IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マイクロビジョン,インク.の特許一覧

<>
  • 特許-アナログ-デジタルコンバータ 図1
  • 特許-アナログ-デジタルコンバータ 図2
  • 特許-アナログ-デジタルコンバータ 図3
  • 特許-アナログ-デジタルコンバータ 図4
  • 特許-アナログ-デジタルコンバータ 図5
  • 特許-アナログ-デジタルコンバータ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】アナログ-デジタルコンバータ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4861 20200101AFI20231013BHJP
【FI】
G01S7/4861
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021529806
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2019082728
(87)【国際公開番号】W WO2020109378
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】102018220688.0
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505472816
【氏名又は名称】マイクロビジョン,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ボイシェル
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08947659(US,B1)
【文献】特開2015-215345(JP,A)
【文献】特開2010-258817(JP,A)
【文献】特開2016-176750(JP,A)
【文献】特開2013-172296(JP,A)
【文献】特開2010-091377(JP,A)
【文献】国際公開第2018/176287(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175458(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源によって放射されて物体によって反射される光パルスを検出するための検出器又はセンサに使用されるアナログ-デジタルコンバータであって、
フォトダイオードのアナログ信号を受信するためのアナログ入力部と、
第1の時間-デジタルコンバータ(7)と、
ヒストグラムブロック(10)と、
を備え、
前記第1の時間-デジタルコンバータ(7)は、ランプ信号に基づいて前記アナログ信号を走査し、出力(20、25)を前記ヒストグラムブロック(10)に送出し、
該ヒストグラムブロック(10)は、それに基づいて時間相関ヒストグラム(21、26、30)を生成し、
前記アナログ-デジタルコンバータは、周期的開始信号を受信するための開始信号入力部(3)をさらに備える、アナログ-デジタルコンバータ。
【請求項2】
光源によって放射されて物体によって反射される光パルスを検出するための検出器又はセンサに使用されるアナログ-デジタルコンバータであって、
フォトダイオードのアナログ信号を受信するためのアナログ入力部と、
第1の時間-デジタルコンバータ(7)と、
ヒストグラムブロック(10)と、
を備え、
前記第1の時間-デジタルコンバータ(7)は、ランプ信号に基づいて前記アナログ信号を走査し、出力(20、25)を前記ヒストグラムブロック(10)に送出し、
該ヒストグラムブロック(10)は、それに基づいて時間相関ヒストグラム(21、26、30)を生成し、
前記アナログ-デジタルコンバータは、前記ランプ信号と前記アナログ信号とを比較し、コンパレータ信号を前記第1の時間-デジタルコンバータ(7)に出力するコンパレータ(4)をさらに備える、アナログ-デジタルコンバータ
【請求項3】
光源によって放射されて物体によって反射される光パルスを検出するための検出器又はセンサに使用されるアナログ-デジタルコンバータであって、
フォトダイオードのアナログ信号を受信するためのアナログ入力部と、
第1の時間-デジタルコンバータ(7)と、
ヒストグラムブロック(10)と、
を備え、
前記第1の時間-デジタルコンバータ(7)は、ランプ信号に基づいて前記アナログ信号を走査し、出力(20、25)を前記ヒストグラムブロック(10)に送出し、
該ヒストグラムブロック(10)は、それに基づいて時間相関ヒストグラム(21、26、30)を生成し、
