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特許7365788管状インフレータのための推進剤ケージ、管状インフレータのためのパッキン要素、エアバッグモジュールのための管状インフレータ、エアバッグモジュール、自動車安全システム、管状インフレータの動作および製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】管状インフレータのための推進剤ケージ、管状インフレータのためのパッキン要素、エアバッグモジュールのための管状インフレータ、エアバッグモジュール、自動車安全システム、管状インフレータの動作および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20231013BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B60R21/264
B01J7/00 A
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019092775
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2019214359
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】10 2018 112 011.7
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503049737
【氏名又は名称】ティーアールダブリュー・エアバッグ・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート・ランプ
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルグ・タウチュニグ
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/183626(WO,A1)
【文献】特表2011-523919(JP,A)
【文献】特開2007-314102(JP,A)
【文献】特開2017-065452(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0039628(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
B01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグモジュールの管状インフレータ(100)のためのパッキン要素(50)であり、前記管状インフレータ(100)の推進剤室(14)内に配置された推進剤床を固定するパッキン要素(50)であって、
前記パッキン要素(50)が、その推進剤床側端部(52)において推進剤ケージ(10)を部分的に受け入れるように形成され、
軸方向において異なる直径および/またはばねの巻きの隙間を有する複数の部分を含むパッキン渦巻ばね(51)としての前記パッキン要素の構成を特徴とする、パッキン要素(50)。
【請求項2】
請求項1に記載のパッキン要素(50)において、
前記パッキン渦巻ばね(51)が、第1の点火器キャリヤ側部分(53)、第2の中央部分(54)、および前面端部分(55)を含み、前記中央部分(54)が、テーパ付けされていて前記前面端部分(55)に向かう方向において広がっておりかつ前記点火器キャリヤ側部分(53)と比較して小さいばねの巻きの隙間を有することを特徴とする、パッキン要素(50)。
【請求項3】
請求項2に記載のパッキン要素(50)において、
前記前面端部分(55)における前記ばねの巻きの隙間が、前記パッキン渦巻ばね(51)の前記中央部分(54)における前記ばねの巻きの隙間よりも大きく、かつ、前記第1の点火器キャリヤ側部分(53)の前記ばねの巻きの隙間よりも小さいことを特徴とする、パッキン要素(50)。
【請求項4】
請求項1に記載のパッキン要素(50)において、
軸方向に延在するスリーブ(61)が形成される径方向リング要素(60)であって、前記スリーブ(61)が、少なくとも1つの径方向内方に延在するタブ(62)を有する径方向リング要素(60)を特徴とする、パッキン要素(50)。
【請求項5】
エアバッグモジュールのための管状インフレータ(100)であって、
- 管状ハウジング(31)と、
- 前記管状ハウジング(31)の内側に配置され、かつ、前記管状ハウジング(31)により少なくとも部分的に推進剤室(14)を区切り、かつ、流路(15)を形成する、推進剤ケージ(10、11)と、
- 請求項1から4のいずれか一項に記載のパッキン要素(50)と、
を備える、管状インフレータ(100)。
【請求項6】
請求項5に記載の管状インフレータ(100)において、
前記推進剤ケージ(10、11)のガス出口側端部(13)が、前記管状インフレータ(100)の前記管状ハウジング(31)のビード(32)上に位置し、
前記ビード(31)が、前記管状ハウジング(31)の点火器側前方3分の1、点火器側前方4分の1、又は点火器側前方5分の1のところに形成されることを特徴とする、管状インフレータ(100)。
【請求項7】
請求項5または6に記載の管状インフレータ(100)において、
前記推進剤ケージ(10、11)のガス入口側端部(12)および前記パッキン要素(50、51)の前記推進剤床側端部(52)が、実質的に共同平面内に形成されることを特徴とする、管状インフレータ(100)。
【請求項8】
請求項5または6に記載の管状インフレータ(100)において、
前記推進剤ケージ(10)および前記パッキン要素(50)が、軸方向範囲において少なくとも部分的に互いに重なり合うように位置決めされることを特徴とする、管状インフレータ(100)。
【請求項9】
請求項5、6、又は8のいずれか一項に記載の管状インフレータ(100)において、
前記パッキン要素(50、51)が、前記推進剤ケージ(10、11)にねじ込まれかつ/または嵌合されかつ/またはクリップ留めされることを特徴とする、管状インフレータ(100)。
【請求項10】
請求項5から9のいずれか一項に記載の管状インフレータ(100)において、
前記パッキン渦巻ばね(51)の前記ばねの巻きの前記隙間が、前記推進剤床の推進剤体(16)が前記流路(15)に入ることができないように、前記推進剤床の推進剤体(16)に対して構成されること、および/または、前記管状インフレータ(100)が衝撃波の原理に従って動作可能であることを特徴とする、管状インフレータ(100)。
【請求項11】
管状インフレータ(100)と、前記管状インフレータ(100)によって膨張可能なエアバッグと、エアバッグモジュールを車両に取り付けるための固定ユニットとを備える、エアバッグモジュールであって、
前記管状インフレータ(100)が、請求項5から10のいずれか1つの請求項に従って構成されることを特徴とする、エアバッグモジュール。
【請求項12】
管状インフレータ(100)と、エアバッグモジュールの一部として前記管状インフレータ(100)によって膨張可能なエアバッグと、トリガ状況が与えられたときに前記管状インフレータ(100)を作動させることができる電子制御ユニットと、を備える、自動車乗員または歩行者を保護するための、車両安全システムであって、
前記管状インフレータ(100)が、請求項5から10のいずれか1つの請求項に従って構成されることを特徴とする、車両安全システム。
【請求項13】
請求項5から10のいずれかのいずれか一項に記載の管状インフレータ(100)を動作させる方法であって、
a)点火器ユニット(20)を起動して、点火室(23)の内側で点火ガスを生成するステップと、
b)推進剤ケージ(10、11)によって取り囲まれた流路(15)内に前記点火ガスを軸方向に導入するステップと、
c)前記点火ガスの一部分を、前記推進剤ケージ(10、11)の少なくとも1つの側方ガス流れ開口部(41)を介して、前記推進剤ケージ(10、11)によって径方向内方に区切られた推進剤室(14)内に排出するステップと、
d)前記点火ガスにより前記推進剤室(14)内で推進剤体(16)に点火するステップであって、推進剤ガスが生成されるステップと、
e)前記推進剤ガスを前記推進剤室(14)からガス室(70)内へ送るステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
ステップb)中、衝撃波面が発生し、前記衝撃波面が、長手軸の方向において直接に前記ガス室(70)を流れて、前記ガス室(70)の長手軸方向端部に形成された破裂要素(35)を開くことを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項5から10のいずれか一項に記載の管状インフレータ(100)を製造する方法であって、
i)前記推進剤ケージ(10、11)のガス出口側端部(13)が支持要素上に位置するように、前記推進剤ケージ(10、11)を前記管状インフレータの前記管状ハウジング(31)に挿入するステップと、
j)前記推進剤ケージ(10、11)および前記管状ハウジング(31)によって形成された空間(14)内に推進剤体(16)を充填して推進剤床を形成するステップと、
