(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/107 20210101AFI20231013BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20231013BHJP
H01M 50/188 20210101ALI20231013BHJP
H01M 50/56 20210101ALI20231013BHJP
【FI】
H01M50/107
H01M50/184 D
H01M50/188
H01M50/56
(21)【出願番号】P 2020563149
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2019049753
(87)【国際公開番号】W WO2020137777
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018248608
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 達也
(72)【発明者】
【氏名】小平 一紀
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/092845(WO,A1)
【文献】特開2011-204623(JP,A)
【文献】特開平10-134790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
H01M 50/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に開口縁部を有する筒部、および、前記筒部の他方の端部を閉じる底部を有する電池缶と、前記筒部に収容された電極体と、前記開口縁部に形成された開口を封口する封口体と、を備え、
前記封口体は、端子部と、前記端子部と前記開口縁部の間に圧縮された状態で介在するガスケットと、を有し、
前記電極体は、第1電極と第2電極とを有し、
前記第1電極は、前記端子部と電気的に接続し、
前記第2電極は、前記電池缶と電気的に接続し、
前記開口縁部は、少なくとも前記筒部の軸方向に延びる基底部と、前記基底部から突出する舌片部を有し、前記舌片部は、前記ガスケットの上面を覆うように前記筒部の径方向において内側に向かって延在している、電池。
【請求項2】
前記舌片部は、前記筒部の軸方向に延びた部分と、前記軸方向に延びた部分から前記筒部の径方向において内側に屈曲または湾曲した部分とを有する、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記ガスケットの周縁部に外周方向に延びる突起部が設けられ、
前記突起部が、前記舌片部が形成されていない前記基底部の端部を覆っている、請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記基底部が前記筒部の径方向において内側に屈曲または湾曲し、前記ガスケットの上面を覆っており、
前記舌片部が形成されている領域における前記開口縁部の径方向における延在距離は、前記舌片部が形成されていない領域における前記開口縁部の径方向における延在距離よりも大きい、請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記筒部は、内周側へ縮径された環状溝を、前記開口縁部より前記底部側に有し、
前記開口縁部と前記環状溝との間に、前記ガスケットが介在している、請求項1~4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
前記ガスケットは、前記筒部の軸方向に圧縮されている、請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記ガスケットは、前記筒部の径方向に圧縮されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池。
【請求項8】
前記ガスケットの上面に凹部を有し、前記舌片部が前記凹部に収容されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の電池。
【請求項9】
前記凹部の深さは、前記舌片部の厚みより大きい、請求項8に記載の電池。
【請求項10】
