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特許7365754高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/403 20210101AFI20231013BHJP
   H01M 50/406 20210101ALI20231013BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20231013BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20231013BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20231013BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231013BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20231013BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20231013BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20231013BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20231013BHJP
【FI】
H01M50/403 D
H01M50/403 A
H01M50/406
H01M50/414
H01M50/417
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/443 Z
H01M50/446
H01M50/451
H01M50/457
H01M50/489
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022519384
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 CN2021099441
(87)【国際公開番号】W WO2022121265
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】202011463207.4
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522118469
【氏名又は名称】重慶金美新材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHONGQING JIMAT NEW MATERIAL TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.12,Jinfu 2nd Road,Qiaohe Industrial Park,Gunan Street,Qijiang District,Chongqing 401421,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】臧 世▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】劉 文▲卿▼
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106953050(CN,A)
【文献】中国実用新案第205194767(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第111785893(CN,A)
【文献】米国特許第08470898(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法であって、
β-スポジュメン粉末、酸化マグネシウム、導電性カーボンブラック及び水性接着剤の4種の材料を混合して均一に撹拌し、水性スラリーを得る水性スラリーを製造するステップS1と、
トランス-1,4-ポリイソプレン50~60部、シス-1,4-ポリブタジエンゴム20~30部、導電性カーボンブラック5~10部及び水溶性塩5~10部を混錬造粒機に投入して、混錬を行い、第1材料を製造し、
窒化アルミニウムとエタノールの混合溶液に前記第1材料を加えて、撹拌し、吸引ろ過した後、混合物を乾燥させ、乾燥したものを不活性ガスの保護下で仮焼し、窒化アルミニウム被覆固体材料を得て、
高分子重合体粒子と前記窒化アルミニウム被覆固体材料を混合してフィルムブロー成形機に入れ、フィルムブロー法を用いて高分子重合体粒子と前記窒化アルミニウム被覆固体材料との混合材料をフィルムとしてブロー成形し、得られたフィルムを水に通してから乾燥させ、第1のフィルムを得る第1のフィルムを製造するステップS2と、
ハロゲン含有化合物を水溶性塩と混合して溶融した後、フィルムをブロー成形し、水を通してから乾燥させ、第2のフィルムを得る第2のフィルムを製造するステップS3と、
第1のフィルム上に水性スラリーを塗布して、第1のフィルムの表面に水性スラリー層を形成し、これにより第1の複合フィルムを形成し、第2のフィルム上に水性スラリーを塗布して、第2のフィルムの表面に水性スラリー層を形成し、これにより第2の複合フィルムを形成し、
第1の複合フィルム及び第2の複合フィルムを乾燥させた後、第1の複合フィルムの水性スラリー層と第2の複合フィルムの水性スラリー層を複合化して、リチウムイオン電池用セパレータを得るリチウムイオン電池用セパレータを製造するステップS4とを含む、
