(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】感光性組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/029 20060101AFI20231013BHJP
A61K 6/62 20200101ALI20231013BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231013BHJP
G03F 7/028 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
G03F7/029
A61K6/62
G03F7/004 501
G03F7/028
(21)【出願番号】P 2020022948
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000106139
【氏名又は名称】サンアプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118061
【氏名又は名称】林 博史
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀基
(72)【発明者】
【氏名】白石 篤志
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-196949(JP,A)
【文献】特開2017-048325(JP,A)
【文献】特開2007-231210(JP,A)
【文献】特開2005-213231(JP,A)
【文献】特開2019-099666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
下記(IS-1)~(IS-6)で表されるジアリールヨードニウム塩
(B)増感剤
(C)ラジカル重合性化合物
(D)充填剤
を必須成分として含有することを特徴とする、感光性組成物。
【化1】
【請求項2】
さらに(E)第三級アミン化合物を含有する請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の感光性組成物に対し、400~600nmの可視光領域の光を照射する工程を含む感光性組成物の硬化方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法で感光性組成物を硬化して得られることを特徴とする硬化体。
【請求項5】
請求項3に記載の方法で感光性組成物を硬化して得られることを特徴とする歯科用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可視領域の光線に感光し、硬化させる感光性組成物に関する。さらに詳しくは可視光線を照射し硬化させる感光性組成物であり、たとえば、コーティング剤、塗料、平版印刷版もしくは歯科用材料(歯科用配合物、歯科用コンポジット)等に用いられる。また、本発明は露光部、未露光部の現像液への溶解性差を利用したパターニングを経て形成される製品若しくは部材(たとえば、電子部品、光学製品、光学部品の形成材料、層形成材料又は接着剤等)の製造に好適に用いられる感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線(UV)照射により、液状物質を硬化させるUV硬化技術は、その作業性(速硬化性)や低VOC化の観点から、コーティング剤や塗料、印刷インキ等適用範囲が広がりつつある。
一般に感光性組成物は、光重合開始剤および増感剤、ラジカル(またはカチオン)重合性モノマー、オリゴマー又はポリマー、用途に応じ着色剤及び添加剤からなる。着色剤は大別して顔料及び染料からなり、塗膜を着色させるために配合されるが、光を遮蔽してしまうだけでなく、その色に応じた光吸収特性を持ち照射する光の一部を吸収するため、着色剤を含む感光性組成物では塗布された塗膜の深部にまで光が届かないことがある。これに対し、特定の光重合開始剤を使用することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、歯科材料において齲蝕や破損等により損傷を受けた歯の修復において、コンポジットレジンと呼ばれる光硬化性の充填修復材料が汎用的に用いられている。操作が簡便であり審美性が高いといった利点を有するためである。このようなコンポジットレジンでは、通常、光重合性モノマー特に(メタ)アクリレート系モノマー、充填剤(無機フィラー等)、光重合開始剤および増感剤からなる感光性組成物からなる。
【0004】
本用途においては充填剤を多く含む組成物であることから、紫外線(UV)が深部に光が届きにくく、また安全性の観点から可視光領域の光源(例えばハロゲンランプ等)が使用され、これに感光するための開始剤として増感剤、ヨードニウム塩ならびにアミン化合物を併用する系が知られている(特許文献2)。しかし従来知られている系では硬化物の着色や変色による審美性の低下については充分に満足されておらず、さらに最近ではLED光源(例えば450nm)が利用されており、これらに対応する高感度開始剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-19142号公報
【文献】特許2744789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、例えば歯科材料のように遮光性の高い、高濃度の充填剤を含みながら、可視光領域の光源に対し硬化性が優れる感光性組成物であり、硬化物の色相に優れる感光性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、可視光領域の光源に対し優れた感度を有する感光性組成物を見出すに至った。
すなわち本発明は、
(A)一般式(1)で表されるジアリールヨードニウム塩
(B)増感剤
(C)ラジカル重合性化合物
