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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】トランスミッション及び作業車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/72 20060101AFI20231013BHJP
   F16H 3/66 20060101ALI20231013BHJP
   B60K 17/10 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
F16H3/72 A
F16H3/66 A
B60K17/10 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019057931
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159413
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】内藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】小松 健浩
(72)【発明者】
【氏名】武田 周
(72)【発明者】
【氏名】森口 恭介
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第7238131(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0119313(US,A1)
【文献】特開2011-33192(JP,A)
【文献】特開2012-149769(JP,A)
【文献】特開平9-166197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/72
F16H 3/66
B60K 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と、
出力軸と、
前記入力軸に連結された第1キャリアと、前記第1キャリアに連結された第1プラネタリギアと、前記第1プラネタリギアに接続された第1サンギアと、前記第1プラネタリギアに接続された第1リングギアとを含む第1遊星歯車機構と、
前記第1キャリアに連結された第2サンギアと、前記第2サンギアに接続された第2プラネタリギアと、前記第2プラネタリギアに接続され前記第1リングギアに連結された第2リングギアとを含む第2遊星歯車機構と、
前記第1リングギア及び前記第2リングギアに接続され、前記入力軸に対する前記出力軸の速度比を無段変速させる第1可変装置と、
前記速度比を無段変速させる第2可変装置と、
前記第1サンギアと前記第2可変装置とを直接的に連結するシャフトと、
前記出力軸に接続された高速ギアと、
前記高速ギアと前記シャフトとの連結と解放とを切り換える高速クラッチと、
を備えるトランスミッション。
【請求項2】
入力軸と、
出力軸と、
前記入力軸に連結された第1キャリアと、前記第1キャリアに連結された第1プラネタリギアと、前記第1プラネタリギアに接続された第1サンギアと、前記第1プラネタリギアに接続された第1リングギアとを含む第1遊星歯車機構と、
前記第1キャリアに連結された第2サンギアと、前記第2サンギアに接続された第2プラネタリギアと、前記第2プラネタリギアに接続され前記第1リングギアに連結された第2リングギアとを含む第2遊星歯車機構と、
前記第1リングギア及び前記第2リングギアに接続され、前記入力軸に対する前記出力軸の速度比を無段変速させる第1可変装置と、
前記速度比を無段変速させる第2可変装置と、
前記第1サンギアと前記第2可変装置とを直接的に連結するシャフトと、
前記シャフトに連結された低速ギアと、
前記出力軸と前記低速ギアとの連結と解放とを切り換える低速クラッチと、
を備えるトランスミッション。
【請求項3】
入力軸と、
出力軸と、
前記入力軸に連結された第1キャリアと、前記第1キャリアに連結された第1プラネタリギアと、前記第1プラネタリギアに接続された第1サンギアと、前記第1プラネタリギアに接続された第1リングギアとを含む第1遊星歯車機構と、
前記第1キャリアに連結された第2サンギアと、前記第2サンギアに接続された第2プラネタリギアと、前記第2プラネタリギアに接続され前記第1リングギアに連結された第2リングギアと、前記第2プラネタリギアに連結された第2キャリアとを含む第2遊星歯車機構と、
前記第1リングギア及び前記第2リングギアに接続され、前記入力軸に対する前記出力軸の速度比を無段変速させる第1可変装置と、