ステップS1において、β-スポジュメン粉末は30~40部、酸化マグネシウムは20~35部、導電性カーボンブラックは5~10部、水性接着剤は25~45部である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記水性接着剤はポリビニルアルコール系水性粘着剤又は水性ポリウレタンであり、前記水性スラリーの粘度の範囲は500~1000cps/25℃である、ことを特徴とする請求項に記載の高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法。
【請求項3】
ステップS2において、混錬時の温度は100~130℃、混錬時間は30~60minであり、混合物の乾燥温度は80~100℃であり、仮焼温度は300~400℃であり、前記第1材料の相転移温度は50~80℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法。
【請求項4】
ステップS2及びステップS3において、フィルムを水に通した後、50~60℃の温度で10~20min乾燥させる、ことを特徴とする請求項1に記載の高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法。
【請求項5】
ステップS2において、前記高分子重合体粒子はPP又はPETである、ことを特徴とする請求項1に記載の高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法。
【請求項6】
ステップS2において、窒化アルミニウム及びエタノールは混合されると懸濁液になり、窒化アルミニウム、エタノール及び前記第1材料の重量比は3:6:1である、ことを特徴とする請求項1に記載の高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法。
【請求項7】
ステップS4において、第1の複合フィルム及び第2の複合フィルムの乾燥温度は50~100℃であり、乾燥時間は1~2hである、ことを特徴とする請求項1に記載の高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法。
【請求項8】
ステップS4において、第1の複合フィルムの水性スラリー層及び第2の複合フィルムの水性スラリー層の厚さはいずれも250~500nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン電池の技術分野に関し、より具体的には、本発明は、高安全性リチウムイオン電池用セパレータ、製造方法及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、比エネルギーが大きく、サイクル寿命が長いため、様々な電子製品に広く使用されているが、リチウムイオン電池の使用が増えるにつれて、リチウムイオン電池の欠点が徐々に現れ、ここ数年、電池が発火することがしばしば報告され、人々の生命や財産に大きな損害を与えている。
【0003】
そのため、リチウムイオン電池の使用中に発生する発熱や爆発には、2つの原因があり、その1つは正電極と負電極で発生したリチウムデンドライトが隔膜を突き破って内部短絡を招くことであり、もう1つは主に電池を正しく使用しない時、電池の内部で発生した反応を直ちに遮断できず、それによって連続反応を招き、危険の発生を招くことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の欠陥を解決するために、本発明は、温度が上がるときに電解液の反応を抑制することで電池を保護する役割を果たす高安全性リチウムイオン電池用セパレータ、製造方法及びリチウムイオン電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明がその技術的課題を解決するために採用する技術案は、以下のとおりである。高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法であって、その改良として、
セラミック材料、酸化マグネシウム、導電性カーボンブラック及び水性接着剤を混合して均一に撹拌し、水性スラリーを得る水性スラリーを製造するステップS1と、
トランス-1,4-ポリイソプレン50~60部、シス-1,4-ポリブタジエンゴム20~30部、導電性カーボンブラック5~10部及び水溶性塩5~10部を混錬造粒機に投入して、混錬を行い、粒子径10~20nmの記憶材料を製造し、
窒化アルミニウムとエタノールの混合溶液に記憶材料を加えて、撹拌し、吸引ろ過した後、混合物を乾燥させ、乾燥したものを不活性ガスの保護下で仮焼し、窒化アルミニウム被覆固体材料を得て、
高分子重合体粒子と固体材料を混合してフィルムブロー成形機に入れ、フィルムブロー法を用いて高分子重合体粒子と固体材料との混合材料をフィルムとしてブロー成形し、得られたフィルムを水に通してから乾燥させ、第1のフィルムを得る第1のフィルムを製造するステップS2と、
ハロゲン含有化合物を水溶性塩と混合して溶融した後、フィルムをブロー成形し、水を通してから乾燥させ、第2のフィルムを得る第2のフィルムを製造するステップS3と、
第1のフィルム上に水性スラリーを塗布して、第1のフィルムの表面に水性スラリー層を形成し、これにより第1の複合フィルムを形成し、第2のフィルム上に水性スラリーを塗布して、第2のフィルムの表面に水性スラリー層を形成し、これにより第2の複合フィルムを形成し、
第1の複合フィルム及び第2の複合フィルムを乾燥させた後、第1の複合フィルムの水性スラリー層と第2の複合フィルムの水性スラリー層を複合化して、リチウムイオン電池用セパレータを得るリチウムイオン電池用セパレータを製造するステップS4とを含む。
【0006】