前記アナログ-デジタルコンバータは、第2の時間-デジタルコンバータ(8)をさらに備え、
前記第1の時間-デジタルコンバータ(7)は、前記アナログ信号が前記ランプ信号を上回る時間間隔を捕捉し、
前記第2の時間-デジタルコンバータ(8)は、前記アナログ信号が前記ランプ信号を下回る時間間隔を捕捉する、アナログ-デジタルコンバータ
【請求項4】
前記ヒストグラムブロック(10)が、時間ジッタの影響を軽減するために前記時間相関ヒストグラム(21、26、30)を補正するように構成された請求項1から3のいずれか一項に記載のアナログ-デジタルコンバータ。
【請求項5】
前記時間ジッタの影響が、前記第1の時間-デジタルコンバータ(7)の前記出力(25)に時間シフトされた値をもたらす請求項に記載のアナログ-デジタルコンバータ。
【請求項6】
前記ヒストグラムブロック(10)は、異なる出力(20、25)からの値を合成する請求項4又は5に記載のアナログ-デジタルコンバータ。
【請求項7】
前記値は、出力の最大値が前記時間相関ヒストグラム(21、26、30)に充填され
るように合成される請求項に記載のアナログ-デジタルコンバータ。
【請求項8】
前記値は、平均値が前記時間相関ヒストグラム(21、26、30)に充填されるように合成される請求項に記載のアナログ-デジタルコンバータ。
【請求項9】
前記値は、関数に基づいて合成される請求項6から8のいずれか一項に記載のアナログ-デジタルコンバータ。
【請求項10】
前記関数は非線形である請求項に記載のアナログ-デジタルコンバータ。
【請求項11】
前記関数は、前記値の差分に依存する請求項10に記載のアナログ-デジタルコンバータ。
【請求項12】
前記時間相関ヒストグラム(21、26、30)における値は、少なくとも1つの時間インスタンス分だけシフトされる請求項6から11のいずれか一項に記載のアナログ-デジタルコンバータ。
【請求項13】
前記周期的開始信号に基づいてカウンタ値を生成するランプカウンタ(5)をさらに備える請求項に記載のアナログ-デジタルコンバータ。
【請求項14】
前記カウンタ値に基づいて前記ランプ信号を生成するデジタル-アナログコンバータ(6)をさらに備える請求項13に記載のアナログ-デジタルコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略として、アナログ-デジタルコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる飛行時間(タイムオブフライト)の原理に基づき得る光飛行時間測定の種々の方法が周知となっており、その場合、飛行時間に基づいて物体までの距離を特定するために、放射されて物体によって反射される光信号の飛行時間が測定される。
【0003】
いわゆるLIDAR原理(光検出及び測距)に基づくセンサが、特に自動車分野において使用され、その場合、周囲領域を走査するためにパルスが周期的に放射され、反射パルスが検出される。対応する方法及びデバイスが、例えば、特許文献1から知られている。
【0004】
タイムオブフライト測定の場合、特に、LIDAR測定の場合、異なるアナログ信号をモニタリングし、それらを高い走査速度で走査する必要がある。例えば、光測定のためにはフォトダイオードによって送信されるアナログ信号が走査されるべきであり、又はモニタリングのためにはレーザー若しくはレーザーダイオードの電流及び/若しくは電圧信号がそれぞれ走査されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/081294号
【発明の概要】
【0006】
アナログ信号の走査についての解決手段が従来技術から知られているとしても、本発明の課題はアナログ-デジタルコンバータを提供することである。
【0007】
請求項1によるアナログ-デジタルコンバータが、この課題を解決する。
【0008】
第1の態様によると、本発明は、
アナログ信号を受信するためのアナログ入力部と、
第1の時間-デジタルコンバータと、
ヒストグラムブロックと、を備え、第1の時間-デジタルコンバータはランプ信号に基づいてアナログ信号を走査し、出力をヒストグラムブロックに送出し、ヒストグラムブロックはそれに基づいて時間相関ヒストグラムを生成する、アナログ-デジタルコンバータを提供する。
【0009】
また、発明の有利な設計を、従属請求項、図面、本発明の好適な例示的実施形態の以下の記載に基づいて説明する。
【0010】
記載したように、一部の例示的実施形態は、
アナログ信号を受信するためのアナログ入力部と、
第1の時間-デジタルコンバータと、
