(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】真空圧力制御システム
(51)【国際特許分類】
G05D 16/20 20060101AFI20231013BHJP
F16K 51/02 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
G05D16/20 A
F16K51/02 A
(21)【出願番号】P 2019224247
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 雄太郎
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-072458(JP,A)
【文献】特開2014-013461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給源と、前記ガス供給源からガスの供給を受ける真空チャンバと、前記真空チャンバの圧力値を調整するための真空制御弁と、前記真空チャンバを減圧するための真空ポンプと、が直列に接続され、前記真空チャンバの圧力値を検出する圧力センサと、前記真空制御弁を制御する制御装置と、を備える真空圧力制御システムであって、前記ガス供給源から、前記真空チャンバに、所定の流量でガスが供給されるときに、前記制御装置が、前記圧力センサにより検出される圧力値に基づいて前記真空制御弁の弁開度の調整を行うことで、前記真空チャンバの圧力値が目標値となるよう圧力値制御を行う真空圧力制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記圧力値制御を行う前に、
前記真空チャンバ内の圧力値と、前記ガスの流量と、の関係を1次関数に近似し、前記1次関数を、前記制御装置に記憶させるマッピングプログラムを備え、
前記1次関数に基づいて、前記ガスの前記所定の流量を供給したときに、前記真空チャンバ内の圧力値を前記目標値とするのに必要な、前記真空制御弁の最適弁開度を算出する弁開度算出プログラムを備え、
前記最適弁開度に基づき前記真空制御弁の弁開度を調整することで、前記真空チャンバ内の圧力値が前記目標値となるよう制御することが可能なこと、
前記弁開度算出プログラムは、
前記圧力値制御を行う前に、
前記所定の弁開度において、前記所定の流量の前記ガスを前記真空チャンバに供給した状態で、前記真空チャンバ内の第2圧力測定値を前記圧力センサにより取得し、
前記第2圧力測定値を、前記1次関数に代入することで、前記ガスの推定流量を算出し、
前記目標値を、切片をゼロとする前記推定流量の1次関数として、該1次関数の傾きを求め、前記傾きから、前記所定の流量における前記最適弁開度を求めること、
を特徴とする真空圧力制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の真空圧力制御システムにおいて、
前記マッピングプログラムは、
前記圧力値制御を行う前に、
前記真空制御弁の、所定弁開度において、前記ガス供給源から前記真空チャンバに、前記マッピングプログラムに定められた測定用流量により前記ガスを供給した状態で、前記所定弁開度における前記真空チャンバの圧力測定値を前記圧力センサより取得し、
前記測定用流量と、前記圧力測定値に基づき、前記所定の弁開度において、切片をゼロとし、前記圧力測定値を通る前記1次関数を求めておくこと、
を特徴とする真空圧力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給源と、ガス供給源からガスの供給を受ける真空チャンバと、真空チャンバの圧力値を調整するための真空制御弁と、真空チャンバを減圧するための真空ポンプと、が直列に接続され、真空チャンバの圧力値を検出する圧力センサと、真空制御弁を制御する制御装置と、を備える真空圧力制御システムであって、ガス供給源から、真空チャンバに、所定の流量でガスが供給されるときに、制御装置が、圧力センサにより検出される圧力値に基づいて真空制御弁の弁開度の調整を行うことで、真空チャンバの圧力値が目標値となるよう圧力値制御を行う真空圧力制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、真空チャンバ内の圧力値を目標圧力値に調整し、保持するようにした真空圧力制御システムが用いられている。このような真空圧力制御システムは、例えば、半導体の材料であるウエハの成膜を行う際に用いられる。成膜に必要な流量のガス(プロセスガス)が供給される真空チャンバの圧力値を、真空制御弁の弁開度の調整を行うことで、目標値に保ち、真空チャンバに設置されるウエハの成膜を行うのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
