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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】電気外科的アブレーション用器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
A61B18/18 100
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020564745
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2019062311
(87)【国際公開番号】W WO2019224049
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】1808165.3
(32)【優先日】2018-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】スウェイン,サンドラ・メイ
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-511538(JP,A)
【文献】特開平11-347044(JP,A)
【文献】特表2005-502417(JP,A)
【文献】特開2010-094518(JP,A)
【文献】特表2007-532024(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0135217(US,A1)
【文献】特表2004-518471(JP,A)
【文献】特開2011-041799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0228244(US,A1)
【文献】特開2010-274118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0305559(US,A1)
【文献】特開平07-275247(JP,A)
【文献】特表2008-531086(JP,A)
【文献】国際公開第2013/022077(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波エネルギを伝達するように構成された可撓性同軸ケーブルと、
前記可撓性同軸ケーブルの遠位端に接続された放射先端部分であって、前記放射先端部分は生体組織への挿入を可能にするために実質的に剛性であり、前記放射先端部分が、
前記マイクロ波エネルギを伝達するための近位同軸伝送線路と、
前記近位同軸伝送線路の遠位端に取り付けられた遠位針先端部と
前記近位同軸伝送線路と前記遠位針先端部との間の中間同軸伝送線路と
を含む、前記放射先端部分と、
を含み、
前記近位同軸伝送線路が、
前記可撓性同軸ケーブルの遠位端から延在する内側導体であって、前記内側導体が、前記可撓性同軸ケーブルの中心導体に電気的に接続されている、前記内側導体と、
前記内側導体の周りに取り付けられた近位誘電体スリーブと、
前記近位誘電体スリーブの周りに取り付けられた外側導体と
を含み、
前記遠位針先端部が、前記遠位針先端部から前記マイクロ波エネルギを送達するための半波長トランスとして動作するように開放端の装荷モノポールアンテナとして構成されており、
前記中間同軸伝送線路は、前記遠位針先端部と前記近位同軸伝送線路の前記外側導体との間の重なりから形成される、電気手術器具。
【請求項2】
記遠位針先端部が、前記内側導体の周りに取り付けられた遠位誘電体スリーブを含み、
前記外側導体の遠位部分が、前記遠位誘電体スリーブの近位部分に重なっている、請求項1に記載の電気手術器具。
【請求項3】
前記内側導体が、前記可撓性同軸ケーブルの前記中心導体の直径よりも小さい直径を有する、請求項2に記載の電気手術器具。
【請求項4】
前記放射先端部分が、前記可撓性同軸ケーブルにカラーによって固定されている、請求項3に記載の電気手術器具。
【請求項5】
前記カラーが、導電性であり、前記外側導体を前記可撓性同軸ケーブルの外側導体に電気的に接続する、請求項に記載の電気手術器具。
【請求項6】
前記遠位誘電体スリーブは、前記内側導体を受け入れるための穴を有し、前記遠位針先端部は、前記穴を閉じるために、前記遠位誘電体スリーブの遠位端に取り付けられた絶縁先端部要素を更に含む、請求項のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項7】
前記遠位誘電体スリーブの遠位端が鋭利になっている、請求項のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項8】
