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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 52/00 20230101AFI20231013BHJP
   G01R 33/07 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H10N52/00 Z
G01R33/07
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019015419
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020123687
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】飛岡 孝明
(72)【発明者】
【氏名】挽地 友生
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-333103(JP,A)
【文献】特開2016-021568(JP,A)
【文献】特開2005-259803(JP,A)
【文献】特開2016-070829(JP,A)
【文献】特開2008-008883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 52/00
G01R 33/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の第1の領域に設けられ、第1の直線上に順に並んで配置された第1乃至第3の電極を有する第1の縦型ホール素子と、
前記半導体基板の前記第1の領域とは異なる第2の領域に設けられた発熱源を有する第1の回路とを備え、
前記第1の縦型ホール素子の動作時に前記第1の回路において最も高温となる領域の中心点が、前記第1の電極と前記第3の電極との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる第1の電流経路に直交し且つ前記第1の縦型ホール素子の中心を通る第2の直線上に位置し、
前記第1の縦型ホール素子は、前記第1乃至第3の電極を挟むように前記第1の直線上に前記第1乃至第3の電極と並んで設けられた第7及び第8の電極をさらに有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板の前記第1及び第2の領域とは異なる第3の領域に設けられた発熱源を有する第2の回路をさらに備え、
前記第1の縦型ホール素子の動作時に前記第2の回路において最も高温となる領域の中心点が、前記第2の直線上に位置していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板の前記第1及び第2の領域とは異なる第3の領域に設けられ、第3の直線上に順に並んで配置された第4乃至第6の電極を有する第2の縦型ホール素子をさらに備え、
前記第4の電極と前記第6の電極との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる第2の電流経路に直交し且つ前記第2の縦型ホール素子の中心を通る直線が前記第2の直線と一致していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板の前記第1及び第2の領域とは異なる第3の領域に、前記第1の直線に直交する第3の直線上に順に並んで配置された第4乃至第6の電極を有する第2の縦型ホール素子をさらに備え、
前記第1の縦型ホール素子の動作時に前記第1の回路において最も高温となる領域の中心点が、前記第4の電極と前記第6の電極との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる第2の電流経路に直交し且つ前記第2の縦型ホール素子の中心を通る第4の直線上に位置していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の縦型ホール素子は、前記第2の直線に対して線対称の構造を有していることを特徴とする請求項1乃至いずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体基板の第1の領域に設けられ、第1の直線上に順に並んで配置された第1乃至第3の電極を有する第1の縦型ホール素子と、
前記半導体基板の前記第1の領域とは異なる第2の領域に設けられた発熱源を有する第1の回路とを備え、
前記第1の縦型ホール素子の動作時に前記第1の回路において最も高温となる領域の中心点が、前記第1の電極と前記第3の電極との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる第1の電流経路に直交し且つ前記第1の縦型ホール素子の中心を通る第2の直線上に位置し、
前記半導体基板の前記第1及び第2の領域とは異なる第3の領域に設けられ、第3の直線上に順に並んで配置された第4乃至第6の電極を有する第2の縦型ホール素子をさらに備え、
前記第4の電極と前記第6の電極との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる第2の電流経路に直交し且つ前記第2の縦型ホール素子の中心を通る直線が前記第2の直線と一致し、
