(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】交流分析システム、交流分析方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20230101AFI20231013BHJP
【FI】
G06Q10/00
(21)【出願番号】P 2021527518
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020021019
(87)【国際公開番号】W WO2020261861
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019122436
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 昌史
(72)【発明者】
【氏名】田中 沙也香
(72)【発明者】
【氏名】天野 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】豊澄 幸太郎
【審査官】木村 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-179393(JP,A)
【文献】特開2008-287690(JP,A)
【文献】特開2012-128700(JP,A)
【文献】特開2016-115003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の場所を含む空間内での第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する交流分析システムであって、
前記第1対象者及び前記第2対象者の各々が携帯する無線通信端末から送信される電波信号の電波強度に基づいて、前記第1対象者及び前記第2対象者の各々の存在位置に関する位置情報を測定する位置測定部と、
前記位置測定部によって測定された前記位置情報、及び、前記複数の場所の各々の属性を表す属性情報に基づいて、前記第1対象者と前記第2対象者との間の交流状況を分析する分析部と、
前記分析部による分析結果を出力する出力部と、
前記位置情報に基づいて前記第1対象者と前記第2対象者とが接近している接近状態の継続時間を測定する接近時間測定部と、を備え、
前記属性情報は、前記複数の場所の各々について設定された係数を含み、
前記分析部は、前記接近状態の継続時間に、前記接近状態が発生している場所での係数を乗算して得た時間に基づいて、前記第1対象者と前記第2対象者との交流状況を分析し、
前記分析部は、前記第1対象者と前記第2対象者との間で行われた交流の履歴に関する交流履歴情報を記憶するデータベースから取得する前記交流履歴情報に基づいて、前記第1対象者と前記第2対象者との間に以前に交流があった場合は、交流がなかった場合に比べて、前記係数の値を高く
し、
前記分析部は、前記第1対象者が携帯する前記無線通信端末と前記第2対象者が携帯する前記無線通信端末との間でやり取りされた通信の履歴に関する通信履歴情報を記憶するデータベースから取得する前記通信履歴情報に更に基づいて、前記第1対象者が携帯する前記無線通信端末と前記第2対象者が携帯する前記無線通信端末との間で以前に通信があった場合は、通信がなかった場合に比べて、前記係数の値を高くする、
交流分析システム。
【請求項2】
前記係数は、前記第1対象者と前記第2対象者とが属するグループ内での前記第1対象者と前記第2対象者との相関関係を表す相関情報に更に基づいて設定される、
請求項1に記載の交流分析システム。
【請求項3】
前記接近状態は、前記第1対象者と前記第2対象者との間の距離が閾値よりも短い状態である、
請求項1又は2に記載の交流分析システム。
【請求項4】
前記閾値は、前記複数の場所の各々で設定されている、
請求項3に記載の交流分析システム。
【請求項5】
前記分析部は、前記接近状態の継続時間が基準時間よりも長い場合に、前記属性情報と前記接近状態の継続時間とに基づいて前記第1対象者と前記第2対象者との交流状況を分析する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の交流分析システム。
【請求項6】
前記基準時間は、前記複数の場所の各々について設定されている、
請求項5に記載の交流分析システム。
【請求項7】
前記分析部は、前記第1対象者及び前記第2対象者が属するグループ内での前記第1対象者及び前記第2対象者の役割に関するグループ情報を記憶するデータベースから取得する前記グループ情報に更に基づいて、前記第1対象者と前記第2対象者との間の交流状況を分析する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の交流分析システム。
【請求項8】
前記属性情報は、前記複数の場所を含む施設のBIM情報に含まれる情報である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の交流分析システム。
【請求項9】
複数の場所を含む空間内での第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する交流分析方法であって、
前記第1対象者及び前記第2対象者の各々が携帯する無線通信端末から送信される電波信号の電波強度に基づいて、前記第1対象者及び前記第2対象者の各々の存在位置に関する位置情報を測定する位置測定処理と、
前記位置測定処理によって測定された前記位置情報、及び、前記複数の場所の各々の属性を表す属性情報に基づいて、前記第1対象者と前記第2対象者との間の交流状況を分析する分析処理と、
前記分析処理での分析結果を出力する出力処理と、
前記位置情報に基づいて前記第1対象者と前記第2対象者とが接近している接近状態の継続時間を測定する接近時間測定処理と、を含み、
前記属性情報は、前記複数の場所の各々について設定された係数を含み、
前記分析処理では、前記接近状態の継続時間に、前記接近状態が発生している場所での係数を乗算して得た時間に基づいて、前記第1対象者と前記第2対象者との交流状況を分析し、
前記分析処理では、前記第1対象者と前記第2対象者との間で行われた交流の履歴に関する交流履歴情報を記憶するデータベースから取得する前記交流履歴情報に基づいて、前記第1対象者と前記第2対象者との間に以前に交流があった場合は、交流がなかった場合に比べて、前記係数の値を高くし、
前記分析処理では、前記第1対象者が携帯する前記無線通信端末と前記第2対象者が携帯する前記無線通信端末との間でやり取りされた通信の履歴に関する通信履歴情報を記憶するデータベースから取得する前記通信履歴情報に更に基づいて、前記第1対象者が携帯する前記無線通信端末と前記第2対象者が携帯する前記無線通信端末との間で以前に通信があった場合は、通信がなかった場合に比べて、前記係数の値を高くする、
交流分析方法。
【請求項10】
1以上のプロセッサに、請求項9に記載の交流分析方法を実行させるための、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交流分析システム、交流分析方法、及びプログラムに関する。より詳細には、本開示は、人と人との交流状況を分析する交流分析システム、交流分析方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、組織におけるユーザやグループ間の交流を分析する組織分析システムを開示する。この組織分析システムでは、各部署に位置センサを配置し、位置センサで位置検出対象者が携行するRFIDタグを検出することによって、位置検出対象者が存在する場所を検出している。この組織分析システムでは、同じ場所に同時に、かつ一定時間以上検出されたユーザ集合を互いに関係があると判断し、対象者間の関係量を算出している。
【0003】
上述の組織分析システムでは、位置センサが設置された部署に同時に存在するユーザ(第1対象者と第2対象者)を互いに関係があると判断しているので、同じ場所にいるだけで、実際には交流していないユーザを関係があると誤判断する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、第1対象者と第2対象者との交流状況を分析する精度を向上可能な交流分析システム、交流分析方法、及びプログラムを提供することにある。
【0006】