遠位誘電体スリーブが、前記近位誘電体スリーブとは異なる材料で作られている、請求項のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項9】
前記遠位誘電体スリーブは、セラミック、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ガラス充填PEEKのいずれかである、請求項のいずれか1項に記載の電気手術器具。
【請求項10】
前記放射先端部分が、40mm以上の長さを有する、いずれかの先行請求項に記載の電気手術器具。
【請求項11】
前記放射先端部分の最大外径が1.2mm以下である、いずれかの先行請求項に記載の電気手術器具。
【請求項12】
前記近位同軸伝送線路の外面に、マイクロ波チョークまたはバランが位置している、いずれかの先行請求項に記載の電気手術器具。
【請求項13】
患者の体に挿入可能であるように構成された器具コードを有する手術用スコープデバイスであって、前記器具コードが器具チャンネルを有する、前記手術用スコープデバイスと、
前記器具チャンネルを通して挿入可能であるように寸法決定された、いずれかの先行請求項に記載の電気手術器具とを含む、電気手術装置。
【請求項14】
前記手術用スコープデバイスが、超音波対応の内視鏡である、請求項13に記載の電気手術装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的組織を除去するために、ラジオ波及びマイクロ波エネルギを生体組織に送達する電気手術器具に関する。特に、プローブが、非侵襲的な方法で治療部位に導入することができる手術用スコープデバイスまたはカテーテルのチャンネルを通して挿入可能となるように構成されている。プローブは、腫瘍、嚢胞、またはその他の病変などの組織を除去するように配置させることができる。プローブは、膵臓での治療に特に適している場合がある。
【背景技術】
【0002】
細胞を死滅させる効果的な方法として、生体組織に熱エネルギを付与することがよく知られている。例えば、ラジオ波またはマイクロ波エネルギを付与することで、生体組織が加熱され、それによって生体組織を除去(破壊)することができる。この方法は、特にがん治療に使用することができる。
【0003】
超音波内視鏡ガイド下ラジオ波アブレーションを使用して膵臓の組織を治療する手法が知られている(Pai, M., et al.: Endoscopic ultrasound guided radiofrequency ablation, for pancreatic cystic neoplasms and neuroendocrine tumors, World J Gastrointest Surg 2015 April 27;7(4): 52-59)。この手法では、小径(例えば、0.33mm)の導電性ワイヤが、超音波対応の内視鏡のワーキングチャンネルを通して挿入される。ワイヤには、患者の皮膚と接触している外部接地されたリターンパッドと組み合わせて、肝臓や膵臓の組織を凝固させるためにRF電力が印加される。病変を除去するには、90~120秒の間電力を印加し、場合によっては、ワイヤを取り外して再配置する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
最も一般的には、本発明は、周知のRFアブレーション手法に取って代わる迅速かつ正確な代替手法を提供するために、手術用スコープデバイスを介して膵臓に挿入するのに適した寸法のマイクロ波アブレーション用アンテナを有する電気手術器具を提供する。本発明は、膵臓において特定の用途を見出し得るが、肺などの他の難しい治療部位での用途にも好適であり得る。本明細書に開示される器具構造により、アブレーション用アンテナには、様々な状況で用いるための適切な長さ及び剛性を備えさせることが可能になる。本明細書に記載されたアブレーション用アンテナの長さ及び剛性は、最終的使用において重要な役割を果たし得る。非常に短い長さの場合、以下で説明する放射先端部分は、電気的完全性または電気的性能を維持するために、それぞれ高比誘電率材料及び高透磁率材料の組み合わせによって誘電的または磁気的に装荷し得る。放射先端部分の長さは、5mm~80mmの範囲であり得る。
【0005】
低侵襲的処置を使用して、膵臓内の腫瘍を除去することが可能になることにより、治療的な理由及び緩和的な理由の両方のために、アブレーション治療の選択肢を実行可能にすることができる。
【0006】