(D)充填剤
を必須成分として含有することを特徴とする、感光性組成物である。
(Ar1)2I+ [ (R1)(R2)(R3)(R4)Ga]- (1)
〔式中、R1~R4は、互いに独立して、炭素数1~18のアルキル基またはArであるが、但し、少なくとも1つが、Arであり、Arは、炭素数6~14(以下の置換基の炭素数は含まない)のアリール基であって、アリール基中の水素原子の一部が、炭素数1~18のアルキル基、ハロゲン原子が置換した炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数2~18のアルキニル基、炭素数6~14のアリール基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、-OR6で表されるアルコキシ基若しくはアリールオキシ基、R7CO-で表されるアシル基、R8COO-で表されるアシロキシ基、-SR9で表されるアルキルチオ基若しくはアリールチオ基、-NR10R11で表されるアミノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、R6~R9は炭素数1~18のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基、R10及びR11は水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基であり;Ar1はArと同じ定義であり、ヨードニウムカチオン上の2つのAr1は同一でも異なっていてもよい。〕
【0008】
更に本発明は、上記記載の感光性組成物に波長400nm~600nmの可視光領域の光を照射する工程を含むこと特徴とする硬化方法である。
【0009】
更に本発明は、上記感光性組成物を硬化して得られることを特徴とする硬化体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性組成物は、波長400nm~600nmの可視光領域の光に感光して効率よくラジカルを発生し、硬化させることができる。また光を遮蔽する添加剤、着色剤を配合した組成物であっても効率よく硬化物を製造することができ、硬化物の着色を抑制し例えば歯科材料において審美性の向上に供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明の感光性組成物は、一般式(1)で表されるジアリールヨードニウム塩(A)を含有することを特徴とする。
(Ar1)2I+ [ (R1)(R2)(R3)(R4)Ga]- (1)
【0013】
式中、R1~R4は、互いに独立して、炭素数1~18のアルキル基またはArであるが、但し、少なくとも1つが、Arであり、Arは、炭素数6~14(以下の置換基の炭素数は含まない)のアリール基であって、アリール基中の水素原子の一部が、炭素数1~18のアルキル基、ハロゲン原子が置換した炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数2~18のアルキニル基、炭素数6~14のアリール基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、-OR6で表されるアルコキシ基若しくはアリールオキシ基、R7CO-で表されるアシル基、R8COO-で表されるアシロキシ基、-SR9で表されるアルキルチオ基若しくはアリールチオ基、-NR10R11で表されるアミノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、R6~R9は炭素数1~18のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基、R10及びR11は水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基であり;Ar1はArと同じ定義であり、ヨードニウムカチオン上の2つのAr1は同一でも異なっていてもよい。
【0014】
一般式(1)中、R1~R4における、炭素数1~18のアルキル基としては、直鎖アルキル基(メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル及びn-オクタデシル等)、分岐アルキル基(イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル、2-エチルヘキシル及び1,1,3,3-テトラメチルブチル等)、シクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等)及び架橋環式アルキル基(ノルボルニル、アダマンチル及びピナニル等)が挙げられる。
【0015】
一般式(1)中、R1~R4における、Arすなわち、炭素数6~14(以下の置換基の炭素数は含まない)のアリール基としては、単環式アリール基(フェニル等)、縮合多環式アリール基(ナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、アントラキノリル、フルオレニル及びナフトキノリル等)及び芳香族複素環炭化水素基(チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル等単環式複素環;及びインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、クマリニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニル等縮合多環式複素環)が挙げられる。
