(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】フィルム部材保持ステージおよびフィルム部材検査装置。
(51)【国際特許分類】
B65H 20/14 20060101AFI20231013BHJP
G01N 21/892 20060101ALI20231013BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20231013BHJP
B65H 20/10 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B65H20/14
G01N21/892 A
G01N21/84 C
B65H20/10 B
(21)【出願番号】P 2022106103
(22)【出願日】2022-06-30
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591114641
【氏名又は名称】株式会社ヒューテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 淳二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊平
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-246198(JP,A)
【文献】特開2016-113718(JP,A)
【文献】実開昭63-142355(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 20/14
G01N 21/892
G01N 21/84
B65H 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム部材を引っ張ることで、該フィルム部材を平面状態で保持することが可能なフィルム部材保持ステージであって、
該フィルム部材保持ステージは、前記フィルム部材の幅方向の両端部または該幅方向に垂直な方向の両端部の少なくともいずれかを保持する保持ブロック対を有し、
該保持ブロック対を構成する保持ブロックは、
前記フィルム部材の保持面と、
該保持面の、前記フィルム部材の内側方向に、前記保持面よりも高い位置で前記フィルム部材と接する凸面と、を有する、
ことを特徴とするフィルム部材保持ステージ。
【請求項2】
前記保持面において、
前記保持ブロックの長手方向の端部の保持力が、前記保持ブロックの長手方向の中央部の保持力よりも低い、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム部材保持ステージ。
【請求項3】
前記保持面には、エア吸引のための吸引口が複数設けられ、
前記保持ブロックの長手方向の単位長さ当たりにおいて、
前記保持ブロックの長手方向の端部に設けられている吸引口の面積が、前記保持ブロックの長手方向の中央部に設けられている吸引口の面積よりも小さいことにより、
前記保持ブロックの長手方向の端部の保持力が、前記保持ブロックの長手方向の中央部の保持力よりも低い、
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルム部材保持ステージ。
【請求項4】
前記保持ブロックは、
前記保持面を有する吸引口保有部材と、
該吸引口保有部材の吸引口へ接続するエア通路を内部に配し、前記吸引口保有部材を支持する支持部材と、
前記凸面を有する突出部材と、を含んで構成され、
前記保持ブロックの上部において、前記突出部材と、前記吸引口保有部材との間に補助吸引口が設けられている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフィルム部材保持ステージ。
【請求項5】
前記支持部材は、
前記フィルム部材の内側に位置する第1支持部材と、
該第1支持部材と対向し、前記エア通路を形成する第2支持部材と、を含み、
前記補助吸引口が前記エア通路と連通している、
ことを特徴とする請求項4に記載のフィルム部材保持ステージ。
【請求項6】
請求項1に記載のフィルム部材保持ステージを有する、
ことを特徴とするフィルム部材検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム部材保持ステージおよびフィルム部材検査装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、フィルム部材を平面状態で保持するためのフィルム部材保持ステージおよびこのフィルム部材保持ステージを有するフィルム部材検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性フィルムの表面にはその製造工程で発生する、傷、凹み、またはフィッシュアイなどの欠陥が存在する場合があり、フィルム部材検査装置はその欠陥を検出する、または欠陥の高さなどの特徴量を測定する検査装置である。フィルム部材検査装置において欠陥検出が行われる際、被測定対象であるフィルム部材は、たるみおよび皺の発生を抑えながら保持することが必要となる。フィルム部材検査装置は、このたるみ等の発生を抑えるためのフィルム部材保持ステージを有することがある。