前記凹部と前記舌片部との間に隙間が形成されている、請求項8または9に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電極体を電池缶に収容後、電池缶の開口を封口する方法としては、特許文献1に示すように、電池ケース(電池缶)の開口付近を内側に縮径して環状の溝を形成後、溝部の上段部上にガスケットおよび封口板を載置し、電池ケースの開口端部をガスケットを介して封口板にかしめてかしめ部を形成する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、電池缶は一方の外部端子として機能し、封口板は他方の外部端子として機能する。また、各外部端子に外部リード線をそれぞれ接続する場合、一方の外部リード線は電池の下面から導出され、他方の外部リード線は電池の上面から導出される。そのため、電池の上下方向に配線のための空間が必要である。
【0005】
特許文献1に記載されているような、溝部およびかしめ部を有する電池では、溝部の上に封口部材が載置され、封口部材の上にガスケットを介してかしめ部が形成される。この場合、電池缶の開口縁はガスケットを覆った状態で逆L字にかしめられており、封口板に略平行な面に沿ってリング状に延在している。このリング状の延在部の上面で電池缶と外部リード線との接続を行うことも考えられる。しかしながら、延在部の内周長は外周長より短くなるため、延在部の内周側ほど、缶の軸方向に波を打ったいびつなリング形状になり易く、襞が発生し易い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面は、一方の端部に開口縁部を有する筒部、および、前記筒部の他方の端部を閉じる底部を有する電池缶と、前記筒部に収容された電極体と、前記開口縁部に形成された開口を封口する封口体と、を備え、前記封口体は、端子部と、前記端子部と前記開口縁部の間に圧縮された状態で介在するガスケットと、を有し、前記電極体は、第1電極と第2電極とを有し、前記第1電極は、前記端子部と電気的に接続し、前記第2電極は、前記電池缶と電気的に接続し、前記開口縁部は、少なくとも前記筒部の軸方向に延びる基底部と、前記基底部から突出する舌片部を有し、前記舌片部は、前記ガスケットの上面を覆うように前記筒部の径方向において内側に向かって延在している、電池に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電池缶の開口縁部において、ガスケットの上面を覆う延在部分を平面に形成し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電池の第1の縦断面模式図(A)および第2の縦断面模式図(B)である。
【
図3】開口縁部を径方向の内側に屈曲させる前の同電池の外観を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る電池の第1の縦断面模式図(A)および第2の縦断面模式図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る電池は、一方の端部に開口縁部を有する筒部、および、筒部の他方の端部を閉じる底部を有する電池缶と、筒部に収容された電極体と、開口縁部に形成された開口を封口する封口体と、を備える。封口体は、端子部(封口版)と、端子部と開口縁部の間に圧縮された状態で介在するガスケットと、を有する。開口縁部は、少なくとも筒部の軸方向に延びる基底部と、基底部から突出する舌片部を有する。舌片部は、ガスケットの上面を覆うように筒部の径方向において内側に向かって延在している。
【0010】
ここで、筒部の両方の端部が向かい合う方向を軸方向とする。また、便宜上、開口縁部から底部に向かう方向を下方向とし、底部から開口縁部に向かう方向を上方向とする。つまり、電池缶を底部が下になるように直立させたときの筒部の軸方向の向きに基づいて、電池の上下方向が定義されるものとする。軸方向に垂直な方向は、横方向あるいは径方向と呼ぶ場合がある。
【0011】
本実施形態の電池では、開口縁部の端部を開口の周方向からみて凹凸形状を有するように形成することで、ガスケットの上面を覆う延在部において発生する襞が低減される。開口縁部の端部における凸部分は、舌片部を構成する。
【0012】
ここで、開口縁部の舌片部を除く領域を基底部とする。舌片部は、周方向の一部において、基底部から少なくともガスケットの上面に沿って延在している。この舌片部の周方向の両端には、切り欠き部分がガスケット上面において存在する。切り欠き部分が設けられることにより、電池缶の開口縁部を径方向において内側に屈曲させてかしめ部を形成する際、舌片部は、舌片部の屈曲した部分のうち特に外周長との差が大きくなる内周縁側において、切り欠き部分に向かって広がることができる。これにより、舌片部に襞が発生し難くなる。