前記第2キャリアに連結された第3キャリアと、前記第3キャリアに連結された第3プラネタリギアと、前記第3プラネタリギアに接続された第3サンギアとを含む第3遊星歯車機構と、
前記第3サンギアに連結された外歯式のギアと、
を備えるトランスミッション。
【請求項4】
入力軸と、
出力軸と、
前記入力軸に連結された第1キャリアと、前記第1キャリアに連結された第1プラネタリギアと、前記第1プラネタリギアに接続された第1サンギアと、前記第1プラネタリギアに接続された第1リングギアとを含む第1遊星歯車機構と、
前記第1キャリアに連結された第2サンギアと、前記第2サンギアに接続された第2プラネタリギアと、前記第2プラネタリギアに接続され前記第1リングギアに連結された第2リングギアと、前記第2プラネタリギアに連結された第2キャリアとを含む第2遊星歯車機構と、
前記第1リングギア及び前記第2リングギアに接続され、前記入力軸に対する前記出力軸の速度比を無段変速させる第1可変装置と、
前記第2キャリアに連結された第3キャリアと、前記第3キャリアに連結された第3プラネタリギアと、前記第3プラネタリギアに接続された第3サンギアとを含む第3遊星歯車機構と、
前記出力軸と前記第3サンギアとの連結と解放とを切り換える中速クラッチと、
を備えるトランスミッション。
【請求項5】
前記第3遊星歯車機構は、前記第1遊星歯車機構、及び、前記第2遊星歯車機構と同軸に配置される、
請求項3又は4に記載のトランスミッション。
【請求項6】
入力軸と、
出力軸と、
前記入力軸に連結された第1キャリアと、前記第1キャリアに連結された第1プラネタリギアと、前記第1プラネタリギアに接続された第1サンギアと、前記第1プラネタリギアに接続された第1リングギアとを含む第1遊星歯車機構と、
前記第1キャリアに連結された第2サンギアと、前記第2サンギアに接続された第2プラネタリギアと、前記第2プラネタリギアに接続され前記第1リングギアに連結された第2リングギアとを含む第2遊星歯車機構と、
前記第1リングギア及び前記第2リングギアに接続され、前記入力軸に対する前記出力軸の速度比を無段変速させる第1可変装置と、
前記第1リングギアと前記第2リングギアとを含むリング部材と、
を備え、
前記リング部材の外周面は、前記第1可変装置に接続される外歯式のギアを含む、
トランスミッション。
【請求項7】
前記第1リングギアと前記第2リングギアとは一体的に形成されている、
請求項1からのいずれかに記載のトランスミッション。
【請求項8】
請求項1からのいずれかに記載のトランスミッションを備える作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トランスミッション及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)などの無段変速可能なトランスミッションが、従来、知られている。例えば、特許文献1のトランスミッションは、第1遊星歯車機構と、第2遊星歯車機構と、第1ポンプ/モータと、第2ポンプ/モータとを備えている。
【0003】
トランスミッションの入力軸は、FR切換機構を介して、第1遊星歯車機構のサンギアに接続されている。第1遊星歯車機構のリングギアは、クラッチを介して、第2遊星歯車機構のキャリアに接続されている。第2遊星歯車機構のリングギアは、出力軸に接続されている。第1ポンプ/モータは、第1遊星歯車機構のキャリアに接続されている。第2ポンプ/モータは、第1遊星歯車機構のリングギアに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-329244号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のトランスミッションでは、第1遊星歯車機構のリングギアはクラッチに接続されている。リングギアは他のギアと比べて外径が大きい。そのため、クラッチが大型化することで、トランスミッションが大型化してしまう。また、第1遊星歯車機構のリングギアと第2遊星歯車機構のリングギアとは、それぞれ外歯式の出力ギアを有している。そのため、トランスミッションがさらに大型化してしまう。
【0006】
本開示の目的は、可変装置によって無段変速可能なトランスミッションを小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係るトランスミッションは、入力軸と、出力軸と、第1遊星歯車機構と、第2遊星歯車機構と、第1可変装置とを備える。第1遊星歯車機構は、第1キャリアと、第1プラネタリギアと、第1サンギアと、第1リングギアとを含む。第1キャリアは、入力軸に連結される。第1プラネタリギアは、第1キャリアに連結される。第1サンギアは、第1プラネタリギアに接続される。第1リングギアは、第1プラネタリギアに接続される。