【0003】
特許文献1では、フィルム部材保持ステージを有するフィルム部材検査装置が開示されている。このフィルム部材保持ステージは、フィルムを載せるテーブルが複数設けられている。フィルムはこのテーブルに吸着されることで固定され、対向するテーブル同士が離間する方向に動作することでフィルムのたるみ等の発生が抑えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに特許文献1では、テーブルの長手方向の比較的広い範囲に亘る、フィルムのたるみの発生を抑えることができるが、テーブルの長手方向の比較的狭い範囲に発生する皺を抑制する機構がないため、テーブルを離間した際に、吸着力の局所的変化(例えば、エア吸引口、離間時の隙間)に起因して発生したフィルムの皺を抑制できないという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、皺の発生を抑制する機構またはフィルムの中央部と端部とで保持力を可変にできる機構を備えることで、フィルム部材の全面に亘って皺の発生を抑えることが可能なフィルム部材保持ステージおよびフィルム部材検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のフィルム部材保持ステージは、フィルム部材を引っ張ることで、該フィルム部材を平面状態で保持することが可能なフィルム部材保持ステージであって、該フィルム部材保持ステージは、前記フィルム部材の幅方向の両端部または該幅方向に垂直な方向の両端部の少なくともいずれかを保持する保持ブロック対を有し、該保持ブロック対を構成する保持ブロックは、前記フィルム部材の保持面と、該保持面の、前記フィルム部材の内側方向に、前記保持面よりも高い位置で前記フィルム部材と接する凸面と、を有することを特徴とする。
第2発明のフィルム部材保持ステージは、第1発明において、前記保持面において、前記保持ブロックの長手方向の端部の保持力が、前記保持ブロックの長手方向の中央部の保持力よりも低いことを特徴とする。
第3発明のフィルム部材保持ステージは、第2発明において、前記保持面には、エア吸引のための吸引口が複数設けられ、前記保持ブロックの長手方向の単位長さ当たりにおいて、前記保持ブロックの長手方向の端部に設けられている吸引口の面積が、前記保持ブロックの長手方向の中央部に設けられている吸引口の面積よりも小さいことにより、前記保持ブロックの長手方向の端部の保持力が、前記保持ブロックの長手方向の中央部の保持力よりも低いことを特徴とする。
第4発明のフィルム部材保持ステージは、第1発明から第3発明のいずれかにおいて、前記保持ブロックは、前記保持面を有する吸引口保有部材と、該吸引口保有部材の吸引口へ接続するエア通路を内部に配し、前記吸引口保有部材を支持する支持部材と、前記凸面を有する突出部材と、を含んで構成され、前記保持ブロックの上部において、前記突出部材と、前記吸引口保有部材との間に補助吸引口が設けられていることを特徴とする。
第5発明のフィルム部材保持ステージは、第4発明において、前記支持部材は、前記フィルム部材の内側に位置する第1支持部材と、該第1支持部材と対向し、前記エア通路を形成する第2支持部材と、を含み、前記補助吸引口が前記エア通路と連通していることを特徴とする。
第6発明のフィルム部材検査装置は、第1発明のフィルム部材保持ステージを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、フィルム部材を保持する保持ブロックが、フィルム部材の保持面と、この保持面の、フィルム部材の内側方向に、保持面よりも高い位置でフィルム部材と接する凸面と、を有することにより、フィルム部材を引っ張った際に、フィルム部材と凸面とを接触させ、フィルム部材およびそこに発生した皺に対して保持面に垂直な方向の力がかかるので、保持面における保持力の局所的変化に起因して発生した皺を平坦に均すことができ、フィルム部材に皺が発生することを抑制できる。
第2発明によれば、保持ブロックの長手方向の端部の保持力が、その中央部の保持力よりも低いことにより、フィルム部材の端部に引っ張り力が適切に作用し、端部に皺が発生するのを防止でき、フィルム部材全体に亘って皺が発生するのを防止できる。
第3発明によれば、端部に設けられている吸引口の面積が、中央部に設けられている吸引口の面積よりも小さいことで、コストのかからないシンプルな方法で、端部の保持力を中央部の保持力よりも低くできる。
