(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
B25F5/00 G
B25F5/00 A
(21)【出願番号】P 2019093039
(22)【出願日】2019-05-16
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 芳宜
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-017129(JP,A)
【文献】特開2019-030036(JP,A)
【文献】特開2007-196363(JP,A)
【文献】国際公開第2013/164889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00 - 5/02
H02K 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インシュレータを介してコイルが巻回される筒状のステータコアを有するステータと、前記ステータに対して回転可能なロータとを含むブラシレスモータと、
前記ステータコアの外周へ全周に亘って固定され、前記インシュレータよりもヤング率が高い材料からなる筒状部材と、
前記ブラシレスモータ及び前記筒状部材を収容するハウジングと、を有し、
前記筒状部材は、前記ステータコアを前記ハウジングに押し付けた状態でネジにより前記ステータコア及び前記ハウジングに固定されており、
前記筒状部材の固定に伴う前記ハウジングへの前記ステータコアの押し付けにより、前記ステータの共振周波数が押し付け前から変化していることを特徴とする電動作業機。
【請求項2】
前記ロータの回転に伴って回転するファンを備え、前記筒状部材は、前記ファンの回転により生じる空気の流れを整流する整流部材と一体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動作業機。
【請求項3】
前記筒状部材は金属製であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動作業機。
【請求項4】
前記ハウジングは金属製であり、前記筒状部材と前記ハウジングとの間に絶縁部材が介在されていることを特徴とする請求項3に記載の電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータを用いたハンマドリル等の電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具等の電動作業機においては、駆動源として、コンパクトでも高い出力が得られ、耐久性にも優れるブラシレスモータが用いられる場合が多くなっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ブラシレスモータには、ロータが回転する周波数とステータの共振周波数とが一致すると、ステータが共振して変形することで、電磁振動が増幅し、騒音に繋がるという特有の問題がある。一般的には、ロータやステータの形状を変更したりモータ回転数を変更したりするモータ側での対策が考えられるが、基本的には複数の製品群において同じモータを展開したいため、同一のモータで複数の製品を想定した対策を行うことが現実的には困難となっている。一方、大電流が流れる高出力のブラシレスモータであると、ステータの発熱も課題となっている。
【0005】
そこで、本発明は、モータの仕様を変更することなく、製品構造側で、ブラシレスモータに起因する騒音の発生を効果的に抑制できる電動作業機を提供することを目的としたものである。
また、本発明は、ステータを効果的に冷却できる電動作業機を提供することも目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、インシュレータを介してコイルが巻回される筒状のステータコアを有するステータと、ステータに対して回転可能なロータとを含むブラシレスモータと、
ステータコアの外周へ全周に亘って固定され、インシュレータよりもヤング率が高い材料からなる筒状部材と、
ブラシレスモータ及び筒状部材を収容するハウジングと、を有し、
筒状部材は、ステータコアをハウジングに押し付けた状態でネジによりステータコア及びハウジングに固定されており、
筒状部材の固定に伴うハウジングへのステータコアの押し付けにより、ステータの共振周波数が押し付け前から変化していることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、ロータの回転に伴って回転するファンを備え、筒状部材は、ファンの回転により生じる空気の流れを整流する整流部材と一体に設けられていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、筒状部材は金属製であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3の構成において、ハウジングは金属製であり、筒状部材とハウジングとの間に絶縁部材が介在されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロータやステータの形状を変更したりモータ回転数を変更したりしなくてもステータの共振を回避することができる。よって、モータの仕様を変更することなく、製品構造側で、ブラシレスモータに起因する騒音の発生を効果的に抑制可能となる。