【0013】
舌片部は、少なくとも一箇所に形成されていればよく、複数箇所に形成されていてもよい。なお、この舌片部を電池缶に形成する方法として、例えば、電池缶の筒部を形成する際に、開口縁部にフランジを形成した後、フランジを一部の周方向において切除し、その後、フランジの残部を矯正して切り欠きを有する筒部を形成してもよい。フランジを一部除去する際に、舌片部と基底部とが形成され得る。
【0014】
端子部(封口板)は、電極体の一方の電極(第1電極)と電気的に接続され、電池缶は、電極体の他方の電極(第2電極)と電気的に接続される。端子部は第1電極(例えば、正極)の外部端子として機能し、電池缶は第2電極(例えば、負極)の外部端子として機能する。このとき、かしめ部の外周長と内周長の差が大きくなるとかしめ部に皺が生じ易くなるため、かしめ部の径方向における延在距離を広げても、外部リード線と接続可能な面積を広げることが難しい。このため、他方の電極を電池の上側(端子部側)から引き出すことが難しい。このため、通常、各外部端子に外部リード線をそれぞれ接続する場合、一方の外部リード線は電池の上面から導出され、他方の外部リード線は電池の下面から導出される。この場合、電池の上下方向に配線のための空間が必要となる。
【0015】
これに対し、本実施形態の電池によれば、より平坦に形成された舌片部を電池缶に接続する第2電極の外部端子として機能させることができる。そのため、両方の電極をともに、電池の上側(封口板側)から集電することができる。よって、各外部端子に接続するリードを配線するための空間(配線空間)は、端子部側に存在すればよく、配線空間は省スペース化され得る。
【0016】
なお、開口縁部において舌片部をガスケットの上面に沿って屈曲させる方法としては以下の方法が挙げられる。例えば、開口縁部において、屈曲前の軸方向に延びた舌片部に対して、屈曲用の金型を電池の上から下に向かって近づけていき、舌片部と金型とを当接させる。その際、金型において、舌片部と当接する予定の部分の内面に曲面を有した窪みを形成しておくことで、窪みに当接した舌片部は窪みの曲面を滑りながら曲面に沿って屈曲する。
【0017】
第1の態様として、舌片部は、筒部の軸方向に延びる部分と、この軸方向に延びる部分から筒部の径方向において内側に屈曲または湾曲する部分を有していてもよい。この場合、基底部は径方向において内側に屈曲することなく舌片部に連続し、基底部はガスケットの上面に沿って延在していなくてもよい。この場合、舌片部が形成されていない領域における基底部の端部を覆うように、ガスケットの周縁部に外周方向に延びる突起部を設けてもよい。突起部は、ガスケットを開口縁部に戴置する際の位置決めに使用され得る。このような突起部を備えたガスケットに端子部を取り付ける場合、例えば、インサート成型により端子部にガスケットを固定してもよい。あるいは、ガスケットが端子部の上面と側周面を覆うように構成してもよい。
【0018】
また、第2の態様として、基底部が、筒部の径方向において内側に屈曲または湾曲し、開口の全周においてガスケットの上面を覆っていてもよい。この場合、舌片部は、ガスケットの上面に沿って延びる基底部から、さらにガスケットの上面をより内周方向に延びる。したがって、舌片部が形成されている領域における開口縁部の径方向における延在距離は、舌片部が形成されていない領域における開口縁部(すなわち、基底部)の径方向における延在距離よりも大きい。この構成により、電池缶の圧力が上昇した場合に、ガスケットが変位することを抑制することができる。
【0019】
第2の態様の場合、筒部は、内周側へ縮径された環状溝を、開口縁部より底部側に有していてもよい。開口縁部と環状溝との間にガスケットが介在することにより、開口縁部と端子部の間が封止され得る。このとき、ガスケットは、筒部の軸方向に圧縮され得る。
しかしながら、第1の態様においても、上記環状溝を設けてもよい。その場合、ガスケットは、舌片部が形成された周方向の一部において、筒部の軸方向に圧縮され得る。ガスケットを開口縁部に位置決めするために、環状溝を設けてもよい。第1の態様において環状溝を設ける場合、ガスケットは筒部の軸方向に圧縮されてもよく、筒部の軸方向に圧縮されなくてもよい。後者の場合、ガスケットは筒部の径方向に圧縮されていればよい。
【0020】
また、ガスケットは、筒部の径方向に圧縮されていてもよい。開口縁部を軸に垂直な径方向(横方向)にかしめることで、ガスケットは径方向に圧縮され得る。環状溝を設けない第1の態様の場合、ガスケットが径方向に圧縮されることによって、開口縁部と端子部の間が封止され得る。第2の態様においても、ガスケットが筒部の径方向に圧縮されていてもよい。