上記の通り、真空チャンバの圧力値を目標値に保つためには、真空制御弁の弁開度を最適な状態に調整する必要がある。しかし、真空制御弁、最適弁開度がどの程度であるか、実際に圧力値制御をしてみなければ判断することはできない。よって、実際の成膜工程を行う前の事前準備として、真空チャンバに、成膜に必要な流量のプロセスガスを試験的に供給しながら、真空制御弁の弁開度を調整し、真空チャンバの圧力値を目標値とすることができる真空制御弁の最適弁開度を探り当てる作業が必要となる。例えば、
図10に示すように、徐々に弁開度を絞っていき、目標値Ptとなる最適弁開度VOを探り当てるのである。
【0005】
そして、さらに、探り当てた最適弁開度VOにより、実際に真空チャンバの圧力値が目標値Ptとなることの確認作業を行う。例えば、
図11に示すように、真空制御弁の弁開度を最適弁開度VOとして、真空チャンバの圧力値が、実際に目標値Ptとなるかどうか、圧力波形の確認を行うのである。この確認作業が完了してから、成膜工程が行われる。
【0006】
また、成膜工程においては、一度の工程において、複数種のプロセスガスを使用することや、同種のプロセスガスを複数回用いる場合で流量や目標とする圧力値がそれぞれ異なることがあるなど、複数の条件で成膜を行う場合がほとんどである。このため、複数の条件の全ておいて、上記の最適弁開度を探り当てる作業と、実際に真空チャンバの圧力値が目標値となるかどうかの確認作業が必要となるため、使用するプロセスガスの種類が増えるほど成膜工程を行う前の事前準備に時間を取られ、半導体の製造効率に悪影響を与えるおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、真空チャンバの圧力値を目標値とするために必要な真空制御弁の最適弁開度を、容易に算出可能な真空圧力制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の真空圧力制御システムは、次のような構成を有している。
(1)ガス供給源と、ガス供給源からガスの供給を受ける真空チャンバと、真空チャンバの圧力値を調整するための真空制御弁と、真空チャンバを減圧するための真空ポンプと、が直列に接続され、真空チャンバの圧力値を検出する圧力センサと、真空制御弁を制御する制御装置と、を備える真空圧力制御システムであって、ガス供給源から、真空チャンバに、所定の流量でガスが供給されるときに、制御装置が、圧力センサにより検出される圧力値に基づいて真空制御弁の弁開度の調整を行うことで、真空チャンバの圧力値が目標値となるよう圧力値制御を行う真空圧力制御システムにおいて、制御装置は、圧力値制御を行う前に、真空チャンバ内の圧力値と、ガスの流量と、の関係を1次関数に近似し、1次関数を、制御装置に記憶させるマッピングプログラムを備え、1次関数に基づいて、ガスの所定の流量を供給したときに、真空チャンバ内の圧力値を目標値とするのに必要な、真空制御弁の最適弁開度を算出する弁開度算出プログラムを備え、最適弁開度に基づき真空制御弁の弁開度を調整することで、真空チャンバ内の圧力値が目標値となるよう制御することが可能なこと、弁開度算出プログラムは、圧力値制御を行う前に、所定の弁開度において、所定の流量のガスを真空チャンバに供給した状態で、真空チャンバ内の第2圧力測定値を圧力センサにより取得し、第2圧力測定値を、1次関数に代入することで、ガスの推定流量を算出し、目標値を、切片をゼロとする推定流量の1次関数として、該1次関数の傾きを求め、傾きから、所定の流量における最適弁開度を求めること、を特徴とする。
【0009】
(1)に記載の真空圧力制御システムによれば、真空チャンバの圧力値を目標値とするために必要な真空制御弁の最適弁開度を、容易に算出可能である。
制御装置は、マッピングプログラムおよび弁開度算出プログラムを備えている。マッピングプログラムにより、真空チャンバ内の圧力値と、ガスの流量と、の関係を1次関数に近似し、1次関数を制御装置に記憶させる。そして、弁開度算出プログラムにより、記憶された1次関数に基づいて、ガスの所定の流量を供給したときに、真空チャンバ内の圧力値が目標値となるために必要な真空制御弁の最適弁開度を算出し、該算出した最適弁開度に基づき真空制御弁の弁開度を調整することができる。
【0010】
真空チャンバ内の圧力値と、ガスの流量と、の関係を1次関数に近似し、当該1次関数により最適弁開度を算出できるため、複数種のガスを使用する等、複数の条件で成膜を行う場合でも、複数の条件毎に、真空チャンバに、成膜に必要な流量のガスを試験的に供給しながら、真空制御弁の弁開度を調整し、真空チャンバの圧力値を目標値とすることができる最適弁開度を探り当てる作業を行う必要がない。よって、成膜工程を行う前の事前準備に時間を取られ、半導体の製造効率に悪影響を与えるおそれが低減される。