ヒストグラムブロックと、を備え、第1の時間-デジタルコンバータはランプ信号に基づいてアナログ信号を走査し、出力をヒストグラムブロックに送出し、ヒストグラムブロックはそれに基づいて時間相関ヒストグラムを生成する、アナログ-デジタルコンバータ(以下、「ADコンバータ」という)に関する。
【0011】
上述したように、特にLIDAR測定の場合には、異なるアナログ信号をモニタリングしてそれらを高い走査速度で走査する必要がある。例えば、光測定のためにはフォトダイオードによって送信されるアナログ信号が走査されるべきであり、又はモニタリングのためにはレーザー若しくはレーザーダイオードの電流及び/若しくは電圧信号がそれぞれ走査されるべきである。したがって、一部の例示的実施形態では、ADコンバータはフォトダイオードのアナログ信号又はレーザー(ダイオード)などによる電圧又は電流のAD変換に使用され、それは対応のデバイス、例えば、自動車の分野で使用される、例えば、LIDAR測定などのためのデバイスに提供され得る。ただし、本発明は、これらの場合に限定されない。したがって、一部の例示的実施形態は、光源(例えば、レーザー)によって放射されて物体によって反射される光パルスを検出するために、例えば、SPAD(シングルフォトンアバランシェダイオード)技術、CAPD(電流アシスト型フォトダイオード)技術、CMOS(相補型金属酸化物半導体)技術などに基づく検出器又はセンサを備えるデバイスにも関し、本発明のADコンバータはそのようなデバイスで使用可能である。したがって、そのようなデバイスは、さらに、放射された光パルスの飛行時間を特定し、それに基づいて、例えば、手段と物体の間の距離、物体の三次元画像などを特定するように構成され得る。一部の例示的実施形態の場合、距離の特定は、いわゆるTCSPC(時間相関単一光子計数)測定原理に基づき、特に、例示的実施形態の場合、それはLIDARに基づく。記載される手段、デバイス又はADコンバータは、自律運転される乗り物(自動車)においてそれぞれ使用可能である。
【0012】
特に、LIDAR測定の場合のレーザー電流パルスは2ナノ秒と10ナノ秒の間の範囲となり得るので、周波数1GHzから5GHzのADコンバータが旧来的には必要であった。この種のADコンバータは通常は高価であり、消費電力が高い(例えば、500mW超)。
【0013】
これに対して、高速時間-デジタルコンバータが一般に知られており、例えば、500ピコ秒よりも良好な時間分解能を有し得るので、第1の時間-デジタルコンバータ(「TDC」ともいう)は、事実上公知であるこの種のTDCに基づくものとなり得る。したがって、一部の例示的実施形態の場合、電流信号又は電圧信号のようなアナログ信号は、高いコスト効率でかつ高い時間分解能で光源によってデジタル化可能となる。
【0014】
第1のTDCはアナログ信号に基づいて対応の出力を送出し、その出力は、通常、走査の基準としてランプ信号を用いることでアナログ信号を特徴付ける時間相関デジタル値を含む。
【0015】
ヒストグラムブロックは時間相関ヒストグラムを生成し、そのビンは開始時間を基準として開始時間に対するタイムラグを表し、第1のTDCの出力の対応する値が各ビンに充填される。
【0016】
したがって、一部の例示的実施形態の場合、周期的入力信号(アナログ信号)の振幅はランプ信号と比較されることになり、その形態の周期的入力信号が複数の走査サイクルにおいて逐次走査されることになる。
【0017】
一部の例示的実施形態の場合、ヒストグラムブロックは、時間ジッタの影響を軽減するために、時間相関ヒストグラムを補正するように構成される。時間ジッタによって、第1のTDCの出力の値が「誤り」(例えば、時間の観点で早すぎる又は遅すぎる)に関連付けられることになり得る。ヒストグラムブロックは、時間相関ヒストグラムにおいて、そのような時間シフト及び/又は高過ぎる若しくは低過ぎる関連値を少なくとも部分的に補正することができる。その補正は、時間ジッタの影響が完全に補償され得るという意味で、ここでは完全な補正を必ずしも意味しないが、それは部分的補正を含み、その場合、例えば、時間ジッタの影響が少なくとも部分的に軽減される。
【0018】
一部の例示的実施形態の場合、時間ジッタの影響によって第1の時間-デジタルコンバータの出力には時間シフトされた値がもたらされ、その影響が少なくとも部分的に軽減され得る。
【0019】
一部の例示的実施形態の場合、ヒストグラムブロックは、異なる出力からの値を合成する。第1のTDCは、例えば、逐次の出力を送出し、ヒストグラムブロックはそのような異なる連続出力からの値を合成することができる。
【0020】
例えば、出力の最大値が時間相関ヒストグラムに充填されるように値が合成され得る。例えば、時間相関ヒストグラムの同じビンに対する第2の出力が、第1の出力から生じる既に利用可能な値よりも高い値を含む場合、利用可能な値は第2の出力の高い方の値によって置換される。
