(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】環境制御システム、環境制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20231013BHJP
A61B 5/369 20210101ALI20231013BHJP
【FI】
A61B5/16 120
A61B5/369
(21)【出願番号】P 2019210772
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 晃久
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127616(JP,A)
【文献】特開2016-146173(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170810(WO,A1)
【文献】特開平05-015599(JP,A)
【文献】特開2010-119563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16-5/18
A61B 5/369
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報を基に、前記生体情報を取得した際の前記ユーザの感情を表す感情値を取得する感情値取得部と、
前記生体情報取得部が取得した所定期間内での複数の前記生体情報にそれぞれ対応する複数の前記感情値を基に、前記複数の生体情報が取得された前記所定期間の後に前記生体情報取得部が取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する予測部と、
前記予測値が所定の閾値を超えた場合に前記ユーザの環境を変える環境制御部と、を備
え、
前記予測部は、前記所定期間内での前記感情値の変化と、前記予測値とを対応付けた複数の感情予測モデルのうち、前記ユーザに応じた感情予測モデルを用いて、前記予測値を予測し、
前記複数の感情予測モデルの各々に対して閾値が対応付けられており、
前記環境制御部は、前記予測部が前記予測値の予測に用いた前記感情予測モデルに対応する前記閾値を超えた場合に前記ユーザの前記環境を変える、
環境制御システム。
【請求項2】
前記ユーザの環境を変える装置に対する前記ユーザによる操作の操作履歴に基づいて、前記予測値の予測に用いる前記感情予測モデルに対応する前記閾値を更新する閾値更新部を、更に備える、
請求項1に記載の環境制御システム。
【請求項3】
前記ユーザに対して取得した前記感情値を基に、前記複数の感情予測モデルのうち前記ユーザに対する前記予測値の予測に用いる前記感情予測モデルを更新するモデル更新部を、更に備える、
請求項1又は2に記載の環境制御システム。
【請求項4】
ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報を基に、前記生体情報を取得した際の前記ユーザの感情を表す感情値を取得する感情値取得部と、
前記生体情報取得部が取得した所定期間内での複数の前記生体情報にそれぞれ対応する複数の前記感情値を基に、前記複数の生体情報が取得された前記所定期間の後に前記生体情報取得部が取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する予測部と、
前記予測値が所定の閾値を超えた場合に前記ユーザの環境を変える環境制御部と、を備え、
前記環境制御部は、環境を変更するための複数の装置の各々に紐づけられた制御内容を含む環境データベースを用いて、前記複数の装置のうち前記ユーザの前記環境に応じた装置に対応する制御内容に基づいて、前記ユーザの前記環境を変える、
環境制御システム。
【請求項5】
前記感情値取得部が前記ユーザに対して取得した前記感情値を基に、前記環境データベースを更新するデータベース更新部を、更に備える、
請求項4に記載の環境制御システム。
【請求項6】
ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報を基に、前記生体情報を取得した際の前記ユーザの感情を表す感情値を取得する感情値取得部と、
前記生体情報取得部が取得した所定期間内での複数の前記生体情報にそれぞれ対応する複数の前記感情値を基に、前記複数の生体情報が取得された前記所定期間の後に前記生体情報取得部が取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する予測部と、
前記予測値が所定の閾値を超えた場合に前記ユーザの環境を変える環境制御部と、を備え、
感情値としてとり得る値の範囲には、対象者が環境に対する感情を自覚していない状態を表す値の範囲と、当該対象者が環境に対する感情を自覚する状態を表す値の範囲とが含まれ、
前記所定の閾値は、前記ユーザが前記環境に対する感情を自覚していない状態から前記ユーザが前記環境に対する感情を自覚する状態に切り替わることを判断するための基準となる値である、
環境制御システム。
【請求項7】
前記予測部は、前記所定期間内での前記感情値の変化と、前記予測値とを対応付けた複数の感情予測モデルのうち、前記ユーザに応じた感情予測モデルを用いて、前記予測値を予測する、
請求項4~6のいずれか一項に記載の環境制御システム。
【請求項8】
前記複数の感情予測モデルの各々に対して閾値が対応付けられており、
前記環境制御部は、前記予測部が前記予測値の予測に用いた前記感情予測モデルに対応する前記閾値を超えた場合に前記ユーザの前記環境を変える、
請求項7に記載の環境制御システム。
【請求項9】
前記ユーザの環境を変える装置に対する前記ユーザによる操作の操作履歴に基づいて、前記予測値の予測に用いる前記感情予測モデルに対応する前記閾値を更新する閾値更新部を、更に備える、
請求項8に記載の環境制御システム。
【請求項10】
前記ユーザに対して取得した前記感情値を基に、前記複数の感情予測モデルのうち前記ユーザに対する前記予測値の予測に用いる前記感情予測モデルを更新するモデル更新部を、更に備える、
請求項7~9のいずれか一項に記載の環境制御システム。
【請求項11】
前記ユーザの環境に係る環境情報を取得する環境情報取得部を、更に備え、
前記感情値取得部は、前記環境情報と前記生体情報とを基に、前記ユーザの前記感情値を取得する、
請求項1~10のいずれか一項に記載の環境制御システム。
【請求項12】
前記環境制御部は、前記予測値が前記所定の閾値を超えた場合に、前記環境情報に基づいて前記ユーザの前記環境を変える、
請求項11に記載の環境制御システム。
【請求項13】
前記環境制御部は、前記所定の閾値としての第1閾値と、前記第1閾値より大きい値である第2閾値とで定まる範囲を超える場合に前記ユーザの前記環境を変える、
請求項1~12のいずれか一項に記載の環境制御システム。
【請求項14】
生体情報取得部と感情値取得部と予測部と環境制御部とを備える環境制御システムで用いられる環境制御方法であって、
前記生体情報取得部が、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する生体情報取得ステップと、
前記感情値取得部が、前記生体情報を基に、前記生体情報を取得した際の前記ユーザの感情を表す感情値を取得する感情値取得ステップと、
前記予測部が、前記生体情報取得ステップで取得した所定期間内での複数の前記生体情報にそれぞれ対応する複数の前記感情値を基に、前記複数の生体情報が取得された前記所定期間の後に前記生体情報取得ステップで取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する予測ステップと、
前記環境制御部が、前記予測値が所定の閾値を超えた場合に前記ユーザの環境を変える環境制御ステップと、を含み、
前記予測ステップでは、前記所定期間内での前記感情値の変化と、前記予測値とを対応付けた複数の感情予測モデルのうち、前記ユーザに応じた感情予測モデルを用いて、前記予測値を予測し、
前記複数の感情予測モデルの各々に対して閾値が対応付けられており、
前記環境制御ステップでは、前記予測部が前記予測値の予測に用いた前記感情予測モデルに対応する前記閾値を超えた場合に前記ユーザの前記環境を変える、
環境制御方法。
【請求項15】
生体情報取得部と感情値取得部と予測部と環境制御部とを備える環境制御システムで用いられる環境制御方法であって、
前記生体情報取得部が、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する生体情報取得ステップと、