なお、所定の流量とは、実際に真空チャンバの圧力制御を行うときの流量であり、例えば、ウエハの成膜に必要なガスの流量を指す。
【0011】
(2)(1)に記載の真空圧力制御システムにおいて、マッピングプログラムは、圧力値制御を行う前に、真空制御弁の、所定弁開度において、ガス供給源から真空チャンバに、マッピングプログラムに定められた測定用流量によりガスを供給した状態で、所定弁開度における真空チャンバの圧力測定値を圧力センサより取得し、測定用流量と、圧力測定値に基づき、所定の弁開度において、切片をゼロとし、圧力測定値を通る1次関数を求めておくこと、を特徴とする。
【0012】
(2)に記載の真空圧力制御システムによれば、真空チャンバの圧力値を目標値とするために必要な真空制御弁の最適弁開度を、容易に算出可能である。
【0013】
真空制御弁の弁開度が一定であれば、真空チャンバの圧力値は、ガスの流量が多くなるほど高くなり、ガスの流量が少なくなるほど低くなる。即ち、真空チャンバの圧力値とガスの流量とは比例関係にある。このため、真空チャンバ内の圧力値と、ガスの流量と、の関係は、切片をゼロとする1次関数(傾きは所定の弁開度に依存する)に近似することが可能なのであり、この1次関数を用いることで、真空チャンバの圧力値を目標値とするために必要な真空制御弁の最適弁開度を、容易に算出可能となる。
【0014】
また、工場内では同型の半導体製造装置を複数設置する場合があり、複数の半導体製造装置の内、任意の一台で上記1次関数を求めておけば、同型の半導体製造装置で同じ1次関数を用いて、真空チャンバの圧力値を目標値とするために必要な真空制御弁の最適弁開度を算出可能となる。よって、成膜工程を行う前の事前準備に時間を取られ、半導体の製造効率に悪影響を与えるおそれが低減される。
【0015】
(3)(1)または(2)に記載の真空圧力制御システムにおいて、弁開度算出プログラムは、圧力値制御を行う前に、所定の弁開度において、所定の流量のガスを真空チャンバに供給した状態で、真空チャンバ内の第2圧力測定値を圧力センサにより取得し、第2圧力測定値を、1次関数に代入することで、ガスの推定流量を算出し、目標値を、切片をゼロとする推定流量の1次関数として、該1次関数の傾きを求め、傾きから、所定の流量における最適弁開度を求めること、を特徴とする。
【0016】
(3)に記載の真空圧力制御システムによれば、真空チャンバの圧力値を目標値とするために必要な真空制御弁の最適弁開度を、容易に算出可能である。
【0017】
1次関数の傾きは所定の弁開度により定まっており、当該1次関数に所定の流量を供給した状態の、真空チャンバの第2圧力測定値を代入するため、求まる推定流量は、所定の流量と同義である。
【0018】
真空チャンバ内の圧力値とガスの流量との関係は、切片をゼロとする1次関数に近似できることが分かっているため、目標値は、所定の流量と同義である推定流量の1次関数であると言え、当該1次関数の傾きを算出することが可能である。当該傾きは、所定の流量において、目標値を得るための最適弁開度を表すものである。
【0019】
所定の流量と同義である推定流量を、制御装置が自ら算出することで、外部から所定の流量の情報を入力する必要なく、最適弁開度を算出可能となる。したがって、所定の流量の情報を真空制御弁や制御装置に入力するために新たに装置を構成する必要もなく、従来の設備により真空制御弁の最適弁開度を算出可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の真空圧力制御システムによれば、真空チャンバの圧力値を目標値とするために必要な真空制御弁の最適弁開度を、容易に算出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る真空圧力制御システムの構成を表す説明図である。
【
図2】本実施形態に係る真空圧力制御システムに用いられる真空制御弁の断面図である。
【
図3】本実施形態に係る真空圧力制御システムに用いられる制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】ウエハに成膜処理を行うための条件を例示する表である。
【
図5】本実施形態に係るマッピングプログラムのフローを示す図である。
【
図6】本実施形態に係る弁開度算出プログラムのフローを示す図である。
【
図7】真空制御弁の弁開度を一定に保った場合の、真空チャンバ内の圧力値と、プロセスガスの流量の関係を表すグラフである。
【
図8】マッピングプログラムにより作成されたマップを示す図である。
【
図9】弁開度算出プログラムにより最適弁開度を算出する方法を示す図である。
【
図10】従来技術において、最適弁開度を探り当てる作業を説明するグラフである。