【0021】
一方、平均値が時間相関ヒストグラムに充填され、それにより、例えば、時間相関ヒストグラムの特定のビンについての前出力の値及び現出力の値の平均が時間相関ヒストグラムに充填されるように、値が合成されてもよい。
【0022】
一部の例示的実施形態の場合、値は関数に基づいて合成され、関数は非線形であってもよく、それは一般に、一部の例示的実施形態の場合における時間ジッタの影響の、より細かい補正、すなわち、それぞれより細かく調整され又は適合された補正をもたらし得る。関数は、値の差分に依存し得るものであり、それにより、例えば、異なる出力間のより大きな差分の場合に、より強い補正が行われる。
【0023】
一部の例示的実施形態の場合、時間相関ヒストグラムの値が少なくとも1つの時間インスタンス分だけシフトされる。これにより、時間ジッタによってもたらされる走査値のシフトが(少なくとも部分的に)補償され得る。
【0024】
一部の例示的実施形態の場合、ADコンバータは、周期的開始信号を受信するための開始信号入力部をさらに備える。周期的開始信号は、例えば、パルス生成器によって生成可能であり、ADコンバータに送出可能である。周期的開始信号は(第1の)TDC及び/又はヒストグラムブロックに送出されてもよく、そして、それらは同様に開始信号を用いて測定サイクルを開始する。
【0025】
一部の例示的実施形態の場合、ADコンバータは、ランプ信号を生成するランプ生成器をさらに備える。ランプ生成器は、例えば、周期的開始信号に基づいてカウンタ値を生成するランプカウンタを有する。一部の例示的実施形態の場合、ADコンバータ(又はランプ生成器)は(それぞれ)、カウンタ値に基づいてランプ信号を生成するデジタル-アナログコンバータをさらに備える。
【0026】
一部の例示的実施形態の場合、アナログ-デジタルコンバータは、ランプ信号とアナログ信号とを比較してコンパレータ信号を第1の時間-デジタルコンバータに出力するコンパレータをさらに備える。
【0027】
一部の例示的実施形態の場合、アナログ-デジタルコンバータは第2の時間-デジタルコンバータをさらに備え、第1の時間-デジタルコンバータはアナログ信号がランプ信号を上回る時間間隔を捕捉し、第2の時間-デジタルコンバータはアナログ信号がランプ信号を下回る時間間隔を捕捉する。第1及び第2のTDCの対応の出力はヒストグラムブロックに送出され、そして、ヒストグラムブロックは、それに基づいて、その後にさらに評価可能な時間相関ヒストグラムを生成する。ヒストグラムブロックは、例えば、ガウス関数、正弦関数などを時間相関ヒストグラムの推移に適応させることで、例えば、時間相関ヒストグラムに基づいて生成する波形を出力する。
【0028】
上記又はここにそれぞれ説明する方法のステップは、特にここに開示されるように、ADコンバータを動作させる方法の主題でもあり得る。
【0029】
一部の例示的実施形態は、プロセッサ又はコンピュータ上で稼働する場合にここに記載する方法が実行されることになる命令を受信する(コンピュータ)プログラムにも関する。
【0030】
一部の例示的実施形態は、プロセッサ又はコンピュータ上で稼働する場合にここに記載するプログラム又は方法がそれぞれ実行されることになるプログラム又は命令をそれぞれ受信するコンピュータ可読媒体にも関する。
【0031】
本発明の例示的実施形態を、例示的態様で添付図面を参照してここに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】アナログ-デジタルコンバータの例示的実施形態の回路図を示す。
図2】TDCの出力及びTCヒストグラムを示す。
図3】時間ジッタの影響下でのTDCの出力及びTCヒストグラムを示す。
図4】時間ジッタの影響下でのTDCの出力及びTCヒストグラムを示し、TCヒストグラムは補正される。
図5】時間ジッタの影響あり(中央)及びなし(左)でのTCヒストグラムを示し、補正されたTCヒストグラム(右)を示す。
図6】プレ作動信号付きのアナログ-デジタルコンバータの例示的実施形態の回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、アナログ-デジタルコンバータ1(以下、単に「ADコンバータ1」という)の例示的実施形態の回路図を示す。
【0034】
また、上述したように、ADコンバータ1は、一般的に、変化なく周期的にかつ少なくとも2回反復する全ての信号の場合に使用され得る。
【0035】