本開示の一態様の交流分析システムは、複数の場所を含む空間内での第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する交流分析システムであって、位置測定部と、分析部と、出力部と、接近時間測定部とを備える。前記位置測定部は、前記第1対象者及び前記第2対象者の各々が携帯する無線通信端末から送信される電波信号の電波強度に基づいて、前記第1対象者及び前記第2対象者の各々の存在位置に関する位置情報を測定する。前記分析部は、前記位置測定部によって測定された前記位置情報、及び、前記複数の場所の各々の属性を表す属性情報に基づいて、前記第1対象者と前記第2対象者との間の交流状況を分析する。前記出力部は、前記分析部による分析結果を出力する。前記接近時間測定部は、前記位置情報に基づいて前記第1対象者と前記第2対象者とが接近している接近状態の継続時間を測定する。前記属性情報は、前記複数の場所の各々について設定された係数を含む。前記分析部は、前記接近状態の継続時間に、前記接近状態が発生している場所での係数を乗算して得た時間に基づいて、前記第1対象者と前記第2対象者との交流状況を分析する。前記分析部は、前記第1対象者と前記第2対象者との間で行われた交流の履歴に関する交流履歴情報を記憶するデータベースから取得する前記交流履歴情報に基づいて、前記第1対象者と前記第2対象者との間に以前に交流があった場合は、交流がなかった場合に比べて、前記係数の値を高くする。前記分析部は、前記第1対象者が携帯する前記無線通信端末と前記第2対象者が携帯する前記無線通信端末との間でやり取りされた通信の履歴に関する通信履歴情報を記憶するデータベースから取得する前記通信履歴情報に更に基づいて、前記第1対象者が携帯する前記無線通信端末と前記第2対象者が携帯する前記無線通信端末との間で以前に通信があった場合は、通信がなかった場合に比べて、前記係数の値を高くする。
【0007】
本開示の一態様の交流分析方法は、複数の場所を含む空間内での第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する交流分析方法であって、位置測定処理と、分析処理と、出力処理と、接近時間測定処理とを含む。前記位置測定処理では、前記第1対象者及び前記第2対象者の各々が携帯する無線通信端末から送信される電波信号の電波強度に基づいて、前記第1対象者及び前記第2対象者の各々の存在位置に関する位置情報を測定する。前記分析処理では、前記位置測定処理によって測定された前記位置情報、及び、前記複数の場所の各々の属性を表す属性情報に基づいて、前記第1対象者と前記第2対象者との間の交流状況を分析する。前記出力処理では、前記分析処理での分析結果を出力する。前記接近時間測定処理では、前記位置情報に基づいて前記第1対象者と前記第2対象者とが接近している接近状態の継続時間を測定する。前記属性情報は、前記複数の場所の各々について設定された係数を含む。前記分析処理では、前記接近状態の継続時間に、前記接近状態が発生している場所での係数を乗算して得た時間に基づいて、前記第1対象者と前記第2対象者との交流状況を分析する。前記分析処理では、前記第1対象者と前記第2対象者との間で行われた交流の履歴に関する交流履歴情報を記憶するデータベースから取得する前記交流履歴情報に基づいて、前記第1対象者と前記第2対象者との間に以前に交流があった場合は、交流がなかった場合に比べて、前記係数の値を高くする。前記分析処理では、前記第1対象者が携帯する前記無線通信端末と前記第2対象者が携帯する前記無線通信端末との間でやり取りされた通信の履歴に関する通信履歴情報を記憶するデータベースから取得する前記通信履歴情報に更に基づいて、前記第1対象者が携帯する前記無線通信端末と前記第2対象者が携帯する前記無線通信端末との間で以前に通信があった場合は、通信がなかった場合に比べて、前記係数の値を高くする。
【0008】
本開示の一態様のプログラムは、1以上のプロセッサに、前記交流分析方法を実行させるためのプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一態様の交流分析システムの概略的なシステム構成図である。
【
図2】
図2は、同上の交流分析システムが適用されるオフィスの平面図である。
【
図3】
図3は、同上の交流分析システムの分析対象である対象者間の第1交流形態の説明図である。
【
図4】
図4は、同上の交流分析システムの分析対象である対象者間の第2交流形態の説明図である。
【
図5】
図5は、同上の交流分析システムの分析対象である対象者間の第3交流形態の説明図である。
【
図6】
図6は、同上の交流分析システムが備える出力部の出力画面の説明図である。
【
図7】
図7は、同上の交流分析システムが備える出力部の出力画面の説明図である。
【
図8】
図8は、同上の交流分析システムが備える出力部の出力画面の説明図である。
【
図9】
図9は、同上の交流分析システムが備える出力部の出力画面の説明図である。
【
図10】
図10は、同上の交流分析システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図11】
図11は、同上の交流分析システムにおいて電子的な交流履歴の履歴情報から求めた構成員間の相関関係を示す相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
(1)概要
以下、本実施形態に係る交流分析システム1を
図1~
図10に基づいて説明する。
【0011】
本実施形態の交流分析システム1(
図1参照)は、例えば、企業、役所、又は各種の団体等の複数の構成員が属するグループにおいて、任意の1人の構成員を第1対象者とし、この第1対象者と、グループ内の他の構成員である第2対象者との交流状況を分析する。ここにおいて、交流分析システム1の分析対象である「交流」とは、第1対象者が、1又は複数人の第2対象者と直接対面して会話をしたり会議をしたりすることをいう。交流分析システム1は、例えば、第1対象者と第2対象者とが互いに近付いた接近状態で会話等を行う時間を求めており、この時間の長さに基づいて第1対象者と第2対象者との交流状況を分析する。なお、接近状態での第1対象者と第2対象者との間の距離は、第1対象者及び第2対象者が存在する場所に応じて変化し得る。接近状態での第1対象者と第2対象者との間の距離は、執務室、休憩場所等のオープンエリアでは小声で話せる1~2m程度の距離になり、会議室のようなクローズスペースでは、例えば、会議室の大きさに応じて変化し得る。
【0012】
以下の実施形態では、交流分析システム1が、例えば企業において当該企業に属する複数の構成員の交流状況を分析する場合を例に説明を行う。ここにおいて、企業に属する複数の構成員のうち、分析対象の構成員を第1対象者といい、複数の構成員のうち第1対象者以外の構成員を第2対象者という。交流分析システム1は、複数の構成員の各々を第1対象者として選択し、選択した第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する。そして、交流分析システム1は、複数の構成員の全てに対して交流状況を分析する処理を行うことで、当該企業に属する全ての構成員の交流状況を分析することができる。
【0013】
図2は、複数の構成員が活動する施設であるオフィス100の一例を示す平面図である。このオフィス100は、複数の構成員が属する企業の2つの部署(例えば第1部署と第2部署)によって主に使用されており、交流分析システム1は、第1部署及び第2部署に属する複数の構成員の交流状況を分析する。
【0014】
オフィス100では、休憩又は打合せに用いられる休憩室R3を間にして両側に執務室R1,R2が配置されている。また、執務室R1,R2及び休憩室R3のそれぞれに隣接して会議室R4が設けられている。執務室R1は第1部署に属する構成員によって主に使用され、執務室R2は第2部署に属する構成員によって主に使用される。執務室R1,R2には、それぞれ、数人が同時に執務可能な複数の執務机DK1が設置されているが、各構成員が専有的に使用する座席はなく、各構成員は空いている場所を使用して執務する。なお、執務室R1,R2において各構成員が執務する場所が決まっていないことは必須ではなく、執務室R1,R2において各構成員が予め決められた場所を使用して執務してもよい。
【0015】
執務室R1の内部は、複数の執務机DK1が配置された第1エリアA11と、少人数が集まって打合せを行うための場所である第2エリアA12とに分かれている。第2エリアA12には打合せ用に複数のテーブルT11が置かれている。第2エリアA12はオープンスペースであり、第1エリアA11と第2エリアA12との間には仕切りは設けられていない。第1エリアA11及び第2エリアA12は、出入口D11を介して休憩室R3と繋がっている。
【0016】
同様に、執務室R2の内部は、複数の執務机DK2が置かれた第1エリアA21と、少人数が集まって打合せを行うための場所である第2エリアA22とに分かれている。第2エリアA22には打合せ用に複数のテーブルT21が置かれている。第2エリアA22はオープンスペースであり、第1エリアA21と第2エリアA22との間には仕切りは設けられていない。第1エリアA21及び第2エリアA22は、出入口D21を介して休憩室R3と繋がっている。
【0017】
休憩室R3は、休憩等に使用される休憩スペースA31と、打合せ等に使用される打合せスペースA32とに分かれている。休憩スペースA31には複数のテーブルT31が置かれており、飲食等をしながら休憩することができる。打合せスペースA32には、テーブルB2とソファB1とが置かれたボックス席が複数(例えば3つ)配置されている。休憩スペースA31と打合せスペースA32との間には仕切りは設けられておらず、出入口D11,D21を介してそれぞれ執務室R1,R2と繋がっている。