k)前記パッキン要素(50、51)を前記推進剤床上に配置して、前記推進剤床を軸方向に付勢するステップであって、前記パッキン要素(50、51)が、組立ユニットの一部として設計されて、前記組立ユニットと一緒に前記推進剤床上に配置されるステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
l)ガス室(70)をガスまたはガス混合物で満たすステップであって、ステップk)に先立ってまたはステップk)に続いて行われるステップl)を特徴とする、方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の方法において、
ステップk)において、前記パッキン要素(50、51)が、前記推進剤ケージ(10、11)にねじ込まれかつ/または嵌合されかつ/またはクリップ留めされることを特徴とする、方法。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか一項に記載の方法において、
前記推進剤ケージ(11)のガス入口側端部(12)が前記支持要素とは反対の方向に引き延ばされるステップm)であって、ステップj)に続いて行われ、引き延ばし中に前記推進剤ケージ(11)が前記支持要素に対して所定の位置に保持されるように、ストッパデバイスを含むツールが使用されるステップm)を特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の、管状インフレータのための、特にエアバッグモジュールの管状インフレータのための推進剤ケージに関する。さらに、本発明は、請求項3のプリアンブルに記載の、管状インフレータのための、特にエアバッグモジュールの管状インフレータのためのパッキン要素に関する。さらに、本発明は、エアバッグモジュールのための管状インフレータに関する。本発明はさらに、このタイプの管状インフレータを含むエアバッグモジュールを扱う。さらに、本発明は、車両安全システム、管状インフレータの動作方法、および管状インフレータの製造方法を示す。
【背景技術】
【0002】
請求項1のプリアンブルの特徴を備える推進剤ケージは、例えばEP2471692B1から知られている。
【0003】
一般に、インフレータの推進剤ケージは、複数の機能を果たす。取り付けられた状態では、推進剤ケージは、内部に推進剤体(propellant body)が位置決めされる推進剤室を特に区切る。推進剤体は、例えば、EP2471692B1で示されるように、推進剤ペレットを含み得る。この点において、推進剤ケージは、推進剤体をインフレータの内側に位置決めする働きをする。それと同時に、推進剤ケージの目的は、点火ガスが点火器ユニットから推進剤室内へ流れることを可能にすることである。この目的のために、他方では、知られた推進剤ケージは、点火器ユニットに面するその管状基礎部材の軸方向端部に配置されたガス入口開口部を有する。点火器ユニットから放出される点火ガスは、ガス入口開口部を介して、推進剤ケージの内部に流入することができる。さらに、径方向に配置された通り穴が設けられ、流入する点火ガスの一部は、この通り穴を通って、推進剤ケージの外側へ、具体的に言えば推進剤ケージの周りに形成された推進剤室内へ流れることができる。このようにして、点火ガスは、推進剤室内に推進剤床として配置された推進剤体と接触する。推進剤体は、高温点火ガスによって点火されて、推進剤ガスを放出する。知られた推進剤ケージでは、推進剤ガスは、点火ガスが推進剤室内に侵入したのと同じガス通過開口部を介して、推進剤ケージの内部に再度流入し、次いで、ガス入口開口部とは軸方向反対側のガス出口開口部を介して、推進剤ケージの外へ案内される。
【0004】
推進剤ケージの別の機能は、ガス入口開口部の領域内で生成される衝撃波を前進させることである。衝撃波は、点火器ユニットが点火されたときに点火室内で生じる過剰圧力によって形成される。点火室は、破裂隔壁により軸方向において長手方向に区切られているので、点火器ユニットの作動の後、最初に、点火室内部で圧力が高められる。所定の圧力を超えるとすぐに、破裂隔壁は破裂し、加圧された点火ガスが、推進剤ケージに流入する。破裂隔壁の突然の破裂は、衝撃波の形成をもたらし、この衝撃波は、軸方向において推進剤ケージを通って長手方向に案内される。
【0005】
上述の機能は、EP2471692B1による知られた推進剤ケージによって実質的に果たされる。しかし、そのような設計は、点火ガスを推進剤室内に導入するために、また、放出された推進剤ガスを推進剤室から排出するために、推進剤ケージにおいて同じ径方向ガス流れ開口部が使用され、そのことが点火の効率を低下させる可能性があるので、不利であると判定され得る。さらに、知られた推進剤ケージは、推進剤ペレットと直接接触して形成された鋭い縁部をいくつか有し、これが有害になり得る。さらに、このタイプの推進剤ケージは、製造するのが難しいことがある。さらに、このタイプの推進剤ケージは、一方では推進剤ケージを固定するために必要とされ他方では推進剤床を固定するために必要とされる、さらなる複数の構成要素と関係する。さらに、推進剤ケージの径方向に配置された通り穴を通過する高温点火薬粒子の低い透過性が、ある程度生じる。その結果、推進剤床の推進剤ペレットの不都合な点火が起こり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】EP2471692B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景を踏まえ、本発明の目的は、一方では改善されたガス導管を可能とし、他方では製造するのがより容易である、インフレータのための推進剤ケージを提示することである。さらに、管状インフレータに関連して必要とされるさらなる構成要素の数が減るように、発展した推進剤ケージが設計されるべきである。
【0008】
本発明の別の目的は、発展したパッキン要素を提示することである。上記パッキン要素は、発展した推進剤ケージに動作的に接続され得るように特に設計されることが意図されている。言い換えれば、発展したパッキン要素は、発展した推進剤ケージに適合するべきである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、本発明による推進剤ケージおよび/または本発明によるパッキン要素を備える管状ジェネレータを提示することである。
【0010】
さらに、本発明の目的は、エアバッグモジュール、管状インフレータを備える車両安全システム、および管状インフレータの動作方法を提示することである。
【0011】
さらに、本発明の目的は、管状インフレータの発展した製造方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、推進剤ケージに関しては請求項1の主題によって達成され、パッキン要素に関しては請求項3の主題によって達成され、管状インフレータに関しては請求項8の主題によって達成され、エアバッグモジュールに関しては請求項14の主題によって達成され、車両安全システムに関しては請求項15の主題によって達成され、動作方法に関しては請求項16の主題によって達成され、製造方法に関しては請求項18の主題によって達成される。
【0013】
したがって、本発明は、管状インフレータ、特にエアバッグモジュールの管状インフレータのための推進剤ケージを提示する考えに基づくものであり、この推進剤ケージは、管状インフレータの推進剤室および流路を形成する働きをする。本発明によれば、推進剤ケージは、ガス入口側端部およびガス出口側端部を有する推進剤ケージ渦巻ばねの形態をとり、ガス入口側端部は、ガス出口側端部よりも小さい断面を有する。
【0014】
推進剤ケージ渦巻ばねのガス入口側端部は、少なくとも1つのばねの巻き(spring winding)によって形成されることが好ましい。推進剤ケージ渦巻ばねのガス出口側端部は、推進剤ケージ渦巻ばねの少なくとも1つのばねの巻きによって形成されることが好ましい。ガス入口側端部およびガス出口側端部の両方に関連して、複数のばねの巻きにより端部を設計することも可能である。具体的には、ガス入口側端部は、推進剤ケージ渦巻ばねの長手軸に垂直に見たときに、ガス出口側端部よりも小さい断面を有し、この断面を通ってガスが流れることができる。
【0015】
推進剤ケージ渦巻ばねとして推進剤ケージを設計することは、一方では、そのような推進剤ケージ渦巻ばねが製造するのが非常に容易であるという利点を提供する。さらに、推進剤ケージ渦巻ばねは、少なくとも推進剤体が推進剤ケージ渦巻ばねに隣接する領域内に、鋭い縁部を有さない。
【0016】
推進剤ケージ渦巻ばねは、円形のワイヤから作られることが好ましい。ばねの巻き間に形成される隙間により、径方向に配置された貫通開口部を形成することが可能である。推進剤ケージ渦巻ばねは、軸方向において長手方向範囲に形成された螺旋形状を有することが好ましい。2つのばねの巻き間の隙間は、少なくとも1つの径方向貫通開口部を形成する。
【0017】
ガス出口側端部の領域におけるばねの巻きの隙間は、ガス入口側端部の領域におけるばねの巻きの隙間および/または推進剤ケージの中央ばね部分のばねの巻きの隙間よりも小さいことが好ましい。
【0018】
推進剤ケージ渦巻ばねのさらなる部分と比較してより小さいガス出口側端部の領域におけるばねの巻きの隙間により、推進剤室の、特に推進剤ケージの流路を通過する衝撃波の案内が促進される。生成される衝撃波のさらなる偏向が回避される。