本発明をそれに限定することなく、本例示的実施形態では、ADコンバータ1は、TCSP測定原理を用いるLIDAR測定システムで使用されるものとする。それにより、使用されるレーザーパルス又はレーザーパルス列は、周期的かつ高周波で、例えば、300メートル範囲で2マイクロ秒ごとに放射され得る。
【0036】
ADコンバータの一般モードの動作は、周期的入力信号がランプ信号と比較されることに基づく。
【0037】
ランプ信号は、比較的遅く、周期的入力信号サイクルに同期していてもよいし、非同期であってもよい。TDC(時間-デジタルコンバータ)は各周期についてランプ信号が交差される時点を測定し、測定値は、以下でもより詳細に記載される時間相関ヒストグラムに書き込まれる。
【0038】
ADコンバータ1は、変換されるアナログ信号が入力されるアナログ入力部2を有し、例えば、パルス生成器から発生し、LIDAR測定システムに対する光パルスの生成にも使用される周期的開始信号又はパルス信号がそれぞれ印加される開始信号入力部3を有する。
【0039】
ADコンバータ1は、アナログ入力部2で受信されるアナログ信号をアナログランプ信号と比較するコンパレータ4をさらに有する。
【0040】
この例示的実施形態では、アナログランプ信号は、上昇鋸歯形状を有し、約ゼロボルトで開始して、特定の上限値まで上昇する。ランプ信号の上昇継続期間は、ここでは、パルス生成器周波数の固定倍数に基づき、ランプ信号の周波数を「framp」とし、開始信号入力部3を介して受信されるパルス信号の周波数を「fpulse」として、例えば、7ビットの有効分解能で走査を行うためには、framp=1/128×fpulseとなる。
【0041】
ランプ信号は、デジタル-アナログコンバータ6(以下、「DAコンバータ」という)に接続されたランプカウンタ5を介して生成される。
【0042】
ランプカウンタ5は、開始信号入力部3を介して受信される各受信開始パルスで(すなわち、新たな走査サイクルの開始において)そのカウンタを1増加させる。受信された二進値はDAコンバータ6に送出され、DAコンバータ6は対応のランプ信号を二進値から生成し、その二進値が増加するとそれぞれランプ電圧が高くなり又はランプ閾値が高くなる。
【0043】
コンパレータ4の出力は、一方では第1のTDC7に(直接)接続され、他方では第2のTDC8に(間接的に)接続され、コンパレータ信号は最初にインバータ9を通過し、インバータ9はコンパレータ信号を反転してからそれを第2のTDC8に送出する。
【0044】
開始パルスは、同様に、開始信号入力部3から第1のTDC7及び第2のTDC8に送出され、それにより、信号パルスの「開始」が測定サイクルを開始させる。
【0045】
第1のTDC7は、開始信号入力部3から受信された開始信号に対して、アナログ入力部2から発生するアナログ入力信号がランプ信号を超えることによりそれを交差して最上点に達する場合に時間インスタンス(すなわち、時間間隔(タイムインターバル))を測定する。
【0046】
第2のTDC8は、反転コンパレータ信号を受信し、開始信号入力部3から受信された開始信号に対して、アナログ入力部2から発生するアナログ入力信号がランプ信号を下回ることによりそれを交差して最下点に達する場合に時間インスタンス(すなわち、時間間隔(タイムインターバル))を測定する。
【0047】
第1のTDC7及び第2のTDC8の各々は、それらの測定結果(出力値)をヒストグラムブロック10に出力する。
【0048】
この測定処理は、ランプカウンタ5が特定の値に達するまで、及びヒストグラムブロック10に存在する時間相関測定結果がヒストグラムブロック10において評価可能となるまで、実行される。
【0049】
ランプカウンタ5はまた、ランプ閾値に対応する(走査サイクルカウンタ値に対応する)デジタルカウンタ値をヒストグラムブロック10に出力する。ランプ閾値は、最初に低く、処理において上昇する。
【0050】
各測定サイクルの開始時に、全てのヒストグラム値は、ヒストグラムブロック10において「0」に初期化される。
【0051】
アナログ入力信号がランプ信号を上回る時間間隔が、ヒストグラムブロックのヒストグラムに記憶され、異なるランプ電圧を有する全ての測定値が、開始信号によって決定される時点「0」に配向される。それにより、アナログ入力信号は、それがランプ信号を超える場合に、各走査サイクルにおいて時間間隔を0とNの間に有し得る。
【0052】
走査サイクルにおいてアナログ入力信号がランプ信号を超える度に、ヒストグラムのビンの対応の領域がランプカウンタ5の現在のカウンタ値で充填され、アナログ入力信号がランプ信号を上回る場合に、連続サイクルにおいてより小さな値がより大きな値で上書きされる。
【0053】