また、ステータコアに放熱部材を熱的接続したことで、ステータの温度が上昇しても、発生した熱が放熱部材へ伝わって放熱が促進される。よって、ステータの効果的な冷却が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図2のブラシレスモータ部分の拡大図である。
【
図4】ブラシレスモータ及びバッフルプレートの分解斜視図である。
【
図5】バッフルプレートの説明図で、(A)は平面、(B)は底面、(C)は下方からの斜視をそれぞれ示す。
【
図8】バッフルプレートを上下に2分割した変更例を示す断面図である。
【
図9】金属製のギヤハウジングをモータハウジングに組み付けた変更例を示す断面図である。
【
図10】
図9において、バッフルプレートでステータコアの端面を押圧して固定する変更例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、電動作業機の一例であるハンマドリルの側面図、
図2はその中央縦断面図である。
このハンマドリル1は、ブラシレスモータ3を収容する上下方向のモータハウジング2の上方に、出力部5を収容して前方へ延びる出力ハウジング4を備えている。モータハウジング2の下方には、コントローラ7を収容してその下方に2つのバッテリーパック8,8を装着可能なバッテリー装着部6が設けられている。出力ハウジング4の後方には、バッテリー装着部6に跨がって上下方向にハンドル9が設けられている。
【0010】
ブラシレスモータ3は、
図3,4にも示すように、ステータ10と、ステータ10の内側にロータ11を備えたインナロータ型で、ロータ11の回転軸12を上向きにした姿勢でモータハウジング2内に収容されている。
ステータ10は、ステータコア13と、ステータコア13の上下に設けられる上インシュレータ14及び下インシュレータ15と、上下インシュレータ14,15を介してステータコア13の内側に巻回される複数のコイル16,16・・とを有している。下インシュレータ15の下端には、後述するロータコア18の永久磁石19の位置を検出して回転検出信号を出力する回転検出素子17a,17a・・を搭載したセンサ回路基板17が固定されている。
【0011】
ロータ11は、軸心に位置する回転軸12と、回転軸12の周囲に配置されて複数の電磁鋼板を積層してなる筒状のロータコア18と、ロータコア18の内部に挿入される永久磁石19,19・・とを有している。
回転軸12は、下端がモータハウジング2の底部に設けた軸受20に支持され、上端が出力ハウジング4の内部のギヤハウジング21に設けた軸受22に支持されてギヤハウジング21内に突出し、上端に形成したピニオン23が、前後の中間軸24及びクランク軸25に設けたギヤ26,27とそれぞれ噛合している。また、軸受22の下側で回転軸12には、遠心ファン28が設けられ、その下方でモータハウジング2内にはバッフルプレート30が設けられている。
【0012】
このバッフルプレート30は、金属製(ここではアルミニウム製)で、
図5にも示すように、モータハウジング2内を上下に仕切る仕切板31と、仕切板31の内周縁から下向きに突設される筒状部32とからなる。仕切板31の内周縁で筒状部32の内側には、遠心ファン28の外周を下方から覆うリング状の整流板33が一体に設けられている。
また、筒状部32の外面で筒状部32を中心とした点対称となる位置には、
図6にも示すように、仕切板31に開口する上側が大径となる2段径の貫通穴を有するボス部34,34が一体に形成されている。このボス部34,34は、
図7に示すように、モータハウジング2に形成されたネジボス35,35に対応して上方から当接可能となっている。
筒状部32は、上側の厚肉部36と、厚肉部36の下面で径方向の中央部から下向きに一体形成される下側の薄肉部37とからなる。厚肉部36は、組み付け状態で外側の下面が、ネジボス35,35の上面と、ネジボス35,35の内側で同心円上に同じ高さで立設される複数の受けリブ39,39・・の上面とにそれぞれ当接する。これと同時に厚肉部36の内側の下面がステータコア13の上面に当接して、上下方向で位置決めされる。この状態で薄肉部37は、ステータコア13の外周を、下端側の一部を除いて全周に亘って覆い、ステータコア13を軽圧入させた格好でステータコア13に密着している。
【0013】
