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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】浸水防止ドアセット
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023117260
(22)【出願日】2023-07-19
【審査請求日】2023-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599070259
【氏名又は名称】株式会社日鋼サッシュ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三野 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】清家 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】細川 義記
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-180951(JP,A)
【文献】特開2021-50561(JP,A)
【文献】特開2018-66230(JP,A)
【文献】特開2018-91074(JP,A)
【文献】特開2016-194204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E06B 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状枠と、
該環状枠に嵌る第1スイングドアと、
前記環状枠に嵌り、前記第1スイングドアと対となる第2スイングドアと、
前記環状枠に設けられ、前記第1スイングドアおよび前記第2スイングドアの、前記環状枠により構成される環状枠平面に垂直な方向への動作により押圧されることで防水性能を高める枠ドア間シール部材と、
前記第1スイングドアまたは前記第2スイングドアの少なくともいずれか一方に設けられ、前記第1スイングドアと前記第2スイングドアとの召し合わせ部に位置し、前記第1スイングドアまたは前記第2スイングドアの、前記第1スイングドアが前記環状枠に嵌り込んだ際の戸先側への動作により押圧されることで防水性能を高める第1召し合わせ部シール部材と、を備えた、
ことを特徴とする浸水防止ドアセット。
【請求項2】
前記第1スイングドアまたは前記第2スイングドアの少なくともいずれか一方に、
前記第1スイングドアおよび前記第2スイングドアに挟まれるように設けられ、
前記第1スイングドアまたは前記第2スイングドアの、前記環状枠平面に垂直な方向への動作により押圧されることで防水性能を高める第2召し合わせ部シール部材が設けられいる、
ことを特徴とする請求項1に記載の浸水防止ドアセット。
【請求項3】
前記第1スイングドアおよび前記第2スイングドアの少なくともいずれかのドアの吊元側には、
前記第1スイングドアもしくは前記第2スイングドアに関して、スイング動作を案内する機能と、前記枠ドア間シール部材を、前記環状枠平面に垂直な方向への押圧動作を案内する機能と、を有する二軸蝶番が設けられ、
前記二軸蝶番の環状枠側軸心に対する前記二軸蝶番のドア側軸心の水平面内の位置関係において、前記押圧動作の前よりも後において、前記ドア側軸心が前記戸先側に位置している、
ことを特徴とする請求項1に記載の浸水防止ドアセット。
【請求項4】
前記二軸蝶番は、前記第1スイングドアおよび前記第2スイングドアの少なくともいずれかのドアの吊元側一か所に対して一つ設けられ、
前記二軸蝶番の上下方向における上端および下端が、前記二軸蝶番が設けられている前記第1スイングドアまたは前記第2スイングドアの重心を挟んで設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の浸水防止ドアセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸水防止ドアセットに関する。さらに詳しくは、本発明は、環状枠と、2つのスイングドアと、を有する浸水防止ドアセットに関する。
【背景技術】
【0002】
浸水防止用設備建具型構成部材として、JIS A4716(2019)では、シャッター型とドア型が取り上げられており、ドア型は、スイング式またはスライド式のドアを持つものがあると記載されている。このスイング式のドアを有する構成部材は、特許文献1には止水扉という表現で開示されている。
【0003】
特許文献1の止水扉は、第1扉体と第2扉体とを有し、閉鎖状態の第1扉体を止水位置へ移動させる第1扉圧接装置と、閉鎖状態の第2扉体を止水位置へ移動させる第2扉圧接装置と、を有している。この第2扉圧接装置は、第1扉体に設けられた被係合部に嵌脱する第2扉戸先側係脱機構を有し、この被係合部と第2扉戸先側係脱機構により召し合わせ部のシール部材を、押圧することで防水性能を確保している。