記載したように、ランプカウンタ5が上限値に達するとランプ生成が有効化され、ヒストグラムブロック10のヒストグラムにおけるデータが評価可能となり、評価後に対応の波形出力11が行われ得る。
【0054】
ランプカウンタ5がリセットされ、ヒストグラムブロック10のヒストグラムが「0」の値で埋まると、測定サイクルは再開される。
【0055】
ここで、ADコンバータ1によって行われ得るそのような測定サイクルを、図2も参照して説明する。図2は、ADコンバータ1のTDC7の出力20を上段に、ヒストグラムブロック10において生成されるようなTCヒストグラム(TC:時間相関)21を下段に示す。
【0056】
この例示的実施形態の場合、6個のランプ値があり、第1のTDC7の出力20は縦軸に6個のランプ値に対する入力を有し、横軸に時間を表示する。第1のTDC7によるアナログ入力信号の走査は、出力20について12個の入力となる。
【0057】
TCヒストグラム21は、完全な測定サイクル後の状態を示す。ここでも、縦軸には6個の異なるランプ値に対応する6個の値があり、開始「0」からの経過時間に応じてビンが横軸に配置される。
【0058】
TCヒストグラム21のビンはアナログ入力信号がランプ信号を上回る度にランプ信号の値で充填され、一方、ビンはアナログ入力信号がランプ信号を下回る時点ではそのままとなる。それにより、TCヒストグラム21の推移は、概ね正弦曲線又はガウス曲線に対応する。
【0059】
以下に図3を参照して説明するように、逐次走査は、時間ジッタに敏感に反応し得る。一部の例示的実施形態の場合、ADコンバータ1のヒストグラムブロック10は図1に従って構成され、それにより、時間ジッタに対する性能が改善される。
【0060】
時間ジッタの影響を図3に示す。図3は、第1のTDC7の出力25を上段に、(補正されない)時間ジッタの影響下でヒストグラムブロック10において作成されるにつれて結果として得られるTCヒストグラム26を下段に示す。
【0061】
符号25aの場合に示すように、負の走査時間ジッタが出力25の走査値「3」に対して発生し、それにより、走査値「3」が25aにおいて時間的に早すぎるタイミングで走査されることになるので、対応するTDC出力信号の開始及び終了が1つの時間インスタンス分だけ左に(前に)シフトされる。
【0062】
符号25bの場合に示すように、正の走査時間ジッタが出力25の走査値「4」に対して発生し、それにより、走査値「4」が25bにおいて時間的に遅すぎるタイミングで走査されることになるので、対応するTDC出力信号の開始及び終了が1つの時間インスタンス分だけ右に(後に)シフトされる。
【0063】
最後に最大値がTCヒストグラム26に入れられるように進めることによって、第3のビンにおける値26aは値「1」(図2参照、そこでは第3のビンは値「1」を有する)から値「3」に増加し、一方、第5のビンにおける値26bは値「4」(図2)から値「2」に減少し、第3~最後のビンの値26cが値「1」(図2)から値「4」に増加する。
【0064】
図2のTCヒストグラム21の推移を図3のTCヒストグラム26の推移と比較すると、TCヒストグラム26は時間ジッタに起因して図2のTCヒストグラム21よりも正弦波パターンに相似しないことが分かる。
【0065】
以下に図4を参照して例示的実施形態を説明する。この場合、時間ジッタに関する感度は、ADコンバータ1のヒストグラムブロック10によって提供され得る以下の対策によって改善される。
【0066】
時間インスタンスTの走査がレベルN(ランプ閾値)で実行されると仮定すると、時間インスタンスTにおけるTCヒストグラム(メモリ)における新たな値はFh(T,N)に等しくなる。
【0067】
ここで、以下の規則(1)が与えられる。
【0068】
前回のヒストグラム値がFh(T,N-1)=N-1である場合には(if)、Fh(T,N)=Nであり、それ以外の場合には(else)、Fh(T,N)=合成(Fh(T,N-1),N)である。
【0069】
図2を参照して説明した方法にこれをさらに当てはめると、値が最大限合成され、すなわち、合成(A,B)=Bであり、言い換えると、ビンの値は常に最大値に設定され、したがって、これは時間ジッタの影響を受け易くなり得る。
【0070】
これに対して、本例示的実施形態の場合では、規則(2)が当てはまり、すなわち、合成(A,B)=(A+B)/2であり、すなわち、新たな値は値A及びBの平均値に対応し、これを「50%合成法」ともいう。
【0071】
他の例示的実施形態の場合、合成(A,B)=切捨て((A+B)/2)が代替として与えられ、それは右への1ビン分のシフトに対応し、端数は無視される。
【0072】
