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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】缶搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 11/20 20060101AFI20231013BHJP
   B65G 47/28 20060101ALI20231013BHJP
   B65G 47/08 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B65G11/20 A
B65G47/28 D
B65G47/08 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019060499
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020158264
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】砂永 義幸
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-013008(JP,A)
【文献】特開平01-313207(JP,A)
【文献】特開昭53-026069(JP,A)
【文献】実開平02-043810(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 11/20
B65G 11/08
B65G 11/00
B65G 47/28
B65G 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延び、複数の缶が搬送される搬送路と、
前記搬送路の上端部と下端部との間の中間部に設けられる保持移動機構と、を備え、
前記搬送路は、缶シューターの構造を有し、前記缶は、缶軸が水平方向に延びる転がり姿勢とされて、前記搬送路内を上から下側へ向けて搬送され、
前記保持移動機構は、
前記搬送路の缶を保持可能な保持手段と、
前記保持手段のうち缶を保持する保持部を、前記搬送路に沿って下側へ移動させる移動手段と、を有し、
前記保持部は、前記搬送路を搬送される前記缶の底部に接触し、
前記搬送路の前記中間部は、下側へ向かうに従い水平方向に向けて延び、
前記保持部は、前記搬送路の一部に露出され、前記一部は、直線状に延びる、
缶搬送装置。
【請求項2】
前記保持手段は、
缶の底部に接触する前記保持部を含むベルトと、
前記ベルトに開口するエア孔を通して缶の底部をエア吸引するエア吸引源と、を有する、
請求項1に記載の缶搬送装置。
【請求項3】
前記ベルトは、環状であり、
前記移動手段は、
前記ベルトが巻き回される複数のプーリと、
複数の前記プーリのうち少なくとも1つを回転させる駆動部と、を有する、
請求項2に記載の缶搬送装置。
【請求項4】
前記搬送路のうち前記保持移動機構よりも下側に位置する部分に配置され、前記搬送路の缶を検出可能な第1検出手段と、
前記搬送路のうち前記第1検出手段よりも下側に位置する部分に配置され、前記搬送路の缶を検出可能な第2検出手段と、
前記第1検出手段および前記第2検出手段の検出結果に基づいて、前記移動手段を制御する制御部と、を備える、
請求項1からのいずれか1項に記載の缶搬送装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1検出手段および前記第2検出手段が缶を検出しない場合は、前記移動手段により前記保持部を、第1移動速度で移動させ、
前記第1検出手段が缶を検出せず前記第2検出手段が缶を検出した場合は、前記移動手段により前記保持部を、前記第1移動速度よりも低速の第2移動速度で移動させ、
前記第1検出手段および前記第2検出手段が缶を検出した場合は、前記移動手段による前記保持部の移動を停止する、
請求項に記載の缶搬送装置。
【請求項6】
前記搬送路の上下方向の高さが、5m以上である、
