IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ IHI運搬機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ジブクレーン 図1
  • 特許-ジブクレーン 図2
  • 特許-ジブクレーン 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ジブクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/82 20060101AFI20231013BHJP
   B66C 23/06 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B66C23/82 E
B66C23/06 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019117245
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2021004104
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畑 宏明
(72)【発明者】
【氏名】堀内 宗典
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-131303(JP,A)
【文献】特開2004-051328(JP,A)
【文献】特開2008-074498(JP,A)
【文献】特開昭56-149996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0289051(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/82
B66C 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回台に起伏自在に取り付けた主ジブの先端にフライングジブを備え、前記主ジブの先端から吊り降ろした巻上ワイヤロープを主巻とし且つ前記フライングジブの先端から吊り降ろした巻上ワイヤロープを補巻として荷役作業を行い得るようにしたジブクレーンであって、主巻と補巻の巻上ワイヤロープの巻き取り及び繰り出しを行う二台の巻上装置を備えると共に、主巻と補巻の各巻上ワイヤロープを最大限巻き上げたところで主ジブ及びフライングジブの先端近傍に到るよう前記各巻上ワイヤロープ側に装備したストライカと、前記主ジブ及びフライングジブの先端に設けられて前記ストライカを受けるストッパとを備え、主巻と補巻の何れか一方の巻上ワイヤロープを使用した荷役作業時に他方の巻上ワイヤロープを最大限巻き上げたところから更に巻き上げることでジブ全体を引込操作し得るよう構成したことを特徴とするジブクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライングジブを主ジブの先端に備えたジブクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジブクレーンの中には造船所に備えられて重量物の運搬に使用されるものがあり、このようなジブクレーンは、その上部に設けられた旋回台と、該旋回台から張り出されたジブとを備えている。前記ジブは、その基端が前記旋回台に枢支されて起伏ワイヤロープの引き込み又は引き出しにより起伏し得るようになっており、前記ジブの先端からは、巻上ワイヤロープを介してフック等の吊具が吊持され、この吊具に吊荷を掛けて巻上ワイヤロープの巻き取り及び繰り出しを行うことで、前記吊荷の吊り上げ・吊り降ろしの作業(荷役作業)が行われるようになっている。
【0003】
ここで、前記造船所において、ゴライアスクレーンと称される巨大なトロリー式橋形クレーンが装備されており、このゴライアスクレーンの橋形の内側に前記ジブクレーンが配備され且つ前記ゴライアスクレーンの走行方向に沿い敷設されたレール上を走行するようにした軌道走行式のジブクレーンとなっている場合、該ジブクレーンのアウトリーチを長くしたいという要望があっても、単純にジブを長くしただけでは、該ジブを引込動作のために起こした際に前記ゴライアスクレーンとの干渉が生じる虞れがある。
【0004】
そこで、本発明者らは、従来のジブクレーンにおけるジブを主ジブとし、その先端にフライングジブを傾動自在に備え、主ジブが起伏してもフライングジブが水平状態に保たれるようにして高さを抑え、アウトリーチを稼ぎながらもゴライアスクレーンとの干渉を回避し得るようにすることを創案するに到った。