本発明によれば、マイクロ波エネルギを伝達するように構成された可撓性同軸ケーブルと、同軸ケーブルの遠位端に接続された生体組織に挿入するために構成され、マイクロ波エネルギを受け取るように構成された放射先端部分であって、放射先端部分が、マイクロ波エネルギを伝達するための近位同軸伝送線路と、同軸伝送線路の遠位端に取り付けられた遠位針先端部とを含む、放射先端部分とを含み、遠位針先端部が、遠位針先端部からマイクロ波エネルギを送達するための半波長トランスとして動作するように構成されている、電気手術器具が提供され得る。つまり、同軸伝送線路のインピーダンスは、遠位先端構造の(より小さな)インピーダンスではなく、組織によって「見られる」。遠位針先端部の形状と、その近位同軸伝送線路との相互作用とは、遠位針先端部が半波長トランスとして電気的に動作することを可能にしながら、遠位針先端部の物理的な長さを制御するように選択することができるので、遠位針先端部の物理的な長さは、自由空間におけるマイクロ波エネルギの半波長に対応する必要はない(実際にはおそらくないだろう)。
【0007】
遠位針先端部を半波長トランスとして構成することの利点は、構成要素間の界面、例えば、同軸ケーブルと近位同軸伝送線路との間、及び近位同軸伝送線路と遠位針先端部との間の反射を最小限に抑えることである。後者の界面での反射係数は、インピーダンスの変動が大きいため、通常は大きくなる。半波長構成は、支配的な反射係数が近位同軸伝送線路と組織との間の界面の反射係数になるように、これらの反射を最小化する。近位同軸伝送線路のインピーダンスは、マイクロ波エネルギの周波数で良好な整合を提供するために、予想される組織インピーダンスと同一またはそれに近いものとなるように選択することができる。
【0008】
放射先端部分は、近位同軸伝送線路と遠位針先端部との間の中間同軸伝送線路を含み得る。中間同軸伝送線路は、遠位針先端部と近位同軸伝送線路の導電性構成要素との間の重なりから形成され得る。中間同軸伝送線路は、必要な電気的長さ(半波)を得ながら、物理的長さを短くすることを可能にするために、近位同軸伝送線路よりも高い誘電率を備える。遠位針先端部の遠位部分が、中間同軸伝送線路に接続された開放端の装荷モノポールとして機能する。遠位針先端部はまた、除去域を形成するために開放端の同軸モノポールで終わる単一の構造と見なし得る。
【0009】
近位同軸伝送線路は、可撓性同軸ケーブルの遠位端から延在する内側導体であって、内側導体が、可撓性同軸ケーブルの中心導体に電気的に接続されている、内側導体と、内側導体の周りに取り付けられた近位誘電体スリーブと、近位誘電体の周りに取り付けられた外側導体とを含み得、遠位針先端部が、内側導体の周りに取り付けられた遠位誘電体スリーブを含み、外側導体の遠位部分が、遠位誘電体スリーブの近位部分に重なっている。したがって、中間同軸伝送線路は、外側導体によって重ね合わされる遠位誘電体スリーブの長さによって形成され得る。
【0010】
外側導体は、例えばニチノールから形成された導電性チューブであり、十二指腸壁を貫通することができる力を伝達するのに十分な縦方向の剛性を示す。好ましくは、導電性チューブはまた、器具が手術用スコープデバイスの器具チャンネルを通って移動することを可能にするのに適した横方向の屈曲を示す。放射先端部分は、生体組織への挿入を可能にするために実質的に剛性であり得る。
【0011】
内側導体は、高導電性の材料、例えば銀から形成され得る。内側導体は、可撓性同軸ケーブルの中心導体の直径よりも小さい直径を有し得る。例えば、内側導体の直径は0.25mmであってもよい。好ましい直径は、放射先端部分に沿った損失(及び加熱)を決定する主要なパラメータが、内側導体の直径の関数である導体損失であることを考慮に入れている。その他の関連パラメータは、遠位及び近位の誘電体スリーブの誘電率と、外側導体に使用される直径及び材料とである。
【0012】
近位同軸伝送線路の構成要素の寸法は、可撓性同軸ケーブルのインピーダンスと同一か、またはそれに近いインピーダンス(例えば、約50Ω)を提供するように選択され得る。
【0013】
放射先端部分は、可撓性同軸ケーブルに、それらの間の接合部に取り付けられたカラーによって固定され得る。カラーは、電気伝導性であり、例えば真ちゅうから形成され得る。カラーは、同軸伝送線路の外側導体を可撓性同軸ケーブルの外側導体に電気的に接続する。
【0014】
遠位誘電体スリーブは、内側導体を受け入れるために、そのスリーブを通して形成された穴を有し得る。遠位針先端部は、その穴を閉じるために、遠位誘電体スリーブの遠位端に取り付けられた先端部要素を更に含み得る。先端部要素は、PEEK、エポキシ、マコール、アルミナ、ガラス、ガラス充填PEEKのいずれかで作成され得る。
【0015】
遠位誘電体スリーブの遠位端は、鋭利にされ得、例えば、ある点まで先細りさせ得る。これにより、十二指腸壁または胃壁から膵臓への器具の挿入が容易になり得る。
【0016】