【
図11】真空制御弁を最適弁開度とし、圧力波形の確認を行う際のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る真空圧力制御システムの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、真空圧力制御システム1の構成を説明する図である。真空圧力制御システム1は、例えば原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)を用いた半導体製造装置で、ウエハ150の表面処理を行うために用いられる。
【0023】
真空圧力制御システム1は、
図1に示すように、上流側から順に、ウエハ150の表面処理を行うためのプロセスガス(ガスの一例)の供給源であるガス供給源16、マスフローコントローラ20、真空容器である真空チャンバ11、真空制御弁30、真空ポンプ15が直列に接続されている。また、マスフローコントローラ20の上流側では、プロセスガスをパージするのに用いる窒素ガス(N
2)の供給源であるN
2供給源17が、ガス供給源16と並列して接続されている。
【0024】
さらに、真空圧力制御システム1は、真空チャンバ11と真空制御弁30との間に、遮断弁13を介して、真空チャンバ11の圧力値を検出する圧力センサ12を備える他、圧力センサ12および真空制御弁30と電気的に接続される制御装置70を備えている。
【0025】
真空チャンバ11には、ガス給入口11aから、ガス供給源16から供給されるプロセスガス、または、N2供給源17から供給されるパージガスが、所定の流量で供給される。なお、プロセスガスの所定の流量とは、実際に真空チャンバ11の圧力制御を行うときの流量であり、ウエハ150の成膜に必要なプロセスガスの流量を指す。
【0026】
そして、真空チャンバ11のガス排気口11bには、真空制御弁30の第1ポート41aが接続され、真空制御弁30の第2ポート41bには、真空ポンプ15が接続されているため、真空チャンバ11に供給されるプロセスガスまたはパージガスを真空ポンプ15で吸引することができる。この際、制御装置70が、圧力センサ12から真空チャンバ11内の圧力値を得ながら、真空制御弁30の弁開度を調整することで、真空チャンバ11内の圧力値が目標値Ptとなるよう圧力値制御を行う。真空チャンバ11の圧力値が目標値Ptをなるために必要な真空制御弁30の弁開度を最適弁開度VO(
図10、11参照)とする。
【0027】
このような真空圧力制御システム1は、一度の工程において複数の条件で成膜を行う。複数の条件とは、例えば、
図4に示す表の条件1~4を指す。
図4に示す「ガス種」とは、成膜を行うためのプロセスガスの種類である。
図4においては、具体的なガスの種類は示さず、簡易的にAガス、Bガス、Cガスなどと表記する。「ガス流量」とは、成膜に必要なプロセスガスの流量(所定の流量)である。マスフローコントローラ20によりガス流量が調整され、
図4に示す流量が真空チャンバ11に供給される。「目標値」とは、真空チャンバ11内の圧力値の目標値Ptである。この目標値Ptとなるよう、制御装置70により、真空制御弁30の弁開度が調整される。「チャンバ温度」とは、真空チャンバ11内の温度である。なお、各条件の間において、N
2ガスによるパージが行われる。
【0028】
図2は真空制御弁30の断面図であり、真空制御弁30が全開にされたときの状態を示す。真空制御弁30は互いに図中上下に組み付けられた空気圧シリンダ31及びベローズ式ポペット弁32を備える。
【0029】
空気圧シリンダ31は、中空状のシリンダ室を有するシリンダボディ33と、そのシリンダ室内に、空気圧シリンダ31とベローズ式ポペット弁32とが積み重なる方向と平行な方向(図中上下方向)に摺動可能に組み付けられたピストン34とを有する。ピストン34は復帰バネ35により下向きに付勢されている。ピストン34の上端には、上方へ延びるスライドレバー36が設けられる。
【0030】
シリンダボディ33の外側には、開度センサとしてのポテンショメータ37が取り付けられる。ポテンショメータ37は、スライドレバー36に接続された可変抵抗(図示しない)を内蔵する。ピストン34と一体にスライドレバー36が上下動することにより、可変抵抗の値が変わり、ポテンショメータ37は、その抵抗値を、ピストン34の垂直方向における位置に相関する値として制御装置70に出力する。
【0031】
