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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】スポット溶接用電極格納装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/36 20060101AFI20231013BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B23K11/36
B23K11/11
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020020920
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021126661
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591260948
【氏名又は名称】株式会社キョクトー
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】山本 省吾
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202014005092(DE,U1)
【文献】独国特許出願公開第102018204048(DE,A1)
【文献】国際公開第2018/211555(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/36
B23K 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が基部に対して偏倚するとともに溶接ガンのシャンク先端に嵌合する嵌合凹部が上記基部における上記先端部の反対側に開口するように形成されたスポット溶接用の偏心電極チップを複数格納可能なスポット溶接用電極格納装置であって、
筒中心線方向一端に開口するチップ装着穴を有する円筒状をなし、上記先端部が予め決められた所定の位置となるように、且つ、上記基部の中心軸が上記筒中心線に一致するように上記偏心電極チップをその先端側から上記チップ装着穴に装着可能なチップケースと、
上記チップ装着穴に上記偏心電極チップを装着してなるチップ装着体を上記筒中心線と直交する方向に直線状に、且つ、上記嵌合凹部が同一方向に開口するように複数並設した状態で収容可能な直線状の収容通路を内部に有し、当該収容通路に連通する電極取出口が一端側に形成された収容体と、
上記収容通路に収容された状態の1つ又は並設状態の複数の上記チップ装着体を上記収容通路の一端側に押圧するよう構成され、上記電極取出口から上記収容通路に収容された各チップ装着体のうちの1つを取り出した際、上記収容通路の残りの各チップ装着体を上記電極取出口側へと移動させる押圧機構とを備え、
上記収容通路には、当該収容通路に沿って直線状に延びるガイドレールが配設され、
上記チップケースには、上記ガイドレールに対応する形状をなし、当該ガイドレールに沿って摺接可能で、且つ、上記チップケースを上記収容通路において上記筒中心線周りに回転不能に規制する切欠部が形成されていることを特徴とするスポット溶接用電極格納装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスポット溶接用電極格納装置において、
上記チップケースの側壁には、上記チップ装着穴に臨む弾性体が埋設されていることを特徴とするスポット溶接用電極格納装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスポット溶接用電極格納装置において、
上記ガイドレールは、上記収容体の一方の内側面の上記収容通路に沿って延びる一方の縁部又は他方の縁部に沿って延びており、
上記切欠部は、上記ガイドレールに対応する位置に設けられていることを特徴とするスポット溶接用電極格納装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のスポット溶接用格納装置において、
上記収容通路に収容状態の上記チップ装着体の上記中心軸と同一方向に延びる揺動軸周りに揺動可能に上記収容体に支持され、一方側に揺動して先端側が上記電極取出口の一部を遮るとともに上記収容体の内側面に上記チップ装着体を押し付ける第1姿勢と、他方側に揺動して先端側が上記電極取出口を開放する第2姿勢とに姿勢変更可能なレバー部材を備え、