【0019】
説明のために:特に管状インフレータ内で解放された衝撃波が、管状インフレータの出口端部に配置されたさらなる破裂隔壁を破壊するまたは開く働きをし、それにより、管状インフレータ内に提供されたガスが、接続されたエアバッグに流入することができる。今までのところ、一様な安定した衝撃波が形成されることは、そのような管状インフレータの適切に作動する能力に特に関連する。衝撃波の安定性がインフレータからさらなる破裂隔壁までのその全行程に沿って維持されることが、特に必要とされる。
【0020】
推進剤ケージのガス入口側端部は、インフレータ、特に管状インフレータ内での推進剤ケージの取付け状態において、点火器ユニットに最も近いかまたは点火器ユニットに関係する推進剤ケージ渦巻ばねの端部であると、特に理解される。ガス出口側端部は、推進剤ケージ渦巻ばねの反対側の端部であると理解される。言い換えれば、推進剤ケージのガス入口側端部は、推進剤ケージ渦巻ばねの動作状態において高温ガスおよび/または高温点火粒子が特に点火器ユニットからそこを通って流れるかまたはそこに流入する、推進剤ケージ渦巻ばねの端部であると理解され得る。ガス出口側端部は、ガス入口側端部とは軸方向反対側の推進剤ケージの端部であると理解される。特に、ガス出口側端部は、推進剤床をガス室または圧縮ガス室に向かう流れの方向において区切る、推進剤ケージ渦巻ばねの端部である。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態では、推進剤ケージ、すなわち推進剤ケージ渦巻ばねは、実質的に漏斗形状のまたはトランペット形状の部分を含む。漏斗形状のまたはトランペット形状の部分は、特にガス出口側端部に向かって広がっている。漏斗形状のまたはトランペット形状の部分により、特に上記部分がガス出口側端部に向かって広がっている場合、生成される衝撃波の特に適切な安定化が得られることが示されている。衝撃波は、漏斗形状の部分が衝撃波を安定させながら、推進剤ケージの内側で長手軸の方向に伝播する。したがって、漏斗形状の部分またはトランペット形状の部分に沿って広がる衝撃波は、特に強固である。さらに、衝撃波の安定性は、衝撃波が推進剤ケージを離れたときでも維持されることが判明している。したがって、ガス出口側端部に向かって広がっている漏斗形状のまたはトランペット形状の部分は、衝撃波が出口側破裂隔壁に衝突するまで、管状インフレータの内側のさらなる進路においても衝撃波が特に安定しかつ強固である程度に、衝撃波を安定化させるのに役立つ。これは、管状インフレータの動作安全性を高める。
【0022】
本発明の範囲内では、「漏斗形状の」という用語は、必ずしも滑らかな円周面を有する切頭体形状を意味しない。むしろ、漏斗形状の部分は、長手軸の方向に曲がっていてもよい。衝撃波の安定設計のためには、それは、漏斗形状の部分またはトランペット形状の部分が推進剤ケージ渦巻ばねのガス出口側端部に向かって広がっているときに有益である。推進剤ケージ渦巻ばねの内径は、ガス入口側端部からガス出口側端部に向かって大きくなることが好ましい。
【0023】
さらに、推進剤ケージ、すなわち推進剤ケージ渦巻ばねがカラー部分を含むことが可能である。カラー部分は、推進剤ケージ渦巻ばねの裏返しになった部分として、特に形成され得る。カラー部分は、推進剤ケージ渦巻ばねのガス出口側端部に形成されることが好ましい。カラーは、有利には、推進剤ケージ渦巻ばねのガス出口側端部に形成される。特に好ましい態様では、カラーはまた、少なくとも1つのばねの巻きによって形成される。
【0024】
推進剤ケージ渦巻ばねの少なくとも1つの側方ガス流れ開口部は、密着したガス流れ開口部として形成されることが好ましく、ガス流れ開口部は、渦巻ばねの形態をしている。側方ガス流れ開口部の開口断面は、推進剤ケージ渦巻ばねのばねの巻きの互いに対するそれぞれの隙間によって形成される。推進剤床の推進剤体に対するばねの巻きの隙間は、推進剤体が推進剤ケージ渦巻ばねの流路に侵入しないように構成されることが、好ましい。言い換えれば、側方ガス流れ開口部の大きさおよび断面は、推進剤床を形成する推進剤体の、特に推進剤ペレットの大きさの断面よりも小さい。
【0025】
本発明による推進剤ケージ渦巻ばねの形態の推進剤ケージの設計は、有利には衝撃波面の中心に画定された領域を起爆させずに保ち、さらに、管状インフレータの耐用期間にわたって、推進剤床あるいは推進剤床を形成する推進剤体を、定められた位置に保持する。推進剤ケージ渦巻ばねを形成するための円形ワイヤの有利な使用により、摩損される推進剤が可能な限り少なくなる。
【0026】
ばねの巻き間の少なくとも部分的な隙間の構成により、推進剤ケージ渦巻ばねは、トリガ状況において推進剤床が選択的に点火され得るように、点火薬粒子を同時に透過させる。推進剤ケージ渦巻ばねのさらなる有利な特性は、一方では、小さい無効体積であり、他方では、推進剤ケージ渦巻ばねの低重量である。さらに、そのような推進剤ケージ渦巻ばねは、特に容易に製造され得る。
【0027】
推進剤ケージを推進剤ケージ渦巻ばねとして設計する場合、また、渦巻ばね形状における側方ガス流れ開口部の好ましい関連する実施形態によれば、推進剤ケージ渦巻ばねの材料に比例して大きいガス流れ開口部面積が提供される。側方ガス流れ開口部の流れ断面は、増大される。これは、推進剤ケージを包囲する推進剤室内で推進剤体に点火するときに、より高い効率をもたらす。
【0028】
推進剤ケージ渦巻ばねの形態の推進剤ケージは、点火ガスの高温に耐えることができる金属から作られることが好ましい。
【0029】
本発明の別の特に独立した態様は、管状インフレータの推進剤室内に存在する推進剤床を固定するための、管状インフレータ、特にエアバッグモジュールの管状インフレータのためのパッキン要素に関する。パッキン要素は、推進剤床側端部において推進剤ケージを受け入れる、特に部分的に取り囲みかつ/または支持するように形成される。
【0030】
パッキン要素は、推進剤床側端部において、上述の本発明による推進剤ケージが受け入れられ得るように、特に部分的に包囲されかつ/または支持され得るように形成されることが、好ましい。パッキン要素は、推進剤床側端部において、具体的には、推進剤ケージの、特に推進剤ケージ渦巻ばねのガス入口側端部が受け入れられ得る、特に部分的に包囲され得るような方法で形成され得る。
【0031】
言い換えれば、パッキン要素の推進剤床側端部の断面、あるいはガスが流れることができる断面、あるいは適切に形成された流れ開口部は、パッキン要素が推進剤床側端部において推進剤ケージのガス入口側端部の少なくとも一部分を受け入れるように、特に部分的に包囲するように、推進剤ケージのガス入口側端部の断面、あるいはガスが流れることができる断面、あるいは適切に形成された流れ開口部よりも大きくされ得る。したがって、パッキン要素の推進剤床側端部、および、推進剤ケージのガス入口側端部は、互いに接触する必要がない。むしろ、推進剤ケージの、特に推進剤ケージ渦巻ばねのガス入口側端部は、パッキン要素の推進剤床側端部に挿入され得る。言い換えれば、推進剤ケージのガス入口側端部は、軸方向において推進剤ケージとパッキン要素とが特定の軸方向長さにわたってそれぞれの端部で重なり合う程度まで、パッキン要素の推進剤床側端部内に導入または挿入され得る。あるいは、またはさらに、パッキン要素の推進剤床側端部が推進剤ケージのガス入口側端部を支持することが可能である。その際に、パッキン要素および推進剤ケージは、互いに接触する。
【0032】
パッキン要素と推進剤ケージとの間には、有利に作用する接続が確立されることが好ましく、この場合、2つの要素、すなわちパッキン要素と推進剤ケージとの間の接触は、必須ではない。パッキン要素は、推進剤床、あるいは推進剤ケージを固定するためにさらなる構成要素が必要とされないように構成されることが、好ましい。
【0033】
パッキン要素は、軸方向においてばねの巻きの直径および/または隙間が異なる複数の部分を含むパッキン渦巻ばねの形態であることが、好ましい。パッキン渦巻ばねは、異なる3つの部分を有することが、好ましい。それらは、第1の点火器キャリヤ側部分、第2の中央部分、および前面端部分である。中央部分は、必然的に点火器キャリヤ側部分と前面端部分との間に形成される。パッキン渦巻ばねの前面端部分は、パッキン要素の推進剤床側端部を含む。
【0034】
中央部分は、テーパ付けされて前面端部分に向かって広がっていることが好ましい。言い換えれば、断面、あるいはガスが流れるパッキン渦巻ばねの断面は、中央部分において前面端部分に向かって増大する。中央部分におけるばねの巻きの部分は、点火器キャリヤ側部分におけるよりも小さいことが好ましい。
【0035】