請求項1からのいずれか1項に記載の缶搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1の容器供給量制御装置が知られている。この容器供給量制御装置は、容器を搬送するコンベヤと、このコンベヤによって搬送されてきた容器を所定のピッチに切り離すインフィードスクリューと、これら容器を容器処理装置内に供給する入口ホイールと、コンベヤの側部のインフィードスクリューよりも上流側に配置された一対のロータリホイールと、ロータリホイールを駆動する駆動手段と、ロータリホイールとインフィードスクリューとの間に配置されてコンベヤ上の容器の滞留量を検知するセンサと、このセンサにより、滞留する容器の量が多くなったことを検知した際に、駆動手段の回転速度を減速するよう制御するコントローラと、を備える。この容器供給量制御装置では、後方の容器の押し圧が前方の容器に作用して容器を傷付けることが抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4147626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば製缶工場において、飲料等が充填される前の缶(空缶)を搬送する場合に、缶が、上の階層から下の階層へとシュート等の搬送路を上下方向に搬送されることがある。この場合、搬送路の高低差が例えば数m以上と大きくなると、搬送路の下端部などに位置する缶に対して、この缶よりも上側に位置する複数の缶から大きな圧力(背圧)が作用し、缶が凹むおそれがある。缶の軽量化や増速化が進み缶の搬送速度は高まっており、缶を搬送する際に缶の凹みを安定して抑えることが要求されている。また、缶搬送装置を簡素な構造でコンパクトに構成することも要求される。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、搬送する缶が凹むことを安定して抑制でき、簡素な構造でコンパクトに装置を構成できる缶搬送装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の缶搬送装置の一つの態様は、上下方向に延び、複数の缶が搬送される搬送路と、前記搬送路の上端部と下端部との間の中間部に設けられる保持移動機構と、を備え、前記搬送路は、缶シューターの構造を有し、前記缶は、缶軸が水平方向に延びる転がり姿勢とされて、前記搬送路内を上から下側へ向けて搬送され、前記保持移動機構は、前記搬送路の缶を保持可能な保持手段と、前記保持手段のうち缶を保持する保持部を、前記搬送路に沿って下側へ移動させる移動手段と、を有し、前記保持部は、前記搬送路を搬送される前記缶の底部に接触し、前記搬送路の前記中間部は、下側へ向かうに従い水平方向に向けて延び、前記保持部は、前記搬送路の一部に露出され、前記一部は、直線状に延びる。
【0007】
本発明の缶搬送装置では、上下方向に延びる搬送路の途中に、保持移動機構が設けられる。保持移動機構のうち、保持手段において缶を保持した保持部は、移動手段により搬送路の下側へと移動させられる。すなわち、搬送路の上下方向の中間部に位置する保持移動機構により、搬送路の缶が保持された状態で、缶の自重による移動速度ではない所定の速度で、缶が下側へ移動させられる。これにより、搬送路の缶に対して、この缶よりも上側に位置する複数の缶から大きな圧力が作用することを抑制できる。
【0008】
具体的には、保持移動機構よりも下側に位置する搬送路の缶に対して、保持移動機構およびその上側に位置する搬送路の缶から、大きな圧力が作用することが抑えられる。また、搬送路のうち保持移動機構よりも上側に位置する部分の上下方向の高低差が小さく抑えられるため、保持移動機構およびその上側に位置する搬送路の缶に対して、この缶よりも上側に位置する複数の缶から大きな圧力が作用することが抑えられる。
したがって本発明によれば、搬送路を搬送される缶が凹むことを安定して抑制できる。
【0009】
また、例えば特許文献1(特許第4147626号公報)に記載されるようなインフィードスクリュー、一対のロータリホイール、入口ホイール等を備えた複雑な構造は、本発明では必須の構成要件ではない。本発明は構造が簡素であり、かつ装置の外形がコンパクトに抑えられる。
本発明の缶搬送装置は、既存の缶の搬送経路に適用すること、つまり後付けで装置を設置することが容易であり、設備費用を削減できる。