【0008】
第2遊星歯車機構は、第2サンギアと、第2プラネタリギアと、第2リングギアとを含む。第2サンギアは、第1キャリアに連結される。第2プラネタリギアは、第2サンギアに接続される。第2リングギアは、第2プラネタリギアに接続される。第2リングギアは、第1リングギアに連結される。第1可変装置は、入力軸に対する出力軸の速度比を無段変速させる。第1可変装置は、第1リングギア及び第2リングギアに接続される。
【0009】
他の態様に係る作業車両は、上述したトランスミッションを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るトランスミッションでは、第2リングギアは、第1リングギアに連結される。そのため、第1リングギアに連結される大型のクラッチが不要である。また、第1リングギアと第2リングギアとの両方に外歯式のギアを設ける必要が無い。そのため、トランスミッションを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る作業車両の側面図である。
図2】実施形態に係るトランスミッションのスケルトン図である。
図3】トランスミッションの作動特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る作業車両1の側面図である。図1に示すように、作業車両1は、車体2と作業機3とを備えている。
【0013】
車体2は、前車体2aと後車体2bとを含む。後車体2bは、前車体2aに対して左右に旋回可能に接続されている。前車体2aと後車体2bとには、油圧シリンダ15が連結されている。油圧シリンダ15が伸縮することで、前車体2aが、後車体2bに対して、左右に旋回する。
【0014】
作業機3は、掘削等の作業に用いられる。作業機3は、前車体2aに取り付けられている。作業機3は、ブーム11と、バケット12と、油圧シリンダ13,14とを含む。油圧シリンダ13,14が伸縮することによって、ブーム11及びバケット12が動作する。
【0015】
作業車両1は、エンジン21と、トランスミッション23と、走行装置24とを備えている。エンジン21は、例えばディーゼルエンジンなどの内燃機関である。トランスミッション23は、エンジン21に接続される。トランスミッション23は、変速比を無段階に変更可能である。
【0016】
走行装置24は、作業車両1を走行させる。走行装置24は、前輪25と後輪26とを含む。前輪25は、前車体2aに設けられる。後輪26は、後車体2bに設けられる。前輪25と後輪26とは、図示しないアクスルを介して、トランスミッション23に接続されている。
【0017】
作業車両1は、図示しない油圧ポンプを備える。油圧ポンプは、エンジン21に接続される。油圧ポンプは、エンジン21によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプから吐出された作動油は、上述した油圧シリンダ13-15に供給される。
【0018】
作業車両1は、コントローラ27を含む。コントローラ27は、例えばプロセッサとメモリとを含む。コントローラ27は、エンジン21及びトランスミッション23を制御する。
【0019】
図2は、トランスミッション23の構成を示すスケルトン図である。図2に示すように、トランスミッション23は、入力軸31と、出力軸32と、第1遊星歯車機構33と、第2遊星歯車機構34と、第3遊星歯車機構35と、第1可変装置36と、第2可変装置37とを含む。入力軸31は、エンジン21に接続されている。出力軸32は、走行装置24に接続されている。第1遊星歯車機構33と、第2遊星歯車機構34と、第3遊星歯車機構35とは、同軸に配置されている。入力軸31と出力軸32とは、第1遊星歯車機構33と第2遊星歯車機構34と第3遊星歯車機構35との中心軸C1から偏心して配置されている。
【0020】
第1遊星歯車機構33は、第1キャリア41と、複数の第1プラネタリギア42と、第1サンギア43と、第1リングギア44とを含む。第1キャリア41は、入力軸31に接続されている。入力軸31には、入力ギア45が連結されている。第1キャリア41は、外歯式のギア46を含む。第1キャリア41のギア46は、入力ギア45と噛み合っている。第1プラネタリギア42は、第1キャリア41に連結されている。第1プラネタリギア42は、第1キャリア41と共に、中心軸C1回りに回転可能である。第1サンギア43は、第1プラネタリギア42と噛み合っており、第1プラネタリギア42に接続されている。第1リングギア44は、第1プラネタリギア42と噛み合っており、第1プラネタリギア42に接続されている。