ピストン34の下面には、ベロフラム38が設けられている。ベロフラム38の内周端部はピストン34に固定され、ベロフラム38の外周端部は、シリンダ室の内壁に固定される。ベロフラム38は極めて薄く、構造的には、強力なポリエステル、テトロン布等の上にゴムを被覆して形成される。ベロフラム38は長い変形ストロークと、深い折り返し部を有する。ベロフラム38は円筒状をなし、変形中にその有効受圧面積が一定不変に保たれるダイヤフラムである。シリンダ室は、ピストン34及びベロフラム38により上下に区画された大気室33a及び加圧室33bを含む。上側の大気室33aは復帰バネ35を収容し、不図示の大気ポートから大気が導入される。下側の加圧室33bは、不図示の加圧ポートを通じて、不図示のエア供給源から圧縮エアが導入される。
【0032】
ピストン34の中央には、ベローズ式ポペット弁32内部に挿入されるピストンロッド39が固定されている。ベローズ式ポペット弁32は、ピストンロッド39、弁体40およびピストンロッド39と弁体40とを収容するケーシング41を備える。弁体40はピストンロッド39の、ベローズ式ポペット弁32内部に挿入された側の端部に固定される。ケーシング41は円筒状をなし、前述した第1ポート41a及び第2ポート41bを有する。弁体40の上面にはベローズ42が設けられる。ベローズ42はピストンロッド39を内包する状態で配置される。
【0033】
弁体40は、下面にOリング43が取り付けられており、ケーシング41の第1ポート41aの上端側には、弁体40が当接離間する弁座45が設けられる。弁体40が弁座45側へ移動することで、弁座45に当接し、Oリング43が弁体40と弁座45とに押圧された状態、即ち真空制御弁30が全閉状態になったときに、プロセスガスの流れが遮断される。
【0034】
また、ピストン34が上下動することにより、ピストンロッド39を介して弁体40が上下動する。これにより、真空制御弁30の開度が変わる。そして、ポテンショメータ37はピストン34の垂直方向における位置、ひいては弁体40の垂直方向における位置、つまりは真空制御弁30の弁開度を計測し、その計測値を制御装置70に出力する。
【0035】
制御装置70は、
図3に示すように、CPU701と、ROM702と、RAM703と、記憶部704と、を備える。ROM702には、最適弁開度VOを算出するに用いるマップを作成するためのマッピングプログラム702aと、作成されたマップに基づいて真空制御弁30の最適弁開度VOを算出した上、真空制御弁30の最適弁開度VOに制御する弁開度算出プログラム702bが記憶されている。CPU701は、マッピングプログラム702aまたは弁開度算出プログラム702bに従って、RAM703に一時的にデータ保管をしながら真空制御弁30の動作を制御する。また、記憶部704は、マッピングプログラム702aにより作成されたマップを記憶する。
【0036】
<真空圧力制御システムの作用>
以上のような構成の真空圧力制御システム1の作用について、真空圧力制御システム1を用いて、例えば、
図4に示す表の条件1~4によりウエハ150の成膜処理を行うとした場合について説明する。
【0037】
真空圧力制御システム1は、成膜処理を行うための実際の圧力制御を行うに当たり、事前にマッピングプログラム702aおよび弁開度算出プログラム702bにより、条件1~4それぞれにおける真空制御弁30の最適弁開度VOを算出する。
【0038】
はじめに、制御装置70は、マッピングプログラム702aにより、最適弁開度VOを算出するのに用いるマップ作成を行う。
マップ作成を行うに当たり、作業者は、まずマッピングを行うための流量である測定用流量Ft(
図8参照)で、真空チャンバ11にプロセスガスを供給した状態とする。測定用流量Ftは、マッピングプログラム702aに予め定められた流量であり、例えば、10L/minなど、実際のプロセスガスの供給量に近い値に設定される。
【0039】
測定用流量Ftを供給した状態で、マッピングプログラム702aをスタートさせる。制御装置70は、真空制御弁30の弁開度を、所定の弁開度に調整する(S11)。弁開度の調整は、ポテンショメータ37から出力される抵抗値に基づき制御される。
【0040】
ここで、所定の弁開度とは、マップ作成のために予め設定された弁開度であり、複数の弁開度が設定されている。例えば、最大弁開度を100%とし、
7%、11%、14%、18%、21%、25%、54%、100%、114%が設定される(
図8参照)。ここでは、まずは弁開度7%に調整されるものとする。
【0041】
所定の弁開度に調整されると、次に制御装置70は、測定用流量Ftでプロセスガスが供給された状態の真空チャンバ11の圧力測定値Pm11を、圧力センサ12より取得し、記憶する(S12)。
【0042】
そして、残りの全ての所定の弁開度(11%、14%、18%、21%、25%、54%、100%、114%)において、真空チャンバ11の圧力測定値Pm12~Pm20を得るまで繰り返す(S13:NO)。
【0043】
