルを有する操作装置が設けられることがある。電動車両を使用するユーザは、典型的には、その両手によってこれらのハンドルを把持した状態でハンドルを操作し、電動車両は、この操作に応じた駆動装置の制御によって種々の走行動作可能となる。
【0003】
さらに、操作装置は、より多くの種類の走行動作が可能となるように、ハンドルとは別に、付随的な操作手段、例えば、スイッチを有することがある。スイッチは、ハンドルを把持したユーザの手によって操作可能であることが好ましい。そのため、多くの場合、スイッチはハンドルの周辺に配置される。
【0004】
このようなハンドル及びスイッチを有する操作装置の一例としては、桿状部材であるハンドルグリップのグリップ鍔に添ってハンドルグリップ上に設けられる操作補助装置が挙げられる。このような操作補助装置は、グリップ鍔に添って鍔状に形成される装置本体を有し、装置本体の周曲面である操作面に、指先によって操作可能な操作スイッチが配置される。このような操作スイッチは、プッシュスイッチ、タクタイルスイッチ、又は方向スイッチとなっている。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-184870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した操作装置の一例のように、プッシュスイッチ、タクタイルスイッチ、又は方向スイッチであるスイッチは、小さな力によって操作された場合であっても、オン状態になり得る。そのため、ユーザ、特に、ハンドルを把持したユーザの手がスイッチに誤って僅かに接触しただけでも、ユーザの意図に反してスイッチがオン状態になり得る。すなわち、スイッチが誤操作され易くなっており、さらには、操作装置が誤操作され易くなっている。
【0007】
スイッチの誤操作を防ぐためには、スイッチにおいて、オン状態にするために必要な力をより大きく設定することが考えられる。しかしながら、電動車両が電動車椅子、電動カート等である場合、このような電動車両を使用するユーザは、主に、力の弱い高齢者等である。このようなユーザが大きな力によってスイッチを操作することは難いことが多い。この場合、操作装置を効率的に操作できないおそれがある。
【0008】
このような実情を鑑みると、電動車両の操作システムにおいては、効率的な操作を可能とし、かつ誤操作を効率的に防止可能とすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、一態様に係る電動車両の操作システムは、電動車両を制御するように操作可能に構成され、かつハンドル軸線に沿って延びるハンドルを有する操作装置と、前記電動車両の走行動作に用いられる電動機を有する駆動装置と、前記操作装置の操作に応じて前記駆動装置を制御可能とするように構成される制御装置とを備え、前記ハンドルが、ユーザによって把持可能に構成されるグリップを有する、電動車両の操作システムであって、前記操作装置が、前記グリップに対して前記ハンドルの延在方向の一方側に配置されるスイッチ部材と、前記スイッチ部材の操作を検出可能に構成される操作検出器とを有するスイッチ機構を含み、前記スイッチ部材が、前記ハンドルの周方向にて前記ハンドルの外周に沿って延びるように湾曲するベルト部と、前記ハンドルの外周から離れるように前記ベルト部から突出する操作突起部と、前記スイッチ部材を前記ハンドルに固定するように構成される固定部とを有し、前記操作突起部及び前記固定部が、前記ハンドルの周方向に互いに間隔を空けるように前記ハンドルの周方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置され、かつ前記ハンドル軸線に対して車両上下方向の一方及び他方にそれぞれ配置され、前記ベルト部が、前記ハンドルの外周の一部を前記電動車両の後方から覆うと共に前記操作突起部及び前記固定部を連結するように延びており、前記操作検出器が、前記スイッチ部材のベルト部と接触可能となるように前記ハンドルの外周に配置され、かつ前記ハンドルの周方向にて前記操作突起部及び前記固定部間における前記操作突起部寄りに配置され、前記制御装置は、前記操作検出器によって検出される前記スイッチ部材の操作に応じて前記駆動装置を制御可能とするように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