前記第2の縦型ホール素子は、前記第4乃至第6の電極を挟むように前記第3の直線上に前記第4乃至第6の電極と並んで設けられた第9及び第10の電極をさらに有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記第2の縦型ホール素子は、前記第2の直線に対して線対称の構造を有していることを特徴とする請求項3又はに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2の縦型ホール素子は、前記第4乃至第6の電極を挟むように前記第3の直線上に前記第4乃至第6の電極と並んで設けられた第9及び第10の電極をさらに有していることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2の縦型ホール素子は、前記第4の直線に対して線対称の構造を有していることを特徴とする請求項4又は8に記載の半導体装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、縦型ホール素子及び発熱源を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホール素子は、磁気センサとして非接触での位置検知や角度検知が可能であることから様々な用途に用いられている。中でも半導体基板表面に対して垂直な磁界成分を検出する横型ホール素子を用いた磁気センサが一般的に良く知られているが、基板の表面に対して平行な磁界成分を検出する縦型ホール素子を用いた磁気センサも各種提案されている。さらに、横型ホール素子と縦型ホール素子を組み合わせて、2次元、3次元的に磁界を検出する磁気センサも提案されている。
【0003】
縦型ホール素子では、幾何学的な対称性の高い構造をとることが難しいため、磁界が印加されていないときでも、いわゆるオフセット電圧が横型ホール素子以上に発生しやすい。そのため、磁気センサとして用いる場合には、かかるオフセット電圧を除去する必要があり、その方法として、スピニングカレント法が知られている。
【0004】
スピニングカレント法を用いてオフセット電圧を除去する方法として、半導体基板の表面に直線上に間隔を置いて配置された5つの電極を有する縦型ホール素子において、半導体基板に平行な方向に磁場を印加した状態で、駆動電流を流す方向を4つの方向に切り替える方法が知られている(例えば、特許文献1の図1参照)。かかる方法では、まず、中央の電極を挟んでその両側に位置する2つの電極の一方から他方へ(第1の方向と呼ぶ)駆動電流を流したときに中央の電極と両端の電極との間に生じる電位差を第1の出力信号とし、第1の方向と逆方向(第2の方向と呼ぶ)に駆動電流を流したときに中央の電極と両端の電極との間に生じる電位差を第2の出力信号とし、さらに、中央の電極から両端の電極へ(第3の方向と呼ぶ)駆動電流を流したときに中央の電極を挟んでその両側に位置する2つの電極間に生じる電位差を第3の出力信号とし、第3の方向と逆方向(第4の方向と呼ぶ)に駆動電流を流したときに中央の電極を挟んでその両側に位置する2つの電極間に生じる電位差を第4の出力信号として、これら第1~第4の出力信号を加減算することにより、オフセット電圧を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許第1438755号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されているような従来の縦型ホール素子において、縦型ホール素子内の温度が一様ではなく、縦型ホール素子内に温度分布が生じている場合、縦型ホール素子内には、熱電流により、高温部から低温部に向かって定常的に電流が流れる。このような状態は、例えば、縦型ホール素子の近辺に縦型ホール素子を駆動する回路が設けられており、当該縦型ホール素子を駆動する回路が発熱源となる素子を含んでいる場合に生じる。
【0007】
上記の状態で、スピニングカレント法によるオフセット電圧の除去を行おうとすると、上述の熱電流の影響により、第1~第4の方向における電流の流れ方がそれぞれ異なることになるため、オフセット電圧の除去精度をあまり高くすることができない。
【0008】
したがって、本発明は、スピニングカレント法によるオフセット電圧の除去を高精度に行うことが可能な縦型ホール素子及び発熱源を有する回路を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体装置は、半導体基板の第1の領域に設けられ、第1の直線上に順に並んで配置された第1乃至第3の電極を有する縦型ホール素子と、前記半導体基板の前記第1の領域とは異なる第2の領域に設けられた発熱源を有する回路とを備え、前記縦型ホール素子の動作時に前記発熱源を有する回路において最も高温となる領域の中心点が、前記第1の電極と前記第3の電極との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる電流経路に直交し且つ前記縦型ホール素子の中心を通る第2の直線上に位置し、前記第1の縦型ホール素子は、前記第1乃至第3の電極を挟むように前記第1の直線上に前記第1乃至第3の電極と並んで設けられた第7及び第8の電極をさらに有していることを特徴とする。