前記感情値取得部が、前記生体情報を基に、前記生体情報を取得した際の前記ユーザの感情を表す感情値を取得する感情値取得ステップと、
前記予測部が、前記生体情報取得ステップで取得した所定期間内での複数の前記生体情報にそれぞれ対応する複数の前記感情値を基に、前記複数の生体情報が取得された前記所定期間の後に前記生体情報取得ステップで取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する予測ステップと、
前記環境制御部が、前記予測値が所定の閾値を超えた場合に前記ユーザの環境を変える環境制御ステップと、を含み、
前記環境制御ステップでは、環境を変更するための複数の装置の各々に紐づけられた制御内容を含む環境データベースを用いて、前記複数の装置のうち前記ユーザの前記環境に応じた装置に対応する制御内容に基づいて、前記ユーザの前記環境を変える、
環境制御方法。
【請求項16】
生体情報取得部と感情値取得部と予測部と環境制御部とを備える環境制御システムで用いられる環境制御方法であって、
前記生体情報取得部が、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する生体情報取得ステップと、
前記感情値取得部が、前記生体情報を基に、前記生体情報を取得した際の前記ユーザの感情を表す感情値を取得する感情値取得ステップと、
前記予測部が、前記生体情報取得ステップで取得した所定期間内での複数の前記生体情報にそれぞれ対応する複数の前記感情値を基に、前記複数の生体情報が取得された前記所定期間の後に前記生体情報取得ステップで取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する予測ステップと、
前記環境制御部が、前記予測値が所定の閾値を超えた場合に前記ユーザの環境を変える環境制御ステップと、を含み、
感情値としてとり得る値の範囲には、対象者が環境に対する感情を自覚していない状態を表す値の範囲と、当該対象者が環境に対する感情を自覚する状態を表す値の範囲とが含まれ、
前記所定の閾値は、前記ユーザが前記環境に対する感情を自覚していない状態から前記ユーザが前記環境に対する感情を自覚する状態に切り替わることを判断するための基準となる値である、
環境制御方法。
【請求項17】
コンピュータに、請求項14~16のいずれか一項に記載の環境制御方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に環境制御システム、環境制御方法及びプログラムに関し、より詳細にはユーザに提供する適切な環境を維持する環境制御システム、環境制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業者の環境の快適さを自動的に保つように制御する作業者の快適化システムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の快適化システムは、生体情報の検出手段と、その検出値から作業者の快適度を算出する生体情報分析手段と、この分析結果を記録する手段とを具備する。検出手段により所定期間前に検出して得た分析結果と、所定期間後に検出して得られた分析結果とを比較し、快適度を判定する。さらにこれら判定結果にもとづいて予め選定した刺激付与システムを作動させることにより、作業者の環境の快適さを自動的に保つように制御する。
【0004】
特許文献1の快適度システムで得られる快適度は、現時点での作業者の快適度である。そのため、特許文献1の快適度システムは、作業者が不快と感じていると判断した場合に作業者に対して刺激を与えることで快適度の低下を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、作業者(ユーザ)に対して刺激を与えるタイミング、言い換えると作業者に対して刺激を与えることで作業者の環境を変えるタイミングは、作業者の感情の状態が不快の状態であることを作業者が自覚しているタイミングである。
【0007】
本開示は上記課題に鑑みてなされ、ユーザの感情の変化をより早いタイミングで検出し、ユーザの環境を変えることができる環境制御システム、環境制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る環境制御システムは、生体情報取得部と、感情値取得部と、予測部と、環境制御部と、を備える。前記生体情報取得部は、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する。前記感情値取得部は、前記生体情報を基に、前記生体情報を取得した際の前記ユーザの感情を表す感情値を取得する。前記予測部は、前記生体情報取得部が取得した所定期間内での複数の前記生体情報にそれぞれ対応する複数の前記感情値を基に、前記複数の生体情報が取得された前記所定期間の後に前記生体情報取得部が取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する。前記環境制御部は、前記予測値が所定の閾値を超えた場合に前記ユーザの環境を変える。前記予測部は、前記所定期間内での前記感情値の変化と、前記予測値とを対応付けた複数の感情予測モデルのうち、前記ユーザに応じた感情予測モデルを用いて、前記予測値を予測する。前記複数の感情予測モデルの各々に対して閾値が対応付けられてている。前記環境制御部は、前記予測部が前記予測値の予測に用いた前記感情予測モデルに対応する前記閾値を超えた場合に前記ユーザの前記環境を変える。
本開示の一態様に係る環境制御システムは、生体情報取得部と、感情値取得部と、予測部と、環境制御部と、を備える。前記生体情報取得部は、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する。前記感情値取得部は、前記生体情報を基に、前記生体情報を取得した際の前記ユーザの感情を表す感情値を取得する。前記予測部は、前記生体情報取得部が取得した所定期間内での複数の前記生体情報にそれぞれ対応する複数の前記感情値を基に、前記複数の生体情報が取得された前記所定期間の後に前記生体情報取得部が取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する。前記環境制御部は、前記予測値が所定の閾値を超えた場合に前記ユーザの環境を変える。前記環境制御部は、環境を変更するための複数の装置の各々に紐づけられた制御内容を含む環境データベースを用いて、前記複数の装置のうち前記ユーザの前記環境に応じた装置に対応する制御内容に基づいて、前記ユーザの前記環境を変える。
本開示の一態様に係る環境制御システムは、生体情報取得部と、感情値取得部と、予測部と、環境制御部と、を備える。前記生体情報取得部は、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する。前記感情値取得部は、前記生体情報を基に、前記生体情報を取得した際の前記ユーザの感情を表す感情値を取得する。前記予測部は、前記生体情報取得部が取得した所定期間内での複数の前記生体情報にそれぞれ対応する複数の前記感情値を基に、前記複数の生体情報が取得された前記所定期間の後に前記生体情報取得部が取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する。前記環境制御部は、前記予測値が所定の閾値を超えた場合に前記ユーザの環境を変える。感情値としてとり得る値の範囲には、対象者が環境に対する感情を自覚していない状態を表す値の範囲と、当該対象者が環境に対する感情を自覚する状態を表す値の範囲とが含まれる。前記所定の閾値は、前記ユーザが前記環境に対する感情を自覚していない状態から前記ユーザが前記環境に対する感情を自覚する状態に切り替わることを判断するための基準となる値である。
【0009】