第4発明によれば、保持ブロックにおいて、突出部材と吸引口保有部材との間に補助吸引口が設けられていることにより、吸引口よりも内側においてフィルム部材が吸引口保有部材と接するようになるので、さらに確実に、フィルム部材を引っ張った際に、フィルム部材と凸面とを接触させ、フィルム部材およびそこに発生した皺に対して保持面に垂直な方向の力がかかるので、保持面における保持力の局所的変化に起因して発生した皺を平坦に均すことでフィルム部材に皺が発生することを抑制できる。
第5発明によれば、支持部材内のエア通路が、第1支持部材と第2支持部材とにより形成されていることにより、コストのかからないシンプルな方法で、フィルム部材と凸面とを接触させることができ、フィルム部材に皺が発生することを抑制できる。
第6発明によれば、フィルム部材検査装置が所定のフィルム部材保持ステージを有することにより、検査または測定の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るフィルム部材保持ステージを構成する保持ブロックの長手方向から見た断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るフィルム部材保持ステージを含むフィルム部材検査装置の概略側面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るフィルム部材保持ステージの斜視図である。
【
図6】
図1の保持ブロックの中央部の平面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るフィルム部材保持ステージを構成する保持ブロックの平面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係るフィルム部材保持ステージを構成する保持ブロックの平面図である。
【
図9】本発明の第4実施形態に係るフィルム部材保持ステージを構成する保持ブロックの平面図である。
【
図10】本発明の第5実施形態に係るフィルム部材保持ステージを構成する保持ブロックの平面図である。
【
図11】本発明の第6実施形態に係るフィルム部材保持ステージを構成する保持ブロックの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのフィルム部材保持ステージおよびフィルム部材検査装置を例示するものであって、本発明はフィルム部材保持ステージおよびフィルム部材検査装置を以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0011】
(フィルム部材検査装置30)
図2には、本発明の実施形態に係るフィルム部材保持ステージ10を含むフィルム部材検査装置30の概略側面図を示す。例えばこのフィルム部材検査装置30は、フィルム部材34の表面または内部を光学的手法により検査する装置であって、表面等に形成された傷などを検出することができるものである。また、
図2においてフィルム部材34は、フィルム部材検査装置30によって表面の欠陥等が検査される被検査対象であり、巻き出しロール35から供給されると共に、検査が終了すると巻き取りロール36に巻き取られる。なおフィルム部材検査装置30の構成は、以下の構成に限定されるものではない。
【0012】
図2に示すように、フィルム部材検査装置30は、フィルム部材34において検査を行う表面側に、フィルム部材34の表面に対して光を照射する投光装置31と、フィルム部材34の表面の検査位置Lを撮影する撮影装置33と、撮影装置33によって撮影された信号に基づいて傷等の有無を判断する解析装置32とを備えている。また、フィルム部材検査装置30は、フィルム部材34の裏面側に、フィルム部材保持ステージ10を備えている。なお、解析装置32は、投光装置31および撮影装置33と電気的に接続されており、両者の作動を制御する機能も有している。加えて解析装置32は、フィルム部材保持ステージ10とも電気的に接続される場合がある。この場合、解析装置32は、検査ステージ10の作動を制御する機能も有する。
【0013】
撮影装置33は、撮像部と、レンズを備えている構成が好ましい。撮像部は、投光装置31からフィルム部材34の表面に照射された光のうちフィルム部材34の表面で反射した光を受光するものであり、例えば、ラインセンサ等のように複数の受光素子を有している構成が好ましい。レンズは、反射光を集光して、撮像部の受光素子に集光した光を入射する。
【0014】
投光装置31は光源を有している。この光源はフィルム部材34の幅方向(
図2では紙面の奥行き方向)に沿って延びたものであり、フィルム部材34の幅方向と平行な略直線状の光を放出することができるものである。
【0015】
光源は光を放出する発光体を備えている構成が好ましい。この発光体は、例えば、フィルム部材34の幅方向と平行に配設された棒状の蛍光灯、またはフィルム部材34の幅方向に沿って複数のLED素子(発光体)が一列に並んで配設された回路などをあげることができるが、とくに限定されない。