該レバー部材は、上記第1姿勢に姿勢を変更した際、上記チップ装着体の上記チップケースの外周面に接触する第1レバー部と、上記チップ装着体の上記電極チップの外周面に接触する第2レバー部とを有していることを特徴とするスポット溶接用電極格納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車生産ラインにおいて使用するスポット溶接用の電極チップを溶接ガンのシャンクに装着可能な状態で格納しておくスポット溶接用電極格納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車生産ラインでは、複数のプレス成形品をスポット溶接で繋ぐことで車体フレームが組み立てられ、このスポット溶接は、一般的に、産業用ロボットのアーム先端に取り付けられた溶接ガンで行われる。
【0003】
ところで、溶接ガンのシャンクには、当該シャンクの先端が電極チップの嵌合凹部に嵌合することによって電極チップが装着される。そして、電極チップは、スポット溶接を繰り返し行うことで消耗するので、定期的に交換する必要がある。したがって、電極チップの交換時において電極チップを効率よく溶接ガンのシャンクに装着するために、自動車生産ラインには、スポット溶接用の電極格納装置が設置されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている電極格納装置は、収容通路を内部に有する角筒状の収容ケースを備え、収容通路には、電極チップをその中心軸と直交する方向に直線状に、且つ、嵌合凹部が同一方向に開口するように複数並設した状態で収容可能となっている。収容ケースの一端には、収容通路に連通する電極取出口が形成される一方、収容ケースの他端側内部には、収容通路に収容された1つ又は並設状態の複数の電極チップを収容通路の一端側にバネ力によって押圧する押圧ユニットが設けられている。収容ケースの一端側には、当該収容ケースの長手方向と直交する方向に移動可能な取出規制部材が配設されている。該取出規制部材は、コイルバネの付勢力によって一方側に移動した状態で電極取出口の一部を遮って電極チップの電極取出口からの取り出しを規制する一方、コイルバネの付勢力に抗して他方側に移動した状態で電極取出口を開放して電極チップの電極取出口からの取り出しを可能にするようになっている。そして、収容通路に並設された各電極チップのうちの取出規制部材に接する電極チップの嵌合凹部にシャンク先端を嵌合するとともにその電極チップを収容通路の一端側に移動させると、取出規制部材がコイルバネの付勢力に抗して他方側に移動することによって開放する電極取出口から電極チップが取り出され、その後、取り出された電極チップに隣り合う電極チップが押圧ユニットのバネ力によって収容通路の一端側に移動するとともに、コイルバネの付勢力によって一方側に移動した取出規制部材に接触して電極取出口からの取り出しが規制されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2013-514182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スポット溶接用の電極チップの種類の1つとして、偏心電極チップが一般的に知られている。この偏心電極チップは、被溶接体の溶接個所の形状に対応させるために先端部が基部に対して偏倚している。したがって、もし仮に、特許文献1の如き電極格納装置に偏心電極チップを格納して生産ラインにおいて使用しようとすると、収容ケースの収容通路に格納する各偏心電極チップの先端部が基部の中心線周りにおいてそれぞれ異なる位置になってしまう。そうすると、生産ラインにおける各溶接ガンは、予め設定されたプログラムによって同じ動作を繰り返すので、溶接ガンに装着された偏心電極チップを電極格納装置に格納された偏心電極チップと自動で交換する際、交換する毎に偏心電極チップの先端部がシャンクの中心線周りに異なる位置となってしまい、その状態で使用すると溶接不良等を引き起こしてしまう原因になる。