(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20231013BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20231013BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20231013BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231013BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231013BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231013BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231013BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231013BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231013BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20231013BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231013BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2023515503
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2022018350
(87)【国際公開番号】W WO2022224997
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2021072429
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】天田 由幸
(72)【発明者】
【氏名】由利 正利
(72)【発明者】
【氏名】八木 繁典
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】平山 和▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】白井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博己
(72)【発明者】
【氏名】千脇 史子
(72)【発明者】
【氏名】小松 将之
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/011966(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/132647(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/178356(WO,A1)
【文献】特表2021-510064(JP,A)
【文献】特表2020-532572(JP,A)
【文献】RAJENDRAN, Sakthi et al.,Development of a Bispecific Antibody Targeting CD30 and CD137 on Hodgkin and Reed-Sternberg Cells,Frontiers in Oncology,2019年,vol. 9,Article 945
【文献】LI, Xiangru et al.,Development of an Anti-Claudin-3 and -4 Bispecific Monoclonal Antibody for Cancer Diagnosis and Therapys,J Pharmacol Exp Ther,2014年,vol. 351,no. 1,p. 206-213
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CLDN4抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、並びに抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体であって、抗CLDN4抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が以下の(a)又は(b)のいずれかである、二重特異性抗体:
(a)配列番号2のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号2のアミノ酸番号99から114までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号4のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号4のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号4のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域;又は
(b)配列番号6のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号6のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号6のアミノ酸番号99から112までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号8のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号8のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域。
【請求項2】
抗CLDN4抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が以下の(a)又は(b)のいずれかである、請求項1に記載の二重特異性抗体:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;又は
(b)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【請求項3】
抗CLDN4抗体の重鎖可変領域を含む重鎖及び軽鎖可変領域を含む軽鎖からなるIgG抗体(抗CLDN4 IgG抗体)を含む、請求項
1に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
抗CLDN4 IgG抗体のFc領域にLALA変異(L234A及びL235A(ここで、前記変異位置はヒトIgγ1定常領域におけるEUインデックスに従うアミノ酸位置である))を含む、請求項3に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
抗CLDN4 IgG抗体のFc領域にP331G変異(ここで、前記変異位置はヒトIgγ1定常領域におけるEUインデックスに従うアミノ酸位置である)を含む、請求項3に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
抗CLDN4 IgG抗体のFc領域にLALA変異及びP331G変異を含む、請求項3に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が以下の(a)~(d)のいずれかである、請求項
1に記載の二重特異性抗体:
(a)配列番号10のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号10のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号10のアミノ酸番号99から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号12のアミノ酸番号24から34までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号12のアミノ酸番号50から56までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号12のアミノ酸番号89から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号14のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号14のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号14のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号16のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号16のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号16のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号18のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号18のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号18のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号20のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号20のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号20のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;又は
(d)配列番号22のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号22のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号22のアミノ酸番号98から110までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号24のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号24のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号24のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域。
【請求項8】
抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が以下の(a)~(i)のいずれかである、請求項
2に記載の二重特異性抗体:
(a)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(b)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(c)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(d)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(e)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(f)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(g)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域;
(h)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;又は
(i)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【請求項9】
抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗CD137一本鎖可変領域フラグメント(抗CD137scFv)を含む、請求項
3に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
抗CD137scFvが以下の(a)~(e)のいずれかである、請求項9に記載の二重特異性抗体:
(a)配列番号26のアミノ酸番号1から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(b)配列番号28のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(c)配列番号30のアミノ酸番号1から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(d)配列番号32のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;又は
(e)配列番号34のアミノ酸番号1から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv。
【請求項11】
抗CLDN4 IgG抗体及び抗CD137scFvを含み、抗CLDN4 IgG抗体の重鎖又は軽鎖カルボキシ末端に抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている、請求項
10に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
以下の(a)~(j)のいずれかの抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(b)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(c)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(d)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(e)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(f)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(g)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(h)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(i)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;又は
(j)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体。
【請求項13】
リンカーがGSリンカーである、請求項
12に記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体。
【請求項14】
GSリンカーが配列番号54のアミノ酸配列からなるリンカーである、請求項13に記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体。
【請求項15】
以下の(a)又は(b)のいずれかの抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖を含む二重特異性抗体;又は
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖を含む二重特異性抗体。
【請求項16】
翻訳後修飾された、請求項
15に記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体。
【請求項17】
翻訳後修飾が、重鎖可変領域N末端のピログルタミル化及び/又は重鎖C末端リジン欠失である、請求項16に記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体。
【請求項18】
下記(a)~(d)からなる群より選択される、抗CLDN4抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(d)配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項19】
下記(a)~(r)からなる群より選択される、抗CD137抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド:
(a)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(e)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(f)配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(g)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(h)配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(i)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(j)配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(k)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(l)配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(m)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(n)配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(o)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(p)配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(q)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(r)配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項20】
下記(a)~(e)からなる群より選択される、抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド:
(a)配列番号26のアミノ酸番号1から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号28のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号30のアミノ酸番号1から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号32のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(e)配列番号34のアミノ酸番号1から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項15に記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体の生産に用いる、下記(a)~(e)からなる群より選択されるポリヌクレオチド:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(e)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項22】
請求項18~21のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項23】
請求項22に記載の発現ベクターで形質転換された、宿主細胞。
【請求項24】
以下の(a)~(dd)からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む宿主細胞:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(e)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(f)配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(g)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(h)配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(i)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(j)配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(k)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(l)配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(m)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(n)配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(o)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(p)配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(q)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(r)配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(s)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(t)配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(u)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(v)配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(w)配列番号26のアミノ酸番号1から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(x)配列番号28のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(y)配列番号30のアミノ酸番号1から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(z)配列番号32のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(aa)配列番号34のアミノ酸番号1から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(bb)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(cc)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(dd)配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項25】
以下の(a)又は(b)のいずれかのポリヌクレオチドを含む、宿主細胞:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項26】
抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体の生産方法であって、請求項
24又は25に記載の宿主細胞を培養する工程を含む、前記方法。
【請求項27】
請求項1~17のいずれか一項に記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項28】
がんの治療に使用するための、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体。
【請求項29】
がんの治療に用いるための、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
がんの治療に用いる医薬組成物の製造における、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの治療に用いる医薬組成物の有効成分として有用であると期待される抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
Claudin-4(CLDN4)はクローディンファミリーに属する4回膜貫通タンパク質である。上皮細胞や内皮細胞に発現しており、タイトジャンクションを構成する主要分子として重要な役割を果たしている。CLDN4は大腸がん、膀胱がん、卵巣がん等のがん組織でも高発現が認められており、抗CLDN4抗体はがんの治療又は診断に応用できる可能性が示唆されている(特許文献1、非特許文献1)。さらに、動物モデルにおいて、抗CLDN4抗体と抗Epidermal growth factor receptor(EGFR)抗体の併用による抗腫瘍効果が示されている(非特許文献2)。
【0003】
Cluster of Differentiation 137(CD137、別名4-1BB)は、Tumor Necrosis Factor Receptor Superfamily(TNFRSF)に属する分子であり、T細胞、B細胞、natural killer(NK)細胞、樹状細胞、好酸球、マスト細胞等の免疫細胞表面に発現していることが報告されている。特に、T細胞上のCD137は抗原提示細胞上のCD137リガンドと結合し、共刺激分子としてT細胞の活性化と生存に関与していることが知られている(非特許文献3)。抗CD137アゴニスト抗体は、動物モデルにおいて腫瘍微小環境内の免疫細胞の活性化を介した抗腫瘍効果を示している(非特許文献4)。抗CD137アゴニスト抗体であるウレルマブは臨床試験で治療効果を示したが、肝障害の副作用を引き起こすことも報告されている(非特許文献5)。
【0004】
低い抗体濃度でがん細胞選択的な細胞傷害活性を得ることができる画期的な方法として、種々の抗体フォーマットの二重特異性T細胞リクルート抗体(bispecific T-cell-recruiting antibodies)が報告されている。二重特異性T細胞リクルート抗体は、がん細胞表面に発現する腫瘍関連抗原(Tumor-Associated Antigens;TAA)に対する抗体と、T細胞に結合する抗体を含む二重特異性抗体であり、T細胞媒介性免疫療法に対するそれらの抗体の効果が検討されつつある(非特許文献6)。T細胞に結合する抗体として抗CD3抗体が多く用いられており、現在も種々のTAAに対する二重特異性T細胞リクルート抗体の研究開発がなされている。
【0005】
さらに、近年では、CD137及びTAAに対する二重特異性T細胞リクルート抗体の研究も盛んに行われている。TAAであるGlypican3(GPC3)、Human Epidermal Growth Factor Receptor Type2(HER2)、Programmed Cell Death-Ligand1(PD-L1)、Fibroblast Activation Protein(FAP)を認識する抗GPC3-抗CD137二重特異性抗体、抗HER2-抗CD137二重特異性抗体、抗PDL1-抗CD137二重特異性抗体、抗FAP-抗CD137二重特異性抗体等の研究がなされている(特許文献2及び3、非特許文献7~9)。
しかしながら、現在までに、抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体についての報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開番号2008/114733号
【文献】国際公開番号2015/156268号
【文献】国際公開番号2016/177802号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Cancer Science、2009:100(9):p.1623-1630
【文献】Oncotarget、2018:9(100):p.37367-37378
【文献】Cancer Science、2020:111(5):p.1461-1467
【文献】Cancer Immunology Immunotherapy、2012:61(5):p.1721-1733
【文献】Clinical Cancer Research、2017:23(8):p.1929-1936
【文献】mAbs、2017:9(2):p.182-212
【文献】Clinical Cancer Research、2019:25(19):p.5878-5889
【文献】Clinical Cancer Research、2020:26(15):p.4154-4167
【文献】Journal for Immunotherapy of Cancer、2020;8(2):e000238
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、がんの治療に用いることができる抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、腹膜播種がん細胞に発現する抗原に選択的に結合する抗体の探索を行い、抗CLDN4抗体である3D11を取得した(実施例1及び2)。3D11及び抗CD3抗体を用いた二重特異性T細胞リクルート抗体はがん患者の治療には使用できないことが判明した(参考例)。そこで、3D11及び公知の抗CLDN4抗体であるKM3900抗体を用い、抗CD137抗体との二重特異性T細胞リクルート抗体の取得を試みた(実施例3及び4)。取得した抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、CLDN4及びCD137に結合し(実施例5)、in vitroにおいてT細胞のインターフェロンγ産生を促進し、細胞表面にCLDN4を発現するがん細胞に対して細胞傷害活性を示した(実施例6)。さらに、取得した抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体はin vivoマウスモデルにおいて抗腫瘍作用を発揮し(実施例7-1)、カニクイザルにおいても安全に使用できることが確認された(実施例7-2)。本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体はがんの治療に有用であることが示唆された。
【0010】
即ち、本発明は、以下の[1]~[32]に関する。