さらに、ステップS1において、セラミック材料はβ-スポジュメン粉末であり、β-スポジュメン粉末は30~40部、酸化マグネシウムは20~35部、導電性カーボンブラックは5~10部、水性接着剤は25~45部である。
【0007】
さらに、前記水性接着剤はポリビニルアルコール系水性粘着剤又は水性ポリウレタンであり、前記水性スラリーの粘度の範囲は500~1000cps/25℃である。
【0008】
さらに、ステップS2において、混錬時の温度は100~130℃、混錬時間は30~60minであり、混合物の乾燥温度は80~100℃であり、仮焼温度は300~400℃であり、前記記憶材料の相転移温度は50~80℃である。
【0009】
さらに、ステップS2及びステップS3において、フィルムを水に通した後、50~60℃の温度で10~20min乾燥させる。
【0010】
さらに、ステップS2において、前記高分子重合体粒子はPP又はPETである。
【0011】
さらに、ステップS2において、窒化アルミニウム及びエタノールは混合されると懸濁液になり、窒化アルミニウム、エタノール及び記憶材料の重量比は3:6:1である。
【0012】
さらに、ステップS4において、第1の複合フィルム及び第2の複合フィルムの乾燥温度は50~100℃であり、乾燥時間は1~2hである。
【0013】
さらに、ステップS4において、第1の複合フィルムの水性スラリー層及び第2の複合フィルムの水性スラリー層の厚さはいずれも250~500nmである。
【0014】
別の態様では、本発明は、また、高安全性リチウムイオン電池用セパレータを提供し、その改良として、
第1のフィルム、第2のフィルム、及び水性スラリー層を含み、前記第1のフィルムは水性スラリー層を介して第2のフィルムに密着しており、
前記第1のフィルムの内部にはいくつかの固体材料が嵌め込まれており、該固体材料の外部が窒化アルミニウムシェルであり、窒化アルミニウムシェルの内部には穴が形成された記憶材料があり、前記第1のフィルムには記憶材料の穴に連通している第1の貫通孔があり、前記第2のフィルムには貫通している第2の貫通孔がある。
【0015】
上記構成において、前記記憶材料は、トランス-1,4-ポリイソプレン50~60部、シス-1,4-ポリブタジエンゴム20~30部、導電性カーボンブラック5~10部及び水溶性塩5~10部を混錬造粒機に投入して混錬した粒子径10~20nmのものである。
【0016】
上記構成において、前記固体材料は、記憶材料を窒化アルミニウムとエタノールの混合溶液に加えて、撹拌し、吸引ろ過した後、混合物を乾燥させ、乾燥したものを不活性ガスの保護下で仮焼したものである。
【0017】
上記構成において、前記水性スラリー層は、β-スポジュメン粉末30~40部、酸化マグネシウム20~35部、導電性カーボンブラック5~10部及び水性接着剤25~45部を撹拌して製造したものである。
【0018】
別の態様では、本発明は、また、リチウムイオン電池を提供し、その改良として、該リチウムイオン電池のセパレータは前記高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法で得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。第1のフィルムにわたって球状粒子(即ち固体材料)が分布しており、第1のフィルムには球状粒子に連通している第1の貫通孔があり、しかも、固体材料における記憶材料に穴がある。温度が上がると、記憶材料の穴が自動的に閉じられ、電解液のさらなる反応を抑制し、これにより、電池を保護する役割を果たし、温度が下がると、チャンネルが開放する。温度が一定の温度になると、セパレータの穴が自動的に閉じられて、リチウムイオン電解液のさらなる反応を抑制し、リチウムイオン電池の使用安全性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法の模式的なフローチャートである。
図2】本発明の高安全性リチウムイオン電池用セパレータの第1の複合フィルムの断面模式図である。
図3】本発明の高安全性リチウムイオン電池用セパレータの第2の複合フィルムの断面模式図である。
図4】本発明の高安全性リチウムイオン電池用セパレータの断面模式図である。
図5】本発明の高安全性リチウムイオン電池用セパレータの固体材料の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面及び実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【0022】
以下、本発明の目的、特徴及び効果を十分に理解できるように、実施例及び図面を参照して本発明の構想、具体的な構造及びこれらによる技術的効果を明確且つ完全に説明する。明らかに、説明される実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではなく、当業者が本発明の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに得る他の実施例は、本発明の特許範囲に属する。また、特許にかかわる全ての結合/接続関係は、構成要素が直接連結されるだけではなく、実施の具体的な状況に応じて、結合補助部材を増減することにより、より好ましい結合構造を構成することを意味する。本発明における各技術的特徴は、互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせてもよい。
【0023】
実施例1
図1に示すように、本発明は高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法を開示し、具体的には、該方法は、以下のステップを含む。
【0024】
S1、水性スラリーの製造