【0004】
また特許文献2では、このスイング式の浸水防止ドアで用いられる二軸蝶番が開示されている。この二軸蝶番においては、スイング動作の案内のために、主に枠側の回転軸が用いられ、スイングドアを枠に設けられたシール部材に押し付ける動作の案内のために、枠側の回転軸およびドア側の回転軸が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-59368号公報
【文献】実開昭58―11066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の図10では、止水扉を平面方向から見た要部の断面図が示されている。この要部は、第1扉体と第2扉体と、の召し合わせ部であり、第2扉体に設けられた第2扉戸先側係脱機構の係合部材が、第1扉体に設けられた被係合部に係合することで、第2扉体に設けられたシール部材が、図10の上下方向に押圧され、防水性能を確保する。この図10の上下方向は、止水扉を構成する枠体により構成される環状枠平面に対して垂直な方向である。
【0007】
しかるに、防水性能を高めるためには、環状枠平面に対して垂直な方向にシール部材を押圧する必要がある。しかし扉体同士の召し合わせ部では、環状枠平面に対して垂直な方向への部材厚みを厚くすることは避けなければならず、押圧されるシール部材を受ける扉の構成部材を大きくすることに制約があり、その構成部材の変形等を抑制するために、押圧する力を抑制する必要があるため、シール部材の防水性能を高くすることが難しいという問題がある。
【0008】
また、浸水防止ドアセットは、水をせき止める必要がない場合、通常のドアとしても用いられる。その場合スイングドア同士の召し合わせ部で用いられるシール部材は、体積弾性係数が比較的小さく、圧縮する方向の力に対して比較的大きな変位が得られる部材が用いられる必要がある。しかし、召し合わせ部において、体積弾性係数が比較的小さい部材、すなわち圧縮する方向の力に対して比較的大きい変位が得られる部材が、特許文献1に記載の構成に採用されている場合において、水をせき止めるよう防水性能を高くするために押圧力を高くすると、召し合わせ部を構成する2つのスイングドアが、環状枠により構成される環状枠平面の垂直方向に対して、段差を生じやすく、枠ドア間シール部材との関係で、隙間が生じ、この隙間から水が漏れ出るという問題がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、2つのスイングドアを有し、これらのスイングドア同士の召し合わせ部での防水性能を高めることができる浸水防止ドアセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の浸水防止ドアセットは、環状枠と、該環状枠に嵌る第1スイングドアと、前記環状枠に嵌り、前記第1スイングドアと対となる第2スイングドアと、前記環状枠に設けられ、前記第1スイングドアおよび前記第2スイングドアの、前記環状枠により構成される環状枠平面に垂直な方向への動作により押圧されることで防水性能を高める枠ドア間シール部材と、前記第1スイングドアまたは前記第2スイングドアの少なくともいずれか一方に設けられ、前記第1スイングドアと前記第2スイングドアとの召し合わせ部に位置し、前記第1スイングドアまたは前記第2スイングドアの、前記第1スイングドアが前記環状枠に嵌り込んだ際の戸先側への動作により押圧されることで防水性能を高める第1召し合わせ部シール部材と、を備えたことを特徴とする。
第2発明の浸水防止ドアセットは、第1発明において、前記第1スイングドアまたは前記第2スイングドアの少なくともいずれか一方に、前記第1スイングドアおよび前記第2スイングドアに挟まれるように設けられ、前記第1スイングドアまたは前記第2スイングドアの、前記環状枠平面に垂直な方向への動作により押圧されることで防水性能を高める第2召し合わせ部シール部材が設けられいることを特徴とする。
第3発明の浸水防止ドアセットは、第1発明において、前記第1スイングドアおよび前記第2スイングドアの少なくともいずれかのドアの吊元側には、前記第1スイングドアもしくは前記第2スイングドアに関して、スイング動作を案内する機能と、前記枠ドア間シール部材を、前記環状枠平面に垂直な方向への押圧動作を案内する機能と、を有する二軸蝶番が設けられ、前記二軸蝶番の環状枠側軸心に対する前記二軸蝶番のドア側軸心の水平面内の位置関係において、前記押圧動作の前よりも後において、前記ドア側軸心が前記戸先側に位置していることを特徴とする。
