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特許7365804無線受電システム、タイヤ・ホイール組立体、及び、タイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】無線受電システム、タイヤ・ホイール組立体、及び、タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/12 20190101AFI20231013BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20231013BHJP
   B60L 53/30 20190101ALI20231013BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20231013BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20231013BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231013BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20231013BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20231013BHJP
【FI】
B60L53/12
B60C19/00 K
B60L53/30
B60M7/00 X
B60L5/00 B
H02J7/00 301D
H01F38/14
H02J50/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019137240
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2021022991
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業、「第三世代ワイヤレスインホイールモータを開発と実証」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】桑山 勲
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-106136(JP,A)
【文献】特開2013-063765(JP,A)
【文献】特開2012-110211(JP,A)
【文献】国際公開第2009/008502(WO,A1)
【文献】特開2002-219914(JP,A)
【文献】特開2013-104792(JP,A)
【文献】特開2014-195350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
7/00-13/00
15/00-15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置と、
受電装置と、
リム部を有するホイールと、
前記リム部に装着されたタイヤと、
を備え、
前記タイヤは、ビードコア及びビードフィラを有しており、
前記ビードフィラのタイヤ幅方向断面積S1は、前記ビードコアのタイヤ幅方向断面積S2の1倍以上8倍以下であり、
前記送電装置は、無線によって1000kHz以下の周波数の電力を送信できるように構成されており、
前記受電装置は、前記タイヤのトレッド部よりもタイヤ径方向内側に配置されており、
前記受電装置は、前記送電装置が前記タイヤよりもタイヤ径方向外側に位置する状態において、前記送電装置から無線によって前記電力を受け付けるように構成されており、
前記タイヤは、前記トレッド部が非磁性材料で形成されており、
前記受電装置は、前記ホイールよりもタイヤ径方向内側に配置されている、無線受電システム。
【請求項2】
前記タイヤは、一枚以上のカーカス層によって構成された、カーカスを有しており、
前記一枚以上のカーカス層のそれぞれを構成するカーカスコードは、非磁性材料で形成されている、請求項1に記載の無線受電システム。
【請求項3】
前記タイヤは、一枚以上のベルト層によって構成された、ベルトを有しており、
前記一枚以上のベルト層のそれぞれを構成するベルトコードは、非磁性材料で形成されている、請求項1又は2に記載の無線受電システム。
【請求項4】
前記受電装置は、前記ホイールに連結されたハブに取り付けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の無線受電システム。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の無線受電システムに用いられる、タイヤ・ホイール組立体であって、
前記ホイールと、
前記タイヤと、
を備えた、タイヤ・ホイール組立体。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の無線受電システムに用いられる、前記タイヤであって、
トレッド部が非磁性材料で形成されている、タイヤ。
【請求項7】
送電装置と、
受電装置と、
リム部を有するホイールと、
前記リム部に装着されたタイヤと、
を備え、
前記タイヤは、ビードコア及びビードフィラを有しており、
前記ビードフィラのタイヤ幅方向断面積S1は、前記ビードコアのタイヤ幅方向断面積S2の1倍以上8倍以下であり、
前記送電装置は、無線によって1000kHzよりも高い周波数の電力を送信できるように構成されており、
前記受電装置は、前記タイヤのトレッド部よりもタイヤ径方向内側に配置されており、
前記受電装置は、前記送電装置が前記タイヤよりもタイヤ径方向外側に位置する状態において、前記送電装置から無線によって前記電力を受け付けるように構成されており、
前記タイヤは、前記トレッド部が非磁性材料で形成されているか、又は、前記トレッド部の一部が磁性材料で形成されており、
前記受電装置は、前記ホイールよりもタイヤ径方向内側に配置されている、無線受電システム。
【請求項8】
前記タイヤは、一枚以上のカーカス層によって構成された、カーカスを有しており、
前記一枚以上のカーカス層のそれぞれを構成するカーカスコードは、磁性材料で形成されている、請求項に記載の無線受電システム。
【請求項9】
前記タイヤは、一枚以上のベルト層によって構成された、ベルトを有しており、
前記一枚以上のベルト層のそれぞれを構成するベルトコードは、磁性材料で形成されている、請求項又はに記載の無線受電システム。
【請求項10】
前記受電装置は、前記ホイールに連結されたハブに取り付けられている、請求項7~9のいずれか一項に記載の無線受電システム。
【請求項11】
請求項10のいずれか一項に記載の無線受電システムに用いられる、タイヤ・ホイール組立体であって、
前記ホイールと、
前記タイヤと、
を備えた、タイヤ・ホイール組立体。
【請求項12】
請求項10のいずれか一項に記載の無線受電システムに用いられる、前記タイヤであって、
トレッド部が非磁性材料で形成されているか、又は、前記トレッド部の一部が磁性材料で形成されている、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受電システム、タイヤ・ホイール組立体、及び、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体の下側に搭載された受電装置が、道路又は駐車場等に設けられた送電装置から、無線で電力を受け付けるようにされた、技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-068077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の発明者は、タイヤ付きの移動体におけるタイヤを介して、良好な受電が可能な技術を、新たに見出し、本発明をするに至った。
【0005】
本発明は、タイヤを介して良好な受電が可能な、無線受電システム、タイヤ・ホイール組立体、及び、タイヤを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の無線受電システムは、
