(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】三重チェーン・レーシング組立体
(51)【国際特許分類】
F16G 13/04 20060101AFI20231013BHJP
F16G 13/06 20060101ALI20231013BHJP
F16G 13/02 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
F16G13/04
F16G13/06 B
F16G13/02 E
(21)【出願番号】P 2018170113
(22)【出願日】2018-09-11
【審査請求日】2021-07-27
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ケイ・ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・マリオ・マリウス
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・アレン・チャーチル
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-250406(JP,A)
【文献】特開昭58-196347(JP,A)
【文献】特開2008-309171(JP,A)
【文献】特開昭57-22443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 13/04
F16G 13/06
F16G 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプロケットまたはギヤの歯と噛み合うためのランダムパターンのサイレントチェーン、すなわち逆歯チェーン組立体であって、
当該組立体は、
第1のリンクタイプ、第2のリンクタイプ、及び、第3のリンクタイプを備え、夫々のリンクタイプが、
第1のプロファイルを画定する本体を備え、そして、
一対の歯部を備え、各々の歯部が1つの内側フランク及び1つの外側フランクを有し、前記一対の歯部の夫々の前記内側フランクが内股を介して連結され、
ピンを受け入れるための一対のアパチャと、を備え、
前記チェーンが前記第1のリンクタイプ、前記第2のリンクタイプ、及び、前記第3のリンクタイプに組み付けられるとき、
前記第1のリンクタイプが、
前記内側フランク上のみで前記スプロケットまたは前記ギヤの前記歯に噛み合い、前記スプロケットまたは前記ギヤの前記歯の接触が前記
第1のリンクタイプの前記内側フランクから前記チェーン組立体の長手方向に隣接するリンクの外側フラン
クへ移行され、
前記第2のリンクタイプが、
前記内側フランクおよび前記外側フランク上で前記スプロケットまたは前記ギヤの前記歯と噛み合い、前記スプロケットまたは前記ギヤの前記歯の接触が前記第2のリンクタイプの前記
外側フランクおよび前記
内側フランクから前記チェーン組立体の長手方向に隣接するリンクの外側フランクへ移行され、
そして、前記第3のリンクタイプが、
前記外側フランク上のみで前記スプロケットまたは前記ギヤの前記歯に噛み合い、前記スプロケットまたは前記ギヤの前記歯の接触を前記チェーン組立体の長手方向に隣接するリンクの前記
内側フラン
クへ移行さ
れ、
前記第2のリンクタイプが、前記第1のリンクタイプおよび前記第3のリンクタイプに長手方向で隣接しており、これにより前記第3の
リンクタイプが前記第1の
リンクタイプに長手方向に隣接することはない、
逆歯チェーン組立体。
【請求項2】
前記第1のリンクタイプと前記第3のリンクタイプとの間に少なくとも2つの第2のリンクタイプをさらに含む、請求項1に記載の逆歯チェーン組立体。
【請求項3】
前記ピンが、単一の丸いピンである、請求項1に記載の逆歯チェーン組立体。
【請求項4】
前記ピンが、ロッカーピンおよび別のピンである、請求項1に記載の逆歯チェーン組立体。
【請求項5】
前記第1のリンクタイプおよび前記第3のリンクタイプに長手方向に隣接する外側ガイドリンクをさらに備える、請求項1
ないし4のいずれかの逆歯チェーン組立体。
【請求項6】
第1のリンクタイプ、第2のリンクタイプ、および第3のリンクタイプを備え、夫々のリンクタイプが、一対の歯部を備え、各々の歯部が1つの内側フランク及び1つの外側フランクを有し、前記一対の歯部の前記内側フランク同士が内股を介して連結された
、本体と、ピンを受け入れるための一対のアパチャと、を備える、スプロケットまたはギヤの歯と噛み合うためのサイレントチェーン組立体のレーシング方法であって、前記方法が、
a)第1のリンクタイプまたは第3のリンクタイプを、
前記一対のアパチャを通してピンに設置するステップと、
b)前記第1のリンクタイプまたは前記第3のリンクタイプに隣接する前記アパチャを通って前記ピン上に長手方向に隣接する第2のリンクタイプを設置するステップと、
ステップa)およびb)を所望の幅に関して繰り返すステップと、を含み、
前記第2のリンクタイプが、前記第1のリンクタイプおよび前記第3のリンクタイプに長手方向で隣接しており、これにより前記第3の
リンクタイプのリンクが前記第1の
リンクタイプのリンクに長手方向に隣接することがない、方法であり、
前記第1のリンクタイプが、