本開示の一態様に係る環境制御方法は、生体情報取得部と感情値取得部と予測部と環境制御部とを備える環境制御システムで用いられる。前記環境制御方法は、生体情報取得ステップと、感情値取得ステップと、予測ステップと、環境制御ステップと、を含む。前記生体情報取得ステップでは、前記生体情報取得部が、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する。前記感情値取得ステップでは、前記感情値取得部が、前記生体情報を基に、前記生体情報を取得した際の前記ユーザの感情を表す感情値を取得する。前記予測ステップでは、前記予測部が、前記生体情報取得ステップで取得した所定期間内での複数の前記生体情報にそれぞれ対応する複数の前記感情値を基に、前記複数の生体情報が取得された前記所定期間の後に前記生体情報取得ステップで取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する。前記環境制御ステップでは、前記環境制御部が、前記予測値が所定の閾値を超えた場合に前記ユーザの環境を変える。前記予測ステップでは、前記所定期間内での前記感情値の変化と、前記予測値とを対応付けた複数の感情予測モデルのうち、前記ユーザに応じた感情予測モデルを用いて、前記予測値を予測する。前記複数の感情予測モデルの各々に対して閾値が対応付けられている。前記環境制御ステップでは、前記予測部が前記予測値の予測に用いた前記感情予測モデルに対応する前記閾値を超えた場合に前記ユーザの前記環境を変える。
本開示の一態様に係る環境制御方法は、生体情報取得部と感情値取得部と予測部と環境制御部とを備える環境制御システムで用いられる。前記環境制御方法は、生体情報取得ステップと、感情値取得ステップと、予測ステップと、環境制御ステップと、を含む。前記生体情報取得ステップでは、前記生体情報取得部が、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する。前記感情値取得ステップでは、前記感情値取得部が、前記生体情報を基に、前記生体情報を取得した際の前記ユーザの感情を表す感情値を取得する。前記予測ステップでは、前記予測部が、前記生体情報取得ステップで取得した所定期間内での複数の前記生体情報にそれぞれ対応する複数の前記感情値を基に、前記複数の生体情報が取得された前記所定期間の後に前記生体情報取得ステップで取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する。前記環境制御ステップでは、前記環境制御部が、前記予測値が所定の閾値を超えた場合に前記ユーザの環境を変える。前記環境制御ステップでは、環境を変更するための複数の装置の各々に紐づけられた制御内容を含む環境データベースを用いて、前記複数の装置のうち前記ユーザの前記環境に応じた装置に対応する制御内容に基づいて、前記ユーザの前記環境を変える。
本開示の一態様に係る環境制御方法は、生体情報取得部と感情値取得部と予測部と環境制御部とを備える環境制御システムで用いられる。前記環境制御方法は、生体情報取得ステップと、感情値取得ステップと、予測ステップと、環境制御ステップと、を含む。前記生体情報取得ステップでは、前記生体情報取得部が、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する。前記感情値取得ステップでは、前記感情値取得部が、前記生体情報を基に、前記生体情報を取得した際の前記ユーザの感情を表す感情値を取得する。前記予測ステップでは、前記予測部が、前記生体情報取得ステップで取得した所定期間内での複数の前記生体情報にそれぞれ対応する複数の前記感情値を基に、前記複数の生体情報が取得された前記所定期間の後に前記生体情報取得ステップで取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する。前記環境制御ステップでは、前記環境制御部が、前記予測値が所定の閾値を超えた場合に前記ユーザの環境を変える。感情値としてとり得る値の範囲には、対象者が環境に対する感情を自覚していない状態を表す値の範囲と、当該対象者が環境に対する感情を自覚する状態を表す値の範囲とが含まれる。前記所定の閾値は、前記ユーザが前記環境に対する感情を自覚していない状態から前記ユーザが前記環境に対する感情を自覚する状態に切り替わることを判断するための基準となる値である。
【0010】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、前記環境制御方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によると、ユーザの感情の変化をより早いタイミングで検出し、ユーザの環境を変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る環境制御装置の構成、及び同上の環境制御装置を備える制御システムの構成を説明する図である。
【
図2】
図2は、快適度及び覚醒度を指標とした2次元心理モデルである。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、同上の環境制御装置が記憶する所定の閾値の更新を説明する図である。
【
図4】
図4は、同上の環境制御装置の動作を説明する流れ図である。
【
図6】
図6A~
図6Cは、実施形態1に対する変形例1の環境制御装置の動作の具体例を説明する図である。
【
図7】
図7A~
図7Cは、実施形態1に対する変形例2の環境制御装置の動作の具体例を説明する図である。
【
図8】
図8A~
図8Dは、実施形態1に対する変形例3の環境制御装置の動作の具体例を説明する図である。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る環境制御装置の構成を説明する図である。
【
図10】
図10は、同上の環境制御装置の動作を説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に説明する各実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、各実施形態及び変形例に限定されない。これらの実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0014】
(実施形態1)
以下、本実施形態に係る環境制御システムについて、
図1~
図5Cを用いて説明する。
【0015】
(1)概要
本実施形態の制御システム2は、環境制御システム1としての環境制御装置10と、測定装置20と、環境システム30と、を備える。
【0016】
環境制御装置10は、対象者(ユーザ)の感情の変化を自覚させないように、対象者の感情が変化したことを対象者が自覚する前に対象者の環境を制御する。
【0017】
測定装置20は、対象者の生体情報を測定するように構成されている。生体情報とは、例えば、心拍、血圧、血管径、呼吸、瞳孔径、血糖値、表情、脳波、脳血流、発汗等である。本実施形態では、測定装置20は、生体情報として対象者の脳波を定期的に、つまり所定の時間間隔(例えば、1分間隔)で測定する。測定装置20は、例えば、ヘッドマウント式の脳波計で構成され、対象者の頭部に装着される。測定装置20は、測定結果(対象者の脳波のデータ)を環境制御装置10に出力する。
【0018】
なお、測定装置20は、脳波以外の生体情報を測定するように構成されていてもよい。例えば、測定装置20は、リストバンド型の心拍計で構成されており、対象者の手首に装着されることにより、対象者の心拍を測定するように構成されてもよい。または、測定装置20は、カメラ装置で構成され、ユーザの瞳孔径、表情などを測定するように構成されていてもよい。また、測定装置20は、マイク装置で構成され、ユーザの音声、呼吸音などを測定するように構成されていてもよい。また、制御システム2は、複数の測定装置20を備え、対象者の複数の生体情報を測定するように構成されていてもよい。
【0019】
環境システム30は、複数の装置を備えている。複数の装置は、照明装置、スピーカ、におい発生装置、空調機器、味覚刺激装置、映像出力装置等を含む。照明装置は、例えば対象者に照射する光の明るさ、光色等を調整することにより、対象者の感情を改善させる。スピーカは、例えば音楽等を発生させることにより、対象者の感情を改善させる。におい発生装置は、例えばアロマディフューザであり、におい(香り)を発生させることにより、対象者の感情を改善させる。空調機器は、対象者がいる空間の少なくとも一部を温める又は冷やすことにより、対象者の感情を改善させる。味覚刺激装置は、対象者の舌に電流を流して味覚を刺激することにより、対象者の感情を改善させる。なお、環境システム30は、上記の装置を全て備えている必要はなく、少なくとも1つの装置を備えた構成であってもよい。
【0020】
環境制御装置10は、測定装置20から受け取った測定結果を基に、対象者の感情を表す値(感情値)を取得する。環境制御装置10は、所定期間(例えば、5分間)に含まれる1つ以上の感情値を基に、測定装置20での次の測定により取得すると予測される脳波に応じた感情値を予測値として予測する。ここで、感情値としてとり得る値の範囲には、対象者が環境に対する感情を自覚していない状態を表す値の範囲と、当該対象者が環境に対する感情を自覚する状態を表す値の範囲とが含まれる。