第4発明の浸水防止ドアセットは、第3発明において、前記二軸蝶番は、前記第1スイングドアおよび前記第2スイングドアの少なくともいずれかのドアの吊元側一か所に対して一つ設けられ、前記二軸蝶番の上下方向における上端および下端が、前記二軸蝶番が設けられている前記第1スイングドアまたは前記第2スイングドアの重心を挟んで設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、第1スイングドアまたは第2スイングドアの、戸先側への動作により押圧されることで防水性能を高める第1召し合わせ部シール部材が、召し合わせ部に設けられていることにより、スイングドアの幅方向は比較的構成に制約が少ないので、第1召し合わせ部シール部材を保持したり、押圧したりする部材の剛性を高める構成を採用することができる。よって、第1召し合わせ部シール部材へ押圧する力を強くすることができ、これらのスイングドア同士の召し合わせ部での防水性能を高めることができる。
また、スイングドアの戸先側への動作により押圧されるシール部材であるので、従来とは押圧される主となる方向が異なり、スイングドア同士での段差が抑制され、これによっても防水性能を高めることができる。
第2発明によれば、召し合わせ部に、環状枠平面の垂直な方向に押圧されることで防水性能を高める第2召し合わせ部シール部材が設けられていることにより、さらに召し合わせ部での防水性能を高めることができる。また、シール部材が二重になっているので、第2召し合わせ部シール部材を必要以上に押圧する必要がなくなり、第1スイングドアと第2スイングドアの環状枠平面に垂直な方向の段差が少なくなり、この点でも防水性能が向上する。
第3発明によれば、ドアの吊元側に設けられている二軸蝶番において、押圧動作の前よりも後において、ドア側軸心が戸先側に位置していることにより、シンプルな構成で召し合わせ部第1シール部材を適切に押圧することができる。
第4発明によれば、吊元側一か所に対して設けられた一つの二軸蝶番において、上下方向の上端および下端が、ドアの重心を挟んで設けられていることにより、ドアの重心より上側で作用する、ドアを開けようとする力が、ドアの重心よりも下側で作用する、ドアを閉めようとする力と相殺されるので、二軸蝶番に用いられる位置保持用のばねのばね定数を極端に強くする必要がなくなり、二軸蝶番の構成をシンプルにできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る浸水防止ドアセットの召し合わせ部の平面方向の拡大図である。図1(A)は、第1召し合わせ部シール部材が押圧されていない場合の拡大図、図1(B)は、第1召し合わせ部シール部材が押圧されている場合の拡大図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る浸水防止ドアセットの正面図である。
図3図2の浸水防止ドアセットで用いられている二軸蝶番の斜視方向からの説明図である。
図4図3の二軸蝶番の平面方向の拡大図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る浸水防止ドアセットの召し合わせ部の平面方向の拡大図である。図5(A)は、第1召し合わせ部シール部材が押圧されていない場合の拡大図、図5(B)は、第1召し合わせ部シール部材が押圧されている場合の拡大図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る浸水防止ドアセットの正面図である。
図7図6の浸水防止ドアセットで用いられている二軸蝶番の斜視方向からの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明するただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための浸水防止ドアセットを例示するものであって、本発明は浸水防止ドアセットを以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、本明細書に記載の「垂直」、「平行」は、厳密に「垂直」、「平行」である必要はなく、その構成を有することでその効果を奏する「実質的垂直」、「実質的平行」であることを意味する。
【0014】
(第1実施形態)
<全体構成>
図2には、本発明の第1実施形態に係る浸水防止ドアセット10の正面図を示す。図2では、水があると想定される室外側から浸水防止ドアセット10を見た場合を示している。浸水防止ドアセット10は、ビル、家屋、倉庫などの建築物またはトンネルなどの開口部に設置され、室外に存在する水が、室内に侵入することを防止するためのドアセットであり、図2の紙面において奥側が室内側、手前側が室外側となる。
【0015】
本実施形態に係る浸水防止ドアセット10は、環状枠11と、この環状枠11に嵌る第1スイングドア12および第2スイングドア13と、を含んで構成されている。環状枠11は、2本の横枠および2本の縦枠を含んで構成されており、これらの枠同士が結合されることにより、矩形環状となっていることが好ましい。