【0018】
会議室R4は、執務室R1に隣接して設けられた2つの会議エリアA41と、執務室R2に隣接して設けられた2つの会議エリアA42と、休憩室R3に隣接して設けられた2つの会議エリアA43とを有する。各会議エリアA41は出入口D12を介して執務室R1に繋がっており、各会議エリアA41には会議用のテーブルT41が配置されている。各会議エリアA42は出入口D22を介して執務室R2に繋がっており、各会議エリアA42には会議用のテーブルT42が配置されている。各会議エリアA43は出入口D3を介して休憩室R3に繋がっており、各会議エリアA43には会議用のテーブルT43が配置されている。
【0019】
ここで、オフィス100には、例えば、執務室R1,R2及び休憩室R3の天井に、複数の構成員X1~X3(
図1参照)がそれぞれ携帯する無線通信端末40から定期的又は不定期的に送信される電波信号を受信可能な複数の受信端末30が配置されている。ここで、執務室R1,R2、休憩室R3、及び会議室R4の天井には、それぞれ、複数の受信端末30が配置されている。なお、
図2に示す受信端末30の数及び配置は一例であり、オフィス100の形状、又は、オフィス100内での電波環境等に応じて、適宜変更が可能である。また、
図1には3人の構成員X1~X3を図示しているが、構成員の人数は3人に限定されず、大規模なオフィス100では構成員の数は数百人になると想定される。
【0020】
本実施形態の交流分析システム1は、オフィス100の天井等に設置された複数の受信端末30と、各構成員が携帯する無線通信端末40とを含むLPS(Local Positioning System)を利用して、無線通信端末40を携帯する構成員の位置を測定している。なお、LPSについては「(2.1)構成」において詳細に説明する。
【0021】
本実施形態の交流分析システム1は、複数の場所を含む空間R100(
図2参照)内での第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する。交流分析システム1は、位置測定部11と、分析部12と、出力部13とを備える。
【0022】
位置測定部11は、第1対象者及び第2対象者の各々が携帯する無線通信端末40から送信される電波信号の電波強度に基づいて、第1対象者及び第2対象者の各々の存在位置に関する位置情報を測定する。
【0023】
分析部12は、位置測定部11によって測定された位置情報、及び、複数の場所の属性を表す属性情報に基づいて、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する。
【0024】
出力部13は、分析部12による分析結果を出力する。
【0025】
上述のように、位置測定部11は、第1対象者及び第2対象者が携帯する無線通信端末40から送信される電波信号の電波強度に基づいて無線通信端末40の位置、つまり無線通信端末40を携帯する第1対象者及び第2対象者の存在位置の位置情報を測定する。例えば、位置測定部11は、無線通信端末40から送信される電波信号を複数の受信端末30が受信した場合に、各受信端末30が受信した電波信号の電波強度に基づいて各受信端末30から無線通信端末40までの距離をそれぞれ求める。そして、位置測定部11は、各受信端末30の設置場所の三次元座標と、各受信端末から無線通信端末40までの距離とに基づいて、無線通信端末40の存在位置のXY座標を求めることができる。したがって、位置測定部11は、無線通信端末40の存在位置のXY座標を、無線通信端末40を携帯する対象者の存在位置に関する位置情報として求めることができる。
【0026】
ここで、分析対象の第1対象者が第2対象者と交流する場合、第1対象者と第2対象者との交流形態には、
図3~
図5に示すような3つの交流形態が想定される。
【0027】
図3に示す第1交流形態は、第1エリアA11において、執務机DK1で執務中の第1対象者(例えば構成員X1)が、同じ執務机DK1で執務中の第2対象者(例えば構成員X2~X6のいずれか)と交流する交流形態である。この交流形態では、第1対象者(例えば構成員X1)と、交流相手の第2対象者との間の距離は1~3m程度の距離になる。ただし、執務机DK1で執務中の第1対象者が、同じ執務机DK1で執務中の他の構成員と常に交流している可能性は低い。第1対象者が同じ執務机で執務中の他の構成員と実際に交流している時間は、第1対象者が他の構成員と同じ執務机DK1にいる時間のごく一部(例えば数%に満たない程度)の時間であるとの調査結果が得られている。したがって、第1対象者と第2対象者とが同じ執務机DK1で執務している場合、第1対象者と第2対象者とが接近している接近状態の継続時間に対して、第1対象者と第2対象者が実際に交流している交流時間は短くなると予測される。
【0028】
図4に示す第2交流形態は、第1エリアA11の執務机DK1で執務中の第1対象者(例えば構成員X5)が、別の場所から来た第2対象者(例えば構成員X7)と交流する交流形態である。このように、執務机DK1で執務中の第1対象者に、別の場所から来た第2対象者が接近している場合、第1対象者と第2対象者とが交流している可能性が高いと予測される。なお、執務用の第1エリアA11は、他の構成員との交流を主な目的とするエリアでは無いため、第1対象者(構成員X5)が第2対象者(構成員X7)と会話(交流)する場合、交流相手以外の構成員への配慮から声量を小さくするのが一般的である。そのため、第2交流形態では、第1対象者と第2対象者とは小声で会話できる程度の距離(例えば2m以下の距離)に近付いた接近状態で交流を行うと予測される。また、第2交流形態で第1対象者と第2対象者とが交流する時間は、打合せや会議を目的としたエリアで交流する第3交流形態での時間に比べて短い時間(例えば1~10分程度)であると予測される。
【0029】
また、
図5に示す第3交流形態は、第1エリアA11の執務机DK1にいた第1対象者(例えば構成員X3)が打合せ用の第2エリアA12に移動し、第2エリアA12において2人の第2対象者(例えば構成員X7,X8)と交流する交流形態である。第1対象者が打合せ用の第2エリアA12に移動し、第2エリアA12において第1対象者と第2対象者とが接近している場合、第1対象者と第2対象者とが交流している可能性が高いと予測される。
【0030】
ここで、オープンスペースである第2エリアA12では、会話相手以外に会話が聞かれないように、声量を小さくするため、第1対象者と第2対象者とはできるだけ近づくと予想される。なお、第1対象者と第2対象者との距離は第2エリアA12の広さ、及び、第2エリアA12に配置された什器(テーブルT11等)の大きさによって変化し得る。また、第1対象者と第2対象者とが交流する交流時間は、執務用の第1エリアA11で行われる交流に比べて一般的に長くなると予測され、その時間は様々である。また、第1対象者及び第2対象者が共用スペースである休憩室R3にいる場合も、会話相手以外に会話が聞かれないように、声量を小さくするため、第1対象者と第2対象者とはできるだけ近づくと予測される。
【0031】
また、第1対象者及び第2対象者が独立した会議エリアA41に存在する場合、第1対象者及び第2対象者は外部への音漏れを気にせず、会議エリアA41にいる全ての対象者に聞こえる程度の声量で会話する。したがって、第1対象者が会議エリアA41に存在する場合、第1対象者は会議エリアA41内の全ての対象者と交流していると判断できる。また、第1対象者及び第2対象者は会議エリアA41内のどこにいてもよく、第1対象者と第2対象者との距離は会議エリアA41の大きさによって決定される。
【0032】
このように、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する空間R100には、複数の場所(第1エリアA11,A21、第2エリアA12,A22、休憩スペースA31、打合せスペースA32、及び会議エリアA41~A43等)が含まれている。そして、第1対象者及び第2対象者が存在する場所の属性(例えば用途等)によって、第1対象者及び第2対象者の間で交流が発生する確率、第1対象者と第2対象者との間の距離、及び、交流が行われる時間等が変化すると予測される。なお、第1対象者及び第2対象者が存在する場所の属性を表す属性情報とは、第1対象者及び第2対象者が存在する場所の用途、広さ、及び形のうちの少なくとも1つを表す情報である。また、第1対象者及び第2対象者が存在する場所の属性を表す属性情報とは、この場所に配置されている什器(例えば執務机又はテーブル等)の情報を含んでもよい。この属性情報は、オフィス100のような施設のBIM(Building Information Model)情報から取得される。ここにおいて、BIM情報は、オフィス100のような施設の空間形状及び寸法の情報だけではなく、空間(場所)の属性を表す属性情報を含み得る。また、BIM情報は、空間内に配置される什器(執務机DK1,DK2、テーブルT11、T21、T31、T41~T43、B2、ソファB1及び椅子等)の形状、大きさ、数、及び配置位置等の情報を含み得る。