アリール基としては、以上の他に、アリール基中の水素原子の一部が炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数2~18のアルキニル基、ハロゲン原子が置換した炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~14のアリール基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、-OR6で表されるアルコキシ基若しくはアリールオキシ基、R7CO-で表されるアシル基、R8COO-で表されるアシロキシ基、-SR9で表されるアルキルチオ基若しくはアリールチオ基、-NR10R11で表されるアミノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0016】
上記置換基において、炭素数2~18のアルケニル基としては、直鎖又は分岐のアルケニル基(ビニル、アリル、1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-オクテニル、1-デセニル、1-オクタデセニル、1-1-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-1-プロぺニル及び2-メチル-2-プロペニル等)、シクロアルケニル基(2-シクロヘキセニル及び3-シクロヘキセニル等)及びアリールアルケニル基(スチリル及びシンナミル等)が挙げられる。
【0017】
上記置換基において、炭素数2~18のアルキニル基としては、直鎖又は分岐のアルキニル基(エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル、1,1-ジメチル-2-プロピニル、1-ぺンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-メチル-2-ブチニル、3-メチル-1-ブチニル、1-デシニル、2-デシニル、8-デシニル、1-ドデシニル、2-ドデシニル及び10-ドデシニル等)及びアリールアルキニル基(フェニルエチニル等)が挙げられる。
【0018】
上記置換基において、ハロゲン原子が置換した炭素数1~8のアルキル基としては、直鎖アルキル基(トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1-ジフルオロエチル、ヘプタフルオロ-n-プロピル、1,1-ジフルオロ-n-プロピル、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル、ノナフルオロ-n-ブチル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロ-n-ブチル、パーフルオロ-n-ペンチル、パーフルオロ-n-オクチル、等)、分岐アルキル基(ヘキサフルオロイソプロピル、ヘキサクロロイソプロピル、ヘキサフルオロイソブチル、ノナフルオロ-tert-ブチル等)、シクロアルキル基(ペンタフルオロシクロプロピル、ノナフルオロシクロブチル、パーフルオロシクロペンチル及びパーフルオロシクロヘキシル等)及び架橋環式アルキル基(パーフルオロアダマンチル等)が挙げられる。
【0019】
上記置換基において、-OR6で表されるアルコキシ基、R7CO-で表されるアシル基、R8COO-で表されるアシロキシ基、-SR9で表されるアルキルチオ基、-NR10R11で表されるアミノ基の、R6~R11としては炭素数1~8のアルキル基が挙げられ、具体的には上記のアルキル基のうち炭素数1~8のアルキル基が挙げられる。
【0020】
上記置換基において、-OR6で表されるアリールオキシ基、R7CO-で表されるアシル基、R8COO-で表されるアシロキシ基、-SR9で表されるアリールチオ基、-NR10R11で表されるアミノ基の、R6~R11としては炭素数6~14のアリール基が挙げられ、具体的には上記の炭素数6~14のアリール基が挙げられる。
【0021】
-OR6で表されるアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、iso-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、iso-ペントキシ、neo-ペントキシ、n-ヘキシルオキシ、n-オクチルオキシ、n-デシルオキシ、n-ドデシルオキシ、n-オクタデシルオキシ及び2-メチルブトキシ等が挙げられる。
-OR6で表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ、ナフトキシ等が挙げられる。
R7CO-で表されるアシル基としては、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、ピバロイル及びベンゾイル等が挙げられる。
R8COO-で表されるアシロキシ基としては、アセトキシ、ブタノイルオキシ及びベンゾイルオキシ等が挙げられる。
-SR9で表されるアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ、ヘキシルチオ、2-エチルヘキシルチオ及びシクロヘキシルチオ等が挙げられる。
-SR9で表されるアリールチオ基としては、フェニルチオ、ナフチルチオ等が挙げられる。
-NR10R11で表されるアミノ基としては、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジプロピルアミノ、フェニルメチルアミノ、ジフェニルアミノ及びピペリジノ等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0022】
これら置換基において、熱安定性の観点から、ハロゲン原子が置換した炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基が好ましく、フッ素原子が置換した炭素数1~8のアルキル基およびフッ素原子がより好ましい。
【0023】
一般式(1)で表される塩のアニオン部分であるR1、R2、R3、R4がパーフルオロアルキル基又はフッ素原子で置換されたフェニル基であることが好ましく、ペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基であることがより好ましい。