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発熱源から発生する熱は、上記縦型ホール素子の中心を通る第2の直線と縦型ホール素子の発熱源側の端部とが交差する部分から、縦型ホール素子内へ、第2の直線を中心に左右対称に伝わっていくことになる。したがって、発熱源から発生する熱の影響により縦型ホール素子内に温度分布が生じても、スピニングカレント法において電流経路に流す電流の方向を切り替えた際に、その電流の流れ方が略同等になるため、オフセット電圧を高精度に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態の半導体装置の平面図である。
図2図1のA1-A1線に沿った断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態の半導体装置の平面図である。
図4】本発明の第3の実施形態の半導体装置の平面図である。
図5】本発明の第4の実施形態の半導体装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の縦型ホール素子及び発熱源を備えた半導体装置10の平面図である。また、図2は、図1のA1-A1線に沿った断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の半導体装置10は、半導体基板101(図2参照)の領域R1に設けられた縦型ホール素子110と、領域R1とは異なる領域R2に設けられた発熱源を有する回路210とを備えている。
【0015】
図2に示すように、縦型ホール素子110は、P型(第1導電型)の半導体基板101上に設けられた磁気感受部となるN型(第2導電型)の半導体層102と、半導体層102の表面に形成されたN型の不純物領域からなる駆動電流供給用及びホール電圧出力用の電極となる電極111~115とを有している。電極111~115は、図1に示すように、直線A1-A1上に順に並んで配置されている。
【0016】
縦型ホール素子110の周囲には、図2に示すように、縦型ホール素子110を取り囲むようにP型の素子分離拡散層103が設けられている。縦型ホール素子110と発熱源を有する回路210とは、素子分離拡散層103によって電気的に分離されている。
【0017】
発熱源を有する回路210は、縦型ホール素子110を駆動する回路や、縦型ホール素子110からの出力信号を処理するための回路等であり、これらの回路は、トランジスタ等の発熱源となる素子を有することが多い。例えば、縦型ホール素子110を駆動するための電源電圧として、外部電源電圧でなく、ボルテージレギュレータにより外部電源電圧を降圧して生成した内部電源電圧を使用する場合におけるボルテージレギュレータの出力トランジスタや、大電流が流れる抵抗素子などが発熱源となりうる。
【0018】
次に、縦型ホール素子110と発熱源を有する回路210との位置関係について説明する。
【0019】
図1に示す縦型ホール素子110において、スピニングカレント法を用いてオフセット電圧を除去する場合、4つの方向、すなわち、電極112から電極114(第1の方向)、電極114から電極112(第2の方向)、電極113から電極111及び電極115(第3の方向)、電極111及び電極115から電極113(第4の方向)に駆動電流を流すことになる。図1には、電極112と電極114との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる電流経路を電流経路CP1、電極113と電極111との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる電流経路を電流経路CP2、電極113と電極115との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる電流経路を電流経路CP3として示している。すなわち、電流経路CP1が第1の方向及び第2の方向の駆動電流の経路に対応し、電流経路CP2及びCP3が第3の方向及び第4の方向の駆動電流の経路に対応している。
【0020】
本実施形態では、縦型ホール素子110の動作時(スピニングカレント法の実行時)に、発熱源を有する回路210において最も高温となる領域210hrの中心点210hが、電流経路CP1に直交し且つ縦型ホール素子110の中心を通る直線A2-A2上に位置するように、縦型ホール素子110と回路210とが配置されている。
【0021】
このように配置することにより、回路210内の発熱源から発生する熱は、直線A2-A2と縦型ホール素子110の回路210側の端部とが交差する部分IS1から、縦型ホール素子110内へ、直線A2-A2を中心に左右対称に伝わっていくことになる。したがって、回路210内の発熱源から発生する熱の影響により縦型ホール素子110内に温度分布が生じても、スピニングカレント法において電流経路CP1に流す電流の方向を第1の方向と第2の方向に切り替えた際に、二つの方向の電流の流れ方が略同等になる。
【0022】