【0016】
第1スイングドア12は、環状枠11に嵌り込む構成であり、図1の紙面において、環状枠11の右側の枠に、二つの二軸蝶番30により開閉自在に固定されている。開閉方向は、二軸蝶番30を中心にして図2の手前方向となる。
【0017】
第2スイングドア13は、第1スイングドア12と同じように、環状枠11に嵌り込む構成である。また第2スイングドア13は、第1スイングドア12と対になる構成である。この「対になる構成」とは、「2つのドアの組合せにより、浸水防止を行うことができる」という意味である。
【0018】
<枠ドア間シール部材18>
本実施形態に係る浸水防止ドアセット10の環状枠11には、防水のための枠ドア間シール部材18が設けられている。この枠ドア間シール部材18は、第1スイングドア12および第2スイングドア13の、環状枠11により構成される環状枠平面に垂直な方向への動作により押圧されることで、防水性能を高めることができる公知の構成である。ここで、環状枠平面とは、環状枠11を構成する縦枠および横枠を含む平面を意味し、この環状枠平面に垂直な方向とは、図2の紙面において、奥行き方向を意味する。また、第1スイングドア12、第2スイングドア13は、防水性能を高めるために、環状枠平面に対して、あらかじめ定められた角度を持って動作することがあるが、この場合であっても、第1スイングドア12等は、環状枠平面に垂直な方向への動作を含んでおり、この垂直な方向への動作により、枠ドア間シール部材18の防水性能を高めることができる。
【0019】
枠ドア間シール部材18の形状および材質は、特に限定されない。しかし、以下に記載する押圧部材14または水圧による、環状枠平面に垂直な方向への動作により押圧されたときに防水機能を十分に発揮できるシール部材である必要がある。
【0020】
<第1召し合わせ部シール部材20>
本実施形態に係る浸水防止ドアセット10は、第1スイングドア12と第2スイングドア13との間の召し合わせ部の防水性能を高めるための第1召し合わせ部シール部材20を備えている。この第1召し合わせ部シール部材20について、図1および図2を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る浸水防止ドアセット10の召し合わせ部の平面方向、詳しくは図2のI-I断面の拡大断面図である。図1(A)は第1召し合わせ部シール部材20が押圧されていない場合の拡大断面図、図1(B)は第1召し合わせ部シール部材20が互いに押圧されている場合の拡大断面図である。図1の紙面においては、上側が室内側、下側が室外側となる。
【0021】
第1召し合わせ部シール部材20は、第1スイングドア12と第2スイングドア13との召し合わせ部に位置している。本実施形態の第1召し合わせ部シール部材20は、第1スイングドア12側に設けられている第1スイングドア側部材20aと、第2スイングドア13側に設けられている第2スイングドア側部材20bと、を含んで構成されている。第1スイングドア12の室内側には、凸部が設けられており、第1スイングドア側部材20aは、その先端面に設けられている。第2スイングドア13の室内側には、第1スイングドア12に設けられた凸部が入り込むように切り欠き部が設けられており、この切り欠き部の底面に第2スイングドア側部材20bが設けられている。
【0022】
本実施形態では、図1(B)に示す矢印の示す方向、すなわち第1スイングドア12および第2スイングドア13の両方が、それぞれのスイングドアが近づく方向と、室外側から室内側への方向に動作し、第1召し合わせ部シール部材20が押圧される。このスイングドアが近づく方向は、第1スイングドア12が環状枠11に嵌り込んだ際のドア幅方向、およびスイングドアの戸先方向と同じである。
【0023】
また、第1召し合わせ部シール部材20を構成する第1スイングドア側部材20aおよび第2スイングドア側部材20bの合わせ面は、第1スイングドア12および第2スイングドア13の動きを考慮して環状枠平面に対してあらかじめ定められた角度を有していることが好ましい。これは、第1スイングドア12が環状枠11に嵌っている状態で、第2スイングドア13が閉められた際に、互いに干渉を生じないようにするためである。本実施形態では、合わせ面と環状枠平面との角度は、45度よりも大きく90度よりも小さい角度となっている。
【0024】
<押圧部材14>