送電装置と、
受電装置と、
リム部を有するホイールと、
前記リム部に装着されたタイヤと、
を備え、
前記タイヤは、ビードコア及びビードフィラを有しており、
前記ビードフィラのタイヤ幅方向断面積S1は、前記ビードコアのタイヤ幅方向断面積S2の1倍以上8倍以下であり、
前記送電装置は、無線によって1000kHz以下の周波数の電力を送信できるように構成されており、
前記受電装置は、前記タイヤのトレッド部よりもタイヤ径方向内側に配置されており、
前記受電装置は、前記送電装置が前記タイヤよりもタイヤ径方向外側に位置する状態において、前記送電装置から無線によって前記電力を受け付けるように構成されており、
前記タイヤは、前記トレッド部が非磁性材料で形成されている。
本発明の第1の無線受電システムによれば、タイヤを介して良好な受電が可能である。
【0007】
本発明の第1の無線受電システムにおいて、
前記タイヤは、一枚以上のカーカス層によって構成された、カーカスを有しており、
前記一枚以上のカーカス層のそれぞれを構成するカーカスコードは、非磁性材料で形成されていると、好適である。
これにより、受電効率を向上できる。
【0008】
本発明の第1の無線受電システムにおいて、
前記タイヤは、一枚以上のベルト層によって構成された、ベルトを有しており、
前記一枚以上のベルト層のそれぞれを構成するベルトコードは、非磁性材料で形成されていると、好適である。
これにより、受電効率を向上できる。
【0009】
本発明の第1のタイヤ・ホイール組立体は、
上記の第1の無線受電システムに用いられる、タイヤ・ホイール組立体であって、
前記ホイールと、
前記タイヤと、
を備えている。
本発明の第1のタイヤ・ホイール組立体によれば、タイヤを介して良好な受電が可能である。
【0010】
本発明の第1のタイヤは、
上記の第1の無線受電システムに用いられる、前記タイヤであって、
トレッド部が非磁性材料で形成されている。
本発明の第1のタイヤによれば、タイヤを介して良好な受電が可能である。
【0011】
本発明の第2の無線受電システムは、
送電装置と、
受電装置と、
リム部を有するホイールと、
前記リム部に装着されたタイヤと、
を備え、
前記タイヤは、ビードコア及びビードフィラを有しており、
前記ビードフィラのタイヤ幅方向断面積S1は、前記ビードコアのタイヤ幅方向断面積S2の1倍以上8倍以下であり、
前記送電装置は、無線によって1000kHzよりも高い周波数の電力を送信できるように構成されており、
前記受電装置は、前記タイヤのトレッド部よりもタイヤ径方向内側に配置されており、
前記受電装置は、前記送電装置が前記タイヤよりもタイヤ径方向外側に位置する状態において、前記送電装置から無線によって前記電力を受け付けるように構成されており、
前記タイヤは、前記トレッド部が非磁性材料で形成されているか、又は、前記トレッド部の一部が磁性材料で形成されている。
本発明の第2の無線受電システムによれば、タイヤを介して良好な受電が可能である。
【0012】
本発明の第2の無線受電システムにおいて、
前記タイヤは、一枚以上のカーカス層によって構成された、カーカスを有しており、
前記一枚以上のカーカス層のそれぞれを構成するカーカスコードは、磁性材料で形成されていてもよい。
この場合も、タイヤを介して良好な受電が可能である。
【0013】
本発明の第2の無線受電システムにおいて、
前記タイヤは、一枚以上のベルト層によって構成された、ベルトを有しており、
前記一枚以上のベルト層のそれぞれを構成するベルトコードは、磁性材料で形成されていてもよい。
この場合も、タイヤを介して良好な受電が可能である。
【0014】
本発明の第2のタイヤ・ホイール組立体は、
上記の第2の無線受電システムに用いられる、タイヤ・ホイール組立体であって、
前記ホイールと、
前記タイヤと、
を備えている。
本発明の第2のタイヤ・ホイール組立体によれば、タイヤを介して良好な受電が可能である。
【0015】
本発明の第2のタイヤは、
上記の第2の無線受電システムに用いられる、前記タイヤであって、
トレッド部が非磁性材料で形成されているか、又は、前記トレッド部の一部が磁性材料で形成されている。
本発明の第2のタイヤによれば、タイヤを介して良好な受電が可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タイヤを介して良好な受電が可能な、無線受電システム、タイヤ・ホイール組立体、及び、タイヤを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る無線受電システムを、タイヤ幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図である。
図2図1のタイヤを示す、タイヤ幅方向断面図である。
図3図1のホイールを示す、タイヤ幅方向断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る無線受電システムの変形例を、タイヤ幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の無線受電システム、タイヤ・ホイール組立体、及び、タイヤは、例えば、車両、二輪車、車いす、カート等、タイヤ付きの任意の移動体に好適に使用できるものである。車両としては、例えば、乗用車、トラック、バス、農業用車両(トラクター等)、工事用又は建設用車両(ダンプカー等)等があり、乗用車が特に好適である。
【0019】
以下、本発明の無線受電システム、タイヤ・ホイール組立体、及び、タイヤの実施形態について、図面を参照して例示説明する。
なお、本明細書では、特に断りが無い限り、上記「本発明の第1の無線受電システム」及び上記「本発明の第2の無線受電システム」を包含して「本発明の無線受電システム」等と称し、上記「本発明の第1のタイヤ・ホイール組立体」及び上記「本発明の第2のタイヤ・ホイール組立体」を包含して「本発明のタイヤ・ホイール組立体」等と称し、上記「本発明の第1のタイヤ」及び上記「本発明の第2のタイヤ」を包含して「本発明のタイヤ」等と称するものとする。
各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0020】
〔無線受電システムの全体構成〕
まず、本発明の一実施形態に係る無線受電システム1の全体構成について、図1を参照しつつ説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る無線受電システム1を、タイヤ幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図が示されている。
本実施形態の無線受電システム1は、送電装置40と、受電装置30と、本発明の一実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体3と、を備えている。タイヤ・ホイール組立体3は、車両2に取り付けられるものであり、リム部21を有するホイール20と、このリム部21に装着された、本発明の一実施形態に係るタイヤ10と、を備えている。車両2は、例えば、乗用車、トラック、バス、農業用車両(トラクター等)、工事用又は建設用車両(ダンプカー等)等である。車両2は、ドライブシャフト2Bとハブ2Aとを有している。
無線受電システム1は、送電装置40、受電装置30、及び、タイヤ・ホイール組立体3を、それぞれ、1つ又は複数備えてよい。受電装置30は、1つのタイヤ・ホイール組立体3に対して、1つ又は複数設けられてよい。
【0021】
送電装置40は、無線によって電力を送信できるように構成されている。
受電装置30は、タイヤ・ホイール組立体3の内部に設けられており、より具体的には、タイヤ10に対応するタイヤ幅方向領域内において、タイヤ10のトレッド部13よりもタイヤ径方向内側に配置されている。受電装置30は、送電装置40が、少なくとも、タイヤ10に対応するタイヤ幅方向領域内においてタイヤ10よりもタイヤ径方向外側に位置する状態において、送電装置40から無線によって電力を受け付けるように構成されている。
【0022】