特に好ましくは、一般式(1)で表されるオニウムガレート塩の[ (R1)(R2)(R3)(R4)Ga]-で表されるガレートアニオンが[Ga(C6F5)4] -又は、[Ga((CF3)2C6H3)4] -である。
【0024】
一般式(1)で表される塩のアニオン構造としては、たとえば、以下化学式(A-1)~(A-5)で表されるものが好ましく例示できる。
【0025】
【0026】
式(1)中のAr1はヨードニウムカチオンに結合している2つの置換基を表し、同一であっても異なってもよく、式(1)中のR1~R4で定義したArと同様である。すなわちAr1としては、炭素数6~14のアリール基、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基および炭素数2~18のアルキニル基が挙げられ、アリール基はさらに炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数2~18のアルキニル基、炭素数6~14のアリール基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、-OR6で表されるアルコキシ基若しくはアリールオキシ基、R7CO-で表されるアシル基、R8COO-で表されるアシロキシ基、-SR9で表されるアルキルチオ基若しくはアリールチオ基、-NR10R11で表されるアミノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0027】
上記有機基の炭素数6~14のアリール基、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基および炭素数2~18のアルキニル基としては、一般式(1)中のR1~R4で説明したものと同じものが挙げられる。
【0028】
好ましいヨードニウムカチオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、ジ-p-トリルヨードニウム及び4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウムの他、ジ-(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、ジ-(4-tert-ペンチルフェニル)ヨードニウム、4-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウム、ジ-4-イソプロピルフェニルヨードニウム、4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、ビス(2,4-ジイソプロピルフェニル)ヨードニウム、4-ヘキシルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、4-シクロヘキシルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム、4-オクチルオキシフェニル(2,4,6-トリメトキシフェニル)ヨードニウム、ビス(4-オクタデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、ビス(4-デシルオキシフェニル)ヨードニウム、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウム等が挙げられる。
【0029】
好ましいジアリールヨードニウム塩(A)の具体例としては以下のものが挙げられる。
【0030】
【0031】
これらジアリールヨードニウム塩(A)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ジアリールヨードニウム塩(A)の含有量は、後述するラジカル重合性化合物(C)の重量に基づいて、通常0.005~20重量%、好ましくは0.01~10重量%である。
【0032】
本発明の感光性組成物は、可視光領域(400nm~600nm)の波長の光を吸収し、ジアリールヨードニウム塩(A)に対しエネルギー又は電子移動により分解を引き起こす増感剤(B)を含み、公知の化合物が用いられる。
【0033】
増感剤(B)の具体例としては、ケトン化合物{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、4’-イソプロピル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、3,3'-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、ビス(4,4’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及びビス(4,4’-ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等};ジケトン化合物{カンファーキノン、9,10-フェナントレンキノン、4,4’-ジメトキシベンジル、1,4-ベンゾキノン、1,2-ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、1,2-ナフトキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、アセナフテンキノン等};チオキサントン{チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン及び2,4-ジエチルチオキサントン等};フェノチアジン{フェノチアジン、N-メチルフェノチアジン、N-エチルフェノチアジン、N-フェニルフェノチアジン等};キサントン;クマリン{7-(ジエチルアミノ)4-(トリフルオロメチル)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン等};カルバゾール{N-フェニルカルバゾール、N-エチルカルバゾール、ポリ-N-ビニルカルバゾール及びN-グリシジルカルバゾール等};アントラセン{アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン等}等が挙げられる。