セラミック材料、酸化マグネシウム、導電性カーボンブラック及び水性接着剤を混合して均一に撹拌し、水性スラリーを得た。
本実施例では、セラミック材料はβ-スポジュメン粉末であり、β-スポジュメン粉末は30部、酸化マグネシウムは20部、導電性カーボンブラックは5部、水性接着剤は25部であり、且つ、前記水性接着剤は水を溶剤としたポリビニルアルコール系水性粘着剤であり、得られた水性スラリーの粘度の範囲は500~1000cps/25℃であった。
【0025】
S2、第1のフィルムの製造
トランス-1,4-ポリイソプレン50部、シス-1,4-ポリブタジエンゴム20部、導電性カーボンブラック5部及び水溶性塩5部を混錬造粒機に投入して、混錬を温度100℃で60min行い、粒子径10~20nmの記憶材料を製造した。この場合、記憶材料の相転移温度は60℃であり、一般には、このようなプロセスにより製造された記憶材料の相転移温度は50~80℃である。その後、窒化アルミニウムとエタノールの混合溶液に記憶材料を加えて、撹拌し、吸引ろ過した後、混合物を80℃で乾燥させ、乾燥したものを不活性ガスの保護下、300℃で仮焼し、窒化アルミニウム被覆固体材料を得た。本実施例では、窒化アルミニウムとエタノールは混合されると懸濁液になり、窒化アルミニウム、エタノール及び記憶材料の重量比は3:6:1であった。
【0026】
最後に、高分子重合体粒子と固体材料を混合してフィルムブロー成形機に入れ、フィルムブロー法を用いて高分子重合体粒子と固体材料との混合材料をフィルムとしてブロー成形し、得られたフィルムを水に通してから乾燥させ、第1のフィルムを得た。このステップでは、フィルムを水に通した後、50℃の温度で20min乾燥させ、且つ、上記の高分子重合体粒子はPPとした。
【0027】
ステップS2において、水に通す際には、記憶材料中の水溶性塩が水に溶解すると、記憶材料内に穴が形成される。記憶材料の相転移温度は一般に50~80℃であるので、温度がこの範囲の温度に上がると、記憶材料には一定の変形が起こり、それにより記憶材料の内部の穴が閉じられ、温度が下がると、記憶材料は元の状態に戻る。このため、電池が正しく使用されなかったり他の原因により電池の温度が高すぎる場合、記憶材料はセパレータを自動的に閉じて、正極と負極の間でのリチウムイオンの交換を遮断し、反応を抑制する目的を達成し、温度が正常になると、形状記憶材料は自発的に回復し、このとき、リチウムイオン電池は正常に使用され得る。
【0028】
S3、第2のフィルムの製造
ハロゲン含有化合物を水溶性塩と混合して溶融した後、フィルムをブロー成形し、水を通してから乾燥させ、第2のフィルムを得た。このステップでは、フィルムを水に通した後、50℃の温度で20min乾燥させ、且つ、水に通した後、水溶性塩が溶解し、第2のフィルムに微細な貫通孔が形成された。
【0029】
S4、リチウムイオン電池用セパレータの製造
第1のフィルム10上に水性スラリーを塗布して、第1のフィルム10の表面に水性スラリー層30を形成し、これにより、図2に示すような構造の第1の複合フィルム40を形成した。第2のフィルム20上に水性スラリーを塗布して、第2のフィルム20の表面に水性スラリー層30を形成し、これにより、図3に示すような構造の第2の複合フィルム50を形成した。第1の複合フィルム40の水性スラリー層30及び第2の複合フィルム50の水性スラリー層30の厚さはいずれも250nmであった。
【0030】
第1の複合フィルム40及び第2の複合フィルム50を乾燥させた後、第1の複合フィルム40の水性スラリー層30と第2の複合フィルム50の水性スラリー層30を複合化し、図4に示すような構造のリチウムイオン電池用セパレータを得た。このステップでは、第1の複合フィルム40及び第2の複合フィルム50の乾燥温度は50℃であり、乾燥時間は2hであった。
【0031】
図4図5に示すように、本発明は、また、第1のフィルム10、第2のフィルム20、及び水性スラリー層30を含み、前記第1のフィルム10が水性スラリー層30を介して第2のフィルム20に密着している高安全性リチウムイオン電池用セパレータを提供する。図5に示すように、前記第1のフィルム10の内部にはいくつかの固体材料101が嵌め込まれており、該固体材料101の外部が窒化アルミニウムシェル102であり、窒化アルミニウムシェル102の内部には、穴が形成された記憶材料103があり、前記第1のフィルム10には、記憶材料103の穴に連通している第1の貫通孔があり、前記第2のフィルム20には貫通している第2の貫通孔があった。
【0032】
本実施例では、前記記憶材料103は、トランス-1,4-ポリイソプレン50部、シス-1,4-ポリブタジエンゴム20部、導電性カーボンブラック5部及び水溶性塩5部を混錬造粒機に投入して混錬した粒子径10~20nmのものである。さらに、前記固体材料101は、記憶材料103を窒化アルミニウムとエタノールの混合溶液に加えて、撹拌し、吸引ろ過した後、混合物を乾燥させ、乾燥したものを不活性ガスの保護下で仮焼して製造したものである。上記の実施例では、前記水性スラリー層30は、β-スポジュメン粉末30部、酸化マグネシウム20部、導電性カーボンブラック5部及び水性接着剤25部を撹拌したものである。設けられた水性スラリー層30においてセラミック材料としてβ-スポジュメン粉末が使用されることにより、セパレータの強度が高まり、正極及び負極で発生したリチウムデンドライトがセパレータを突き破って短絡を招く危険が回避される。
【0033】