【0021】
ガスケットの上面に凹部を有していてもよい。その場合、舌片部は凹部に収容され得る。凹部は、舌片部による電池の軸方向の寸法の変動を抑制する役割を有する。これにより、電池の軸方向の寸法は凹部が設けられていない領域のガスケットの高さにより規定され得る。また、この凹部により、ガスケットの上面における舌片部の位置決めが容易となる。
【0022】
凹部の深さは、舌片部の厚みより大きくてもよい。この場合、ガスケットにおける凹部が設けられていない部分と凹部に収容された舌片部との間に段差が形成される。そのため、凹部に収容された舌片部の上面に付着した水滴などが、ガスケットにおける凹部が設けられていない部分を越えて端子部へ延びることが抑制される。これにより、電池として短絡が抑制され、信頼性が高まる。
【0023】
また、凹部と舌片部との間に隙間が形成されていてもよい。この場合、舌片部の上面に付着した水滴などが、ガスケットにおける凹部が設けられていない領域を超えて端子部へ延びようとしても、水滴などは舌片部とガスケットの凹部が設けられていない部分との間に介在する隙間(溝)に捕捉され易い。このため、水滴が端子部へ延びることが抑制される。これにより、電池として短絡が抑制され、信頼性が高まる。水滴などの付着による舌片部と端子部との短絡を抑制する観点からは、凹部と舌片部との間の隙間は、筒部の径方向において介在しているとよい。
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る電池について、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る電池10の縦断面模式図である。
図2は同電池の斜視図である。なお、
図1(A)は、
図2におけるA-A’線を含み、電池の軸に平行な面における電池10の断面図である。
図1(B)は、
図2におけるB-B’線を含み、電池の軸に平行な面における電池10の断面図である。なお、
図1では、電池の筒部、特に開口縁部110近傍の状態が強調して描かれている。また、端子部310、ガスケット320などの構成部材の各要素間の寸法比は、実際の寸法比と一致しない場合がある。これは以降の図面についても同様とする。
【0026】
電池10は、円筒型であり、円筒型の有底の電池缶100と、缶内に収容された円筒型の電極体200と、電池缶100の開口を封口する封口体300とを具備する。電池缶100は、電極体200を収容する筒部120と、底部130と、を有する。筒部120は、その一方の端部に開口縁部110を有し、他方の端部は底部130によって閉じられている。筒部120は、開口縁部110と、電極体を収容する収容部150とを含む。開口縁部110の開口は、封口体300により閉じられている。
【0027】
封口体300は、例えば、端子部(封口板)310と、ガスケット320と、を有する。
【0028】
端子部310は、例えば円盤状であり、防爆機能を有する。具体的には、端子部310は、構造的強度を確保するための厚肉の周縁部311および中央領域312と、防爆機能を発揮する薄肉部313とを具備する。薄肉部313は、周縁部311と中央領域312との間の領域に設けられる。中央領域312の内側面には、電極体200を構成する正極または負極から導出されたリード線210の端部が接続されている。よって、端子部310は一方の端子機能を有する。
図1の例では、周縁部311、中央領域312、薄肉部313の外表面は、略同一平面上にある。
【0029】
図1の例では、薄肉部313は、中央領域312から周縁部311に向かうほど厚みが薄く、周縁部311との境界位置で最も薄くなるように形成されている。このため、電池缶100の内圧が上昇すると、封口板310が外方に向けて盛り上がり、周縁部311と薄肉部313との境界部に張力による応力が集中し、境界部から破断が生じる。その結果、電池缶100の内圧が開放され、電池10の安全性が確保される。なお、本発明の効果を奏するにあたって、防爆機能は必須ではない。
【0030】
ガスケット320は、開口縁部110と端子部310との間を封止する。ガスケット320は、例えば、端子部310の周縁部311の上方を覆う外側リング部と、端子部310の周縁部311の下方を覆う内側リング部と、外側リング部と内側リング部とを繋ぐ中継リング部とを有する。例えば、外側リング部、内側リング部および中継リング部は一体化された成型体である。
【0031】