[1] 抗CLDN4抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、並びに抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体であって、抗CLDN4抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が以下の(a)又は(b)のいずれかである、二重特異性抗体:
(a)配列番号2のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号2のアミノ酸番号99から114までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号4のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号4のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号4のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;又は
(b)配列番号6のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号6のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号6のアミノ酸番号99から112までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号8のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号8のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域。
[2] 抗CLDN4抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が以下の(a)又は(b)のいずれかである、[1]に記載の二重特異性抗体:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;又は
(b)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
[3] 抗CLDN4抗体の重鎖可変領域を含む重鎖及び軽鎖可変領域を含む軽鎖からなるIgG抗体(抗CLDN4 IgG抗体)を含む、[1]又は[2]のいずれかに記載の二重特異性抗体。
[4] 抗CLDN4 IgG抗体のFc領域にLALA変異(L234A及びL235A(ここで、前記変異位置はヒトIgγ1定常領域におけるEUインデックスに従うアミノ酸位置である))を含む、[3]に記載の二重特異性抗体。
[5] 抗CLDN4 IgG抗体のFc領域にP331G変異(ここで、前記変異位置はヒトIgγ1定常領域におけるEUインデックスに従うアミノ酸位置である)を含む、[3]に記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体。
[6] 抗CLDN4 IgG抗体のFc領域にLALA変異及びP331G変異を含む、[3]に記載の二重特異性抗体。
[7] 抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が以下の(a)~(d)のいずれかである、[1]~[6]のいずれかに記載の二重特異性抗体:
(a)配列番号10のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号10のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号10のアミノ酸番号99から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号12のアミノ酸番号24から34までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号12のアミノ酸番号50から56までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号12のアミノ酸番号89から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号14のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号14のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号14のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号16のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号16のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号16のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号18のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号18のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号18のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号20のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号20のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号20のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;又は
(d)配列番号22のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号22のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号22のアミノ酸番号98から110までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号24のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号24のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号24のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域。
[8] 抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が以下の(a)~(i)のいずれかである、[1]~[7]のいずれかに記載の二重特異性抗体:
(a)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(b)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(c)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(d)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域
(e)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(f)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(g)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域;
(h)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;又は
(i)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
[9] 抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗CD137一本鎖可変領域フラグメント(抗CD137scFv)を含む、[7]又は[8]のいずれかに記載の二重特異性抗体。
[10] 抗CD137scFvが以下の(a)~(e)のいずれかである、[9]に記載の二重特異性抗体:
(a)配列番号26のアミノ酸番号1から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(b)配列番号28のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(c)配列番号30のアミノ酸番号1から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(d)配列番号32のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;又は
(e)配列番号34のアミノ酸番号1から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv。
[11] 抗CLDN4 IgG抗体及び抗CD137scFvを含み、抗CLDN4 IgG抗体の重鎖又は軽鎖カルボキシ末端に抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている、[9]又は[10]のいずれかに記載の二重特異性抗体。
[12] 以下の(a)~(j)のいずれかの抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(b)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(c)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(d)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(e)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(f)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(g)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(h)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(i)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;又は
(j)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体。
[13] リンカーがGSリンカーである、[11]又は[12]のいずれかに記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体。
[14] GSリンカーが配列番号54のアミノ酸配列からなるリンカーである、[13]に記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体。
[15] 以下の(a)又は(b)のいずれかの抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖を含む二重特異性抗体;又は
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチド並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖を含む二重特異性抗体。
[16] 翻訳後修飾された、[1]~[15]のいずれかに記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体。
[17] 翻訳後修飾が、重鎖可変領域N末端のピログルタミル化及び/又は重鎖C末端リジン欠失である、[16]に記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体。
[18] 下記(a)~(d)からなる群より選択される、抗CLDN4抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(d)配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
[19] 下記(a)~(r)からなる群より選択される、抗CD137抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド:
(a)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(e)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(f)配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(g)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(h)配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(i)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(j)配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(k)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(l)配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(m)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(n)配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(o)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(p)配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(q)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(r)配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
[20] 下記(a)~(e)からなる群より選択される、抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド:
(a)配列番号26のアミノ酸番号1から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号28のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号30のアミノ酸番号1から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号32のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(e)配列番号34のアミノ酸番号1から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
[21] [15]に記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体の生産に用いる、下記(a)~(e)からなる群より選択されるポリヌクレオチド:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(e)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
[22] [18]~[21]のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
[23] [22]に記載の発現ベクターで形質転換された、宿主細胞。
[24] 以下の(a)~(dd)からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む宿主細胞:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(e)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(f)配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(g)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(h)配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(i)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(j)配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(k)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(l)配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(m)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(n)配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(o)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(p)配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(q)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(r)配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(s)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(t)配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(u)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(v)配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(w)配列番号26のアミノ酸番号1から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(x)配列番号28のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(y)配列番号30のアミノ酸番号1から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(z)配列番号32のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(aa)配列番号34のアミノ酸番号1から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(bb)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(cc)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(dd)配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
[25] 以下の(a)又は(b)のいずれかのポリヌクレオチドを含む、宿主細胞:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
[26] 抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体の生産方法であって、[23]~[25]のいずれかに記載の宿主細胞を培養する工程を含む、前記方法。
[27] [1]~[17]のいずれかに記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
[28] がんの治療に使用するための、[1]~[17]のいずれかに記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体。
[29] がんの治療に用いるための、[27]に記載の医薬組成物。
[30] [1]~[17]のいずれかに記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体の治療有効量を対象に投与する工程を含む、がんを治療する方法。
[31] がんの治療に用いる医薬組成物の製造における、[1]~[17]のいずれかに記載の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体の使用。
【発明の効果】
【0011】
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、がん抗原であるCLDN4とT細胞等の免疫細胞の表面に発現しているCD137の両方に結合し、がん細胞周辺の免疫細胞を活性化することによりがん細胞に対する殺傷作用を増強させるものである。本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体又は前記抗体を含む医薬組成物は、各種がんの治療のために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1-1】
図1-1はELISA法により測定評価した被験抗体のCD137への結合活性を示す。図の縦軸は450nmの吸光度から570nmの吸光度を引いた値を、横軸は被験抗体の濃度を表す。シンボルはそれぞれの被験抗体添加時の吸光度の平均値を、エラーバーは標準偏差を示す。
【
図1-2】
図1-2はELISA法により測定評価した被験抗体のCD137への結合活性を示す。図の縦軸は450nmの吸光度から570nmの吸光度を引いた値を、横軸は被験抗体の濃度を表す。シンボルはそれぞれの被験抗体添加時の吸光度の平均値を示す。
【
図1-3】
図1-3はELISA法により測定評価した被験抗体のCD137への結合活性を示す。図の縦軸は450nmの吸光度から570nmの吸光度を引いた値を、横軸は被験抗体の濃度を表す。シンボルはそれぞれの被験抗体添加時の吸光度の平均値を示す。
【
図1-4】
図1-4はELISA法により測定評価した被験抗体のCD137への結合活性を示す。図の縦軸は450nmの吸光度から570nmの吸光度を引いた値を、横軸は被験抗体の濃度を表す。シンボルはそれぞれの被験抗体添加時の吸光度の平均値を示す。
【
図2-1】
図2-1はCLDN4発現がん細胞(NCI-H322細胞)と4-1BB Effector Cellsの共培養試験における被験抗体のCD137アゴニスト活性を示す。図の縦軸は相対発光量、横軸は被験抗体の濃度を表す。シンボルはそれぞれの被験抗体添加時の相対発光量の平均値を、エラーバーは標準偏差を示す。
【
図2-2】
図2-2はCLDN4発現がん細胞(NCI-H322細胞)と4-1BB Effector Cellsの共培養試験における被験抗体のCD137アゴニスト活性を示す。図の縦軸は相対発光量、横軸は被験抗体の濃度を表す。シンボルはそれぞれの被験抗体添加時の相対発光量の平均値を示す。
【
図2-3】
図2-3はCLDN4発現がん細胞(NCI-H322細胞)と4-1BB Effector Cellsの共培養試験における被験抗体のCD137アゴニスト活性を示す。図の縦軸は相対発光量、横軸は被験抗体の濃度を表す。シンボルはそれぞれの被験抗体添加時の相対発光量の平均値を、エラーバーは標準偏差を示す。
【
図2-4】
図2-4は4-1BB Effector Cellsの単独培養試験における被験抗体のCD137アゴニスト活性を示す。図の縦軸は相対発光量、横軸は被験抗体の濃度を表す。シンボルはそれぞれの被験抗体添加時の相対発光量の平均値を、エラーバーは標準偏差を示す。
【
図2-5】
図2-5は4-1BB Effector Cellsの単独培養試験における被験抗体のCD137アゴニスト活性を示す。図の縦軸は相対発光量、横軸は被験抗体の濃度を表す。シンボルはそれぞれの被験抗体添加時の相対発光量の平均値を示す。
【
図2-6】
図2-6は4-1BB Effector Cellsの単独培養試験における被験抗体のCD137アゴニスト活性を示す。図の縦軸は相対発光量、横軸は被験抗体の濃度を表す。シンボルはそれぞれの被験抗体添加時の相対発光量の平均値を、エラーバーは標準偏差を示す。
【
図3-1】
図3-1は、60As6-Luc/GFP細胞とExpanded panT細胞の共培養系における各被験抗体添加時のインターフェロン-γ産生促進機能を示す。縦軸は抗体添加6日後におけるインターフェロン-γ産生量(pg/mL)を、横軸は抗体濃度を示す。シンボルは抗体の各濃度におけるインターフェロン-γ産生量の平均値を示す。
【
図3-2】
図3-2は、60As6-Luc/GFP細胞とExpanded panT細胞の共培養系における各被験抗体添加時のインターフェロン-γ産生促進機能を示す。図の縦軸は抗体添加4日後におけるインターフェロン-γ産生量(pg/mL)を、横軸は抗体濃度を示す。シンボルは抗体の各濃度におけるインターフェロン-γ産生量の平均値を、エラーバーは標準偏差を示す。
【
図3-3】
図3-3は、Expanded panT細胞の単培養系における各被験抗体添加時のインターフェロン-γ産生量を示す。図の縦軸は抗体添加6日後におけるインターフェロン-γ産生量(pg/mL)を、横軸は抗体濃度を示す。シンボルは抗体の各濃度におけるインターフェロン-γ産生量の平均値を示す。
【
図3-4】
図3-4は、Expanded panT細胞の単培養系における各被験抗体添加時のインターフェロン-γ産生量を示す。図の縦軸は抗体添加5日後におけるインターフェロン-γ産生量(pg/mL)を、横軸は抗体濃度を示す。シンボルは抗体の各濃度におけるインターフェロン-γ産生量の平均値を、エラーバーは標準偏差を示す。
【
図4】
図4は、60As6-Luc/GFP細胞とExpanded panT細胞の共培養系における各被験抗体によるがん細胞傷害活性(がん細胞の増殖抑制作用)を示す。図の縦軸は測定開始0時間から168時間に増加した蛍光面積において被験抗体非添加ウェルを100%とした時の細胞増殖率を示す。横軸は抗体濃度を示す。シンボルは各抗体におけるがん細胞増殖率の平均値を示す。
【
図5】
図5は、60As6-Luc/GFP細胞とExpanded panT細胞の共培養系における各被験抗体添加時のがん細胞傷害活性を示す。図の縦軸は抗体添加6日後における60As6-Luc/GFP細胞の化学発光の測定値において、抗体非添加の平均値を殺傷率0%、Triton-X100添加の平均値を殺傷率100%とした時の、がん細胞殺傷率(%)を示す。横軸は抗体濃度を示す。シンボルは抗体の各濃度におけるがん細胞殺傷率の平均値を、エラーバーは標準偏差を示す。
【
図6】
図6はNCI-H322細胞を皮下担癌したPBMC移入マウスにおける腫瘍体積変化を示す。図の横軸は初回投与後日数を、縦軸は腫瘍体積の平均値を、エラーバーは標準誤差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明について詳述する。
<定義>
本明細書の用語は、以下で特に定義されない限り、当該技術分野で当業者に一般に使用されている意味にて使用される。
【0014】
抗体(又は免疫グロブリン)は、単一の配列を有する重鎖2本と、単一の配列を有する軽鎖2本からなる左右対称Y字型の構造を有する4本鎖構造を基本構造とする糖タンパク質である。抗体にはIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEの5つのクラスが存在する。抗体分子の基本構造は各クラス共通であり、分子量5万~7万の重鎖2本と2万~3万の軽鎖2本がジスルフィド結合及び非共有結合によって結合し、分子量15万~19万のY字型の4本鎖構造からなる抗体分子を形成する。重鎖は、通常約440個のアミノ酸を含むポリペプチド鎖からなり、クラスごとに特徴的な構造をもち、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEに対応してそれぞれ、Igγ、Igμ、Igα、Igδ、Igεとよばれる。さらにIgGには、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のサブクラスが存在し、それぞれに対応する重鎖はIgγ1、Igγ2、Igγ3、Igγ4とよばれる。軽鎖は、通常約220個のアミノ酸を含むポリペプチド鎖からなり、λ型とκ型の2種が知られており、それぞれIgλ、Igκという。前記2種の軽鎖は、いずれの種類の重鎖とも対をなすことができる。
【0015】
抗体分子の鎖内ジスルフィド結合は、重鎖には4つ(Igμ、Igεには5つ)、軽鎖には2つ存在し、アミノ酸100~110残基ごとに1つのループを成している。それらの立体構造は各ループ間で類似していて、構造単位又はドメインとよばれる。重鎖、軽鎖ともにN末端に位置するドメインは可変領域とよばれ、同種動物の同一クラス(又はサブクラス)から産生された抗体であっても多様なアミノ酸配列を有し、抗体と抗原との結合特異性結合に関与することが知られている。可変領域よりも下流のC末端側のドメインのアミノ酸配列は各クラス又はサブクラスごとにほぼ一定で、定常領域とよばれている。重鎖は、N末端からC末端に向かって重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)を有する。CHはさらにN末端側からCH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインの3つのドメインに分けられる。軽鎖は、N末端からC末端に向かって軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を有す。
【0016】
VH及びVLに存在する3つの相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列は変化が非常に大きく、可変領域の可変性に寄与している。CDRは5~10アミノ酸残基からなる領域であって、重鎖と軽鎖のぞれぞれのN末端にCDR1、CDR2、CDR3の順番で存在し、抗原に接触して抗体結合部位を形成する。軽鎖のCDRよりも重鎖のCDRが抗原結合への寄与が大きく、CDR1~3の中ではCDR3の寄与が最も高いことが知られている。一方、可変領域のCDR以外の部分はフレームワーク領域(FR)とよばれ、FR1~4からなり、アミノ酸配列の変化は比較的少ない。
【0017】
抗体をタンパク質分解酵素のパパインで処理すると、3つの抗体断片が得られる。N末端側の2つの断片はFab(抗原結合断片、Fragment,antigen binding)領域と呼ばれている。Fab領域とは、重鎖のVH、CH1ドメイン及びヒンジ領域の一部、並びに軽鎖(VLとCL)からなる領域を指し、当該Fab領域が構成するVH及びVL(抗原結合部位)で抗原と結合する。また、C末端側の断片はFc(結晶化可能断片、Fragment,crystallizable)領域と呼ばれている。