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、格納された各偏心電極チップを溶接ガンのシャンクに順に装着しても偏心電極チップの先端部がシャンクの中心線周りにおいて常に同じ位置となるスポット溶接用電極格納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、各偏心電極チップを装着可能なチップケースを用いるとともに当該チップケースに偏心電極チップを装着した状態で収容体に収容するようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、先端部が基部に対して偏倚するとともに溶接ガンのシャンク先端に嵌合する嵌合凹部が上記基部における上記先端部の反対側に開口するように形成されたスポット溶接用の偏心電極チップを複数格納可能なスポット溶接用電極格納装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、筒中心線方向一端に開口するチップ装着穴を有する円筒状をなし、上記先端部が予め決められた所定の位置となるように、且つ、上記基部の中心軸が上記筒中心線に一致するように上記偏心電極チップをその先端側から上記チップ装着穴に装着可能なチップケースと、上記チップ装着穴に上記偏心電極チップを装着してなるチップ装着体を上記筒中心線と直交する方向に直線状に、且つ、上記嵌合凹部が同一方向に開口するように複数並設した状態で収容可能な直線状の収容通路を内部に有し、当該収容通路に連通する電極取出口が一端側に形成された収容体と、上記収容通路に収容された状態の1つ又は並設状態の複数の上記チップ装着体を上記収容通路の一端側に押圧するよう構成され、上記電極取出口から上記収容通路に収容された各チップ装着体のうちの1つを取り出した際、上記収容通路の残りの各チップ装着体を上記電極取出口側へと移動させる押圧機構とを備え、上記収容通路には、当該収容通路に沿って直線状に延びるガイドレールが配設され、上記チップケースには、上記ガイドレールに対応する形状をなし、当該ガイドレールに沿って摺接可能で、且つ、上記チップケースを上記収容通路において上記筒中心線周りに回転不能に規制する切欠部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、上記チップケースの側壁には、上記チップ装着穴に臨む弾性体が埋設されていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記ガイドレールは、上記収容体の一方の内側面の上記収容通路に沿って延びる一方の縁部又は他方の縁部に沿って延びており、上記切欠部は、上記ガイドレールに対応する位置に設けられていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記収容通路に収容状態の上記チップ装着体の上記中心軸と同一方向に延びる揺動軸周りに揺動可能に上記収容体に支持され、一方側に揺動して先端側が上記電極取出口の一部を遮るとともに上記収容体の内側面に上記チップ装着体を押し付ける第1姿勢と、他方側に揺動して先端側が上記電極取出口を開放する第2姿勢とに姿勢変更可能なレバー部材を備え、該レバー部材は、上記第1姿勢に姿勢を変更した際、上記チップ装着体の上記チップケースの外周面に接触する第1レバー部と、上記チップ装着体の上記電極チップの外周面に接触する第2レバー部とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、偏心電極チップが装着された各チップケースを収容通路に収容すると、ガイドレールに対応する切欠部によって各チップケースにおけるその筒中心線周りの回転が規制された状態で各チップケースが収容通路内を当該収容通路に沿って移動可能になる。このとき、チップケースに装着された偏心電極チップは、その先端部がチップケースに対して予め決められた位置になっているので、収容通路内の各チップケースに装着された偏心電極チップの先端部が同じ方向を向くようになる。したがって、予め設定されたプログラムにより同じ動作を繰り返す溶接ガンのシャンクを電極格納装置に収容されたどの偏心電極チップの嵌合凹部に嵌合させても、偏心電極チップの先端部がシャンクの中心線周りに常に同じ位置になるので、その後に溶接作業を行っても溶接不良等を引き起こさないようにすることができる。
【0015】
第2の発明では、チップケースのチップ装着穴に偏心電極チップを装着すると、弾性体のチップ装着穴に臨む部分が弾性変形し、この弾性変形による付勢力によって弾性体が偏心電極チップの外周面を押圧するようになる。したがって、チップケースに装着した偏心電極チップがチップケースから不意に抜け出てしまうのを防ぐことができる。