送電装置40は、送電コイル(1次コイル)からなる(以下、送電装置40を、「送電コイル40」とも表記する)。送電装置40には、電力源(図示せず)が接続されている。送電装置40は、道路等の路面に設置され、或いは路面の近傍に位置するように埋設されている。送電コイル40は、電力源(図示せず)から供給された交流電流に基づき、交流磁界を発生させるように構成されている。本実施形態において、送電装置40は、送電コイル40が交流磁界を発生させることにより、無線によって電力を送信する。
送電コイル40は、全体を環状に構成され、路面の上方に向けて交流磁界を発生するように、当該環の軸方向が路面と略垂直となるように配置されている。ただし、図1では、理解し易さのため、送電コイル40を、実際とは異なる向き(指向方向)で示している。
送電コイル40は、例えば、フェライトコア等のコアに巻き回され、全体を環状に構成されたものであるが、これに限られず、コイルばね、空芯コイル等、交流磁界を発生可能な任意のコイルとすることができる。
【0023】
本実施形態において、受電装置30は、受電コイル(2次コイル)からなる(以下、受電装置30を、「受電コイル30」とも表記する)。受電コイル30は、全体を環状に構成されている。受電コイル30は、タイヤ・ホイール組立体3が送電装置40の上方に位置している状態(ひいては、送電装置40がタイヤ10よりもタイヤ径方向外側に位置している状態)において、送電コイル40と対向するように、当該環の軸方向が路面と略垂直となるように配置されている。受電コイル30の前記環の軸方向は、例えば、タイヤ径方向と略平行にされる。ただし、図1では、理解し易さのため、受電コイル30を、実際とは異なる向き(指向方向)で示している。
受電コイル30は、例えば、フェライトコア等のコアに巻き回され、全体を環状に構成されたものであるが、これに限られず、コイルばね、空芯コイル等、交流磁界に基づいて起電力を発生可能な任意のコイルとすることができる。
【0024】
送電装置40及び受電装置30は、上述のように構成されているので、タイヤ10が送電装置40の上を走行又は停車することにより、タイヤ10が送電装置40の上に位置する状態(ひいては、送電装置40がタイヤ10よりもタイヤ径方向外側に位置する状態)においては、電磁誘導方式により送電装置40が受電装置30に電力を供給できるようにされており、すなわち、送電装置40略垂直上向きに発生させる交流磁界によって、受電装置30に、電磁誘導によって起電力が発生し、電流が流れる(すなわち、受電コイル30が電力を受け付ける(受電する))ようにされている。このようにして、タイヤ10を介して良好な受電が可能にされている。
なお、本明細書において、送電装置40が「無線によって電力を送信する」とは、実際に電流を伝送する場合のみを指すのではなく、受電装置30が受電できるように送電装置40が作用をすることの全般を指しており、本実施形態においては、送電装置40が交流磁界を発生させることを指している。同様に、受電装置30が「無線によって電力を受け付ける」とは、実際に電流を受信する場合のみを指すのではなく、受電装置30が送電装置40からの作用により受電することの全般を指しており、本実施形態においては、受電装置30に起電力が発生して電流が流れることを指している。
なお、受電装置30が受電する際、タイヤ10のトレッド部13が路面と接触しているため、受電装置30と送電装置40との間に障害物が入り込むおそれを低減させ、ひいては、受電装置30の無線給電における受電効率を向上させることができる。
【0025】
受電装置30は、図1の例において、車両2のハブ2Aに取り付けられるが、これに限られず、タイヤ・ホイール組立体3の内部において、タイヤ10に対応するタイヤ幅方向領域内、かつ、タイヤ10のトレッド部13よりもタイヤ径方向内側である限り、任意の位置に取り付けることができる。例えば、受電装置30は、車両2のドライブシャフト2Bに取り付けられてもよく、あるいは、リム部21に取り付けられるとともにリム部21の内周側又は外周側に配置されてもよく、あるいは、タイヤ10の内面に取り付けられていてもよい。なお、受電装置30は、図1の例のように、少なくとも、トレッド部13に対応するタイヤ幅方向領域内に配置されていると、受電効率の観点から、好適である。
【0026】
図1の例において、受電装置30は、1つのタイヤ・ホイール組立体3に対して、1つのみ設けられているが、受電装置30は、1つのタイヤ・ホイール組立体3に対して、1つ又は複数設けられてよい。
ただし、受電装置30が、タイヤ10の回転とともに回転しないような位置に取り付けられる場合(例えば、図1の例のようにハブ2Aに取り付けられる場合)、受電装置30は、路面と対向する位置に1つだけ設置されていても好適である。また、受電装置30が、タイヤ10の回転とともに回転するような位置に取り付けられる場合(例えば、ドライブシャフト2B、リム部21、又はタイヤ10に取り付けられる場合)、複数の受電装置30が、タイヤ周方向に沿って配列されていると、好適である。
【0027】
無線受電システム1は、図1に示すように、タイヤ・ホイール組立体3の内部(好ましくは、ホイール20の内部)に、電力変換回路32と、蓄電部33と、制御部34とを、さらに備えていてもよい。
電力変換回路32は、受電コイル30に生じた交流電力を直流電力に変換し、導電線等を介して、蓄電部33、或いは、車両2が備える他の車載装置に直流電力を供給する。
蓄電部33は、受電コイル30に生じた電力を蓄える。蓄電部33は、例えば、キャパシタであるが、これに限られず、蓄電池等の任意の蓄電装置とすることができる。蓄電部33がキャパシタである場合、蓄電池に比べて短時間で充放電を行うことができる。そのため、キャパシタである蓄電部33は、道路に設けられた送電装置40の上を車両2が走行する際に受電コイル30に生じた電力を蓄積するような、高い即応性を求められる状況において、有利である。
制御部34は、受電装置30の各機能を制御するための処理を提供する1つ以上のプロセッサを含んでいてもよい。制御部34は、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等の汎用のプロセッサ又は各機能の処理に特化した専用のプロセッサとすることができる。制御部34には、プログラム等を記憶する記憶手段、及び外部の電子機器と有線又は無線で通信をする通信手段等の受電装置30の制御に用いられる任意の手段が含まれていてもよい。
【0028】
〔タイヤの構成〕
次に、上述した本発明の一実施形態に係る無線受電システム1に使用される、本発明の一実施形態に係るタイヤ10の構成について、図2を参照しつつ、さらに詳細に説明する。
【0029】
本発明の発明者は、送電装置40から送信される電力の周波数(ひいては、電力源から送電装置40へ供給される交流電流の周波数、送電装置40から送信される交流磁界の周波数、並びに、受電装置30によって受電される電力の周波数)に応じて、タイヤ10の構造を適切化することにより、受電効率を向上できることを、新たに見出した。
より具体的に、本発明の発明者は、送電装置40が無線によって1000kHz以下(好適には、500kHz以下)の周波数の電力を送信できるように構成されている場合は、タイヤ10が、主に送電装置40と受電装置30との間に位置する部分において、磁性材料(例えば、スチール)を含んでいると、磁性材料を含んでいない場合に比べて、受電の際に電力のロスが顕著に大きくなることを、新たに見出した。そして、本発明の発明者は、送電装置40が、無線によって1000kHz以下(好適には、500kHz以下)の周波数の電力を送信できるように構成されている場合は、タイヤ10が、主に送電装置40と受電装置30との間に位置する部分において、磁性材料をなるべく含まないようにすることにより、受電の際の電力のロスを抑制し、受電効率を向上できることを、新たに見出した。