上記缶搬送装置において、前記搬送路の前記中間部は、下側へ向かうに従い水平方向に向けて延びる。
例えば上記構成と異なり、搬送路の中間部が鉛直方向に沿って延びる場合と比べて、上記構成では、保持移動機構の上下方向の全高を小さく抑えることができる。また上記構成と異なり、搬送路の中間部が水平方向に沿って延びる場合と比べて、上記構成では、保持移動機構の水平方向の全幅を小さく抑えることができる。つまり、缶搬送装置を上下方向および水平方向によりコンパクトに構成できる。
また、例えば缶搬送装置が水平方向に複数並べられて設置される場合には、水平方向に隣り合う缶搬送装置の各保持移動機構の端部同士を、互いに接触させることなく接近配置することができ、複数の缶搬送装置の設置スペースを小さく抑えることができる。
【0010】
上記缶搬送装置において、前記保持手段は、缶の底部に接触する前記保持部を含むベルトと、前記ベルトに開口するエア孔を通して缶の底部をエア吸引するエア吸引源と、を有することが好ましい。
【0011】
この場合、保持移動機構の保持手段が、バキューム構造によって缶の底部をベルトの保持部に吸着させる。簡素な構造を用いて、缶を安定して保持しつつ下側へ移動させることができる。
【0012】
上記缶搬送装置において、前記ベルトは、環状であり、前記移動手段は、前記ベルトが巻き回される複数のプーリと、複数の前記プーリのうち少なくとも1つを回転させる駆動部と、を有することが好ましい。
【0013】
この場合、環状のベルトおよび移動手段により、ベルトで保持した缶を連続的に効率よく下側へ移動させることができる。
【0016】
上記缶搬送装置において、前記搬送路のうち前記保持移動機構よりも下側に位置する部分に配置され、前記搬送路の缶を検出可能な第1検出手段と、前記搬送路のうち前記第1検出手段よりも下側に位置する部分に配置され、前記搬送路の缶を検出可能な第2検出手段と、前記第1検出手段および前記第2検出手段の検出結果に基づいて、前記移動手段を制御する制御部と、を備えることが好ましい。
上記缶搬送装置において、前記制御部は、前記第1検出手段および前記第2検出手段が缶を検出しない場合は、前記移動手段により前記保持部を、第1移動速度で移動させ、前記第1検出手段が缶を検出せず前記第2検出手段が缶を検出した場合は、前記移動手段により前記保持部を、前記第1移動速度よりも低速の第2移動速度で移動させ、前記第1検出手段および前記第2検出手段が缶を検出した場合は、前記移動手段による前記保持部の移動を停止することが好ましい。
【0017】
この場合、搬送路のうち、保持移動機構よりも下側の部分にストックされている缶の数に応じて、保持移動機構が保持する缶の移動速度や移動の停止を制御できる。
具体的には、搬送路の保持移動機構よりも下側の部分にストックされている複数の缶のうち、最も上側に位置する缶が、第1検出手段および第2検出手段よりも下側に位置する場合には、制御部が保持移動機構により、搬送路の下側へ向けて缶を高速の第1移動速度で移動させる。
また、搬送路の保持移動機構よりも下側の部分にストックされている複数の缶のうち、最も上側に位置する缶が、上下方向において第1検出手段と第2検出手段との間に位置する場合には、制御部が保持移動機構により、搬送路の下側へ向けて缶を低速の第2移動速度で移動させる。
また、搬送路の保持移動機構よりも下側の部分にストックされている複数の缶のうち、最も上側に位置する缶が、第1検出手段および第2検出手段の上側に位置する場合には、保持移動機構が缶を保持した状態のまま、制御部が、缶の移動を停止させる。
【0018】
したがって、搬送路を搬送される缶の移動速度が最適化される。缶搬送装置の後工程に安定して缶を供給することができ、後工程での缶の処理が安定する。また搬送路において、缶が詰まったり潰れたりする不具合を抑制できる。
【0019】
上記缶搬送装置において、前記搬送路の上下方向の高さが、5m以上であることが好ましい。
【0020】