一態様に係る電動車両の操作システムにおいては、効率的な操作を行うことができ、かつ誤操作を効率的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る操作システムを有する電動車両を概略的に示す側面図である。
図2図2は、一実施形態に係る操作システムにおける操作装置の車両幅方向の片側部分及び中央部分を概略的に示す背面図である。
図3図3は、一実施形態に係る操作装置の片側部分を概略的に示す斜視図である。
図4図4は、一実施形態に係る操作装置の片側部分におけるハンドル及びその周辺部分を、グリップを取り外した状態で概略的に示す側面図である。
図5図5は、一実施形態に係る操作装置におけるスイッチ機構のスイッチ部材を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態に係る電動車両の操作システムについて以下に説明する。本実施形態においては、図1に示すように、操作システム10によって操作される電動車両1が、電動車椅子の機能を備えた電動歩行補助車となっている。この電動車両1は、電動歩行補助者として用いられるプッシュモード(図1にて仮想線により示す)と、電動車椅子として用いられるドライブモード(図1にて実線により示す)とに変形可能である。特に、電動車両1は、ドライブモードにて1人乗り電動車椅子として用いられるように構成することができる。
【0013】
しかしながら、電動車両はこれに限定されない。例えば、電動車両は、プッシュモードにてショッピングカート、台車等として用いられるように構成することができる。電動車両は、ドライブモードにて電動カート等として用いられるように構成することができる。電動車両は、プッシュモード及びドライブモードの一方のみで用いられるように構成することもできる。以下においては、電動車両を必要に応じて単に「車両」と呼ぶ。
【0014】
なお、本実施形態の説明に用いられる図面においては、車両を基準とした方向を次のように示す。図1図3、及び図4においては、車両前方及び車両後方を、それぞれ片側矢印F及び片側矢印Bによって示す。図2図4においては、車両の前進方向を向いた場合の左側及び右側を、それぞれ片側矢印L及び片側矢印Rによって示す。そのため、車両幅方向は、片側矢印L及び片側矢印Rによって示される。さらに、図1図4においては、車両上方及び車両下方を、それぞれ片側矢印U及び片側矢印Dによって示す。
【0015】
「操作システムの概略」
図1図5を参照して、本実施形態に係る操作システム10の概略を説明する。すなわち、操作システム10は概略的には次のように構成されている。図1図4に示すように、操作システム10は、車両1を制御するように操作可能に構成されるハンドル21を有する操作装置20を含む。なお、図1図4においては、2つのハンドル21のうち一方のみが示されているが、操作装置20は2つのハンドル21を含む。各ハンドル21は、ハンドル軸線21aに沿って延びる。2つのハンドル21、すなわち、左右のハンドル21は、車両幅方向に互いに間隔を空けて配置される。各ハンドル21は、ユーザによって把持可能に構成されるグリップ21bを有する。2つのハンドル21は、車両幅方向にて略対称に構成することができる。
【0016】
本実施形態においては、このような2つのハンドル21のそれぞれが、以下に述べるような特徴的な構成を有する場合を説明する。以下の説明においては、2つのハンドル21について言及しない限り、2つのハンドル21のうち車両幅方向の片側のハンドル21を代表的に説明する。しかしながら、2つのハンドル21の一方のみが、上記特徴的な構成を有することもできる。
【0017】
図1に示すように、操作システム10は、車両1の走行動作に用いられる電動機31を有する駆動装置30を含む。操作システム10はまた、操作装置20の操作に応じて駆動装置30を制御可能とするように構成される制御装置40を有する。
【0018】
図2図4に示すように、操作装置20は、スイッチ部材23及び操作検出器24を有するスイッチ機構22を含む。スイッチ部材23は、グリップ21bに対してハンドル21の延在方向の一方側に配置される。操作検出器24は、スイッチ部材23の操作を検出可能に構成される。