【0016】
第3の発明では、収容通路に対してチップ装着体をその装着された電極チップの開口が正しい収容の状態とは反対向きとなるように収容しようとすると、チップケースの切欠部が収容通路のガイドレールに対応しなくなる。したがって、作業者は、収容通路に対してチップ装着体を間違った状態で収容しようとしていることに気付くことができ、各チップ装着体を常に正しい状態で収容通路に収容することができる。
【0017】
第4の発明では、レバー部材が第1姿勢になると、偏心電極チップが電極取出口からの取り出しを待機する待機状態となる一方、第2姿勢になると偏心電極チップを電極取出口から取り出し可能状態になる。そして、レバー部材が第1姿勢の際、収容通路内においてチップ装着体におけるチップケースを第1レバー部が支持する一方、偏心電極チップを第2レバー部が支持するようになる。このように、レバー部材は、チップ装着体における外径の異なる2つの部分を支持するので、偏心電極チップの電極取出口からの取り出しを待機する待機状態において偏心電極チップが傾かなくなり、電極チップに確実にシャンクを嵌合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るスポット溶接用電極格納装置の一方側の斜め上方から見た斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るスポット溶接用電極格納装置の他方側の斜め上方から見た斜視図であり、内部構造を一部開示した状態を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るチップケースに偏心電極チップを装着する前の状態を示す斜視図である。
図4図3の後、チップケースに偏心電極チップを装着した後の状態を示す斜視図である。
図5図4のV-V線における断面図である。
図6】格納されている各偏心電極チップの嵌合凹部が上方に向く電極格納装置から偏心電極チップの1つが取り出された直後の状態を示す斜視図である。
図7】格納されている各偏心電極チップの嵌合凹部が下方に向く電極格納装置から偏心電極チップの1つが取り出された直後の状態を示す斜視図である。
図8図7の後、偏心電極チップからチップケースを取り外す直前の状態を示す斜視図である。
図9図8の後、偏心電極チップからチップケースを取り外した直後の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0020】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るスポット溶接用電極格納装置1を示す。この電極格納装置1は、自動車生産ラインにおける車体組立通路の側方に配置され、スポット溶接用の電極チップ10を溶接ロボットが把持する溶接ガンGのシャンクG1(図6乃至図9参照)に装着可能な姿勢で複数格納しておくものである。
【0021】
電極チップ10は、図3乃至図5に示すように、先端部10aが基部10bに対して偏倚した略有底円筒状の偏心電極チップである。
【0022】
先端部10aの外径は、基部10bの外径よりも小さな形状になっており、先端部10aの先端側略半分は、先端に行くにつれて次第に縮径する碗型形状をなしている。
【0023】
先端部10aの中心軸C1は、基部10bの中心軸C2に対して斜めに交差するように延びていて、円形をなす先端面10dは、中心軸C2に対して傾斜している。
【0024】
基部10bには、溶接ガンGのシャンクG1先端に嵌合する嵌合凹部10cが基部10bにおける先端部10aの反対側に開口するように形成されている。
【0025】
電極チップ10は、有底円筒状をなすチップケース4に装着された状態で電極格納装置1に格納されるようになっている。
【0026】
チップケース4は、筒中心線C3の延長方向一端に開口するチップ装着穴4aを有し、該チップ装着穴4aは、図4及び図5に示すように、当該チップ装着穴4aの開口側に位置する大径部4bと、チップ装着穴4aの奥側に位置する小径部4cとで構成され、チップケース4の底面中央には、小径部4cと連通する貫通孔4dが形成されている。
【0027】
大径部4bは、その中心線がチップケース4の筒中心線C3に一致する断面円形状をなし、大径部4bの内径は、電極チップ10の基部10bの外径に対応している。
【0028】