【0021】
第2遊星歯車機構34は、第2サンギア51と、複数の第2プラネタリギア52と、第2キャリア53と、第2リングギア54とを含む。第2サンギア51は、第1キャリア41に連結されている。第2サンギア51は、第1キャリア41と共に、中心軸C1回りに回転可能である。第2プラネタリギア52は、第2サンギア51と噛み合っており、第2サンギア51に接続されている。第2キャリア53は、第2プラネタリギア52に連結されている。第2キャリア53は、第2プラネタリギア52と共に中心軸C1回りに回転可能である。第2リングギア54は、第2プラネタリギア52と噛み合っており、第2プラネタリギア52に接続されている。
【0022】
第2リングギア54は、第1リングギア44に連結されている。第1リングギア44と第2リングギア54とは一体的に形成されている。詳細には、トランスミッション23は、リング部材47を含む。リング部材47は、一体化された第1リングギア44と第2リングギア54とを含む一部品である。リング部材47の外周面は、外歯式のギア48を含む。リング部材47のギア48は、第1可変装置36に接続されている。
【0023】
第1可変装置36は、油圧式のポンプ/モータである。第1可変装置36の容量は、コントローラ27によって制御される。コントローラ27は、第1可変装置36の回転速度を制御する。それにより、第1可変装置36は、入力軸31に対する出力軸32の速度比を無段変速させる。第1可変装置36の回転軸には、ギア49が連結されている。第1可変装置36のギア49は、リング部材47のギア48と噛み合っている。
【0024】
第3遊星歯車機構35は、第3キャリア61と、複数の第3プラネタリギア62と、第3サンギア63と、第3リングギア64を含む。第3キャリア61は、第2キャリア53に連結されている。第3キャリア61は、第2キャリア53と共に中心軸C1回りに回転可能である。第3キャリア61は、第2キャリア53と一体であってもよい。或いは、第3キャリア61は、第2キャリア53と別体であってもよい。第3プラネタリギア62は、第3キャリア61に連結されている。第3プラネタリギア62は、第3キャリア61と共に、中心軸C1回りに回転可能である。
【0025】
第3サンギア63は、第3プラネタリギア62と噛み合っており、第3プラネタリギア62に接続されている。第3リングギア64は、第3プラネタリギア62と噛み合っており、第3プラネタリギア62に接続されている。第3リングギア64は、回転不能である。第3リングギア64は、例えばトランスミッション23のハウジングに固定されている。第3遊星歯車機構35は、第2遊星歯車機構34からの回転を増速して出力する。
【0026】
第2可変装置37は、油圧式のポンプ/モータである。第2可変装置37は、第1可変装置36と図示しない油圧回路によって接続されている。第1可変装置36がポンプとして機能して作動油を吐出するときには、第2可変装置37は、モータとして機能して第1可変装置36からの作動油によって駆動される。逆に、第2可変装置37がポンプとして機能して作動油を吐出するときには、第1可変装置36は、モータとして機能して第2可変装置37からの作動油によって駆動される。
【0027】
第2可変装置37の容量は、コントローラ27によって制御される。コントローラ27は、第2可変装置37の回転速度を制御する。それにより、第2可変装置37は、速度比を無段変速させる。第2可変装置37は、第2遊星歯車機構34と同軸に配置されている。中心軸C1の延びる方向において、第2遊星歯車機構34と第3遊星歯車機構35とは、第2可変装置37と第1遊星歯車機構33との間に配置されている。
【0028】
第2可変装置37の回転軸には、シャフト55が連結されている。シャフト55は、第1サンギア43に連結されている。シャフト55は、第1サンギア43と第2可変装置37とを直接的に連結している。シャフト55は、第1~第3遊星歯車機構34-35と同軸に配置されている。シャフト55は、第2サンギア51の開口と、第3サンギア63の開口とを通っている。
【0029】
トランスミッション23は、低速ギア65と、高速ギア66と、中速ギア67と、低速クラッチ71と、高速クラッチ72と、中速クラッチ73とを含む。低速ギア65と、高速ギア66と、中速ギア67とは、第1~第3遊星歯車機構34-35と同軸に配置されている。低速ギア65は、シャフト55に連結されている。低速ギア65は、シャフト55と共に、中心軸C1回りに回転可能である。低速ギア65は、低速クラッチ71を介して、出力軸32に接続されている。
【0030】