【0019】
図2図5に示すように、スイッチ部材23は、ハンドル21の周方向にてハンドル21の外周に沿って延びるように湾曲するベルト部23aを有する。スイッチ部材23は、ハンドル21の外周から離れるようにベルト部23aから突出する操作突起部23bを有する。さらに、スイッチ部材23は、スイッチ部材23をハンドル21に固定するように構成される固定部23cを有する。
【0020】
操作突起部23b及び固定部23cは、ハンドル21の周方向に互いに間隔を空けるようにハンドル21の周方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置される。操作突起部23b及び固定部23cは、ハンドル軸線21aに対して車両上下方向の一方及び他方にそれぞれ配置される。ベルト部23aは、ハンドル21の外周の一部を車両後方から覆うと共に操作突起部23b及び固定部23cを連結するように延びる。
【0021】
図3及び図4に示すように、操作検出器24は、スイッチ部材23のベルト部23aと接触可能となるようにハンドル21の外周に配置される。操作検出器24は、ハンドル21の周方向にて操作突起部23b及び固定部23c間における操作突起部23b寄りに配置される。制御装置40(図1に示す)は、操作検出器24によって検出されるスイッチ部材23の操作に応じて駆動装置30(図1に示す)を制御可能とするように構成されている。
【0022】
さらに、操作システム10は概略的には次のように構成することができる。特に図3及び図4を参照すると、操作検出器24が、ハンドル21の周方向にて操作突起部23bと隣接するように配置されている。図4及び図5に示すように、スイッチ部材23が、ベルト部23aから操作検出器24に向かって突出する押し部23dを有する。操作検出器24は、押し部23dによって押されたときに、スイッチ部材23の操作を検出するように構成されている。
【0023】
図2図4に示すように、ハンドル21は、その外周から突出するように形成される2つのガイド部21cを有する。2つのガイド部21cは、ハンドル21の延在方向にてスイッチ部材23のベルト部23aの両側に隣接している。ハンドル21の延在方向の一方端部が車両幅方向の中央を向き、かつハンドル21の延在方向の他方端部が車両幅方向の外方に向く。図2に示すように、操作装置20は、その車両幅方向の中央部分に配置される本体ケース25を有する。操作装置20は、車両1のブレーキを解除するように操作可能に構成されるブレーキ解除操作機構26を有する。ハンドル21の延在方向の一方側部分が本体ケース25によって支持されている。ブレーキ解除操作機構26は本体ケース25に配置されている。
【0024】
しかしながら、本体ケースを操作装置の車両幅方向の側方部分に配置することができる。ハンドルの延在方向の他方側部分を本体ケースによって支持することもできる。ハンドルの延在方向の一方端部は車両幅方向の中央を向くことができ、かつハンドルの延在方向の他方端部が車両幅方向の外方を向くこともできる。この場合、操作装置が、2つのハンドルの一方側部分をそれぞれ支持する2つの本体ケースを有するか、又は本体ケースが、2つのハンドルの一方側部分をそれぞれ支持する2つの部分を有するとよい。
【0025】
図2及び図3に示すように、グリップ21bは、スイッチ部材23に対してハンドル21の延在方向の他方側に位置する。操作装置20は、ユーザによってグリップ21bが把持されたことを検出可能に構成される把持検出器27を有する。制御装置40(図1に示す)は、ユーザによってグリップ21bが把持されたことを把持検出器27が検出している間に、駆動装置30の電動機31(図1に示す)を作動可能とするように構成されている。
【0026】
「電動車両の詳細」
図1を参照すると、車両1は詳細には次のように構成することができる。車両1は、駆動装置30によって走行動作可能に構成される移動ベース2を有する。移動ベース2は、前側ベース3と、この前側ベース3に対して車両後方に位置する後側ベース4とを有する。前側ベース3は、車両幅方向に互いに間隔を空けた左右の前輪3aを有する。後側ベース4は、車両幅方向に互いに間隔を空けた左右の後輪4aを有する。