B-A間の差分に依存する非線形イメージング関数が用いられること、及びそれに基づいて、時間ジッタの影響を軽減するためにそれに従ってヒストグラム値が補正されることも、代替の例示的実施形態としてさらに規定され得る。
【0073】
図4は、上段に、図3との関連で既に説明したように、対応の時間ジッタで損なわれた第1のTDC7の出力25を再度示す。
【0074】
図4は、下段に、上記対策、すなわち、規則(1)及び(2)を適用することによって生成される結果として得られるTCヒストグラム30を示し、ここでは、時間ジッタの影響が図3のTCヒストグラム26と比較して軽減される。
【0075】
30aでの走査値(図3における26aの値を参照)は、値「3」(図3における26a)から値「2」(図4における30a)(「1」が当初値(original))に低減される。
【0076】
図2における26bでの値に対応する走査値は、値「3」のままであるので、変化しない(「4」が当初値)。
【0077】
30bでの走査値は、「4」から「3」(「4」が当初値)に低減される。
【0078】
30cでの走査値は、「3.5」(図3における26cを参照)から「2.5」(「1」が当初値)に低減される。
【0079】
ここで、図5は、時間ジッタが近くにある場合の通常の(最大)合成法(中央、TCヒストグラム26)との比較において、規則(1)及び(2)の適用の結果(右側、TCヒストグラム30)並びに時間ジッタがない場合(左側、TCヒストグラム21)を示す。
【0080】
図5から以下をまとめることができる。提案される「50%合成法」(規則(2))はTCヒストグラム30を生成し、TCヒストグラム30は、単に最大値が推定されて時間ジッタに応じて図5の中央に示すTCヒストグラム26を生成するものとして記載した合成法の適用よりも、時間ジッタなしのTCヒストグラム21の当初の推移に近付く。
【0081】
図5の中央に示す最大合成法は、それが時間ジッタ及び信号の形を表すので、ヒストグラムの推移の形を拡げ、個々のビン間の値に対してより大きなステップを生成する傾向にある。
【0082】
50%合成法は、時間ジッタの統計に従って上昇及び下降時間を増加させる傾向にある。
【0083】
図6は、アナログ-デジタルコンバータ40(以下、単にADコンバータ40という)の更なる例示的実施形態の回路図を示す。
【0084】
上記でも規定したように、ADコンバータ40は、一般的に、変化なく周期的にかつ少なくとも2回反復する全ての信号の場合に使用可能であり、基本的には、詳細に上述したADコンバータ1に対応する。
【0085】
一部の例示的実施形態では、入力信号の立上り信号側部(rising signal flank)を走査することが重要である。LIDAR測定システムでは、例えば、光レーザーの先頭信号側部(leading signal flank)を走査することが重要である。
【0086】
したがって、この例示的実施形態の場合、アナログ(入力)信号が変換される前にAD変換を開始するためにプレ作動信号が与えられる。このプレ作動信号は、本発明をこの例に限定することなく、例えば、開始信号の3ns前に送信される。
【0087】
ADコンバータ40は、変換されるアナログ信号が入力されるアナログ入力部41を有し、例えば、パルス生成器から発生し、LIDAR測定システムに対する光パルスの生成にも使用される周期的開始信号又はパルス信号がそれぞれ印加される開始信号入力部51を有する。
【0088】
ADコンバータ40は、記載したように、例えば、開始信号の3ns前に送信されるプレ作動信号が印加されるプレ作動信号入力部42をさらに有する。
【0089】
ADコンバータ40は、アナログ入力部41で受信されるアナログ信号をアナログランプ信号と比較するコンパレータ43をさらに有する。
【0090】
この例示的実施形態では、アナログランプ信号は、上昇鋸歯形状を有し、約ゼロボルトで開始して、特定の上限値まで上昇する。ランプ信号の上昇継続期間は、ここでは、パルス生成器周波数の固定倍数に基づき、ランプ信号の周波数を「framp」とし、プレ作動信号入力部42を介して受信されるパルス信号の周波数を「fpulse」として、例えば、7ビットの有効分解能で走査を行うためには、framp=1/128×fpulseとなる。
【0091】
ランプ信号は、デジタル-アナログコンバータ45(以下、「DAコンバータ」という)に接続されたランプカウンタ44を介して生成される。
【0092】
ランプカウンタ44は、プレ作動信号入力部42を介して受信される各プレ作動信号でカウンタを1だけ増分する。受信二進値はDAコンバータ45に送出され、DAコンバータ45は対応のランプ信号を二進値から生成するので、その二進値が増加するとそれぞれランプ電圧も高くなり又はランプ閾値も高くなる。
【0093】