よって、バッフルプレート30を、2本のネジ38,38を上方からボス部34,34に貫通させてモータハウジング2のネジボス35,35にネジ止めすると、ステータコア13は、筒状部32によって全周を把持されると共に、モータハウジング2のネジボス35及び受けリブ39に上方から押し付けられた状態で固定される。
また、コントローラ7の左右外側に当たるバッテリー装着部6の左右の側面には、
図1に示すように、複数の吸気口40,40・・が形成され、遠心ファン28の上方で出力ハウジング4の左右の側面には、複数の排気口41,41・・が形成されている。この排気口41は、ギヤハウジング21と出力ハウジング4との間を介して遠心ファン28の外側と連通している。
【0014】
一方、出力部5は、
図2に示すように、前後方向に延びて回転可能な筒状のツールホルダ45を有し、ツールホルダ45の後端に外装したベベルギヤ46が、中間軸24の上端に設けたベベルギヤ47と噛合している。ツールホルダ45内には、シリンダ48が差し込み装着されて、シリンダ48内に設けたピストン49が、コネクティングロッド50を介して、クランク軸25の上端で偏心位置に設けたクランクピン51と連結されている。
また、シリンダ48内でピストン49の前方には、空気室52を介してストライカ53が前後移動可能に収容されて、その前方でツールホルダ45内には、インパクトボルト54が前後移動可能に収容されている。ここではツールホルダ45の先端からドリルビット等の先端工具を差し込んだ際には、先端工具の後端がインパクトボルト54を、シリンダ48前方の受けリング55に当接する位置まで後退させて後端をシリンダ48内に突出させる。ツールホルダ45の前端には、先端工具の着脱操作を行う操作スリーブ56が外装されている。
【0015】
そして、バッテリー装着部6内には、バッテリーパック8,8を左右方向からスライド装着可能な2つの端子台57,57が、前後に配置されて、その上方にコントローラ7が収容されている。コントローラ7は、図示しないマイコンやスイッチング素子を搭載した制御回路基板58を備えて、バッテリー装着部6の内面に立設されたリブ59によって前後方向に延びる姿勢で支持されている。コントローラ7の前方には、LEDを用いて出力部5の前方を照射するライト60が設けられ、バッテリー装着部6の前後には、装着されたバッテリーパック8,8の前後を覆うガード板61,61が下向きに突出形成されている。
ハンドル9内には、コントローラ7と電気的に接続されるスイッチ62とコンデンサ63とが設けられて、スイッチ62から前方へ突出するプランジャには、スイッチレバー64が設けられている。
【0016】
よって、このハンマドリル1においては、ハンドル9を把持した手でスイッチレバー64を押し込んでスイッチ62をON動作させると、バッテリーパック8からブラシレスモータ3への給電がなされて回転軸12が回転する。すなわち、コントローラ7のマイコンが、センサ回路基板17の回転検出素子17aから出力されるロータ11の永久磁石19の位置を示す回転検出信号を得てロータ11の回転状態を取得し、取得した回転状態に応じて各スイッチング素子のON/OFFを制御し、ステータ10の各コイル16に対し順番に電流を流すことでロータ11を回転させる。
【0017】
回転軸12が回転すると、ギヤ26を介して中間軸24が減速して回転し、ベベルギヤ47,46を介してツールホルダ45を先端工具と共に回転させる。同時に、ギヤ27を介してクランク軸25が減速して回転し、コネクティングロッド50を介してピストン49がシリンダ48内で往復動し、空気室52を介してストライカ53を前後動させる。よって、ストライカ53がインパクトボルト54を介して先端工具を打撃する。
また、回転軸12の回転に伴う遠心ファン28の回転により、吸気口40から吸い込まれた空気が、まずコントローラ7に接触してコントローラ7(制御回路基板58)を冷却した後、モータハウジング2内を通ってブラシレスモータ3のステータ10とロータ11との間を通過してステータ10及びロータ11を冷却する。そして、バッフルプレート30の整流板33の上側で放射状に移動し、出力ハウジング4とギヤハウジング21との間を通って排気口41から排出される。
【0018】
このロータ11の回転に伴い、ステータ10の共振周波数と一致する場合、ステータ10は共振して変形が大きくなるが、ステータコア13はバッフルプレート30の筒状部32の薄肉部37によって外周がクランプされ、尚且つバッフルプレート30で上方からモータハウジング2へ押し付けられているので、全体の剛性が高まり、共振周波数を高い側へ移行させて共振(変形)を回避することができる。よって、共振に伴う電磁騒音が軽減されることになる。
また、ステータ10の温度が上昇しても、ステータコア13の全周が薄肉部37に密着しているので、発生した熱が薄肉部37から厚肉部36、仕切板31へ伝わって放熱が促進される。よって、効果的な冷却が可能となる。
【0019】