【0021】
環境制御装置10は、予測値に応じて、環境システム30を制御する。例えば、環境制御装置10は、予測値が所定の閾値を超えた場合(所定の閾値を跨った場合)に、環境システム30に含まれる装置(例えば、空調機器)を制御する。ここで、所定の閾値は、対象者が環境に対する感情を自覚していない状態から当該対象者が環境に対する感情を自覚する状態に切り替わることを判断するための基準となる値である。
【0022】
本実施形態では、対象者の感情を表すモデルとして、快適度及び覚醒度を指標とした2次元心理モデル(例えばラッセルの円環モデル)を用いる(
図2参照)。
図2に示す2次元心理モデルでは、X軸が快適度を示し、Y軸が覚醒度を示している。X軸の快適度は、X軸の正領域が[快」であり、X軸の負領域が「不快」である。快適度は、X軸の正領域でのレベル(絶対値)が大きくなるほど快適度が増加し、X軸の負領域でのレベル(絶対値)が大きくなるほど不快度が増加(快適度が減少)する。Y軸の覚醒度は、Y軸の正領域が「覚醒」であり、Y軸の負領域が「鎮静」である。覚醒度は、Y軸の正領域でのレベル(絶対値)が大きくなるほど覚醒度が増加し、Y軸の負領域でのレベル(絶対値)が大きくなるほど鎮静度が増加(覚醒度が減少)する。対象者の感情(心理状態)は、2次元モデルの象限によって種類が区分けされる。第1象限Z1であれば、感情が、例えば驚き、興奮、幸福、喜び、嬉しい等であることを示す。第2象限Z2であれば、感情が、例えば恐れ、心配、怒り、不満、いらいら等であることを示す。第3象限Z3であれば、感情が、例えば不愉快、悲しみ、憂鬱、退屈、たるみ等であることを示す。第4象限Z4であれば、感情が、満足、気楽、落ち着き、リラックス、飽き等であることを示す。
【0023】
また、
図2に示す2次元心理モデルにおいて、対象者が感情を自覚できない無意識感情領域Z5が存在する。例えば、対象者の快適度(快適の度合いを表す感情値)が値“a1”~値“a2”の範囲に属する場合には、対象者は「快」、「不快」に対する感情を自覚していない状態である。対象者の快適度が値“a1”~値“a2”の範囲以外である場合には、対象者は「快」又は「不快」に対する感情を自覚している状態である。また、対象者の覚醒度(覚醒の度合いを表す感情値)が値“b1”~値“b2”の範囲に属する場合には、対象者は「鎮静、「覚醒」に対する感情を自覚していない状態である。対象者の覚醒度が値“b1”~値“b2”の範囲以外である場合には、対象者は「鎮静」又は「覚醒」に対する感情を自覚している状態である。
【0024】
本実施形態では、環境制御装置10は、対象者の感情が「快」である状態から「不快」となる状態に変化することを自覚しないうちに環境システム30を制御して、感情が「不快」を自覚する状態に陥らないようにする。これにより、環境制御装置10は、対象者が所望する環境を維持することができる。ここで、本実施形態において、対象者が所望する環境とは、対象者の快適度に係る感情値が無意識感情領域Z5に属する環境、及び対象者の感情の状態が「快」の状態であることを対象者が自覚する環境を含む。言い換えると、対象者が所望する環境とは、対象者の感情の状態が「不快」の状態であることを対象者が自覚しない環境である。
【0025】
本実施形態では、感情値としてとり得る値の範囲には、対象者が環境に対する感情を自覚していない状態を表す値の範囲と、当該対象者が環境に対する感情を自覚する状態を表す値の範囲とが含まれる。例えば、快適度に係る感情値としてとり得る値の範囲は、「快」、「不快」を自覚していない状態を表す値の範囲、「快」を自覚する状態を表す値の範囲、及び「不快」を自覚する状態を表す値の範囲を含む。さらに、上述した所定の閾値は、対象者が環境に対する感情として「快」、「不快」を自覚していない状態から当該対象者が環境に対する感情として「不快」を自覚する状態に切り替わることを判断するための基準となる値である。
【0026】
(2)構成
ここでは、環境制御装置10の構成について、
図1を用いて説明する。
【0027】
環境制御装置10は、
図1に示すように、通信部11、記憶部12及び制御部13を備える。
【0028】
環境制御装置10は、例えば、プロセッサ及びメモリを有するマイクロコンピュータを備えている。プロセッサが適宜のプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部13として機能する。つまり、制御部13は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムで実現されている。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0029】
通信部11は、測定装置20と通信を行うための第1通信インタフェースを有している。第1通信インタフェースは、例えば測定装置20と無線による通信を行うための通信インタフェースである。
【0030】
さらに、通信部11は、環境システム30に含まれる各装置と通信を行うための第2通信インタフェースを有している。第2通信インタフェースは、例えば測定装置20と無線による通信を行うための通信インタフェースである。
【0031】
なお、第1通信インタフェースは、測定装置20と有線による通信を行うための通信インタフェースであってもよい。同様に、第2通信インタフェースは、環境システム30に含まれる各装置と有線による通信を行うための通信インタフェースであってもよい。また、第1通信インタフェースと第2通信インタフェースは、同一の通信インタフェースであってもよい。つまり、通信部11は、同一の通信インタフェースで、測定装置20及び環境システム30に含まれる各装置と通信を行う構成であってもよい。
【0032】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の半導体メモリである。なお、記憶部12は、半導体メモリに限らず、ハードディスクドライブ等であってもよい。なお、記憶部12は、環境制御装置10とは別の装置に設けられていてもよいし、環境制御装置10とネットワークを介して接続されたサーバ、クラウド等に設けられていてもよい。
【0033】
記憶部12は、対象者ごとに、予測値と比較する所定の閾値を記憶している。記憶部12は、測定装置20が測定した対象者の測定結果に応じた感情値を時系列に記憶している。
【0034】
記憶部12は、予測値を予測する際に用いられる複数の感情予測モデルを複数の対象者に一対一に対応付けて記憶している。なお、本実施形態では、環境制御装置10は、初期状態では、モデルの基準となる1つの感情予測モデルを記憶している。感情予測モデルは、後述するモデル更新部135により、対象者ごとの感情値を基に機械学習(例えば、Deep Learning)を行うことで、対象者ごとに適切な感情予測モデルが生成され、記憶部12に記憶される。
【0035】
記憶部12は、対象者ごとに、環境システム30を制御する際の制御内容を環境データベースとして記憶している。環境データベースは、環境を変更するための環境システム30に含まれる複数の装置の各々に紐づけられた制御内容を含む。具体的には、環境データベースは、環境システム30に含まれる装置及び感情の「快」、「不快」を組み合わせた表として記憶部12に記憶されている。環境データベースの一例を表1に示す。ここで、表中の「視覚」は、環境システム30に含まれる照明装置に対応する。表中の「聴覚」は、環境システム30に含まれるスピーカに対応する。表中の「嗅覚」は、環境システム30に含まれるにおい発生装置に対応する。表中の「体性感覚」は、環境システム30に含まれる空調機器に対応する。表中の「味覚」は、環境システム30に含まれる味覚刺激装置に対応する。
【0036】
【0037】
制御部13は、
図1に示すように、生体情報取得部131、感情値取得部132、予測部133、環境制御部134、モデル更新部135、閾値更新部136及びデータベース更新部137を有している。
【0038】
生体情報取得部131は、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する。具体的には、生体情報取得部131は、測定装置20が所定の時間間隔(例えば、1分間隔)で測定した対象者の脳波のデータを生体情報として取得する。つまり、生体情報取得部131は、所定の時間間隔で生体情報を測定装置20から取得する。
【0039】