図1において、開口縁部110は径方向(横方向)にかしめられ、ガスケット320は径方向に圧縮されている。これにより、ガスケットの320の反発力によって、開口縁部110と端子部310との間が密封される。
【0032】
図2に示すように、開口縁部110には、基底部110Aから突出する複数(ここでは、4つ)の舌片部110Eが形成されている。舌片部110Eは、
図1(A)および
図2に示すように、筒部120の軸方向に延びた部分と、軸方向に延びた部分から径方向において内側に屈曲する部分を有し、ガスケット320の上方を覆うように延在している。一方で、舌片部110Eの間における周方向の一部において、
図1(B)および
図2に示すように、開口縁部110の端部は径方向の内側に屈曲せず、ガスケット320の上方を延在していない。舌片部110Eの間には、ガスケット320の外表面320Eが外部に露出している。また、
図1(B)に示すように、舌片部110Eが形成されていない領域の開口縁部(基底部)110の端部は、突起部321により塞がれている。
【0033】
図3に、筒部120の開口縁部110を径方向の内側に屈曲させる前の電池10の状態を示す。開口縁部110は、基底部110Aと、基底部110Aから突出して延びる舌片部110Eと、を有する。開口縁部110の舌片部110Eが設けられていない周方向の一部の領域では、基底部110Aの端部が露出している。隣接する舌片部110Eの間には、ノッチ部111が介在する。
【0034】
図3に示すように、ガスケットの上面には、凹部320Dが設けられている。これにより、舌片部110Eを径方向の内側に屈曲させたとき、舌片部110Eのうち径方向の内側に屈曲して延びる部分が凹部320D内に収容される。
【0035】
図4に、電池10の製造方法を示す。
図4(A~C)は、
図2のA-A’線を含み、電池の軸に平行な面における電池10の工程断面図である。
【0036】
まず、
図4(A)に示すように、ガスケット320が端子部310に取り付けられた封口体300を、ガスケット320の突起部321の位置とノッチ部111の位置を一致させるようにして、開口縁部110に戴置する。
【0037】
次に、
図4(B)に示すように、開口縁部110を径方向にかしめる。かしめによる力によりガスケット320が径方向に圧縮されるとともに、開口縁部110の外径が収容部150に対して縮径される。
【0038】
その後、
図4(C)に示すように、舌片部110Eの一部を内側に屈曲させ、電池10を得る。
【0039】
電池缶100の材質は特に限定されず、鉄、および/または鉄合金(ステンレス鋼を含む)、銅、アルミニウム、アルミニウム合金(マンガン、銅などの他の金属を微量含有する合金など)、などが例示できる。端子部310の材質も特に限定されず、電池缶100と同じ材質を例示することができる。
【0040】
ガスケット320の材質は限定されないが、例えば、一体成型が容易な材料として、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン(PE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)などを用いることができる。
【0041】
[第2実施形態]
図5は、本実施形態に係る電池11の縦断面模式図である。
図6は同電池の斜視図である。なお、
図5(A)は、
図6におけるA-A’線を含み、電池の軸に平行な面における電池11の断面図である。
図5(B)は、
図6におけるB-B’線を含み、電池の軸に平行な面における電池11の断面図である。
【0042】
図5の例では、筒部120に環状溝が設けられている。開口縁部110は、全周において、径方向における内側に屈曲してかしめられ、ガスケットの上面を覆っている。これにより、ガスケット320は軸方向に圧縮されている。ただし、開口縁部110のガスケットの上面に延在する部分の径方向における長さが、周方向により異なっている。開口縁部110の延在長の長い部分に、舌片部110Eが形成される。
【0043】
図5(A)に示すように、舌片部110Eは、ガスケット320の上面を覆うように内側に向かって延在している。同様に、舌片部110Eが形成されていない領域においても、
図5(B)に示すように、開口縁部110の一部である基底部110Fがガスケット320の上面を覆うように内側に向かって延在している。しかしながら、舌片部110Eが形成されている領域における開口縁部110(基底部110Fと舌片部110Eとを含む)の径方向における延在距離(