また、電流経路CP2、CP3に流す電流の方向を第3の方向と第4の方向に切り替えた際も、電流経路CP2と電流経路CP3とが直線A2-A2を中止に左右対称となっており、縦型ホール素子110内に生じる温度分布が直線A2-A2を中心に左右対称となることから、電流経路CP2と電流経路CP3とにおける温度分布も左右対称に略同等になる。よって、第3の方向と第4の方向の電流の流れ方が略同等になる。
【0023】
したがって、本実施形態によれば、回路210内の発熱源から発生する熱が縦型ホール素子110に達し、縦型ホール素子110内に温度分布が生じた場合においても、スピニングカレント法により、高精度にオフセット電圧を除去することができる。
【0024】
なお、縦型ホール素子110の電極111~115は、大きさ及び形状が互いに略同一であり、略等間隔で配置されていることが好ましい。これにより、縦型ホール素子110は、その中心線である直線A2-A2に対して線対称となり、電流経路CP1、CP2、CP3に流れる電流の流れ方は、どの経路のどの方向においてもいずれも略同等となる。かかる構成によれば、スピニングカレント法により、オフセット電圧をより高精度に除去することが可能となる。
【0025】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、発熱源を有する回路が1つである場合について説明したが、縦型ホール素子の周辺に設けられる回路のうち発熱源を有する回路は1つとは限らない。そこで、第2の実施形態として、縦型ホール素子の周辺に発熱源を有する回路が複数存在する場合について説明する。図3は、本発明の第2の実施形態の縦型ホール素子及び発熱源を備えた半導体装置20の平面図である。
【0026】
図3に示すように、本実施形態の半導体装置20は、第1の実施形態の半導体装置10に加えて、領域R1及びR2とは異なる領域R3に設けられた発熱源を有する回路220をさらに備えている。ここで、図1に示す第1の実施形態の半導体装置10と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0027】
本実施形態の半導体装置20では、縦型ホール素子110の動作時(スピニングカレント法の実行時)に、発熱源を有する回路220において最も高温となる領域220hrの中心点220hが、直線A2-A2上に位置するように、回路220が配置されている。
【0028】
このように配置することにより、回路220内の発熱源から発生する熱は、直線A2-A2と縦型ホール素子110の回路220側の端部とが交差する部分IS2から、縦型ホール素子110内へ、直線A2-A2を中心に左右対称に伝わっていくことになる。したがって、回路210内の発熱源から発生する熱と同様、回路220内の発熱源から発生する熱の影響により縦型ホール素子110内に温度分布が生じても、スピニングカレント法において電流経路CP1に流す電流の方向を第1の方向と第2の方向に切り替えた際に、二つの方向の電流の流れ方が略同等になる。また、電流経路CP2と電流経路CP3とにおける温度分布も左右対称に略同等になる。よって、第3の方向と第4の方向の電流の流れ方が略同等になる。
【0029】
したがって、本実施形態によれば、回路210内の発熱源から発生する熱、及び回路220内の発熱源から発生する熱が縦型ホール素子110に達し、縦型ホール素子110内に温度分布が生じた場合においても、スピニングカレント法により、高精度にオフセット電圧を除去することができる。
【0030】
このように、発熱源を有する回路が複数存在する場合においても、スピニングカレント法により、高精度なオフセット除去が可能となる。
【0031】
第1及び第2の実施形態では、縦型ホール素子が1つである場合について説明したが、以下、第3及び第4の実施形態として、縦型ホール素子が同一半導体基板上に複数配置される場合について説明する。
【0032】
[第3の実施形態]
第3の実施形態として、2つの縦型ホール素子が同一半導体基板上に平行に配置される場合について説明する。図4は、本発明の第3の実施形態の縦型ホール素子及び発熱源を備えた半導体装置30の平面図である。
【0033】
図4に示すように、本実施形態の半導体装置30は、第1の実施形態の半導体装置10に加えて、領域R1及びR2とは異なる領域R3に、縦型ホール素子110と平行に配置された縦型ホール素子120をさらに備えている。ここで、図1に示す第1の実施形態の半導体装置10と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0034】
縦型ホール素子120は、P型の半導体基板101上に設けられた磁気感受部となるN型の半導体層102(図2参照)と、半導体層102の表面に形成されたN型の不純物領域からなる駆動電流供給用及びホール電圧出力用の電極となる電極121~125とを有している。電極121~125は、図4に示すように、直線A3-A3上に順に並んで配置されている。
【0035】
縦型ホール素子120の周囲には、縦型ホール素子120を取り囲むようにP型の素子分離拡散層103(図2参照)が設けられており、発熱源を有する回路210と、縦型ホール素子110と、縦型ホール素子120とは、素子分離拡散層103によって電気的に分離されている。
【0036】
次に、発熱源を有する回路210と、縦型ホール素子110と、縦型ホール素子120との位置関係について説明する。