【0016】
(第1実施形態のフィルム部材保持ステージ10)
図3には、本発明の実施形態に係るフィルム部材保持ステージ10の斜視図を示す。フィルム部材保持ステージ10は、フィルム部材34を平面状態で保持する。
図3ではフィルム部材34は、巻き出しロール35から巻き取りロール36へ移動させられる途中で検査される長尺物として記載されているが、フィルム部材34はこれに限定されない。例えば、フィルム部材保持ステージ10の大きさに合わせてカットされたものもフィルム部材34に含まれる。また、「平面状態」とは、実質的に検査が可能となる程度の「平面」となる状態を意味し、厳密に「平面」であることを意味しない。
【0017】
本実施形態に係るフィルム部材保持ステージ10は、フィルム部材34をエア吸引により保持するための保持ブロック11を有する。
図3では保持ブロック11は、フィルム部材34の幅方向の両端部を保持する第1保持ブロック11aおよび第2保持ブロック11b、ならびにその幅方向に垂直な方向の両端部を保持する第3保持ブロック11cおよび第4保持ブロック11dと、を含んで構成されている。そして、幅方向の両端部を保持する第1保持ブロック11aおよび第2保持ブロック11bは、2つで保持ブロック対を構成するとともに、幅方向に垂直な方向の両端部を保持する第3保持ブロック11cおよび第4保持ブロック11dは、2つで保持ブロック対を構成する。また、本実施形態に係るフィルム部材保持ステージ10は、それぞれの保持ブロック対を構成する2つの保持ブロック11に挟まれた位置に、エア吸引するまでにできるだけフィルム部材34がたわまないように、フィルム部材34の保持を補助するための保持補助テーブル18を有する。
【0018】
図示していないが、第1保持ブロック11a~第4保持ブロック11dは、それぞれ真空ポンプに連結され、真空ポンプが働くことにより、エア吸引によりそれぞれの保持ブロック11の上面にフィルム部材34を保持する。そして本実施形態では、対を構成する第1保持ブロック11aおよび第2保持ブロック11b、並びに第3保持ブロック11cおよび第4保持ブロック11dが、それぞれ対ごとに離間する方向(
図3で白抜き矢印の示す方向)に動作することで、フィルム部材34が平面状態で保持される。
【0019】
なお、本実施形態では、4つの保持ブロック11がそれぞれ離間する方向に動作する場合を説明したが、これに限定されない。例えば対となる保持ブロック11の一方のみが離間する方向へ動作する場合、または保持ブロック11の一方の対のみを構成する保持ブロック11が動作する場合もある。さらに詳細に述べると本実施形態では、保持ブロック11のエア吸引力、離間する方向への引っ張り力、エア吸引動作および離間する方向への動作は、4つの保持ブロック11に対して個別に制御可能としている。この構成により、フィルム部材34の厚みまたは伸縮性などの特性に応じてエア吸引力および離間する方向への引っ張り力を変更することが可能である。なお、本発明に係るフィルム部材保持ステージ10はこの構成に限定されない。
さらにエア吸引動作および離間する方向への動作に関して、例えば、まず、第1保持ブロック11aおよび第2保持ブロック11bを吸引・離間し、その後、第3保持ブロック11cおよび第4保持ブロック11dを吸引しながら、第1保持ブロック11aおよび第2保持ブロック11bの吸引を解除し、第3保持ブロック11cおよび第4保持ブロック11dを離間するといった具合に、フィルム部材34のたるみ等が改善されるまで繰り返し離間する動作を実施することも可能である。なお、以下本明細書において、特記した場合を除き、「内側」は、
図3の白抜き矢印の根本側を意味し、「外側」は白抜き矢印の先端側を意味する。
【0020】
図1には、本実施形態のフィルム部材保持ステージ10を構成する保持ブロック11の長手方向から見た断面図を、
図4には保持ブロック11の平面図を、
図5には保持ブロック11の端部の平面図を、
図6には保持ブロック11の中央部の平面図を示す。
図1は、
図4のI矢視の断面図であり、この
図1においては、紙面の左側がフィルム部材34の内側である。
【0021】
図1に示すように、保持ブロック11は、ベースブロック12と、このベースブロック12の上に設けられた第1支持部材13と、この第1支持部材13と対向する位置に設けられた第2支持部材14と、第2支持部材14と接触するように設けられた突出部材15と、フィルム部材34が保持される保持面16aを有する吸引口保有部材16と、を含んで構成されている。ベースブロック12、第1支持部材13、第2支持部材14、突出部材15は、いずれも
図1の紙面において、奥行き方向に長い板形状をしている。
【0022】
ベースブロック12上には、第1支持部材13および第2支持部材14が、あらかじめ定められた距離を保持するように設けられており、第1支持部材13および第2支持部材14との間が、エア通路17となる。第1支持部材13は、図示していないボルトにより、下側からベースブロック12と結合されている。第2支持部材14とベースブロック12との結合も同じである。