【0027】
後側ベース4には電動機31が配置され、電動機31は、左右の後輪4aをそれぞれ駆動可能に構成される左右のモータ31となっている。左右の後輪4aは、左右のモータ31によってそれぞれ独立して駆動可能になっている。車両1は、左右のモータ31がそれらの回転を防ぐように停止した状態で、ブレーキを掛けられるようになっている。さらに、移動ベース2には制御装置40が配置されている。特に明確に図示はしないが、制御装置40は、操作装置20及び左右のモータ31と電気的に接続されている。
【0028】
図1の両側矢印K1により示すように、移動ベース2は、前輪3a及び後輪4a間のホイールベースを伸縮可能とするように、前側及び後側ベース3,4を互いに対して相対的に移動可能とするように構成されている。すなわち、移動ベース2は、ホイールベースを拡大した拡大状態(図1にて実線により示す)と、拡大状態よりもホイールベースを縮小した縮小状態(図1にて仮想線により示す)との間で変化可能に構成される。
【0029】
車両1は、移動ベース2上に配置されるシート5を有する。シート5は、着座面6aを有する着座部6を含む。図1の両側矢印K2により示すように、シート5は、着座位置と退避位置との間で移動可能に構成される。具体的には、図1にて実線により示すように、シート5は、着座位置にて着座面6aを車両上方に向けるように位置する。図1にて仮想線により示すように、シート5は、退避位置にて着座部6を着座位置よりも車両前方に退避させるように位置する。
【0030】
車両1は、シート5の着座面6aに対応する背もたれとして用いることができるように構成される背板7を有する。背板7もまた移動ベース2上に配置される。図1の両側矢印K3により示すように、背板7は、起立位置と倒伏位置との間で移動可能に構成される。具体的には、図1にて実線により示すように、背板7は、起立位置にて着座面6aに対して車両後方かつ車両上方に位置する。また、図1にて仮想線により示すように、背板7は、倒伏位置にて、起立位置に対して車両前方に位置する。
【0031】
車両1は、後側ベース4から車両上方に向かって立ち上がるフレーム8を有する。フレーム8は、車両前後方向にて車両1の後端寄りに位置する。シート5及び背板7は、フレーム8に対して車両前方に位置する。さらに、シート5は、着座位置と退避位置との間で移動可能となるようにフレーム8に旋回可能に取り付けられる。背板7は、起立位置と倒伏位置との間で移動可能となるようにフレーム8に旋回可能に取り付けられる。
【0032】
フレーム8は、その車両上下方向の上端寄りに位置する支柱8aを有する。操作装置20の本体ケース25は、支柱8aによって支持されている。さらに、本体ケース25は、支柱8aの車両上下方向の上端に取り付けられるとよい。
【0033】
図1にて実線により示すように、車両1のドライブモードでは、移動ベース2は拡大状態にある。さらに、ドライブモードでは、シート5及び背板7をそれぞれ着座位置及び起立位置に配置することができる。図1にて仮想線により示すように、車両1のプッシュモードでは、移動ベース2は縮小状態にある。さらに、プッシュモードでは、シート5及び背板7をそれぞれ退避位置及び倒伏位置に配置することができる。特に、車両1がドライブモード及びプッシュモード間で変化するときに、拡大状態及び縮小状態間における移動ベース2の変化と、着座位置及び退避位置間におけるシート5との移動とが連動するとよい。
【0034】
「操作装置の詳細」
図1図5を参照すると、操作装置20は詳細には次のように構成することができる。図2及び図3に示すように、ハンドル21は、ハンドル軸線21aに沿って延びるハンドルシャフト21dを有する。ハンドルシャフト21dは略直線形状に形成されている。しかしながら、ハンドルシャフト21dの形状はこれに限定されない。ハンドルシャフト21dは、少なくとも1つの湾曲部を有するように形成することもできる。グリップ21bは、ハンドル21の延在方向の他方端部寄りに位置する。グリップ21bは、ハンドルシャフト21dの延在方向の他方側部分における外周を覆うように配置される。ハンドルシャフト21dの延在方向の一方側部分は、本体ケース25内に配置される。
【0035】