【0018】
本明細書において「IgG抗体」とは、2つのFab領域とFc領域からなるY字型の構造を有する抗体をいう。1つの実施形態において、IgG抗体の2つのFab領域は、同一の配列からなるFab領域である。1つの実施形態において、IgG抗体の2つのFab領域は、異なる配列からなるFab領域である。
【0019】
本明細書において「抗原結合フラグメント」及び「フラグメント抗体」は相互互換的に使用することができ、免疫グロブリン分子の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、抗原結合活性を有する、少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む分子をいう。代表的な抗原結合フラグメントとしては、一本鎖可変領域フラグメント(scFv)、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメントが挙げられる。本明細書において、「scFv」とは、リンカーで連結されたVHとVLから構成される一価の抗原結合フラグメントをいう。Fabフラグメントは、軽鎖と、重鎖のVH、CH1ドメインとヒンジ領域の一部とを含むフラグメントから構成される一価の抗原結合フラグメントである。Fab’フラグメントは、軽鎖と、重鎖のVH、CH1ドメインとヒンジ領域の一部とを含むフラグメントから構成される一価の抗原結合フラグメントであり、このヒンジ領域の部分には重鎖間ジスルフィド結合を構成していたシステイン残基が含まれる。F(ab’)2フラグメントは、Fab’フラグメントがジスルフィド結合で繋がっている二価の抗原結合フラグメントである。一価とは、抗原結合部位を1つ含むことを、二価とは、抗原結合部位を2つ含むことを意味する。
【0020】
本明細書において、「二重特異性抗体」とは、異なる抗原に特異的に結合する2つの抗体又は抗原結合フラグメントから構成され、各抗原に対する結合活性を有する抗体分子をいう。二重特異性抗体としては、様々な構造の二重特異性抗体が当業者に公知である(非特許文献6)。本明細書で使用される用語「抗体」には、文脈上特に限定されない限り、完全長の抗体(各種免疫グロブリン、特にIgG抗体)、抗原結合フラグメント、及びあらゆる構造の二重特異性抗体が含まれる。
【0021】
本明細書において、IgG型の抗CLDN4抗体を「抗CLDN4 IgG抗体」と称する。
【0022】
本明細書において「ヒト抗体」とはヒト免疫グロブリンアミノ酸配列を有する抗体を表す。本明細書において「ヒト化抗体」は、CDR以外のアミノ酸残基の一部、大部分、又は全部がヒト免疫グロブリン分子に由来するアミノ酸残基で置換された抗体を表す。ヒト化の方法は特に制限されないが、例えば、米国特許第5225539号、米国特許第6180370号等を参照してヒト化抗体を作製することができる。
【0023】
本明細書中で使用される抗体のアミノ酸残基番号はKabatナンバリング又はEUインデックス(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed,1991,NIH Publication No.91-3242)を指定することで、それらのナンバリングシステムに従って規定することができる。
【0024】
本明細書において、「連結」又は「連結された」とは、複数の成分(例えば、Fab領域及びFc領域)が、直接又は仲介物(例えば、ペプチドリンカー)を介して結合していることを意味する。本明細書において「ペプチドリンカー」とは、複数の成分を連結するために用いられる、遺伝子工学的手法により導入され得る1以上の任意のアミノ酸配列を意味する。本発明で使用されるペプチドリンカーの長さは特に限定されず、目的に応じて当業者が適宜選択することが可能である。
【0025】
本明細書において、「同一性」とは、EMBOSS Needle(Nucleic Acids Res.、2015、Vol.43、pW580-W584)を用いて、デフォルトで用意されているパラメータによって得られたIdentityの値を意味する。前記のパラメータは以下のとおりである。
Gap Open Penalty = 10
Gap Extend Penalty = 0.5
Matrix = EBLOSUM62
End Gap Penalty = false
【0026】
<本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体>
本発明は、CLDN4及びCD137に結合する二重特異性抗体(「抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体」とも称する)を提供する。本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、並びに抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体には、抗CLDN4 IgG抗体と抗CD137抗体のscFv(「抗CD137scFv」とも称する)を含む二重特異性抗体が含まれる。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4 IgG抗体と抗CD137scFvを含む二重特異性抗体である。
【0027】
本明細書において、「抗CLDN4抗体」はヒトCLDN4に結合可能な抗体であり、「抗CD137抗体」はヒトCD137に結合可能な抗体である。ヒトCLDN4又はヒトCD137に結合するか否かは、公知の結合活性測定方法を用いて確認することができる。結合活性を測定する方法としては、例えば、Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay(ELISA)法、フローサイトメトリー法等の方法が挙げられる。ELISA法又はフローサイトメトリー法は、当業者が通常用いる方法にて実施することができ、例えば実施例3又は5に記載される方法を用いることができる。
【0028】
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、CLDN4及びCD137に結合する限りにおいてどのような構造であってもよく、例えば、非特許文献6に記載されている構造を有する二重特異性抗体が挙げられる。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4抗体のFab領域と抗CD137抗体のFab領域が連結された連結体、抗CLDN4 IgG抗体及びIgG型の抗CD137抗体(「抗CD137 IgG抗体」とも称する)の連結体、抗CLDN4 IgG抗体及び抗CD137抗体の抗原結合フラグメントの連結体、抗CLDN4抗体の抗原結合フラグメント及び抗CD137 IgG抗体の連結体、又は抗CLDN4抗体の抗原結合フラグメント及び抗CD137抗体の抗原結合フラグメントの連結体であってよい。
【0029】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、完全長の抗CLDN4抗体及び完全長の抗CD137抗体を含む。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4 IgG抗体及び抗CD137 IgG抗体を含む。2つの抗体はリンカーを介して連結されていてもよい。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、完全長の抗CLDN4抗体及び抗CD137抗体の抗原結合フラグメントを含む。2つの抗体の連結部位は特に限定されず、直接又はリンカーを介して連結されている。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4 IgG抗体及び抗CD137抗体のscFv(本明細書において「抗CD137scFv」と称する)を含む。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4 IgG抗体及び抗CD137scFvを含み、抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に抗CD137scFvのアミノ末端が連結されている。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4 IgG抗体及び抗CD137scFvを含み、抗CLDN4抗体の軽鎖カルボキシ末端に抗CD137scFvのアミノ末端が連結されている。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4 IgG抗体及び抗CD137scFvを含み、抗CLDN4抗体の重鎖のアミノ末端に抗CD137scFvのカルボキシ末端が連結されている。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4 IgG抗体及び抗CD137scFvを含み、抗CLDN4抗体の軽鎖のアミノ末端に抗CD137scFvのカルボキシ末端が連結されている。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4抗体の抗原結合フラグメント及び抗CD137の抗原結合フラグメントを含む。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4抗体のscFv及び抗CD137のscFvを含む。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CD137scFvを含む。
【0030】
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体において、抗CLDN4抗体及び抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、ヒト抗体由来、ヒト化抗体由来、又はそれらの組み合わせであってよい。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はその組み合わせからなる抗体である。
【0031】
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、並びに抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体であって、抗CLDN4抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が以下の(a)又は(b)のいずれかである二重特異性抗体である:
(a)配列番号2のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号2のアミノ酸番号99から114までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号4のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号4のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号4のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;又は
(b)配列番号6のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号6のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号6のアミノ酸番号99から112までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号8のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号8のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域。
【0032】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、以下の(a)又は(b)に記載の抗CLDN4抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;又は
(b)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0033】
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4抗体として、IgG抗体等の完全長の抗体を含んでもよく、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント又はscFv等の抗原結合フラグメントを含んでもよい。
【0034】
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体に含まれる抗CLDN4抗体に含まれる重鎖定常領域としては、Igγ、Igμ、Igα、Igδ又はIgεのいずれの定常領域も選択可能である。Igγとしては、例えば、Igγ1、Igγ2、Igγ3又はIgγ4から選択することが可能である。本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体に含まれる抗CLDN4抗体に含まれる軽鎖定常領域としては、Igλ又はIgκのいずれの定常領域も選択可能である。本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体に含まれる抗CLDN4抗体がIgG抗体である場合、1つの実施形態において、該抗CLDN4抗体の重鎖及び軽鎖は、それぞれ、ヒトIgγ1及びIgκである。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は完全長の抗CLDN4抗体を含む。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体に含まれる抗CLDN4抗体は、抗CLDN4抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むIgG抗体(抗CLDN4 IgG抗体)である。
【0035】
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体がFc領域を含む場合、該二重特異性抗体におけるFc領域は、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)や補体依存性傷害活性(CDC)を低下させる変異を含んでもよい。L234Aとは、ヒトIgγ1定常領域のアミノ酸234位のロイシンのアラニンへの置換である。L235Aとは、ヒトIgγ1定常領域のアミノ酸235位のロイシンのアラニンへの置換である。ヒトIgγ1定常領域L234A及びL235Aのアミノ酸変異を「LALA変異」という。ここで、前記234位及び235位はヒトIgγ1定常領域におけるEUインデックスに従うアミノ酸位置である。当該変異は、抗体のADCCやCDCを低下させることが知られている(Mol.Immunol.、1992、Vol.29、p.633-639;J.Immunol.、2000、Vol.164、p.4178-4184)。P331G又はP331Sとは、ヒトIgγ1定常領域のアミノ酸331位のプロリンのグリシン又はセリンへの置換である。ここで、前記331位はヒトIgγ1定常領域におけるEUインデックスに従うアミノ酸位置である。当該変異は、抗体のCDCを低下させることが知られている(J.Immunol.、2000、Vol.164(8)、p.4178-4184)。
【0036】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体に含まれる抗CLDN4 IgG抗体は、L234A及びL235Aのアミノ酸変異(LALA変異)を含むFc領域を含む。1つの実施形態において、抗CLDN4 IgG抗体はP331G又はP331S変異のいずれかを含むFc領域を含む。1つの実施形態において、抗CLDN4 IgG抗体は、LALA変異及びP331G又はP331S変異のいずれかの変異を含むFc領域を含む。
【0037】
本発明者らは、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体の創出の過程において、新規な抗CD137抗体又はその結合フラグメント(scFv)を創出した。本発明者らは、CD137にのみ結合する場合にはCD137シグナルを伝達せず、CD137とCLDN4に同時に結合した場合にのみCD137シグナルを伝達する抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体を同定した。これらの抗体は、CLDN4に結合していない場合にはアゴニスト活性を示さない。一方で、抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体によるCLDN4及びCD137へ結合により、CD137シグナル伝達及びT細胞の活性化をもたらす。この作用は、ウレルマブの臨床試験において見られた肝毒性等を軽減しうることが期待されるため、二重特異性抗体に用いる抗CD137抗体として好ましいプロファイルであることが期待される。
【0038】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、以下の(a)~(d)のいずれかに記載の抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む:
(a)配列番号10のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号10のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号10のアミノ酸番号99から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号12のアミノ酸番号24から34までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号12のアミノ酸番号50から56までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号12のアミノ酸番号89から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号14のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号14のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号14のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号16のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号16のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号16のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号18のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号18のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号18のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号20のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号20のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号20のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;又は
(d)配列番号22のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号22のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号22のアミノ酸番号98から110までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号24のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号24のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号24のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域。
【0039】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、以下の(a)~(i)のいずれかに記載の抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む:
(a)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(b)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(c)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(d)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域
(e)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(f)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(g)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域;
(h)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;又は
(i)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0040】
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CD137抗体として、IgG抗体等の完全長の抗体を含んでもよく、又はFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv等の抗原結合フラグメントを含んでもよい。1つの実施形態において、抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体に含まれる抗CD137抗体は、抗CD137抗体の抗原結合フラグメントである。1つの実施形態において、抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体に含まれる抗CD137抗体の抗原結合フラグメントは、抗CD137scFvである。
【0041】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、以下の(a)~(m)に記載の抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含む:
(a)配列番号10のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号10のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号10のアミノ酸番号99から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号12のアミノ酸番号24から34までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号12のアミノ酸番号50から56までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号12のアミノ酸番号89から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号14のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号14のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号14のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号16のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号16のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号16のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号18のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号18のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号18のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号20のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号20のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号20のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(d)配列番号22のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号22のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号22のアミノ酸番号98から110までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号24のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号24のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号24のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(e)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(f)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(g)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(h)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域
(i)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(j)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(k)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域;
(l)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;又は
(m)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0042】
抗CD137scFvにおいて、抗CD137抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域を連結するリンカーの種類及び長さは特に限定されず、当業者が適宜選択することが可能である。リンカーとしては、ペプチドリンカーを用いてもよい。好ましい長さは5アミノ酸以上(上限は特に限定されないが、通常、30アミノ酸以下、好ましくは20アミノ酸以下)であり、特に好ましくは15アミノ酸である。リンカーとして、例えば、グリシン-セリンリンカー(GSリンカー)や、グリシン-リジン-プロリン-グリシン-セリンリンカー(GKPGSリンカー)を使用することができる。このようなリンカーとしては、例えば、以下が挙げられる。
Ser
Gly-Ser
Gly-Gly-Ser
Ser-Gly-Gly
Gly-Gly-Gly-Ser (配列番号46)
Ser-Gly-Gly-Gly (配列番号47)
Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (配列番号48)
Ser-Gly-Gly-Gly-Gly (配列番号49)
Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (配列番号50)
Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly (配列番号51)
Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (配列番号52)
Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly (配列番号53)
Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (配列番号54)
(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)n
(Ser-Gly-Gly-Gly-Gly)n
Gly-Lys-Pro-Gly-Ser (配列番号55)
(Gly-Lys-Pro-Gly-Ser)n
上記のnは1以上の整数を示す。また、ある態様では、上記のnは1~10、2~8、又は2~6である。リンカーの長さや配列は目的に応じて当業者が適宜選択することができる。1つの実施形態において、抗CD137scFvにおいて使用されるリンカーは、GSリンカーである。1つの実施形態において、抗CD137scFvにおいて使用されるリンカーは、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)nのGSリンカーであり、nは3又は4のいずれかである。
【0043】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、以下の(a)~(e)のいずれかの抗CD137scFvを含む:
(a)配列番号26のアミノ酸番号1から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(b)配列番号28のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(c)配列番号30のアミノ酸番号1から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(d)配列番号32のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;又は
(e)配列番号34のアミノ酸番号1から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv。
【0044】