特に、電子受容性の観点から、ケトン化合物、ジケトン化合物の増感剤を使用したときに、高い増感効果が得られるので好ましい。
【0034】
これら増感剤(B)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、増感剤(B)の含有量は、増感剤(B)、ジアリールヨードニウム塩(A)及び後述するラジカル重合性化合物(C)の合計重量に基づいて、通常0.005~20重量%、好ましくは0.01~10重量%である。
【0035】
本発明の感光性組成物が含むラジカル重合性化合物(C)としては、ラジカルによって重合する化合物であれば、特に制限無く公知のものを使用することができる。
例えば、(メタ)アクリレート化合物(C11)、アクリルアミド化合物(C12)、及びその他のラジカル重合性化合物(C13)が挙げられる。
尚、上記及び以下において、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方又はいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方又はいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
【0036】
(メタ)アクリレート化合物(C11)としては、例えば以下の単官能~六官能の(メタ)アクリレートが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、エチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレンモノアクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノビニルエーテルモノアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキサイド(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキサイドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸、2-メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート及びEO変性-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
二官能(メタ)アクリレートとしては、1,4-ブタンジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジアクリレート、ポリプロピレンジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルジ(メタ)アクリレート、2-エチル-2-ブチル-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-エチル-2-ブチル-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート及びトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
三官能の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びエトキシ化グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
【0039】
四官能の(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びエトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
五官能の(メタ)アクリレートとしては、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
六官能の(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリルアミド化合物(C12)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0043】
その他のラジカル重合性化合物(C13)としては、芳香族ビニル化合物(スチレン、メチルスチレン等)、ビニルエーテル化合物(ブチルビニルエーテル、フェノキシビニルエーテル等)、アクリロニトリル、ビニルエステル化合物(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びバーサチック酸ビニル等)、マレイミド化合物(1-メチル-2,4-ビスマレイミドベンゼン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド等)、アリルエステル化合物(酢酸アリル等)、ハロゲン含有単量体(塩化ビニリデン及び塩化ビニル等)、カルボン酸を有するラジカル重合性化合物((メタ)アクル酸、N-(メタ)アクリロイルグリシン、N-(メタ)アクリロイルアスパラギン酸)等、リン酸を有するラジカル重合性化合物(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンフォスフェート、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンフォスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンフォスフェート、10-(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンフォスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンフォスフェート)等、及びオレフィン化合物(エチレン及びプロピレン等)等の他、(メタ)アクリレート基を複数有したオリゴマーも包含される。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリシロキサン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマーが挙げられる。