【0033】
本実施形態では、分析部12が、位置測定部11によって測定された位置情報だけでなく、第1対象者及び第2対象者が存在する場所の属性を表す属性情報にも基づいて交流状況を分析している。したがって、分析部12は、場所の属性を表す属性情報を考慮して、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析することができる。よって、第1対象者及び第2対象者が存在する場所の属性によって対象者間の交流形態が異なると予測される場合でも、第1対象者と第2対象者との交流状況を分析する精度を向上可能な交流分析システム1を提供できる。また、分析部12は、第1対象者及び第2対象者の位置情報と、場所の属性情報とに基づいて対象者間の交流状況を分析しているので、例えば対象者間の交流状況を分析するために対象者の音声を解析する場合に比べて分析にかかる処理を軽減できる。
【0034】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る交流分析システム1について図面を参照して詳しく説明する。
【0035】
(2.1)構成
交流分析システム1は、
図1に示すように、サーバ10と、オフィス100の天井に設置された複数の受信端末30と、を備える。サーバ10は、位置測定部11と、分析部12と、出力部13とを少なくとも備える。
【0036】
複数の受信端末30の各々は、複数の構成員がそれぞれ携帯する複数の無線通信端末40と通信する機能を備える。各受信端末30には個別の受信端末ID(例えばネットワークID、又は、MACアドレス等)が割り当てられている。複数の構成員が携帯する無線通信端末40と受信端末30との間の通信方式は例えばBluetooth(登録商標)である。なお、無線通信端末40と受信端末30との間の通信方式はBluetoothに限定されず、WiFi(登録商標)又は920MHz帯の特定小電力無線等でもよい。無線通信端末40は例えばスマートフォンのような携帯通信端末であるが、Bluetoothの通信機能を有するタグなどでもよい。無線通信端末40には個別の携帯端末ID(例えばネットワークID、又は、MACアドレス等)が割り当てられている。受信端末30は、無線通信端末40から送信される電波信号を受信した場合に、電波信号の電波強度を測定する機能を有している。受信端末30は、無線通信端末40から送信される電波信号を受信すると、電波信号に含まれる無線通信端末40の携帯端末IDと、電波信号の電波強度と、当該受信端末30の受信端末IDとをサーバ10に送信する。受信端末30とサーバ10との間の通信方式は、例えば、Ethernet(登録商標)等の有線通信方式であるが、Bluetooth、WiFi、又は920MHz帯の特定小電力無線等の免許が不要な無線通信方式でもよい。
【0037】
ここで、無線通信端末40は、例えばオフィス100内に存在する場合、携帯端末IDを含む電波信号を定期的に送信する。無線通信端末40は、例えばGPS等の測位情報に基づいてオフィス100内に入ったことを検知すると、携帯端末IDを含む電波信号を定期的に無線送信する。なお、無線通信端末40は、例えばオフィス100への入退を管理する入退管理システムからオフィス100への入場を通知する信号を受信すると、携帯端末IDを含む電波信号を定期的に無線送信してもよい。ここで、無線通信端末40から送信された電波信号が複数の受信端末30によって受信されると、複数の受信端末30の各々は受信した電波信号の電波強度を測定し、携帯端末IDと電波強度と自身の受信端末IDとを含む通信信号をサーバ10に送信する。
【0038】
サーバ10は、位置測定部11と、分析部12と、出力部13と、を備える。また、サーバ10は、通信部14を更に備えている。
【0039】
サーバ10は、例えば、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしての1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを主構成とする。コンピュータシステムの1以上のメモリに記録されたプログラムを1以上のプロセッサが実行することによって、位置測定部11及び分析部12の機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムの1以上のメモリに予め記録されている。なお、プログラムは、電気通信回線を通じて提供されてもよいし、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0040】
通信部14は、複数の受信端末30との間で有線通信方式により通信を行う。通信部14は、受信端末30から携帯端末IDと電波強度と受信端末IDとを含む通信信号を受信すると、受信した携帯端末ID、電波強度、及び受信端末IDのデータを位置測定部11に出力する。なお、通信部14は、複数の受信端末30との間で無線通信方式により通信を行ってもよい。
【0041】
位置測定部11は、通信部14から携帯端末ID、電波強度、及び受信端末IDのデータが入力されると、携帯端末IDをもとに同じ無線通信端末40からの電波信号を受信した受信端末30の受信端末IDと電波強度を収集する。ここで、受信端末30が無線通信端末40から受信する電波信号の電波強度は、受信端末30と無線通信端末40との間の距離が長いほど減衰する。したがって、位置測定部11は、受信端末30が受信した電波信号の電波強度をもとに、受信端末30と無線通信端末40との間の距離を算出する。サーバ10には、各受信端末30の受信端末IDと、各受信端末30が設置されている設置場所の三次元座標の情報とが対応付けて登録されており、位置測定部11は、受信端末IDをもとに受信端末30の設置位置の三次元座標を取得する。そして、位置測定部11は、複数の受信端末30の設置位置の三次元座標と、複数の受信端末30の各々と無線通信端末40との間の距離とに基づいて、三角測量の原理で無線通信端末40の存在位置に関する位置情報として座標(例えばXY平面での二次元座標)を算出する。位置測定部11は、無線通信端末40の位置情報と、無線通信端末40の存在位置が測定されたときの時刻情報とを位置情報DB(Database)21に登録する。なお、位置測定部11は、無線通信端末40から送信される電波信号を複数パケット分バッファしてもよく、複数パケット分の電波信号の電波強度を統計処理することで、無線通信端末40の位置を測位する精度を高めることができる。
【0042】
また、サーバ10は、地図情報DB22と、第1属性DB23と、第2属性DB24と、電子交流履歴DB25と、交流履歴DB26とを備える。
【0043】
地図情報DB22には、オフィス100のような施設のBIM情報が地図情報として保存されている。BIM情報には、オフィス100内を複数に区分けして設けられた複数の場所(例えば執務室R1,R2、休憩室R3、及び会議室R4内の各エリア又はスペース等)の各々について、複数の場所の属性を示す属性情報が含まれている。
【0044】
第1属性DB23には、地図情報DB22に保存されたBIM情報からサーバ10が取得したオフィス100内の複数の場所の属性を表す属性情報(以下では第1属性情報ともいう)が保存されている。すなわち、属性情報は、複数の場所を含む施設(本実施形態ではオフィス100)のBIM情報に含まれる情報である。
【0045】
第2属性DB24には、第1部署及び第2部署に属する複数の構成員の各々について、複数の構成員が属する組織(例えば企業)内での各構成員の属性を表す第2属性情報が保存されている。第2属性情報は、複数の構成員(第1対象者及び第2対象者)が属するグループ内での第1対象者及び第2対象者の役割に関するグループ情報である。第2属性情報(グループ情報)には、グループ内での役割として、例えば、各構成員の職種(例えば総務、経理、営業、開発、製造等)、各構成員が所属する部署名(例えば部又は課等)、各構成員の勤務地、各構成員の役職名、及び、各構成員が携わるプロジェクトの名称等の情報が含まれる。また、第2属性DB24には、各構成員の識別情報(例えば氏名、個人ID等)と、各構成員が携帯する無線通信端末40の携帯端末IDとが対応付けて登録されている。
【0046】
電子交流履歴DB25には、複数の構成員(第1対象者及び第2対象者)の間でやり取りされた通信の履歴に関する通信履歴情報が記憶されている。例えば、通信履歴情報には、複数の構成員の間で行われる電子的な交流の履歴に関する情報が含まれる。サーバ10は、例えば、複数の構成員が無線通信端末40等の情報端末を利用して行う電子的な交流の履歴に関する履歴情報を収集し、収集した履歴情報を電子交流履歴DB25に保存する。ここで、情報端末を利用して行われる電子的な交流には、例えば、電子メールの送信及び受信によって行われる交流、又は、チャット等のサービスを利用してリアルタイムで電子的なメッセージやりとりすることによって行われる交流等がある。また、通信履歴情報には、複数の構成員の間で行われる音声通話の履歴、又は、複数の構成員の間でやり取りされるファクシミリの送信又は受信履歴等の情報が含まれていてもよい。