さらに、本発明の発明者は、送電装置40が、無線によって1000kHzよりも高い(好適には、2000kHzよりも高い)周波数の電力を送信できるように構成されている場合は、タイヤ10が、主に送電装置40と受電装置30との間に位置する部分において、磁性材料(例えば、スチール)を含んでいても、磁性材料を含んでいない場合とほぼ同等に、受電の際の電力のロスが無いことを、新たに見出した。そして、本発明の発明者は、送電装置40が、無線によって1000kHzよりも高い(好適には、2000kHzよりも高い)周波数の電力を送信できるように構成されている場合は、タイヤ10が、主に送電装置40と受電装置30との間に位置する部分において、磁性材料を含んでいてもいなくても、受電の際の電力のロスを抑制でき、良好な受電が可能になることを、新たに見出した。
以下に説明するタイヤ10の構成は、このような知見に基づくものである。
なお、以下の説明では、便宜のため、送電装置40が無線によって1000kHz以下(好適には、500kHz以下)の周波数の電力を送信できるように構成されている場合を、単に「低周波の場合」と称し、送電装置40が無線によって1000kHzよりも高い(好適には、2000kHzよりも高い)周波数の電力を送信できるように構成されている場合を、単に「高周波の場合」と称するものとする。
【0030】
以下、特に断りのない限り、各要素の位置関係等は、タイヤ10を適用リムであるリム部21に装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で測定されるものとする。また、タイヤ10を適用リムであるリム部21に装着し、タイヤ10に規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した状態で、路面と接する接地面のタイヤ幅方向の幅を、タイヤの接地幅といい、当該接地面のタイヤ幅方向の端部を接地端という。
【0031】
本明細書において、「適用リム」とは、空気入りタイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指すが、これらの産業規格に記載のないサイズの場合は、空気入りタイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に前述の産業規格に記載されるサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられ得る。
【0032】
本明細書において、「規定内圧」とは、前述したJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、前述した産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、本明細書において、「最大荷重」とは、前述した産業規格に記載されている適用サイズのタイヤにおける最大負荷能力に対応する荷重、又は、前述した産業規格に記載のないサイズの場合には、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重を意味する。
【0033】
図2には、本実施形態のタイヤ10をタイヤ幅方向に沿って切断した、タイヤ幅方向断面図が示されている。本明細書において、タイヤ幅方向とは、タイヤ10の回転軸と平行な方向をいう。図2において、タイヤ幅方向は、矢印Wで示される。また、タイヤ径方向とは、タイヤ10の回転軸と直交する方向をいう。図2において、タイヤ径方向は、矢印Rで示される。本実施形態において、タイヤ10は、タイヤの赤道面CLに対して対称な構成であるものとして説明するが、これに限らず、タイヤの赤道面CLに対して非対称な構成とすることができる。
【0034】
本明細書において、タイヤ径方向に沿ってタイヤ10の回転軸に近い側を「タイヤ径方向内側」又は「タイヤ内周側」と称し、タイヤ径方向に沿ってタイヤ10の回転軸から遠い側を「タイヤ径方向外側」又は「タイヤ外周側」と称する。一方、タイヤ幅方向に沿ってタイヤの赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」と称し、タイヤ幅方向に沿ってタイヤの赤道面CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と称する。
【0035】
図2に示すように、タイヤ10は、一対のビード部11と、それぞれビード部11からタイヤ径方向外側に連続する一対のサイドウォール部12と、一対のサイドウォール部12どうしの間にあるトレッド部13と、を有している。トレッド部13は、一対の接地端どうしの間のタイヤ幅方向部分である。
【0036】
低周波の場合、トレッド部13は、非磁性材料のみで形成されるとよい。これにより、仮にトレッド部13が磁性材料(例えば、スチール)を含む場合に比べて、受電効率を向上できる。
一方、高周波の場合、トレッド部13は、如何なる材料で構成されていても、良好な受電が可能であり、具体的には、非磁性材料のみで形成されるか、又は、一部のみが磁性材料で形成される(残りの部分は非磁性材料で形成される)と、よい。
トレッド部13は、受電の際に送電装置40と受電装置30との間に位置する(ひいては、電力(本実施形態において、具体的には、磁界)が主に通る位置にある)ため、トレッド部13の材料をこのように適切化することは、受電効率向上への寄与が高い。
【0037】
非磁性材料には、透磁率が小さい、常磁性体及び反磁性体が含まれる。非磁性材料として、例えば、ポリエステル及びナイロン等の熱可塑性樹脂、ビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、並びにその他の合成樹脂を含む、樹脂材料を用いることができる。樹脂材料には、更に、補強繊維として、ガラス、カーボン、グラファイト、アラミド、ポリエチレン、及びセラミック等の繊維を含ませることができる。非磁性材料として、樹脂に限らず、ゴム、ガラス、カーボン、グラファイト、アラミド、ポリエチレン、及びセラミック等を含む、任意の非金属材料を用いることができる。さらに、非磁性材料として、アルミ等の常磁性体、又は銅等の反磁性体を含む、金属材料を用いることができる。
磁性材料は、強磁性を示す材料(強磁性体)であり、例えばスチールが該当する。
【0038】
タイヤ10は、カーカス14を有している。カーカス14は、一対のビードコア11A間にトロイダル状に延在しており、タイヤの骨格を形成している。カーカス14の端部側はビードコア11Aに係止されている。具体的には、カーカス14は、ビードコア11A間に配置されたカーカス本体部14Aと、ビードコア11Aの周りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側へ折り返されているカーカス折返し部14Bと、を有している。カーカス折返し部14Bの長さは、任意とすることができる。また、カーカス14は、カーカス折返し部14Bを有していない構造、或いはカーカス折返し部14Bをビードコア11Aに巻きつけている構造とすることができる。
カーカス14は、1枚以上(図2の例では、1枚)のカーカス層によって構成することができる。例えば、カーカス14は、タイヤの赤道面CLにおいてタイヤ径方向に積層して配置された2枚のカーカス層によって構成することもできる。図2において一部拡大して示すように、各カーカス層は、1本又は複数本のカーカスコード14cと、カーカスコード14cを被覆する被覆ゴム14rと、を含んでいる。カーカスコード14cは、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。
低周波の場合、カーカスコード14cは、非磁性材料で形成されるとよい。これにより、仮にカーカスコードが磁性材料(例えば、スチール)で形成された場合に比べて、受電効率を向上できる。あるいは、カーカスコード14cは、カーカス14のうち、トレッド部13を構成する部分を含む一部分のみが、非磁性材料で形成され、それ以外の部分が磁性材料で形成されていてもよい。
一方、高周波の場合、カーカスコード14cは、非磁性材料又は磁性材料のいずれで構成されていても、良好な受電が可能である。
カーカス14は、主にトレッド部13を構成する部分が、受電の際に送電装置40と受電装置30との間に位置するため、カーカス14の材料をこのように適切化することは、受電効率向上への寄与が高い。