さらに、前面端部分におけるばねの巻きの隙間がパッキン渦巻ばねの中央部分におけるばねの巻きの隙間よりも大きいこと、また特に、前面端部分におけるばねの巻きの隙間が第1の点火器キャリヤ側部分のばねの巻きの隙間よりも小さくされ得ることが、可能である。パッキン渦巻ばねは、パッキン渦巻ばねの点火器キャリヤ側部分が点火器ユニットのハウジング部分に接するように、点火器ユニットのハウジング部分および/または管状インフレータのキャップ上を摺動され得るように構成されることが、好ましい。さらに、パッキン渦巻ばねの内径は、パッキン渦巻ばねの点火器キャリヤ側部分において、上記部分が点火器ユニットのハウジング上で、あるいは管状インフレータのキャップ上で案内され得るように、形成される。点火器ユニットのハウジングとパッキン渦巻ばねの点火器キャリヤ側部分との間には、小さい隙間だけが形成されることが好ましい。隙間は、パッキン渦巻ばねが組み込まれているインフレータまたは管状インフレータのトリガ状況において点火器キャリヤ側部分が長手軸の方向に移動可能であるように、選択される。パッキン渦巻ばねの上述の軸方向に連続した3つの部分は、一方では、十分な軸方向抑えつけ力(axial hold-down force)が固定されるべき推進剤床に作用するとともに、固定されるべき推進剤ケージに適切な固定力が作用するように、特に構成される。さらに、パッキン渦巻ばねは、少なくとも部分的に、管状インフレータの管状ハウジング上に密閉部材または密閉キャップまたは点火器ユニットが溶接されるときに自然に生じ得る溶接スパッタに対する障壁として機能し得る。
【0036】
パッキン渦巻ばねの点火器キャリヤ側部分は、推進剤充填許容差のための適切な長さの軸方向たわみ、あるいは推進剤床の自然のセッティング挙動に対する軸方向行程補償をインフレータの耐用期間にわたって確実にするために、ばねの巻きに関して比較的大きな隙間を有する。
【0037】
パッキン渦巻ばねの中央部分は、好ましくはテーパ付けされ、また、比較的きつく巻かれる。したがって、中央部分におけるばねの巻きの隙間は、極めて小さい。パッキン渦巻ばねの中央部分のばねの巻きは、互いに接する、あるいは接触することが好ましい。中央部分は、管状インフレータの管状ハウジング上への、あるいは圧縮ガス室上への上記密閉部材の溶接中に生じ得る溶接スパッタに対する障壁として、特に機能する。したがって、中央部分は、すでに充填された推進剤床の領域内に溶接スパッタが侵入するのを防ぐ。
【0038】
パッキン渦巻ばねの前面端部分では、ばねの巻きの隙間は、十分に高温の点火粒子および/または点火ガスが、前面端部分のばねの巻きからおよび/またはばねの巻きの互いに対する隙間からもたらされる流れ開口部または断面領域から管状インフレータの推進剤室の推進剤床内に侵入し、それにより推進剤床が意図された通りに点火され得るように、作動の際にまたは管状ジェネレータのトリガ状況において十分な通過スペースあるいは十分に大きな流れ開口部または断面積が形成されるように構成されることが、好ましい。
【0039】
本発明の別の実施形態では、パッキン要素は、軸方向に延在するスリーブが形成される、径方向リング要素を有する。パッキン要素は、軸方向に延在するスリーブを含む径方向リング要素だけで形成されることが可能である。スリーブは、パッキン要素の取付け状態において、点火器キャリヤに向かう方向において管状インフレータ内に延在することが好ましい。言い換えれば、軸方向に延在するスリーブは、パッキン要素の点火器キャリヤ側端部を形成する。
【0040】
本発明の別の実施形態では、スリーブは、径方向内方に延在するタブを少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ含む。上記タブは、推進剤ケージのガス入口側端部のための、特に推進剤ケージ渦巻ばねのガス入口側端部のための支持面として機能することが好ましい。
【0041】
径方向リング要素を含むこのタイプのパッキン要素は、径方向リング要素が推進剤床を意図された通りに固定するまで、あるいは推進剤床が機械的に付勢されるまで、推進剤ケージ、特に推進剤ケージ渦巻ばねのガス入口側端部上にねじ込まれるまたはクリップ留めされることが、好ましい。少なくとも1つのタブ、好ましくは少なくとも2つのタブは、パッキン要素が推進剤ケージ上に、特に推進剤ケージ渦巻ばね上にねじ込まれるまたはクリップ留めされることを可能にするように意図されていることが好ましい。さらに、少なくとも1つのタブは、パッキン要素の望ましい最終位置では、軸方向の保護物または止め具として機能する。
【0042】
好ましくは軸方向に延在するスリーブは、推進剤ケージ上へのねじ込みまたはクリップ留めのためのガイドとして機能することが好ましい。パッキン要素の望ましい最終位置では、軸方向スリーブは、パッキン要素を位置決めするための保護物または安定器としてさらに機能する。
【0043】
径方向リング要素は、管状インフレータの管状ハウジングの内径に、あるいは燃焼室の管状ハウジングにおおよそ対応するような外径、あるいは外側断面を有することが、好ましい。これは、径方向リング要素が管状ハウジングの内側にクリップ固定されることを可能にする。リング要素の取付けが促進されるが依然として完全に組み立てられた状態において推進剤体が小さい隙間または遊びを通過することができないように、径方向リング要素と管状ハウジングの内側表面との間に適切に小さい隙間または遊びが設けられることも、想像できる。
【0044】
本発明の1つの独立した態様は、エアバッグモジュール、特にハイブリッドインフレータのための管状インフレータに関する。
【0045】
管状インフレータは、管状ハウジング、および推進剤ケージを含み、この推進剤ケージは、本発明による推進剤ケージに関する上述の説明に従って構成され得る。推進剤ケージは、管状ハウジングの内側に配置され、かつ、管状ハウジングにより少なくとも部分的に推進剤室を区切る。推進剤室は、特に中空円筒形であり得る。推進剤室内には、推進剤体、特に推進剤ペレットが位置決めされ得る。推進剤ケージは、管状インフレータ内で流路をさらに形成する。これは、推進剤ケージが、点火器によって生成され得るガス、特に点火ガス、あるいは点火粒子が実質的に邪魔されずに流れることができる通路形状の空間を特定の軸方向長さにわたってその内部に備えることを、特に意味する。さらに、本発明による管状インフレータは、本発明によるパッキン要素に関する上述の説明に従って設計され得るパッキン要素を備える。
【0046】
推進剤ケージのガス出口側端部は、管状インフレータ(100)の管状ハウジングのビード上に位置するように位置決めされることが好ましく、このビードは、管状ハウジングの点火器側前方3分の1のところに、特に点火器側前方4分の1のところに、特に点火器側前方5分の1のところに形成される。推進剤ケージのガス入口側端部は、他方では、管状インフレータの点火器ユニットの方向を指す。具体的には、管状インフレータの管状ハウジングにおいて、ビードは、内方に面する、特に径方向円周のテーパ部(tapering)の形態であってもよく、このテーパ部は、特にひだ状のまたは巻かれた部分の形態であってもよい。したがって、テーパ部は、管状ハウジングの内周上で、推進剤ケージのガス出口側端部、特に推進剤ケージばねのガス出口側のばねの巻きが当接することができる環状ビードを形成する。
【0047】
管状ハウジング内には、点火器ユニットがさらに配置され得る。推進剤ケージのガス入口側端部は、点火器ユニット上に、特に点火器ユニットに付随するキャップ上に位置することが可能である。さらに、点火器ユニットおよび/または管状インフレータのキャップが推進剤ケージの、特に推進剤ケージ渦巻ばねのガス入口側端部に挿入されることが、可能である。したがって、動作時に、あるいは管状インフレータの作動に応じて点火器ユニットから流出する点火ガスおよび/または点火粒子は、特に推進剤ケージに流入させられる。推進剤ケージのガス入口側端部が点火器ユニットに直接隣接しない限り、パッキン要素は、推進剤ケージのガス入口側端部がパッキン要素の推進剤床側端部に挿入されかつ/または当接され得るように構成されることが好ましい。この実施形態では、すなわち、推進剤ケージのガス入口側端部が点火器ユニットに隣接しない限り、または、点火器ユニットが少なくとも部分的に推進剤ケージ渦巻ばねのガス入口側端部に挿入されるのであれば、パッキン要素は、すでに説明されたパッキン渦巻ばねの形状をとることが好ましい。
【0048】
したがって、推進剤ケージの構成に応じて、点火器ユニットから流出する点火ガスおよび/または点火粒子が推進剤ケージの流路に流入することができるように実装されるパッキン要素の形状、あるいは実施形態が、選択されるべきである。
【0049】
本発明による管状インフレータは、衝撃波の原理で動作され得ることが好ましい。作動時に、管状インフレータの点火器が起動または作動され、点火器は、特に点火器の前面領域を開くことにより点火ガスまたは点火粒子を放出し、第1の破裂要素、特に管状インフレータの入口側破裂隔壁を構成する点火器ユニットの第1の破裂隔壁が開かれる。点火器を起動させるとすぐに、すなわち、点火器の前面領域を開くと、または第1の破裂要素を開くと、衝撃波、あるいは衝撃波面が引き起こされ、この衝撃波、あるいは衝撃波面は、インフレータを貫く長手軸の方向に、特にインフレータの圧縮ガス室を貫く長手軸の方向に延在しあるいは伝播し、端部側の第2の破裂要素、特に出口側破裂隔壁を開いて、生成されたガスまたは膨張ガスを管状インフレータから好ましくは膨張式エアバッグに向かって案内するが、これは好ましくは拡散器を介して行われる。
【0050】
推進剤ケージのガス入口側端部およびパッキン要素の推進剤床側端部が実質的に共同平面内に形成されることが、可能である。推進剤ケージのガス入口側端部およびパッキン要素の推進剤床側端部が、互いに接触するか、または互いに隣接するように形成されることが、可能である。本発明の上記実施形態では、推進剤ケージのガス入口側端部およびパッキン要素の推進剤床側端部は、やはり点火器ユニットの一部分とされ得る管状インフレータのキャップの端面の平面内に実質的に配置されることが、好ましい。