以上に基づいて、本発明の高安全性リチウムイオン電池用セパレータでは、第1のフィルム10にわたって球状粒子(即ち固体材料101)が分布しており、第1のフィルム10には、球状粒子に連通している第1の貫通孔があり、且つ、固体材料101における記憶材料103に穴がある。温度が上がると、記憶材料103の穴が自動的に閉じられ、電解液のさらなる反応を抑制し、これにより、電池を保護する役割を果たし、温度が下がると、チャンネルが開放する。温度が一定の温度になると、セパレータの穴が自動的に閉じられ、リチウムイオン電解液のさらなる反応を抑制しつつ、正極板及び負極板におけるリチウムデンドライトがセパレータを突き破って短絡を招くことを回避する。
【0034】
また、本発明は、更に、セパレータが前記高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法で得られたリチウムイオン電池を提供する。
【0035】
実施例2
図1に示すように、本発明は高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法を開示し、具体的には、該方法は、以下のステップを含む。
【0036】
S1、水性スラリーの製造
セラミック材料、酸化マグネシウム、導電性カーボンブラック及び水性接着剤を混合して均一に撹拌し、水性スラリーを得た。
本実施例では、セラミック材料はβ-スポジュメン粉末であり、β-スポジュメン粉末は40部、酸化マグネシウムは35部、導電性カーボンブラックは10部、水性接着剤は45部であり、且つ、前記水性接着剤は水を溶剤とした水性ポリウレタンであり、得られた水性スラリーの粘度の範囲は500~1000cps/25℃であった。
【0037】
S2、第1のフィルムの製造
トランス-1,4-ポリイソプレン60部、シス-1,4-ポリブタジエンゴム30部、導電性カーボンブラック10部及び水溶性塩10部を混錬造粒機に投入して、混錬を温度130℃で30min行い、粒子径10~20nmの記憶材料を製造した。この場合、記憶材料の相転移温度は51℃であり、一般には、このようなプロセスにより製造された記憶材料の相転移温度は50~80℃である。その後、窒化アルミニウムとエタノールの混合溶液に記憶材料を加えて、撹拌し、吸引ろ過した後、混合物を100℃で乾燥させ、乾燥したものを不活性ガスの保護下、400℃で仮焼し、窒化アルミニウム被覆固体材料を得た。本実施例では、窒化アルミニウムとエタノールは混合されると懸濁液になり、窒化アルミニウム、エタノール及び記憶材料の重量比は3:6:1であった。
【0038】
最後に、高分子重合体粒子と固体材料を混合してフィルムブロー成形機に入れ、フィルムブロー法を用いて高分子重合体粒子と固体材料との混合材料をフィルムとしてブロー成形し、得られたフィルムを水に通してから乾燥させ、第1のフィルムを得た。このステップでは、フィルムを水に通した後、60℃の温度で10min乾燥させ、且つ、上記の高分子重合体粒子はPETとした。
ステップS2において、水に通す際には、記憶材料中の水溶性塩が水に溶解すると、記憶材料内に穴が形成される。記憶材料の相転移温度は一般に50~80℃であるので、温度がこの範囲の温度に上がると、記憶材料には一定の変形が起こり、それにより記憶材料の内部の穴が閉じられ、温度が下がると、記憶材料は元の状態に戻る。このため、電池が正しく使用されなかったり他の原因により電池の温度が高すぎる場合、記憶材料はセパレータを自動的に閉じて、正極と負極の間でのリチウムイオンの交換を遮断し、反応を抑制する目的を達成し、温度が正常になると、形状記憶材料は自発的に回復し、このとき、リチウムイオン電池は正常に使用され得る。
【0039】
S3、第2のフィルムの製造
ハロゲン含有化合物を水溶性塩と混合して溶融した後、フィルムをブロー成形し、水を通してから乾燥させ、第2のフィルムを得た。このステップでは、フィルムを水に通した後、60℃の温度で10min乾燥させた。
【0040】
S4、リチウムイオン電池用セパレータの製造
第1のフィルム10上に水性スラリーを塗布して、第1のフィルム10の表面に水性スラリー層30を形成した。これにより、図2に示すような構造の第1の複合フィルム40を形成し、第2のフィルム20上に水性スラリーを塗布して、第2のフィルム20の表面に水性スラリー層30を形成し、これにより、図3に示すような構造の第2の複合フィルム50を形成した。第1の複合フィルム40の水性スラリー層30及び第2の複合フィルム50の水性スラリー層30の厚さはいずれも500nmであった。
【0041】
第1の複合フィルム40及び第2の複合フィルム50を乾燥させた後、第1の複合フィルム40の水性スラリー層30と第2の複合フィルム50の水性スラリー層30を複合化し、図4に示すような構造のリチウムイオン電池用セパレータを得た。このステップでは、第1の複合フィルム40及び第2の複合フィルム50の乾燥温度は100℃であり、乾燥時間は1hであった。
【0042】
図4図5に示すように、本発明は、また、第1のフィルム10と、第2のフィルム20と、水性スラリー層30とを含み、前記第1のフィルム10が水性スラリー層30を介して第2のフィルム20に密着している高安全性リチウムイオン電池用セパレータを提供する。図5に示すように、前記第1のフィルム10の内部にはいくつかの固体材料101が嵌め込まれており、該固体材料101の外部が窒化アルミニウムシェル102であり、窒化アルミニウムシェル102の内部には、穴が形成された記憶材料103があり、前記第1のフィルム10には、記憶材料103の穴に連通している第1の貫通孔があり、前記第2のフィルム20には貫通している第2の貫通孔があった。
【0043】