特に図3の両側矢印Wに示すように、ハンドルシャフト21dは、グリップ21bを車両前後方向に揺動可能とするように、本体ケース25に旋回軸線21e周りに旋回可能に支持されている。2つのグリップ21bの揺動量に応じて、車両1(図1に示す)の前進、後退、左旋回、右旋回等を行うように左右のモータ31(図1に示す)が制御される。
【0036】
図2図4に示すように、ハンドル21は、スイッチ部材23及び操作検出器24を取り付け可能とするように構成される取付部材21fを有する。取付部材21fは、ハンドル21の延在方向にて、グリップ21bと本体ケース25との間に配置される。取付部材21fは、ハンドルシャフト21dの外周に沿って配置される。
【0037】
2つのガイド部21cは取付部材21fに設けられる。2つのガイド部21cは、ハンドル21の延在方向に沿って並んでいる。各ガイド部21cは、ハンドル21の周方向にて操作突起部23b及び固定部23c間における操作突起部23b寄りに配置される。さらに、各ガイド部21cは、ハンドル21の周方向にて操作検出器24よりも固定部23c寄りに位置する。
【0038】
図2図4に示すように、スイッチ部材23は、ハンドルシャフト21dの周囲に配置される。具体的には、スイッチ部材23は、取付部材21f上に配置される。スイッチ部材23の固定部23cは、取付部材21fに固定される。
【0039】
特に図4に示すように、スイッチ部材23の操作突起部23b及び固定部23cは、ハンドル軸線21aに対して車両上方及び下方にそれぞれ配置される。しかしながら、操作突起部及び固定部は、ハンドル軸線に対して車両下方及び上方にそれぞれ配置することもできる。さらに、操作突起部23b及び固定部23cは、ハンドル軸線21aに対して車両前方及び後方にそれぞれ配置される。
【0040】
スイッチ部材23のベルト部23aは、ハンドル軸線21aに沿った方向で見て、略弓形状に形成される。ベルト部23aは、操作突起部23bを自由支持とし、かつ固定部23cを固定した片持ち状態になっている。ベルト部23aは弾性変形可能になっている。スイッチ部材23の押し部23dは、操作検出器24に対応するように配置されている。ベルト部23aからの操作突起部23bの最大突出量Mは、約1cm以上となっている。最大突出量Mは、ハンドル軸線21aからハンドル21の外周に向かう方向の最大長さとなっている。なお、この最大突出量は約1cm未満とすることもできる。また、最大突出量は、車両上下方向の最大長さとすることもできる。
【0041】
図3及び図4に示すように、スイッチ機構22の操作検出器24はプッシュスイッチ24となっている。しかしながら、操作検出器は、プッシュスイッチ以外とすることもできる。操作検出器24は、ハンドル軸線21aに対して車両上方に配置される。しかしながら、操作検出器は、ハンドル軸線に対して車両下方に配置することができる。操作検出器24は、ハンドル軸線21aに対して車両前方に配置される。操作検出器24は、ハンドル21の周方向にて操作突起部23bと各ガイド部21cとの間に配置される。操作検出器24は取付部材21fに取り付けられている。特に図示はしないが、操作検出器24は制御装置40と電気的に接続されている。
【0042】
このようなスイッチ機構22においては、ユーザが、その指によってハンドル21の周方向の他方から同一方に向かって操作突起部23bを押すようにスイッチ部材23を操作したときに、スイッチ部材23の押し部23dが操作検出器24を押す。操作検出器24は、スイッチ部材23の押し部23dによって所定の押込量以上押されたときに信号を制御装置40に送る。制御装置40は、この操作検出器24からの信号に応じて、駆動装置30の電動機31の出力を増加させるように制御する。この制御は、車両1を加速させるためのブースト制御である。しかしながら、制御装置は、操作検出器からの信号に応じて、ブースト制御以外の車両の駆動制御を行うこともできる。
【0043】