【0044】
これらの内、硬化速度の観点から好ましいのは、(メタ)アクリレート化合物(C11)及びアクリルアミド化合物(C12)である。これらラジカル重合性化合物(C)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
本発明の感光性組成物が含む充填剤(D)としては、一般的な歯科用コンポジットレジンに使用可能な公知のフィラーが特に制限なく用いられる。このようなフィラーは通常、有機フィラーと無機フィラーに大別される。
【0046】
本発明の感光性組成物に好適に使用できる代表的な有機フィラーを具体的に例示すれば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、メチルメタクリレート- エチルメタクリレート共重合体、架橋型ポリメチルメタクリレート、架橋型ポリエチルメタクリレート、エチレン- 酢酸ビニル共重合体、スチレン- ブタジエン共重合体、アクリロニトリル- スチレン共重合体、アクリロニトリル- スチレン- ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらは一種または二種以上の混合物として用いることができる。
【0047】
本発明の感光性組成物に好適に利用できる代表的な無機フィラーを具体的に例示すれば、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、あるいは各種のカチオン溶出性フィラー等が挙げられる。このカチオン溶出性フィラーとしては、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等の水酸化物、酸化亜鉛、ケイ酸塩ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等の酸化物が挙げられる。これら無機フィラーもまた、一種または二種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
また、これら無機フィラーと重合性単量体を予め混合し、ペースト状にした後、重合させ、粉砕して得られる粒状の有機- 無機複合フィラーを用いてもよい。さらには上記有機フィラー、無機フィラー及び有機- 無機複合フィラーを適宜組み合わせての使用も可能である。
【0049】
これらフィラーの粒径・形状は特に限定されず、一般的に歯科用材料として使用されている0.01μm~100μm の平均粒子径のフィラーが目的に応じて適宜使用できる。又、フィラーの屈折率も特に限定されず、一般的な歯科用フィラーが有する1.4~1.7の範囲のものが制限なく使用できる。
【0050】
これらフィラーの配合割合は、使用目的に応じて、重合性単量体と混合したときの粘度(操作性) や硬化体の機械的物性等を考慮して適宜決定すればよいが、一般的にはラジカル重合性化合物(C)100重量部に対して、50~1500重量部、好ましくは70~1000重量部の範囲で用いられる。
【0051】
本発明の感光性組成物は、重合反応促進を目的にさらに第三級アミン化合物(E)を含有していてもよい。この第三級アミン化合物(E)は電子供与体として作用し、増感剤(B)などと相互に作用することによって効率よく反応を促進することが知られている(特許文献2)。
【0052】
本発明に好適に利用できる第三級アミン化合物(E)としては、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチル安息香酸プロピル、4-ジエチル安息香酸アミル、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、3,5,N,N-テトラメチルアニリン、N-フェニルグリシン、トリエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
これら三級アミン化合物(E)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、三級アミン化合物(E)の含有量は、ラジカル重合性化合物(C)の重量に基づいて、通常0.005~10重量%、好ましくは0.01~5重量%である。
【0054】
本発明の感光性組成物は、硬化物の外観や物性を制御するため、使用目的に合わせて、カチオン重合性化合物を含んでいてもよい。この場合、本発明に含まれるジアリールヨードニウム塩(A)が光照射により分解し発生する酸がカチオン重合を引き起こす。
【0055】
カチオン重合性化合物としては、公知のものが利用できるが、例えばビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、アジリジン化合物、エピスルフィド化合物、環状アセタール化合物、環状カーボネート化合物、スピロオルトエステル化合物等が挙げられる。特に歯科材料を考慮した場合、体積収縮が小さく重合反応が速い点でエポキシ化合物およびオキセタン化合物が好適に使用される。具体的な化合物としては、例えば特許4344026号公報に記載されている。
【0056】