搬送路の上下方向の高さ(つまり高低差)が5m以上であると、従来の構造の場合には、搬送路を搬送される缶が背圧により凹みやすかった。一方、本発明によれば、搬送路の高低差が5m以上であっても、搬送路の上下方向の中間部に保持移動機構が設けられるため、搬送路を搬送される缶が背圧により凹むことを安定して抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一つの態様の缶搬送装置によれば、搬送する缶が凹むことを安定して抑制でき、簡素な構造でコンパクトに装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態の缶搬送装置、およびインサイドスプレー装置を示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態の缶搬送装置を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態の缶搬送装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態の缶搬送装置10について、図面を参照して説明する。
本実施形態の缶搬送装置10は、例えば製缶工場に設置される。製缶工場は、複数の缶Pを単列に整列して後工程に排出するエアフローコンベア装置(図示省略)と、缶Pの内面に塗装を施すインサイドスプレー装置(缶内面塗装装置)50と、エアフローコンベア装置とインサイドスプレー装置50とを繋ぐ缶Pの搬送経路を構成する缶搬送装置10と、を備える。
図1図3に示すように、本実施形態の缶搬送装置10は、上下方向に延び、複数の缶Pが搬送される搬送路1と、搬送路1の上端部と下端部との間の中間部に設けられる保持移動機構2と、第1検出手段11と、第2検出手段12と、制御部13と、を備える。
【0024】
製缶工場は、上下方向に並ぶ複数(本実施形態では3つ)の階層A、B、Cを有する。各階層A、B、Cは、各種の装置が設置される床部をそれぞれ有する。
エアフローコンベア装置は、3つの階層A、B、Cのうち、第1の階層Aに設置される。
インサイドスプレー装置50は、第1の階層Aよりも下側に位置する第2の階層Bに設置される。インサイドスプレー装置50は、第2の階層Bに、水平方向に並んで複数設けられる。
【0025】
缶搬送装置10のうち保持移動機構2、第1検出手段11および第2検出手段12は、上下方向において第1の階層Aと第2の階層Bとの間に位置する第3の階層Cに設置される。保持移動機構2、第1検出手段11および第2検出手段12の組は、第3の階層Cに、水平方向に並んで複数設けられる。つまり缶搬送装置10は、水平方向に並んで複数設けられる。
缶搬送装置10のうち搬送路1は、複数の階層A、B、Cにわたって上下方向に延びる。搬送路1の上下方向の高さ、すなわち搬送路1の上端と下端との間の上下方向の長さ(高低差)は、例えば5m以上である。
【0026】
缶Pは、飲料等が充填される前の空缶であり、有底円筒状である。缶Pは、例えば、アルミニウム合金製である。缶Pは、第1の階層Aのエアフローコンベア装置から、缶搬送装置10の搬送路1を通って第2の階層Bのインサイドスプレー装置50へと、下側へ向けて搬送される。缶Pは、缶軸が水平方向に延びる転がり姿勢(寝かせた姿勢)とされて、搬送路1内を上から下側へ向けて搬送される。
【0027】
なお本実施形態では、各図に3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、+Z側を上側とし、-Z側を下側とする上下方向(鉛直方向)である。X軸方向は、Z軸方向と直交する第1の水平方向(所定の水平方向)であり、本実施形態では、複数のインサイドスプレー装置50が配列する方向であり、複数の缶搬送装置10が配列する方向である。X軸方向のうち、+X側は一方側であり、-X側は他方側である。Y軸方向は、Z軸方向およびX軸方向と直交する第2の水平方向である。
【0028】
搬送路1は、缶シューターの構造を有する。図2および図3に示すように、搬送路1は、缶軸方向において缶Pの開口部と対向するトップガイド1aと、缶軸方向において缶Pの底部と対向するボトムガイド1bと、缶軸方向においてトップガイド1aとボトムガイド1bとの間に配置され、缶Pの胴部に接触可能な複数のレール1cと、を有する。トップガイド1a、ボトムガイド1bおよびレール1cは、搬送路1の延在方向(つまり缶Pの搬送方向)に沿ってそれぞれ延びる。