カーカスコード14cが、非磁性材料で形成される場合、カーカスコード14cは、例えば、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、及びアラミド等の、任意の樹脂材料、並びにその他の任意の非磁性材料で構成することができる。
カーカス14は、ラジアル構造でもよいし、あるいは、バイアス構造でもよい。なお、カーカス14は、カーカスコード14cを用いることなく、全体を上述した樹脂材料等によって、一体に形成してもよい。また、カーカス14は、トレッド部13を構成する部分を含む一部分のみが、非磁性材料で形成され、それ以外の部分が磁性材料を含んで形成されていてもよい。
【0039】
トレッド部13におけるカーカス14のタイヤ径方向外側には、トレッド部13を補強するベルト15が設けられている。ベルト15のタイヤ径方向外周側には、トレッドゴムが設けられている。
ベルト15は、例えば、タイヤ径方向に積層された1枚以上(図2の例では、2枚)のベルト層15a、15bによって構成することができる。図2において一部拡大して示すように、各ベルト層15a、15bは、1本又は複数本のベルトコード15cと、ベルトコード15cを被覆する被覆ゴム15rと、を含んでいる。ベルトコード15cは、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。
低周波の場合、ベルトコード15cは、非磁性材料で形成されるとよい。これにより、仮にベルトコード15cが磁性材料(例えば、スチール)で形成された場合に比べて、受電効率を向上できる。あるいは、ベルトコード15cは、ベルト15のうち、トレッド部13を構成する部分を含む一部分のみが、非磁性材料で形成され、それ以外の部分が磁性材料で形成されていてもよい。
一方、高周波の場合、ベルトコード15cは、非磁性材料又は磁性材料のいずれで構成されていても、良好な受電が可能である。
ベルト15は、そのほとんど又は全部がトレッド部13に位置しており、受電の際に送電装置40と受電装置30との間に位置するため、ベルト15の材料をこのように適切化することは、受電効率向上への寄与が高い。
ベルトコード15cが、非磁性材料で形成される場合、ベルトコード15cは、例えば、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、及びアラミド等の、任意の樹脂材料、並びにその他の任意の非磁性材料で構成することができる。
なお、ベルト15は、ベルトコード15cを用いることなく、全体を上述した樹脂材料等によって、一体に形成してもよい。また、ベルト15は、トレッド部13を構成する部分を含む一部分のみが、非磁性材料で形成され、それ以外の部分が磁性材料を含んで形成されていてもよい。
【0040】
一対のビード部11は、ビードコア11Aと、ビードフィラ11Bと、をそれぞれ有している。図2において一部拡大して示すように、ビードコア11Aは、周囲をゴムにより被覆された複数のビードワイヤ11cを備える。ビードワイヤ11cは、モノフィラメント又は撚り線で形成することができる。ビードフィラ11Bは、ゴム等で構成され、ビードコア11Aに対してタイヤ径方向外側に位置している。本実施形態では、ビードフィラ11Bは、タイヤ径方向外側に向けて厚みが減少している。ただし、タイヤ10は、ビードフィラ11Bを設けない構造とすることができる。ビード部11は、タイヤ10をリムに装着したときに、タイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向外側においてリムに接するように構成される。
ビード部11は、受電の際に送電装置40及び受電装置30よりもタイヤ幅方向外側に位置する傾向にあるため、トレッド部13よりは、受電効率への影響が少ない部分である。
したがって、低周波の場合、ビードワイヤ11cは、非磁性材料又は磁性材料(例えば、スチール)のいずれで形成されても、良好な受電が可能である。
また、高周波の場合、ビードワイヤ11cは、非磁性材料又は磁性材料のいずれで構成されていても、良好な受電が可能である。
ビードワイヤ11cが、非磁性材料で形成される場合、ビードワイヤ11cは、例えば、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、及びアラミド等の、任意の樹脂材料、並びにその他の任意の非磁性材料で構成することができる。
【0041】
サイドウォール部12は、受電の際に送電装置40及び受電装置30よりもタイヤ幅方向外側に位置する傾向にあるため、トレッド部13よりは、受電効率への影響が少ない部分である。
したがって、低周波の場合、サイドウォール部12は、非磁性材料(例えば、ゴム)のみで形成されていても、あるいは、磁性材料を含んで形成されていても、良好な受電が可能である。なお、サイドウォール部12が磁性材料を含んで形成される場合、送電装置40から受電装置30に伝送される磁界が、サイドウォール部12よりもタイヤ幅方向外側に存在し得る金属及び他の磁界の影響によって減衰するのを抑制でき、受電効率を向上できる。
一方、高周波の場合、サイドウォール部12は、非磁性材料(例えば、ゴム)のみで形成されていても、あるいは、磁性材料を含んで形成されていても、良好な受電が可能である。
サイドウォール部12に含まれ得る磁性材料は、例えば、フェライトが挙げられる。
【0042】
タイヤ10は、インナーライナー16を有している。インナーライナー16は、タイヤ10の内壁面を覆うように配置されている。インナーライナー16は、タイヤの赤道面CLにおいてタイヤ径方向に積層された複数のインナーライナー層によって構成することができる。インナーライナー16は、例えば、空気透過性の低いブチル系ゴムで構成される。ブチル系ゴムには、例えばブチルゴム、及びその誘導体であるハロゲン化ブチルゴムが含まれる。インナーライナー16は、ブチル系ゴムに限られず、他のゴム組成物、樹脂、又はエラストマで構成することができる。
【0043】
〔ホイールの構成〕
次に、上述した本発明の一実施形態に係る無線受電システム1に使用される、本発明の一実施形態に係るホイール20の構成について、図3を参照しつつ、さらに詳細に説明する。図3には、本実施形態のホイール20をタイヤ幅方向に沿って切断した、タイヤ幅方向断面図が示されている。
【0044】
本発明の発明者は、送電装置40から送信される電力の周波数(ひいては、電力源から送電装置40へ供給される交流電流の周波数、送電装置40から送信される交流磁界の周波数、並びに、受電装置30によって受電される電力の周波数)に応じて、ホイール20の構造を適切化することにより、受電効率を向上できることを、新たに見出した。
より具体的に、本発明の発明者は、図1の例のように受電装置30がホイール20よりもタイヤ径方向内側に配置された場合において、低周波の場合は、ホイール20が、主に送電装置40と受電装置30との間に位置する部分において、磁性材料(例えば、スチール)を含んでいると、磁性材料を含んでいない場合に比べて、受電の際に電力のロスが顕著に大きくなることを、新たに見出した。そして、本発明の発明者は、低周波の場合は、ホイール20が、主に送電装置40と受電装置30との間に位置する部分において、磁性材料をなるべく含まないようにすることにより、受電の際の電力のロスを抑制し、受電効率を向上できることを、新たに見出した。
さらに、本発明の発明者は、図1の例のように受電装置30がホイール20よりもタイヤ径方向内側に配置された場合において、高周波の場合は、ホイール20が、主に送電装置40と受電装置30との間に位置する部分において、磁性材料(例えば、スチール)を含んでいても、磁性材料を含んでいない場合とほぼ同等に、受電の際の電力のロスが無いことを、新たに見出した。そして、本発明の発明者は、高周波の場合は、ホイール20が、主に送電装置40と受電装置30との間に位置する部分において、磁性材料を含んでいてもいなくても、受電の際の電力のロスを抑制でき、良好な受電が可能になることを、新たに見出した。
以下に説明するホイール20の構成は、このような知見に基づくものである。
【0045】
本明細書において、ホイール20の説明をするにあたって、「タイヤ径方向」、「タイヤ幅方向」、「タイヤ周方向」というときは、ホイール20にタイヤ10を組み付けた状態におけるタイヤ径方向、タイヤ幅方向、タイヤ周方向を、それぞれ指す。