一方、小径部4cは、その中心線がチップケース4の筒中心線C3から一側方に偏心した位置にあり、奥側に行くにつれて次第に縮径する略テーパ形状をなしている。すなわち、小径部4cは、チップケース4において大径部4bの中心線からずれた予め決められた所定の位置に形成されている。
【0029】
チップケース4の筒中心線C3から他側方に位置する側壁には、筒中心線C3と平行に延びてチップケース4の底面に開口する略円柱状の取付穴4eが形成され、該取付穴4eは、チップケース4の外周面において筒中心線C3に沿って帯状に延びて開口する開口部分を有する一方、チップケース4の筒中心線C3方向略中央部分において小径部4cと連通している。
【0030】
取付穴4eには、略円柱状の脱落防止棒7が取り付けられている。該脱落防止棒7の長手方向一側半分に位置するウレタン材からなる弾性部7a(弾性体)と、脱落防止棒7の長手方向他側に位置するとともに弾性部7aを支持する金属材からなる支持部7bとで構成されていて、当該支持部7bが螺合部材N1によりチップケース4の側壁に固定されている。
【0031】
すなわち、脱落防止棒7は、チップケース4の側壁に埋設されていて、弾性部7aの一部がチップ装着穴4aの小径部4cに臨んでいる。
【0032】
チップケース4底面の外周縁部には、図5に示すように、小径部4cと取付穴4eの並設方向に沿って直線状に延びる断面L字状の切欠部4fが形成されている。
【0033】
そして、図3及び図4に示すように、電極チップ10をその先端側からチップ装着穴4aに挿入すると、先端部10aが小径部4cに入り込むとともに基部10bの中心軸C2がチップケース4の筒中心線C3に一致した状態で基部10bが大径部4bに嵌合することにより、先端部10aがチップケース4内における予め決められた位置となった状態で電極チップ10がチップ装着穴4aに装着されてチップ装着体9となるようになっている。
【0034】
また、チップケース4のチップ装着穴4aに電極チップ10を装着すると、弾性部7aのチップ装着穴4aに臨む部分が弾性変形して収縮するようになっている。
【0035】
電極格納装置1は、図1及び図2に示すように、水平方向に直線状に延びる略角筒状の収容ケース2(収容体)を備え、該収容ケース2は、当該収容ケース2の長手方向と直交する水平方向に互いに対向する第1側面部21及び第2側面部22と、該第1側面部21及び第2側面部22の各上端縁部を繋ぐ表面部23と、上記第1側面部21及び第2側面部22の各下端縁部を繋ぐ裏面部24とを有している。
【0036】
第1側面部21、第2側面部22、表面部23及び裏面部24で囲まれる部分は、チップ装着体9を複数収容可能な直線状の収容通路R1になっていて、該収容通路R1の一端に電極取出口20が設けられている。
【0037】
第1側面部21の内側面における下側縁部には、断面矩形状をなす角棒状のガイドレール8が収容通路R1に沿って延びている。
【0038】
チップケース4の切欠部4fは、ガイドレール8に対応する形状をなしていて、切欠部4fがガイドレール8に対応するように各チップ装着体9を収容通路R1に電極取出口20から順に挿入すると、各チップ装着体9が収容通路R1に筒中心線C3と直交する方向に直線状に、且つ、シャンクG1先端に嵌合する嵌合凹部10cが同一方向に開口するように複数並設した状態で収容されるようになっている。
【0039】
収容通路R1に収容されたチップ装着体9は、切欠部4fがガイドレール8に対応することで筒中心線C3周りに回転不能になっている。すなわち、切欠部4fは、ガイドレール8に沿って摺接可能で、且つ、チップケース4を収容通路R1において筒中心線C3周りに回転不能に規制するようになっている。
【0040】
第1側面部21の一端側上端縁部及び下端縁部寄りには、図1に示すように、第1側面部21の長手方向に沿って延び、且つ、上下に対向する一対の突出板部21aが第2側面部22から離れる方向に突設され、各突出板部21aは、第1側面部21の一端に近づくにつれて水平方向の幅が次第に狭くなる形状をなしている。
【0041】
第1側面部21の両突出板部21a間には、収容通路R1に連通する長方形状の連通部21bが形成され、該連通部21bは、第1側面部21の長手方向一端に開放するとともに電極取出口20に連続している。
【0042】
第2側面部22の上下方向中途部には、図2に示すように、当該第2側面部22の長手方向に沿って直線状に延びるスリット22aが形成され、該スリット22aは、収容通路R1に連通している。