【0047】
交流履歴DB26には、複数の構成員(第1対象者及び第2対象者)の間で行われた交流の履歴に関する交流履歴情報が記憶されている。ここで、第1対象者と第2対象者との間で行われる交流は、第1対象者と第2対象者とが実空間で行った交流を少なくとも含む。サーバ10は、例えば、複数の構成員が登録したスケジュール情報に基づいて、複数の構成員が同じ会議又は打ち合せ等に参加していれば、同じ会議又は打合せに参加した複数の構成員が交流していると判断する。サーバ10は、各構成員のスケジュール情報などから複数の構成員がした交流に関する交流履歴情報を作成し、交流履歴DB26に記憶させる。
【0048】
なお、交流履歴DB26には、電子交流履歴DB25に記憶された通信履歴情報に基づいて作成された交流履歴情報が記憶されていてもよい。交流履歴DB26には、例えば電子交流履歴DB25に保存されている電子的な交流に関する情報に基づいてサーバ10が作成した構成員間の関係性を示す交流履歴が保存される。具体的には、サーバ10は、電子交流履歴DB25に保存されている履歴情報をもとに、各構成員が受信した電子メールの送信元アドレス、各構成員が送信した電子メールの送信先アドレスの情報から、構成員ごとに業務上のつながりがある構成員を検出する。
図11は、電子交流履歴DB25に保存されている履歴情報から、例えば、所定の期間内(例えば1週間)に構成員X1~X4の間でやりとりされた電子メールの数を抽出し、その抽出結果をもとに作成された相関図を示している。
図11において、各構成員X1~X4を表すマークをつなぐ線の太さが、構成員間でやりとりされた電子メールの数に応じて変化し、電子メールの数が多いほど線の太さが太くなっている。ここで、構成員間でやりとりした電子メールの数が所定の基準値よりも多い場合、サーバは、業務上の関係性があると判断し、構成員間の関係性を示す交流履歴を交流履歴DB26に記憶させる。このように、サーバ10は、複数の構成員の間で行われる電子的な交流の履歴に基づいて、構成員間の関係性の有無を判断して、構成員の関係性を示す交流履歴を自動的に作成している。したがって、新規のプロジェクトが立ち上がるなどして構成員同士の関係性が変化した場合でも、プロジェクトに参加する構成員の情報を、交流分析システム1のユーザ等が登録する作業を行う必要がないという利点がある。
【0049】
分析部12は、位置情報DB21に保存されている第1対象者及び第2対象者の位置情報と、第1属性DB23から取得する第1対象者及び第2対象者が存在する場所の属性情報に基づいて、第1対象者及び第2対象者の交流状況を分析する。分析部12は、第2属性DB24に記憶されたグループ情報、電子交流履歴DB25に記憶された通信履歴情報、及び、交流履歴DB26に記憶された交流履歴情報のうちの少なくとも1つに更に基づいて、第1対象者及び第2対象者の交流状況を分析してもよい。
【0050】
出力部13は、分析部12による交流状況の分析結果を、例えば液晶ディスプレイ等の表示デバイスに表示する。出力部13は、分析部12によって作成された画像データを表示デバイスの画面に表示させており、交流分析システム1のユーザは、表示デバイスの画面に表示された分析結果を視覚的に把握することができる。
【0051】
ここで、分析部12は、接近時間測定部121、交流時間推定部122、交流相関分析部123、及びカテゴリ分析部124等の機能を有している。
【0052】
接近時間測定部121は、位置情報DB21に保存されている無線通信端末40(つまり各構成員)の位置情報及び時刻情報に基づいて、第1対象者と第2対象者との間の距離が閾値よりも短い接近状態が連続している継続時間を測定する。つまり、交流分析システム1は、位置情報に基づいて第1対象者と第2対象者とが接近している接近状態の継続時間を測定する接近時間測定部121を更に備えている。具体的には、接近時間測定部121は、第1対象者が携帯する無線通信端末40の存在位置と、第2対象者が携帯する無線通信端末40の存在位置との間の距離が閾値よりも短い状態を接近状態と判定する。接近時間測定部121は、接近状態が発生していると判断すると、この接近状態が連続している継続時間(以下では、この継続時間を接近時間ともいう。)を測定する。この閾値は、複数の場所の各々で設定された値であり、第1属性DB23に保存された属性情報(第1属性情報)に含まれている。ここにおいて、場所の属性とは、例えばその場所が利用される主たる用途である。この属性情報は、第1属性DB23に保存されている第1属性情報から取得される。下記の表1は、分析部12において属性情報に基づいて場所ごとに設定された閾値の値を示しており、場所の用途に応じて閾値の値が設定されている。なお、表1では、場所の属性として場所の用途に着目し、例えば4種類の用途(会議用、打合せ用、休憩用、執務用)のそれぞれについて閾値を設定しているが、他の用途について閾値を設定してもよいし、閾値の値も適宜変更が可能である。
【0053】
【0054】
表1に示すように、第1対象者が執務用の場所である第1エリアA11,A21に存在する場合、第1対象者と第2対象者とは、周囲に他の構成員がいることから小声で話すと予測される。そのため、第1対象者と第2対象者との距離は小声で話しができる程度の距離(例えば2m程度)になると予測される。したがって、執務用の場所である第1エリアA11,A21での閾値は例えば2mに設定される。また、打合せ用の場所である第2エリアA12,A22又は打合せスペースA32での閾値は、第2エリアA12,A22又は打合せスペースA32に配置されたテーブルT11,T21又はB2の大きさに基づいて設定される。テーブルT11,T21又はB2が2人掛けのテーブルであれば、閾値は例えば2mに設定され、テーブルT11,T21又はB2が6人掛けのテーブルであれば、閾値は例えば5mに設定される。また、休憩用の場所である休憩スペースA31での閾値は、休憩スペースA31に配置されたテーブルT31の大きさに基づいて設定され、例えば2-3mの距離に設定される。また、会議用の場所である会議エリアA41~A43での閾値は、会議エリアA41~A43の大きさに基づいて設定されればよい。
【0055】
交流時間推定部122は、接近時間測定部121によって測定された接近時間に対して、場所ごとに設定された係数を乗算することで、第1対象者と第2対象者とが交流していると推測される交流時間を求める。この係数は、複数の場所の各々で設定された値であり、第1属性DB23に保存された属性情報(第1属性情報)に含まれている。この係数は、例えば、第1対象者と第2対象者とが接近している接近状態の接近時間に対して、第1対象者と第2対象者とが実際に交流していると推測される交流時間の割合を表す交流発生確率である。交流発生確率は、第1対象者と第2対象者とが接近している場所の属性によって変化し得る。第1対象者が第1対象者の執務エリアにおいて第2対象者と接近している場合は、第1対象者が他の構成員との交流を目的とした場所(例えば交流エリア等)で第2対象者と接近している場合に比べて、交流発生確率は小さい値に設定される。上記の表1に、場所の属性に応じて設定される交流発生確率の一例を示している。なお、表1に示した交流発生確率の値は一例であり、適宜変更が可能である。
【0056】
交流相関分析部123(分析部12)は、接近状態の継続時間と、接近状態が発生している場所の属性情報とに基づいて、第1対象者と第2対象者との交流状況を分析する。具体的には、交流相関分析部123は、交流時間推定部122によって推定された交流時間に基づいて、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を表す度合い(指標)を求めることで、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する。つまり、交流相関分析部123(分析部12)は、接近状態の継続時間に、接近状態が発生している場所での係数を乗算して得た時間に基づいて、第1対象者と第2対象者との交流状況を分析する。ここにおいて、本実施形態では、交流相関分析部123は、交流時間推定部122によって推定された第1対象者と第2対象者との交流時間を、交流状況を表す度合いとして求めている。交流相関分析部123は、複数の構成員の間の交流状況を表す度合いを求めると、複数の構成員の間の交流状況をマトリックス表示するための画面データを作成する。
図6は、表示デバイスの画面131に表示された分析結果の一例である。
図6の例では複数の構成員X1,X2,X3の間の交流時間が数値で表示されているので、交流分析システム1のユーザは画面131に表示された交流時間の表に基づいて構成員間の交流状況を視覚的に把握できる。
【0057】
また、交流相関分析部123は、複数の構成員の間の交流状況を表す度合いを求めると、複数の構成員の間の交流状況を相関図で表示するための表示画面の画面データを作成してもよい。
