(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】可変変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/24 20060101AFI20231013BHJP
H01F 29/02 20060101ALI20231013BHJP
H01F 29/06 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01F27/24 E
H01F29/02 U
H01F29/06
(21)【出願番号】P 2020038549
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】391025246
【氏名又は名称】株式会社東京理工舎
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 孝宣
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光男
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-91212(JP,A)
【文献】特開2011-103348(JP,A)
【文献】特開昭58-77214(JP,A)
【文献】実公昭29-711(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24
H01F 29/06
H01F 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一コア部と、前記第一コア部と対向する第二コア部及び第三コア部とを有する鉄心と、
前記第一コア部の周囲に巻かれ、電源に接続される一次コイルと、
前記第二コア部の周囲に巻かれ、前記一次コイルから誘導される電圧を可変に出力可能な二次コイルAと、
前記第三コア部の周囲に巻かれ、前記一次コイルから誘導される電圧を可変に出力可能な二次コイルBと、を有し、
前記第三コア部における前記鉄心の断面積は、前記第二コア部における前記鉄心の断面積よりも小さいことを特徴とする可変変圧器。
【請求項2】
前記二次コイルBは、出力端子B1と、出力端子B2とを有し、
前記出力端子B1は、前記二次コイルBの一端に接続され、
前記出力端子B2は、前記二次コイルBと接し、前記第三コア部の長手方向にスライドする請求項1に記載の可変変圧器。
【請求項3】
前記二次コイルAは、出力端子A1と、出力端子A2とを有し、
前記出力端子A1は、前記二次コイルAの一端に接続され、
前記出力端子A2は、前記二次コイルAと接し、前記第二コア部の長手方向にスライドする請求項1または2に記載の可変変圧器。
【請求項4】
前記第一コア部における前記鉄心の断面積は、前記第二コア部における前記鉄心の断面積と略同等もしくは第二コア部と第三コア部の断面積の略和である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の可変変圧器。
【請求項5】
前記第三コア部における前記鉄心の断面積をX[cm
2]、前記第二コア部における前記鉄心の断面積をY[cm
2]としたとき、X/Y≦0.3の関係を満足する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の可変変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い精度で電圧を変化させることが可能な可変変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりダイヤル型の操作部を回転させることで電圧を調整する回転式スライダックが知られている。
また、鉄心に一次巻線及び二次巻線を巻き、鉄心の一部における磁路の断面積を機械的に可変する機能を持ち、磁気回路の磁気抵抗を調整することで電圧を変化させる可変変圧器も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のような可変変圧器は、入力された電圧をある程度の精度で任意の大きさの電圧に変換することができるが、近年求められている高い精度で任意の大きさの電圧に変換することは困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、入力された電圧を高い精度で任意の大きさの電圧に変換することが可能な可変変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第一コア部と、前記第一コア部と対向する第二コア部及び第三コア部とを有する鉄心と、
前記第一コア部の周囲に巻かれ、電源に接続される一次コイルと、
前記第二コア部の周囲に巻かれ、前記一次コイルから誘導される電圧を可変に出力可能な二次コイルAと、
前記第三コア部の周囲に巻かれ、前記一次コイルから誘導される電圧を可変に出力可能な二次コイルBと、を有し、
前記第三コア部における前記鉄心の断面積は、前記第二コア部における前記鉄心の断面積よりも小さいことを特徴とする可変変圧器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、出力される電圧を高い精度で可変・調整することが可能な可変変圧器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の可変変圧器の構成の第一実施形態を示した模式図である。
【