【0029】
図1において、搬送路1の上端部は、エアフローコンベア装置と接続される。搬送路1の上端部は、図示しないターンオーバー装置を介してエアフローコンベア装置と接続されてもよい。ターンオーバー装置は、缶軸が上下方向に延びる正立姿勢とされた缶Pを、エアフローコンベア装置から受け入れ、缶Pの姿勢を、缶軸が水平方向に延びる転がり姿勢へと変えて、搬送路1へ送る。本実施形態では、搬送路1の上端部が、鉛直方向に沿って延びる。搬送路1の上端部は、第1の階層Aおよび第3の階層Cにわたって延びる。
【0030】
搬送路1の下端部は、インサイドスプレー装置50と接続される。具体的に、搬送路1の下端部は、インサイドスプレー装置50が備えるスターホイールの複数のポケットのうち、所定位置に配置された1つのポケットと対向する。本実施形態では、搬送路1の下端部が、下側へ向かうに従いX軸方向の他方側へ向けて延びる。搬送路1の下端部は、第3の階層Cおよび第2の階層Bにわたって延びる。
【0031】
搬送路1の上端部と下端部との間に位置する中間部は、下側へ向かうに従いX軸方向の一方側(つまり水平方向)に向けて延びる。搬送路1の中間部は、鉛直方向に対して傾斜して延びる。搬送路1の中間部は、水平方向(本実施形態ではX軸方向)に対して傾斜して延びる。搬送路1の中間部は、第3の階層Cに配置される。
【0032】
図2および図3に示すように、保持移動機構2は、搬送路1の缶Pを保持可能な保持手段3と、保持手段3のうち缶Pを保持する保持部5aを、搬送路1に沿って下側へ移動させる移動手段4と、支持台14と、を有する。
【0033】
保持手段3は、缶Pの底部に接触する保持部5aを含むベルト5と、ベルト5に開口するエア孔(図示省略)を通して缶Pの底部をエア吸引するエア吸引源6と、ベルト5の保持部5aに隣接配置され、保持部5aに開口するエア孔、およびエア吸引源6と繋がるバキューム室7と、を有する。
【0034】
ベルト5は、環状である。ベルトは、保持部5aと、複数のエア孔と、を有する。
保持部5aは、ベルト5のうち搬送路1に露出される部分であり、搬送路1を搬送される缶Pの底部と対向する部分である。保持部5aは、搬送路1の延在方向に沿って延びる。保持部5aは、ベルト5の一部であり、かつ搬送路1のボトムガイド1bの一部を構成する。保持部5aは、搬送路1の一部1dに露出される。搬送路1の一部1dは、直線状に延びる。
【0035】
複数のエア孔は、ベルト5が延びる方向に互いに間隔をあけて配置される。保持部5aに位置する複数のエア孔は、搬送路1の延在方向に沿って配列する。エア孔は、ベルト5をベルト5の厚さ方向に貫通する貫通孔である。
【0036】
エア吸引源6は、例えばブロワファン等である。エア吸引源6は、例えば配管やホース等の配管部材15およびバキューム室7を通して、ベルト5の保持部5aに位置するエア孔と連通される。
【0037】
バキューム室7は、ベルト5の保持部5aに隣接して配置される室(減圧室)である。バキューム室7は、保持部5aを介して搬送路1の一部1dと接近して配置される。搬送路1の一部1dとバキューム室7とは、保持部5aを間に挟んで互いに反対側に位置する。搬送路1の一部1d、保持部5aおよびバキューム室7は、搬送路1の一部1dを搬送される缶Pの缶軸方向に、互いに並んで配置される。
エア吸引源6が配管部材15、バキューム室7および保持部5aのエア孔を通して、搬送路1の一部1dからエアを吸引することにより、缶Pの底部が、保持部5aに吸着されて一時的に保持される。
【0038】
移動手段4は、ベルト5が巻き回される複数のプーリ16と、複数のプーリ16のうち少なくとも1つを回転させる駆動部17と、を有する。
プーリ16は、軸受によりプーリ軸回りに回転自在に支持される。複数のプーリ16のうち少なくとも1つ以上は、プーリ軸に直交するプーリ径方向に位置調整可能であり、これにより、ベルト5のテンション(張力)を所定値以上に維持することができる。
駆動部17は、例えばモータ等である。
【0039】
支持台14は、保持手段3および移動手段4を支持する。支持台14は、例えば、フレーム部材等により構成される。支持台14は、第3の階層Cの床部に固定される。