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体において、抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントと抗CD137抗体又はその抗原結合フラグメントはリンカーで連結されていてもよい。抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントと抗CD137抗体又はその抗原結合フラグメントを連結するリンカーの種類及び長さは特に限定されず、当業者が適宜選択することが可能である。リンカーとしては、ペプチドリンカーを用いてもよい。好ましい長さは5アミノ酸以上(上限は特に限定されないが、通常、30アミノ酸以下、好ましくは20アミノ酸以下)であり、特に好ましくは10アミノ酸である。ペプチドリンカーとして、例えば、グリシン-セリンリンカー(GSリンカー)や、グリシン-リジン-プロリン-グリシン-セリンリンカー(GKPGSリンカー)を使用することができる。このようなリンカーとしては、例えば、以下が挙げられる。
Ser
Gly-Ser
Gly-Gly-Ser
Ser-Gly-Gly
Gly-Gly-Gly-Ser (配列番号46)
Ser-Gly-Gly-Gly (配列番号47)
Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (配列番号48)
Ser-Gly-Gly-Gly-Gly (配列番号49)
Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (配列番号50)
Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly (配列番号51)
Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (配列番号52)
Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly (配列番号53)
Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser (配列番号54)
(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)n
(Ser-Gly-Gly-Gly-Gly)n
Gly-Lys-Pro-Gly-Ser (配列番号55)
(Gly-Lys-Pro-Gly-Ser)n
上記のnは1以上の整数を示す。また、ある態様では、上記のnは1~10、2~8、又は2~6である。ペプチドリンカーの長さや配列は目的に応じて当業者が適宜選択することができる。1つの実施形態において、抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントと抗CD137抗体又はその抗原結合フラグメントを連結するリンカーとして使用されるリンカーは、GSリンカー又はGKPGSリンカーであり、1つの実施形態において、配列番号54のアミノ酸配列からなるリンカーである。
【0045】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4 IgG抗体及び抗CD137scFvを含み、抗CLDN4 IgG抗体と抗CD137scFvがリンカーを介して連結されている構造を有する。抗CLDN4 IgG抗体と抗CD137scFvの連結部位は特に限定されないが、例えば、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CD137scFvのカルボキシ末端に抗CLDN4 IgG抗体の重鎖アミノ末端が連結されている、抗CD137scFvのカルボキシ末端に抗CLDN4 IgG抗体の軽鎖アミノ末端が連結されている、抗CLDN4 IgG抗体の重鎖カルボキシ末端に抗CD137scFvのアミノ末端が連結されている、抗CLDN4 IgG抗体の軽鎖カルボキシ末端に抗CD137scFvのアミノ末端が連結されている等の種々の構造をとることができる。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4 IgG抗体の重鎖カルボキシ末端に抗CD137scFvのアミノ末端が連結されている、又は抗CLDN4 IgG抗体の軽鎖カルボキシ末端に抗CD137scFvのアミノ末端が連結されている。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4 IgG抗体の重鎖カルボキシ末端に抗CD137scFvのアミノ末端が連結されている。
【0046】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4 IgG抗体及び抗CD137scFvを含み、抗CLDN4 IgG抗体の重鎖又は軽鎖カルボキシ末端に抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されており、抗CD137scFvの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域が以下の(a)~(m)のいずれかである、抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体である:
(a)配列番号10のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号10のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号10のアミノ酸番号99から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号12のアミノ酸番号24から34までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号12のアミノ酸番号50から56までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号12のアミノ酸番号89から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号14のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号14のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号14のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号16のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号16のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号16のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号18のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号18のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号18のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号20のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号20のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号20のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(d)配列番号22のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号22のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号22のアミノ酸番号98から110までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号24のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号24のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号24のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(e)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(f)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(g)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(h)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域
(i)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(j)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(k)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域;
(l)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;又は
(m)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0047】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、抗CLDN4 IgG抗体及び抗CD137scFvを含み、抗CLDN4 IgG抗体の重鎖又は軽鎖カルボキシ末端に抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されており、抗CD137scFvが以下の(a)~(e)のいずれかである、抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体である:
(a)配列番号26のアミノ酸番号1から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(b)配列番号28のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(c)配列番号30のアミノ酸番号1から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(d)配列番号32のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;又は
(e)配列番号34のアミノ酸番号1から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv。
【0048】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、以下の(a)~(h)のいずれかの抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体である:
(a)配列番号2のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号2のアミノ酸番号99から114までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、配列番号4のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号4のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号4のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号10のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号10のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号10のアミノ酸番号99から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号12のアミノ酸番号24から34までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号12のアミノ酸番号50から56までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号12のアミノ酸番号89から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(b)配列番号2のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号2のアミノ酸番号99から114までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、配列番号4のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号4のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号4のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号14のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号14のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号14のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号16のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号16のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号16のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(c)配列番号2のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号2のアミノ酸番号99から114までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、配列番号4のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号4のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号4のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号18のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号18のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号18のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号20のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号20のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号20のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(d)配列番号2のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号2のアミノ酸番号99から114までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、配列番号4のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号4のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号4のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号22のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号22のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号22のアミノ酸番号98から110までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号24のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号24のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号24のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(e)配列番号6のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号6のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号6のアミノ酸番号99から112までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、配列番号8のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号8のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号10のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号10のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号10のアミノ酸番号99から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号12のアミノ酸番号24から34までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号12のアミノ酸番号50から56までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号12のアミノ酸番号89から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(f)配列番号6のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号6のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号6のアミノ酸番号99から112までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、配列番号8のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号8のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号14のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号14のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号14のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号16のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号16のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号16のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(g)配列番号6のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号6のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号6のアミノ酸番号99から112までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、配列番号8のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号8のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号18のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号18のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号18のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号20のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号20のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号20のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;又は
(h)配列番号6のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号6のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号6のアミノ酸番号99から112までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、配列番号8のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号8のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号8のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号22のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号22のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号22のアミノ酸番号98から110までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号24のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号24のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号24のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体。
【0049】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、以下の(a)~(j)のいずれかの抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体である:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(b)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(c)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(d)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(e)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(f)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(g)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(h)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(i)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(j)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(k)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の軽鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(l)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の軽鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(m)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の軽鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(n)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の軽鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(o)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の軽鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(p)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の軽鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(q)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の軽鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(r)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の軽鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;
(s)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の軽鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体;又は
(t)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の軽鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている二重特異性抗体。
【0050】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、以下の(a)又は(b)の抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体である:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖を含むポリペプチドを含む二重特異性抗体;又は
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖を含む二重特異性抗体。
【0051】
本明細書において「翻訳後修飾」とは、抗体を細胞内で発現させた場合に抗体が翻訳後に修飾を受けることをいう。翻訳後修飾の例として、重鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化、グリコシル化、酸化、脱アミド化、糖化等の修飾や、重鎖C末端のリジンのカルボキシペプチダーゼによる切断によるリジン欠失が挙げられる。種々の抗体において、このような翻訳後修飾が生じることが知られている(J.Pharm.Sci.、2008、Vol.97、p.2426-2447)。
【0052】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、翻訳後修飾されていてもよい。1つの実施形態において、翻訳後修飾が、重鎖可変領域N末端のピログルタミル化及び/又は重鎖C末端リジン欠失である。N末端のピログルタミル化又はC末端リジン欠失による翻訳後修飾が抗体の活性に影響を及ぼすものではないことは当該分野で知られている(Analytical Biochemistry、2006、Vol.348、p.24-39)。
【0053】
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、ヒトCLDN4及びヒトCD137に結合する。ヒトCLDN4及びヒトCD137に結合するか否かは、公知の結合活性測定方法を用いて確認することができる。結合活性を測定する方法としては、例えば、ELISA法、フローサイトメトリー法等の方法が挙げられる。ELISA法又はフローサイトメトリー法は、当業者が通常用いる方法にて実施することができ、例えば実施例3又は5に記載される方法を用いることができる。
【0054】
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、ヒトCLDN4及びヒトCD137を抗原として用いて当該分野で公知の抗体作製技術を使用して当業者に容易に作製され得、或いは、本明細書に開示される抗CLDN4抗体及び抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列情報等に基づいて、当該分野で公知の方法を使用して、当業者によって容易に作製され得る。
【0055】
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、特に限定されるものではないが、例えば、後述の<本発明の二重特異性抗体を生産する方法>に記載の方法に従い製造することができる。
【0056】
<本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチド>
本発明はまた、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体の生産に使用されうるポリヌクレオチド(「本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチド」とも称する)を提供する。