【0037】
図4に示す縦型ホール素子120において、スピニングカレント法を用いてオフセット電圧を除去する場合、4つの方向、すなわち、電極122から電極124(第1の方向)、電極124から電極122(第2の方向)、電極123から電極121及び電極125(第3の方向)、電極121及び電極125から電極123(第4の方向)に駆動電流を流すことになる。図4には、電極122と電極124との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる電流経路を電流経路CP4、電極123と電極121との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる電流経路を電流経路CP5、電極123と電極125との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる電流経路を電流経路CP6として示している。すなわち、電流経路CP4が縦型ホール素子120における第1の方向及び第2の方向の駆動電流の経路に対応し、電流経路CP5及びCP6が縦型ホール素子120における第3の方向及び第4の方向の駆動電流の経路に対応している。
【0038】
本実施形態では、縦型ホール素子110の動作時(スピニングカレント法の実行時)に、発熱源を有する回路210において最も高温となる領域210hrの中心点210hが、縦型ホール素子110における電流経路CP1に直交し且つ縦型ホール素子110の中心を通る直線A2-A2上に位置するように、縦型ホール素子110と回路210とが配置された図1に示す第1の実施形態の半導体装置10に対して、縦型ホール素子120における電流経路CP4に直交し且つ縦型ホール素子120の中心を通る直線が直線A2-A2と一致するように縦型ホール素子120が配置されている。
【0039】
このように配置することにより、縦型ホール素子120の動作時(スピニングカレント法の実行時)に、回路210内の発熱源から発生する熱は、縦型ホール素子120において、直線A2-A2と縦型ホール素子120の回路210側の端部とが交差する部分IS2から、縦型ホール素子120内へ、直線A2-A2を中心に左右対称に伝わっていくことになる。したがって、回路210内の発熱源から発生する熱の影響により縦型ホール素子120内に温度分布が生じても、スピニングカレント法において電流経路CP4に流す電流の方向を第1の方向と第2の方向に切り替えた際に、二つの方向の電流の流れ方が略同等になる。また、電流経路CP5と電流経路CP6とにおける温度分布も左右対称に略同等になる。よって、第3の方向と第4の方向の電流の流れ方が略同等になる。
【0040】
したがって、本実施形態によれば、回路210内の発熱源から発生する熱が縦型ホール素子120に達し、縦型ホール素子120内に温度分布が生じた場合においても、スピニングカレント法により、高精度にオフセット電圧を除去することができる。
【0041】
このように、縦型ホール素子が同一半導体基板上に複数平行に配置された場合においても、スピニングカレント法により、高精度にオフセット除去が可能となる。
【0042】
[第4の実施形態]
第4の実施形態として、2つの縦型ホール素子が同一半導体基板上に互いに垂直に配置される場合について説明する。図5は、本発明の第4の実施形態の縦型ホール素子及び発熱源を備えた半導体装置40の平面図である。
【0043】
図5に示すように、本実施形態の半導体装置40は、第1の実施形態の半導体装置10に加えて、領域R1及びR2とは異なる領域R3に、縦型ホール素子110に対して垂直に配置された縦型ホール素子120をさらに備えている。ここで、図1に示す第1の実施形態の半導体装置10と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0044】
縦型ホール素子120は、P型の半導体基板101上に設けられた磁気感受部となるN型の半導体層102(図2参照)と、半導体層102の表面に形成されたN型の不純物領域からなる駆動電流供給用及びホール電圧出力用の電極となる電極121~125とを有している。電極121~125は、図5に示すように、直線A1-A1に直交する直線A3-A3上に順に並んで配置されている。
【0045】
縦型ホール素子120の周囲には、縦型ホール素子120を取り囲むようにP型の素子分離拡散層103(図2参照)が設けられており、発熱源を有する回路210と、縦型ホール素子110と、縦型ホール素子120とは、素子分離拡散層103によって電気的に分離されている。
【0046】
次に、発熱源を有する回路210と、縦型ホール素子110と、縦型ホール素子120との位置関係について説明する。
【0047】