【0040】
図1および図3に示すように、第1検出手段11は、搬送路1のうち保持移動機構2よりも下側に位置する部分に配置され、搬送路1の缶Pを検出可能である。第2検出手段12は、搬送路1のうち第1検出手段11よりも下側に位置する部分に配置され、搬送路1の缶Pを検出可能である。
【0041】
第1検出手段11および第2検出手段12は、例えば、アルミニウム合金製の缶Pを検出可能な渦電流式センサや反射式センサ等である。第1検出手段11および第2検出手段12は、例えば、所定時間以上にわたって缶Pを検出したか否かにより、搬送路1の缶Pの有無を検出する。すなわち、搬送路1を単に下側に通過する缶Pについては、第1検出手段11および第2検出手段12の検出対象とはならない。
【0042】
制御部13は、第1検出手段11および第2検出手段12の検出結果に基づいて、移動手段4の駆動部17を制御する。
具体的に、制御部13は、第1検出手段11および第2検出手段12が缶Pを検出しない場合は、移動手段4の駆動部17により保持部5aを、第1移動速度で搬送路1の下側へ移動させる。
また制御部13は、第1検出手段11が缶Pを検出せず第2検出手段12が缶Pを検出した場合は、移動手段4の駆動部17により保持部5aを、第1移動速度よりも低速の第2移動速度で搬送路1の下側へ移動させる。
また制御部13は、第1検出手段11および第2検出手段12が缶Pを検出した場合は、移動手段4の駆動部17による保持部5aの移動を停止する。
【0043】
以上説明した本実施形態の缶搬送装置10では、上下方向に延びる搬送路1の途中に、保持移動機構2が設けられる。保持移動機構2のうち、保持手段3において缶Pを保持した保持部5aは、移動手段4により搬送路1の下側へと移動させられる。すなわち、搬送路1の上下方向の中間部に位置する保持移動機構2により、搬送路1の缶Pが保持された状態で、缶Pの自重による移動速度ではない所定の速度で、缶Pが下側へ移動させられる。これにより、搬送路1の缶Pに対して、この缶Pよりも上側に位置する複数の缶Pから大きな圧力が作用することを抑制できる。
【0044】
具体的には、保持移動機構2よりも下側に位置する搬送路1の缶Pに対して、保持移動機構2およびその上側に位置する搬送路1の缶Pから、大きな圧力が作用することが抑えられる。また、搬送路1のうち保持移動機構2よりも上側に位置する部分の上下方向の高低差が小さく抑えられるため、保持移動機構2およびその上側に位置する搬送路1の缶Pに対して、この缶Pよりも上側に位置する複数の缶Pから大きな圧力が作用することが抑えられる。
したがって本実施形態によれば、搬送路1を搬送される缶Pが凹むことを安定して抑制できる。
【0045】
また、例えば特許文献1(特許第4147626号公報)に記載されるようなインフィードスクリュー、一対のロータリホイール、入口ホイール等を備えた複雑な構造は、本実施形態では必須の構成要件ではない。本実施形態は構造が簡素であり、かつ装置の外形がコンパクトに抑えられる。
本実施形態の缶搬送装置10は、既存の缶Pの搬送経路に適用すること、つまり後付けで装置を設置することが容易であり、設備費用を削減できる。
【0046】
また本実施形態では、保持手段3が、保持部5aを含むベルト5と、エア吸引源6と、を有する。また保持手段3は、さらにバキューム室7を有する。
この場合、保持移動機構2の保持手段3が、バキューム構造によって缶Pの底部をベルト5の保持部5aに吸着させる。簡素な構造を用いて、缶Pを安定して保持しつつ下側へ移動させることができる。
【0047】
また本実施形態では、ベルト5が環状であり、移動手段4が、複数のプーリ16と、駆動部17と、を有する。
この場合、環状のベルト5および移動手段4により、ベルト5で保持した缶Pを連続的に効率よく下側へ移動させることができる。
【0048】
また本実施形態では、搬送路1のうち上端部と下端部との間に位置して保持移動機構2が設けられる中間部が、下側へ向かうに従い水平方向に向けて傾斜して延びる。