【0057】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドは、下記(a)~(d)からなる群より選択される、抗CLDN4抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドである:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(d)配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0058】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドは、下記(a)又は(b)より選択される、抗CLDN4抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドである:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(b)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0059】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドは、下記(a)~(r)からなる群より選択される、抗CD137抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドである:
(a)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(e)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(f)配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(g)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(h)配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(i)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(j)配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(k)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(l)配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(m)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(n)配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(o)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(p)配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(q)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(r)配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0060】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドは、下記(a)~(i)からなる群より選択される、抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドである:
(a)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(e)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(f)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(g)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(h)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(i)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0061】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドは、下記(a)~(e)からなる群より選択される、抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドである:
(a)配列番号26のアミノ酸番号1から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号28のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号30のアミノ酸番号1から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号32のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(e)配列番号34のアミノ酸番号1から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0062】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドは、下記(a)~(e)からなる群より選択されるポリヌクレオチドである:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(e)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0063】
本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドは、その塩基配列に基づき、当該分野で公知の方法を使用して、当業者によって容易に作製され得る。例えば、本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドは、当該分野で公知の遺伝子合成方法を利用して合成することが可能である。このような遺伝子合成方法としては、国際公開番号90/07861号に記載の抗体遺伝子の合成方法等の当業者に公知の種々の方法が使用され得る。
【0064】
<本発明の二重特異性抗体の発現ベクター>
本発明はまた、本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドを含む発現ベクター(「本発明の二重特異性抗体の発現ベクター」とも称する)を提供する。これらのポリヌクレオチドは、それぞれが別々のベクターに含まれていてもよく、又は複数のポリヌクレオチドが1つのベクターに含まれていてもよい。
【0065】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗体の発現ベクターは、下記(a)~(aa)からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(e)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(f)配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(g)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(h)配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(i)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(j)配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(k)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(l)配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(m)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(n)配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(o)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(p)配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(q)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(r)配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(s)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(t)配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(u)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(v)配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(w)配列番号26のアミノ酸番号1から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(x)配列番号28のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(y)配列番号30のアミノ酸番号1から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(z)配列番号32のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(aa)配列番号34のアミノ酸番号1から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0066】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗体の発現ベクターは、下記(a)~(k)からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(e)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(f)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(g)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(h)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(i)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(j)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(k)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0067】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗体の発現ベクターは、下記(a)~(c)からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(c)配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0068】
1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗体の発現ベクターは、下記(a)又は(b)より選択されるポリヌクレオチドを含む:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0069】
本発明の二重特異性抗体の発現ベクターは、真核細胞(例えば、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母)及び/又は原核細胞(例えば、大腸菌)等の各種宿主細胞中において本発明のポリヌクレオチドを産生できるものである限り、特に制限されるものではない。このような発現ベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクター等が挙げられる。プラスミドベクターとしては、例えば、pcDNAシリーズ(Thermo Fisher Scientific社)、pALTER(登録商標)-MAX(プロメガ)、pHEK293 Ultra Expression Vector(タカラバイオ社)、pEE6.4又はpEE12.4(Lonza Biologics社)等を使用することができる。ウイルスベクターとしては、例えば、レンチウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルスを使用することができる。例えば、細胞へ本発明のポリヌクレオチドを導入するためにレンチウイルスを使用する場合、当該レンチウイルスは、pLVSIN-CMV/EF1αベクター(タカラバイオ社)、pLentiベクター(Thermo Fisher Scientific社)等を用いることができる。1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗体の発現ベクターに使用されるベクターは、pcDNA3.4-TOPO(登録商標)(Thermo Fisher Scientific社)及びpcDNA3.1(Thermo Fisher Scientific社)である。
【0070】
本発明の二重特異性抗体の発現ベクターは、本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドに動作可能なように連結されたプロモーターを含み得る。動物細胞で本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドを発現させるためのプロモーターとしては、例えば、CMV、RSV、SV40等のウイルス由来プロモーター、アクチンプロモーター、EF(elongation factor)1αプロモーター、ヒートショックプロモーター等が挙げられる。細菌(例えば、エシェリキア属菌)で本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドを発現させるためのプロモーターとしては、例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、λPLプロモーター、tacプロモーター等が挙げられる。酵母で本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドを発現させるためのプロモーターとしては、例えば、GAL1プロモーター、GAL10プロモーター、PH05プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等が挙げられる。
【0071】
宿主細胞として、動物細胞、昆虫細胞又は酵母を用いる場合、本発明の二重特異性抗体の発現ベクターは、開始コドン及び終止コドンを含み得る。この場合、エンハンサー配列、本発明の抗体又はその重鎖若しくは軽鎖をコードする遺伝子の5’側及び3’側の非翻訳領域、分泌シグナル配列、スプライシング接合部、ポリアデニレーション部位、あるいは複製可能単位等を含んでいてもよい。宿主細胞として大腸菌を用いる場合、本発明の発現ベクターは、開始コドン、終止コドン、ターミネーター領域、及び複製可能単位を含み得る。本発明の発現ベクターは、目的に応じて通常用いられる薬剤選択マーカー遺伝子(例えば、テトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子)を含んでいてもよい。
【0072】
<本発明の宿主細胞>
本発明はまた、本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチド又は本発明の二重特異性抗体の発現ベクター(「本発明のポリヌクレオチド等」とも称する)によって形質転換された宿主細胞(「本発明の宿主細胞」とも称する)を提供する。本発明の宿主細胞は、細胞内に本発明のポリヌクレオチド等を含む。導入された本発明のポリヌクレオチド等は宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれていてもよく、組み込まれていなくてもよい。宿主細胞として用いる細胞は、in vitroで培養可能な細胞又は生体内の細胞のいずれでもよい。宿主細胞がin vitroで培養可能な細胞である場合、本発明のポリヌクレオチド等をin vitroにて細胞に導入することで、本発明の宿主細胞を作製することができる。宿主細胞を形質転換する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、又はリポフェクション方等の当業者に一般的に用いられる方法を使用することができる。宿主細胞が生体内の細胞である場合、宿主細胞に本発明のポリヌクレオチド等を導入する方法は、特に限定されるものではないが、核酸送達用キャリア(カチオン性キャリア又は非カチオン性キャリア(例えば、リポソーム、脂質ナノ粒子(LNP)を含むがこれに限らない)等)を用いることができる。
【0073】
in vitroで培養可能な細胞としては、使用する発現ベクター又はエレクトロポレーション等の方法によって形質転換され、抗体又はポリペプチドを発現することができるものである限り特に限定されるものではない。in vitroで培養可能な細胞としては、例えば、本発明の技術分野において通常使用される従来細胞又は人工的に樹立された細胞等種々の細胞(例えば、動物細胞(例えば、CHO-K1細胞、ExpiCHO-S(登録商標)細胞、CHOK1SV細胞、CHO-DG44細胞、HEK293細胞、Expi293F細胞、NS0細胞)、昆虫細胞(例えば、Sf9)、細菌(エシェリキア属菌等)、酵母(サッカロマイセス属、ピキア属等)等)が挙げられる。1つの実施形態において、本発明の宿主細胞はExpi293F細胞、CHO-K1細胞、又はExpiCHO-S細胞である。
【0074】
in vitroにて形質転換された宿主細胞の選別は、当業者に一般に使用されている方法にて行うことができる。選別方法には、例えば、薬剤選択マーカー遺伝子とテトラサイクリン、アンピシリン、ネオマイシン又はハイグロマイシン等の薬剤を用いた薬剤選択法や、限外希釈法、シングルセルソーティング法、又はコロニーピックアップ法等の細胞単離法を用いることができる。
【0075】
本発明の宿主細胞の1つの実施形態において、該宿主細胞は、下記(a)~(aa)からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(e)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(f)配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(g)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(h)配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(i)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(j)配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(k)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(l)配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(m)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(n)配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(o)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(p)配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(q)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(r)配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(s)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(t)配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(u)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(v)配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(w)配列番号26のアミノ酸番号1から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(x)配列番号28のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(y)配列番号30のアミノ酸番号1から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(z)配列番号32のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(aa)配列番号34のアミノ酸番号1から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFvをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0076】
1つの実施形態において、該宿主細胞は、下記(a)~(k)からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(e)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(f)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(g)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(h)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(i)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(j)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(k)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0077】
本発明の宿主細胞の1つの実施形態において、該宿主細胞は、下記(a)~(c)からなる群より選択されるポリヌクレオチドを含む:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(c)配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0078】
1つの実施形態において、該宿主細胞は、下記(a)又は(b)より選択されるポリヌクレオチドを含む:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0079】
本発明の宿主細胞の1つの実施形態において、該宿主細胞は下記の(a)~(j)のポリペプチドを含む:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(c)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(d)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(e)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(f)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(g)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(h)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(i)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド;又は
(j)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【0080】
本発明の宿主細胞の1つの実施形態において、該宿主細胞は、下記の(a)又は(b)の宿主細胞である:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む、宿主細胞;又は
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
【0081】
本発明の宿主細胞の1つの実施形態において、該宿主細胞は、配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む、宿主細胞である。
【0082】
<本発明の二重特異性抗体を生産する方法>
本発明はまた、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体を生産する方法(「本発明の生産方法」とも称する)を提供する。本発明の生産方法には、前述の本発明の二重特異性抗体のポリヌクレオチドの生産方法、本発明の二重特異性抗体の発現ベクターの生産方法及び本発明の宿主細胞の生産方法が含まれうる。さらに、本発明の生産方法には、前述の<本発明の宿主細胞>に記載の宿主細胞を培養し該細胞又は該培養上清中に該抗体を発現させる工程、該抗体を回収、単離及び精製する方法等も含まれうる。しかしながら、本発明の生産方法は、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体が生産される限りにおいて、これらの方法に限定されるものではない。
【0083】
1つの実施形態において、本発明の生産方法は、下記の(a)~(j)の宿主細胞を培養する工程を含む:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む宿主細胞;
(b)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む宿主細胞;
(c)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む宿主細胞;
(d)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む宿主細胞;
(e)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む宿主細胞;
(f)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む宿主細胞;
(g)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む宿主細胞;
(h)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む宿主細胞;
(i)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む宿主細胞;又は
(j)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137抗体の軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されているポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【0084】
1つの実施形態において、本発明の生産方法は、下記の(a)又は(b)の宿主細胞を培養する工程を含む:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む宿主細胞;又は
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【0085】
本発明の宿主細胞の培養は公知の方法により行うことができる。培養条件、例えば、温度、培地のpH及び培養時間は、当業者により適宜選択されうる。宿主細胞が動物細胞の場合、培地としては、例えば、約5~20%の胎児牛血清を含むMEM培地(Science、1959、Vol.130、p.432-437)、D-MEM培地(Virol.、1959、Vol.8、p.396)、RPMI-1640培地(J.Am.Med.Assoc.、1967、Vol.199、p.519)、199培地(Exp.Biol.Med.、1950、Vol.73、p.1-8)等を用いることができる。培地のpHは、例えば、約6~8であり、培養は、必要により通気や撹拌しながら、通常約30~40℃で約15~336時間行われる。宿主細胞が昆虫細胞の場合、培地としては、例えば、胎児牛血清を含むGrace’s培地(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、1985、Vol.82、p.8404)等を用いることができる。培地のpHは、例えば、約5~8であり、培養は、必要により通気や撹拌しながら、通常約20~40℃で約15~100時間行われる。宿主細胞が大腸菌又は酵母である場合、培地としては、例えば、栄養源を含有する液体培地が適当である。栄養培地は、例えば、形質転換された宿主細胞の生育に必要な炭素源、無機窒素源、又は有機窒素源を含んでいる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストラン、可溶性デンプン、ショ糖等が、無機窒素源又は有機窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液等が挙げられる。所望により他の栄養素(例えば、無機塩(例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン類)、抗生物質(例えば、テトラサイクリン、ネオマイシン、アンピシリン、カナマイシン)等を含んでいてもよい。培地のpHは、例えば、約5~8である。宿主細胞が大腸菌の場合、培地としては、例えば、LB培地、M9培地(Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory、Vol.3、A2.2)等を用いることができる。培養は、必要により通気や撹拌しながら、通常約14~43℃で約3~24時間行われる。宿主細胞が酵母の場合、培地としては、例えば、Burkholder最小培地(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、1980、Vol.77、p.4505)等を用いることができる。培養は、必要により通気や撹拌しながら、通常約20~35℃で約14~144時間行われる。上述のような培養により、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体を発現させることができる。
【0086】