【0043】
表面部23の長手方向一端側には、図1に示すように、当該表面部23の長手方向一端に開放するように切り欠かれて上記電極取出口20に連続するシャンク出入口23aが形成されている。
【0044】
両突出板部21a間には、収容ケース2の一端側に向かって延びるレバー部材3が配設されている。
【0045】
該レバー部材3は、収容ケース2の長手方向に沿って延びるブロック形状をなす第1レバー部3aと、板状をなす第2レバー部3bとを有している。
【0046】
第1レバー部3a先端側の収容通路R1側には、チップケース4の外周面に対応するように湾曲する第1湾曲面部3cが形成されている。
【0047】
一方、第2レバー部3bは、第1レバー部3aの先端側上面に固定され、収容通路R1側には、電極チップ10の外周面に対応するように湾曲する第2湾曲面部3dが形成されている。
【0048】
第1レバー部3aの中途部は、収容通路R1に収容状態のチップケース4の筒中心線C1と同一方向に延びる揺動軸30によって支持され、レバー部材3は、揺動軸30周りに揺動可能になっている。
【0049】
第1レバー部3aの基端側と第1側面部21との間には、図示しないコイルバネが配設され、当該コイルバネは、レバー部材3が一方側に揺動するように第1レバー部3aの基端側を収容ケース2から離れるように付勢している。
【0050】
そして、レバー部材3は、図示しないコイルバネの付勢力によって一方側に揺動すると、先端側が連通部21bを介して収容通路R1へと進入して電極取出口20の一部を遮る第1姿勢X1になるとともに第1レバー部3aの第1湾曲面部3cがチップ装着体9のチップケース4の外周面に接触して当該チップケース4を第2側面部22の内面に押し付け、さらには、第2レバー部3bの第2湾曲面部3dがチップ装着体9の電極チップ10の外周面に接触する一方、図示しないコイルバネの付勢力に抗して他方側に揺動すると、先端側が収容通路R1から離間して電極取出口20を開放する第2姿勢X2になるとともに第1湾曲面部3cがチップ装着体9のチップケース4から離れ、且つ、第2湾曲面部3dがチップ装着体9の電極チップ10から離れるようになっている。
【0051】
つまり、レバー部材3は、電極チップ10が電極取出口20からの取り出しを待機する第1姿勢X1と電極チップ10を電極取出口20から取り出し可能にする第2姿勢X2とに姿勢変更可能になっている。
【0052】
収容ケース2の長手方向他端側には、図2に示すように、押圧機構5が設けられ、該押圧機構5は、収容通路R1に配置されたブロック形状の押圧部材5aを備えている。
【0053】
該押圧部材5aは、第2側面部22側に突出してスリット22aに嵌合するガイドピン5dを備え、当該ガイドピン5dがスリット22aに案内されながら収容通路R1に沿って進退するようになっている。
【0054】
また、押圧機構5は、有底円筒状の筒カバー5bを備え、該筒カバー5bの開口周縁が上記収容ケース2の長手方向他端に固定されている。
【0055】
筒カバー5bの内部には、収容ケース2側に開口する中空部(図示せず)が形成され、該中空部には、押圧部材5aを前進方向に付勢するコイルバネ5cが配設されている。
【0056】
すなわち、押圧機構5は、収容通路R1に収容された状態の1つ又は複数のチップ装着体9を収容通路R1の一端側に押圧するよう構成され、電極取出口20から収容通路R1に収容された各チップ装着体9のうちの1つを取り出すと、収容通路R1の残りの各チップ装着体9を電極取出口20側へと移動させるようになっている。
【0057】
次に、格納されている各電極チップ10の嵌合凹部10cが上方に向く電極格納装置1からの電極チップ10の取出作業について詳述する。
【0058】
まず、図6に示すように、溶接ロボットが把持する溶接ガンGを移動させて、当該溶接ガンGのシャンクG1の先端をシャンク出入口23aに対応させる。
【0059】
次に、溶接ガンのシャンクG1をシャンク出入口23aに向かって下方に移動させる。すると、レバー部材3の第2レバー部3bに接触する電極チップ10の嵌合凹部10cにシャンクG1の先端が嵌合する。
【0060】