【0051】
本発明の別の実施形態では、推進剤ケージおよびパッキン要素が、軸方向範囲において少なくとも部分的に重なり合うように位置決めされることが、可能である。言い換えれば、推進剤ケージのガス入口側端部およびパッキン要素の推進剤床側端部は、長手軸の方向に延在しているときに少なくとも部分的に重なり合っていてもよい。
【0052】
パッキン要素は、推進剤ケージ上にねじ込まれかつ/または嵌合されかつ/またはクリップ留めされ得る。互いに直接作用する接続による2つの要素のそのような構成により、必要とされる推進剤ケージおよび必要とされるパッキン要素に関して必要な部品が最小限まで減らされた管状インフレータが提供され得る。さらに、製造するのが極めて単純なそれらの構成部品が提供される。
【0053】
推進剤ケージ渦巻ばねのばねの巻きの隙間は、推進剤体が流路内に侵入することができないように、推進剤床の推進剤体、特に推進剤体の大きさとの関連で、流路を形成するために、また、特に推進剤室を形成するために、特に設計され得る。したがって、流路は、推進剤体を含まない。このようにして、通過する衝撃波面の優れた案内および形成が可能とされる。
【0054】
上記のように、ガスを生成する推進剤体が推進剤室内に配置されることが、好ましい。ガスを生成する推進剤体は、圧縮されたまたは押出し成形された物体としてあるいは顆粒として存在し得る推進剤ペレットにより、特に構成され得る。燃焼中、推進剤体は、エアバッグの膨張をもたらすまたは支援する推進剤ガスあるいは膨張ガスを生成することが好ましい。
【0055】
インフレータのガスハウジングは、付勢された圧縮ガスで満たされる圧縮ガスタンクを有利に形成する。圧縮ガスは、単一のガスとして、あるいは特にヘリウム、アルゴン、窒素、または酸素から成るガス混合物として、50~80MPa(500~800バール)の圧力で存在してもよく、また、インフレータの作動に応じて、推進剤ガスに加えて解放されて、エアバッグに導入され得る。このようにして、圧縮ガスは、エアバッグを膨張させるのを支援する。
【0056】
本発明の別の独立した態様は、管状インフレータと、管状インフレータによって膨張可能なエアバッグと、エアバッグモジュールを車両に取り付けるための固定手段とを備えるエアバッグモジュールに関する。管状インフレータは、前述のように設計される。
【0057】
さらに、本願の範囲内において、特に自動車乗員または歩行者などの人物を保護するための車両安全システムが開示されかつ特許請求される。本発明による車両安全システムは、管状インフレータと、エアバッグモジュールの一部として管状インフレータによって膨張可能なエアバッグと、トリガ状況が生じた場合に管状インフレータを作動させることができる電子制御ユニットと、を備える。本発明による車両安全システムでは、管状インフレータは、本発明による管状インフレータに関する上述の態様に従って設計される。
【0058】
本発明の別の独立した態様は、管状インフレータ、特に本発明による管状インフレータを動作させる方法に関する。本発明による動作方法は、以下の諸ステップ、すなわち、
a)点火器ユニットを起動して、点火室の内側で点火ガスを生成するステップと、
b)推進剤ケージによって取り囲まれた流路に点火ガスを軸方向に導入するステップと、
c)点火ガスの一部分を、推進剤ケージの少なくとも1つの側方ガス流れ開口部を介して、推進剤ケージによって径方向内方に区切られた推進剤室内に排出するステップと、
d)点火ガスにより推進剤室内で推進剤体、特に推進剤ペレットに点火するステップであって、推進剤ガスが生成されるステップと、
e)推進剤ガスを推進剤室からガス室、特に圧縮ガス室内へ排出するステップと、
を含む。
【0059】
ステップb)中、長手軸の方向において直接にガス室、特に圧縮ガス室を通って伝播する衝撃波面が生成されて、ガス室の長手軸方向端部に形成された破裂要素、特に出口側破裂隔壁を開口し得る。
【0060】
具体的には、ステップe)において、推進剤ガス、特にその一部分が、ステップc)において点火ガスの一部分を推進剤室内に排出するための推進剤ケージのガス流れ開口部とは異なる推進剤ケージのガス流れ開口部を介して排出され得る。したがって、特に推進剤ガス、具体的にはその一部分が、ステップc)において点火ガスの一部分が推進剤室内に排出されるときの推進剤ケージのガス流れ開口部と比較して流れの方向において軸方向下流にかつ/またはさらに径方向外方に位置決めされる推進剤ケージのガス流れ開口部を介して、排出され得る。
【0061】
さらに、本発明は、管状インフレータ、特に本発明による管状インフレータを製造する方法に関する。製造方法は、以下の諸ステップ、すなわち、
i)推進剤ケージのガス出口側端部が支持要素上、特にビード上に位置するように、推進剤ケージを管状インフレータの管状ハウジングに挿入するステップと、
j)推進剤ケージおよび管状ハウジングに形成された空間、特に推進剤室内に推進剤体、特に推進剤ペレットを充填して、推進剤床を形成するステップと、
k)パッキン要素を推進剤床上に配置して、推進剤床を軸方向に付勢するステップと、
を含む。
【0062】
さらに、本発明による製造方法は、ステップl)を含み得る。ステップl)では、ガス室/上記ガス室、特に圧縮ガス室/上記圧縮ガス室が、ガスまたはガス混物で満たされ、このステップl)は、好ましくはステップk)の前または後に行われる。
【0063】
ガスまたはガス混合物は、ヘリウム、アルゴン、窒素、酸素、またはそれらのガスの混合物であり得る。圧縮ガス室内の圧力は、50から80MPa(500から800バール)、特に55MPa(550バール)であることが好ましい。
【0064】
ステップk)において、パッキン要素は、組立ユニットの一部であってもよく、また、組立ユニットと一緒に推進剤床上に配置されてもよい。組立体は、パッキン要素、およびキャップの形態のインフレータ密閉部材を含み、上記キャップは、対応する点火器キャリヤを含む点火器を備えかつ/または上記構成要素に接続されていることが、好ましい。
【0065】
パッキン要素が組立ユニットの一部である場合、ステップl)、すなわち、ガス室あるいは圧縮ガス室をガスまたはガス混合物で満たすステップは、ステップj)の次に行われてもよい。
【0066】
さらに、本発明による管状インフレータを製造する方法は、ステップm)を含み得る。したがって、推進剤ケージのガス入口側端部は、引き伸ばされることが可能である。引き伸ばしは、支持要素とは反対の方向に行われる。ステップm)は、ステップj)に続いて、すなわち推進剤体の充填後に行われることが好ましい。ステップm)において、ガス入口側端部の引き伸ばし中に推進剤ケージが支持要素に対して所定の位置に保持されるように、ストッパデバイスを有するツールが使用されることが好ましい。言い換えれば、軸方向ストッパデバイスを有するツールにより、すでに推進剤体が充填された推進剤ケージ、特に推進剤ケージ渦巻ばねは、所定の位置に維持されるべきであり、この場合、単にガス入口側端部が引き伸ばされる。
【0067】
ステップj)において、推進剤ケージ、特に推進剤ケージ渦巻ばねは、充填された推進剤体、したがって形成された推進剤床により、安定した位置に保持され、したがって、推進剤ケージのガス入口側端部は、不注意に径方向に変位すること、特にオフセットすることを防止される。
【0068】
推進剤の充填後、あるいは推進剤床の形成後、パッキン要素、特にパッキン渦巻ばねは、推進剤体、あるいは推進剤床が付勢されるように、推進剤床上に軸方向に配置されかつ推進剤床に押し付けられる。パッキン渦巻ばねの推進剤床側端部は、渦巻ばねの2つの端部が特定の軸方向長さに沿って重なり合うように形成されるように、推進剤ケージ渦巻ばねのガス入口側端部上で案内されることが好ましい。続いて、ガス室、特に圧縮ガス室は、圧縮ガスで満たされ得る。
【0069】
ステップk)においてパッキン要素が推進剤ケージにねじ込まれかつ/または嵌合されかつ/またはクリップ留めされる場合、パッキン要素は、径方向リング要素を特に備える。さらに、軸方向に延在するスリーブが、径方向リング要素に形成され得る。そのようなパッキン要素は、径方向リング要素、あるいは特に軸方向に延在するスリーブを含む径方向リング要素が推進剤ケージ渦巻ばねに軸方向に取り付けられるまたはねじ込まれ得るように、ステップj)に従って、推進剤ケージ渦巻ばねが弾性的に引き伸ばされ、その結果、推進剤ケージ渦巻ばねの外径が、引き伸ばされるまたは延伸される領域において減少するように、取り付けられ得る。続いて、推進剤ケージ渦巻ばねの弾性的な逃げまたはわずかな縮みが、機械加工された領域において、すでに減少した推進剤ケージ渦巻ばねの外径を再び増大させ、その結果、径方向リング要素、あるいは軸方向に延在するスリーブを好ましくは含む径方向リング要素が、適用された最終位置に固定され続ける。
【0070】
以下、本発明は、添付の概略的な図面を参照しながら、例示的な実施形態として詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1a】本発明による推進剤ケージの第1の実施形態と本発明によるパッキン要素の第1の実施形態とを備える管状インフレータの長手方向断面図である。