高速ギア66は、高速クラッチ72を介して、シャフト55に接続されている。高速クラッチ72が係合状態で、高速ギア66は、シャフト55と共に回転可能である。高速ギア66は、出力軸32に接続されている。中速ギア67は、第3サンギア63に連結されている。中速ギア67は、第3サンギア63と一体的に形成されている。ただし、中速ギア67は、第3サンギア63と別体であってもよい。中速ギア67は、第3サンギア63と共に中心軸C1回りに回転可能である。
【0031】
低速ギア65と、高速ギア66と、中速ギア67とは、中心軸C1の延びる方向において、第3遊星歯車機構35と第2可変装置37との間に配置されている。低速クラッチ71と、高速クラッチ72と、中速クラッチ73とは、中心軸C1の延びる方向において、第3遊星歯車機構35と第2可変装置37との間に配置されている。低速クラッチ71と、高速クラッチ72と、中速クラッチ73とは、例えば油圧式のクラッチである。低速クラッチ71と、高速クラッチ72と、中速クラッチ73とは、コントローラ27によって制御される。
【0032】
低速クラッチ71は、出力軸32とシャフト55との連結と解放とを切り換える。低速クラッチ71が係合状態で、シャフト55の回転が、低速ギア65を介して、出力軸32に伝達される。高速クラッチ72は、出力軸32とシャフト55との連結と解放とを切り換える。高速クラッチ72が係合状態で、シャフト55の回転が、出力軸32に伝達される。中速クラッチ73は、出力軸32と第3サンギア63との連結と解放とを切り換える。中速クラッチ73が係合状態で、第3サンギア63の回転が、中速ギア67を介して、出力軸32に伝達される。
【0033】
なお、図2では、クラッチ71-73と出力軸32との間の構成の一部が省略されている。クラッチ71-73と出力軸32との間に、他のクラッチ、或いはギアが配置されてもよい。例えば、クラッチ71-73と出力軸32との間に、前進ギアと後進ギアとが配置されてもよい。
【0034】
図3は、トランスミッション23の作動特性図である。図3Aは、車速に対する第1、第2可変装置36,37の回転速度を示す。図3Aにおいて、破線は、第1可変装置36の回転速度を示す。実線は、第2可変装置37の回転速度を示す。図3Bは、車速に対する第1、第2可変装置36,37の容量を示す。図3Bにおいて、破線は、第1可変装置36の容量を示す。実線は、第2可変装置37の容量を示す。
【0035】
図3Cは、車速域ごとのクラッチ71-73の状態を示す。車速域は、低速域と中速域と高速域とを含む。低速域は、車速が0以上V1未満の範囲である。中速域は、車速がV1以上V2未満の範囲である。高速域は、車速がV2以上V3未満の範囲である。図3Cにおいて、「ON」は、クラッチ71-73が係合状態であることを示す。「OFF」は、クラッチ71-73が解放状態であることを示す。
【0036】
図3Dは、車速に対するクラッチ71-73の相対速度を示す。図3Dにおいて、「Low」は低速クラッチ71の相対速度を示す。「Mid」は中速クラッチ73の相対速度を示す。「High」は高速クラッチ72の相対速度を示す。
【0037】
コントローラ27は、車速に応じて、第1、第2可変装置36,37の容量と、クラッチ71-73の状態とを制御する。図3Dに示すように、車速が0であるときには、低速クラッチ71の相対速度は0である。図3Cに示すように、コントローラ27は、車速が0で、低速クラッチ71を係合状態とする。また、コントローラ27は、中速クラッチ73及び高速クラッチ72を解放状態とする。それにより、エンジン21から入力軸31に入力された駆動力は、第1キャリア41、第1プラネタリギア42、第1サンギア43、シャフト55、及び低速ギア65を介して、出力軸32に伝達される。
【0038】
コントローラ27は、車速が低速域内であるときには、低速クラッチ71を係合状態に維持する。図3Bに示すように、コントローラ27は、車速に応じて、第1、第2可変装置36,37の容量を制御する。それにより、図3Aに示すように、車速が低速域内であるときには、車速の増大に応じて、第1可変装置36の回転速度は低下し、第2可変装置37の回転速度は増大する。
【0039】
図3Dに示すように、車速がV1では、中速クラッチ73の相対速度は0である。図3Cに示すように、コントローラ27は、車速がV1に達すると、中速クラッチ73を係合状態とする。また、コントローラ27は、低速クラッチ71及び高速クラッチ72を解放状態とする。それにより、エンジン21から入力軸31に入力された駆動力は、第1キャリア41、第2サンギア51、第2キャリア53、第3キャリア61、第3プラネタリギア62、第3サンギア63、及び中速ギア67を介して、出力軸32に伝達される。
【0040】