全ての弁開度で真空チャンバ11の圧力測定値を得ると(S13:YES)、制御装置70は、マップ作成を行う(S14)。具体的には、複数の所定の弁開度(7%、11%、14%、18%、21%、25%、54%、100%、114%)のそれぞれにおいて、圧力測定値Pm11~Pm20をプロットし、当該プロットされた圧力測定値Pm11~Pm20を通る、切片をゼロとした1次関数LF11~LF20を算出する。
【0044】
1次関数LF11~LF20は、真空チャンバ11内の圧力値と、プロセスガスの流量と、の関係を近似したものである。なぜこのような近似が可能であるか説明すると、例えば、真空制御弁30の弁開度を7%に固定した状態で、プロセスガスの流量を増加させていくと、
図7に示すように、プロセスガスの流量の増加に伴い、真空チャンバ11内の圧力値が増加していくのである。これは、真空制御弁30をどのような弁開度としても同様で(例えば、
図7に示すように、弁開度を11%、14%、18%、21%、25%、54%、100%、114%としても同様である)、真空制御弁30の弁開度が一定であれば、真空チャンバ11の圧力値は、プロセスガスの流量が多くなるほど高くなり、プロセスガスの流量が少なくなるほど低くなること、即ち、真空チャンバ11の圧力値とプロセスガスの流量とは比例関係にあることを示している。このため、真空チャンバ11内の圧力値と、プロセスガスの流量と、の関係は、切片をゼロとする1次関数LF11~LF20に近似することが可能なのである。
【0045】
マップ作成が完了すると、制御装置70は、作成されたマップを記憶部704に記憶させ(S15)、マッピングプログラム702aは終了する。
【0046】
次に、弁開度算出プログラム702bにより、
図4に示す条件1~5のそれぞれについて、真空制御弁30の最適弁開度VOを算出する動作について説明する。
【0047】
まず条件1についての最適弁開度VOを算出する。
最適弁開度VOを算出するに当たり、作業者は、まず、プロセスガスを、所定の流量で真空チャンバ11に供給した状態とする。この所定の流量とは、条件1~5において定められているガス流量を指す。条件1であれば、
図4に示す通り、0.5L/minが所定の流量となる。
【0048】
プロセスガスを所定の流量で供給した状態とした後、作業者は弁開度算出プログラム702bを動作させる。
制御装置70は、複数の所定の弁開度(7%、11%、14%、18%、21%、25%、54%、100%、114%)の内のいずれかに、真空制御弁30の弁開度を調整する(S21)。これは、弁開度算出プログラム702bの動作前に、作業者が複数の所定の弁開度の内から任意に選択可能なものとし、ここでは、例えば11%の弁開度を選択したとして、制御装置70が、真空制御弁30の弁開度を11%に調整するものとする。
【0049】
そして、制御装置70は、圧力センサ12により、第2圧力測定値Pm21を取得する(S22)。
第2圧力測定値Pm21を取得すると、制御装置70は、マップに基づき、推定流量Feを算出する(S23)。例えば、真空制御弁30を、11%の弁開度としているのであれば、LF12にPm21を代入すると、推定流量Feが算出可能である。
【0050】
推定流量Feは、真空チャンバ11に供給されるプロセスガスの流量を指し、所定の流量(条件1であれば0.5L/min)と同義である。
なぜ、所定の流量と同義の推定流量Feを算出しているのかというと、真空制御弁30は、マスフローコントローラ20から流量に関する情報を取得することができないためである。また、真空制御弁30がマスフローコントローラ20から流量に関する情報を取得できるようにするには、新たな回路構成を構成しなければならず、コストがかかるが、上述の通り、推定流量Feとして制御装置70自らが算出することで、従来の回路構成を用いることにより、流量に関する情報を取得することができるようになり、コストを抑えることができる。
【0051】
次に、制御装置70は、真空チャンバ11の圧力値の目標値Ptを把握する(S24)。目標値Ptは、条件1であれば133Paである。
そして、目標値Ptと推定流量Feに基づいて、最適弁開度VOを算出する(S25)。圧力値と流量の関係は1次関数に近似可能であるため、
図9に示すように、目標値Ptを、切片をゼロとする推定流量Feの1次関数LF21とすることができる。当該1次関数LF21の傾きを求めれば、当該傾きから、推定流量Fe、即ち所定の流量における、真空チャンバ11内の圧力値を目標値Ptとするのに適した真空制御弁30の最適弁開度VOを求めることができるのである。
【0052】
そして、制御装置70は、算出した最適弁開度VOにより、実際に真空チャンバ11の圧力値が目標値Ptとなることの確認を行う(S26)。例えば、
図11に示すように、真空制御弁30の弁開度を最適弁開度VOとして、真空チャンバ11の圧力値が、実際に目標値Ptとなるかどうか、圧力波形の確認を行うのである。従来技術においては、