図1b】管状インフレータの点火器側部分の拡大図(enlarged representation)である。
図2a】本発明の第2の実施形態に記載の本発明による推進剤ケージと本発明の第2の実施形態に記載の本発明によるパッキン要素とを備える管状インフレータの長手方向断面図である。
図2b図2aによる管状インフレータの点火器側部分の拡大図である。
図3a】本発明の第3の実施形態に記載の本発明による推進剤ケージと本発明の第3の実施形態に記載の本発明によるパッキン要素とを備える管状インフレータの長手方向断面図である。
図3b図3aによる管状インフレータの点火器側部分の拡大図である。
図3c】第3の実施形態によるパッキン要素の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、同様の参照番号が、同様の部品および同等に作動する部品に対して使用される。
【0073】
図1aは、管状インフレータ100の長手方向断面を示し、この図では、本発明による推進剤ケージ10および本発明によるパッキン要素50の取付け状態が示されている。管状インフレータ100は、管状インフレータ100のハウジング31を形成する圧縮ガスタンク30を備える。圧縮ガスタンク30は、実質的に管状の形状をとり、また、管状インフレータ100の待機位置、すなわち非作動状態では、30MPaから800MPa(300バールから800バール)、特に室温で55MPa(550バール)の圧力値において付勢された圧縮ガスまたは圧縮ガス混合物を含む。
【0074】
ハウジング31のビード32が、圧縮ガスタンク30を第1の部分33に分割し、この第1の部分33には、点火器ユニット20、推進剤ケージ10、およびパッキン要素50が配置される。圧縮ガスタンク30の第2の部分34が、組込み部品を実質的に含まず、かつ、付勢された圧縮ガスの大部分を受け入れるために使用される。したがって、圧縮ガスは、圧縮ガスタンク30の第1の部分33内および第2の部分34内の両方において、少なくともそのそれぞれの部分に存在する。
【0075】
圧縮ガスタンク30のあるいはハウジング31の出口側端部には、出口側破裂隔壁35が配置される。この文脈における「出口側端部」という用語は、インフレータの外側での意図された通りのエアバッグ(図示せず)の膨張に利用されるべき推進剤ガスあるいは膨張ガスを排出または解放するために設けられる領域が関係していることを明らかにするように、特に意図されている。出口側破裂隔壁35は、特にガスの漏れない態様で、圧縮ガスタンク30を閉塞する。フィルタスクリーン36が、出口側破裂隔壁35の上流に配置される。「上流」という用語は、本発明によれば、管状インフレータの動作中のガス流に関して上流にすなわち点火器ユニット20の方向に位置決めされる位置に関連する。フィルタスクリーン36は、管状インフレータ100から出るように意図されていない粒子を濾過する。
【0076】
圧縮ガスタンク30のあるいはハウジング31の出口側端部には、拡散器37がさらに配置される。拡散器37は、圧着により管状インフレータのハウジング31に接続される拡散器キャップ39を含む。拡散器キャップ39は、実質的に径方向外方に延在する出口開口部38を備える。解放されたガスあるいは膨張ガスは、出口側破裂隔壁35が開口した後、出口開口部38を介して、接続されたエアバッグ(図示せず)に流入し得る。
【0077】
圧縮ガスタンク30のあるいはハウジング31の入口側端部には、点火器ユニット20が配置される。具体的には、点火器ユニット20は、ビード32により圧縮ガスタンク30の第2の部分34から分離されている圧縮ガスタンク30の第1の部分33内に挿入される。点火器ユニット20は、点火器キャリヤ21および点火器22を備える。点火器22は、電子制御ユニットへの接続のための電気端子を含み、また、点火器22専用の点火器キャップ27によって明瞭に示されているように、軸長手方向延長部を有する、知られた既製の構成要素である。点火器22は、動作時に電子制御ユニットに基づく電気的作動信号によって点火され得る1種または複数種の火工技術的装薬(pyrotechnic charge)あるいは点火薬をその内部に含む。電子制御ユニットは、車両側に設けられかつ管状インフレータ100が所定のトリガ状況において作動されることを可能にすることが、好ましい。入口側破裂隔壁25を有するキャップ24が、点火器ユニット20にさらに属すると考えられ得る。
【0078】
金属で作られたキャップ24は、好ましくは溶接されて点火器キャリヤ21に接続され、かつ、点火器キャリヤ21内に挿入されて保持された点火器22あるいはその点火器キャップ27を少なくとも部分的に取り囲む。したがって、キャップ24は、点火器22あるいは点火器キャップ27を取り囲む空間とともに点火器室23を形成するように、点火器キャリヤ21から離れる方向において点火器22あるいは点火器キャップ27を越えて軸方向に延在する。点火器キャリヤ21と反対の側を向いたキャップ24の端面26には、入口側破裂隔壁25により特にガスの漏れない態様で閉塞された開口部が存在する。特に、入口側破裂隔壁25は、キャップ24の外側上で径方向円周方向にキャップ24に接続され、特に溶接される。入口側破裂隔壁25はあるいは、キャップ24と一体に、特にキャップ24の前面端部に対応する領域として形成されてもよく、その場合、キャップ24は、閉塞されるべき開口部を含まないが、そのような開口部は、この領域におけるキャップ24の断裂または局所的な破壊によってのみ形成され得る。キャップ24、特に入口側破裂隔壁25は、点火器ユニット20を圧縮ガスタンク30のガスで満たされた内部から分離する。管状インフレータ100の作動および点火器22の点火が行われると、最終的に入口側破裂隔壁25あるいはキャップ24の対応する前方領域の開口、断裂、または破壊を引き起こす過剰圧力が、点火室23内で形成される。したがって、点火室23内で形成された高温点火ガスおよび/または高温点火粒子は、このようにして、出口側破裂隔壁35に向かう方向に点火室23から離れることができる。
【0079】
さらに、圧縮ガスタンク30の第1の部分33内には、推進剤ケージ10およびパッキン要素50が配置される。推進剤ケージ10は、推進剤ケージ渦巻ばね11である。推進剤ケージ10あるいは推進剤ケージ渦巻ばね11は、管状ハウジング31と一緒に、推進剤室14と呼ばれる空所を形成する。他方では、推進剤ケージ渦巻ばね11の内側には流路15が形成され、この流路15は、特に軸方向に延在するガス流および/または軸方向に伝播する衝撃波面が邪魔されずに通過することができるように、流れの障害物を実質的に含まない。推進剤室14内には、図1bに概略的に示された推進剤体16によって構成される、推進剤床が形成される。推進剤床あるいはそれぞれの推進剤体は、必然的に適切な自由空間または空所が形を成している推進剤室14全体を実質的に占める。
【0080】
ビード32は、管状ハウジング31の点火器側前方4分の1のところに形成されることが、図1aからさらに明らかである。
【0081】
パッキン要素50は、示された例ではパッキン渦巻ばね51である。
【0082】
推進剤ケージ渦巻ばね11に関する詳細、およびパッキン渦巻ばね51に関する詳細は、図1bの拡大図から理解され得る。推進剤ケージ渦巻ばね11は、ガス入口側端部12およびガス出口側端部13を含む。推進剤ケージ渦巻ばね11のガス出口側端部13は、ハウジング31のすでに言及されたビード32上に位置する。点火器ユニット20の方向を向くガス入口側端部12の断面は、ガス出口側端部13の断面よりも小さい。したがって、「断面」という用語は、推進剤ケージ渦巻ばね11の長手軸に垂直に見たときのガスが流れることができる断面を特に意味する。
【0083】
推進剤ケージ渦巻ばね11が円形ワイヤ材料から連続的に作られることは、明白である。したがって、推進剤ケージ10は、その軸方向範囲に沿って鋭い縁部を有さない。さらに、特に径方向におけるガス出口側端部13の領域内のばねの巻き17の隙間は、ガス入口側端部の領域内のばねの巻き18および中央ばね部分40のばねの巻き19の隙間よりも小さいことが、明らかである。
【0084】
具体的には、中央ばね部分40のばねの巻き19の隙間により、軸方向渦巻ばね式の延長部を有する連続的な側方ガス排出開口部41が形成される。ばねの巻き19の隙間は、推進剤室14内に配置された推進剤体16が流路15内に侵入することができないように構成される。
【0085】
推進剤ケージ渦巻ばね11のガス出口側端部13は、3つの径方向に隣接するばねの巻き17によって形成される。上記ばねの巻き17間には、ばねの巻き17間を通って圧縮ガスタンク30の第2の部分34に入ることができるガスがないかまたはごく一部のガスだけであるように、隙間が存在しないかまたは非常に小さな隙間だけが存在することが、好ましい。したがって、破壊された入口側破裂隔壁25を通過して流路15に入る、あるいは流路15内で軸方向に伝播する、衝撃波または衝撃波面は、側方に偏向されないか、または、そのうちの非常にわずかな部分だけが側方に偏向される。したがって、衝撃波は、圧縮ガスタンク30の第2の部分34内に直接侵入する。推進剤ケージ渦巻ばね11は、衝撃波が流路15内で側方に伝播し得るように、漏斗形状または円錐形状をさらにとる。