図7は、表示デバイスの画面131に表示される相関図の一例である。
図7の相関図では、4人の構成員X1~X4についての交流状況の分析結果が表示されている。
図7において、4人の構成員X1~X4を示すマークの間をつなぐ線の線種及び太さが、構成員間の交流時間の長短によって変化する。すなわち、交流時間が長いほど構成員間をつなぐ線の太さが太くなる。なお、構成員間の交流時間が一定時間よりも短い場合、構成員間をつなぐ線は点線で表示される。また、相関図において構成員間の交流時間の長短に応じて、構成員間をつなぐ線の色又は線種を変化させてもよい。このように、出力部13は、交流状況の分析結果を表示デバイスに表示しているので、交流分析システム1のユーザは分析結果を視覚的に把握することができる。なお、交流相関分析部123は、
図7において、各構成員のマークの間をつなぐ線に近接して、構成員間の交流時間を数字で表示してもよく、交流分析システム1のユーザは分析結果を数値でも把握できる。
【0058】
なお、
図6及び
図7に示す表示例は一例であり、交流相関分析部123が、分析結果を表示させる仕方は適宜変更が可能である。
【0059】
カテゴリ分析部124は、交流時間推定部122による推定結果に基づいて、カテゴリ別に第1対象者と第2対象者との間の交流状況を表す度合いを整理することで、交流状況を分析する。例えば、カテゴリ分析部124は、第2属性DB24に保存された組織内での各構成員の属性を表す第2属性情報と、交流履歴DB26に保存された交流履歴の情報とに基づいて、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を表す度合いを整理する。
【0060】
例えば、カテゴリ分析部124は、第1対象者X1と、組織内で第1対象者X1の部下にあたる第2対象者X11~X13との間の交流時間をそれぞれ集計する。そして、カテゴリ分析部124は、第1対象者X1と第2対象者X11~X13との間の交流状況を相関図で表す表示画面(
図8参照)の画面データを作成する。この相関図では、各対象者のマークの間をつなぐ線の太さが交流時間の長短を表しており、線の太さが太いほど交流時間が長いことを示している。このように、第1対象者X1と、その部下の第2対象者X11~X13との間の交流状況を抽出し、相関図として表示させることで、ある上司とその部下との交流状況を定量的に評価することができる。例えば、
図8の例では、上司である第1対象者X1と第2対象者X12,X13との交流時間に比べて、第1対象者X1と第2対象者X11との交流時間が短いことを視覚的に把握できる。
【0061】
また、カテゴリ分析部124は、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を、対象者が交流する場所の属性で整理することによって、交流状況を分析してもよい。カテゴリ分析部124は、第1部署に属する構成員と、第2部署に属する構成員との各々について、執務室R1又はR2と、休憩室R3と、会議室R4との各々で行われた交流時間をそれぞれ集計する。そして、カテゴリ分析部124は、交流時間の集計結果をグラフで表示する表示画面(
図9参照)の画面データを作成する。
図9において、実線E1は第1部署に属する構成員の集計結果を示し、二点鎖線E2は第2部署に属する構成員の集計結果を示す。この結果から、第1部署及び第2部署の各々で、どの場所で交流が活発に行われているのかを視覚的に把握することができる。
【0062】
(2.2)動作説明
本実施形態の交流分析システム1の動作を
図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0063】
まず、交流分析システム1の交流時間推定部122は、第1属性DB23から場所ごとの属性を表す第1属性情報を取得し、第2属性DB24から各構成員の第2属性情報を取得する(S1)。
【0064】
その後、オフィス100に設置された受信端末30が、各構成員が携帯する無線通信端末40から送信された電波信号を受信すると、無線通信端末40の携帯端末IDと、電波信号の電波強度と、当該受信端末30の受信端末IDとを含む通信信号をサーバ10に送信する。
【0065】
サーバ10の通信部14が受信端末30から送信された通信信号(受信情報)を受信(取得)すると(S2)、位置測定部11は、受信情報に含まれる無線通信端末40の携帯端末IDと、電波信号の電波強度と、受信端末30の受信端末IDとを位置情報DB21に保存する。無線通信端末40からの電波信号を複数の受信端末30が受信した場合、位置測定部11は、複数の受信端末30の三次元位置と、電波強度から求めた受信端末30から無線通信端末40までの距離とに基づき無線通信端末40の位置情報を算出(測定)する(S3)。
【0066】
そして、接近時間測定部121は、複数の構成員が携帯する無線通信端末40の位置情報に基づき、ある構成員(第1対象者)が携帯する無線通信端末40との距離が閾値よりも短い無線通信端末40(第2対象者が携帯する無線通信端末40)を抽出する。そして、接近時間測定部121は、第1対象者と第2対象者との間の距離が閾値よりも短い接近状態が継続している継続時間(接近時間)を測定する(S4)。
【0067】
接近時間測定部121によって接近状態の継続時間が測定されると、交流時間推定部122は、継続時間に、第1対象者と第2対象者とが存在する場所での交流発生確率を乗算することによって、第1対象者と第2対象者との交流時間を推定する(S5)。ここで、交流時間推定部122は、グループに属する全ての構成員の各々を第1対象者とし、第1対象者と第2対象者との交流時間を推定することで、任意の二人の構成員間の交流時間を推測する。
【0068】
その後、交流相関分析部123は、交流時間推定部122による推測結果に基づき、例えば、複数の構成員の間の交流状況をマトリックス表示するための画面データを作成することによって交流状況を分析する(S6)。なお、交流相関分析部123は、複数の構成員の間の交流状況を表す相関図を表示するための画面データを作成してもよい。
【0069】
また、交流相関分析部123による分析処理が終了すると、カテゴリ分析部124は、交流時間推定部122によって推測された構成員間の交流時間を所望のカテゴリ別に集計し、集計結果を表示するための画面データを作成する(S7)。例えば、カテゴリ分析部124は、ある構成員と、この構成員の部下にあたる構成員との交流時間を集計し、集計結果を表示するための画面データを作成する。
【0070】
そして、分析部12による分析処理が終了すると、出力部13は、交流相関分析部123及びカテゴリ分析部124によって作成された画面データを表示デバイスの画面131に表示させる(S8)。これにより、交流分析システム1のユーザは、表示デバイスの画面131に表示された分析結果に基づいて、構成員間の交流状況を視覚的に把握することができる。なお、交流分析システム1のユーザは、サーバ10が備えるキーボード、マウス、タッチペン、タッチパネル等の入力デバイスを用いて画面131に表示される分析結果を切り替えることができ、所望の分析結果を表示させて確認することができる。
【0071】
交流分析システム1はステップS2~S8の処理を繰り返すことで、オフィス100内での構成員の交流状況を逐次分析し、分析結果を表示デバイスの画面131に表示させることができる。
【0072】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、交流分析システム1と同様の機能は、交流分析方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る交流分析方法は、複数の場所を含む空間R100内での第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する交流分析方法である。交流分析方法は、位置測定処理と、分析処理と、出力処理と、を含む。位置測定処理では、第1対象者及び第2対象者の各々が携帯する無線通信端末40から送信される電波信号の電波強度に基づいて、第1対象者及び第2対象者の各々の存在位置に関する位置情報を測定する。分析処理では、位置測定処理によって測定された位置情報、及び、属性情報に基づいて、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する。属性情報は、第1対象者及び第2対象者が活動する複数の場所の属性を表す情報である。出力処理では、分析処理での分析結果を出力する。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、1以上のプロセッサに、上記の交流分析方法(つまり位置測定処理、分析処理、及び出力処理)を、実行させるためのプログラムである。
【0073】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0074】