【0005】
尚、一般的なジブクレーンに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-37574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した如き主ジブの先端にフライングジブを装備したジブクレーンにあっては、主ジブの先端から吊り降ろした巻上ワイヤロープを主巻(巻き掛数を増やした重荷重用のもの)とし、フライングジブの先端から吊り降ろした巻上ワイヤロープを補巻(単索で荷を吊る補助用のもの)として、何れの先端からも荷役作業を行い得るようにすることになるため、主巻用と補巻用の巻上装置と、主ジブの引込動作のための引込装置とを備えなければならず、計三台の独立した駆動装置が必要となることでメンテナンス性の低下と大幅なコストアップを招くという課題があった。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、メンテナンス性の低下と大幅なコストアップを招くことなくフライングジブを主ジブの先端に装備したジブクレーンを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、旋回台に起伏自在に取り付けた主ジブの先端にフライングジブを備え、前記主ジブの先端から吊り降ろした巻上ワイヤロープを主巻とし且つ前記フライングジブの先端から吊り降ろした巻上ワイヤロープを補巻として荷役作業を行い得るようにしたジブクレーンであって、主巻と補巻の巻上ワイヤロープの巻き取り及び繰り出しを行う二台の巻上装置を備えると共に、主巻と補巻の各巻上ワイヤロープを最大限巻き上げたところで主ジブ及びフライングジブの先端近傍に到るよう前記各巻上ワイヤロープ側に装備したストライカと、前記主ジブ及びフライングジブの先端に設けられて前記ストライカを受けるストッパとを備え、主巻と補巻の何れか一方の巻上ワイヤロープを使用した荷役作業時に他方の巻上ワイヤロープを最大限巻き上げたところから更に巻き上げることでジブ全体を引込操作し得るよう構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
上記した本発明のジブクレーンによれば、二台の巻上装置だけで荷役作業と引込操作を賄うことができて引込装置を別途設置する必要がなくなるので、メンテナンス性の大幅な向上と顕著なコストダウンを図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略構成図である。
図2図1の補巻を使用して荷役作業を行う例を示す概略構成図である。
図3図1におけるIII部の詳細を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1図3は本発明を実施する形態の一例を示すもので、ここに図示している例では、造船所等でゴライアスクレーンの橋形の内側に軌道走行式のジブクレーン1として利用する場合で例示しており、図1及び図2の紙面と直交する方向へレール2が敷設されており、該レール2に沿って転動自在な走行車輪3を備えた走行装置4が基台5の脚部6に取り付けられ、前記基台5上にはマスト7が立設されて該マスト7の上端に旋回台8が旋回自在に配設されている。この旋回台8には、主ジブ9が起伏自在に取り付けられていると共に、該主ジブ9の先端にフライングジブ10が傾動自在に備えられており、前記主ジブ9が起伏しても前記フライングジブ10を水平状態に保ち得るよう該フライングジブ10が支持ワイヤロープ11等により支持されている。ここでフライングジブ10は、支持ワイヤロープ11以外の他の部材により支持されても良く、支持の構成は特に制限されるものではない。
【0015】
即ち、前記旋回台8の上面に、前支柱12と後支柱13とを有する上部フレーム14が立設され、前記フライングジブ10の基端には、前記前支柱12と同じ高さの中間支柱15が立設されていて、前記旋回台8の上面から繰り出された前記支持ワイヤロープ11が前記前支柱12上端と前記中間支柱15上端とを経由して前記フライングジブ10先端に連結されるようになっているので、前記主ジブ9の起伏にかかわらず前記支持ワイヤロープ11の繰り出し長が一定に保持され、前記フライングジブ10が水平状態に保たれるようになっている。
【0016】