感情値取得部132は、生体情報取得部131が取得した生体情報(脳波のデータ)を基に、生体情報を取得した際の対象者の感情を表す感情値を取得する。具体的には、感情値取得部132は、生体情報取得部131が取得した生体情報(脳波のデータ)を基に、対象者の快適度を算出する。感情値取得部132は、算出した(取得した)感情値を記憶部12に記憶する。
【0040】
予測部133は、生体情報取得部131が取得した所定期間内での複数の生体情報にそれぞれ対応し、感情値取得部132が取得した複数の感情値を基に、生体情報取得部131が次に取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する。具体的には、予測部133は、複数の感情予測モデルのうち、対象者に応じた感情予測モデルを選択する。予測部133は、所定期間内での複数の感情値、及び選択した感情予測モデルを用いて、生体情報取得部131が次に取得すると予測される生体情報に応じた予測値を予測する。例えば、予測部133は、所定期間内での複数の感情値、及び選択した感情予測モデルを用いて、重回帰分析又はSVM(Support Vector Machine)により予測値を予測する。
【0041】
環境制御部134は、予測部133が予測した予測値に応じて、対象者の環境を制御する。環境制御部134は、予測値が対象者に応じた所定の閾値を超えた場合に、対象者の環境を変える。より詳細には、環境制御部134は、環境システム30に含まれる複数の装置のうち対象者の環境に応じた装置に対応する制御内容に基づいて、対象者の環境を変える。例えば、環境制御部134は、表1に示す制御内容のうち、制御対象の装置に対応する制御内容に基づいて、対象者の環境を変える。ここで、予測値が対象者に応じた所定の閾値を超えるとは、予測値が無意識感情領域Z5外、又は無意識感情領域Z5の所定の閾値で定まる境界線に存在することをいう。例えば、環境制御部134は、予測値が対象者に応じた所定の閾値“a1”(
図2参照)を超えた場合、言い換えると予測値が所定の閾値“a1”以下である場合に、環境を変える。
【0042】
環境制御部134は、予測値が所定の閾値を超えた場合には、環境システム30に含まれる各装置のうち少なくとも1つの装置の制御を行うことで、対象者の環境を変える。例えば、環境制御部134は、対象者の感情が「不快」を自覚する状態に陥らないように、クラシック音をスピーカから出力するようにスピーカを制御する。
【0043】
モデル更新部135は、対象者に対して取得した感情値を基に、複数の感情予測モデルのうち対象者に対する予測値の予測に用いる感情予測モデルを更新する。例えば、モデル更新部135は、予測部133が予測に用いた複数の感情値、及び取得した予測値を入力として、対象者に応じた感情予測モデルについて機械学習によるモデルの再学習を行う。
【0044】
閾値更新部136は、対象者の感情値、及び対象者の環境を変える装置に対する対象者による操作の操作履歴に基づいて、予測値の予測に用いる感情予測モデルに対応する所定の閾値を更新する。具体的には、閾値更新部136は、対象者の感情値が無意識感情領域Z5に属する場合に、環境システム30に含まれる複数の装置のうち少なくとも1つの装置が対象者の操作を受け付けた場合に、対象者に対する所定の閾値を更新する。
【0045】
ここで、時間経過に伴う感情値の変化を線G1で表す(
図3A参照)。このとき、時刻t0での感情値は値“c1”であり、無意識感情領域Z5に属している。さらに、時刻t0において、環境システム30に含まれる空調機器が対象者によって操作される。このとき、対象者は、例えば暑さによる不快を感じたため空調機器を操作したと考えられる。つまり、時刻t0において、つまり感情値“c1”では、「快」、「不快」を意識していることになる。対象者の無意識感情領域Z5の下限値は値“c1”よりも大きい値であることがわかるので、閾値更新部136は、所定の閾値を値“a1”から、値“c1”よりも大きい値“a11”に更新する。
【0046】
データベース更新部137は、感情値取得部132が対象者に対して取得した感情値を基に、環境データベースを更新する。データベース更新部137は、環境制御部134が対象者の環境を変えた直後に生体情報取得部131が取得した生体情報に応じた感情値が所定の閾値を超えた場合に、環境データベースを更新する。例えば、環境制御部134がクラシック音を出力するようにスピーカを制御した直後に生体情報取得部131が取得した生体情報に応じた感情値が所定の閾値を超えた場合には、対象者にとってクラシック音が出力される環境は不快に感じる環境であることがわかる。そこで、データベース更新部137は、表1において「聴覚」と「快」との組み合わせに属する「クラシック音」を削除する。さらに、データベース更新部137は、表1において「聴覚」と「不快」との組み合わせに属する「クラシック音」を追加する。
【0047】
(3)動作
ここでは、予測値を予測して環境システム30の制御に係る環境制御装置10の動作について、
図4を用いて説明する。
【0048】
生体情報取得部131は、測定装置20が測定した対象者の脳波のデータを生体情報として取得する(ステップS1)。
【0049】
感情値取得部132は、生体情報取得部131が取得した生体情報(脳波のデータ)を基に、生体情報を取得した際の対象者の感情を表す感情値を取得する(ステップS2)。
【0050】
予測部133は、予測処理を行う(ステップS3)。具体的には、生体情報取得部131が取得した所定期間内での複数の生体情報にそれぞれ対応し、感情値取得部132が取得した複数の感情値を基に、生体情報取得部131が次に取得すると予測される生体情報に応じた予測値を予測する。
【0051】
環境制御部134は、予測値が対象者に応じた所定の閾値を超えているか否かを判断する(ステップS4)。
【0052】
予測値が所定の閾値を超えていないと環境制御部134が判断する場合(ステップS4における「No」)、処理はステップS1に戻る。
【0053】
予測値が所定の閾値を超えていると判断する場合(ステップS4における「Yes」)、環境制御部134は、環境制御処理を行う(ステップS5)。具体的には、環境制御部134は、予測値が所定の閾値を超えた場合には、環境システム30に含まれる各装置のうち少なくとも1つの装置の制御を行うことで、対象者の環境を変える。
【0054】
(3)具体例
ここでは、環境制御装置10の動作の具体例について、説明する。
【0055】
環境制御装置10の予測部133は、例えば時刻t1までの所定期間内に取得した複数の感情値を基に、時刻t2における感情値である予測値を予測する(
図5A参照)。
【0056】
予測部133は、時刻t2では、時刻t2までの所定期間内に取得した複数の感情値を基に、時刻t3における予測値を予測する(
図5B参照)。この場合、予測値は、所定の閾値“a1”を超えている。そこで、環境制御装置10の環境制御部134は、環境システム30に含まれる各装置のうち少なくとも1つの装置の制御を行い、対象者の感情の状態が「不快」を自覚する状態に陥らないように環境を変える。
【0057】
環境制御装置10により対象者の感情の状態が「不快」を自覚する状態に陥らないように環境が変化するため、時刻t2以降では、対象者の感情が「不快」であることを自覚しない状態、つまり対象者が所望する環境が維持される(
図5C参照)。
【0058】
(5)利点
以上説明したように、本実施形態の環境制御システム1としての環境制御装置10は、生体情報取得部131と、感情値取得部132と、予測部133と、環境制御部134と、を備える。生体情報取得部131は、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する。感情値取得部132は、生体情報を基に、生体情報を取得した際の対象者の感情を表す感情値を取得する。予測部133は、生体情報取得部131が取得した所定期間内での複数の生体情報にそれぞれ対応し、感情値取得部132が取得した複数の前記感情値を基に、生体情報取得部131が次に取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する。環境制御部134は、予測値が所定の閾値を超えた場合に対象者の環境を変える。
【0059】
これにより、環境制御装置10は、予測値を基に、対象者の感情の変化を予め知ることができる。例えば、環境制御装置10は、予測値を基に、対象者の感情の状態が「快」から「不快」に変化、より詳細には、対象者の感情の状態が「不快」の状態であることを自覚する状態に陥らないように、環境を変化させることができる。
【0060】