前記内側フランク上のみで前記スプロケットまたは前記ギヤの前記歯に噛み合い、前記スプロケットまたは前記ギヤの前記歯の接触が前記
第1のリンクタイプの前記内側フランクから前記チェーン組立体の長手方向に隣接するリンクの外側フラン
クへ移行され、
前記第2のリンクタイプが、
前記内側フランクおよび前記外側フランク上で前記スプロケットまたは前記ギヤの前記歯と噛み合い、前記スプロケットまたは前記ギヤの前記歯の接触が前記第2のリンクタイプの前記
外側フランクおよび前記
内側フランクから前記チェーン組立体の長手方向に隣接するリンクの外側フランクへ移行され、
そして、前記第3のリンクタイプが、
前記外側フランク上のみで前記スプロケットまたは前記ギヤの前記歯に噛み合い、前記スプロケットまたは前記ギヤの前記歯の接触を前記チェーン組立体の長手方向に隣接するリンクの前記
内側フラン
クへ移行さ
れる、
前記方法。
【請求項7】
ステップa)の前に、外部ガイドリンクが前記ピン上に設置され、前記チェーン
組立体が前記所望の幅になった後、別の外側ガイドリンクが前記ピン上に設置される、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチェーンの分野に関する。より詳細には、本発明は、ランダムパターンのサイレントチェーンすなわち逆歯(inverted toothed) チェーン組立体のチェーンレーシングに関する。
【背景技術】
【0002】
サイレントチェーンすなわち逆歯チェーン用の1つのタイプリンクのみのチェーンレーシングは、そのようなチェーンを有するエンジンのユーザには不満足な高い騒音、振動およびハーシュネス(NVH)をもたらす一定のピッチ周波数を有する。チェーン噛合いのNVHレベルを低減するために、以前の方法はピッチ噛合いのパターンを乱すために使用される2つの異なるプロファイルを有するリンクを有するチェーンの使用に関わっていた。この技術は、スプロケットに噛み合うチェーンの純粋なピッチ音を識別することが困難であるため、ランダムに聞こえる騒音特性を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明のランダムパターンチェーン組立体は、サイレントチェーンすなわち逆歯チェーンの騒音、振動およびハーシュネス(NVH)性能を改善する。伝統的には、ランダムパターンは2つのみのリンクパターンを用いて生成されていたが、チェーンのNVHを調整する能力を高めるために、3つ以上のリンクプロファイルを持つチェーンを使用すると利点が得られる。該チェーン組立体は、既知のパターンで配列された少なくとも3つの異なるリンクタイプを使用するのが好ましい。該パターンは、第1のリンクタイプと第3のリンクタイプとの間に常に第2のリンクタイプが存在する点で、第1のリンクタイプが決して第3のリンクタイプに隣接しないように配列される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図4】
図1~
図3の第1のリンクタイプ、第2のリンクタイプ、第3のリンクタイプを使用した三重のレーシングパターンの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1~
図3は、既知のパターンで配列された本発明のランダムパターンチェーン組立体を構成する3つの異なるリンクタイプ22,23,24を示す。
図1~
図3のリンクタイプ22,23,24の強調表示された部分は、参照番号11,12,13が与えられ、チェーンが少なくとも1つ従動スプロケットと駆動スプロケットの上に組み付けられたときにスプロケットまたはギヤがリンクに接触する場所を示す。
【0006】
リンクタイプ22,23,24の各々は、本体5と、該本体5から延びる2つの歯部6を有する。各歯部6は内側フランク7と外側フランク8とを有する。該歯部6は、内股(また)9によって分離される。一対のアパチャ10がまた、本体5内に存在する。リンク22,23,24の歯部6の反対側には、背面15がある。該背面は直線状、放射状または平坦ではない他の形状であってもよい。リンクタイプ22,23,24は、あるパターンで共に配列され、該アパチャ10によって受け取られる少なくとも1本のピン14を介して接続される。該ピン14は、図示のように単一の丸いピン、またはロッカーピンや別のピンなどの複数のピンであってよい。リンク22,23,24の歯部6は、スプロケットまたはギヤ(図示せず)の歯と噛み合う。
【0007】
リンクタイプ22,23,24の各々は、独特の幾何学的プロファイルから構成され、プロファイル間の相違は、リンクタイプ毎のスプロケット噛合いに対する独特のリンクを生成する。該リンクは、リンクの内側フランク7に最初に噛合いする接触点と、リンクの外部フランク8に噛み合う接触点を有してもよい。これらの接触点の組み合わせにおいて、リンクがリンクの内側フランク7に最初に噛み合い、次にリンクの外部側、例えば外部フランク8上の接触点に移行する。例えば、第2のリンクタイプ23は、第1のリンクタイプ22および第3のリンクタイプ24のスプロケットの歯との噛合いを比較する場合に比べて、第1のリンクタイプ22および第3のリンクタイプ24と比較された場合のより少なく噛合いの差をもたらす。リンクのレーシングの長手方向に隣接しかつリンクのレーシングの外側には、外部ガイドリンク(図示せず)がある。