本実施形態に係る浸水防止ドアセット10は、枠ドア間シール部材18の防水機能を働かせるための押圧部材14を備えていることが好ましい。この押圧部材14の構成は公知の構成であり、第1スイングドア12および第2スイングドアをあらかじめ定められた方向に動作させ、少なくとも枠ドア間シール部材18および第1召し合わせ部シール部材20のいずれかを押圧することができる。例えば、押圧部材14は、グレモンハンドルを有するものが該当する。図2に示すように、本実施形態では、押圧部材14は、第1スイングドア12の吊元側、および第2スイングドア13の吊元側と下部に、計3個設けられているが、この構成に限定されない。第1スイングドア12または第2スイングドア13のいずれか一方に設けられる場合もある。いずれか一方に設けられる場合、本実施形態では、第1スイングドア12が先に閉まり、第2スイングドア13が後から閉まる構成であるため、押圧部材14は第2スイングドア13に設けられることが好ましい。なお、押圧部材14が設置場所について、「戸先側」および「吊元側」という表現が用いられたが、「吊元側」は、スイングドア構造のスイング動作の中心に近い側を意味し、「戸先側」は「吊元側」と逆の側を意味する。また、押圧部材14は、設けられない場合もある。この場合、浸水防止ドアセット10のスイングドアは、室外の水位が上がるにしたがって、水圧により、後述する二軸蝶番30に案内されながら各シール部材を押圧する。
【0025】
<第1実施形態における二軸蝶番30>
本実施形態に係る浸水防止ドアセット10は、押圧部材14により、防水性能を高める動作を第1スイングドア12および第2スイングドア13に行わせるために、二軸蝶番30がそれぞれのスイングドアの吊元側に設けられていることが好ましい。図3には、本実施形態で用いられている二軸蝶番30の斜視方向からの説明図を、図4には、その平面方向の拡大図を示す。図3図4の二軸蝶番30は、図2の紙面において左上に位置している二軸蝶番30の図である。これらの図は、押圧部材14などにより防水性能を高める動作の前の状態を表している。
【0026】
本実施形態に係る浸水防止ドアセット10で用いられている二軸蝶番30は、環状枠11に取り付けられる枠側ベース31と、第2スイングドア13に取り付けられるドア側ベース32と、これらの間に設けられる連結板33を含んで構成されている。枠側ベース31と連結板33とは、枠側軸31aにより、環状枠側軸心を中心として回転自在に固定されている。ドア側ベース32と連結板33とは、ドア側軸32aにより、ドア側軸心を中心として回転自在に固定されている。また、押圧部材14等により防水性能を高める動作の前において、環状枠平面に対して、ドア側軸心が、環状枠側軸心よりも、離れた位置となっている。このような位置になるように、図4の紙面において、ドア側ベース32の上下方向の長さ(環状枠平面に垂直な方向の長さ)が、枠側ベース31の上下方向の長さよりも長くなっている。
【0027】
二軸蝶番30の構成が上記のような構成である場合、防水性能を高めるスイングドアの押圧動作の前の状態では、ドア側軸32aの中心は、C2の位置に存在しているところ、この押圧動作の後の状態では、ドア側軸32aの中心は、C3の位置に移動する。この移動により、第2スイングドア13は、図4の紙面において、右側方向(第1スイングドア12が環状枠11にはまり込んだ際の戸先側の方向)に寸法aだけ移動し、合わせて上下方向(環状枠平面に垂直な方向)にもあらかじめ定められた寸法だけ移動する。この左右方向へaだけ移動することで、第1召し合わせ部シール部材20の防水性能を高めることができる。
【0028】
ドアの吊元側に設けられている二軸蝶番30において、押圧動作の前よりも後において、ドア側軸心が戸先側に位置していることにより、シンプルな構成で第1召し合わせ部シール部材20を適切に押圧することができる。
【0029】
なお、従来構造の二軸を有する蝶番では、ドア側軸32aが図4の紙面において右側方向に動作しないような構成を採用する必要があった。浸水防止用のスイングドアの重量は60kg以上である。2つの蝶番を用いてこの重量を支えた場合、スイングドアの重心から上に位置する蝶番では、二つのベースが離間する方向に力が働き、スイングドアの重心から下に位置する蝶番では、二つのベースが近接する方向に力が働く。特に上側の蝶番で、二つのベースが離間する方向に力が働いた際に、実際にできるだけ離間しないような構造を採用する必要がある。そのため、特許文献2における蝶番では、グレモン等の押圧部材14で押圧する前、すなわち防水性能を高める前においては、ドア側の軸と枠側の軸とが環状枠平面に対して、同距離であるように配置し、押圧部材14で押圧した後、すなわち防水性能を高めた後においては、ドアと枠とが近接する構成としている。しかし、本実施形態では、二軸蝶番30の姿勢を維持するためのばね(不図示)について、あらかじめ定められた以上のばね定数を有するばねを採用し、このスイングドアの重量により離間する距離を極力少なくしながら、押圧部材14によりスイングドアを動作させた場合は、図4の紙面において第2スイングドア13を戸先側にaだけ動作させて第1召し合わせ部シール部材により防水性能を高めている。
【0030】
<その他>