本発明の感光性組成物は、硬化物の外観や物性を制御するため、使用目的に合わせて、着色剤(塗料及びインキ等に使用されている無機顔料及び有機顔料等の顔料並びに染料)、金属酸化物粒子、金属粉末、溶媒、密着性付与剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、スリップ剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び重合禁止剤等を含有することができる。
【0057】
本発明の感光性組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、光重合性の硬化性組成物の製造方法として公知の方法を適宜採用すればよい。具体的には本発明の感光性組成物を構成する成分を所定量秤量し混合すればよい。この時本組成物が硬化しないよう遮光条件下で行うことが好ましい。
【0058】
本発明の感光性組成物は、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー、キセノンランプあるいはLED光源を使用した、可視領光域にエネルギー線を照射できる光源が使用できる。また、用途によっては、一般的に使用されている高圧水銀灯の他、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びハイパワーメタルハライドランプ等においても、400nm以上にもエネルギー線が発生しているので、使用できる。
【0059】
本発明の感光性組成物は、光を照射することによってラジカルを発生させ、硬化反応を促進させて、硬化物を得ることができる。したがって、このような硬化物の製造方法としては、光源となる光の波長に応じた増感剤(B)を選択し、該感光性組成物に含有させたものを用いて光を照射するか、用いた増感剤(B)が有する吸収波長に該当する光源を用いて光を照射する工程を含むことが好ましい。なお、硬化反応の際には使用条件によるが照射時間が5~60秒間程度になるように配合割合を調節することが好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されることは意図するものではない。なお、以下特記しない限り、%は重量%を意味する。
【0061】
製造例1 リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート(A-1)の合成
窒素雰囲気下で十分に乾燥させた125mL4つ口フラスコに超脱水ジエチルエーテル360部及び3,4,5-トリフルオロ-1-ブロモベンゼン26部仕込み、これをドライアイス/アセトン浴を用いて-78℃に冷却した。2.5mol/Lのn-ブチルリチウムヘキサン溶液70部を10分かけて滴下し、その後、-78℃で30分撹拌した。これに、塩化ガリウム(III)5部を溶解させたジエチルエーテル溶液68部を10分かけて滴下し、-78℃で3時間撹拌した。反応液を徐々に室温に戻しながら攪拌し、室温に戻してから更に5時間撹拌した。析出した固体をろ過し、反応液をエバポレーターに移し、溶媒を留去することにより、灰白色の生成物を得た。生成物を超脱水ヘキサン50部で4回洗浄した後、一晩真空乾燥させ、リチウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレート(A-1)を得た。生成物は19F-NMRにて同定した。
【0062】
製造例2 リチウムテトラキス(2,4-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ガレート(A-2)
製造例1において、3,4,5-トリフルオロ-1-ブロモベンゼン26部を2,4-ビス(トリフルオロメチル)-1-ブロモベンゼン36部とする以外は製造例1と同様の操作を行い、リチウムテトラキス(2,4-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ガレート(A-2)を得た。
【0063】
製造例3 リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート(A-3)の合成
製造例1において、ト3,4,5-トリフルオロ-1-ブロモベンゼン26部をペンタフルオロブロモベンゼン30部とする以外は製造例1と同様の操作を行い、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート(A-3)を得た。
【0064】
製造例4 ヨードニウム塩(IS-1)の合成
反応容器にジ(tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート(東京化成製)5.4部とジクロロメタン30部を加えた。攪拌しながら製造例2で合成したリチウム塩(A-2)9.3部、さらに水50部を加えて室温下18時間攪拌した。静置後水層を分液により除去し、さらに有機層を水50部で5回洗浄した。有機溶媒を減圧下で留去することにより白色固体12.5部を得た。1H、19Fにより、このものはヨードニウム塩(IS-1)であることを確認した。
【0065】
製造例5 ヨードニウム塩(IS-2)の合成
製造例4において、リチウム塩(A-2)9.3gに代えてリチウム塩(A-1)6.0gとする以外は製造例4に記載の方法に従い、目的物8.0gを得た。1H、19Fよりこの白色固体がヨードニウム塩(IS-2)であることを確認した。
【0066】
製造例6 ヨードニウム塩(IS-3)の合成
製造例4において、リチウム塩(A-2)9.3gに代えてリチウム塩(A-3)7.5gとする以外は製造例4に記載の方法に従い、目的物10.3gを得た。1H、19Fよりこの白色固体がヨードニウム塩(IS-3)であることを確認した。
【0067】
製造例7 ヨードニウム塩(IS-4)の合成