【0046】
図3に示すように、ホイール20は、円筒状のリム部21と、リム部21のタイヤ径方向内側に設けられ、車両2のハブ2Aに支持固定されるディスク部22と、を有している。
図1の例において、ホイール20は、リム部21のタイヤ径方向内側に、即ち、リム部21及びディスク部22で囲まれた空間に、受電装置30を収容している。
【0047】
リム部21には、タイヤ幅方向外側から、1対のフランジ23(インナーフランジ23A、アウターフランジ23B)と、1対のビードシート24(インナービードシート24A、アウタービードシート24B)と、ウェル25と、が設けられている。ビードシート24には、タイヤ10のビード部11が装着される。フランジ23は、タイヤ10のビード部11を側面から支えるために、ビードシート24からタイヤ径方向外側かつタイヤ幅方向外側に延びている。ウェル25は、タイヤの脱着を容易にさせるために、1対のビードシート24の間でタイヤ径方向内側に向かって凹形状を呈している。そのため、ウェル25は、ビードシート24との境界からウェル25の底面まで、タイヤ幅方向内側に向かうほど、タイヤ径方向内側に向かって下がっていく傾斜面を有している。さらに、ビードシート24には、タイヤ幅方向内側に1対のハンプ26(インナーハンプ26A、アウターハンプ26B)が設けられている。ハンプ26は、タイヤ10のビード部11がウェル25に落ちるのを防ぐために、タイヤ径方向外側に突出している。
低周波の場合、リム部21は、一部又は全部が非磁性材料で形成されるとよい。これにより、仮にリム部21が磁性材料(例えば、スチール)のみで形成される場合に比べて、受電効率を向上できる。
一方、高周波の場合、リム部21は、非磁性材料又は磁性材料のいずれで構成されていても、良好な受電が可能である。
リム部21は、図1の例のように受電装置30がホイール20よりもタイヤ径方向内側に配置された場合において、受電の際に送電装置40と受電装置30との間に位置する傾向にあるため、リム部21の材料をこのように適切化することは、受電効率向上への寄与が高い。
リム部21の少なくとも一部が、非磁性材料で形成される場合、そのような非磁性材料としては、例えば、樹脂材料がよい。
リム部21は、例えば、タイヤ10を装着した状態で、タイヤ10のトレッド部13と対向する部分が、非磁性材料で形成され、それよりタイヤ幅方向外側の部分が、磁性材料(例えば、スチール)で形成されていてもよい。これによって、低周波の場合、仮にリム部21の全体が磁性材料で形成される場合に比べて、受電効率を向上できる。
【0048】
ホイール20のリム部21には、更にタイヤ10を装着した際に、タイヤ10の内腔に空気等の気体を充填するためのバルブ27が設けられている。
【0049】
ディスク部22は、径方向内端部を構成する円環状の取付部22Aと、取付部22Aからタイヤ径方向外側に延在している複数本のスポーク22Bと、が設けられている。取付部22Aは、車両2のハブ2Aに結合固定される部位であって、ハブ2Aと取付部22Aを固定するボルト等を挿入するために、タイヤ幅方向に貫通する取付孔を有している。スポーク22Bのタイヤ径方向外側の端部は、リム部21のタイヤ径方向内側の面の端部に、一体として結合されている。
ディスク部22は、受電の際に送電装置40及び受電装置30よりもタイヤ幅方向外側に位置する傾向にある。
したがって、低周波の場合、ディスク部22は、非磁性材料のみで形成されていても、あるいは、磁性材料を含んで形成されていても、良好な受電が可能である。なお、ディスク部22が磁性材料を含んで形成される場合、送電装置40から受電装置30に伝送される磁界が、ディスク部22よりもタイヤ幅方向外側に存在し得る金属及び他の磁界の影響によって減衰するのを抑制でき、受電効率を向上できる。
一方、高周波の場合、ディスク部22は、非磁性材料のみで形成されていても、あるいは、磁性材料を含んで形成されていても、良好な受電が可能である。
ディスク部22の一部又は全部を構成し得る磁性材料は、例えば、スチール又はフェライトが挙げられる。
また、ディスク部22の一部又は全部を構成し得る非磁性材料は、例えば、樹脂材料が好適である。樹脂材料は、軽量であるという利点を有する。
【0050】
ホイール20のディスク部22には、スポーク22Bのタイヤ幅方向外側を覆うホイールカバー28が設けられている。ホイールカバー28は、受電の際に送電装置40及び受電装置30よりもタイヤ幅方向外側に位置する傾向にある。
したがって、低周波の場合、ホイールカバー28は、非磁性材料のみで形成されていても、あるいは、磁性材料を含んで形成されていても、良好な受電が可能である。なお、ホイールカバー28が磁性材料を含んで形成される場合、送電装置40から受電装置30に伝送される磁界が、ホイールカバー28よりもタイヤ幅方向外側に存在し得る金属及び他の磁界の影響によって減衰するのを抑制でき、受電効率を向上できる。
一方、高周波の場合、ホイールカバー28は、非磁性材料のみで形成されていても、あるいは、磁性材料を含んで形成されていても、良好な受電が可能である。
ホイールカバー28の一部又は全部を構成し得る磁性材料は、例えば、スチール又はフェライトが挙げられる。
また、ホイールカバー28の一部又は全部を構成し得る非磁性材料は、例えば、樹脂材料が好適である。
【0051】
以下、本発明の一実施形態に係る無線受電システム1の変形例を説明する。図4には、本発明の一実施形態に係る無線受電システム1の変形例を、タイヤ幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図が示されている。当該無線受電システム1の変形例は、図1に示した無線受電システム1と比べて、ホイール20に収容されたインホイールモータ4をさらに備えている点で異なる。
当該無線受電システム1の変形例において、図1に示した無線受電システム1と共通する部材・部位には同一の符号を付しており、それらの説明は省略する。
【0052】
図4の例において、インホイールモータ4は、ハブと一体化して、ホイール20内に設置されており、タイヤ10及びホイール20を回転駆動させるように構成されている。インホイールモータ4は、図4に示すように、ホイール20に取り付けられた状態で、その一部がホイール20よりもタイヤ幅方向外側に位置していてもよい。
図4の例において、受電装置30は、インホイールモータ4に取り付けられている。インホイールモータ4は、自動車等の車両2(全体は、図示しない)のドライブシャフト2Bに取り付けられている。ただし、受電装置30は、上述のとおり、タイヤ・ホイール組立体3の内部において、タイヤ10に対応するタイヤ幅方向領域内、かつ、タイヤ10のトレッド部13よりもタイヤ径方向内側である限り、任意の位置に取り付けることができる。
受電装置30の具体的な取り付け位置は、例えばリム部21のタイヤ径方向外側に取り付けてもよい。受電装置30をリム部21の径方向外側に取り付ける際には、ホイール20は、磁性材料又は非磁性材料のどちらで形成されてもよい。
また、受電装置30は、リム部21のタイヤ径方向内側に取り付けてもよい。受電装置30をリム部21の径方向内側に取り付ける際には、ホイール20は、非磁性材料で形成されることが望ましい。
【0053】
電力変換回路32は、受電コイル30に生じた電力を直流電力に変換し、導電線等を介して、蓄電部33、或いは、インホイールモータ4に直流電力を供給する。蓄電部33は、受電コイル30に生じた電力を蓄える。蓄電部33は、例えば、キャパシタであるが、これに限られず、蓄電池等の任意の蓄電装置とすることができる。蓄電部33がキャパシタである場合、蓄電池に比べて短時間で充放電を行うことができる。そのため、キャパシタである蓄電部33は、道路に設けられた送電装置40の上を車両2が走行する際に受電コイル30に生じた電力を蓄積するような、高い即応性を求められる状況において、有利である。
このような構成によって、受電装置30で受電した電力を、インホイールモータ4の回転駆動に用いることができる。
【0054】
なお、本発明の無線受電システム、タイヤ・ホイール組立体、及び、タイヤは、上述した各例のものに限られず、様々な変形例が可能である。
【0055】