なお、本実施形態では二軸蝶番30を用いる構成について説明したが、これに限定されない。例えば一軸の蝶番に互いの戸先方向に動作する機構を付加した構造であっても問題ない。
【0031】
また、第1召し合わせ部シール部材20の形状および材質は、上に記載した形状等に特に限定されない。例えば本実施形態では、第1召し合わせ部シール部材20は、第1スイングドア側部材20aと、第2スイングドア側部材20bと、の2つの部材から構成されていたが、一方のスイングドアにだけ設けられる場合もある。しかし、押圧部材14により、戸先側に押圧されたときに防水機能を十分に発揮できるシール部材である必要がある。
【0032】
<使用方法>
浸水防止を必要としない通常時においては、浸水防止ドアセット10の使用者は、第1スイングドア12を環状枠11に嵌め込んだ状態にし、第2スイングドア13に設けられているドアノブ17を用いて、第2スイングドア13をスイングさせ、第2スイングドアを開いた状態にして、浸水防止ドアセット10を通過する。また、大きな荷物を通過させる際には、その使用者は、第2スイングドア13だけでなく、第1スイングドア12をスイングさせ、両ドアを開いた状態にし、環状枠11の内部を通過することができる荷物等を通過させることができる。また、使用者は、第2スイングドア13に設けられた鍵により、第1スイングドア12および第2スイングドア13を占めた状態にした後、浸水防止ドアセット10を施錠する。なお、この通常時において、押圧部材14は用いられない。
【0033】
浸水防止を必要とする非常時においては、浸水防止ドアセット10の使用者は、まず、第1スイングドア12、第2スイングドア13を閉じた状態にする。そして次にその使用者は、押圧部材14により、第1スイングドア12または第2スイングドア13をその戸先側に移動させて第1召し合わせ部シール部材20の防水性能を高めるとともに、第1スイングドア12と第2スイングドア13とを、環状枠平面に垂直な方向に動作させて、枠ドア間シール部材18の防水性能を高める。このように浸水防止ドアセット10を使用することにより、室外から室内への水の浸水を防止できる。
【0034】
第1スイングドア12または第2スイングドア13の、戸先側への動作により押圧されることで防水性能を高める第1召し合わせ部シール部材20が、召し合わせ部に設けられていることにより、スイングドアの幅方向は比較的構成に制約が少ないので、第1召し合わせ部シール部材20を保持したり、押圧したりする部材の剛性を高める構成を採用することができる。よって、第1召し合わせ部シール部材20へ押圧する力を強くすることができ、これらのスイングドア同士の召し合わせ部での防水性能を高めることができる。
【0035】
また、スイングドアの戸先側への動作により押圧されるシール部材であるので、従来とは押圧される主となる方向が異なり、スイングドア同士での段差が抑制され、これによっても防水性能を高めることができる。
【0036】
(第2実施形態)
図5には、本発明の第2実施形態に係る浸水防止ドアセットの召し合わせ部の平面方向の拡大図を示す。図5(A)は第1召し合わせ部シール部材20が押圧されていない場合の拡大図、図5(B)は、第1召し合わせ部シール部材20が押圧されている場合の拡大図である。図5の紙面においては、上側が室内側、下側が室外側となる。第1実施形態に係る浸水防止ドアセット10と、第2実施形態に係る浸水防止ドアセット10との相違点は、第1スイングドア12と第2スイングドア13との間の召し合わせ部の構造に関する点のみであるので、以下では相違点について説明するとともに、同じ構造および使用方法に関する説明は省略する。
【0037】
<第2召し合わせ部シール部材>
本実施形態に係る浸水防止ドアセット10は、第1スイングドア12と第2スイングドア13との間の召し合わせ部の防水性能を高めるための第1召し合わせ部シール部材20と併せて、第2召し合わせ部シール部材21を備えている。この第1召し合わせ部シール部材20については、第1実施形態と同じである。
【0038】
図5に示すように、第2召し合わせ部シール部材21は、本実施形態では第1スイングドア12に設けられている。この第2召し合わせ部シール部材21は、第1スイングドア12および第2スイングドア13が、環状枠11にはまり込んだ状態でいるときに、これらのスイングドアに挟まれるように設けられている。そして、本実施形態では、第2スイングドア13が、図5の紙面において上方向、すなわち環状枠平面に垂直な方向に動作することで、この第2召し合わせ部シール部材21は押圧され、この召し合わせ部分の防水性能を高めることができる。
【0039】