図1に示すように、ブレーキ解除操作機構26は、車両前方を向く本体ケース25の前面25aに配置されている。ブレーキ解除操作機構26は、ユーザが、車両1にブレーキを掛けたブレーキ作動状態からブレーキを解除したブレーキ解除状態に切り換えるために用いられるツマミ部26aを有する。特に図示はしないが、ブレーキ解除操作機構26は制御装置40と電気的に接続されている。ブレーキ解除操作機構26は、ツマミ部26aの切換に基づく信号を制御装置40に送る。制御装置40は、この信号に応じて、ブレーキ作動状態とブレーキ解除状態とを切り換える。
【0044】
図2図4に示すように、把持検出器27は、いわゆるグリップセンサ27となっている。かかるグリップセンサ27は、静電容量式、光学式、感圧式、スイッチレバー式等とすることができる。把持検出器27は、グリップ21bの外周表面上に配置される。しかしながら、把持検出器は、グリップの内部に配置することもできる。特に図示はしないが、把持検出器27は制御装置40と電気的に接続されている。把持検出器27は、ユーザがグリップ21bを把持している状態で信号を制御装置40に送る。制御装置40は、この信号に応じて、駆動装置30の電動機31を作動可能な状態にする。
【0045】
以上、本実施形態に係る操作システム10は、電動車両1を制御するように操作可能に構成され、かつハンドル軸線21aに沿って延びるハンドル21を有する操作装置20と、前記電動車両1の走行動作に用いられる電動機31を有する駆動装置30と、前記操作装置20の操作に応じて前記駆動装置30を制御可能とするように構成される制御装置40とを備え、前記ハンドル21が、ユーザによって把持可能に構成されるグリップ21bを有する、操作システム10であって、前記操作装置20が、前記グリップ21bに対して前記ハンドル21の延在方向の一方側に配置されるスイッチ部材23と、前記スイッチ部材23の操作を検出可能に構成される操作検出器24とを有するスイッチ機構22を含み、前記スイッチ部材23が、前記ハンドル21の周方向にて前記ハンドル21の外周に沿って延びるように湾曲するベルト部23aと、前記ハンドル21の外周から離れるように前記ベルト部23aから突出する操作突起部23bと、前記スイッチ部材23を前記ハンドル23aに固定するように構成される固定部23cとを有し、前記操作突起部23b及び前記固定部23cが、前記ハンドル21の周方向に互いに間隔を空けるように前記ハンドル21の周方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置され、かつ前記ハンドル軸線21aに対して車両上下方向の一方及び他方にそれぞれ配置され、前記ベルト部23aが、前記ハンドル21の外周の一部を前記電動車両1の後方から覆うと共に前記操作突起部23b及び前記固定部23cを連結するように延びており、前記操作検出器24が、前記スイッチ部材23のベルト部23aと接触可能となるように前記ハンドル21の外周に配置され、かつ前記ハンドル21の周方向にて前記操作突起部23b及び前記固定部23c間における前記操作突起部23b寄りに配置され、前記制御装置40は、前記操作検出器24によって検出される前記スイッチ部材23の操作に応じて前記駆動装置30を制御可能とするように構成されている。
【0046】
このような操作システム10においては、ユーザが、その指によってハンドル21の周方向の他方から同一方に向かって操作突起部23bを押すようにスイッチ部材23を操作したときに、操作検出器24は、このスイッチ部材23の操作を検出することができる。このように操作検出器24によって検出されるスイッチ部材23の操作に応じて駆動装置30を制御することができる。そして、ハンドル21のグリップ21bを把持するユーザの手の指が、ハンドル21の周方向の他方から一方に向かって操作突起部23bを押すように誤って操作突起部23bに接触することは起こり難い。そのため、スイッチ部材23の誤操作は起こり難くなっている。また、スイッチ部材23は、操作突起部23bを力点とし、固定部23cを支点とし、かつ操作検出器24と接触するスイッチ部材23の接触箇所を作用点とするように操作できる。そのため、操作検出器に24より検出され得るように操作突起部23bを操作する力を小さく設定することができ、さらには、小さな力によってもスイッチ機構22を効率的に操作することができる。よって、操作装置20を効率的に操作することができ、かつ操作装置20の誤操作を効率的に防止することができる。
【0047】