例えば、送電装置40から受電装置30への電力の供給は、電磁誘導方式以外の任意の方式によって行われてよい。例えば、送電装置40から受電装置30への電力の供給は、電界結合方式によって行われてもよい。
【0056】
また、タイヤ・ホイール組立体3及びタイヤ10は、車両2以外の、タイヤ付きの任意の移動体(例えば、二輪車、車いす、カート等)にも、取り付けられることができる。その場合、タイヤ10は、カーカス14及び/又はベルト15を有していなくてもよい。
【0057】
また、上述の各例において、タイヤ10とリム部21との間には、空気が充填されるものとして説明したが、この限りではない。例えば、タイヤ10とリム部21との間には、窒素等の気体を充填することができる。また、例えば、タイヤ10とリム部21との間には、気体に限らず、液体、ゲル状物質、又は粉粒体等を含む、任意の流体を充填することができる。
【0058】
また、上述の各例において、タイヤ10は、インナーライナー16を備えるチューブレスタイヤであるものとして説明したが、この限りではない。例えば、タイヤ10は、チューブを備えるチューブタイプタイヤであってもよい。また、例えば、タイヤ10は、上述した樹脂材料によって全体又は一部を形成され、リム部21との間に気体を充填させずに用いられるエアレスタイヤであってもよい。
【0059】
上述の各例において、タイヤ10は、タイヤ10の断面幅SWが165(mm)未満である場合は、タイヤ10の断面幅SWと外径ODとの比SW/ODは、0.26以下であり、タイヤ10の断面幅SWが165(mm)以上である場合には、タイヤ10の断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)は、
OD(mm)≧2.135×SW(mm)+282.3(mm)
(以下、「関係式(1)」と称する)
を満たすことが好ましい。
上記比SW/OD又は関係式(1)を満たすことにより、タイヤ10の外径ODに対してタイヤ10の断面幅SWが相対的に小さくなり、空気抵抗を低減し、また、断面幅が狭い分、車両スペースを確保することができ、特にタイヤの車両装着内側近傍に駆動部品の設置スペースを確保することができる。
また、上記比SW/OD又は関係式(1)を満たすことにより、タイヤ10の断面幅SWに対してタイヤ10の外径ODが相対的に大きくなり、転がり抵抗を低減し、また、タイヤ10の大径化によって車輪軸が高くなり、床下のスペースが拡大されるため、車両のトランク等のスペースや、駆動部品の設置スペースを確保することができる。
以上のように、上記比SW/OD又は関係式(1)を満たすことにより、給電された電気エネルギーに対して低燃費性を達成することができ、また、車両スペースを大きく確保することもできる。
また、タイヤ10は、タイヤ10の断面幅SW(mm)及び外径OD(mm)が、
OD(mm)≧-0.0187×SW(mm)+9.15×SW(mm)-380(mm)
(以下、「関係式(2)」と称する)
を満たすことが好ましい。
上記関係式(2)を満たすことにより、タイヤ10の外径ODに対してタイヤの断面幅SWが相対的に小さくなり、空気抵抗を低減し、また、断面幅が狭い分、車両スペースを確保することができ、特にタイヤ10の車両装着内側近傍に駆動部品の設置スペースを確保することができる。
また、上記関係式(2)を満たすことにより、タイヤ10の断面幅SWに対してタイヤの外径ODが相対的に大きくなり、転がり抵抗を低減し、また、タイヤ10の大径化によって車輪軸が高くなり、床下のスペースが拡大されるため、車両のトランク等のスペースや、駆動部品の設置スペースを確保することができる。
以上のように、上記関係式(2)を満たすことにより、給電された電気エネルギーに対して低燃費性を達成することができ、また、車両スペースを大きく確保することもできる。
上述の各例では、タイヤ10は、上記比SW/OD及び/又は関係式(2)を満たすことが好ましく、あるいは、上記関係式(1)及び/又は関係式(2)を満たすことが好ましい。
【0060】
なお、上述の各例では、タイヤ10は、内圧が250kPa以上であるときに、上記比SW/OD及び/又は関係式(2)を満たすことが好ましく、あるいは、上記関係式(1)及び/又は関係式(2)を満たすことが好ましい。
【0061】
上述の各例では、タイヤ10は、内圧250kPa以上で使用されることが好ましい。この場合、特に、タイヤ10は、内圧が250kPa以上であるときに、上記比SW/OD及び/又は関係式(2)を満たすもの、あるいは、上記関係式(1)及び/又は関係式(2)を満たすものであると、好適である。これにより、タイヤの転がり抵抗値とタイヤ重量とを共に低減することができる。よって、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。
【0062】
上述の各例において、タイヤ10は、ビードフィラ11Bのタイヤ幅方向断面積S1が、ビードコア11Aのタイヤ幅方向断面積S2の1倍以上8倍以下であると、好適である。これにより、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。
なお、カーカスをタイヤ幅方向内側及び外側から挾持する、挟み込みビードコア構造である場合には、当該カーカスの幅方向内側及び外側のビードコアの合計体積をS2とする。
ビードフィラ11Bの断面積S1を上記の範囲とすることにより、高剛性部材であるビードフィラの体積を小さくして、タイヤの縦バネ係数を低減し、乗り心地性を向上させることができる。また、ビードフィラを軽量化して、タイヤを軽量化することもでき、従って、タイヤの転がり抵抗値がさらに低減される。
特に、上記関係式(1)又は関係式(2)を満たす、狭幅・大径タイヤにおいては、ベルトの張力剛性が高く、タイヤサイド部の張力剛性がベルト対比で低くなるため、上記のようにビードフィラの断面積S1を所定の範囲とすることによる縦バネ係数の低減効果が非常に高くなる。
ここで、ビードフィラ11Bのタイヤ幅方向断面積S1を、ビードコア11Aのタイヤ幅方向断面積S2の8倍超とすると、高剛性部材であるビードフィラの体積が大きくなり、タイヤの縦バネ係数が十分に低減されず、乗り心地性が低下してしまうおそれがある。
一方で、ビードフィラ11Bのタイヤ幅方向断面積S1を、ビードコア11Aのタイヤ幅方向断面積S2の1倍未満とすると、ビード部の剛性が著しく低下し、横バネ係数が減少しすぎて、操縦安定性を確保することができなくなるおそれがある。
【0063】
上述の各例において、タイヤ10は、ビードフィラ11Bのタイヤ径方向中央位置におけるタイヤ幅方向の幅をBFW(図2)とし、ビードコア11Aのタイヤ幅方向の最大幅をBDW(図2)とするとき、
0.1≦BFW/BDW≦0.6
を満たすことが好ましい。これにより、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。
比BFW/BDWを0.6以下とすることにより、ビードフィラ高さを維持しつつもビードフィラの体積を減少させることにより、タイヤ回転方向に対する剛性を確保しつつも、縦バネ係数を低減させて、乗り心地性を向上させ、また、タイヤを軽量化することができる。
一方で、比BFW/BDWを0.1以上とすることにより、ビード部の剛性を確保して、横バネ係数を維持し、操縦安定性をより確保することができる。
【0064】
上述の各例において、タイヤ10は、ビードフィラ11Bのタイヤ径方向の高さをBFH(図2)とし、タイヤのセクションハイト(タイヤ断面高さ)をSH(図2)とするとき、
0.1≦BFH/SH≦0.5
を満たすことが好ましい。これにより、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。
上記比BFH/SHを0.5以下とすることにより、高剛性部材であるビードフィラの径方向高さを小さくして、タイヤの縦バネ係数を効果的に低減し、乗り心地性を向上させることができる。
一方で、上記比BFH/SHを0.1以上とすることにより、ビード部の剛性を確保して、横バネ係数を維持し、操縦安定性をより確保することができる。