図2】本発明の可変変圧器の構成の第二実施形態を示した模式図である。
【
図3】本発明の可変変圧器の構成の第三実施形態を示した模式図である。
【
図4】第三実施形態に係る可変変圧器の鉄心のZ-Z’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の可変変圧器の好適な実施形態について詳細に説明する。
[第一実施形態]
まず、本発明の可変変圧器の第一実施形態について説明する。
図1は、本発明の可変変圧器の構成の第一実施形態を示した模式図である。本明細書において、
図1中、上方向を上又は上側、下方向を下又は下側、右方向を右又は右側、左方向を左又は左側という。
【0010】
可変変圧器100は、入力された電圧(交流電圧)を任意の大きさの電圧(交流電圧)に変換可能な可変変圧器である。
可変変圧器100は、
図1に示すように、鉄心1と、一次コイル2と、二次コイルAと、二次コイルBとを有している。
【0011】
鉄心1は、第一コア部11と、第二コア部12と、第三コア部13とを有している。
第一コア部11と第二コア部12とは、互いに対向するように配置されている。
また、第一コア部11と第三コア部13とは、互いに対向するように配置されている。
第一コア部11と第二コア部12との間には空間14が形成されており、また、第一コア部11と第三コア部13との間には空間15が形成されている。
第一コア部11と第二コア部12とは、空間14の上側及び下側において接続されている。また、第一コア部11と第三コア部13とは、空間15の上側及び下側において接続されている。
【0012】
本実施形態では、鉄心1の外形は、
図1に示すように、四角形の枠が二つ組み合わさった形状を備えている。
鉄心1は、成層鉄心で構成されている。これにより、渦電流を抑制し、熱損失が生じるのを防止することができる。
【0013】
第一コア部11、第二コア部12及び第三コア部13の周囲には、それぞれ一次コイル2、二次コイルA及び二次コイルBが設けられている。二次コイルA及び二次コイルBは、一次コイル2から誘導される電圧を可変して出力可能となっている。
一次コイル2は、電源に接続される入力端子21及び入力端子22を有している。入力端子21及び入力端子22は、それぞれ、一次コイル2の両端部に設けられている。
【0014】
また、二次コイルAは、
図1に示すように、出力端子A1と出力端子A2とを有している。
出力端子A1は、二次コイルAの一端に接続されている。
出力端子A2は、二次コイルAと接しており、第二コア部12の長手方向(
図1中の上下方向)にスライドするよう構成されている。
【0015】
また、二次コイルBは、
図1に示すように、出力端子B1と出力端子B2とを有している。
出力端子B1は、二次コイルBの一端に接続されている。
出力端子B2は、二次コイルBと接しており、第三コア部13の長手方向(
図1中の上下方向)にスライドするよう構成されている。
【0016】
可変変圧器100では、第三コア部13における鉄心1の断面積が、第二コア部12における鉄心1の断面積よりも小さい構成となっている。
なお、第三コア部における前記鉄心の断面積をX[cm2]、前記第二コア部における前記鉄心の断面積をY[cm2]としたとき、X/Y≦0.3の関係を満足することが好ましい。このような関係を満足することにより、出力される電圧を高い精度で可変・調整することができる。
【0017】
このような構成を備えた可変変圧器100において、一次コイル2に交流電圧を印加した際に、第一コア部11内に発生する全磁束をΦ0、第二コア部12内に発生する全磁束をΦ1、第三コア部13内に発生する全磁束をΦ2としたとき、Φ0=Φ1+Φ2の関係を満足する。
なお、本実施形態では、磁気回路構成上、第一コア部11における鉄心1の断面積は、第二コア部12における鉄心の断面積と略同等又は第二コア部12の断面積と第三コア部13の断面積の略和となっている。略同等及び略和とは、断面積の差が±5%以下のことを指す。
【0018】
図1に示す可変変圧器100において、右側の回路(第一コア部11と第二コア部12とで構成される回路)と左側の回路(第一コア部11と第三コア部13とで構成される回路)の長さが等しいとした場合、Φ
1及びΦ
2の大きさは、第二コア部12及び第三コア部13の鉄心1の断面積に比例する。
【0019】
第二コア部12及び第三コア部13の鉄心1の断面積をA1及びA2とすると、Φ1=A1・Φ0/(A1+A2)、Φ2=A2・Φ0/(A1+A2)となる。
二次コイルA及び二次コイルBから出力される電圧は、それぞれの全磁束Φ1及びΦ2の大きさに比例する。
【0020】
一次コイル2への入力電圧をVin、一次コイル2の巻き数をNin、出力端子A2の位置における巻き数をnAとしたとき、二次コイルAから出力される電圧V1は、全磁束比と巻き数割合と入力電圧の積で求まり、
V1=(Φ1/Φ0)・(nA・/Nin)・Vin=nA・A1・Vin/(Nin・(A1+A2)) … (1)
と表すことができる。
【0021】
また、一次コイル2への入力電圧をVin、一次コイル2の巻き数をNin、出力端子B2の位置における巻き数をnBとしたとき、二次コイルBから出力される電圧V2は、
V2=(Φ2/Φ0)・(nB・/Nin)・Vin=nB・A2・Vin/(Nin・(A1+A2)) … (2)
と表すことができる。
【0022】
例えば、A1とA2との比が9:1の場合、二次コイルBからの出力電圧V2は、式(2)から、V2=(1/10)・n(B)・Vin/Ninとなり、二次コイルAだけしか有していない変圧器に比べて、1/10の出力が得られ、その分解能が1/10となり設定精度が10倍になる。