遠位誘電体スリーブは、近位誘電体スリーブとは異なる材料で作られ得る。近位誘電体スリーブは、可撓性同軸ケーブルの誘電体材料と同じ材料、例えば、PTFE等から製造され得る。対照的に、遠位誘電体スリーブは、セラミック、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ガラス充填PEEKのいずれかから製造され得る。この材料は、望ましい剛性を示し、鋭利にすることができる。この材料はまた、その電気的長さを維持しながら、放射先端部分の物理的長さを制御(例えば、縮小または最適化)することを可能にする。
【0017】
放射先端部分は、30mm以上、好ましくは40mmの長さを有し得るが、100mmほどの長さであってもよい。この長さにより、膵臓内の全ての位置にある治療領域へアクセスが可能となる。放射先端部分の最大外径は1.2mm以下であり得る。これは、治癒の過度の遅延を引き起こさないように、器具の挿入によって引き起こされる貫通穴を縮小しまたは最小化し得る。貫通穴の大きさを最小化することはまた、それが開いたまま治癒してしまい、消化管と体腔との間に瘻孔または不必要な経路を引き起こすという望ましくない状況を回避し得る。
【0018】
近位同軸伝送線路の外面に、マイクロ波チョークまたはマイクロ波バランが製造され得る。これは、遠位針先端部で放出されるマイクロ波エネルギについて、より球形の場の形状を生成するのを支援し得る。複数のチョークを外側導体上に配置し得る。それらは、同軸伝送線路が形成された後、その上に付着され得る。各チョークは、マイクロ波エネルギの4分の1波長である同軸伝送線路に沿った長さを有し得る。これは、短絡回路を4分の1波長離れた開回路に変換するためのものである。これにより、表面電流が針の外面を伝搬して戻って来るのを防ぐための絶縁が提供される。この効果は、遠位の放射部分からエネルギを強制的に取り出すことである。チョークには、必要な電気的長さ(4分の1波長)を維持しながら物理的な長さを短くするために、より高い比誘電率の材料を有した誘電体材料が装荷され得る。
【0019】
上記のバランの位置は、それらがアブレーションプロファイルを制御し、または進行させる助けとなるようなものであり得る。例えば、第1のバランは、アブレーションプロファイルが上記の位置から15mmを超えて後退しないことを確実にするために、デバイスの遠位放射端から15mm後方に配置され得る。
【0020】
また、本明細書に開示されるのは、患者の体に挿入可能であるように構成された器具コードを有する手術用スコープデバイスであって、器具コードが、器具コードを通して形成された器具チャンネルを有する、手術用スコープデバイスと、器具チャンネルを通して挿入可能であるように寸法決定された、上記の電気手術器具とを含む電気手術装置である。
【0021】
本明細書では、用語「手術用スコープデバイス」は、侵襲的処置の間に患者の体内に導入される剛性または可撓性の(例えば、操向可能な)導管である挿入管を備えた任意の手術用デバイスという意味で使用し得る。挿入管は、器具チャンネルと(例えば、光を伝えて挿入管の遠位端で治療部位に光を当て、及び/またはその治療部位の画像を捕捉するための)光チャンネルとを含み得る。器具チャンネルは、侵襲的な手術道具を受け入れるのに適した直径を有し得る。器具チャンネルの直径は5mm以下であり得る。本発明の実施形態では、手術用スコープデバイスは、超音波対応の内視鏡であり得る。
【0022】
本明細書において、用語「内側」とは、器具チャンネル及び/または同軸ケーブルの中心(例えば軸)に対して半径方向に、より近いことを意味する。用語「外側」とは、器具チャンネル及び/または同軸ケーブルの中心(軸)から半径方向に、より離れていることを意味する。
【0023】
本明細書では、用語「導電性」は、文脈による別段の指示がない限り、電気伝導性という意味で使用される。
【0024】
本明細書では、用語「近位」及び「遠位」とは、細長いプローブの端のことをいう。使用の際に、近位端は、RF及び/またはマイクロ波エネルギを供給するための発生器により近く、その一方で遠位端は発生器からより遠い。
【0025】
本明細書では、「マイクロ波」は、400MHz~100GHzの周波数範囲を指すために広く使われ得るが、好ましくは1GHz~60GHzの範囲を指す。検討された特定の周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、及び24GHzである。デバイスは、これらのマイクロ波周波数のうちの複数の周波数でエネルギを送達し得る。
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態である電気外科的アブレーション装置を示す概略図である。
図2】本発明で利用し得る内視鏡の器具コードの概略断面図である。