したがって、環境制御装置10は、ユーザの感情の変化をより早いタイミングで検出し、ユーザの環境を変えることができる。
【0061】
(6)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0062】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0063】
(6-1)変形例1
上記実施形態では、環境制御装置10は、感情の状態が「不快」を自覚する状態に陥らないように、対象者の感情が「快」である状態から「不快」となる状態に変化することを自覚しないうちに環境システム30を制御する構成とした。しかしながら、この構成に限定されない。
【0064】
環境制御装置10は、対象者の感情が「覚醒」である状態から「鎮静」となる状態に変化することを自覚しないうちに環境システム30を制御して、感情の状態が「鎮静」を自覚する状態に陥らないようにしてもよい。
【0065】
この場合、本変形例の記憶部12は、対象者ごとに、環境システム30を制御する際の制御内容を、表2に示すような環境データベースとして記憶している。
【0066】
【0067】
本変形例の環境制御部134は、環境制御部134は、表2に示す制御内容のうち、制御対象の装置に対応する制御内容に基づいて、対象者の環境を変える。
【0068】
以下、本変形例に係る環境制御装置10の動作について具体例を用いて説明する。
【0069】
環境制御装置10の予測部133は、例えば時刻t11までの所定期間内に取得した複数の感情値を基に、時刻t12における感情値である予測値を予測する(
図6A参照)。予測部133は、時刻t12では、時刻t12までの所定期間内に取得した複数の感情値を基に、時刻t13における予測値を予測する(
図6B参照)。この場合、予測値は、所定の閾値“b1”を超えている。このとき、環境制御部134は、環境システム30に含まれる各装置のうち少なくとも1つの装置の制御を行い、対象者の感情の状態が「鎮静」を自覚する状態に陥らないように環境を変える。環境制御装置10により対象者の感情の状態が「鎮静」を自覚する状態に陥らないように環境が変化するため、時刻t12以降では、対象者の感情が「鎮静」であることを自覚させない状態に維持される(
図6C参照)。すなわち、環境制御装置10は、対象者が所望する環境として、対象者の感情値が無意識感情領域Z5に属する環境、及び対象者の感情の状態が「覚醒」の状態であることを対象者が自覚する環境を含む環境を維持することができる。
【0070】
これにより、例えば、対象者が車の運転中である場合において、対象者に対して眠気を感じさせないようにすることができる。
【0071】
(6-2)変形例2
環境制御装置10は、対象者の感情が「不快」である状態から「快」となる状態に変化することを自覚しないうちに環境システム30を制御して、感情が「快」の状態となったことを自覚させない構成であってもよい。
【0072】
この場合、環境制御装置10の予測部133は、例えば時刻t21までの所定期間内に取得した複数の感情値を基に、時刻t22における感情値である予測値を予測する(
図7A参照)。予測部133は、時刻t22では、時刻t22までの所定期間内に取得した複数の感情値を基に、時刻t23における予測値を予測する(
図7B参照)。この場合、予測値は、所定の閾値“a2”を超えている。このとき、環境制御部134は、環境システム30に含まれる各装置のうち少なくとも1つの装置の制御を行い、対象者の感情の状態が「快」を自覚する状態に陥らないように環境を変える。環境制御装置10により対象者の感情の状態が「不快」を自覚する状態に陥らないように環境が変化するため、時刻t22以降では、対象者の感情が「快」であることを自覚させない状態に維持される(
図7C参照)。すなわち、環境制御装置10は、対象者が所望する環境として、対象者の感情値が無意識感情領域Z5に属する環境、及び対象者の感情が「不快」の状態であることを対象者が自覚する環境を含む環境を維持することができる。
【0073】
これにより、例えば、環境制御装置10は適度なストレスを対象者に与えることができる。そのため、対象者は、環境制御装置10を用いて、スポーツ等の精神的トレーニング又はプレゼンテーションの練習等を行うことができる。
【0074】
なお、変形例1において、環境制御装置10は、対象者の感情が「鎮静」である状態から「覚醒」となる状態に変化することを自覚しないうちに環境システム30を制御して、感情の状態が「不快」を自覚する状態に陥らないようにしてもよい。この場合、環境制御装置10は、所定の閾値として値“b1”の代わりに値“b2”を用いる。
【0075】
(6-3)変形例3
環境制御装置10は、対象者の感情が「快」、「不快」の双方とも自覚させないように、対象者の感情を維持してもよい。
【0076】
この場合、環境制御部134は、さらに、所定の閾値としての第1閾値(例えば、値“a1”)とは異なる第2閾値(例えば、値“a2”)を予測値が超える場合に環境を変える。より詳細には、環境制御部134は、第1閾値と、第1閾値より大きい値である第2閾値とで定まる範囲を予測値が超える場合にユーザの環境を変える。ここで、第1閾値と第2閾値とで定まる範囲を予測値が超えるとは、予測値が無意識感情領域Z5外、無意識感情領域Z5の第1閾値で定まる境界線、又は無意識感情領域Z5の第2閾値で定まる境界線に存在することをいう。
【0077】
環境制御装置10の予測部133は、例えば時刻t31までの所定期間内に取得した複数の感情値を基に、時刻t32における感情値である予測値を予測する(
図8A参照)。予測部133は、時刻t32では、時刻t32までの所定期間内に取得した複数の感情値を基に、時刻t33における予測値を予測する(
図8B参照)。この場合、予測値は、所定の閾値“a1”を超えている。このとき、環境制御部134は、環境システム30に含まれる各装置のうち少なくとも1つの装置の制御を行い、対象者の感情の状態が「不快」を自覚する状態に陥らないように環境を変える。環境制御装置10により対象者の感情の状態が「不快」を自覚する状態に陥らないように環境が変化するため、時刻t32以降では、対象者の感情が「不快」であることを自覚しないように対象者の感情が維持される(
図8C参照)。その後、予測部133は、時刻t34では、時刻t34までの所定期間内に取得した複数の感情値を基に、時刻t35における予測値を予測する(
図8C参照)。この場合、予測値は、所定の閾値“a2”を超えている。このとき、環境制御部134は、環境システム30に含まれる各装置のうち少なくとも1つの装置の制御を行い、対象者の感情の状態が「快」を自覚する状態に陥らないように環境を変える。環境制御装置10により対象者の感情の状態が「快」を自覚する状態に陥らないように環境が変化するため、時刻t34以降では、対象者の感情が「快」であることを自覚しないように対象者の感情が維持される(
図8D参照)。
【0078】
環境制御部134は、予測部133の予測に応じて、例えば時刻t32、t34、t36において対象者の感情が「快」又は「不快」となることを自覚しないように環境を変化させる。これにより、環境制御装置10は、値“a1”~値“a2”の範囲に属するように、対象者の感情値を維持させることができる。つまり、環境制御装置10は、対象者に対して「快」及び「不快」の感情を自覚させないようにすることができる。すなわち、環境制御装置10は、対象者が所望する環境として、対象者の快適度に係る感情値が無意識感情領域Z5に属する環境を維持することができる。
【0079】
これにより、例えば、対象者が集中力を必要とする作業を行う場合において、環境制御装置10は、対象者に対して適切な環境を提供することができる。
【0080】
また、本変形例の環境制御装置10は、対象者の感情が「覚醒」、「鎮静」の双方とも自覚させないように、対象者の感情を維持してもよい。
【0081】
(6-4)変形例4
環境制御装置10は、対象者の感情の状態が第1象限Z1に属する環境と、対象者の感情値が無意識感情領域Z5に属する環境とを含む環境を維持してもよい。すなわち、環境制御装置10は、対象者の感情が「快」である状態から「不快」となる状態に変化すること、及び「覚醒」である状態から「鎮静」である状態に変化することの双方を自覚しないうちに環境システム30を制御してもよい。
【0082】