本開示における交流分析システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における交流分析システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0075】
また、交流分析システム1における複数の機能(位置測定部11、分析部12、及び出力部13の機能)が、1つの筐体内に集約されていることは交流分析システム1に必須の構成ではなく、交流分析システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、交流分析システム1の少なくとも一部の機能、例えば、分析部12の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0076】
上記実施形態では、交流時間推定部122が、第1対象者と第2対象者とが接近している接近状態の継続時間に係数として交流発生確率を乗算することで交流時間を推測している。継続時間に乗算する係数である交流発生確率は、場所の属性に基づいて設定されているが、第1対象者と第2対象者とが属するグループ内での第1対象者と第2対象者との相関関係を表す相関情報に更に基づいて設定されてもよい。下記の表2は、第1対象者が存在する場所ごとに設定される係数の値を示しており、場所の用途ごとに、第1対象者と第2対象者との間の相関関係がある場合の係数と、相関関係が無い場合の係数が決定されている。この係数は第1属性DB23に保存されている第1属性情報(属性情報)に含まれている。ここで、グループ内で相関関係があるとは、部署、職種、役職、参加しているプロジェクトのうち少なくとも1つが共通であることである。第2属性DB24には、各構成員のグループ内での役割を示すグループ情報が記憶されており、交流時間推定部122は、第2属性DB24に記憶されたグループ情報に基づいて、第1対象者と第2対象者との間にグループ内で相関関係があるか否かを判断する。第1対象者と第2対象者との間に相関関係がある場合は、第1対象者と第2対象者とが接近していれば、何らかの交流が発生していると予測されるので、相関関係がある場合の係数は、相関関係が無い場合の係数に比べて高めの値に設定されている。このように、第1対象者と第2対象者との間の相関関係の有無に応じて係数が異なる値に設定されているので、第1対象者と第2対象者との交流状況をより正確に分析することができる。なお、表2では、場所の属性として場所の用途に着目し、例えば4種類の用途(会議用、打合せ用、休憩用、執務用)のそれぞれについて閾値を設定しているが、他の用途について閾値を設定してもよいし、閾値の値も適宜変更が可能である。
【0077】
【0078】
このように、分析部12は、第2属性DB24から取得するグループ情報に更に基づいて、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析してもよい。第2属性DB24は、第1対象者及び第2対象者が属するグループ内での第1対象者及び第2対象者の役割に関するグループ情報を記憶するデータベースである。上述のように、第1対象者と第2対象者とが接近している場合に、第1対象者と第2対象者との間にグループ内での相関関係があれば、第1対象者と第2対象者との間に交流が発生している可能性が高くなる。グループ情報は、グループ内での第1対象者及び第2対象者の役割に関する情報であるので、分析部12がグループ情報を考慮することで、第1対象者と第2対象者との間にグループ内で相関関係があるか否かを推定できる。よって、分析部12が、グループ情報に更に基づいて第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析することで、第1対象者と第2対象者との間の交流状況をより正確に分析することができる。
【0079】
また、分析部12は、交流履歴DB26から取得する交流履歴情報に更に基づいて、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析してもよい。交流履歴DB26は、第1対象者と第2対象者との間で行われた交流の履歴に関する交流履歴情報を記憶するデータベースである。ここでいう交流は実空間で行われるものを少なくとも含み、通信のやりとりによって行われる交流を含んでもよい。第1対象者と第2対象者とが接近している場合に、第1対象者と第2対象者とが以前に交流をもっていれば、接近状態にある第1対象者と第2対象者との間に交流が発生している可能性が高くなる。例えば、分析部12は、交流履歴情報をもとに第1対象者と第2対象者との間に以前に交流があったと判断すると、上記の交流発生確率を両者の間に交流がなかった場合に比べて高い値に設定する。これにより、接近状態の継続時間に交流発生確率を乗算して得た時間が長くなるので、分析部12は、第1対象者と第2対象者との間がより緊密に交流していると判断できる。よって、分析部12は、交流履歴情報を考慮して交流状況を分析することで、第1対象者と第2対象者との間の交流状況をより正確に分析することができる。
【0080】
また、分析部12は、電子交流履歴DB25から取得する通信履歴情報に更に基づいて、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析してもよい。電子交流履歴DB25は、第1対象者と第2対象者との間でやり取りされた通信の履歴に関する通信履歴情報を記憶するデータベースである。第1対象者と第2対象者とが接近している場合に、第1対象者と第2対象者とが以前に何らかの通信をしていれば、接近状態にある第1対象者と第2対象者との間に交流が発生している可能性が高くなる。例えば、分析部12は、通信履歴情報をもとに第1対象者と第2対象者との間に以前に通信があったと判断すると、上記の交流発生確率を両者の間に通信がなかった場合に比べて高い値に設定する。これにより、接近状態の継続時間に交流発生確率を乗算して得た時間が長くなるので、分析部12は、第1対象者と第2対象者との間がより緊密に交流していると判断できる。よって、分析部12は、通信履歴情報を考慮して交流状況を分析することで、第1対象者と第2対象者との間の交流状況をより正確に分析することができる。
【0081】
なお、上記実施形態において、地図情報DB22、第1属性DB23、第2属性DB24、電子交流履歴DB25、及び交流履歴DB26の全てをサーバ10が備えることは必須ではなく、各DB22~26の少なくとも1つがサーバ10の外部に備えられていてもよい。
【0082】
上記実施形態において、交流時間推定部122は、接近時間測定部121によって測定された接近状態の継続時間(接近時間)が基準時間(この基準時間を以下では最低交流時間とも言う)よりも長い場合のみ交流時間を推定してもよい。ここで、最低交流時間は、第1対象者と第2対象者とが同じ場所に遭遇しただけで何も交流せずに離れたと想定される場合の接近時間、つまり第1対象者と第2対象者とが交流する場合の最小の接近時間(目安の時間)であり、例えば1分程度の時間に設定される。分析部12は、接近状態の継続時間(接近時間)が最低交流時間よりも長い場合に、属性情報と接近状態の継続時間とに基づいて第1対象者と第2対象者との交流状況を分析し、接近状態の継続時間が最低交流時間以下であれば交流状況の分析を行わない。したがって、第1対象者と第2対象者とが単に遭遇した場合の接近時間が交流時間に含まれるのを抑制でき、第1対象者と第2対象者との交流状況を分析する精度を高めることができる。
【0083】
ここにおいて、最低交流時間(基準時間)は、場所ごとに設定されていてもよく、最低交流時間の値は第1属性情報に保存されている第1属性情報(属性情報)に含まれている。例えば、休憩室R3に比べて執務室R1,R2及び会議室R4では構成員の動きが少ないと予測されるので、休憩室R3に比べて執務室R1,R2及び会議室R4では最低交流時間が長めの時間に設定されていればよい。これにより、執務室R1,R2及び会議室R4では、第1対象者と第2対象者とが単に遭遇した場合の接近時間が交流時間に含まれるのを更に抑制できる。
【0084】
また、分析部12は、第1対象者と第2対象者との間の交流時間を、第1対象者と第2対象者との交流状況を表す度合い(指標)として求めているが、交流状況を表す度合いは交流時間に限定されない。分析部12は、例えば、交流時間の長さを複数の段階にレベル分けして求めた評価値を交流状況の度合いとして求めてもよい。
【0085】
また、出力部13は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスに分析結果を文字又は図表等で出力するものに限定されない。出力部13は、文字又は図表等での表示と音声とで分析結果を出力してもよいし、紙に印刷した印刷物として出力してもよいし、データとして出力してもよい。
【0086】