しかる後、シャンクG1の先端に装着された電極チップ10が収容通路R1の一端側に移動するように溶接ガンGを移動させる。すると、レバー部材3が図示しないコイルバネの付勢力に抗して他方側に揺動して電極取出口20が開放するので電極チップ10の収容ケース2からの取り出しが可能な状態になり、チップ装着体9が電極取出口20から取り出される。このとき、チップ装着体9のチップケース4は、自重により落下するので、溶接ガンGのシャンクG1に電極チップ10のみが装着された状態になる。
【0061】
チップ装着体9の1つが電極取出口20から取り出されると、収容通路R1に並設されたその他の複数のチップ装着体9が押圧機構5のバネ力によって収容通路R1の一端側に移動する。
【0062】
そして、レバー部材3が図示しないコイルバネの付勢力によって一方側に揺動して第1レバー部3aの第1湾曲面部3cが取り出されたチップ装着体9の次のチップ装着体9のチップケース4を第2側面部22の内面に押し付けるとともに、第2レバー部3bの第2湾曲面部3dが取り出されたチップ装着体9の次のチップ装着体9の電極チップ10の外周面に接触する。すなわち、収容通路R1内においてチップ装着体9におけるチップケース4を第1レバー部3aが支持する一方、電極チップ10を第2レバー部3bが支持するようになる。このように、レバー部材3は、チップ装着体9における外径の異なる2つの部分を支持するので、電極チップ10の電極取出口20からの取り出しを待機する待機状態において電極チップ10が傾かなくなり、電極チップ10に確実にシャンクG1を嵌合させることができる。
【0063】
このように、レバー部材3が一方側に揺動することにより、レバー部材3の先端部分が電極取出口20の一部を遮って次の電極チップ10の取り出しを待機する待機状態になる。
【0064】
次に、格納されている各電極チップ10の嵌合凹部10cが下方に向く電極格納装置1からの電極チップ10の取出作業について詳述する。
【0065】
まず、図7に示すように、溶接ロボットが把持する溶接ガンGを移動させて、当該溶接ガンGのシャンクG1の先端をシャンク出入口23aに対応させる。
【0066】
次に、溶接ガンのシャンクG1をシャンク出入口23aに向かって上方に移動させる。すると、レバー部材3の第2レバー部3bに接触する電極チップ10の嵌合凹部10cにシャンクG1の先端が嵌合する。
【0067】
しかる後、シャンクG1の先端に装着された電極チップ10が収容通路R1の一端側に移動するように溶接ガンGを移動させる。すると、レバー部材3が図示しないコイルバネの付勢力に抗して他方側に揺動して電極取出口20が開放し、チップ装着体9が電極取出口20から取り出される。
【0068】
電極格納装置1からチップ装着体9の1つが電極取出口20取り出されると、収容通路R1に並設されたその他の複数のチップ装着体9が押圧機構5のバネ力によって収容通路R1の一端側に移動する。
【0069】
そして、レバー部材3が図示しないコイルバネの付勢力によって一方側に揺動して第1レバー部3aの第1湾曲面部3cが取り出されたチップ装着体9の次のチップ装着体9のチップケース4を第2側面部22の内面に押し付けるとともに、第2レバー部3bの第2湾曲面部3dが取り出されたチップ装着体9の次のチップ装着体9の電極チップ10の側面に接触し、レバー部材3の先端部分が電極取出口20の一部を遮って次の電極チップ10の取り出しが可能な準備状態になる。
【0070】
電極格納装置1から取り出されたチップ装着体9は、上側にチップケース4が位置する状態になっているので、チップケース分離工程11へと運ばれる。
【0071】
チップケース分離工程11には、平面視で略C字状をなす分離用プレート6が配置され、電極チップ10の外径に対応する幅寸法だけ離れた一対の爪部6aの間に電極チップ10を挿入するとともに、下方に移動させる。すると、図9に示すように、両爪部6aにチップケース4が引っ掛かるので、溶接ガンGのシャンクG1に電極チップ10のみが装着された状態になる。
【0072】
次に、収容ケース2の収容通路R1へのチップ装着体9(電極チップ10)の収容作業について詳述する。
【0073】
まず、使用前の電極チップ10とチップケース4とを用意し、図3に示すように、電極チップ10の基部10bの中心軸C2とチップケース4の筒中心線C3とを一致させた状態で電極チップ10を先端側からチップ装着穴4aに挿入する。すると、図4に示すように、電極チップ10の先端部10aが小径部4cに入り込むとともに基部10bが大径部4bに嵌合する。このとき、脱落防止棒7の弾性部7aが電極チップ10の先端部10aに押圧されて弾性変形するので、当該弾性変形した部分の付勢力により弾性部7aが電極チップ10の外周面を押圧する。したがって、チップケース4に装着した電極チップ10がチップケース4から不意に抜け出てしまうのを防ぐことができる。