ここで、タイヤセクションハイトSHとは、タイヤをリムに組み込み、タイヤを装着する車両毎に規定される内圧を充填したときの無負荷状態でのタイヤの外径とリム径との差の1/2をいうものとする。
【0065】
ビードフィラ11Bのタイヤ径方向の高さBFH(図2)は、45mm以下とすることが好ましい。これにより、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。
【0066】
上述の各例において、タイヤ10は、タイヤ最大幅部におけるサイドウォール部12のゲージTs(図2)と、ビードコア11Aのタイヤ径方向中心位置におけるビード幅Tb(ビード部11のタイヤ幅方向の幅、図2)との比Ts/Tbが、15%以上60%以下であると、好適である。これにより、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。
なお、「タイヤ最大幅部」とは、リムにタイヤを組み込み、無負荷状態としたときの、タイヤ幅方向断面内の最大幅位置をいうものとする。
ゲージTsはゴム、補強部材、インナーライナーなどすべての部材の厚みの合計となる。
またビードコアがカーカスによって複数の小ビードコアに分割されている構造の場合には、全小ビードコアのうち幅方向最内側端部と最外側端部の距離をTbとすればよい。
比Ts/Tbを上記の範囲とすることにより、タイヤ荷重時の曲げ変形の大きいタイヤ最大幅部における剛性を適度に低下させて、縦バネ係数を低減して乗り心地性を向上させることができる。
すなわち、上記比Ts/Tbが60%超であると、タイヤ最大幅部におけるサイドウォール部12のゲージが大きくなり、サイドウォール部12の剛性が高くなって縦バネ係数が高くなってしまうおそれがある。一方で、上記比Ts/Tbが15%未満であると、横バネ係数が低下し過ぎて、操縦安定性が確保できなくなるおそれがある。
【0067】
上述の各例において、タイヤ10は、タイヤ最大幅部におけるサイドウォール部12のゲージTs(図2)が、1.5mm以上であることが好ましい。これにより、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。
1.5mm以上とすることにより、タイヤ最大幅部における剛性を適度に保って、横バネ係数の低下を抑え、操縦安定性をより確保することができる。
【0068】
上述の各例において、タイヤ10は、ビードコア11Aの径Tbc(ビードコアのタイヤ幅方向の最大幅、図2)が、3mm以上16mm以下であることが好ましい。これにより、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。
3mm以上とすることにより、リムフランジ上での曲げ剛性及びねじれ剛性を確保しつつ、軽量化を実現することができ、一方で、16mm以下とすることにより、重量増大を抑えつつ、操縦安定性を確保することができる。
【0069】
上述の各例において、タイヤ10は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大荷重を負荷した際、タイヤ10の接地面積が、8000mm以上であることが好ましい。これにより、タイヤの転がり抵抗値の低減とタイヤ重量の低減とを両立させることができ、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。また、タイヤ軸力を確保して車両の安定性や安全性を高めることができる。
【0070】
上述の各例において、タイヤ10は、ベルトコード15cのヤング率が40000MPa以上であることが好ましい。これにより、カーカス構造やベルト剛性を適切化して、高内圧でも使用可能なタイヤの強度を確保することができる。また、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。
【0071】
上述の各例において、タイヤ10は、インナーライナー16の厚さが0.6mm以上であることが好ましい。これにより、高内圧状態での空気漏れを抑制することができる。また、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。
【0072】
上述の各例において、タイヤ10は、タイヤ最大幅部におけるサイドウォール部12のゲージTs(図2)と、カーカスコードの径Tc(図2)との比Ts/Tcが、4以上12以下であると、好適である。これにより、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。
比Ts/Tcを上記の範囲とすることにより、タイヤ荷重時の曲げ変形の大きいタイヤ最大幅部における剛性を適度に低下させて、縦バネ係数を低減して乗り心地性を向上させることができる。
すなわち、上記比Ts/Tcが12超であると、タイヤ最大幅部におけるサイドウォール部4のゲージが大きくなり、この部分の剛性が高くなって縦バネ係数が高くなってしまうおそれがある。一方で、上記比Ts/Tcが4未満であると、横バネ係数が低下しすぎて、操縦安定性が確保できなくなるおそれがある。
【0073】
上述の各例において、タイヤ10は、タイヤ最大幅部における、カーカスコード14cの表面からタイヤ外面までのタイヤ幅方向の距離をTa(図2)とするとき、距離Taとカーカスコードの径Tc(図2)との比Ta/Tcが2以上8以下であることが好ましい。これにより、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。
上記比Ta/Tcを8以下とすることにより、タイヤ最大幅部におけるサイドウォール部12のゲージを小さくして、サイドウォール部12の剛性を低下させて、縦バネ係数を低減し、乗り心地性をより向上させることができる。一方で、上記比Ta/Tcを2以上とすることにより、横バネ係数を確保して、より操縦安定性が確保することができる。
なお、「Ta」(図2)は、タイヤ最大幅部において、幅方向最外側のカーカスコード14cの表面からタイヤ外面までのタイヤ幅方向の距離をいう。
すなわち、カーカス折り返し部14Bがタイヤ最大幅部より径方向外側まで延びている場合には、カーカス折り返し部14Bをなす部分のカーカスコード14cの表面からタイヤ外面までのタイヤ幅方向の距離をTaとする。
【0074】
上述の各例において、タイヤ10は、カーカスコード14cの径Tc(図2)が、0.2mm以上1.2mm以下であることが好ましい。これにより、給電効率と低燃費性を好適に両立させることができる。
1.2mm以下とすることにより、カーカスコード径Tcに対するサイドウォール部のゲージTsを小さくして、縦バネ係数を低減することができ、一方で、0.2mm以上とすることにより、カーカスコード径Tcに対するサイドウォール部のゲージTsを確保して、横バネ係数を大きくして操縦安定性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の無線受電システム、タイヤ・ホイール組立体、及び、タイヤは、例えば、車両、二輪車、車いす、カート等、タイヤ付きの任意の移動体に好適に使用できるものである。車両としては、例えば、乗用車、トラック、バス、農業用車両(トラクター等)、工事用又は建設用車両(ダンプカー等)等があり、乗用車が特に好適である。
【符号の説明】
【0076】
1:無線受電システム、 2:車両、 2A:ハブ、 2B:ドライブシャフト、 3:タイヤ・ホイール組立体、 4:インホイールモータ、 10:タイヤ、 11:ビード部、 11c:ビードワイヤ、 11A:ビードコア、 11B:ビードフィラ、 12:サイドウォール部、 13:トレッド部、 14:カーカス、 14c:カーカスコード、 14r:被覆ゴム、 14A:カーカス本体部、 14B:カーカス折り返し部、 15:ベルト、 15a、15b:ベルト層、 15c:ベルトコード、 15r:被覆ゴム、 16:インナーライナー、 20:ホイール、 21:リム部、 22:ディスク部、 22A:取付部、 22B:スポーク、 23:フランジ、 24:ビード―シート、 25:ウェル、 26:ハンプ、 27:バルブ、 28:ホイールカバー、 30:受電装置(受電コイル)、 32:電力変換回路、 33:蓄電部、 34:制御部、 40:送電装置(送電コイル)
図1
図2
図3
図4