図3A】本発明の実施形態である電気手術器具の分解斜視図である。
図3B図3Aの電気手術器具が組み立てられた場合のその斜視図である。
図4A】第1の実施例の電気手術器具の断面図である。
図4B図4Aの器具が5.8GHzで動作している場合のそのシミュレートした電力密度チャートである。
図4C図4Aの器具のシミュレートした反射損失のグラフである。
図5A】第2の実施例の電気手術器具の断面図である。
図5B図5Aの器具が5.8GHzで動作している場合のそのシミュレートした電力密度チャートである。
図5C図5Aの器具のシミュレートした反射損失のグラフである。
図6A】第3の実施例の電気手術器具の断面図である。
図6B図6Aの器具が5.8GHzで動作している場合のそのシミュレートした電力密度チャートである。
図6C図6Aの器具のシミュレートした反射損失のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
更なる選択肢及び好適例
図1は、マイクロ波エネルギと流体、例えば冷却液とを、侵襲的電気手術器具の遠位端に供給することができる電気外科的アブレーション装置100の概略図である。システム100は、ラジオ波(RF)及びマイクロ波エネルギを制御可能に供給するための発生器102を備える。この目的のために好適な発生器が、参照により本明細書に組み込まれるWO2012/076844に記載されている。発生器は、送達に適切な電力レベルを判定するために、器具から返されて受け取った反射信号を監視するように構成され得る。例えば、発生器は、最適な送達電力レベルを判定するために、器具の遠位端で見込まれるインピーダンスを計算するように構成され得る。
【0029】
発生器102は、インタフェースケーブル104によってインタフェースジョイント106に接続されている。インタフェースジョイント106はまた、流体流動ライン107を介して、注射器などの流体送達デバイス108に接続されている。いくつかの実施例では、本装置は、追加的または代替的に、治療部位から流体を吸引するように構成され得る。この場合、流体流動ライン107は、流体をインタフェースジョイント106から好適な収集器(図示せず)に送ることができる。この吸引機構は、流体流動ライン107の近位端に接続され得る。
【0030】
必要に応じて、インタフェースジョイント106は、例えば1つ以上の制御ワイヤまたはプッシュロッド(図示せず)の長手方向の動き(前後動)を、引金をスライドさせて、例えば、制御することによって動作可能である器具制御機構を収容し得る。複数の制御ワイヤがある場合は、完全な制御を提供するために、インタフェースジョイントには複数のスライド式の引金が存在し得る。インタフェースジョイント106の機能は、発生器102、流体送達デバイス108、及び器具制御機構からの入力を、インタフェースジョイント106の遠位端から延びる単一の可撓性シャフト112に結合することである。
【0031】
可撓性シャフト112は、手術用スコープデバイス114の器具(ワーキング)チャンネルの全長を通して挿入可能であり、本発明の実施形態では、超音波内視鏡デバイスを含み得る。
【0032】
手術用スコープデバイス114は、いくつかの入力ポートと、器具コード120がそこから延びる出力ポートとを有する本体116を備える。器具コード120は、複数の内腔を取り囲む外側の被覆を備える。複数の内腔は、本体116から器具コード120の遠位端まで様々なものを送る。複数の内腔のうちの1つは、上記の器具チャンネルである。他の内腔には、例えば、遠位端に照明を提供するため、または遠位端から画像を収集するために、光放射を伝達するためのチャンネルが含まれ得る。本体116は、遠位端を見るための接眼鏡122を含み得る。
【0033】
一般に、超音波内視鏡デバイスは、器具チャンネルの出口開口部を越えて、器具コードの遠位先端に、超音波トランスデューサを提供する。超音波トランスデューサからの信号は、器具コードに沿って戻り、好適なケーブル126によってプロセッサ124に伝達され得、プロセッサ124は既知の方法で画像を生成し得る。器具チャンネルは、標的部位における器具の位置に関する情報を提供するために、超音波システムの視野を介して、器具チャンネルから出る器具を誘導するように、器具コード内に成形され得る。
【0034】
可撓性シャフト112は、手術用スコープデバイス114の器具チャンネルを通り抜け、器具コードの遠位端で(例えば、患者の内部に)突出するように形づくられた遠位組立体118(図1では縮尺どおりに描かれていない)を有する。
【0035】
以下に述べる遠位組立体118の構造は、特に超音波内視鏡(EUS)デバイスとの使用を目的として設計し得るものであり、それにより、遠位端の組立体118の最大外径は、2.0mm以下、例えば1.9mm未満(より好ましくは1.5mm未満)であり、可撓性シャフトの長さは1.2m以上にすることができる。