本発明の生産方法は、本発明の宿主細胞を培養し、抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体を発現させる工程に加え、該宿主細胞から抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体を回収、単離又は精製する工程を含むことができる。単離又は精製方法としては、例えば、塩析、溶媒沈澱法等の溶解度を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過等の分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等の荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィー等の特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィー等の疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動等の等電点の差を利用する方法等が挙げられる。1つの実施形態において、培養上清中に分泌された抗体は、各種クロマトグラフィー、例えば、プロテインAカラム又はプロテインGカラムを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製することができる。
【0087】
本発明の生産方法によって生産される抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体は本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体に含まれる。
【0088】
<本発明の医薬組成物等>
本発明はまた、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体を含む医薬組成物等(「本発明の医薬組成物」とも称する)を提供する。本発明の医薬組成物には、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が含まれる。本発明の医薬組成物は、当該分野において通常用いられている賦形剤、即ち、薬剤用賦形剤や薬剤用担体等を用いて、通常使用される方法によって調製することができる。これら医薬組成物の剤型の例としては、例えば、注射剤、点滴用剤等の非経口剤が挙げられ、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、腫瘍内投与等の適切な方法により投与することができる。製剤化にあたっては、薬学的に許容される範囲で、これら剤型に応じた賦形剤、担体、添加剤等を使用することができる。
【0089】
本発明の医薬組成物には、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体の翻訳後修飾体を含み得る。例えば、C末端リジンの欠失やN末端のピログルタミル化の両方又は一方を受けた抗体等を含有する医薬組成物も本発明に含まれる。
【0090】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、以下の(a)~(j)のいずれかの本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体を含有する医薬組成物である:
(a)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体;
(b)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体;
(c)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体;
(d)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体;
(e)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体;
(f)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体;
(g)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体;
(h)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体;
(i)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体;又は
(j)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の重鎖及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CLDN4抗体の軽鎖、並びに配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvを含み、該抗CLDN4抗体の重鎖カルボキシ末端に該抗CD137scFvのアミノ末端がリンカーを介して連結されている抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体。
【0091】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、以下の(a)又は(b)の本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体を含有する医薬組成物である:
(a)配列番号36のアミノ酸番号1から705までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖を含む、抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体;又は
(b)配列番号38のアミノ酸番号1から712までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の重鎖及び抗CD137scFvを含むポリペプチド、並びに配列番号40のアミノ酸番号1から215までのアミノ酸配列からなる抗CLDN4抗体の軽鎖を含む、抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体。
【0092】
製剤化における本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体及び/又は当該抗体の翻訳後修飾体の添加量は、患者の症状の程度や年齢、使用する製剤の剤型、あるいは抗体の結合力価等により異なるが、例えば、0.001mg/kg~100mg/kg程度を用いることができる。
【0093】
<本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体の医薬用途>
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体、及びそれらを含有する医薬組成物は、対象のがんの治療のために用いることができる。また、本発明には、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体の治療有効量を対象に投与する工程を包含する、がんを治療する方法が含まれる。また、本発明には、がんの治療に使用するための、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体を含む。また、本発明には、がんの治療用医薬組成物の製造における、本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体の使用が含まれる。本発明による治療の対象となるがんは、特に限定されないが、例えば、種々の腹膜播種がん、胃がん、肺がん、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、T細胞リンパ腫等の血液がん、骨髄異形成症候群、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、未分化がん、大細胞がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、中皮腫、皮膚がん、皮膚T細胞リンパ腫、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、膣がん、頸部がん、頭頸部がん、子宮がん、子宮頸がん、肝臓がん、胆のうがん、胆管がん、腎臓がん、膵臓がん、結腸がん、大腸がん、直腸がん、小腸がん、胃がん、食道がん、精巣がん、卵巣がん、脳腫瘍等の固形がん、並びに骨組織、軟骨組織、脂肪組織、筋組織、血管組織及び造血組織のがんの他、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性血管内皮腫、悪性シュワン腫、骨肉腫、軟部組織肉腫等の肉腫や、膠芽腫、多形性膠芽腫、肝芽腫、髄芽腫、腎芽腫、神経芽腫、膵芽腫、胸膜肺芽腫、網膜芽腫などの芽腫等が挙げられる。1つの実施形態において、本発明による治療の対象となるがんは、大腸がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がんである。1つの実施形態において、本発明による治療の対象となるがんは、正常組織と比較してCLDN4が高発現しているがんである。本発明による治療の対象となるがんは、好ましくは、正常組織と比較してCLDN4が高発現しているがん、又は大腸がん、直腸がん、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、卵巣がん、乳がん、前立腺がんからなる群から選択されるがんである。
【0094】
<本発明の抗CLDN4抗体>
本発明はまた、以下の(a)~(c)のいずれかの抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する:
(a)配列番号2のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号2のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号2のアミノ酸番号99から114までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに、配列番号4のアミノ酸番号24から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号4のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号4のアミノ酸番号90から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメント;
(b)配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメント;又は
(c)配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0095】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号4のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメント、又は配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントである。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号2のアミノ酸番号1から125までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域である。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号6のアミノ酸番号1から123までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号8のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0096】
本発明の抗CLDN4抗体の重鎖定常領域としては、Igγ、Igμ、Igα、Igδ又はIgεのいずれの定常領域も選択可能である。Igγとしては、例えば、Igγ1、Igγ2、Igγ3又はIgγ4から選択することが可能である。1つの実施形態において、重鎖定常領域はIgγ1定常領域であり、例えば、ヒトIgγ1定常領域である。また、本発明の抗CLDN4抗体の重鎖定常領域は、ADCCやCDCを低下させるためにLALA変異、P331G又はP331S変異等のアミノ酸変異を含んでもよい。本発明の抗CLDN4抗体の軽鎖定常領域としては、Igλ又はIgκのいずれの定常領域も選択可能であり得る。1つの実施形態において、軽鎖定常領域はIgκ定常領域であり、例えば、ヒトIgκ定常領域である。
【0097】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4抗体の抗原結合フラグメントは、scFv、Fab、Fab’、又はF(ab’)2である。
【0098】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4抗体は、配列番号2のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖及び配列番号4のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、抗CLDN4抗体、又は配列番号6のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖及び配列番号8のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、抗CLDN4抗体である。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4抗体は、配列番号2のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖及び配列番号4のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む抗CLDN4抗体である。1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4抗体は、配列番号6のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖及び配列番号8のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む、抗CLDN4抗体である。
【0099】
本発明はまた、糖質、脂質、金属(放射性同位体を含む)、有機化合物(毒素、近赤外蛍光色素、キレート剤を含む)等(「修飾剤」ともいう)が結合した、本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメント(「本発明の複合体」ともいう)を提供する。本明細書において、「修飾剤」とは抗体又はその抗原結合フラグメントに直接又はリンカー等を介して結合している、非ペプチド性の物質を指す。本発明の複合体に用いられる修飾剤は特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、糖鎖、リン脂質、放射線同位体(例えば、ジルコニウム-89(89Zr)、イットリウム-90(90Y)、インジウム-111(111In)、アスタチン-211(211At)、アクチニウム-225(225Ac))、有機化合物、毒素、近赤外蛍光色素(例えばIRDye(登録商標))、キレート剤等が挙げられる。当該複合体に用いられる修飾剤は、本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントに直接結合していてもよく、また、任意のリンカーを介して結合していてもよい。1つの実施形態において、本発明の複合体は、抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントの薬物複合体(Antibody Drug Conjugate;ADC)である。ADCに用いられる薬物及びリンカーは、当業者が一般に用いる薬剤及びリンカーの中より選定されうる。
【0100】
本発明はまた、本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントを細胞表面に発現させた細胞(例えば、Chimeric antigen receptor-T cell;CAR-T細胞)を提供する。このような細胞は、本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドを用いて、当業者であれば作製することができる。本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントを発現させる細胞としては、各種免疫細胞(T細胞、NK細胞、NKT細胞等)を用いることができる。
【0101】
1つの実施形態において、本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメント、本発明の複合体、及び本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントを細胞表面に発現させた細胞における抗体又は抗原結合フラグメント部分は、翻訳後修飾されていてもよい。1つの実施形態において、翻訳後修飾が、重鎖可変領域N末端のピログルタミル化及び/又は重鎖C末端リジン欠失である。
【0102】
本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメント、本発明の複合体、及び本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントを細胞表面に発現させた細胞は、本明細書に開示される本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントのVH及びVLの配列情報、本発明の複合体に用いられる修飾剤の情報に基づいて、当該分野で公知の方法を使用して、当業者であれば作製し得る。本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントは、特に限定されるものではないが、例えば、<本発明の二重特異性抗体を生産する方法>の項に記載の方法に従って生産することができる。
【0103】
本発明はまた、本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメント、本発明の複合体及び本発明の抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントを細胞表面に発現させた細胞(纏めて以下本項において「本発明の抗CLDN4抗体等」と称する)、並びに薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。当該医薬組成物は、がんの治療のために用いることができる。本発明はまた、本発明の抗CLDN4抗体等の治療有効量を対象に投与する工程を含むがんを治療する方法、がんの治療に使用するための本発明の抗CLDN4抗体等、がんの治療用医薬組成物の製造における本発明の抗CLDN4抗体等の使用を提供する。本発明の抗CLDN4抗体等の医薬用途は、前述の<本発明の医薬組成物等>の記載に準じて当業者であれば実施し得る。本発明の抗CLDN4抗体等の医薬用途の治療の対象となるがんは、前述の<本発明の医薬組成物等>に記載のがんが挙げられる。
【0104】
<本発明の抗CD137抗体>
本発明はまた、以下の(a)~(d)のいずれかの抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗CD137抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する:
(a)配列番号10のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号10のアミノ酸番号50から66までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号10のアミノ酸番号99から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号12のアミノ酸番号24から34までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号12のアミノ酸番号50から56までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号12のアミノ酸番号89から98までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(b)配列番号14のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号14のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号14のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号16のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号16のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号16のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;
(c)配列番号18のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号18のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号18のアミノ酸番号98から107までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号20のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号20のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号20のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域;又は
(d)配列番号22のアミノ酸番号31から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号22のアミノ酸番号50から65までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号22のアミノ酸番号98から110までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号24のアミノ酸番号23から35までのアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号24のアミノ酸番号51から57までのアミノ酸配列からなるCDR2及び配列番号24のアミノ酸番号90から100までのアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖可変領域。
【0105】
1つの実施形態において、本発明の抗CD137抗体又はその抗原結合フラグメントは、以下の(a)~(i)のいずれかの抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む;
(a)配列番号10のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号12のアミノ酸番号1から109までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(b)配列番号14のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号16のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(c)配列番号18のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号20のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(d)配列番号22のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号24のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(e)配列番号26のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号26のアミノ酸番号134から242までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(f)配列番号28のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号28のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(g)配列番号30のアミノ酸番号1から111までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域及び配列番号30のアミノ酸番号132から249までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域;
(h)配列番号32のアミノ酸番号1から118までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号32のアミノ酸番号134から244までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;又は
(i)配列番号34のアミノ酸番号1から121までのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号34のアミノ酸番号137から247までのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0106】
1つの実施形態において、本発明の抗CD137抗体の抗原結合フラグメントは、scFvである。1つの実施形態において、本発明の抗CD137抗体の抗原結合フラグメントは、以下の(a)~(e)のいずれかである;
(a)配列番号26のアミノ酸番号1から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(b)配列番号28のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(c)配列番号30のアミノ酸番号1から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(d)配列番号32のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;又は
(e)配列番号34のアミノ酸番号1から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv。
【0107】
本発明の抗CD137抗体又はその抗原結合フラグメントは、<本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体>等の本明細書中の記載を参照して、当業者であれば作製し得る。本発明の抗CD137抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、がんの治療において使用される、任意のTAAに対する抗体(抗TAA抗体)との二重特異性抗体に使用されうる。すなわち、本発明はまた、本発明の抗CD137抗体又はその抗原結合フラグメント及び抗TAA抗体又はその抗原結合フラグメントを含む二重特異性抗体(「本発明の抗TAA-抗CD137二重特異性抗体」とも称する)を提供する。TAAとしては、腫瘍の細胞表面に発現している限りにおいて特に限定されないが、例えばHER2、EGFR、EpCAM、CEA、BCMA、PSMA,CD19、CD20、CD22、CD33、CD37、CD38、CD123、CD276(B7-H3)、GPC2、GPC3、GPRC5D、WT-1、NY-ESO-1、CLDN4、CLDN6、CLDN18.2、TSPAN8が使用されうる。1つの実施形態において、本発明の抗TAA-抗CD137二重特異性抗体は、抗CD137抗体のscFvを含む、1つの実施形態において、本発明の抗TAA-抗CD137二重特異性抗体は、以下の(a)~(e)のいずれかである抗CD137抗体のscFvを含む;
(a)配列番号26のアミノ酸番号1から242までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(b)配列番号28のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(c)配列番号30のアミノ酸番号1から249までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;
(d)配列番号32のアミノ酸番号1から244までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv;又は
(e)配列番号34のアミノ酸番号1から247までのアミノ酸配列からなる抗CD137scFv。
【0108】
1つの実施形態において、本発明の抗TAA-抗CD137二重特異性抗体は抗CLDN4抗体又はその抗原結合フラグメントを含み、1つの実施形態において、本発明の抗TAA-抗CD137二重特異性抗体はIgG型の抗CLDN4抗体を含む。
【0109】
本発明についてさらに理解を得るために参照する特定の実施例をここに提供するが、これらは例示目的とするものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0110】
[実施例1:腹膜播種がん細胞に発現する抗原に選択的に結合する抗体の取得]
[1-1.患者由来の腹膜播種がん細胞の取得]
患者からの腹膜播種がん細胞の取得は、千脇史子、佐々木博己による文献「腹膜転移がん(胃、膵、卵巣がんなど)細胞株の樹立」(佐々木博己編『患者由来がんモデルを用いたがん研究実践ガイド』羊土社、2019年、p.28-37)に記載の方法に準じて行った。
患者より採取した腹水を室温、430×gで3分間遠心し、上清を除去した後に、沈殿に溶血緩衝液を添加して溶血させた。遠心後に上清を除去し、ダルベッコPBS(-)(日水製薬社、05913、以下「PBS(-)と称する」)を50mL加えて細胞を洗浄した。その後、室温、430×gで3分間遠心して細胞を回収した。回収した腹水中の全細胞を10% FBS(Thermo Fisher Scientific社、10270?106)、×1 Antibiotic-Antimycotic(Thermo Fisher Scientific社、15240062)を含むRPMI-1640(L-グルタミン含有)培地(富士フイルム和光純薬社、189-02025)、(以下、実施例1においてFBS等を添加後の培地を「RPMI-1640培地」と称す)に再懸濁した。懸濁液を希釈し、100mmコラーゲンコートディッシュ(以下「ディッシュ」と称する)(IWAKI社、4020-010)に細胞を5×106~1×107個/10mLずつ播種し、37℃、5% CO2インキュベーターで培養した。