一方、二次コイルAからの出力電圧V1は、式(1)から、V1=(9/10)・n(A)・Vin/Ninとなり、二次コイルAだけしか有していない変圧器と比べて1割程度減ずるが、大きな変化はない。
【0023】
図1に示す可変変圧器100では、入力端子21及び22に電源を接続した場合、可変変圧器100のA2とB1を接続して、A1とB2から出力される出力電圧V
allは、V
all=V
1+V
2となる。例えば、上述したようにA1とA2の関係が9:1であるとすると、V
1とV
2のそれぞれの出力端子A2及びB2の分解能つまり、コイル一巻き当たりの電圧は、それぞれ(9/10)V
in/N
inと(1/10)・V
in/N
inとなる。したがって、二次コイルの巻き数がそれぞれ一次コイルと等しいとすると、出力V
allは入力電圧N
inと同じ電圧が出力することができ、二次コイルA単独に比べ、その分解能は1/10となり、高精度の設定が可能になる。このため、
図1に示す可変変圧器100では、二次コイルA側で大まかな電圧を設定し、二次コイルB側で微小な電圧を正確に設定することができる。ここで、二次コイルA及びBの巻き数は、一次コイルの巻き数と同じにする必要はなく、使用目的に合わせて巻き数を設定することにより、任意の出力電圧が得られる。
【0024】
上記接続法以外にも、それぞれの二次コイルを独立に使用することもできる。
【0025】
[第二実施形態]
次に、本発明の可変変圧器の第二実施形態について説明する。
図2は、本発明の可変変圧器の構成の第二実施形態を示した模式図である。
本実施形態の可変変圧器100では、二次コイルAに接続されている出力端子が、スライド形式ではなく、スイッチング形式になっている以外は、前述した実施形態と同様の構成を有している。
【0026】
すなわち、二次コイルAは、
図2に示すように、出力端子A1と、複数の出力端子A3と、スイッチング端子A4とを有している。
出力端子A1は、第一実施形態と同様に二次コイルAの一端に接続されている。
複数の出力端子A3は、それぞれ二次コイルAの任意の場所で二次コイルAと接している。
スイッチング端子A4は、複数の出力端子A3のいずれかと接続されており、接続を切り替えることにより、出力電圧を変更することができるよう構成されている。
本実施形態の可変変圧器100においても、出力端子A4とB1を接続したとき、端子A1と端子B2から出力されるV
allは、二次コイルAの各端子の出力電圧を二次コイルBの最大電圧より小さく設定することにより、広範囲に連続した出力を、二次コイルA側で大まかな電圧を設定し、二次コイルB側で微小な電圧を正確に設定することができる。
【0027】
[第三実施形態]
次に、本発明の可変変圧器の第三実施形態について説明する。
図3は、本発明の可変変圧器の構成の第三実施形態を示した模式図、
図4は第三実施形態に係る可変変圧器の鉄心のZ-Z’断面図である。
以下、前述した第一実施形態との相違点について説明し、同様の構成の場合には、その説明を省略する。
【0028】
本実施形態では、鉄心1の外形が、
図3に示すように、円が二つ組み合わさった形状、すなわち、8の字形状を備えている。なお、左右の円の径は同じでなくてもよい。
前述した第一実施形態と同様に、第三コア部13における鉄心1の断面積が、第二コア部12における鉄心1の断面積よりも小さい構成となっている(
図4参照)。
【0029】
さらに、本実施形態では、二次コイルAが、
図3に示すように、出力端子A1と、回転端子A5と、出力端子A6とを有している。
出力端子A1は、二次コイルAの一端に接続されている。
回転端子A5は、二次コイルAと接しており、回転させることによって、二次コイルAとの接点が移動可能となっている。
さらに、回転端子A5は、出力端子A6と接続されている。
【0030】
また、本実施形態では、二次コイルBが、
図3に示すように、出力端子B1と、回転端子B5と、出力端子B6とを有している。
出力端子B1は、二次コイルBの一端に接続されている。
回転端子B5は、二次コイルBと接しており、回転させることによって、二次コイルBとの接点が移動可能となっている。
さらに、回転端子B5は、出力端子B6と接続されている。
【0031】
本実施形態の可変変圧器100においても、それぞれの二次コイルの出力を単独で使用するか、もしくは出力端子A6と出力端子B1を接続し、出力端子A1と出力端子B6による出力Vallは、広範囲の出力電圧が連続的に、二次コイルA側で大まかな電圧を設定し、二次コイルB側で微小な電圧を正確に設定することができる。
【0032】
以上、本発明の可変変圧器について、好適な実施形態を基に説明したが、本発明はこれに限定されない。
上述した説明では鉄心1の外形が,四角形が組み合わさった形状や8の字形状について説明したが、これに限定されない。
また、中心に一次コイル2が配され、その左右に各二次コイルが配された構成について説明したが、一次コイル2が第二コア部の位置に配され、二次コイルAが第一コア部の位置に配された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 鉄心
11 第一コア部
12 第二コア部
13 第三コア部
14、15 空間
2 一次コイル
A、B 二次コイル
21、22 入力端子
A1、A2、A3、A6 出力端子
B1、B2、B6 出力端子
A4 スイッチング端子
B4 スイッチング端子
100 可変変圧器