【0086】
さらに、パッキン渦巻ばね51の形態のパッキン要素50が示されている。パッキン渦巻ばね51は、その推進剤床側端部52において推進剤ケージ10を受け入れるように、また、推進剤室14内に配置された推進剤床を支持するように、構成される。推進剤ケージ渦巻ばね11のガス入口側端部12は、パッキン渦巻ばね51の推進剤床側端部52内に挿入され、特に、推進剤ケージ渦巻ばね11のガス入口側端部12の部分的な領域がパッキン渦巻ばね51の内部内に延在するまで、軸方向に挿入される。
【0087】
パッキン渦巻ばね51は、3つの部分を実質的に有する。それらは、第1の点火器キャリヤ側部分53、第2の中央部分54、および前面端部分55である。
【0088】
パッキン渦巻ばね51の点火器側部分53におけるばねの巻きは、比較的大きな隙間を有する。これは、推進剤充填許容差のための十分な大きさの軸方向たわみあるいは軸方向行程補償をインフレータの耐用期間にわたって保証するのに役立つ。パッキン渦巻ばね51の点火器キャリヤ側部分53は、キャップ24あるいはその外殻に、横から隣接する。中央部分54は、テーパ付けされており、前面端部分55に向かう方向において径方向外に広がる。さらに、中央部分54のばねの巻き56は、比較的きつく巻かれ、すなわち、互いに対して極めて小さい隙間を有し、特に、中央部分54のばねの巻き56は、互いに隣接する。上記ばねの巻き56は、キャップ24の圧縮ガス室30への溶接中に自然に生じ得る溶接スパッタに対する障壁として特に機能する。したがって、溶接スパッタは、推進剤室14およびそこに存在する推進剤16の領域には達しない。
【0089】
他方では、前面端部分55は、ばねの巻き57を含み、このばねの巻き57は、管状インフレータ100の作動時に、意図された通りに推進剤体16に点火するために、十分に高温の点火粒子および/または点火ガスが点火器ユニット20からばねの巻き57を通過してあるいはばねの巻き57間のそれぞれの隙間を通過して推進剤室14の推進剤床に入ることができるように、互いに離間されている。
【0090】
図2aおよび2bでは、本発明による推進剤ケージ10および本発明によるパッキン要素50に関する別の実施形態が示されている。管状インフレータ100の基本構造は、図1aおよび1bに示された実施形態についての違いだけが以下で論じられるように、図1aと同様に形成される。
【0091】
推進剤ケージ10は、推進剤ケージ渦巻ばね11の形態である。この場合でも、ガス出口側端部13は、ガス入口側端部12よりも大きい断面を有する。ガス入口側端部12は、キャップ24の端面26上に直接位置する。したがって、推進剤ケージ渦巻ばね11は、ビード32とキャップ24、特にキャップ24の端面26との間に固定され、したがって、軸方向に付勢される。ガス出口側端部13は、密接した3つのばねの巻き17によって形成される。中央ばね部分40は、図1aおよび1bの推進剤ケージ渦巻ばね11と比較すると、ただわずかに外方に向けられた円錐形状を有し、ここで、中央ばね部分40はまた、外側エンベロープあるいは直線状の円筒の外殻を含み得る。上記中央ばね部分40のばねの巻き19の隙間は、螺旋状の側方ガス出口開口部41を形成する。
【0092】
他方では、パッキン渦巻ばね51は、2つの部分だけを含む。それらは、点火器キャリヤ側部分53、および前面端部分55である。前面端部分55のばねの巻き57は、推進剤室14内に設けられる推進剤床が十分に固定され得るように、密接にあるいは互いに径方向に隣接するように形成される。パッキン渦巻ばね51の推進剤床側端部52は、推進剤ケージ10のあるいは推進剤ケージ渦巻ばね11のガス入口側端部12と同じ平面内に実質的に構成される。したがって、パッキン要素50の推進剤床側端部52および推進剤ケージ10のガス入口側端部12は、実質的にキャップ24の端面26と同じ平面に配置される。あるいは、ばね11および51の対応する端部領域が特定の軸方向長さにわたって重なり合うことが可能である。言い換えれば、本発明の別の実施形態では、ガス入口側端部12は、パッキン要素50の推進剤床側端部52に挿入され得る。
【0093】
図3a~3cは、本発明による管状インフレータ100および本発明によるパッキン要素50に関する、別の可能な実施形態およびその構成要素を示す。基本構造は、図1a~2bに示された管状インフレータ100に対応し、したがって、以下では、構造および設計における違いだけが示される。
【0094】
推進剤ケージ10は、推進剤ケージ渦巻ばね11の形態である。上記推進剤ケージ渦巻ばねは、少なくとも部分的に漏斗形状でありかつ漏斗形状部分42を含むことが、明白である。推進剤ケージ渦巻ばね11のガス出口側端部13は、ビード32上に位置する。キャップ24は、端面26が推進剤ケージ渦巻ばね11のガス入口側端部12内に挿入される。推進剤ケージ渦巻ばね11のガス出口側端部13の領域内のばねの巻き17は、推進剤体が推進剤室14から圧縮ガスタンク30の第2の部分34に侵入することができないように、非常にきつく巻かれる。さらに、衝撃波は、入口側破裂隔壁25を発端にして圧縮ガスタンク30の第2の部分34内へ直接案内され得る。中央ばね部分40は、点火ガスあるいは点火粒子が流路15から推進剤室14内へ移動し得るように、互いに離間されたばねの巻き19を含む。ばねの巻き19の隙間は、推進剤体16が流路15に侵入することができないように設計される。
【0095】
この場合のパッキン要素50は、軸方向に延在するスリーブ61を有する径方向リング要素60を備える。推進剤ケージ渦巻ばね11のガス入口側端部12は、径方向リング要素60および軸方向に延在するスリーブ61に通される。推進剤ケージ渦巻ばね11およびパッキン要素50に関するそのような配置を可能にするために、以下の組立手順が提案される。
【0096】
推進剤ケージ渦巻ばね11が、ビード32上に配置される。次いで、推進剤室14が、推進剤床が形成されるように、推進剤体16で満たされる。推進剤体で満たした後、パッキン要素50が、推進剤ケージ渦巻ばね11のガス出口側端部13に向かう方向において推進剤ケージ渦巻ばね11のガス入口端部12に軸方向にねじ込まれる。パッキン要素50は、径方向リング要素60が推進剤床を意図された通りに固定するあるいは機械的に付勢するまで、ねじ込まれる。
【0097】
パッキン要素50は、軸方向に延在するスリーブ61の内方に曲がった要素の形態のタブ62(この文脈では図3c参照)をさらに備える。推進剤ケージ渦巻ばね11へのパッキン要素50のねじ込みは、タブ62により、定められた態様で促進されあるいは可能とされ、タブ62は、言わばねじ込み補助具またはねじ込みガイドとして作用する。ねじ込まれるパッキン要素50の望ましい最終位置では、タブ62は、軸方向の保護物または止め具として機能する。軸方向に延在するスリーブ61は、ねじ込み中、案内要素としてさらに機能し、また、パッキン要素50の望ましい最終位置では、パッキン要素50の位置決めのための保護物あるいは安定器としてさらに機能する。
【0098】
さらに、パッキン要素50は、径方向リング要素60および/または軸方向に延在するスリーブ61だけを備えるように設けられ得る。
【0099】
このタイプのパッキン要素を組み立てる場合、推進剤ケージ渦巻ばね11は、推進剤室14が推進剤体16で充填された後、ビード32の方向に対向して軸方向に引き伸ばされる。これは、パッキン要素50が上記引き伸ばされた領域上にだけ嵌合または摺動され得るように、推進剤ケージ渦巻ばね11の外径を上記引き伸ばされた領域において減少させ、それにより、より複雑で追加的な径方向に向けられた過剰のひねりが提供される。続いて、推進剤ケージ渦巻ばね11の弾性的な逃げまたはわずかな軸方向の縮みが、それぞれの領域において推進剤ケージ渦巻ばね11のすでに減少した外径を再び増大させ、それにより、パッキン要素50は、径方向内方に曲がったタブを伴わずとも、最終位置に固定されたままでいる。その後、ハウジング31は、点火器ユニット20によって閉塞され得る。
<付記>
[形態1]
管状インフレータ(100)の推進剤室(14)および流路(15)を形成する、前記管状インフレータ(100)のための、特にエアバッグモジュールの前記管状インフレータ(100)のための、推進剤ケージ(10)であって、
前記推進剤ケージ(10)が、ガス入口側端部(12)およびガス出口側端部(13)を有する推進剤ケージ渦巻ばね(11)の形態であり、前記ガス入口側端部(12)が、前記ガス出口側端部(13)よりも小さい断面を有することを特徴とする、推進剤ケージ(10)。
[形態2]
形態1に記載の推進剤ケージ(10)において、
前記ガス出口側端部(13)の領域におけるばねの巻き(17)の隙間が、前記推進剤ケージ(10)の前記ガス入口側端部(12)の領域におけるばねの巻き(18)および/または中央ばね部分(40)のばねの巻き(19)の隙間よりも小さく、好ましくは、前記推進剤ケージ(10)が、少なくとも部分的に漏斗形状(42)またはトランペット形状の設計を有することを特徴とする、推進剤ケージ(10)。
[形態3]
管状インフレータ(100)の推進剤室(14)内に配置された推進剤床を固定する、前記管状インフレータ(100)のための、特にエアバッグモジュールの前記管状インフレータ(100)のための、パッキン要素(50)であって、