【0008】
組み立てられたチェーンのパターンは、第1のリンクタイプ22と第3のリンクタイプ24との間に常に第2のリンクタイプ23があるという点で、第1のリンクタイプ22が決して第3のリンクタイプ24に隣接しないように長手方向に配列されている。したがって、第1のリンクタイプ22と第3のリンクタイプ24とは決して互いに隣接することができず、少なくとも1つの第2のリンクタイプ23が第1のリンクタイプ22と第3のリンクタイプ24との間になければならない。第1のリンクタイプ22と第3のリンクタイプ24との間に第2のリンクタイプ23を設けることによって、チェーンレーシングパターンにおける隣接するリンク噛合いタイプ間の差異を低減しつつ、より広い範囲の噛合いタイプが達成される。該噛合い範囲は、内側フランクのみの接触リンクと外部フランク接触リンクとの間の差である。第2のリンクタイプを設けるに際して、第1のリンクタイプから第3のリンクタイプへ移動する際にリンク噛合いスタイル間により緩やかな移行を提供する中間リンクタイプの役割を果たす。
【0009】
第1のリンクタイプ22は、
図1に示すように、内側フランク7のみにおいて、または強調表示された部分11によって示されるように、内側フランク7から外側フランク8への過渡的接触として、スプロケットまたはギアに接触する。換言すれば、スプロケットの歯と内側フランクとの接触は、長手方向に隣接するリンクの外側フランクの接触に移行する。
【0010】
第2のリンクタイプ23は、
図2に示すように、内側フランク7にのみ接触するか、内側フランク7から外側フランク8または外側フランク8まで過渡的接触として接触するか、強調表示された部分11,12によって示されるように外側フランク8のみで接触する。こうして噛合いは第1のリンクタイプ22から変更される。
【0011】
第3のリンクタイプ24は、
図3に示すように、内側フランク7のみで接触するか、内側フランク7から外側フランク8まで過渡的接触をするか、強調表示された部分13によって示されるように外側フランク8のみで接触する。これによって、噛合いが第1のリンクタイプ22および第2のリンクタイプ24から変化される。
【0012】
既知のランダムパターンを使用してチェーン組立体内で独特のリンク形状を使用することにより、ピッチ周波数をより低いレベルに変更することができる。これは、3つのリンクタイプによって生成された2つの固有の噛合いによって達成される。チェーンのためのランダムパターンで配列された独特のリンクタイプの使用によって、リンク噛合いタイプ間の差が十分に大きい場合、チェーンストランド内で望ましくない振動が生成されることがある。3つのリンクタイプ22,23,24を使用するは、第1のリンクタイプ22と第3のリンクタイプ24との間の少なくとも1つの第2のリンクタイプ23を使用することによって、望ましくない振動を低減しつつ、第1のリンクタイプ22と第3のリンクタイプ24との間の噛合いの大きな差を許容する。第2のリンクタイプ23の噛合い特性は、第1のリンクタイプ22と第3のリンクタイプ24との間にある。
【0013】
図4は、
図1~
図3の第1のリンクタイプ22、第2のリンクタイプ23、および第3のリンクタイプ24を使用する3重レーシングパターンの一例を示す。
図4に示すように、増分数はチェーンのピッチ数位置に対応する。従って、
図4では、示されているチェーンレーシングパターンは、組み立てられたチェーン組立体のレーシングにおける特定のリンクに対応する各ピッチ数を付けた98個のリンクを有する。レーシングパターンにおいて、第1のリンクタイプ22は決して第3のリンクタイプ24に隣接しない。第1のリンクタイプ22と第3のリンクタイプ24との間には、1つの第2のリンクタイプ23が存在する。図示されていないが、外部ガイドリンクは、第1のリンクタイプ22または第3のリンクタイプリンク24に隣接して存在してもよい。
【0014】
代替実施形態では、独特なリンクの数を3つのリンクから4つ以上に増やすことができる。追加の少なくとも1つの独特のリンクタイプを使用してレーシングパターンを変更することができ、これによって利用可能なレーシングパターンがより多くなり、リンクタイプ間の移行が増加する。各リンクタイプ毎のギヤまたはスプロケットの歯とのリンクの接触位置は、内側フランクのみ(例えば、第1のリンクタイプ)、内側および外側フランクの両方に接触する移行上(例えば、第2のリンクタイプ)または外側フランク(例えば、第3のリンクタイプ)のみであってもよい。チェーン内にこれらのリンク噛合いタイプの任意の組み合わせが存在でき、各チェーンにすべての噛合いタイプが必要というわけではない。例えば、1つ以上の移行リンク(例えば、第2のリンクタイプ)が内側フランクのみのリンク(第1のリンクタイプ)と外側フランクのみのリンク(第3のリンクタイプ)との間に存在してもよい。
【0015】
したがって、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本発明の原理の適用を単に例示するものであることを理解されたい。例示された実施形態の詳細を本明細書で言及することは、特許請求の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明に必須であるとみなされる特徴をそれら自体列挙するものである。