コントローラ27は、車速が中速域内であるときには、中速クラッチ73を係合状態に維持する。図3Bに示すように、コントローラ27は、車速に応じて、第1、第2可変装置36,37の容量を制御する。それにより、図3Aに示すように、車速が中速域内であるときには、車速の増大に応じて、第1可変装置36の回転速度は増大し、第2可変装置37の回転速度は低下する。
【0041】
図3Dに示すように、車速がV2であるときには、高速クラッチ72の相対速度は0である。図3Cに示すように、コントローラ27は、車速がV2で、高速クラッチ72を係合状態とする。また、コントローラ27は、低速クラッチ71及び中速クラッチ73を解放状態とする。それにより、エンジン21から入力軸31に入力された駆動力は、第1キャリア41、第1プラネタリギア42、第1サンギア43、シャフト55、及び高速ギア66を介して、出力軸32に伝達される。
【0042】
コントローラ27は、車速が高速域内であるときには、高速クラッチ72を係合状態に維持する。図3Bに示すように、コントローラ27は、車速に応じて、第1、第2可変装置36,37の容量を制御する。それにより、図3Aに示すように、車速が高速域内であるときには、車速の増大に応じて、第1可変装置36の回転速度は低下し、第2可変装置37の回転速度は増大する。
【0043】
以上説明した本実施形態に係るトランスミッション23では、第2リングギア54は、第1リングギア44に連結される。そのため、第1リングギア44、又は第2リングギア54に連結される大型のクラッチが不要である。また、第1リングギア44及び第2リングギア54に設けられる外歯式のギアを減らすことができる。それにより、トランスミッション23を小型化することができる。
【0044】
図3Aに示すように、第1、第2可変装置36,37の回転方向は、全速度範囲で同じである。そのため、第1、第2可変装置36,37としてシンプルな構造のポンプを採用することができる。それにより、トランスミッション23を小型化することができる。
【0045】
入力軸31は、第1遊星歯車機構33の第1キャリア41に連結されている。第1遊星歯車機構33の第1リングギア44は、外歯式のギア48を介して第1可変装置36と接続されている。また、第1遊星歯車機構33の第1サンギア43は、第2可変装置37に直接的に連結されている。それにより、第1、第2可変装置36,37の使用回転域に適したトランスミッション23の入力分割のための機構を簡易且つコンパクトに構成することができる。
【0046】
第2遊星歯車機構34の第2キャリア53は、第3遊星歯車機構35の第3キャリア61に連結されている。第3遊星歯車機構35の第3サンギア63は、中速ギア67に一体化されている。また、第3遊星歯車機構35は、第1遊星歯車機構33及び第2遊星歯車機構34と同軸に配置される。それにより、トランスミッション23を小型化することができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。作業車両1は、ホイールローダに限らず、ブルドーザ、或いは油圧ショベルなどの他の車両であってもよい。
【0048】
トランスミッション23の構成は変更されてもよい。例えば、第1遊星歯車機構33の回転要素と第2遊星歯車機構34の回転要素との接続関係が変更されてもよい。第2遊星歯車機構34の回転要素と第3遊星歯車機構35の回転要素との接続関係が変更されてもよい。第2リングギア54は、第1リングギア44と別体であってもよい。
【0049】
第1可変装置36、及び/又は、第2可変装置37の配置が変更されてもよい。第1可変装置36、及び/又は、第2可変装置37は、油圧式のポンプ/モータに限らず、電気式のジェネレータ/モータなどの他の装置であってもよい。
【0050】
低速クラッチ71、及び/又は、中速クラッチ73、及び/又は、高速クラッチ72の配置が変更されてもよい。低速クラッチ71と中速クラッチ73と高速クラッチ72との一部が省略されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示によれば、可変装置によって無段変速可能なトランスミッションを小型化することができる。
【符号の説明】
【0052】
31 入力軸
32 出力軸
33 第1遊星歯車機構
34 第2遊星歯車機構
35 第3遊星歯車機構
36 第1可変装置
37 第2可変装置
41 第1キャリア
42 第1プラネタリギア
43 第1サンギア
47 リング部材
51 第2サンギア
52 第2プラネタリギア
53 第2キャリア
54 第2リングギア
55 シャフト
61 第3キャリア
62 第3プラネタリギア
63 第3サンギア
71 低速クラッチ
72 高速クラッチ
73 中速クラッチ
図1
図2
図3