【0023】
保持ブロック11内のエア通路17が、第1支持部材13と第2支持部材14とにより形成されていることにより、コストのかからないシンプルな方法で、フィルム部材34が保持面16aからずれることが抑制される。
【0024】
なお、本実施形態では、第1支持部材13と第2支持部材14と、によりエア通路17を形成するように、保持ブロック11を構成したが、保持ブロック11の構成はこれに限定されない。例えば、保持ブロック11の主要部材を1つの部材から構成し、その部材の長手方向に通した孔をエア通路17とすることも可能である。
【0025】
吸引口保有部材16は、その断面がL字状の板状部材であり、第1支持部材13の外側に接触するように設けられている。また、吸引口保有部材16は、エア通路17の上部にエア吸引のための吸引口20が複数設けられている。
【0026】
第2支持部材14と接触するように設けられた突出部材15は、その上部にフィルム部材34と接する凸面15aを有している。本実施形態では、この凸面15aは、吸引口保有部材16の保持面16aよりも0.1mmから10mm高くなっているのが好ましく、特に0.5から2mm高くなると皺を延ばす効果が高くなり、吸引口からフィルムが外れないため好ましい。
【0027】
エア吸引によりフィルム部材34を保持する保持ブロック11が、フィルム部材34の保持面16aと、この保持面16aの、フィルム部材34の内側方向に、保持面16aよりも高い位置でフィルム部材34と接する凸面15aと、を有することにより、フィルム部材34を引っ張った際に、フィルム部材34と凸面15aとを接触させ、フィルム部材34およびそこに発生した皺に対して保持面16aに垂直な方向の力がかかるので、保持面16aにおける保持力の局所的変化に起因して発生した皺を平坦に均すことができ、フィルム部材34に皺が発生することを抑制できる。
【0028】
なお、
図1では突出部材15の凸面15aと、突出部材15の側面との間には面取りが記載されていないが、C面または丸面の面取りが行われていることが好ましい。なお、突出部材15の凸部の側面から見た形状は、
図1で示した四角形に限定されない。例えば、三角形、多角形、または円形であっても問題ない。
【0029】
また
図1に示すように、保持ブロック11の上部において、吸引口保有部材16と、突出部材15との間に補助吸引口21が設けられるのが好ましい。本実施形態では、この補助吸引口21は、突出部材15の奥行き方向に沿って、吸引口保有部材16と突出部材15と、により溝を形成するように設けられている。また第2支持部材14の上面と、吸引口保有部材16との間には、エア通路17と補助吸引口21とを連通するための連通路22が設けられている。
【0030】
保持ブロック11において、突出部材15と吸引口保有部材16との間に補助吸引口21が設けられていることにより、吸引口20よりも内側においてフィルム部材34が吸引口保有部材16と接するようになるので、さらに確実に、フィルム部材34を引っ張った際に、フィルム部材34と凸面15aとを接触させ、フィルム部材34およびそこに発生した皺に対して保持面16aに垂直な方向の力がかかるので、保持面16aにおける保持力の局所的変化に起因して発生した皺を平坦に均すことでフィルム部材34に皺が発生することを抑制できる。
【0031】
図4から
図6に示すように、保持ブロック11の上面には、エア吸引を行うための吸引口20が複数設けられている。吸引口20は、具体的には保持ブロック11を構成する吸引口保有部材16に設けられている。本実施形態では、吸引口20は保持ブロック11の長手方向の中央部および両端部に設けられている。また端部では比較的直線部の短い長孔である第1吸引口20aが多く設けられ、中央部では比較的直線部の長い長孔である第2吸引口20bが設けられている。なお、本実施形態において、「端部」とは、保持ブロック11の長手方向の端から、あらかじめ定められた長さを意味する。例えばこの長さは、保持ブロック11の長手方向の長さの1割から3割、より好ましくは2割とすることができる。「中央部」とは、保持ブロック11の長手方向において、「端部」以外の部分を意味する。なお、「端部」、「中央部」の定義はこれに限定されない。また、第1吸引口20aと第2吸引口20bとは、形状が異なる吸引口20が2種類設けられていることを意味し、第1吸引口20aおよび第2吸引口20bの形状は、
図4~
図6に示す形状に限定されない。加えて吸引口20の形状は、2種類だけでなく3種類以上とすることも可能である。
【0032】
フィルム部材34への保持力は、内部のエア通路17の圧力が一定である場合、吸引口20の開口面積に比例する。本実施形態では、保持ブロック11の長手方向の単位長さ当たりに設けられる吸引口20の開口面積が、保持ブロック11の端部が中央部よりも小さくなっている。これにより端部の保持力が中央部の保持力よりも小さくなる。