斯かるジブクレーン1では、前記主ジブ9の先端から吊り降ろした巻上ワイヤロープ16を主巻とし且つ前記フライングジブ10の先端から吊り降ろした巻上ワイヤロープ17を補巻として荷役作業を行い得るようにしてあり、前記主巻の巻上ワイヤロープ16の巻き取り及び繰り出しを行う巻上装置18と、前記補巻の巻上ワイヤロープ17の巻き取り及び繰り出しを行う巻上装置19とが前記旋回台8の上面に搭載されている。
【0017】
尚、前記主ジブ9を起伏させるための起伏ワイヤロープの配索や、該起伏ワイヤロープの巻き取り及び繰り出しを行う引込装置の設置は成されておらず、主巻と補巻の何れか一方の巻上ワイヤロープ16又は17を使用した荷役作業時に、他方の巻上ワイヤロープ17又は16を最大限巻き上げたところから更に巻き上げることでジブ全体(主ジブ9及びフライングジブ10)を引込操作し得るように構成してある。
【0018】
そして、図3にフライングジブ10の先端を例として示す通り、補巻の巻上ワイヤロープ17を最大限巻き上げたところでフライングジブ10の先端近傍に到るよう前記巻上ワイヤロープ17側にストライカ20が装備されており、前記フライングジブ10の先端には、最先端のシーブ21を回転自在に支持するブラケット22から延びて前記ストライカ20を受けるストッパ23が設けられている。
【0019】
また、ここではフライングジブ10の先端を例として説明しているが、主ジブ9の先端についても同様であり、主巻の巻上ワイヤロープ16を最大限巻き上げたところで主ジブ9の先端近傍に到るよう前記巻上ワイヤロープ16側にストライカが装備され、前記主ジブ9の先端には、前記巻上ワイヤロープ16側のストライカを受けるストッパが設けられるようになっている。
【0020】
尚、図1及び図2中における符号の24は主巻の巻上ワイヤロープ16を介して吊持されたフック等の吊具、25は補巻の巻上ワイヤロープ17を介して吊持されたフック等の吊具、26は吊荷を示す。
【0021】
而して、このようにすれば、主巻と補巻の何れか一方の巻上ワイヤロープ16又は17を使用して荷役作業を行い、荷役作業に用いない他方の巻上ワイヤロープ17又は16を最大限巻き上げたところから更に巻き上げることでジブ全体の引込操作に使用することが可能となるので、二台の巻上装置18,19だけで荷役作業と引込操作を賄うことができて引込装置を別途設置する必要がなくなる。
【0022】
例えば、図1に示す如く、主巻の巻上ワイヤロープ16を使用し吊具24に吊荷26を掛けて荷役作業を行う場合に、荷役作業に用いない補巻の巻上ワイヤロープ17を最大限巻き上げたところから更に巻き上げると、ジブ全体が引き込まれて起き上がり、補巻の巻上ワイヤロープ17を繰り出すと、ジブ全体が前に倒れることになる。
【0023】
他方、図2に示す如く、補巻の巻上ワイヤロープ17を使用し吊具25に吊荷26を掛けて荷役作業を行う場合には、荷役作業に用いない主巻の巻上ワイヤロープ16を最大限巻き上げたところから更に巻き上げると、ジブ全体が引き込まれて起き上がり、主巻の巻上ワイヤロープ16を繰り出すと、ジブ全体が前に倒れることになる。
【0024】
また、主巻と補巻の各巻上ワイヤロープ16,17を最大限巻き上げたところで主ジブ9及びフライングジブ10の先端近傍に到るよう前記各巻上ワイヤロープ16,17側に装備したストライカ20(補巻側についてのみ図3に図示)と、前記主ジブ9及びフライングジブ10の先端に設けられて前記ストライカ20を受けるストッパ23(補巻側についてのみ図3に図示)とを備えておけば、主巻の巻上ワイヤロープ16又は補巻の巻上ワイヤロープ17を最大限巻き上げた際に、ストライカ20がストッパ23に受け止められて前記巻上ワイヤロープ16又は17の巻き上げが確実に止まり、主ジブ9やフライングジブ10の先端のシーブ21(補巻側についてのみ図3に図示)等をフック等の吊具24又は25との衝突から守りながら巻上装置18,19による巻き上げ力をジブ全体の引き込み力として効果的に作用させることが可能となる。
【0025】
従って、上記形態例によれば、二台の巻上装置18,19だけで荷役作業と引込操作を賄うことができて引込装置を別途設置する必要がなくなるので、メンテナンス性の大幅な向上と顕著なコストダウンを図ることができる。
【0026】
尚、本発明のジブクレーンは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
1 ジブクレーン
8 旋回台
9 主ジブ
10 フライングジブ
16 巻上ワイヤロープ
17 巻上ワイヤロープ
18 巻上装置
19 巻上装置
20 ストライカ
23 ストッパ
図1
図2
図3