前記パッキン要素(50)が、推進剤ケージ(10)、特に形態1または2に記載の推進剤ケージ(10)を受け入れるように、特に前記推進剤ケージ(10)を部分的に取り囲みかつ/または支持するように、推進剤床側端部(52)に形成されることを特徴とする、パッキン要素(50)。
[形態4]
形態3に記載のパッキン要素(50)において、
軸方向において異なる直径および/またはばねの巻きの隙間を有する複数の部分を含むパッキン渦巻ばね(51)としての前記パッキン要素の構成を特徴とする、パッキン要素(50)。
[形態5]
形態4に記載のパッキン要素(50)において、
前記パッキン渦巻ばね(51)が、第1の点火器キャリヤ側部分(53)、第2の中央部分(54)、および前面端部分(55)を含み、前記中央部分(54)が、テーパ付けされていて前記前面端部分(55)に向かう方向において広がっておりかつ前記点火器キャリヤ側部分(53)と比較して小さいばねの巻きの隙間を有することを特徴とする、パッキン要素(50)。
[形態6]
形態5に記載のパッキン要素(50)において、
前記前面端部分(55)における前記ばねの巻きの隙間が、前記パッキン渦巻ばね(51)の前記中央部分(54)における前記ばねの巻きの隙間よりも大きく、かつ、特に前記第1の点火器キャリヤ側部分(53)の前記ばねの巻きの隙間よりも小さいことを特徴とする、パッキン要素(50)。
[形態7]
形態3に記載のパッキン要素(50)において、
軸方向に延在するスリーブ(61)が形成される径方向リング要素(60)であって、好ましくは、前記スリーブ(61)が、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの径方向内方に延在するタブ(62)を有する径方向リング要素(60)を特徴とする、パッキン要素(50)。
[形態8]
エアバッグモジュール、特にハイブリッドインフレータのための管状インフレータ(100)であって、
- 管状ハウジング(31)と、
- 形態1または2に記載の推進剤ケージ(10、11)であって、前記管状ハウジング(31)の内側に配置され、かつ、前記管状ハウジング(31)により少なくとも部分的に推進剤室(14)を区切り、かつ、流路(15)を形成する、推進剤ケージ(10、11)と、
- 形態3から7のいずれか一項に記載のパッキン要素(50)と、
を備える、管状インフレータ(100)。
[形態9]
形態8に記載の管状インフレータ(100)において、
前記推進剤ケージ(10、11)の前記ガス出口開口部(13)が、前記管状インフレータ(100)の前記管状ハウジング(31)のビード(32)上に位置し、
前記ビード(31)が、前記管状ハウジング(31)の点火器側前方3分の1のところに、特に点火器側前方4分の1のところに、特に点火器側前方5分の1のところに形成されることを特徴とする、管状インフレータ(100)。
[形態10]
形態8または9に記載の管状インフレータ(100)において、
前記推進剤ケージ(10、11)の前記ガス入口側端部(12)および前記パッキン要素(50、51)の前記推進剤床側端部(52)が、実質的に共同平面内に形成されることを特徴とする、管状インフレータ(100)。
[形態11]
形態8または9に記載の管状インフレータ(100)において、
前記推進剤ケージ(10)および前記パッキン要素(50)が、軸方向範囲において少なくとも部分的に互いに重なり合うように位置決めされることを特徴とする、管状インフレータ(100)。
[形態12]
形態8、9、または11のいずれか一項に記載の管状インフレータ(100)において、
前記パッキン要素(50、51)が、前記推進剤ケージ(10、11)にねじ込まれかつ/または嵌合されかつ/またはクリップ留めされることを特徴とする、管状インフレータ(100)。
[形態13]
形態8から12のいずれか一項に記載の管状インフレータ(100)において、
前記推進剤ケージ渦巻ばね(51)の前記ばねの巻きの前記隙間が、前記推進剤体(16)が前記流路(15)に入ることができないように、推進剤床の推進剤体(16)に対して構成されること、および/または、前記管状インフレータ(100)が衝撃波の原理に従って動作可能であることを特徴とする、管状インフレータ(100)。
[形態14]
管状インフレータ(100)と、前記管状インフレータ(100)によって膨張可能なエアバッグと、エアバッグモジュールを車両に取り付けるための固定ユニットとを備える、エアバッグモジュールであって、
前記管状インフレータ(100)が、形態8から13のうちの少なくとも1つの形態に従って構成されることを特徴とする、エアバッグモジュール。
[形態15]
管状インフレータ(100)と、エアバッグモジュールの一部として前記管状インフレータ(100)によって膨張可能なエアバッグと、トリガ状況が与えられたときに前記管状インフレータ(100)を作動させることができる電子制御ユニットと、を備える、特に人物、例えば自動車乗員または歩行者を保護するための、車両安全システムであって、
前記管状インフレータ(100)が、形態8から13のうちの少なくとも1つの形態に従って構成されることを特徴とする、車両安全システム。
[形態16]
形態8から13のいずれか一項に記載の管状インフレータ(100)を動作させる方法であって、
a)点火器ユニット(20)を起動して、点火室(23)の内側で点火ガスを生成するステップと、
b)推進剤ケージ(10、11)によって取り囲まれた流路(15)内に前記点火ガスを軸方向に導入するステップと、
c)前記点火ガスの一部分を、前記推進剤ケージ(10、11)の少なくとも1つの側方ガス流れ開口部(41)を介して、前記推進剤ケージ(10、11)によって径方向内方に区切られた推進剤室(14)内に排出するステップと、
d)前記点火ガスにより前記推進剤室(14)内で推進剤体(16)、特に推進剤ペレットに点火するステップであって、推進剤ガスが生成されるステップと、
e)前記推進剤ガスを前記推進剤室(14)からガス室(70)内へ、特に圧縮ガス室内へ送るステップと、
を含む、方法。
[形態17]
形態16に記載の方法において、
ステップb)中、衝撃波面が発生し、前記衝撃波面が、長手軸の方向において直接に前記ガス室(70)、特に前記圧縮ガス室を流れて、前記ガス室(70)の長手軸方向端部に形成された破裂要素(35)、特に破裂隔壁を開くことを特徴とする、方法。
[形態18]
形態8から13のいずれか一項に記載の管状インフレータ(100)を製造する方法であって、
i)前記推進剤ケージ(10、11)の前記ガス出口側端部(13)が支持要素、特にビード(32)上に位置するように、前記推進剤ケージ(10、11)を前記管状インフレータの前記管状ハウジング(31)に挿入するステップと、
j)前記推進剤ケージ(10、11)および前記管状ハウジング(31)によって形成された空間(14)内に推進剤体(16)を充填して推進剤床を形成するステップと、
k)前記パッキン要素(50、51)を前記推進剤床上に配置して、前記推進剤床を軸方向に付勢するステップであって、好ましくは、前記パッキン要素(50、51)が、組立ユニットの一部として設計されて、前記組立ユニットと一緒に前記推進剤床上に配置されるステップと、
を含む、方法。
[形態19]
形態18に記載の方法において、
l)ガス室(70)/前記ガス室(70)、特に圧縮ガス室/前記圧縮ガス室をガスまたはガス混合物で満たすステップであって、好ましくはステップk)に先立ってまたはステップk)に続いて行われるステップl)を特徴とする、方法。
[形態20]
形態18または19に記載の方法において、
ステップk)において、前記パッキン要素(50、51)が、前記推進剤ケージ(10、11)にねじ込まれかつ/または嵌合されかつ/またはクリップ留めされることを特徴とする、方法。
[形態21]
形態18から20のいずれか一項に記載の方法において、
前記推進剤ケージ(11)の前記ガス入口側端部(12)が前記支持要素とは反対の方向に引き延ばされるステップm)であって、ステップj)に続いて行われ、特に、引き延ばし中に前記推進剤ケージ(11)が前記支持要素に対して所定の位置に保持されるように、ストッパデバイスを含むツールが使用されるステップm)を特徴とする、方法。
【符号の説明】
【0100】
10 推進剤ケージ
11 推進剤ケージ渦巻ばね
12 ガス入口側端部
13 ガス出口側端部
14 推進剤室
15 流路
16 推進剤体
17 ばねの巻き
18 ばねの巻き
19 ばねの巻き
20 点火器ユニット
21 点火器キャリヤ
22 点火器
23 点火器室
24 キャップ
25 入口側破裂隔壁
26 端面
27 点火器キャップ
30 圧縮ガスタンク
31 ハウジング
32 ビード
33 圧縮ガスタンクの第1の部分
34 圧縮ガスタンクの第2の部分
35 出口側破裂隔壁
36 フィルタスクリーン
37 拡散器
38 出口開口部
39 拡散器キャップ
40 中央ばね部分
41 側方ガス出口開口部
42 漏斗形状部分
50 パッキン要素
51 パッキン渦巻ばね
52 推進剤側端部
53 点火器側部分
54 中央部分
55 前面端部分
56 ばねの巻き
57 ばねの巻き
60 径方向リング要素
61 軸方向に延在するスリーブ
62 タブ
70 ガス室
100 管状インフレータ
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c