ここで、上記形態のバッフルプレート30における共振周波数の変化について説明する。具体的にはステータコア13を、外径を80mm、軸方向の長さを10mmとして、アルミニウム製のバッフルプレート30を用いて薄肉部37の長さを、0mm(薄肉部なし)、2mm、9mmとしたもので各振動モードの共振周波数を検証した。
【0020】
以下の表1に示すように、薄肉部のない樹脂製のバッフルプレートの共振周波数を100%とした場合、円環2次では、薄肉部37の長さを0mmとすると、共振周波数は142%及び189%となり、薄肉部37の長さを2mmとすると、共振周波数は155%及び199%となり、薄肉部37の長さを9mmとすると、共振周波数は162%及び202%となり、何れの長さでも共振周波数の変化(UP)が確認できた。
また、円環3次では、薄肉部37の長さを0mmとすると、共振周波数は133%及び141%となり、薄肉部37の長さを2mmとすると、共振周波数は143%となり、薄肉部37の長さを9mmとすると、共振周波数は145%及び147%となり、何れの長さでも共振周波数の変化(UP)が確認できた。なお、何れの振動モードも比率が2つあるのは、ステータコア13の外周に3つの凹溝13a(
図4)があることで、ピークが2つ生じるためである。
【0021】
【0022】
(筒状部に係る発明の効果)
上記形態のハンマドリル1によれば、上下インシュレータ14,15を介してコイル16が巻回される筒状のステータコア13を有するステータ10と、ステータ10に対して回転可能なロータ11とを含むブラシレスモータ3と、ステータコア13の外周へ全周に亘って固定され、上下インシュレータ14,15よりもヤング率が高いアルミニウムからなる筒状部32(筒状部材)と、ブラシレスモータ3及び筒状部32を収容するモータハウジング2(ハウジング)とを有することで、ステータ10やロータ11の形状を変更したりモータ回転数を変更したりしなくてもステータ10の共振を回避することができる。よって、モータの仕様を変更することなく、製品構造側で、ブラシレスモータ3に起因する騒音の発生を効果的に抑制可能となる。
【0023】
特にここでは、筒状部32は、モータハウジング2に組み付けられてステータコア13の軸方向の移動を規制するので、筒状部32をステータ10の組み付けにも利用した合理的な構造となる上、ステータ10の共振周波数UPにも繋がる。
また、ロータ11の回転に伴って回転する遠心ファン28(ファン)を備え、筒状部32は、遠心ファン28の回転により生じる空気の流れを整流するバッフルプレート30(整流部材)と一体に設けられているので、バッフルプレート30を利用して筒状部32を簡単に採用でき、組み付けも容易に行える。
さらに、筒状部32をアルミニウム製(金属製)としているので、騒音低減に必要な剛性を確保できる上、冷却効果も期待できる。
【0024】
なお、上記形態では、金属製のバッフルプレートを樹脂製のモータハウジングに組み付けて、バッフルプレートが金属製のハウジングに接触しない構造となっているが、バッフルプレートが他の金属部に接触するおそれがある場合は、
図8に示すように、バッフルプレート30を、筒状部32の厚肉部36の位置で上下に2分割し、仕切板31と厚肉部36の上部を含む上側部70を樹脂製、厚肉部36の下部と薄肉部37を含む下側部71を金属製として、ネジ38によって共締めするようにしてもよい。この場合、上側部70と下側部71との当接面の一方に円形状の突条72を、他方に円形状の凹部73を設けて、突条72と凹部73とを嵌合させて位置決めを図るのが望ましい。
【0025】
一方、例えば
図9に示すように、金属製のギヤハウジング75がモータハウジング2に組み付けられるような電動作業機の場合は、ギヤハウジング75とバッフルプレート30との間にゴム等の絶縁部材76を全周に亘って介在させて絶縁性を確保すればよい。このように、筒状部32と金属製のギヤハウジング75との間に絶縁部材76を介在させれば、バッフルプレート30を金属製としても絶縁性を確保できる。
さらに、上記形態や変更例に共通して、コイルと金属製のバッフルプレートとの間に絶縁部材を設けて両者間での絶縁を図ったり、両者間に冷却部材を設けて両者の冷却を図ったりしてもよい。
【0026】
一方、上記形態では、筒状部材をバッフルプレートとしているが、バッフルプレートと別に形成した筒状部材を単独でステータコアの外周に巻回させて振動抑制を図ってもよい。
また、筒状部材の材料も、アルミニウム(ヤング率:70000MPa)に限らず、樹脂(PA6GF30(吸水))のヤング率が5000MPa程度であることを踏まえると、10000MPa以上の材質であれば採用できる。10000MPa以上の材質としては、PA6GF45(絶乾)、35000MPa以上の材質としては、マグネシウム(40000MPa)、亜鉛(80000MPa)、銅(100000MPa)、真鍮(100900MPa)、鉄(205000MPa)等があり、これらを単独或いは複合して採用可能である。
【0027】
(金属製のバッフルプレートに係る発明の効果)