本実施例では、前記記憶材料103は、トランス-1,4-ポリイソプレン60部、シス-1,4-ポリブタジエンゴム30部、導電性カーボンブラック10部及び水溶性塩10部を混錬造粒機に投入して混錬した粒子径10~20nmのものである。さらに、前記固体材料101は、記憶材料103を窒化アルミニウムとエタノールの混合溶液に加えて、撹拌し、吸引ろ過した後、混合物を乾燥させ、乾燥したものを不活性ガスの保護下で仮焼して製造したものである。上記の実施例では、前記水性スラリー層30は、β-スポジュメン粉末40部、酸化マグネシウム35部、導電性カーボンブラック10部及び水性接着剤45部を撹拌したものである。設けられた水性スラリー層30においてセラミック材料としてβ-スポジュメン粉末が使用されることにより、セパレータの強度が高まり、正極及び負極で発生したリチウムデンドライトがセパレータを突き破って短絡を招く危険が回避される。
【0044】
以上に基づいて、本発明の高安全性リチウムイオン電池用セパレータでは、第1のフィルム10にわたって球状粒子(即ち固体材料101)が分布しており、第1のフィルム10には、球状粒子に連通している第1の貫通孔があり、且つ、固体材料101における記憶材料103に穴がある。温度が上がると、記憶材料103の穴が自動的に閉じられ、電解液のさらなる反応を抑制し、これにより、電池を保護する役割を果たし、温度が下がると、チャンネルが開放する。温度が一定の温度になると、セパレータの穴が自動的に閉じられ、リチウムイオン電解液のさらなる反応を抑制しつつ、正極板及び負極板におけるリチウムデンドライトがセパレータを突き破って短絡を招くことを回避する。
【0045】
また、本発明は、更に、セパレータが前記高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法で得られたリチウムイオン電池を提供する。
【0046】
実施例3
図1に示すように、本発明は、高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法を開示し、具体的には、該方法は、以下のステップを含む。
【0047】
S1、水性スラリーの製造
セラミック材料、酸化マグネシウム、導電性カーボンブラック及び水性接着剤を混合して均一に撹拌し、水性スラリーを得た。
本実施例では、セラミック材料はβ-スポジュメン粉末であり、β-スポジュメン粉末は35部、酸化マグネシウムは30部、導電性カーボンブラックは7部、水性接着剤は35部、且つ、前記水性接着剤は水を溶剤としたポリビニルアルコール系水性粘着剤であり、得られた水性スラリーの粘度の範囲は500~1000cps/25℃であった。
【0048】
S2、第1のフィルムの製造
トランス-1,4-ポリイソプレン55部、シス-1,4-ポリブタジエンゴム25部、導電性カーボンブラック7部及び水溶性塩7部を混錬造粒機に投入して、混錬を温度120℃で45min行い、粒子径10~20nmの記憶材料を製造した。この場合、記憶材料の相転移温度は70℃であり、一般には、このようなプロセスにより製造された記憶材料の相転移温度は50~80℃である。その後、窒化アルミニウムとエタノールの混合溶液に記憶材料を加えて、撹拌し、吸引ろ過した後、混合物を90℃で乾燥させ、乾燥したものを不活性ガスの保護下、350℃で仮焼し、窒化アルミニウム被覆固体材料を得た。本実施例では、窒化アルミニウムとエタノールは混合されると懸濁液になり、窒化アルミニウム、エタノール及び記憶材料の重量比は3:6:1であった。
【0049】
最後に、高分子重合体粒子と固体材料を混合してフィルムブロー成形機に入れ、フィルムブロー法を用いて高分子重合体粒子と固体材料との混合材料をフィルムとしてブロー成形し、得られたフィルムを水に通してから乾燥させ、第1のフィルムを得た。このステップでは、フィルムを水に通した後、55℃の温度で30min乾燥させ、且つ、上記の高分子重合体粒子はPPとした。
【0050】
ステップS2において、水に通す際には、記憶材料中の水溶性塩が水に溶解すると、記憶材料内に穴が形成される。記憶材料の相転移温度は一般に50~80℃であるので、温度がこの範囲の温度に上がると、記憶材料には一定の変形が起こり、それにより記憶材料の内部の穴が閉じられ、温度が下がると、記憶材料は元の状態に戻る。このため、電池が正しく使用されなかったり他の原因により電池の温度が高すぎる場合、記憶材料はセパレータを自動的に閉じて、正極と負極の間でのリチウムイオンの交換を遮断し、反応を抑制する目的を達成し、温度が正常になると、形状記憶材料は自発的に回復し、このとき、リチウムイオン電池は正常に使用され得る。
【0051】
S3、第2のフィルムの製造
ハロゲン含有化合物を水溶性塩と混合して溶融した後、フィルムをブロー成形し、水を通してから乾燥させ、第2のフィルムを得た。このステップでは、フィルムを水に通した後、55℃の温度で15min乾燥させた。
【0052】
S4、リチウムイオン電池用セパレータの製造
第1のフィルム10上に水性スラリーを塗布して、第1のフィルム10の表面に水性スラリー層30を形成し、これにより、図2に示すような構造の第1の複合フィルム40を形成した。第2のフィルム20上に水性スラリーを塗布して、第2のフィルム20の表面に水性スラリー層30を形成し、これにより、図3に示すような構造の第2の複合フィルム50を形成した。第1の複合フィルム40の水性スラリー層30及び第2の複合フィルム50の水性スラリー層30の厚さはいずれも375nmであった。
【0053】
第1の複合フィルム40及び第2の複合フィルム50を乾燥させた後、第1の複合フィルム40の水性スラリー層30と第2の複合フィルム50の水性スラリー層30を複合化し、図4に示すような構造のリチウムイオン電池用セパレータを得た。このステップでは、第1の複合フィルム40及び第2の複合フィルム50の乾燥温度は75℃であり、乾燥時間は1.5hであった。
【0054】