腹水中の細胞には、接着系細胞と浮遊系細胞が存在し、接着系細胞にはがん細胞だけでなくがん細胞以外の細胞(線維芽細胞、腹膜中皮細胞等)も含まれている。がん細胞以外の細胞はがん細胞より短時間で剥離する性質を有するため、これらの細胞を腹水中の全細胞より分離して除去した。がん細胞以外の細胞を除いた後、がん細胞がディッシュ面積の80%コンフルエント程度まで増殖した後に、全細胞の1/2を新しいディッシュへ継代する作業を繰り返し、5回以上継代したものを接着系がん細胞とした。浮遊系細胞については、培養ディッシュより培養上清5mLとRPMI-1640培地5mlを新しい100mmディッシュへ播種して継代し、5回以上継代したものを浮遊系がん細胞とした。1人の患者に由来する腹膜播種がん細胞が接着系がん細胞と浮遊系がん細胞の両方を含んだまま増殖する場合は、それらを混合系がん細胞とした。
本明細書において、上記方法にて単離した接着系がん細胞、浮遊系がん細胞又は混合系がん細胞を総称して「腹膜播種がん細胞」と称する。取得した6細胞(NSC-9C、NSC-15CF、NSC-16C、NSC-20C、NSC-22C、NSC-32C、(以下「6種の腹膜播種がん細胞」とも称する))を以後の検討に用いた。
【0111】
[1-2:抗胃がん抗原抗体産生ハイブリドーマの作製]
ヒ卜モノクローナル抗体開発技術「ベロシミューン」(VelocImmune(登録商標) antibody technology;Regeneron(米国特許6596541号))を用いて作製されたベロシミューンマウスに腹膜播種がん細胞を免疫して抗腹膜播種がん細胞に発現するがん抗原に対する抗体を取得した。
実施例1-1にて取得した腹膜播種がん細胞のうちNSC-9C、NSC-15CF、NSC-16Cの3細胞又はNSC-20C、NSC-22C、NSC-32Cの3細胞を混合し、TiterMax(登録商標)Gold ADJUVANT(Merck社、T2684)又はPBS(-)に懸濁し、腹膜播種がん細胞懸濁液を調製した。この懸濁液をベロシミューンマウスに数回投与して免疫を行った。常法に従い、免疫したマウスのリンパ節からリンパ球を回収し、マウスミエローマ細胞SP2/0(ATCC、CRL-1581)と細胞融合することでハイブリドーマを作製した。自動ピッキング装置にてハイブリドーマの単コロニーを単離し、モノクローン化ハイブリドーマ細胞(以下「クローン」と称する)を取得した。単離したクローンを37℃、8% CO2インキュベーターにて培養し、約14日後の上清を96ウェルプレートに回収し、以下の実験に用いた。
【0112】
[1-3:腹膜播種がん細胞に選択的に結合する抗体の選別]
(1)腹膜播種がん細胞及びEpCAM発現細胞への結合確認
実施例1-2にて得られたクローンの細胞上清には抗体(以下「クローン上清に含まれる抗体」と称する)が含まれている。
まず、クローン上清に含まれる抗体と実施例1-1で取得した6種の腹膜播種がん細胞との結合をフローサイトメトリー法にて測定し、腹膜播種がん細胞に強く結合する抗体を産生するクローンを選抜した。フローサイトメトリーにはBV421 Goat Anti-Mouse Ig(Becton, Dickinson and Company社、563846)を用いた。
また、がん抗原であるEpCAMに結合する抗体を提供するクローンを除外するために、クローン上清に含まれる抗体とヒトEpCAM-Myc-DDK発現CHO-K1細胞との結合を測定した。ヒトEpCAM-Myc-DDK発現CHO-K1細胞は、EPCAM(Myc-DDK-tagged)-Human epithelial cell adhesion molecule(EPCAM)(ORIGENE社、RC201989)をCHO-K1細胞(ATCC、CCL-61)にトランスフェクションすることにより作製した。当該細胞とクローン上清に含まれる抗体の結合をフローサイトメトリー法にて測定した。フローサイトメトリーには、BV421 Goat Anti-Mouse Igを用いた。EpCAM発現細胞に結合活性を示さない上清を提供するクローンを選択するために、当該細胞に結合するクローンを除外した。陽性コントロールとして、CD326(EpCAM) Monoclonal Antibody(1B7),(eBioscience社、14-9326)を使用した。
さらに、腹膜播種がん細胞に選択的に結合するクローンを選抜するために、培養ヒト腹膜中皮細胞に結合するクローンを除外した。培養ヒト腹膜中皮細胞としてHuman Mesothelial Cells(Zenbio社、MES-F、Lot.MESM050311A)(以下「培養ヒト腹膜中皮細胞」とも称する)を用い、Mesothelial Cell Growth Medium(Zenbio社、MSO-1)にて培養した培養ヒト腹膜中皮細胞とクローンとの結合の測定にはフローサイトメ卜リ一法を用いた。フローサイトメ卜リ一法には、BV421 Goat Anti-Mouse Igを用いた。培養ヒト腹膜中皮細胞に結合しないクローンのみを選別した。
上記実験により、6種の腹膜播種がん細胞中の5種以上に結合し、且つ、ヒトEpCAM及び培養腹膜中皮細胞には結合しない抗体を提供するクローンとして3D11クローンを取得した。
【0113】
(2)ハイブリドーマ上清からの抗体精製
3D11クローンをCDハイブリドーマメディウム(Thermo Fisher Scientific社、11279023)で培養した。培養上清から、MabSelectSuRe(GEヘルスケア社、17-5438-02)を用いて、3D11抗体を精製した(以下「3D11」と称する)。抗体の精製は常法に従った。
【0114】
[1-4:3D11が認識する抗原分子の同定]
(1)LC-MS/MS測定による抗原候補分子の同定
3D11の抗原候補分子の同定を行った。本実験におけるコントロール抗体として、1D10、10B5を使用した。これらの抗体は、3D11を取得する過程にて3D11と異なる腹膜播種がん細胞への結合パターンを示した。
NSC-15CFの細胞破砕液を作製した。細胞破砕液に、3D11及びコントロール抗体2種(1D10、10B5)のうちのいずれか1抗体を添加し、さらにDynabeads Protein G (Life Technologies社、10003D)を加えて攪拌及び洗浄を行った。Dynabeads Protein Gに結合したタンパク質をTrypsin/LysC(Promega社、V5072)を用いて消化し、ペプチド混合物を得た。ペプチド混合物を含む溶液をUltiMate3000RSLCnano(Thermo Fisher Scientific社)及びOrbitrap Fusion(Thermo Fisher Scientific社)を用いたLC-MS/MS測定に供した。得られたLC-MS/MSデータについて、Progenesis QI for Proteomics(Waters社)及びMascot(Matrix Science社)ソフトを用いて比較定量解析及びペプチド/タンパク質同定を行い、結合タンパク質を同定した。3D11とコントロール抗体の結合タンパク質を比較し、3D11の抗原候補分子としてCLDN4を同定した。
【0115】
(2)3D11の抗原決定
(1)にて同定したCLDN4が3D11の抗原であるかどうかを決定するために、ヒトCLDN4-Myc-DDK発現CHO-K1細胞に対する結合実験を行った。ヒトCLDN4-Myc-DDK発現CHO-K1細胞は、CHO-K1細胞にCLDN4(Myc-DDK-tagged)-Human claudin 4 (CLDN4)(ORIGENE社、RC200490)をトランスフェクションすることにより作製した。結果、3D11はヒトCLDN4-Myc-DDK発現CHO-K1細胞に結合したため、CLDN4を抗原として認識することが確認された。
【0116】
[実施例2:3D11の配列決定及びヒト抗体の作製]
常法に従い3D11の重鎖及び軽鎖をコ一ドする遺伝子をクロ一ニングし、3D11の塩基配列及びアミノ酸配列を決定した。3D11の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号2に、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号4に示す。ベロシミュ一ンマウスにより作製される抗体は内因性の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の可変領域が対応するヒ卜可変領域で置換された抗体である。すなわち、ベロシミュ一ン技術を用いて得られた抗体は、ヒ卜抗体の可変領域とマウス抗体の定常領域を有する抗体(「キメラ抗体」とも称する)である。
【0117】
[参考例:がん腹膜播種治療に用いる抗CLDN4-抗CD3二重特異性抗体]
がん細胞に選択的に発現するTAAに対する治療薬として、抗体、抗体-薬物複合体(ADC)抗体、Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy(CAR-T)等の様々な種類の薬剤が知られている。その中でも低い抗体濃度でがん細胞選択的な細胞傷害活性を得ることができる画期的な方法として、二重特異性T細胞リクルート抗体(T-cell-recruiting antibody)が知られている。そこで、3D11を用いた二重特異性T細胞リクルート抗体の作製を検討した。
【0118】
(1)ヒト化抗CLDN4抗体の作製
ヒト型抗CLDN4-抗CD3scFv二重特異性抗体の作製を以下の方法で行った。
ヒト型抗CLDN4抗体部分は、常法に従い3D11の重鎖可変領域にヒト重鎖のIgG1の定常領域を、軽鎖可変領域にヒト軽鎖κ鎖の定常領域をそれぞれ連結して設計した。更に重鎖のアミノ酸番号238及び239(EUインデックス:234及び235)のアミノ酸をそれぞれロイシン(L)からアラニン(A)に置換したLALA変異(L234A及びL235A)、アミノ酸番号370、372及び411(EUインデックス:366、368及び407)のアミノ酸をそれぞれトレオニン(T)からセリン(S)、LからA、チロシン(Y)からバリン(V)に置換するノブズ・イントゥー・ホールズ(Knobs into holes)変異、並びに、アミノ酸番号301(EUインデックス:297)のアミノ酸をアスパラギン(N)からAに置換する変異を導入した。作製したヒト化抗CLDN4抗体を3D11.1と称する。3D11.1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを常法に従って合成し、pcDNA3.4 TOPOベクター(Thermo Fisher scientific社)に挿入した。
【0119】
(2)抗CD3scFvの作製
抗CD3scFv部分は、日本特許第5686953号に記載のマウス抗CD3抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列に基づき作製した。抗CD3scFvのヒト化は、文献(Front Biosci.、2008、Vol.13、p.1619-1633)記載の方法に準じて行った。この際に、バックミューテーションを導入した。立体構造情報(PDB Code:5FCS)をMOLSIS Inc.社が提供する統合計算化学システムMOEで解析して、フレームワーク領域内のバックミューテーション導入位置を決定した。ヒト化抗CD3scFvのアミノ酸配列を配列番号41に示す。配列番号41に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを常法に従って合成し、pcDNA3.1(+)ベクター(Thermo Fisher scientific社 、V79020)に挿入した。
【0120】
(3)抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体の作製
3D11.1と抗CD3scFvをコードするベクターを用いて、PCT/JP2021/41839の実施例7に記載の方法に準じて、抗CLDN4抗体のFab領域と抗CD3抗体のscFv領域とFc領域により構成される二重特異性抗体を作製した。作製した二重特異性抗体を、抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体と称する。
【0121】
(4)抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体の薬効評価
抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体のin vitroにおけるredirected T cell cytotoxicity(RTCC)活性をPCT/JP2021/41839の実施例9に記載の方法に準じて測定した。抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体がRTCC活性を有することを確認した。またPCT/JP2021/41839の実施例11に記載の方法に準じて抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体のin vivoにおける抗腫瘍活性を評価した。抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体は胃がん腹膜播種in vivoマウスモデルにおいて抗腫瘍効果を示した。これらの結果より、抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体はがんの治療に有効であることが示唆された。
さらに、抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体の安全性について検討をするため、カニクイザルの静脈内に抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体を単回投与した。結果、抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体を投与したサルにおいて死亡例及び瀕死例が確認された。死亡したサルにおいては投与1時間後及び6時間後、瀕死のサルにおいては投与1時間後、6時間後及び24時間後において血中のIL-6量が著しく増加していた。これらの結果より、抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体はin vitro及びin vivoにおいて薬効を発揮する一方で、サイトカインの増加によると思われる重篤な副作用の懸念が生じた。よって、抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体は、ヒトのがんの治療に用いる抗体としては不適格であると判断した。
【0122】
[実施例3:抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体の作製]
3D11を用いて抗CD137scFvとの二重特異性抗体(以下「抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体」と称する)を作製し、検討を実施した。
【0123】
[3-1.抗CD137抗体の取得]
(1)CD137―Fc融合タンパク質の作製
配列番号42のアミノ酸番号1から186までのアミノ酸配列からなるヒトCD137細胞外領域又は配列番号43のアミノ酸番号1から186までのアミノ酸配列からなるサルCD137細胞外領域をコードするポリヌクレオチドを、それぞれpFUSE-hIgG1-Fc1ベクター(InvivoGen社、pfuse-hg1fc1)に挿入し、CD137の細胞外領域とヒトFcとの融合タンパク質(以下それぞれ、「ヒトCD137-ヒトFc融合タンパク質」及び「サルCD137-ヒトFc融合タンパク質」と称する)をコードする発現用ベクターを作製した。作製したベクターをExpi293 Expression System Kit(Thermo Fisher Scientific社、A14635)又はExpiCHO Expression System Kit(Thermo Fisher Scientific社、A29133)を用いてExpi293F細胞(Thermo Fisher Scientific社、A14527)又はExpiCHO-S細胞(Thermo Fisher Scientific社、A29133)に導入し、培養を行った。培養上清中に分泌したタンパク質をMabSelect SuRe又はHiTrap MabSelect SuRe(GEヘルスケア社、11-0034-94)を用いて精製し、ヒトCD137-ヒトFc融合タンパク質及びサルCD137-ヒトFc融合タンパク質を取得した。
【0124】
(2)サルCD137-Hisタグ-3×FLAGタグ融合タンパク質の作製
配列番号43のアミノ酸番号1から183までのアミノ酸配列からなるサルCD137細胞外領域、配列番号44のHisタグ、及び配列番号45の3×FLAGタグをコードするポリヌクレオチドをpcDNA3.4 TOPOベクターにタンデムに挿入してベクターを作製した。作製したベクターを、ExpiFectamine CHO Transfection Kit(Thermo Fisher Scientific社、A29129)を用いてExpiCHO-S細胞に導入し、培養を行った。培養上清中に分泌したタンパク質をHisTrap excel(GEヘルスケアバイオサイエンス社、17-3712-06)を用いて精製した。得られた融合タンパク質を「サルCD137-Hisタグ-3×FLAGタグ融合タンパク質」と称する。
【0125】
(3)抗CD137抗体産生ハイブリドーマクローンの作製及びスクリーニング
ベロシミューンマウス、又はAlivaMabマウス(Ablexis社、米国特許9346873号)に、ヒトCD137-ヒトFc融合タンパク質又はヒトCD137-Hisタグタンパク質(R&D SYSTEMS社、9220-4B)と免疫アジュバントを数回投与して免疫を行った。常法に従い、免疫したマウスのリンパ節からリンパ球を回収し、マウスミエローマ細胞SP2/0と細胞融合することでハイブリドーマを作製した。自動ピッキング装置にてハイブリドーマの単コロニーを単離し、モノクローン化ハイブリドーマ細胞(以下「クローン」と称する)を取得した。各クローンを数日間培養し、培養上清を得た。培養上清に含まれる抗体のCD137に対する結合の確認を以下の方法で行った。
CD137に対する結合は、ELISA法にて評価した。評価には、ヒトCD137-Hisタグタンパク質、ヒトCD137-ヒトFc融合タンパク質、サルCD137-ヒトFc融合タンパク質又はヒトFcタンパク質のいずれかでコーティングしたプレートを用い、二次抗体にはGoat Anti-Mouse IgG,Human ads-HRP(SouthernBiotech社、1030-05)を用いた。上記方法によりヒトCD137及びサルCD137のいずれにも結合するクローンを複数取得した。
【0126】
(4)抗CD137抗体の取得とアゴニスト活性の確認
(3)で取得したクローンをHybridoma-SFM(Thermo Fisher Scientific社、12045-076)で培養し、培養上清からMabSelect SuReを用いて抗CD137抗体を精製した。精製した抗CD137抗体について、CD137への結合及びCD137アゴニスト活性の確認を行った。
抗CD137抗体のCD137への結合の確認は、(3)に記載したELISA法を用いて行った。抗CD137抗体のCD137アゴニスト活性の測定は、4-1BB Bioassayキット(Promega社、JA2351)を用いて、以下の方法で行った。FcγRIIb CHO-K1 Cells(Promega社、JA2251)を384ウェルプレート(Greiner Bio-One社、781080)に播種し、37℃、5% CO2で終夜培養した。培養上清を除去し、前述の各クローンの精製抗体と4-1BB Effector Cells(Promega社、JA2351)を加えて、37℃、5% CO2で6時間静置した。Bio-Glo Reagent(Promega社、JA2351)を加え、CD137アゴニスト活性に応答するルシフェラーゼの発現誘導による化学発光を測定した。FcγRIIb CHO-K1 Cellsの非存在下におけるCD137アゴニスト活性を評価するために、FcγRIIb CHO-K1 Cells非含有条件にて上記と同様の実験を行った。
評価を行った抗CD137抗体のうち、ベロシミューンマウス由来の3-34、並びにAlivaMabマウス由来のA2-32、A2-48及びA2-73がヒト及びサルCD137への強い結合活性を有し、且つFcγRIIb CHO-K1 Cellsの存在に依存したCD137アゴニスト活性を示した。
【0127】
(5)抗CD137抗体の遺伝子配列の同定
常法に従い、抗CD137抗体(3-34、A2-32、A2-48、A2-73)を提供するクローンから細胞溶解液を調製してcDNAを合成し、抗体塩基配列を同定した。同定した塩基配列の配列番号を表1に示す。
【表1】
【0128】
[3-2.抗CLDN4(3D11)-抗CD137(3-34)scFv二重特異性抗体の作製]
3D11及び3-34の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列に基づき、抗CLDN4(3D11)-抗CD137(3-34)scFv二重特異性抗体(以下「3D11_3-34-j6_S」とも称する)の設計を行った。作製した3D11_3-34-j6_Sは、ヒトIgG1κ型の抗CLDN4(3D11)抗体の重鎖カルボキシ末端(「C末端」とも称する)にGSリンカーが連結されており、GSリンカーのC末端に抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗CD137(3-34)scFv(配列番号26)のアミノ末端が結合している。さらに、3D11のヒトIgG1定常領域にL234A、L235A及びP331Sのアミノ酸変異を導入した。設計した抗体をコードするポリヌクレオチドを作製し、常法に従いpcDNA3.4 TOPOベクターに挿入した。前記発現ベクターをExpiCHO-S細胞に遺伝子導入し、培養上清から3D11_3-34-j6_Sを精製した。作製した3D11_3-34-j6_Sは、in vitroにて抗CD137結合活性及びCD137アゴニスト作用を有することが確かめられ、がん治療薬としての有効性が期待できることが示唆された。
【0129】
[実施例4:抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体の作製]
[4-1.ヒト化抗CLDN4(hKM3900)抗体の作製]
抗CLDN4抗体であるKM3900は他のクローディンファミリー分子であるCLDN6等に比べてCLDN4に選択的に結合することが報告されている(特許文献1)。そこで、報告に基づきKM3900のヒト化抗体の作製を行った。具体的には、KM3900の可変領域のヒト化アミノ酸配列に基づき、ヒトIgγ1の定常領域及びヒトIgκの定常領域の配列からヒト化抗体の設計を行なった。ヒトIgγ1定常領域には、L234A、L235A、及びP331Gのアミノ酸変異、又は、L234A、L235A、及びP331Sのアミノ酸変異を導入した。常法に従ってヒト化抗CLDN4(hKM3900)抗体を作製し、以後の検討に使用した。L234A、L235A、及びP331Gのアミノ酸変異を有する抗体を「hKM3900」と、L234A、L235A、及びP331Sのアミノ酸変異を有する抗体を「hKM3900_S」と称する。hKM3900の重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号6に、軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号8に記載する。
【0130】
[4-2.抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体の作製]
実施例3にて取得した抗CD137抗体(3-34、A2-32、A2-48、A2-73)から抗CD137scFvを設計し、hKM3900と抗CD137scFvとの二重特異性抗体の作製を行った(表2)。作製した抗体を総称して「抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv」と称する。
【0131】
(1)抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体をコードするベクターの作製
抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体を、hKM3900の配列及び抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列に基づき設計した。抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体は、IgG1型の抗CLDN4抗体(hKM3900)の重鎖又は軽鎖C末端にGSリンカーが連結されており、GSリンカーのC末端に抗CD137抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗CD137scFvのアミノ末端が結合している。さらに、hKM3900のヒトIgG1定常領域にL234A、L235A及びP331G又はP331Sのアミノ酸変異を導入した。設計した抗体の情報を表2に記載する。設計した抗体をコードするポリヌクレオチドを作製し、常法に従いpcDNA3.4 TOPOベクターへ挿入した。作製したベクターを総称して、「抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体発現ベクター」と称する。
【0132】
【0133】
(2)抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体の作製
抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体発現ベクターを用いて、表2に記載の11種の抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体を作製した。具体的には、ExpiFectamine CHO Transfection Kitを用いてExpiCHO-S細胞に抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体発現ベクターを導入し、抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体を培養上清中に分泌させた。得られた培養上清からMabSelect SuReを用いたアフィニティ精製法により抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体を精製した。更に、一部の抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体はHiLoad 26/600 superdex 200 pg(GEヘルスケア社、28-9893-36)又はSuperdex 200 Increase 10/300 GL(GEヘルスケア社、28-9909-44)を用いたサイズ排除クロマトグラフィー精製法による追加の精製を行った。
以後、実施例3及び4にて作製した抗CLDN4(3D11)-抗CD137(3-34)scFv二重特異性抗体及び抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体を総称して「抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体」と称することもある。
【0134】
[実施例5:抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体の結合活性及びアゴニスト活性評価]
抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のCLDN4及びCD137に対する結合活性、並びにCD137アゴニスト活性を評価した。
【0135】
[5-1.フローサイトメトリー法による抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のCLDN4に対する結合活性評価]
抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のCLDN4への結合活性を、フローサイトメトリー法を用いて評価した。CLDN4(Myc-DDK-tagged)-Human claudin 4から調製したCLDN4遺伝子をpCMV6-AC-GFP Mammalian Expression Vector(ORIGENE社、PS100010)に挿入し、ヒトCLDN4の発現ベクターを作製した。ヒトCLDN4の発現ベクターをCHO-K1細胞に導入し、ヒトCLDN4発現CHO-K1を取得した。
被験抗体として、hKM3900及び2種類の抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体(hKM3900_tA2-32LH及びhKM3900_3-34-j6)を用いた。被験抗体をStain Buffer(FBS)(BD Bioscience、554656)で最高濃度100μg/mLから5.08ng/mLまで公比3倍で段階希釈し、それぞれの被験抗体希釈液でヒトCLDN4発現CHO-K1を染色した。二次抗体として、Allophycocyanin (APC) AffiniPure F(ab’)2 Fragment Goat Anti-Human IgG, Fcγ fragment specific(Jackson ImmunoResearch、109-136-170)を用いた。FACS Canto II(BD Bioscience)で蛍光強度を測定した。測定結果をGraphPad Prismを用いて解析し、ヒトCLDN4と抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体の見かけの解離定数(KD)を算出した。表3に見かけのKDの値を示す。
2種類の抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体は、ヒト化抗CLDN4(hKM3900)抗体と同様のヒトCLDN4への結合活性を示した。他の抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体も同等のCLDN4結合活性を示すと考えられる。
【0136】
【0137】
[5-2.ELISA法による抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のCD137に対する結合活性評価]
抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のCD137への結合活性を、ELISA法を用いて検出した。ELISAは、常法に従い行った。20ng/20μL/wellのヒトCD137-Hisタグタンパク質(R&D SYSTEMS、9220-4B)を384ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific社、464718)に固相化した。被験抗体として表2に記載の11種の抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体及びctrl IgG_L-3-34-j6抗体を用いた。ctrl IgG_L-3-34-j6抗体はアイソタイプコントロール抗体の軽鎖カルボキシ末端に抗CD137scFv(3-34-j6)抗体を連結した抗体である。被験抗体を5%ブロッキングワン(ナカライテスク社、03953-95)含有TBS-T(ニッポンジーン社、310-07375)で段階希釈し、20μL/well添加した。抗体の終濃度は