【0036】
本体116は、可撓性シャフト112に接続するための電源入力ポート128を含む。以下に説明するように、可撓性シャフトの近位部分は、ラジオ波及びマイクロ波エネルギを発生器102から遠位組立体118に伝達することができる従来型の同軸ケーブルを含み得る。EUSデバイスの器具チャンネルに物理的に取り付けることができる同軸ケーブルは、以下の外径で利用可能である。1.19mm(0.047″)、1.35mm(0.053″)、1.40mm(0.055″)、1.60mm(0.063″)、1.78mm(0.070″)である。また、カスタムサイズ(すなわち、オーダメイド)の同軸ケーブルを使用してもよい。
【0037】
上記のように、器具コード120の少なくとも遠位端の位置を制御できることが望ましい。本体116は、器具コード120を通って延びる1つ以上の制御ワイヤ(図示せず)によって器具コード120の遠位端に機械的に結合された制御アクチュエータを含み得る。制御ワイヤは、器具チャンネル内、またはそれ自体の専用チャンネル内を移動し得る。制御アクチュエータは、レバーもしくは回転可能なノブ、または他の何らかの周知のカテーテル操作デバイスであり得る。器具コード120の操作は、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)画像を組み合わせられた仮想3次元マップを使用して、ソフトウェア支援され得る。
【0038】
図2は、器具コード120の軸の下方の図である。本実施形態では、器具コード120内に4つの内腔がある。最大の内腔は、器具チャンネル132である。他の内腔は、超音波信号チャンネル134及び照明チャンネル136、ならびにカメラチャンネル138を含むが、本発明は、この構成に限定されない。例えば、他の内腔、例えば、制御ワイヤ、または流体の送達もしくは吸引のための内腔が存在し得る。
【0039】
一実施形態では、本発明は、EUSシステムカテーテルの遠位端で組織除去を行うことができる器具を提供し得る。副作用を軽減するとともに器具の効率を最大化するには、送信アンテナを標的組織のできるだけ近くに配置すべきである。理想的には、治療中に、器具の放射部が、腫瘍の(例えば、中心部の)内部に設置される。
【0040】
本発明は、膵臓の治療に特に適している可能性がある。標的部位に到達するために、器具は、口、胃、及び十二指腸を通り抜けて導かれる必要がある。本器具は、十二指腸の壁を貫通することによって膵臓にアクセスするように構成されている。この手順では、膵臓に入り込み得る器具の大きさに、かなりの制限がかけられる。従来、外径が1mmを超えない(例えば、19ゲージ)器具が使用されてきた。
【0041】
以下の説明では、記載された遠位組立体118での使用に好適なアンテナ構成を提示する。
【0042】
以下の説明では、特に明記しない限り、構成要素の長さとは、同軸ケーブル/器具コードの縦軸に平行な方向のその構成要素の寸法のことをいう。
【0043】
図3Aは、本発明の実施形態である電気手術器具200の分解斜視図である。図3Bは、組み立て後の電気手術器具200を示す。電気手術器具は、その遠位端に取り付けられた放射先端部分構造201(例えばアブレーション用アンテナ構造)を有する同軸ケーブル202を備える。同軸ケーブル202は、手術用スコープデバイスの器具チャンネルを通して移動させるのに好適な従来型の可撓性50Ω同軸ケーブルであり得る。一例では、同軸ケーブル202は、Huber and Suhner Sucoformの86同軸ケーブルであるが、本発明は、このサイズの同軸ケーブルに限定されるものではない。
【0044】
放射先端部分構造は、同軸伝送線路であって、その遠位端に取り付けられた針状の放射先端部分を有する、同軸伝送線路を含む。同軸伝送線路は、同軸ケーブル202の中心導体(図示せず)に電気的に接続された内側導体204を含む。いくつかの実施例では、内側導体204は、同軸ケーブル202の中心導体の延長部分、すなわち、ケーブルの遠位端から突出する中心導体の一部分である場合がある。しかしながら、一般的には、そのような導体の外径は、本発明での使用に適さないほど大きいので、別個のより薄い導体が使用され得る。内側導体204は、銀またはその他の高導電性材料から形成され得る。
【0045】