コンパレータ43の出力は、一方では第1のTDC46に(直接)接続され、他方では第2のTDC47に(間接的に)接続され、コンパレータ信号は最初にインバータ48を通過し、インバータ48はコンパレータ信号を反転してからそれを第2のTDC47に送出する。
【0094】
プレ作動信号は、同様に、プレ作動信号入力部42から第1のTDC46及び第2のTDC47に送出され、それにより、プレ作動信号が走査を開始させる。
【0095】
第1のTDC46は、プレ作動信号入力部から受信されたプレ作動信号に対して、アナログ入力部41から発生するアナログ入力信号がランプ信号を超えることによりそれを交差して最上点に達する場合に時間インスタンス(または、時間間隔:time intervals)を測定する。
【0096】
第2のTDC47は、反転コンパレータ信号を受信し、プレ作動信号入力部42から受信されたプレ作動信号に対して、アナログ入力部41から発生するアナログ入力信号がランプ信号を下回ることによりそれを交差して最下点に達する場合に時間インスタンス(または、時間間隔)を測定する。
【0097】
第1のTDC46及び第2のTDC47の各々は、それらの測定結果(出力値)をシンクロナイザ50に出力し、シンクロナイザ50はTDC46及び47の出力を開始信号51と同期させる。
【0098】
シンクロナイザ50は、t_diff(SC)をシンクロナイザ50によって測定される開始信号とプレ作動信号の間のタイムラグとし、t_Startを開始信号の時点とし、t_pre-activationをプレ作動信号の時点として、t_diff(SC)=t_Start-t_pre-activationによって、各測定サイクルについてプレ作動信号と開始信号の間のタイムラグを特定する。
【0099】
t_Start及びt_pre-activationの時点は、開始信号とプレ作動信号の最大限測定されたタイムラグと少なくとも同等の大きさの時間t_nominal(すなわち、t_nominal≧max(t_diff(SC))によって特定される。t_nominalの値は、各測定サイクルにおける一定時間値としてヒストグラムブロック49に記憶される。
【0100】
シンクロナイザ50は、一定時間値t_offset(SC)=t_nominal-t_diff(SC)がTDC46及び47の出力値に加算されることで、各測定サイクルの測定値を同期させる。
【0101】
この測定処理は、ランプカウンタ44が特定の値に達し、ヒストグラムブロック49に存在する時間相関測定結果がヒストグラムブロック49において評価可能となるまで、実行される。
【0102】
ランプカウンタ44はまた、ランプ閾値に対応する(走査サイクルカウンタ値に対応する)デジタルカウンタ値をヒストグラムブロック49に出力する。ランプ閾値は、最初に低く、処理において上昇する。
【0103】
各測定サイクルの開始時に、全てのヒストグラム値は、ヒストグラムブロック49において「0」に初期化される。
【0104】
アナログ入力信号がランプ信号を上回る時間間隔が、ヒストグラムブロック49のヒストグラムに記憶され、異なるランプ電圧を有する全ての測定値が、プレ作動信号によって決定される時点「0」に配向される。
【0105】
アナログ入力信号がランプ信号を超える度に、ヒストグラムのビンの対応の領域がランプカウンタ44の現在のカウンタ値で充填され、アナログ入力信号がランプ信号を上回る場合に、連続サイクルにおいてより小さな値がより大きな値で上書きされる。
【0106】
記載したように、ランプカウンタ44が上限値に達するとランプ生成が有効化され、ヒストグラムブロック49のヒストグラムにおけるデータが評価可能となり、評価後に対応の波形出力52が行われ得る。
【0107】
ランプカウンタ44がリセットされ、ヒストグラムブロック49のヒストグラムが「0」値で充填されることで、測定サイクルは再開される。
【符号の説明】
【0108】
1 アナログ-デジタルコンバータ
2 アナログ入力部
3 開始信号入力部
4 コンパレータ
5 ランプカウンタ
6 DAコンバータ
7 第1のTDC
8 第2のTDC
9 インバータ
10 ヒストグラムブロック
11 波形出力
20 第1のTDC7の出力
21 TCヒストグラム
25 時間ジッタありの第1のTDC7の出力
26 TCヒストグラム
30 TCヒストグラム
40 アナログ-デジタルコンバータ
41 アナログ入力部
42 プレ作動信号入力部
43 コンパレータ
44 ランプカウンタ
45 デジタル-アナログコンバータ
46 第1のTDC
47 第2のTDC
48 インバータ
49 ヒストグラムブロック
50 シンクロナイザ
51 開始信号入力部
52 波形出力
図1
図2
図3
図4
図5
図6