図10に示すような最適弁開度VOを探り当てる作業が必要であったが、上述の通り最適弁開度VOを算出可能であるため、最適弁開度VOを探り当てる作業が必要なくなる。
【0053】
圧力波形により目標値Ptとなることが確認されると(S26:YES)、制御装置70は、求めた最適弁開度VOを記憶部704に記憶させる(S27)。なお、圧力波形の確認の結果、目標値Ptとならない場合、制御装置70は、エラー通知を行い(S29)、弁開度算出プログラム702bは終了する。
【0054】
以上のようにして、制御装置70は、条件1~5の全てにおいて、S21からS25までを繰り返し(S28:NO)、各条件の最適弁開度VOを求める。条件1~5の全てにおいて、S21からS27までを完了すると(S28:YES)、弁開度算出プログラム702bは終了する。
【0055】
そして、実際の成膜処理を行う際、制御装置70は、条件1で成膜を行うときには条件1における最適弁開度VOを、条件2で成膜を行うときには条件2における最適弁開度VOを、というように、条件毎に記憶部704から最適弁開度VOを読み出してきて、真空制御弁30の弁開度を最適弁開度VOに調整する。これにより、真空チャンバ11内の圧力値が目標値Ptとなるよう制御することが可能となる。
【0056】
また、工場内では同型の半導体製造装置を複数設置する場合があり、複数の半導体製造装置の内、任意の一台でマッピングプログラム702aによりマップを作成しておけば、同型の半導体製造装置で同じマップを用いて、真空チャンバ11の圧力値を目標値Ptとするために必要な真空制御弁30の最適弁開度VOを算出可能となる。よって、成膜工程を行う前の事前準備に時間を取られ、半導体の製造効率に悪影響を与えるおそれが低減される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の真空圧力制御システム1によれば、
(1)ガス供給源16と、ガス供給源16からプロセスガスの供給を受ける真空チャンバ11と、真空チャンバ11の圧力値を調整するための真空制御弁30と、真空チャンバ11を減圧するための真空ポンプ15と、が直列に接続され、真空チャンバ11の圧力値を検出する圧力センサ12と、真空制御弁30を制御する制御装置70と、を備える真空圧力制御システム1であって、ガス供給源16から、真空チャンバ11に、所定の流量でプロセスガスが供給されるときに、制御装置70が、圧力センサ12により検出される圧力値に基づいて真空制御弁30の弁開度の調整を行うことで、真空チャンバ11の圧力値が目標値Ptとなるよう圧力値制御を行う真空圧力制御システム1において、制御装置70は、圧力値制御を行う前に、真空チャンバ11内の圧力値と、プロセスガスの流量と、の関係を1次関数LF11~LF20に近似し、1次関数LF11~LF20を、制御装置70に記憶させるマッピングプログラム702aを備え、1次関数LF11~LF20に基づいて、プロセスガスの所定の流量を供給したときに、真空チャンバ11内の圧力値を目標値Ptとするのに必要な、真空制御弁30の最適弁開度VOを算出する弁開度算出プログラム702bを備え、最適弁開度VOに基づき真空制御弁30の弁開度を調整することで、真空チャンバ11内の圧力値が目標値Ptとなるよう制御することが可能なこと、を特徴とする。
【0058】
(1)に記載の真空圧力制御システム1によれば、真空チャンバ11の圧力値を目標値Ptとするために必要な真空制御弁30の最適弁開度VOを、容易に算出可能である。
【0059】
制御装置70は、マッピングプログラム702aおよび弁開度算出プログラム702bを備えている。マッピングプログラム702aにより、真空チャンバ11内の圧力値と、プロセスガスの流量と、の関係を1次関数LF11~LF20に近似し、1次関数LF11~LF20を制御装置70に記憶させる。そして、弁開度算出プログラム702bにより、記憶された1次関数LF11~LF20に基づいて、プロセスガスの所定の流量を供給したときに、真空チャンバ11内の圧力値が目標値Ptとなるために必要な真空制御弁30の最適弁開度VOを算出し、該算出した最適弁開度VOに基づき真空制御弁30の弁開度を調整することができる。
【0060】
真空チャンバ11内の圧力値と、プロセスガスの流量と、の関係を1次関数LF11~LF20に近似し、当該1次関数LF11~LF20により最適弁開度VOを算出できるため、複数種のプロセスガスを使用する等、複数の条件で成膜を行う場合でも、複数の条件(条件1~5)毎に、真空チャンバ11に、成膜に必要な流量のプロセスガスを試験的に供給しながら、真空制御弁30の弁開度を調整し、真空チャンバ11の圧力値を目標値Ptとすることができる最適弁開度VOを探り当てる作業を行う必要がない。よって、成膜工程を行う前の事前準備に時間を取られ、半導体の製造効率に悪影響を与えるおそれが低減される。