図4図5に示すように、本発明は、また、第1のフィルム10と、第2のフィルム20と、水性スラリー層30とを含み、前記第1のフィルム10が水性スラリー層30を介して第2のフィルム20に密着している高安全性リチウムイオン電池用セパレータを提供する。図5に示すように、前記第1のフィルム10の内部にはいくつかの固体材料101が嵌め込まれており、該固体材料101の外部が窒化アルミニウムシェル102であり、窒化アルミニウムシェル102の内部には、穴が形成された記憶材料103があり、前記第1のフィルム10には、記憶材料103の穴に連通している第1の貫通孔があり、前記第2のフィルム20には貫通している第2の貫通孔があった。
【0055】
本実施例では、前記記憶材料103は、トランス-1,4-ポリイソプレン55部、シス-1,4-ポリブタジエンゴム25部、導電性カーボンブラック7部及び水溶性塩7部を混錬造粒機に投入して混錬した粒子径10~20nmのものである。さらに、前記固体材料101は、記憶材料103を窒化アルミニウムとエタノールの混合溶液に加えて、撹拌し、吸引ろ過した後、混合物を乾燥させ、乾燥したものを不活性ガスの保護下で仮焼して製造したものである。上記の実施例では、前記水性スラリー層30は、β-スポジュメン粉末35部、酸化マグネシウム30部、導電性カーボンブラック7部及び水性接着剤35部を撹拌したものである。設けられた水性スラリー層30においてセラミック材料としてβ-スポジュメン粉末が使用されることにより、セパレータの強度が高まり、リチウムイオンが薄い水性スラリー層を自在に通過することを邪魔することなく、正極及び負極で発生したリチウムデンドライトがセパレータを突き破って短絡を招く危険が回避される。
【0056】
以上に基づいて、本発明の高安全性リチウムイオン電池用セパレータでは、第1のフィルム10にわたって球状粒子(即ち固体材料101)が分布しており、第1のフィルム10には、球状粒子に連通している第1の貫通孔があり、且つ、固体材料101における記憶材料103に穴がある。温度が上がると、記憶材料103の穴が自動的に閉じられ、電解液のさらなる反応を抑制し、これにより、電池を保護する役割を果たし、温度が下がると、チャンネルが開放する。温度が一定の温度になると、セパレータの穴が自動的に閉じられ、リチウムイオン電解液のさらなる反応を抑制しつつ、正極板及び負極板におけるリチウムデンドライトがセパレータを突き破って短絡を招くことを回避する。
【0057】
また、本発明は、更に、セパレータが前記高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法で得られたリチウムイオン電池を提供する。
【0058】
実施例4
図1に示すように、本発明は、高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法を開示し、具体的には、該方法は、以下のステップを含む。
【0059】
S1、水性スラリーの製造
セラミック材料、酸化マグネシウム、導電性カーボンブラック及び水性接着剤を混合して均一に撹拌し、水性スラリーを得た。
本実施例では、セラミック材料はβ-スポジュメン粉末であり、β-スポジュメン粉末は32部、酸化マグネシウムは35部、導電性カーボンブラックは10部、水性接着剤は30部であり、且つ、前記水性接着剤は水を溶剤とした水性ポリウレタンであり、得られた水性スラリーの粘度の範囲は500~1000cps/25℃であった。
【0060】
S2、第1のフィルムの製造
トランス-1,4-ポリイソプレン58部、シス-1,4-ポリブタジエンゴム28部、導電性カーボンブラック10部及び水溶性塩10部を混錬造粒機に投入して、混錬を130℃で30min行い、粒子径10~20nmの記憶材料を製造した。この場合、記憶材料の相転移温度は53℃であり、一般には、このようなプロセスにより製造された記憶材料の相転移温度は50~80℃である。その後、窒化アルミニウムとエタノールの混合溶液に記憶材料を加えて、撹拌し、吸引ろ過した後、混合物を100℃で乾燥させ、乾燥したものを不活性ガスの保護下、400℃で仮焼し、窒化アルミニウム被覆固体材料を得た。本実施例では、窒化アルミニウムとエタノールは混合されると懸濁液になり、窒化アルミニウム、エタノール及び記憶材料の重量比は3:6:1であった。
【0061】
最後に、高分子重合体粒子と固体材料を混合してフィルムブロー成形機に入れ、フィルムブロー法を用いて高分子重合体粒子と固体材料との混合材料をフィルムとしてブロー成形し、得られたフィルムを水に通してから乾燥させ、第1のフィルムを得た。このステップでは、フィルムを水に通した後、60℃の温度で10min乾燥させ、且つ、上記の高分子重合体粒子はPETとした。
【0062】
ステップS2において、水に通す際には、記憶材料中の水溶性塩が水に溶解すると、記憶材料内に穴が形成される。記憶材料の相転移温度は一般に50~80℃であるので、温度がこの範囲の温度に上がると、記憶材料には一定の変形が起こり、それにより記憶材料の内部の穴が閉じられ、温度が下がると、記憶材料は元の状態に戻る。このため、電池が正しく使用されなかったり他の原因により電池の温度が高すぎる場合、記憶材料はセパレータを自動的に閉じて、正極と負極の間でのリチウムイオンの交換を遮断し、反応を抑制する目的を達成し、温度が正常になると、形状記憶材料は自発的に回復し、このとき、リチウムイオン電池は正常に使用され得る。
【0063】
S3、第2のフィルムの製造
ハロゲン含有化合物を水溶性塩と混合して溶融した後、フィルムをブロー成形し、水を通してから乾燥させ、第2のフィルムを得た。このステップでは、フィルムを水に通した後、60℃の温度で10min乾燥させた。
【0064】
S4、リチウムイオン電池用セパレータの製造