【0033】
保持ブロック11の長手方向の端部の保持力が、その中央部の保持力よりも低いことにより、フィルム部材34の端部に引っ張り力が適切に作用し、端部に皺が発生するのを防止でき、フィルム部材34全体に亘って皺が発生するのを防止できる。
【0034】
また、端部に設けられている吸引口20の面積が、中央部に設けられている吸引口20の面積よりも小さいことで、コストのかからないシンプルな方法で、端部の保持力を中央部の保持力よりも低くできる。
【0035】
なお本実施形態では、端部の開口面積と中央部の開口面積とが差を有することにより保持力の差が生じるようにしたが、保持力の差を生じさせる方法はこれに限定されない。例えば中央部のエア通路17の気圧と、端部のエア通路17の気圧と、の間に差を生じさせることで保持力の差が生じるようにすることも可能である。
【0036】
また本実施形態では、エアによる吸引の場合について説明したが、フィルム部材34の保持はこれに限定されない。例えば、静電気による保持、マグネットによりフィルム部材34をその上側から押さえつけることによる保持、ばね等により挟み込む保持などにより、フィルム部材34を保持する方式であっても問題ない。
【0037】
また、本実施形態に係るフィルム部材保持ステージ10は、フィルム部材検査装置30に用いられている例により説明したが、これに限定されない。例えばフィルム部材34に何らかの加工を行う装置に、フィルム部材保持ステージ10を適用することも可能である。
【0038】
(第2実施形態から第6実施形態のフィルム部材保持ステージ10)
図7から
図11には、本発明の第2実施形態から第6実施形態に係るフィルム部材保持ステージ10を構成する保持ブロック11の平面図を示す。これらの実施形態と、第1実施形態との相違点は、吸引口保有部材16に設けられている吸引口20の形状である。その他の部分は、第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0039】
図7に示すように、第2実施形態では、吸引口20はすべて矩形であり、端部の第1吸引口20aの長手方向の長さが、中央部の第2吸引口20bの長手方向の長さよりも短くなっている。吸引口20の形状の矩形の長手方向は、保持ブロック11の短手方向と平行になっている。
【0040】
図8に示すように、第3実施形態では、吸引口20はすべて丸である。中央部の吸引口20は、保持ブロック11の短手方向に3つ並んでおり、端部の吸引口20は、保持ブロック11の短手方向に2つ並んでいる。
【0041】
図9に示すように、第4実施形態では、吸引口20はすべて矩形である。その矩形の長手方向は、保持ブロック11の長手方向と平行である。中央部の吸引口20は、保持ブロック11の短手方向に4つ並んでおり、端部の吸引口20は、保持ブロック11の短手方向に2つ並んでいる。
【0042】
図10に示すように、第5実施形態では、吸引口20はすべて矩形である。その矩形の長手方向は、保持ブロック11の長手方向と所定の角度を持って並べられている。そして保持ブロック11の長手方向において、中央部と比較して端部に設けられている吸引口20の個数は少なくなっている。
【0043】
図11に示すように、第6実施形態では、吸引口20は、保持ブロック11の中央部の第2吸引口20bは矩形であり、端部の第1吸引口20aは丸である。中央部の矩形の第2吸引口20bは、保持ブロック11の短手方向に4つ並んでいる。端部の丸の第1吸引口20aは、端に近い側は保持ブロック11の短手方向に2つ並んでおり、端に遠い側は保持ブロック11の短手方向に3つ並んでいる。
【符号の説明】
【0044】
10 フィルム部材保持ステージ
11 保持ブロック
13 第1支持部材
14 第2支持部材
15 突出部材
15a 凸面
16 吸引口保有部材
16a 保持面
17 エア通路
18 保持補助テーブル
20 吸引口
21 補助吸引口
30 フィルム部材検査装置
34 フィルム部材
【要約】
【課題】皺の発生を抑制する機構またはフィルムの中央部と端部とで保持力を可変にできる機構を備えることで、フィルム部材の全面に亘って皺の発生を抑えることが可能なフィルム部材保持ステージおよびフィルム部材検査装置を提供する。
【解決手段】フィルム部材保持ステージ10は、フィルム部材34の幅方向の両端部または幅方向に垂直な方向の両端部の少なくともいずれかを保持する保持ブロック対を有している。そして保持ブロック対を構成する保持ブロック11は、フィルム部材34の保持面16aと、この保持面16aの、フィルム部材34の内側方向に、保持面16aよりも高い位置でフィルム部材34と接する凸面15aと、を有する。この構成により、保持面16aにおける保持力の局所的変化に起因して発生した皺を平坦に均すことができ、フィルム部材34に皺が発生することを抑制できる。
【選択図】
図1