なお、所定の流量とは、実際に真空チャンバ11の圧力制御を行うときの流量であり、例えば、ウエハ150の成膜に必要なプロセスガスの流量を指す。
【0061】
(2)(1)に記載の真空圧力制御システム1において、マッピングプログラム702aは、圧力値制御を行う前に、真空制御弁30の、所定弁開度において、ガス供給源16から真空チャンバ11に、マッピングプログラム702aに定められた測定用流量によりプロセスガスを供給した状態で、所定弁開度における真空チャンバ11の圧力測定値Pm11~Pm20を圧力センサ12より取得し、測定用流量と、圧力測定値Pm11~Pm20に基づき、所定の弁開度において、切片をゼロとし、圧力測定値Pm11~Pm20を通る1次関数LF11~LF20を求めておくこと、を特徴とする。
【0062】
(2)に記載の真空圧力制御システム1によれば、真空チャンバ11の圧力値を目標値Ptとするために必要な真空制御弁30の最適弁開度VOを、容易に算出可能である。
【0063】
真空制御弁30の弁開度が一定であれば、真空チャンバ11の圧力値は、プロセスガスの流量が多くなるほど高くなり、プロセスガスの流量が少なくなるほど低くなる。即ち、真空チャンバ11の圧力値とプロセスガスの流量とは比例関係にある。このため、真空チャンバ11内の圧力値と、プロセスガスの流量と、の関係は、切片をゼロとする1次関数LF11~LF20(傾きは所定の弁開度に依存する)に近似することが可能なのであり、この1次関数LF11~LF20を用いることで、真空チャンバ11の圧力値を目標値Ptとするために必要な真空制御弁30の最適弁開度VOを、容易に算出可能となる。
【0064】
また、工場内では同型の半導体製造装置を複数設置する場合があり、複数の半導体製造装置の内、任意の一台で上記1次関数LF11~LF20を求めておけば、同型の半導体製造装置で同じ1次関数LF11~LF20を用いて、真空チャンバ11の圧力値を目標値Ptとするために必要な真空制御弁30の最適弁開度VOを算出可能となる。よって、成膜工程を行う前の事前準備に時間を取られ、半導体の製造効率に悪影響を与えるおそれが低減される。
【0065】
(3)(1)または(2)に記載の真空圧力制御システム1において、弁開度算出プログラム702bは、圧力値制御を行う前に、所定の弁開度において、所定の流量のプロセスガスを真空チャンバ11に供給した状態で、真空チャンバ11内の第2圧力測定値Pm21を圧力センサ12により取得し、第2圧力測定値Pm21を、1次関数LF11~LF20に代入することで、プロセスガスの推定流量Feを算出し、目標値Ptを、切片をゼロとする推定流量Feの1次関数LF21として、該1次関数LF21の傾きを求め、傾きから、所定の流量における最適弁開度VOを求めること、を特徴とする。
【0066】
(3)に記載の真空圧力制御システム1によれば、真空チャンバ11の圧力値を目標値Ptとするために必要な真空制御弁30の最適弁開度VOを、容易に算出可能である。
【0067】
1次関数LF11~LF20の傾きは所定の弁開度により定まっており、当該1次関数LF11~LF20に所定の流量を供給した状態の、真空チャンバ11の第2圧力測定値Pm21を代入するため、求まる推定流量Feは、所定の流量と同義である。
【0068】
真空チャンバ11内の圧力値とプロセスガスの流量との関係は、切片をゼロとする1次関数に近似できることが分かっているため、目標値Ptは、所定の流量と同義である推定流量Feの1次関数LF21であると言え、当該1次関数LF21の傾きを算出することが可能である。当該傾きは、所定の流量において、目標値Ptを得るための最適弁開度VOを表すものである。
【0069】
所定の流量と同義である推定流量Feを、制御装置70が自ら算出することで、外部から所定の流量の情報を入力する必要なく、最適弁開度VOを算出可能となる。したがって、所定の流量の情報を真空制御弁30や制御装置70に入力するために新たに装置を構成する必要もなく、従来の設備により真空制御弁30の最適弁開度VOを算出可能となる。
【0070】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、マッピングプログラム702aによりマップ作成を行う際の所定の弁開度として、7%、11%、14%、18%、21%、25%、54%、100%、114%の10種の弁開度を挙げているが、これらに限定されるものでなく、任意の弁開度とすることが可能である。また10種に限定されるものでもない。
【符号の説明】
【0071】
1 真空圧力制御システム
11 真空チャンバ
12 圧力センサ
15 真空ポンプ
16 ガス供給源
30 真空制御弁
70 制御装置