反応容器に4-メチルヨードベンゼン2部を加え、さらに酢酸5mL、硫酸1mLを加えて溶解させ、氷水浴にて冷却しながら15℃以下で過硫酸カリウム1gを少しずつ加えた。20℃で4時間反応させ、そこへクメン2.4部を、20℃を超えないように滴下した。その後室温で20時間反応させた。反応液を、リチウム塩(A-3)7.5gを水50mLで溶解させたものへ投入し、さらに3時間撹拌した。そこへジクロロメタン50mLを加えた。静置後水層を分液により除去し、有機層を水50mLにて5回洗浄を行った。ジクロロメタンを濃縮しシクロヘキサンで再結晶を行い、白色固体7.8部を得た。1H、19F-NMRにより、このものはヨードニウム塩(IS-4)であることを確認した。
【0068】
製造例8 ヨードニウム塩(IS-5)の合成
製造例7において、リチウム塩(A-3)7.5部に代えてリチウム塩(A-2)9.3部とする以外は製造例7に記載の方法に従い、目的物を得た。1H、19F-NMRにより、ヨードニウム塩(IS-5)であることを確認した。
【0069】
製造例9 ヨードニウム塩(IS-6)の合成
製造例7において、4-メチルヨードベンゼン2部をヨードベンゼン1.9部、クメン2.4部をn-オクチルオキシベンゼン4.2部とする以外は製造例7に記載の方法に従い、目的物を得た。1H、19F-NMRにより、ヨードニウム塩(IS-6)であることを確認した。
【0070】
<実施例1~14及び比較例1~10>
[感光性組成物の調製]
ラジカル重合性化合物(C)100g(配合比、量については表1に記載)、ジアリールヨードニウム塩(A)1g、増感剤(B)0.2g及び必要に応じ第三級アミン化合物(E)0.2gを均一混合し、本発明の感光性組成物及び比較感光性樹脂組成物を調製した。使用した原材料の種類は表1に示した。この感光性組成物を、内径10mm×肉厚5mm×高さ10mmのポリテトラフルオロエチレン製のモールド片方を硝子板で圧接した状態で感光性組成物を流し込み、光源として照射装置LIGHTNINGCUREスポット光源LC8(浜松ホトニクス社製)を用いて露光を行った。露光はシャープカットフィルター(HOYA製)Y44(430nm以下カット)を通して露光した。以下の評価方法にて硬化性および硬化物外観を確認した。その結果を表1に示す。
[使用した原材料]
IS-1~IS-6(上記に記載ヨードニウム塩)
IS’-1:ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート
IS’-2:4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート
B-1:カンファーキノン
B-2: 3,3'-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)
C-1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
C-2:トリエチレングリコールジメタクリレート
C-3:ビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート
E-1:4-ジメチルアミノ安息香酸エチル
[硬化性評価]
硬化性:硬化物をモールドから取り出し、硬化物表面硬化度合いを指触にて確認し、十分に硬化しているものについてその厚みを測定した。
◎ 表面にタックがなく爪で引っかいても傷がつかず、硬化物厚み5mm以上。
〇 表面にタックがなく爪で引っかいても傷がつかず、硬化物厚みが5mm未満。
△ 表面にタックが残る。
× 液状のまま硬化しない。
硬化物外観:硬化物の外観が透明なものを〇、黄色味を帯びているものを△、黄色~褐色のものを×として評価を行った。
【0071】
【0072】
表1の結果から、本発明の感光性組成物は可視光領域の光照射により効率よく硬化が可能であり、かつ比較の感光性組成物と比べて硬化物の黄変が抑制されていることが分かる。
【0073】
<実施例15および比較例11>
実施例13、および比較例9で配合した感光性組成物3部に対し、充填剤(D)7部をさらに配合した充填剤入り感光性組成物を調製し、上記と同様の硬化性試験を行ったところ、どちらも良好な硬化体を得られたが、実施例では白色の硬化体が得られたのに対し、比較例ではやや黄色の硬化体であった。このことから、本発明の感光性組成物は硬化物の着色を抑制できるので、審美性を課題とする歯科材料に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の感光性組成物は、光(特に可視領域~赤外領域)を利用して、歯科用材料(歯科用配合物、歯科用コンポジット)、塗料、コーティング剤、各種被覆材料(ハードコート、耐汚染被覆材、防曇被覆材、耐触被覆材、光ファイバー等)、粘着テープの背面処理剤、粘着ラベル用剥離シート(剥離紙、剥離プラスチックフィルム、剥離金属箔等)の剥離コーティング材、印刷板、インキ、インクジェットインキ、ポジ型レジスト(回路基板、CSP、MEMS素子等の電子部品製造の接続端子や配線パターン形成等)、レジストフィルム、液状レジスト、ネガ型レジスト(半導体素子及びFPD用透明電極(ITO,IZO、GZO)等の表面保護膜、層間絶縁膜、平坦化膜等の永久膜材料等)、MEMS用レジスト、ポジ型感光性材料、ネガ型感光性材料、各種接着剤(各種電子部品用仮固定剤、HDD用接着剤、ピックアップレンズ用接着剤、FPD用機能性フィルム(偏向板、反射防止膜等)用接着剤、回路形成用および半導体封止用絶縁フィルム、異方導電性接着剤(ACA)、フィルム(ACF)、ペースト(ACP)等)、ホログラフ用樹脂、FPD材料(カラーフィルター、ブラックマトリックス、隔壁材料、ホトスペーサー、リブ、液晶用配向膜、FPD用シール剤等)、光学部材、成形材料(建築材料用、光学部品、レンズ)、注型材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め材、シーリング材、フリップチップ、COF等のチップ封止材、CSPあるいはBGA等のパッケージ用封止材、光半導体(LED)封止材、光導波路材料、ナノインプリント材料、光造用、及びマイクロ光造形用材料等に好適に用いられる。