図5に示す縦型ホール素子120において、スピニングカレント法を用いてオフセット電圧を除去する場合、4つの方向、すなわち、電極122から電極124(第1の方向)、電極124から電極122(第2の方向)、電極123から電極121及び電極125(第3の方向)、電極121及び電極125から電極123(第4の方向)に駆動電流を流すことになる。図5には、電極122と電極124との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる電流経路を電流経路CP4、電極123と電極121との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる電流経路を電流経路CP5、電極123と電極125との間に流れるホール素子駆動電流の経路となる電流経路を電流経路CP6として示している。すなわち、電流経路CP4が縦型ホール素子120における第1の方向及び第2の方向の駆動電流の経路に対応し、電流経路CP5及びCP6が縦型ホール素子120における第3の方向及び第4の方向の駆動電流の経路に対応している。
【0048】
本実施形態では、縦型ホール素子110の動作時(スピニングカレント法の実行時)に、発熱源を有する回路210において最も高温となる領域210hrの中心点210hが、縦型ホール素子110における電流経路CP1に直交し且つ縦型ホール素子110の中心を通る直線A2-A2上に位置するように、縦型ホール素子110と回路210とが配置された図1に示す第1の実施形態の半導体装置10に対して、領域210hrの中心点210hが縦型ホール素子120における電流経路CP4に直交し且つ縦型ホール素子120の中心を通る直線A4-A4上に位置するように縦型ホール素子120が配置されている。
【0049】
このように配置することにより、縦型ホール素子120の動作時(スピニングカレント法の実行時)に、回路210内の発熱源から発生する熱は、縦型ホール素子120において、直線A4-A4と縦型ホール素子120の回路210側の端部とが交差する部分IS2から、縦型ホール素子120内へ、直線A4-A4を中心に左右対称に伝わっていくことになる。したがって、回路210内の発熱源から発生する熱の影響により縦型ホール素子120内に温度分布が生じても、スピニングカレント法において電流経路CP4に流す電流の方向を第1の方向と第2の方向に切り替えた際に、二つの方向の電流の流れ方が略同等になる。また、電流経路CP5と電流経路CP6とにおける温度分布も左右対称に略同等になる。よって、第3の方向と第4の方向の電流の流れ方が略同等になる。
【0050】
したがって、本実施形態によれば、回路210内の発熱源から発生する熱が縦型ホール素子120に達し、縦型ホール素子120内に温度分布が生じた場合においても、スピニングカレント法により、高精度にオフセット電圧を除去することができる。
【0051】
このように、2つの縦型ホール素子が同一半導体基板上に互いに垂直に配置された場合においても、それぞれの縦型ホール素子に対し、スピニングカレント法により、高精度にオフセット除去が可能となる。
【0052】
以上述べたように、本発明の実施形態によれば、縦型ホール素子の周辺に発熱源を有する回路を配置しても、縦型ホール素子に対してスピニングカレント法を実行した際の発熱源から発生する熱による影響を実質的になくすことができる。したがって、発熱源を有する回路を縦型ホール素子から遠ざけて配置するといったことをする必要がなくなるため、回路規模を小さくすることも可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0054】
例えば、上記実施形態においては、縦型ホール素子の電極の数が5つである場合を例として説明したが、駆動電流供給用に2つ、ホール電圧出力用に1つの合計3つ以上の電極があればよい。
【0055】
また、上記実施形態においては、第1導電型をP型、第2導電型をN型として説明したが、導電型を入れ替えて、第1導電型をN型、第2導電型をP型としても構わない。
【0056】
上記実施形態においては、縦型ホール素子110が領域R1に設けられていると説明しているが、縦型ホール素子110の大きさと領域R1の大きさとは、必ずしも一致している必要はない。すなわち、縦型ホール素子110を取り囲む素子分離拡散層103が縦型ホール素子110よりも広い範囲を取り囲むように(領域R1が縦型ホール素子110よりも大きく)形成されている場合には、縦型ホール素子110は、領域R1の範囲内であればどこに形成されても構わない。
【0057】
第3及び第4の実施形態における縦型ホール素子120の電極121~125は、大きさ及び形状が互いに略同一であり、略等間隔で配置されていることが好ましい。これにより、縦型ホール素子120は、その中心線である直線A3-A3に対して線対称となり、電流経路CP4、CP5、CP6に流れる電流の流れ方は、どの経路のどの方向においてもいずれも略同等となる。かかる構成によれば、スピニングカレント法により、オフセット電圧をより高精度に除去することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
10、20、30、40 半導体装置
101 半導体基板
102 半導体層
103 素子分離拡散層
110、120 縦型ホール素子
111、112、113、114、115、121、122、123、124、125 電極
210、220 発熱源を有する回路
210hr、220hr 最も高温となる領域
210h、220h 最も高温となる領域の中心点
A1-A1、A2-A2、A3-A3、A4-A4 直線
CP1、CP2、CP3、CP4、CP5、CP6 電流経路
R1、R2、R3 領域
図1
図2
図3
図4
図5