内側導体204は、その近位部分(同軸伝送線路に対応し得る)に沿って、管またはPTFE等であり得る近位誘電体スリーブ206によって取り囲まれている。近位誘電体スリーブ206は、内側導体204の遠位端の手前で終了する。遠位誘電体スリーブ208は、内側導体204の遠位部分に被さるように取り付けられて、放射先端部分を形成する。遠位誘電体スリーブ208は、生体組織への挿入に好適であるように、その遠位端を鋭利にすることができる硬質絶縁材から形成され得る。例えば、遠位誘電体スリーブ208は、セラミック(例えばアルミナ)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、またはそれらの混合物、例えば、ガラス充填PEEKであり得る。
【0046】
同軸伝送線路は、近位誘電体スリーブ206の周りに取り付けられた外側導体210によって完成される。外側導体210は、好ましくは、例えば、金属または他の好適な導電性材料の剛性管である。管は、十二指腸壁を貫通することができる力を伝達するのに十分な縦方向の剛性を有するように構成され、その一方で、器具が手術用スコープデバイスの器具チャンネルを通って移動することを可能にする適切な横方向の屈曲をも示す。ニチノールは適切な挙動を示すことが分かっているが、他の材料、例えばステンレス鋼などを用いてもよい。外側導体210の長さは、近位誘電体スリーブ206の遠位端を越えて延在するように選択される。つまり、近位誘電体スリーブ206と遠位誘電体スリーブ208との間の接合部は、外側導体210内に位置している。したがって、露出した針状の遠位誘電体スリーブ208の近位にある領域に、内側導体204、遠位誘電体スリーブ208、及び外側導体210によって形成された中間同軸伝送線路が存在する。中間同軸伝送線路の長さは、器具に沿ったインピーダンス整合を改善するように選択され得る。
【0047】
近位誘電体スリーブ206及び遠位誘電体スリーブ208は、内側導体204上をスライドする管として形成され得る。器具の最遠位端に絶縁先端部要素214を取り付けて、遠位誘電体スリーブ208の遠位端を閉じること、例えば、内側導体204を受け入れるためにそこに形成された穴を閉じることができる。先端部要素214及び/または遠位誘電体スリーブ208の遠位端は、例えば、生体組織に挿入するための針状構造を形成するように鋭利にされ得る。先端部要素214は、遠位誘電体スリーブ208と同じ材料、例えば、PEEK等から製造され得る。しかしながら、他の絶縁材料、例えば、エポキシ、マコール、アルミナ、ガラス、ガラス充填PEEKなどを使用してもよい。
【0048】
放射先端部分201は、カラー212によって同軸ケーブル202の遠位端に固定されている。カラー212は、放射先端部分201を所定の位置に固定するための半径方向の圧着部として機能し得る。カラー212はまた、同軸ケーブルの外側導体を同軸伝送線路の外側導体210に電気的に接続するように構成されている。したがって、カラー212は、導電性材料、例えば真ちゅう等から形成される。
【0049】
電気手術器具200は、同軸ケーブルに沿って生体組織に受け入れられるマイクロ波エネルギを放出するためのアブレーション用アンテナとして用いるよう構成されている。特に、本電気手術器具は、手術用スコープデバイス(例えば、超音波内視鏡(EUS)装置)の器具チャンネルを通して治療部位に挿入するのに好適であるように設計されている。治療部位は膵臓であってもよく、それにより手術用スコープデバイスの器具コードは、十二指腸内に挿入され、その上で、電気手術器具200が、十二指腸の壁を貫通して、治療部位まで膵臓内に入り込むように延ばされる。
【0050】
本電気手術器具は、この状況での使用に適したものにするいくつかの特徴を有し得る。本器具の剛性部分は、望ましくは、40mm以上の長さを有し、最大外径は1.2mmである。これにより、膵臓内にある腫瘍に到達するのに十分な長さの針を確保することができるとともに、確実に、貫通穴が、治癒を遅らせ得るほどに大きくならないようにすることができる。
【0051】
一実施例では、器具の組み立ては、同軸ケーブル202の中心導体に0.3mmの穴を開けることを含む。次に、内側導体204(これは、0.25mmの外径を有する針要素であり得る)が、その穴に挿入され、はんだで固定される。近位誘電体スリーブ206(例えばPTFE管材料)が、接続部の空隙を排除するように注意しながら、内側導体204に押し付けられる。次に、遠位誘電体スリーブ208(例えばPEEK区分)が内側導体204に押し付けられ、少量の医療グレードのエポキシで固定される。次に、外側導体210(例えば、ニチノール管)が、遠位誘電体スリーブ及び近位誘電体スリーブに押し付けられる。カラー212が、外側導体210と同軸ケーブル202との間の接合部上に配置され、はんだで固定される。最後に、先端部要素(例えばPEEK)が遠位誘電体スリーブに挿入され、少量のエポキシで固定される。表1は、本実施例の構成要素の寸法を一覧表示する。
【0052】
CST Microwave Studioを使用して、3つの異なる構成で、上記の器具構造の設計及びシミュレーションを行った。