上記形態のハンマドリル1によれば、上下インシュレータ14,15を介してコイル16が巻回される筒状のステータコア13を有するステータ10と、ステータ10に対して回転可能なロータ11とを含むブラシレスモータ3と、ロータ11の回転に伴って回転する遠心ファン28(ファン)と、ステータコア13に熱的接続され、遠心ファン28の回転により生じる空気の流れを整流する機能を備えたバッフルプレート30(放熱部材)と、を有することで、ステータ10の温度が上昇しても、発生した熱が筒状部32から仕切板31へ伝わって放熱が促進される。よって、ステータ10の効果的な冷却が可能となる。特に、バッテリーパック8の抵抗が下がることで大電流が流せるようになった場合、ステータ10の冷却が積極的に行えるため効果的となる。
【0028】
特にここでは、バッフルプレート30は、ステータコア13の外周へ全周に亘って固定される筒状部32(筒状部材)を備えているので、ステータコア13の熱を効率よく伝熱させて放熱可能となる。
また、バッフルプレート30は、熱伝導率が15W/m・K以上のアルミニウム製としているので、高い冷却効果が得られる。
【0029】
なお、放熱部材の材質は、熱伝導率で見ると、ポリエチレンが0.41W/m・K、エポキシ樹脂が0.21W/m・Kであることを踏まえると、熱伝導率が15W/m・K以上の材質であれば採用できる。15W/m・K以上の材質としては、ステンレス(17W/m・K)、鉄(84W/m・K)、真鍮(106W/m・K)、銅(403W/m・K)等がある。アルミニウムは236W/m・Kである。これらを単独或いは複合して採用できる。
また、放熱性を高めるために、筒状部材の外周にフィン形状等の突起を複数突設したり、陽極酸化処理によって黒色等に着色したりしてもよい。冷却シートを貼着したりしてもよい。
【0030】
一方、ステータの共振回避による騒音発生の抑制は、筒状部材によるステータコアの外周のクランプに限らず、バッフルプレート等を利用してステータコアの端面をハウジング側へ押圧することのみでも達成できる。
図10はその一例を示すもので、ここではバッフルプレート30の筒状部32の厚肉部36の下端をステータコア13の端面に当接させて、バッフルプレート30をモータハウジング2へ組み付けると同時にステータコア13をモータハウジング2のネジボス等に押し付けるようになっている。これにより、ステータ10の共振周波数がUPすることになる。
よって、この電動作業機においても、上下インシュレータ14,15を介してコイル16が巻回される筒状のステータコア13を有するステータ10と、ステータ10に対して回転可能なロータ11とを含むブラシレスモータ3と、ブラシレスモータ3を収容するモータハウジング2(ハウジング)と、ステータコア13の端面に当接してステータコア13をモータハウジング2側へ押圧する、上下インシュレータ14,15よりもヤング率が高いアルミニウムからなるバッフルプレート30(押圧部材)と、を有することで、ステータ10やロータ11の形状を変更したりモータ回転数を変更したりしなくてもステータ10の共振を回避することができる。よって、モータの仕様を変更することなく、製品構造側で、ブラシレスモータ3に起因する騒音の発生を効果的に抑制可能となる。
【0031】
なお、押圧部材はバッフルプレートに限らず、ハウジング内でステータコアをハウジング側へ押し付ける部材であれば、他の部材も採用できる。材質も上記形態と同様に、インシュレータよりもヤング率が高い材料であればアルミニウム以外も選択できる。
【0032】
その他、ブラシレスモータの配置や向きは上記形態や変更例に限らず、前向きや斜め向き、左右方向の向きであったりしてもよい。バッフルプレートも、ボス部及びネジボスの数を増やしたり、受けリブの数や形状を変えたりしても差し支えない。
また、電動工具もハンマドリルに限らず、インパクトドライバやマルノコ、グラインダ等の他の種類であってもよい。さらに、電動作業機としては電動工具に限らず、芝刈機やコンプレッサ等であっても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1・・ハンマドリル、2・・モータハウジング、3・・ブラシレスモータ、4・・出力ハウジング、5・・出力部、6・・バッテリー装着部、7・・コントローラ、8・・バッテリーパック、10・・ステータ、11・・ロータ、12・・回転軸、13・・ステータコア、14・・上インシュレータ、15・・下インシュレータ、16・・コイル、17・・センサ回路基板、18・・ロータコア、19・・永久磁石、21,75・・ギヤハウジング、28・・遠心ファン、30・・バッフルプレート、31・・仕切板、32・・筒状部、33・・整流板、34・・ボス部、36・・厚肉部、37・・薄肉部、38・・ネジ、39・・受けリブ、40・・吸気口、41・・排気口、45・・ツールホルダ、49・・ピストン、53・・ストライカ、54・・インパクトボルト、58・・制御回路基板、70・・上側部、71・・下側部、76・・絶縁部材。