この場合、予測部133は、例えばある時刻までの所定期間内に取得した快適度に係る複数の感情値及び快適度に係る所定の閾値(快適度用閾値)を基に、次の時刻(取得時刻)における快適度に係る予測値(第1予測値)を予測する。快適度用閾値は、例えば値“a1”である。予測部133は、さらに、覚醒に係る感情値及び覚醒度に係る所定の閾値(覚醒度用閾値)を基に、上記取得時刻における覚醒度に係る予測値(第2予測値)を予測する。覚醒度用閾値は、例えば値“b1”である。環境制御部134は、第1予測値が所定の閾値“a1”を超えている場合には、環境システム30に含まれる各装置のうち少なくとも1つの装置の制御を行う。すなわち、環境制御部134は、対象者の感情が「快」である環境と、対象者の感情値が無意識感情領域Z5に属する環境とを含む環境を維持するように環境を変える。
【0083】
環境制御部134は、第2予測値が所定の閾値“b1”を超えている場合には、環境システム30に含まれる各装置のうち少なくとも1つの装置の制御を行う。すなわち、環境制御部134は、対象者の感情が「覚醒」である環境と、対象者の感情値が無意識感情領域Z5に属する環境とを含む環境を維持するように環境を変える。
【0084】
(6-5)変形例5
上記実施形態では、環境制御装置10(の予測部133)は、所定期間に含まれる複数の感情値を基に、測定装置20での次の測定により取得すると予測される感情値(予測値)を予測する構成とした。しかしながら、この構成に限定されない。言い換えると、予測部133は、複数の生体情報が取得された所定期間の直後の取得タイミングで環境制御装置10が取得すると予想される予測値を予測する構成に限定されない。つまり、予測値は、複数の生体情報が取得された所定期間の直後の取得タイミングで取得すると予想される感情値に限定されない。
【0085】
予測部133は、複数の生体情報が取得された所定期間の後において環境制御装置10が取得すると予想される予測値を予測すればよい。つまり、予測値は、複数の生体情報が取得された所定期間の後において取得されると予想される感情値であればよい。
【0086】
(実施形態2)
本実施形態2では、感情値が、生体情報及び環境情報に基づいて取得される点が、実施形態1とは異なる。以下、本実施形態2に係る環境制御システムについて、
図9~
図10を用いて説明する。以下、実施形態1と異なる点を中心に説明する。なお、実施形態1と同様の構成要素には、同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0087】
本実施形態の制御システム2は、環境制御システム1としての環境制御装置10Aと、測定装置20と、環境システム30と、を備える。
【0088】
環境制御装置10Aは、対象者の感情の変化を自覚させないように、対象者の感情が変化したことを対象者が自覚する前に対象者の環境を制御する。
【0089】
環境制御装置10Aは、
図9に示すように、通信部11、記憶部12及び制御部13Aを備える。
【0090】
環境制御装置10Aは、例えば、プロセッサ及びメモリを有するマイクロコンピュータを備えている。プロセッサが適宜のプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部13として機能する。つまり、制御部13Aは、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムで実現されている。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0091】
制御部13Aは、
図1に示すように、生体情報取得部131、感情値取得部132A、予測部133、環境制御部134A、モデル更新部135、閾値更新部136、データベース更新部137及び環境情報取得部138を有している。
【0092】
環境情報取得部138は、対象者の環境に係る環境情報を取得する。ここで、環境情報の一例を表3に記載する。
【0093】
【0094】
照明環境とは、照明装置の制御によって得られる情報であり、照度、輝度、色温度、Δuv及び配光のうち少なくとも1つの情報を含む。映像環境は、映像出力装置から出力される映像に係る情報であり、出力される映像に基づくコンテンツ(の種別)、輝度、RGB値、解像度、フレームレート及びコントラストのうち少なくとも1つの情報を含む。音環境は、スピーカから出力される音に係る情報であり、出力される音に基づくコンテンツ(の種別)、音量、音質、消音及び音源位置のうち少なくとも1つの情報を含む。空気環境は、空調機器の設定から得られる情報である温度、湿度、風量、におい発生装置から発生される香料(においの種別)、及び対象者が存在する空間の酸素濃度のうち少なくとも1つの情報を含む。
【0095】
例えば、環境情報取得部138は、空気環境の情報として、対象者が存在する空間の温度、湿度、風量を取得する。
【0096】
本実施形態2の記憶部12は、実施形態1の機能に加えて、さらに、対象者ごとに、環境情報取得部138が取得した環境情報を時系列に記憶している。
【0097】
感情値取得部132Aは、環境情報と生体情報とを基に、対象者の感情値を取得する。例えば、感情値取得部132Aは、気温の低下に伴う、対象者の「快」、「不快」に係る感情値を取得する。
【0098】
環境制御部134Aは、予測部133が予測した予測値が所定の閾値を超えた場合に、環境情報に基づいて環境を変える。環境制御部134Aは、対象者の感情が「不快」を自覚する状態に陥らないように、照明環境、映像環境、音環境及び空気環境のうち少なくとも1つの環境を制御する。一例として、環境制御部134Aは、気温の低下と脳波とを基に得られた予測値が所定の閾値を超えた場合には、気温が上昇するように、空調機器の温度を設定し、設定後の温度で空調機器を制御する。
【0099】
次に、本実施形態2の環境制御装置10Aの動作について、
図10を用いて説明する。
【0100】
生体情報取得部131は、測定装置20が測定した対象者の脳波のデータを生体情報として取得する(ステップS11)。
【0101】
環境情報取得部138は、環境情報を取得する(ステップS12)。
【0102】
感情値取得部132Aは、生体情報取得部131が取得した生体情報(脳波のデータ)及び環境情報取得部138が取得した環境情報を基に、生体情報を取得した際の対象者の感情を表す感情値を取得する(ステップS13)。
【0103】
予測部133は、予測処理を行う(ステップS14)。具体的には、生体情報取得部131が取得した所定期間内での複数の生体情報にそれぞれ対応し、感情値取得部132が取得した複数の感情値を基に、生体情報取得部131が次に取得すると予測される生体情報に応じた予測値を予測する。
【0104】
環境制御部134Aは、予測値が対象者に応じた所定の閾値を超えているか否かを判断する(ステップS15)。
【0105】
予測値が所定の閾値を超えていないと環境制御部134Aが判断する場合(ステップS15における「No」)、処理はステップS11に戻る。
【0106】
予測値が所定の閾値を超えていると判断する場合(ステップS15における「Yes」)、環境制御部134Aは、環境制御処理を行う(ステップS16)。具体的には、環境制御部134Aは、予測値が所定の閾値を超えた場合には、環境制御部134Aは、対象者の感情が「不快」を自覚する状態に陥らないように、照明環境、映像環境、音環境及び空気環境のうち少なくとも1つの環境を制御する。
【0107】
なお、本実施形態2の環境制御装置10Aに対して、実施形態1の変形例1~4は適用可能である。
【0108】
(変形例)
上記実施形態1,2は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態1,2は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、環境制御システム1と同様の機能は、環境制御方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る環境制御システム1の環境制御方法は、生体情報取得ステップと、感情値取得ステップと、予測ステップと、環境制御ステップと、を含む。生体情報取得ステップは、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する。感情値取得ステップは、生体情報を基に、生体情報を取得した際のユーザの感情を表す感情値を取得する。予測ステップは、生体情報取得ステップで取得した所定期間内での複数の生体情報にそれぞれ対応する複数の感情値を基に、複数の生体情報が取得された所定期間の後に生体情報取得ステップで取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する。環境制御ステップは、予測値が所定の閾値を超えた場合に環境を変える。一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムを、上述した環境制御システム1又は環境制御システム1の環境制御方法として機能させるためのプログラムである。