【0053】
第1の構成を図4Aに示す。本デバイスは、次の3つの区分に分けることができる。すなわち、(i)放射先端部分に真ちゅうコネクタで接続されたHuber and Suhner Sucoformの86同軸ケーブル(50Ωインピーダンス)と、(ii)生体組織にエネルギを供給するための半波長トランスとして機能する放射先端部分(48Ωインピーダンス)と、(iii)上記の中間同軸伝送線路内の放射先端部分の遠位端で終端されるその遠位端にある露出した鋭利な遠位誘電体スリーブ(39Ωインピーダンス)とである。第1の構成では、遠位誘電体スリーブはPEEKである。中間同軸伝送線路では、構造の必要な長さを理論値から変更する静電容量が負荷される。
【0054】
図4Bは、図4Aの構成の反射損失を示す。5.8GHzでの整合は、-33.4dBの反射損失で達成され、これは腫瘍に入る電力の99.95%に相当する。
【0055】
図4Cは、電力損失密度を示す。本実施例では、電力は、10mmの除去域を非常に迅速に形成するはずである10mmの区分にわたって広がる。
【0056】
第2の構成を図5Aに示す。本実施例では、遠位誘電体スリーブは30%ガラス充填PEEKであり、すなわち、PEEKは70:30の比率でガラスと混合された。上記の3つの区分の長さの寸法は、それに伴って変更される。
【0057】
図5Bは、図5Aの構成の反射損失を示す。5.8GHzでの整合は、-56.1dBの反射損失で達成される。
【0058】
図5Cは、電力損失密度を示す。プロファイルは、図4Cに示されているものと非常に似ている。
【0059】
第3の構成を図6Aに示す。本実施例では、遠位誘電体スリーブはアルミナであり、上記の3つの区分の長さ寸法はそれに伴って変更される。
【0060】
図5Bは、図5Aの構成の反射損失を示す。5.8GHzでの整合は、-34.0dBの反射損失で達成される。
【0061】
図5Cは、電力損失密度を示す。プロファイルは、図4Cに示されているものと非常に似ている。
【0062】
アルミナやガラス充填PEEKなどの先端部材料は、それらがPEEKよりも損失が大きいにも関わらず、使用に適していると考えられ得る。先端部要素の長さが短いことは、損失が大きくないことを意味し、したがって、それらのより良い機械的特性の利点、すなわち組織を貫通するための機械的特性の利点は、それらを適切な候補にする可能性がある。
【0063】
上記の構造の開発では、図4C図5C、及び図6Cに示すように、外側導体に沿って逆行するエネルギプロファイルの「テール」を回避しまたは低減することが望ましい場合がある。この「テール」は、放射先端部分を加熱する可能性があり、それによって十二指腸を損傷し、または膵臓の健康な部分に非常に望ましくない付随的損傷を引き起こす危険性があり得る。したがって、器具は、よりエンドファイアのプロファイル、例えば、より球形のプロファイルを示すことが望ましい場合がある。
【0064】
これを達成する1つの方法は、最遠位の先端部の鋭さを弱めることであり得る。これを行うと、デバイスの端で見られるインピーダンスに影響を与える可能性があるため、遠位誘電体スリーブの長さをわずかに変更する必要があり得る。最遠位の先端部を鋭くしないことにより、組織挿入はより困難に、またはより危険になる場合もある。
【0065】
プロファイルを再整形する別の方法は、1つ以上のバランまたは4分の1波長チョークを外側導体の外面に提供することである。バランの位置と数によって、結果として得られる放出電力密度プロファイルの形状が決まる。バランが多いほど、プロファイルはシャープになる。一実施例では、バランは、例えば、外側導体の上に絶縁材(例えば、絶縁体の環状バンド)の被着または貼付を行うとともに、導電性材料を重ねることによって、器具が組み立てられた後に、外側導体に付着され得る。
【0066】
使用の際に、本器具は、発生器で制御されたエネルギ送達プロファイルに従ってマイクロ波エネルギを放出し得る。一実施例では、マイクロ波エネルギは、離散的なバーストまたはパルスで送達される。例えば、5.8GHzのマイクロ波エネルギが、例えば、1秒オンの後に3秒だけオフになる、25%のデューティサイクルを有するパルスプロファイルを使用して、60Wで送達され得る。別の実施例では、5.8GHzのマイクロ波エネルギが、例えば、200マイクロ秒オン、1800マイクロ秒オフである、10%のデューティサイクルを有するパルスプロファイルを使用して、1kWで送達され得る。この後者のプロファイルは、治療期間にわたり100J~3kJのエネルギを送達するように制御することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C