第1のフィルム10上に水性スラリーを塗布して、第1のフィルム10の表面に水性スラリー層30を形成し、これにより、図2に示すような構造の第1の複合フィルム40を形成した。第2のフィルム20上に水性スラリーを塗布して、第2のフィルム20の表面に水性スラリー層30を形成し、これにより、図3に示すような構造の第2の複合フィルム50を形成した。第1の複合フィルム40の水性スラリー層30及び第2の複合フィルム50の水性スラリー層30の厚さはいずれも500nmであった。
【0065】
第1の複合フィルム40及び第2の複合フィルム50を乾燥させた後、第1の複合フィルム40の水性スラリー層30と第2の複合フィルム50の水性スラリー層30を複合化し、図4に示すような構造のリチウムイオン電池用セパレータを得た。このステップでは、第1の複合フィルム40及び第2の複合フィルム50の乾燥温度は100℃であり、乾燥時間は1hであった。
【0066】
図4図5に示すように、本発明は、また、第1のフィルム10、第2のフィルム20、及び水性スラリー層30を含み、前記第1のフィルム10が水性スラリー層30を介して第2のフィルム20に密着している高安全性リチウムイオン電池用セパレータを提供する。図5に示すように、前記第1のフィルム10の内部にはいくつかの固体材料101が嵌め込まれており、該固体材料101の外部が窒化アルミニウムシェル102であり、窒化アルミニウムシェル102の内部には、穴が形成された記憶材料103があり、前記第1のフィルム10には、記憶材料103の穴に連通している第1の貫通孔があり、前記第2のフィルム20には貫通している第2の貫通孔があった。
【0067】
本実施例では、前記記憶材料103は、トランス-1,4-ポリイソプレン58部、シス-1,4-ポリブタジエンゴム28部、導電性カーボンブラック10部及び水溶性塩10部を混錬造粒機に投入して混錬した粒子径10~20nmのものである。さらに、前記固体材料101は、記憶材料103を窒化アルミニウムとエタノールの混合溶液に加えて、撹拌し、吸引ろ過した後、混合物を乾燥させ、乾燥させたものを不活性ガスの保護下で仮焼して製造したものである。上記の実施例では、前記水性スラリー層30は、β-スポジュメン粉末32部、酸化マグネシウム35部、導電性カーボンブラック10部及び水性接着剤30部を撹拌したものである。設けられた水性スラリー層30においてセラミック材料としてβ-スポジュメン粉末が使用されることにより、セパレータの強度が高まり、正極及び負極で発生したリチウムデンドライトがセパレータを突き破って短絡を招く危険が回避される。
【0068】
以上に基づいて、本発明の高安全性リチウムイオン電池用セパレータでは、第1のフィルム10にわたって球状粒子(即ち固体材料101)が分布しており、第1のフィルム10には、球状粒子に連通している第1の貫通孔があり、且つ、固体材料101における記憶材料103に穴がある。温度が上がると、記憶材料103の穴が自動的に閉じられ、電解液のさらなる反応を抑制し、これにより、電池を保護する役割を果たし、温度が下がると、チャンネルが開放する。温度が一定の温度になると、セパレータの穴が自動的に閉じられ、リチウムイオン電解液のさらなる反応を抑制しつつ、正極板及び負極板におけるリチウムデンドライトがセパレータを突き破って短絡を招くことを回避する。
【0069】
また、上記の実施例1~4を参照して、本発明で製造された高安全性リチウムイオン電池用セパレータを、従来技術において入手したセパレータと比較した。
【0070】
比較例のセパレータ:
空隙率85%、孔径50%、PP膜材質の市販の通常のセパレータを用いた。
【0071】
実施例のセパレータ:
実施例1~4に係るリチウムイオン電池用セパレータを用いた。
【0072】
比較例のセパレータを用いたリチウムイオン電池の製造:
黒鉛、PVDF、酢酸n-ブチルを2:1:2の配合比で混合して、負極活性スラリーとし、厚さ3μm、両面ともに1μmの銅層が塗布された導電性フィルム上に塗布し、負極板を得、リン酸鉄リチウム、PVDF、及び酢酸エチルを5:2:3の配合比で正極活物質とし、金属アルミが塗布された3μm厚のフィルム上に正極活物質を塗布し、フィルムの両面に塗布されたアルミ層も1μmとし、セパレータとして、空隙率85%、孔径50nmのポリエチレンフィルムを用い、電解質として1.0 M LiPF6のEC+DMC+EMC溶液を用い、全ての組立はグローブボックスにて行われた。
【0073】
実施例のリチウムイオン電池の製造:
実施例の製造では、セパレータとして本発明に係るセパレータを用いた以外、残りは比較例と同様であった。
【0074】
過充電テスト:
上述実施例及び比較例で得られた電池を3C倍率の定電流で5Vに充電し、電池の状態を記録した。実験結果を以下に示す。
【表1】
【0075】
また、本発明は、更に、セパレータが前記高安全性リチウムイオン電池用セパレータの製造方法で得られたリチウムイオン電池を提供する。
【0076】
以上は本発明の好適な実施を具体的に説明したが、本発明は記載される実施例に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨を逸脱せずに様々な同等変形や置換を行うことができ、これらの同等変形や置換は全て本願の請求項により限定される範囲に含まれる。
【0077】
第1のフィルムにわたって球状粒子が分布しており、第1のフィルムには球状粒子に連通している第1の貫通孔があり、固体材料における記憶材料には穴がある。これにより、温度が上がると、記憶材料の穴が自動的に閉じられ、電解液のさらなる反応を抑制し、これにより、リチウムイオン電池を保護する役割を果たし、温度が下がると、チャンネルが開放し、このように、リチウムイオン電池の使用安全性を向上させ、このため、本発明の高安全性リチウムイオン電池用セパレータ、製造方法及びリチウムイオン電池には実用性がある。
図1
図2
図3
図4
図5