本実施形態では、第2召し合わせ部シール部材21は第1スイングドア12に設けられたが、これに限定されない。これを第2スイングドア13に設けることも可能である。また、本実施形態では、第2スイングドア13が環状枠平面に垂直な方向に動作することで第2召し合わせ部シール部材21を押圧していたが、これに限定されない。第1スイングドア12が環状枠平面に垂直な方向に動作することで、第2召し合わせ部シール部材21を押圧することも可能である。
【0040】
本実施形態では、第1スイングドア12の室外側には、凸部が設けられており、その凸部の室内側に、第2召し合わせ部シール部材21が配置されている。
【0041】
第2召し合わせ部シール部材21の形状および材質は、特に限定されない。本実施形態では、第2召し合わせ部シール部材21は、第1スイングドア12のみに設けられているが、第1スイングドア12および第2スイングドア13のそれぞれに設けられている場合もある。しかし、押圧部材14により、あらかじめ定められた方向に押圧されたときに防水機能を十分に発揮できるシール部材である必要がある。
【0042】
召し合わせ部に、環状枠平面の垂直な方向に押圧されることで防水性能を高める第2召し合わせ部シール部材21が設けられていることにより、さらに召し合わせ部での防水性能を高めることができる。また、シール部材が二重になっているので、第2召し合わせ部シール部材21を必要以上に押圧する必要がなくなり、第1スイングドア12と第2スイングドア13の環状枠平面に垂直な方向の段差が少なくなり、この点でも防水性能が向上する。
【0043】
(第3実施形態)
<第3実施形態における二軸蝶番30>
図6には本発明の第3実施形態に係る浸水防止ドアセットの正面図を、図7には本実施形態で用いられている二軸蝶番30の斜視方向からの説明図を示す。第1実施形態に係る浸水防止ドアセット10と、第3実施形態に係る浸水防止ドアセット10との相違点は、二軸蝶番30構造に関する点のみであるので、以下では相違点について説明するとともに、同じ構造及び使用方法に関する説明は省略する。図7の二軸蝶番30は、図6の紙面において左上に位置している二軸蝶番30の図である。この図は、押圧部材14により防水性能を高める動作の前の状態を表している。
【0044】
本実施形態に係る浸水防止ドアセット10で用いられている二軸蝶番30は、環状枠11に取り付けられる枠側ベース31と、第2スイングドア13に取り付けられるドア側ベース32と、これらの間に設けられる連結板33を含んで構成されている。枠側ベース31と連結板33とは、枠側軸31aにより、環状枠側軸心を中心として回転自在に固定されている。ドア側ベース32と連結板33とは、ドア側軸32aにより、ドア側軸心を中心として回転自在に固定されている。
【0045】
第1実施形態における二軸蝶番30との相違点は、第1実施形態では、二軸蝶番30は、第1スイングドア12および第2スイングドア13のそれぞれの吊元側1か所に対して、上下に2つ設けられているのに対し、本実施形態では、それぞれの吊元側1か所に対して一つ設けられている点である。すなわち、本実施形態では、連結板33が、第1実施形態の二軸蝶番30のものと比較して長くなっている。すなわち第1スイングドア12について説明すると、二軸蝶番30の上下方向における上端U1および下端D1が、二軸蝶番30が設けられている第1スイングドア12の重心G1をはさんで設けられている。
【0046】
吊元側一か所に対して設けられた一つの二軸蝶番30において、上下方向の上端U1および下端D1が、ドアの重心G1を挟んで設けられていることにより、ドアの重心G1より上側で作用する、ドアを開けようとする力が、ドアの重心G1よりも下側で作用する、ドアを閉めようとする力と相殺されるので、二軸蝶番30に用いられる位置保持用のばねのばね定数を極端に強くする必要がなくなり、二軸蝶番30の構成をシンプルにできる。
【符号の説明】
【0047】
10 浸水防止ドアセット
11 環状枠
12 第1スイングドア
13 第2スイングドア
14 押圧部材
18 枠ドア間シール部材
20 第1召し合わせ部シール部材
21 第2召し合わせ部シール部材
30 二軸蝶番
D1 下端
G1 重心
U1 上端
【要約】
【課題】2つのスイングドアを有し、これらのスイングドア同士の召し合わせ部での防水性能を高めることができる浸水防止ドアセットを提供する。
【解決手段】浸水防止ドアセット10は、環状枠11と、第1スイングドア12と、第2スイングドア13と、枠ドア間シール部材18と、2つのスイングドアとの召し合わせ部に位置し、第1スイングドア12等の、戸先側への動作により押圧されることで防水性能を高める第1召し合わせ部シール部材20と、を備えている。この構成の場合、ドア幅方向への構成に制約が少なく、第1召し合わせ部シール部材20を押圧する部材の剛性を高める構成を採用し、その押圧する力を強くすることができるので、召し合わせ部での防水性能を高めることができる。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7