例えば本実施形態と異なり、搬送路1の中間部が鉛直方向に沿って延びる場合と比べて、本実施形態の上記構成では、保持移動機構2の上下方向の全高を小さく抑えることができる。また本実施形態と異なり、搬送路1の中間部が水平方向に沿って延びる場合と比べて、本実施形態の上記構成では、保持移動機構2の水平方向の全幅を小さく抑えることができる。つまり、缶搬送装置10を上下方向および水平方向によりコンパクトに構成できる。
また本実施形態のように、缶搬送装置10が水平方向(図1ではX軸方向)に複数並べられて設置される場合には、水平方向に隣り合う缶搬送装置10の各保持移動機構2の端部同士を、互いに接触させることなく接近配置することができ、複数の缶搬送装置10の設置スペースを小さく抑えることができる。
【0049】
また本実施形態では、缶搬送装置10が、搬送路1のうち保持移動機構2よりも下側に配置される第1検出手段11および第2検出手段12と、制御部13と、を備えている。そして制御部13は、第1検出手段11および第2検出手段12が缶Pを検出しない場合は、移動手段4により保持部5aを第1移動速度で移動させ、第1検出手段11が缶Pを検出せず第2検出手段12が缶Pを検出した場合は、移動手段4により保持部5aを第1移動速度よりも低速の第2移動速度で移動させ、第1検出手段11および第2検出手段12が缶Pを検出した場合は、移動手段4による保持部5aの移動を停止する。
【0050】
つまり本実施形態では、搬送路1のうち、保持移動機構2よりも下側の部分にストックされている缶Pの数に応じて、保持移動機構2が保持する缶Pの移動速度や移動の停止を制御できる。
具体的には、搬送路1の保持移動機構2よりも下側の部分にストックされている複数の缶Pのうち、最も上側に位置する缶Pが、第1検出手段11および第2検出手段12よりも下側に位置する場合には、制御部13が保持移動機構2により、搬送路1の下側へ向けて缶Pを高速の第1移動速度で移動させる。
また、搬送路1の保持移動機構2よりも下側の部分にストックされている複数の缶Pのうち、最も上側に位置する缶Pが、上下方向において第1検出手段11と第2検出手段12との間に位置する場合には、制御部13が保持移動機構2により、搬送路1の下側へ向けて缶Pを低速の第2移動速度で移動させる。
また、搬送路1の保持移動機構2よりも下側の部分にストックされている複数の缶Pのうち、最も上側に位置する缶Pが、第1検出手段11および第2検出手段12の上側に位置する場合には、保持移動機構2が缶Pを保持した状態のまま、制御部13が、缶Pの移動を停止させる。
【0051】
したがって、搬送路1を搬送される缶Pの移動速度が最適化される。缶搬送装置10の後工程(本実施形態ではインサイドスプレー装置50)に安定して缶Pを供給することができ、後工程での缶Pの処理が安定する。また搬送路1において、缶Pが詰まったり潰れたりする不具合を抑制できる。
【0052】
また本実施形態では、搬送路1の上下方向の高さが、5m以上である。
搬送路1の上下方向の高さ(つまり高低差)が5m以上であると、従来の構造の場合には、搬送路1を搬送される缶Pが背圧により凹みやすかった。一方、本実施形態によれば、搬送路1の高低差が5m以上であっても、搬送路1の上下方向の中間部に保持移動機構2が設けられるため、搬送路1を搬送される缶Pが背圧により凹むことを安定して抑制できる。
【0053】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0054】
前述の実施形態では、缶搬送装置10の後工程にインサイドスプレー装置50が設けられる一例を挙げたが、これに限らない。缶搬送装置10の後工程に、インサイドスプレー装置50以外の例えばボトルネッカー装置等が設けられてもよい。
【0055】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の缶搬送装置によれば、搬送する缶が凹むことを安定して抑制でき、簡素な構造でコンパクトに装置を構成できる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0057】
1…搬送路、2…保持移動機構、3…保持手段、4…移動手段、5…ベルト、5a…保持部、6…エア吸引源、10…缶搬送装置、11…第1検出手段、12…第2検出手段、13…制御部、16…プーリ、17…駆動部、P…缶
図1
図2
図3