【0109】
本開示における環境制御システム1又は環境制御システム1の環境制御方法の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを有する。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における環境制御システム1又は環境制御システム1の環境制御方法の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0110】
また、環境制御システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは環境制御システム1に必須の構成ではなく、環境制御システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、環境制御システム1の少なくとも一部の機能、例えば、環境制御装置10,10Aの一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0111】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の環境制御システム(1)は、生体情報取得部(131)と、感情値取得部(132,132A)と、予測部(133)と、環境制御部(134,134A)と、を備える。生体情報取得部(131)は、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する。感情値取得部(132,132A)は、生体情報を基に、生体情報を取得した際の前記ユーザの感情を表す感情値を取得する。予測部(133)は、生体情報取得部(131)が取得した所定期間内での複数の生体情報にそれぞれ対応する複数の感情値を基に、複数の生体情報が取得された所定期間の後に生体情報取得部(131)が取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する。環境制御部(134,134A)は、予測値が所定の閾値を超えた場合にユーザの環境を変える。
【0112】
この構成によると、環境制御システム(1)は、予測値を基に、対象者の感情の変化を予め知ることができる。したがって、環境制御システム(1)は、ユーザの感情の変化をより早いタイミングで検出し、ユーザの環境を変えることができる。
【0113】
第2の態様の環境制御システム(1)では、第1の態様において、予測部(133)は、所定期間内での感情値の変化と、予測値とを対応付けた複数の感情予測モデルのうち、ユーザに応じた感情予測モデルを用いて、予測値を予測する。
【0114】
この構成によると、環境制御システム(1)は、感情予測モデルを用いて予測値を容易に予測することができる。
【0115】
第3の態様の環境制御システム(1)では、第2の態様において、複数の感情予測モデルの各々に対して閾値が対応付けられている。環境制御部(134)は、予測部(133)が予測値の予測に用いた感情予測モデルに対応する閾値を超えた場合にユーザの環境を変える。
【0116】
この構成によると、環境制御システム(1)は、ユーザに応じた閾値を用いて、対象者の感情の変化を予め知ることができる。
【0117】
第4の態様の環境制御システム(1)は、第3の態様において、閾値更新部(136)を、更に備える。閾値更新部(136)は、ユーザの環境を変える装置に対するユーザによる操作の操作履歴に基づいて、予測値の予測に用いる感情予測モデルに対応する閾値を更新する。
【0118】
この構成によると、閾値を更新することで、ユーザの感情の変化をより精度よく予測することができる。
【0119】
第5の態様の環境制御システム(1)は、第2~第4のいずれかの態様において、モデル更新部(135)を、更に備える。モデル更新部(135)は、ユーザに対して取得した感情値を基に、複数の感情予測モデルのうちユーザに対する予測値の予測に用いる感情予測モデルを更新する。
【0120】
この構成によると、感情予測モデルを更新することで、ユーザの感情の変化をより精度よく予測することができる。
【0121】
第6の態様の環境制御システム(1)では、第1~第5のいずれかの態様において、環境制御部(134)は、環境を変更するための複数の装置の各々に紐づけられた制御内容を含む環境データベースを用いて、複数の装置のうちユーザの環境に応じた装置に対応する制御内容に基づいて、ユーザの環境を変える。
【0122】
この構成によると、ユーザの環境に応じて適切な装置に対して制御を行うことができる。これにより、ユーザの環境を適切に変化させることができる。
【0123】
第7の態様の環境制御システム(1)は、第6の態様において、データベース更新部(137)を、更に備える。データベース更新部(137)は、感情値取得部(132,132A)がユーザに対して取得した感情値を基に、環境データベースを更新する。
【0124】
この構成によると、環境データベースを更新することで、ユーザの環境をより適切に変更することができる。
【0125】
第8の態様の環境制御システム(1)は、第1~第7のいずれかの態様において、環境情報取得部(138)を、更に備える。環境情報取得部(138)は、ユーザの環境に係る環境情報を取得する。感情値取得部(132A)は、環境情報と生体情報とを基に、ユーザの感情値を取得する。
【0126】
この構成によると、環境情報と生体情報と用いることで、より精度の高い感情値を取得することができる。
【0127】
第9の態様の環境制御システム(1)では、第8の態様において環境制御部(134A)は、予測値が所定の閾値を超えた場合に、環境情報に基づいてユーザの環境を変える。
【0128】
この構成によると、より適切にユーザの環境を変更することができる。
【0129】
第10の態様の環境制御システム(1)では、第1~第9のいずれかの態様において、
感情値としてとり得る値の範囲には、対象者が環境に対する感情を自覚していない状態を表す値の範囲と、当該対象者が環境に対する感情を自覚する状態を表す値の範囲とが含まれる。所定の閾値は、ユーザが環境に対する感情を自覚していない状態からユーザが環境に対する感情を自覚する状態に切り替わることを判断するための基準となる値である。
【0130】
この構成によると、ユーザの感情をユーザが自覚する状態に陥らないように、環境を変化させることができる。
【0131】
第11の態様の環境制御システム(1)では、第1~第10のいずれかの態様において、環境制御部(134,134A)は、所定の閾値としての第1閾値と、第1閾値より大きい値である第2閾値とで定まる範囲を超える場合にユーザの環境を変える。
【0132】
この構成によると、第1閾値と第2閾値との間でユーザの感情値が変化するように、ユーザの環境を制御することができる。
【0133】
第12の態様の環境制御方法は、生体情報取得ステップと、感情値取得ステップと、予測ステップと、環境制御ステップと、を含む。生体情報取得ステップは、ユーザの生体活動に関連する生体情報を取得する。感情値取得ステップは、生体情報を基に、生体情報を取得した際のユーザの感情を表す感情値を取得する。予測ステップは、生体情報取得ステップで取得した所定期間内での複数の生体情報にそれぞれ対応する複数の感情値を基に、複数の生体情報が取得された所定期間の後に生体情報取得ステップで取得すると予測される生体情報に応じた感情値を予測値として予測する。環境制御ステップは、予測値が所定の閾値を超えた場合にユーザの環境を変える。
【0134】
この環境制御方法によると、ユーザの感情の変化をより早いタイミングで検出し、ユーザの環境を変えることができる。
【0135】
第13の態様のプログラムは、コンピュータに、第12の態様の環境制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0136】
このプログラムによると、ユーザの感情の変化をより早いタイミングで検出し、ユーザの環境を変えることができる。
【符号の説明】
【0137】
1 環境制御システム
10,10A 環境制御装置
131 生体情報取得部
132,132A 感情値取得部
133 予測部
134,134A 環境制御部
135 モデル更新部
136 閾値更新部
137 データベース更新部
138 環境情報取得部