本実施形態に係る操作システム10においては、前記操作検出器24が、前記ハンドル21の周方向にて前記操作突起部23bと隣接するように配置されている。このような操作システム10においては、操作突起部23bと、操作検出器24と接触するハンドル部材23の接触箇所とを、ハンドル21の周方向にて固定部23cから十分に離しながら互いに接近して配置される。そのため、操作検出器24により検出され得るように操作突起部23bを操作する力をより小さく設定することができ、さらには、より小さな力によってもスイッチ機構22を効率的に操作することができる。
【0048】
本実施形態に係る操作システムにおいて10は、前記スイッチ部材23が、前記ベルト部23aから前記操作検出器24に向かって突出する押し部23dを有し、前記操作検出器24は、前記押し部23dによって押されたときに、前記スイッチ部材23の操作を検出するように構成されている。そのため、操作検出器24によって、スイッチ部材23の操作を効率的に検出することができる。よって、スイッチ機構22を効率的に操作することができる。
【0049】
本実施形態に係る操作システム10においては、前記ハンドル21が、前記ハンドル21の外周から突出するように形成される2つのガイド部21cを有し、前記2つのガイド部21cが、前記ハンドル21の延在方向にて前記スイッチ部材23のベルト部23aの両側に隣接している。そのため、2つのガイド部21cによってスイッチ部材23を効率的に操作することができる。付随的には、ハンドル21を把持する手の指が誤ってスイッチ部材23と接触することを、2つのガイド部21cによって効率的に防ぐことができる。
【0050】
本実施形態に係る操作システム10においては、前記ハンドル21が、その延在方向の一方端部を車両幅方向の中央に向けると共に前記ハンドル21の延在方向の他方端部を車両幅方向の外方に向けるように配置されている。そのため、ユーザが、ハンドル21を把持する手の親指によってスイッチ部材23を効率的に操作することができる。
【0051】
本実施形態に係る操作システム10においては、前記操作装置20が、その車両幅方向の中央部分に配置される本体ケース25と、前記電動車両1のブレーキを解除するように操作可能に構成されるブレーキ解除操作機構26とを有し、前記ハンドル21の延在方向の一方側部分が前記本体ケース25に支持され、前記ブレーキ解除操作機構26が前記本体ケース25に配置されている。このような操作システム10においては、ハンドル21とブレーキ解除操作機構26との間にスイッチ機構22が配置される。そのため、ハンドル21を把持する手は、ブレーキ解除操作機構26に接触する前にスイッチ機構22に接触し易くなり、かかるスイッチ機構22の介在によって、ブレーキ解除操作機構26の誤操作を効率的に防止することができる。
【0052】
本実施形態に係る操作システム10においては、前記グリップ21bが、前記スイッチ部材23に対して前記ハンドル21の延在方向の他方側に位置し、前記操作装置20が、ユーザによって前記グリップ21bが把持されたことを検出可能に構成される把持検出器27を有し、前記制御装置40は、ユーザによって前記グリップ21bが把持されたことを前記把持検出器27が検出している間に、前記駆動装置30の電動機31を作動可能とするように構成されている。このような操作システム10においては、ユーザが、ハンドル21のグリップ21bを把持せずに電動車両1をコントロール下に置いていない状態では、電動車両1を走行動作させることができなくなっている。そのため、ユーザの意図に反した誤操作を効率的に防止することができる。
【0053】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…電動車両(車両)
10…操作システム
20…操作装置、21…ハンドル、21a…ハンドル軸線、21b…グリップ、21c…ガイド部、22…スイッチ機構、23…スイッチ部材、23a…ベルト部、23b…操作突起部、23c…固定部、23d…押し部、24…操作検出器、25…本体ケース、26…ブレーキ解除操作機構、27…把持検出器
30…駆動装置、31…電動機
40…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5