図5(A)におけるL1)は、舌片部110Eが形成されていない領域における開口縁部110(基底部110F)の径方向における延在距離(
図5(B)におけるL2)よりも大きい。
【0044】
電池11の他の構成については、電池10と同様であり、詳細な説明を割愛する。
【0045】
次に、リチウムイオン二次電池を例に、電極体200の構成について例示的に説明する。
円筒型の電極体200は、捲回型であり、正極と負極とをセパレータを介して渦巻状に捲回して構成されている。正極および負極の一方には内部リード線210が接続されている。内部リード線210は、端子部310の中央領域312の内側面に溶接等により接続される。正極および負極の他方には、別のリード線が接続され、別のリード線は電池缶100の内面に溶接等により接続される。なお、電池缶100の底部130と電極体200との間には別の絶縁板(下部絶縁板)を設けてもよい。この場合、別のリードは別の絶縁板を迂回するよう延びるか、上記別の絶縁板に形成される貫通孔に挿通されるように延びてもよい。
【0046】
(負極)
負極は、帯状の負極集電体と、負極集電体の両面に形成された負極活物質層とを有する。負極集電体には、金属フィルム、金属箔などが用いられる。負極集電体の材料は、銅、ニッケル、チタンおよびこれらの合金ならびにステンレス鋼からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。負極集電体の厚みは、例えば5~30μmであることが好ましい。
【0047】
負極活物質層は、負極活物質を含み、必要に応じて結着剤と導電剤を含む。負極活物質層は、気相法(例えば蒸着)で形成される堆積膜でもよい。負極活物質としては、Li金属、Liと電気化学的に反応する金属もしくは合金、炭素材料(例えば黒鉛)、ケイ素合金、ケイ素酸化物、金属酸化物(例えばチタン酸リチウム)などが挙げられる。負極活物質層の厚みは、例えば1~300μmであることが好ましい。
【0048】
(正極)
正極は、帯状の正極集電体と、正極集電体の両面に形成された正極活物質層とを有する。正極集電体には、金属フィルム、金属箔(ステンレス鋼箔、アルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔)などが用いられる。
【0049】
正極活物質層は、正極活物質および結着剤を含み、必要に応じて導電剤を含む。正極活物質は、特に限定されないが、LiCoO2、LiNiO2のようなリチウム含有複合酸化物を用いることができる。正極活物質層の厚みは、例えば1~300μmであることが好ましい。
【0050】
各活物質層に含ませる導電剤には、グラファイト、カーボンブラックなどが用いられる。導電剤の量は、活物質100質量部あたり、例えば0~20質量部である。活物質層に含ませる結着剤には、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ゴム粒子などが用いられる。結着剤の量は、活物質100質量部あたり、例えば0.5~15質量部である。
【0051】
(セパレータ)
セパレータとしては、樹脂製の微多孔膜や不織布が好ましく用いられる。セパレータの材料(樹脂)としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアミドイミドなどが好ましい。セパレータの厚さは、例えば8~30μmである。
【0052】
(電解質)
電解質にはリチウム塩を溶解させた非水溶媒を用い得る。リチウム塩としては、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、イミド塩類などが挙
げられる。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0053】
上記では、リチウムイオン二次電池を例として説明したが、本発明は、一次電池か二次電池かを問わず、封口体を用いて電池缶の封口を行う電池において利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る電池は、種々の缶型の電池に利用可能であり、例えば携帯機器、ハイブリッド自動車、電気自動車等の電源として使用するのに適している。
【符号の説明】
【0055】
100:電池缶
120:筒部
110:開口縁部
110A、110F:基底部
110E:舌片部
111:ノッチ部
150:収容部
130:底部
200:電極体
210:内部リード線
300:封口体
310:端子部
311:周縁部
312:中央領域
313:薄肉部
320:ガスケット
320D:凹部
320E:外表面
321:突起部