図1-1~1-4に示す通りである。二次抗体にはGoat Anti-Human IgG Fc, Multi-Species SP ads-HRP(SouthernBiotech社、2014-05)を用いた。コントロール抗体にはhKM3900を用いた。Infinite M200PRO(TECAN社)を用いて450nmと570nmの吸光度を測定した。結果を
図1-1~1-4に示す。抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体はいずれも濃度依存的にヒトCD137-Hisタグタンパク質に結合した。この結果より、抗CD137scFvの連結位置はヒトCD137への結合活性に影響を及ぼさないことが明らかとなった。
【0138】
[5-3.表面プラズモン共鳴法による抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のCD137に対する結合活性評価]
抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のCD137への結合活性を、表面プラズモン共鳴(SPR)法を用いて検出した。SPR解析には、Biacore T200(GEヘルスケアジャパン社)を用いた。リガンドとして2種の抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体(hKM3900-3-34-j6、hKM3900_tA2-32LH)をSeries S Sensor Chip ProteinA(GEヘルスケア社、29-1275-56)に固定したものを使用した。アナライトとしてヒトCD137-Hisタグ又は3-1(2)で作製したサルCD137-Hisタグ-3×FLAGタグ融合タンパク質をHBS-EP+を用いて最高濃度200nMから0.0977nMまで公比2倍で段階希釈したものを用いた。アナライトをリガンドが結合している流路に50μL/分にて2分間添加した後、HBS-EP+を50μL/分にて10分間添加することにより、抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のCD137への結合と解離を測定した。この実験により得られた結果を用いてヒトCD137と抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体との結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、及び解離定数(KD)を、データ解析ソフトウェア(BIA Evaluation)を用いて計算した。表4にka、kd及びKDの値を示す。
この結果、抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体はヒトCD137及びサルCD137抗体のいずれにも同等の結合活性を示すことが明らかとなった。
【0139】
【0140】
[5-4.抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体のCLDN4発現がん細胞の共存下でのCD137アゴニスト活性の評価]
抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体のCLDN4発現がん細胞を介した特異的なCD137アゴニスト活性を4-1BB Bioassayキットを用いて評価した。
10%FBS(Cytiva社、SH30070.03)含有RPMI-1640培地(Thermo Fisher Scientific社、11875-093)にNCI-H322細胞(ECACC、95111734)を懸濁し、懸濁液を調製した。NCI-H322はCLDN4を発現している。384ウェルプレート(Greiner Bio-One社、781080)にNCI-H322の懸濁液を1×10
4個/wellとなるように添加し、37℃、5% CO
2で終夜培養した。翌日、培地を除去した。1%FBS含有RPMI-1640培地で希釈した被験抗体を12.5μL/wellずつ添加した。抗体の終濃度は
図2-1~
図2-3に示す通り。被験抗体には、3D11_3-34-j6_S、表2に記載の抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体を用いた。コントロール抗体として、hKM3900、ctrl IgG_L-3-34-j6抗体及びウレルマブ(BMS、国際公開番号2005/035584号に記載される配列番号3及び配列番号6)を用いた。
4-1BB Bioassayキットに付属されている4-1BB Effector Cellsのバイアル1本につき7mLの1%FBS含有RPMI-1640に懸濁し、各ウェルに12.5μLずつ加えて、37℃、5% CO
2で6時間静置した。プレートにBio-Glo Reagentを25μL/well加え、EnVision 2103(Perkin Elmer社)を用いて化学発光を測定した。結果を
図2-1~
図2-3に示す。抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体は、CLDN4発現がん細胞の共存下にて4-1BB Effector Cellsに対する顕著なCD137アゴニスト活性を示した。
CLDN4発現がん細胞の非存在下におけるCD137アゴニスト活性を評価するために、NCI-H322非存在条件にて上記と同様の実験を行った。結果、CLDN4発現がん細胞の非存在下ではCD137アゴニスト活性を示さなかった(
図2-4~
図2-6)。この結果より、抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体はCLDN4発現がん細胞が共存する場合にのみCD137アゴニスト作用を発揮することが示された。
一方、ウレルマブはCLDN4発現がん細胞の共存下でCD137アゴニスト活性を示したものの、その作用は抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体に比べると弱かった。また、ウレルマブはCLDN4発現がん細胞の非存在下でもCD137アゴニスト活性を示した。
これらの結果より、抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体はウレルマブより毒性の懸念が低く、CLDN4が高発現している腫瘍組織で特異的かつ強力なCD137アゴニスト作用を示すと期待できる。
【0141】
[実施例6:抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体のin vitro薬効評価]
抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体のインターフェロン-γ産生促進機能及びがん細胞傷害活性の評価を実施した。
【0142】
[6-1.Expanded PanT細胞の作製及び凍結保存]
(1)Expanded PanT細胞の調製
実施例6において、RPMI-1640(Sigma社、R8758)に終濃度10%のFBS(Cytiva社、SH30084.03)と、終濃度1%のペニシリンストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific社、15070-063)を加えたものを「培養培地」と称する。培養培地にはそれぞれ終濃度1%でMEM Non-essential Amino Acid(Merck社、M7145)、Sodium pyruvate(Merck社、S8636)、GlutaMAX I(Thermo Fisher Scientific社、35050-061)、HEPES(Thermo Fisher Scientific社、15630-080)を加える場合もある。終濃度1-3μg/mLとなるように希釈した抗CD3抗体(BioLegend社、317325)をディッシュに添加し、抗CD3抗体を固相化した。PanT Cell Isolation Kit,human(Miltenyi Biotec社、130-096-535)を用い、メーカー推奨プロトコルに従ってヒト末梢血単核細胞(human peripheral blood mononuclear cells)(LONZA社、CC-2702)からPanT細胞(CD4T細胞及びCD8T細胞の両方を含む、以下「PanT細胞」と称す)を単離した。単離したPanT細胞を遠心分離し、上清を取り除いた後に培養培地に懸濁した。前述の抗CD3抗体を固相化したディッシュに、培養培地に懸濁したPanT細胞を全量播種した。更に終濃度100-200U/mLのヒトIL-2(PeproTech社、200-2)及び終濃度1-4μg/mLの抗CD28抗体(BioLegend社、302923)を添加し、37℃、5% CO2インキュベーターにて培養を行った。3日後に細胞を回収し、回収した細胞を培養培地に懸濁してディッシュに播種した。更に終濃度100-200U/mLのヒトIL-2を添加し、37℃、5% CO2インキュベーターにて培養を行った。4日後、細胞を全量回収して遠心分離し、上清を取り除いた後にセルバンカー(Takara社、CB011)又はバンバンカー(GSリンフォテック社、CS-02-001)に再懸濁し、チューブに分取して-80℃で凍結保存した。ここで凍結保存した細胞を、本明細書において「Expanded PanT細胞」と称する。
【0143】
[6-2.60As6-Luc/GFP発現細胞の作製]
Luc/GFPを含むレンチウイルス溶液の調製は、L293T細胞(Thermo Fisher Scientific社、K4975-00)を用いて、常法に従って実施した。L293T細胞へのpCDH-CMV-GL3-EF1a-GFP-T2A-puro改変ベクター(広島大学 医系科学研究科 細胞分子生物学研究室 高橋陵宇准教授より寄贈(PLoS One、 2015、Vol.10、e0123407))の導入には、Opti-MEM Reduced Serum Medium,GlutaMAX Supplement(Thermo Fisher Scientific社、51985-034)、MISSION(登録商標)Lentiviral Packaging Mix(SIGMA社、SHP001)、Lipofectamin LTX(Thermo Fisher Scientific社、15338100)を使用した。L293T細胞にて増殖したGFP発現レンチウイルスの回収には、45μm Millex(登録商標)-HVフィルター(Merck Millipore社、SLHV033RS)を使用した。ウイルス溶液はクライオバイアル(Nalgene社、5000-0020)に1mLずつ分注し、-80℃で凍結保存した。
常法に従い、60As6-Luc/GFP発現レンチウイルスをCLDN4発現がん細胞株である60As6細胞(バイオマテリアル研究所柳原 五吉 先生より譲受)に感染させ、60As6-Luc/GFP発現細胞を作製した。感染効率を上げるためにPolybrene(SantaCruz社、sc-134220)を用いた。培地として、10%FBS、2μg/mL Puromaycin(Thermo Fisher Scientific社、A-11138-02)含むRPMI-1640を使用した。本明細書において、樹立した細胞を、「60As6-Luc/GFP細胞」と称する。60As6-Luc/GFP細胞は内因性にCLDN4が高発現していることをフローサイトメトリー法により確認した。構築した細胞は後の実験で使用した。
【0144】
[6-3.抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体のがん細胞とT細胞の共培養系におけるインターフェロン-γ産生促進機能評価]
60As6-Luc/GFP細胞とExpanded PanT細胞の共培養系における抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体のインターフェロン-γ産生促進機能を評価した。0.1μg/100μL/wellの抗CD3抗体を平底96ウェルプレート(IWAKI社、3860-096)に添加して抗CD3抗体をプレートに固相化した。プレートに60As6-Luc/GFP細胞を5×10
4個/50μL/wellとなるように播種し、37℃、5% CO
2インキュベーターにて培養した。翌日、前記プレートに、2×10
5個/30μL/wellのExpanded PanT細胞を播種した。被験抗体及びアイソタイプコントロールを培養培地で最高濃度50000ng/mLから5倍公比で段階希釈し、20μLずつ添加した。被験抗体としてウレルマブ及び抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体(3D11_3-34-j6_S)を、アイソタイプコントロールとしてIgG(リゾチーム)-scFv(CD137)(社内調製)を用いた。6日後、AlphaLISAインターフェロン-γ測定キット(Perkin Elmer社、AL217C)を用いてメーカー推奨プロトコルに従い上清中のインターフェロン-γ産生量を測定した。
図3-1にインターフェロン-γ産生量と抗体濃度の反応曲線を示す。抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体はCLDN4発現がん細胞株である60As6-Luc/GFP細胞とExpanded PanT細胞の共培養系においてインターフェロン-γ産生促進作用を示した。抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体のインターフェロン-γ産生促進機能はウレルマブより顕著に強かった。
【0145】
[6-4.抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のがん細胞とT細胞の共培養系におけるインターフェロン-γ産生促進機能評価]
60As6-Luc/GFP細胞とExpanded PanT細胞の共培養系における抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のインターフェロン-γ産生促進機能を6-3と同様の方法で評価した。抗CD3抗体は0.03μg/100μL/wellとなるよう96ウェルプレートに固相化した。60As6-Luc/GFP細胞を2×10
4個/50μL/wellで播種した。またExpanded PanT細胞は8×10
4個/30μL/wellで播種した。被験抗体として、最高濃度5000ng/mLから2倍公比で段階希釈したウレルマブ又は抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体(hKM3900_3-34-j6又はhKM3900_tA2-32LH)を使用した。被験抗体及びアイソタイプコントロール(リゾチーム抗体)をそれぞれ20μLずつ添加した。4日後に上清中のインターフェロン-γ産生量を測定した。
図3-2にインターフェロン-γ産生量と抗体濃度の反応曲線を示す。抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体は60As6-Luc/GFP細胞とExpanded PanT細胞の共培養系においてインターフェロン-γ産生促進機能を示した。これらの二重特異性抗体のインターフェロン-γ産生促進機能はウレルマブより顕著に強かった。
【0146】
[6-5.抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体のT細胞の単培養系におけるインターフェロン-γ産生促進機能評価]
Expanded PanT細胞の単培養系における抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体のインターフェロン-γ産生促進機能を評価した。平底96ウェルプレートに抗CD3抗体を0.1μg/100μL/wellで添加して抗CD3抗体をプレートに固相化した。固相化したプレートに2×10
5個/80μL/wellのExpanded PanT細胞を播種した。被験抗体として、ウレルマブ、抗CLDN4(3D11)-抗CD3scFv二重特異性抗体(3D11_3-34-j6_S)を、アイソタイプコントロールとしてIgG(リゾチーム)-scFv(CD137)(社内調製)を用いた。被験抗体及びアイソタイプコントロールを培養培地で最高濃度50000ng/mLから5倍公比で段階希釈し、20μLずつ添加した。6日後、AlphaLISAインターフェロン-γ測定キットを用い、6-3.と同様の方法で上清中のインターフェロン-γ産生量を測定した。
図3-3にインターフェロン-γ産生量と抗体濃度の反応曲線を示す。抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体は、T細胞の単培養系においてはインターフェロン-γ産生促進機能を示さなかったが、ウレルマブはインターフェロン-γ産生促進作用を示した。本結果は、CLDN4発現がん細胞株が存在しない環境では抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体はT細胞活性増強作用を示さないことを意味する。
【0147】
[6-6.抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のT細胞の単培養系におけるインターフェロン-γ産生促進機能評価]
Expanded PanT細胞の単培養系における抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のインターフェロン-γ産生促進機能を6-5と同様の方法にて評価した。抗CD3抗体は0.03μg/100μL/wellとなるよう96ウェルプレートに固相化した。Expanded PanT細胞を8×10
4個/80μL/well播種した。被験抗体としてウレルマブ、抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体(hKM3900_3-34-j6、hKM3900_tA2-32LH)を用いた。被験抗体及びアイソタイプコントロール(リゾチーム抗体)は最高濃度5000ng/mLから2倍公比で段階希釈し、20μLずつ添加した。
図3-4にインターフェロン-γ産生と抗体濃度の反応曲線を示す。抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体は、T細胞の単培養系においてはインターフェロン-γ産生促進機能を示さなかったが、ウレルマブはインターフェロン-γ産生促進機能を示した。
6-5及び6-6の結果より、CLDN4発現がん細胞株が存在しない環境では抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体はT細胞活性増強作用を示さないことを意味し、抗CD137抗体の副作用として報告されている全身的な免疫賦活化作用が低減される可能性を示唆する。
【0148】
[6-7.抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体のがん細胞とT細胞の共培養系におけるがん細胞傷害活性評価]
60As6-Luc/GFP細胞とExpanded PanT細胞の共培養系にて抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体のがん細胞傷害活性(がん細胞の増殖抑制作用)を評価した。60As6-Luc/GFP細胞を平底96ウェルプレートに1×10
4個/50μL/wellずつ播種し、37℃、5% CO
2インキュベーターにて培養した。2時間後、前記96ウェルプレートにExpanded panT細胞を1×10
5個/50μL/wellずつ播種した。被験抗体として、ウレルマブ及び抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体を用いた。これらの抗体を培養培地で最高濃度40000ng/mLから10倍公比で段階希釈し、50μLずつ添加した。さらに、40ng/mLの抗CD3抗体を50μLずつ添加し、37℃、5% CO
2インキュベーター内のIncuCyte(登録商標)ZOOM(ザルトリウス社)を用いて、各ウェルの蛍光(GFP)面積の測定を開始した。測定開始0時間から増加した蛍光面積を細胞増殖の指標とした。
図4に被験抗体のがん細胞傷害作用(がん細胞増殖率)を示す。
図4の縦軸は、0時間から168時間に増加した蛍光面積において被験抗体非添加ウェルを100%とした時の相対値を示す。
図4に示す通り、抗CLDN4(3D11)-抗CD137scFv二重特異性抗体は60As6-Luc/GFP細胞とExpanded PanT細胞の共培養系において細胞傷害作用を示した。本二重特異性抗体の細胞傷害活性はウレルマブより顕著に強かった。
【0149】
[6-8.抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のがん細胞とT細胞の共培養系におけるがん細胞傷害活性評価]
抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のがん細胞殺傷作用を60As6-Luc/GFP細胞とExpanded PanT細胞の共培養系にて評価した。抗CD3抗体を平底96ウェルプレート(Perkin Elmer社、6005680)に1ng/100μL/wellずつ添加し、プレートに固定化した。プレートをPBS(-)で2度洗浄した後に、2×10
4個/50μL/wellの60As6-Luc/GFP細胞を播種し、37℃、5% CO
2インキュベーターにて培養した。翌日、96ウェルプレートに、4.0×10
4個/30μL/wellのExpanded PanT細胞を播種した。さらに、5000ng/mLから0.844ng/mLの濃度の被験抗体及びアイソタイプコントロールを20μLずつ添加した。被験抗体には、ウレルマブ及び抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体(hKM3900_3-34-j6、hKM3900_tA2-32LH)を使用した。6日後に測定を行った。一部のウェルについて、細胞を殺傷するために、測定30分前に1%Triton-X100(Sigma-Aldrich社、T-9284)を11μLずつ添加した。ONE-Gloルシフェラーゼ測定キット(Promega社、E6120)を用いてメーカー推奨プロトコルに従い、各ウェルの60As6-Luc/GFP細胞のルシフェラーゼ活性をARVO X-3(Perkin Elmer社)を用いて測定した。がん殺傷率は、抗体非添加ウェルのルシフェラーゼ化学発光の平均値を0%、Triton-X100を添加したウェルの平均値を100%としたときの相対値で示す。アイソタイプコントロールとして抗リゾチーム抗体(社内調製)を用いた。
図5に60As6-Luc/GFP細胞の細胞殺傷率曲線を示す。60As6-Luc/GFP細胞とExpanded PanT細胞の共培養系において抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体の添加により60As6-Luc/GFP細胞殺傷率が顕著に増加した。一方で、抗CD137特異性抗体であるウレルマブによる60As6-Luc/GFP細胞株に対する細胞殺傷率の増加はみられなかった。
【0150】
[実施例7:抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体のin vivo評価]
[7-1.抗CLDN4-抗CD137scFv二重特異性抗体のin vivo抗腫瘍効果]
NCI-H322細胞をPBS(-)(WAKO社、045-29795)に懸濁し、5.0×10
6細胞/100μLの細胞懸濁液を7週齡の雌性マウス(NOG、インビボサイエンス社)の皮下に植え付けた。植え付け6日後、3.4×10
6細胞/200μLのヒト末梢血単核細胞(Lonza、CC-2702)を尾静脈から注入した。ヒト末梢血単核細胞移植15日後に群分けを行い被験抗体の投与を開始した。一群は10匹ずつとし、各群間の腫瘍体積がほぼ同等となるようにマウスを分配した(day0)。被験抗体としてhKM3900_tA2-32LHを用いた。被験抗体及びアイソタイプコントロール(抗リゾチーム抗体)はPBSに混合して静脈内に投与した。投与はday0、4及び8に行い、投与時に腫瘍径及び体重を測定した。腫瘍体積の算出には以下の式を用いた。
[腫瘍体積(mm
3)] = [腫瘍の長径(mm)] x [腫瘍の短径(mm)]
2 × 0.5
図6に示す通り、hKM3900_tA2-32LHを0.1、1又は10mg/kg投与した群においては、有意な腫瘍体積縮小作用が示された。縦軸は腫瘍体積を、横軸は初回投与後日数を示す。実線及び破線は各群の腫瘍体積の平均値の推移を、エラーバーは平均値の標準誤差を示す。有意確率P値(*:P<0.05、**:P<0.01)は、ダネットの多重比較検定により、アイソタイプコントロール投与群とhKM3900_tA2-32LH投与群の12日目の腫瘍体積を比較することにより算出した。hKM3900_tA2-32LH0.1mg/kg投与群の12日目の例数は9であった。
【0151】
[7-2.抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体のカニクイザルにおける安全性試験]
抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体(hKM3900_3-34-j6及びhKM3900_tA2-32LH)の安全性を検討するため、カニクイザルの静脈内に抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体を単回投与した。結果、抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体を投与したサルにおいて、血清中のIL-6、TNF-α等のサイトカイン濃度に特段の異常は確認されなかった。したがって、抗CLDN4(hKM3900)-抗CD137scFv二重特異性抗体は、安全性の観点において、がんの治療に用いる抗体として適格であるとの判断を行った。
【0152】
[実施例8:抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体によるがんの治療]
[8-1.CLDN4の発現量の確認]
CLDN4のがん治療標的としての汎用性を調べるために、The Cancer Genome Atlas(TCGA)にて、がん組織におけるCLDN4のRNAの発現量を調査した。結果、大腸がん、膀胱がん、肺がん等のがん組織でCLDN4の発現が亢進していることが確認された。これにより、CLDN4は腹膜播種がんのみならず他のがん種においても治療標的となる可能性が示唆された。さらにThe Genotype-Tissue Expression(GTEx)にて、正常組織におけるCLDN4のRNAの発現量の調査を行った。結果、いくつかの正常組織においてCLDN4が発現していることが認められた。しかしながら、正常組織においてはがん組織よりもCLDN4の発現量が低かった。よって、CLDN4を治療標的とするがん治療薬は、広い安全域を確保することができ、副作用の懸念が低い治療薬となる可能性があることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体は、がんの治療に有用であると期待される。また、本発明のポリヌクレオチド、発現ベクター、形質転換された宿主細胞、及び抗体を生産する方法は、前記抗CLDN4-抗CD137二重特異性抗体を産生するために有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0154】
以下の配列表の数字見出し<223>には、「Artificial Sequence」の説明を記載する。具体的には、配列表の配列番号1は3D11の重鎖可変領域の塩基配列であり、配列番号2は3D11の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号3は3D11の軽鎖可変領域の塩基配列であり、配列番号4は3D11の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号5は、hKM3900の重鎖可変領域の塩基配列であり、配列番号6は、hKM3900の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号7はhKM3900の軽鎖可変領域の塩基配列であり、配列番号8はhKM3900の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号9は3-34の重鎖可変領域の塩基配列であり、配列番号10は3-34の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号11は3-34の軽鎖可変領域の塩基配列であり、配列番号12は3-34の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号13はA2-32の重鎖可変領域の塩基配列であり、配列番号14はA2-32の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号15はA2-32の軽鎖可変領域の塩基配列であり、配列番号16はA2-32の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号17はA2-48の重鎖可変領域の塩基配列であり、配列番号18はA2-48の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号19はA2-48の軽鎖可変領域の塩基配列であり、配列番号20はA2-48の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号21はA2-73の重鎖可変領域の塩基配列であり、配列番号22はA2-73の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号23はA2-73の軽鎖可変領域の塩基配列であり、配列番号24はA2-73の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号25は3-34-j6 scFvの塩基配列であり、配列番号26は3-34-j6 scFvのアミノ酸配列である。配列番号27はtA2-32 scFvの塩基配列であり、配列番号28はtA2-32 scFvのアミノ酸配列である。配列番号29はtA2-32LH scFvの塩基配列であり、配列番号30はtA2-32LH scFvのアミノ酸配列である。配列番号31はtA2-48 scFvの塩基配列であり、配列番号32はtA2-48 scFvのアミノ酸配列である。配列番号33はtA2-73 scFvの塩基配列であり、配列番号34はtA2-73 scFvのアミノ酸配列である。配列番号35はhKM3900_3-34-j6の重鎖の塩基配列であり、配列番号36はhKM3900_3-34-j6の重鎖のアミノ酸配列である。配列番号37はhKM3900_tA2-32LHの重鎖の塩基配列であり、配列番号38はhKM3900_tA2-32LHの重鎖のアミノ酸配列である。配列番号39はhKM3900の軽鎖の塩基配列であり、配列番号40はhKM3900の軽鎖のアミノ酸配列である。配列番号41は抗CD3 scFv-ヒトFc融合タンパク質のアミノ酸配列である。配列番号42はヒトCD137のアミノ酸配列である。配列番号43はサルCD137のアミノ酸配列である。配列番号44はHisタグタンパク質のアミノ酸配列である。配列番号45は3×FLAGタグのアミノ酸配列である。配列番号46~54はGSリンカーのアミノ酸配列である。配列番号55はGKPGSリンカーのアミノ酸配列である。
【配列表】