上記実施形態では、交流分析システム1は、企業、役所、各種団体に属する複数の構成員の間の交流状況を分析しているが、例えば学校(小中高校、大学、又は専門学校等)において当該学校に通う学生間の交流状況を分析してもよい。また、交流分析システム1は、例えば複数の患者が入院している病院において、複数の患者の間の交流状況、又は、患者と病院関係者(例えば医師、看護士、及び事務員)との間の交流状況を分析してもよい。また、交流分析システム1は、例えばサービス付き高齢者住宅又は老人ホーム等の介護施設において、当該介護施設を利用する複数の利用者(例えば高齢者等)、又は、複数の利用者と介護施設の職員との間の交流状況を分析してもよい。
【0087】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の交流分析システム(1)は、複数の場所を含む空間(R100)内での第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する交流分析システム(1)であり、位置測定部(11)と、分析部(12)と、出力部(13)と、を備える。位置測定部(11)は、第1対象者及び第2対象者の各々が携帯する無線通信端末(40)から送信される電波信号の電波強度に基づいて、第1対象者及び第2対象者の各々の存在位置に関する位置情報を測定する。分析部(12)は、位置測定部(11)によって測定された位置情報、及び、複数の場所の各々の属性を表す属性情報に基づいて、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する。出力部(13)は、分析部(12)による分析結果を出力する。
【0088】
この態様によれば、分析部(12)は、場所の属性を表す属性情報を考慮して、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析することができる。したがって、第1対象者及び第2対象者が存在する場所の属性によって対象者間の交流形態が異なると予測される場合でも、第1対象者と第2対象者との交流状況を分析する精度を向上可能な交流分析システム(1)を提供できる。
【0089】
第2の態様の交流分析システム(1)は、第1の態様において、接近時間測定部(121)を更に備える。接近時間測定部(121)は、位置情報に基づいて第1対象者と第2対象者とが接近している接近状態の継続時間を測定する。分析部(12)は、接近状態の継続時間と、接近状態が発生している場所の属性情報とに基づいて、第1対象者と第2対象者との交流状況を分析する。
【0090】
この態様によれば、分析部(12)は、第1対象者と第2対象者とが接近している接近状態の継続時間と、場所の属性情報とに基づいて交流状況を分析するので、交流状況を分析する精度を向上可能な交流分析システム(1)を提供できる。
【0091】
第3の態様の交流分析システム(1)では、第2の態様において、属性情報は、複数の場所の各々について設定された係数を含む。分析部(12)は、接近状態の継続時間に、接近状態が発生している場所での係数を乗算して得た時間に基づいて、第1対象者と第2対象者との交流状況を分析する。
【0092】
この態様によれば、分析部(12)は、接近状態の継続時間と場所ごとに設定された係数とを用いて求めた時間に基づいて交流状況を分析するので、交流状況を分析する精度を向上可能な交流分析システム(1)を提供できる。
【0093】
第4の態様の交流分析システム(1)では、第3の態様において、係数は、第1対象者と第2対象者とが属するグループ内での第1対象者と第2対象者との相関関係を表す相関情報に更に基づいて設定される。
【0094】
この態様によれば、グループ内での第1対象者と第2対象者との相関関係を表す相関情報に更に基づいて交流状況を分析することができる。
【0095】
第5の態様の交流分析システム(1)では、第2~4のいずれかの態様において、接近状態は、第1対象者と第2対象者との間の距離が閾値よりも短い状態である。
【0096】
この態様によれば、第1対象者と第2対象者との間の距離に基づいて交流状況を分析することができる。
【0097】
第6の態様の交流分析システム(1)では、第5の態様において、閾値は、複数の場所の各々について設定されている。
【0098】
この態様によれば、接近状態を検出するための閾値は場所ごとに設定されているので、第1対象者と第2対象者との交流状況を分析する精度を向上可能な交流分析システム(1)を提供できる。
【0099】
第7の態様の交流分析システム(1)では、第2~6のいずれかの態様において、分析部(12)は、接近状態の継続時間が基準時間よりも長い場合に、属性情報と接近状態の継続時間とに基づいて第1対象者と第2対象者との交流状況を分析する。
【0100】
この態様によれば、対象者同士が遭遇しただけの接近状態を除いて交流状況を分析することができる。
【0101】
第8の態様の交流分析システム(1)では、第7の態様において、基準時間は、複数の場所の各々で設定されている。
【0102】
この態様によれば、対象者同士が遭遇しただけの接近状態を除いて交流状況を分析することができる。
【0103】
第9の態様の交流分析システム(1)では、第1~8のいずれかの態様において、分析部(12)は、グループ情報に更に基づいて、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する。グループ情報は、第1対象者及び前記第2対象者が属するグループ内での第1対象者及び前記第2対象者の役割に関するグループ情報を記憶するデータベース(24)から取得される情報である。
【0104】
この態様によれば、第1対象者及び第2対象者のグループ内での役割に関するグループ情報を考慮して、交流状況を分析することができる。
【0105】
第10の態様の交流分析システム(1)では、第1~9のいずれかの態様において、分析部(12)は、交流履歴情報に更に基づいて、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する。交流履歴情報は、第1対象者と第2対象者との間で行われた交流の履歴に関する交流履歴情報を記憶するデータベース(26)から取得される情報である。
【0106】
この態様によれば、第1対象者と第2対象者とが以前に行った交流の履歴を考慮して、交流状況を分析することができる。
【0107】
第11の態様の交流分析システム(1)では、第1~10のいずれかの態様において、分析部(12)は、通信履歴情報に更に基づいて、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する。通信履歴情報は、第1対象者と第2対象者との間でやり取りされた通信の履歴に関する通信履歴情報を記憶するデータベース(25)から取得される情報である。
【0108】
この態様によれば、第1対象者と第2対象者とが以前に行った通信の履歴を考慮して、交流状況を分析することができる。
【0109】
第12の態様の交流分析システム(1)では、第1~11のいずれかの態様において、属性情報は、複数の場所を含む施設(100)のBIM情報に含まれる情報である。
【0110】
この態様によれば、施設(100)のBIM情報を利用して、施設(100)の場所ごとの属性情報を取得することができる。
【0111】
第13の態様の交流分析方法は、複数の場所を含む空間(R100)内での第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する交流分析方法であり、位置測定処理と、分析処理と、出力処理と、を含む。位置測定処理では、第1対象者及び第2対象者の各々が携帯する無線通信端末(40)から送信される電波信号の電波強度に基づいて、第1対象者及び第2対象者の各々の存在位置に関する位置情報を測定する。分析処理では、位置測定処理によって測定された位置情報、及び、複数の場所の各々の属性を表す属性情報に基づいて、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析する。出力処理では、分析処理での分析結果を出力する。
【0112】
この態様によれば、分析処理では、場所の属性を表す属性情報を考慮して、第1対象者と第2対象者との間の交流状況を分析することができる。したがって、第1対象者及び第2対象者が存在する場所の属性によって対象者間の交流形態が異なると予測される場合でも、第1対象者と第2対象者との交流状況を分析する精度を向上可能な交流分析方法を提供できる。
【0113】
第14の態様のプログラムは、1以上のプロセッサに、第13の態様の交流分析方法を実行させるためのプログラムである。
【0114】
この態様によれば、第1対象者と第2対象者との交流状況を分析する精度を向上可能なプログラムを提供できる。
【0115】
上記態様に限らず、上記実施形態に係る交流分析システム(1)の種々の構成(変形例を含む)は、交流分析方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0116】
第2~第12の態様に係る構成については、交流分析システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 交流分析システム
11 位置測定部
12 分析部
13 出力部
40 無線通信端末
121 接近時間測定部
R100 空間