【0074】
収容ケース2の収容通路R1に収容されているチップ装着体9の数が少なくなると、作業者は、レバー部材3を図示しないコイルバネの付勢力に抗して他方側に揺動させるとともに、チップ装着体9を電極取出口20から押圧機構5のバネ力に抗して収容通路R1内に向けて押し込む。すると、押し込むチップ装着体9のチップケース4の外周面と電極チップ10の外周面とにレバー部材3の先端部分が摺接しながら当該レバー部材3が図示しないコイルバネの付勢力に抗して他方側にさらに揺動して電極取出口20が開放し、チップ装着体9が収容通路R1内に入り込む。
【0075】
チップ装着体9が収容通路R1内に入り込むと、レバー部材3の先端部分がチップ装着体9のチップケース4の外周面と電極チップ10の外周面とを乗り越えるとともにレバー部材3が図示しないコイルバネの付勢力によって一方側に揺動して第1レバー部3aの第1湾曲面部3cがチップケース4を第2側面部22の内面に押し付けるとともに、第2レバー部3bの第2湾曲面部3dがチップケース4に装着された電極チップ10の外周面に接触する。
【0076】
このように、チップ装着体9の押込作業を繰り返し行うことで収容通路R1内に複数の電極チップ10を収容する。
【0077】
尚、チップ装着体9を電極取出口20から収容通路R1内に押し込む際、収容通路R1に対してチップ装着体9をその装着された電極チップ10の開口が正しい収容の状態とは反対向きとなるように収容しようとすると、チップケース4の切欠部4fが収容通路R1のガイドレール8に対応しなくなる。したがって、作業者は、収容通路R1に対してチップ装着体9を間違った状態で収容しようとしていることに気付くことができ、各チップ装着体9を常に正しい状態で収容通路に収容することができる。
【0078】
以上より、本発明の実施形態によると、電極チップ10が装着された各チップケース4を収容通路R1に収容すると、ガイドレール8に対応する切欠部4fによって各チップケース4におけるその筒中心線C3周りの回転が規制された状態で各チップケース4が収容通路R1内を当該収容通路R1に沿って移動可能になる。このとき、チップケース4に装着された電極チップ10は、その先端部10aがチップケース4に対して予め決められた位置になっているので、収容通路R1内の各チップケース4に装着された電極チップ10の先端部10aが同じ方向を向くようになる。したがって、予め設定されたプログラムにより同じ動作を繰り返す溶接ガンGのシャンクG1を電極格納装置1に収容されたどの電極チップ10の嵌合凹部10cに嵌合させても、電極チップ10の先端部10aがシャンクG1の中心線C4周りに常に同じ位置になるので、その後に溶接作業を行っても溶接不良等を引き起こさないようにすることができる。
【0079】
尚、本発明の実施形態では、弾性部7aがウレタン材で構成されているが、弾性変形した際に付勢力で電極チップ10の外周面を押圧できるのであれば、その他の材料で形成されたものであってもよい。
【0080】
また、本発明の実施形態では、第1側面部21の内側面における下側縁部にガイドレール8が設けられているが、第1側面部21の内側面における上側縁部に設けるとともに、そのガイドレール8の位置及び形状にチップケース4の切欠部4fの形状及び形成位置を対応させた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、例えば、自動車生産ラインにおいて使用するスポット溶接用の電極を溶接ガンのシャンクに装着可能な状態で格納しておくスポット溶接用電極格納装置に適している。
【符号の説明】
【0082】
1 スポット溶接用電極格納装置
2 収容ケース(収容体)
3 レバー部材
3a 第1レバー部
3b 第2レバー部
4 チップケース
4a チップ装着穴
4f 切欠部
5 押圧機構
7a 弾性部(弾性体)
8 ガイドレール
9 チップ装着体
10 電極チップ
10a 先端部
10b 基部
10c 嵌合凹部
20 電極取出口
30 揺動軸
C2 中心軸
C3 筒中心線
G 溶接ガン
G1 シャンク
R1 収容通路
X1 第1姿勢
X2 第2姿勢
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9