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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】搬送装置及び画像検査装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/14 20060101AFI20231013BHJP
   G01N 21/86 20060101ALI20231013BHJP
   B65H 29/24 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B65H7/14
G01N21/86
B65H29/24 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019150485
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2020037486
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2018161641
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】川井 宗明
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-265091(JP,A)
【文献】特開2017-005491(JP,A)
【文献】特開2004-338006(JP,A)
【文献】特開2016-172599(JP,A)
【文献】特開2017-154890(JP,A)
【文献】特開2000-001239(JP,A)
【文献】特開2014-177339(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0366296(US,A1)
【文献】特開2010-111507(JP,A)
【文献】特許第5437515(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00-5/38
B65H 7/00-7/20
B65H 29/12-29/24
B65H 29/32
B65H 29/52
B65H 43/00-43/08
B41J 29/00-29/70
G03G 15/00
G01N 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被搬送物を搬送する搬送面が上面側となるように配置された第1搬送部と、
シート状の被搬送物を搬送する搬送面が下面側となるように被搬送物の搬送方向に沿って前記第1搬送部の前記搬送面と間をおいて隣り合うように配置された第2搬送部と、
前記第1搬送部と前記第2搬送部の間に設けられた中間ガイド板と、
前記第1搬送部に近い前記第2搬送部の一方の端部の下方に設けられ、被搬送物の先端部が垂れ下がらないように搬送方向の上流側から下流側へ被搬送物を受け渡す垂れ下がり防止部材と、
を具備することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
シート状の被検査物を搬送する搬送面が上面側となるように配置された第1搬送部と、シート状の被検査物を搬送する搬送面が下面側となるように被検査物の搬送方向に沿って前記第1搬送部の前記搬送面と間をおいて隣り合うように配置された第2搬送部と、前記第1搬送部に搬送される被検査物の表面を検査する第1検査部と、前記第2搬送部に搬送される被検査物の裏面を検査する第2検査部とを有する画像検査装置であって、
前記第1搬送部と前記第2搬送部の間に設けられた中間ガイド板と、前記第1搬送部に近い前記第2搬送部の一方の端部の下方に設けられ、被検査物の先端部が垂れ下がらないように搬送方向の上流側から下流側へ被検査物を受け渡す垂れ下がり防止部材と、有することを特徴とする画像検査装置。
【請求項3】
前記垂れ下がり防止部材が、被検査物の搬送方向と直交する軸方向について櫛歯状に分割されたローラ部を有する垂れ下がり防止ローラであることを特徴とする請求項2に記載の画像検査装置。
【請求項4】
前記第1検査部が取り付けられて前記第1搬送部に対して位置決めされる第1支持部と、
前記第1支持部に設けられ、前記第1検査部に対する前記第1搬送部による被検査物の搬送方向を調整する第1搬送方向調整手段と、
前記第2検査部が取り付けられて前記第2搬送部に対して位置決めされる第2支持部と、
前記第2支持部に設けられ、前記第2検査部に対する前記第2搬送部による被検査物の搬送方向を調整する第2搬送方向調整手段と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の画像検査装置。
【請求項5】
前記第1搬送部と前記第2搬送部のうち、被検査物の搬送方向について上流側にある搬送部の上流側の端部に隣接して、前段から搬送されてくる被検査物の斜行を補正する斜行補正ローラを設けたことを特徴とする請求項2に記載の画像検査装置。
【請求項6】
前記第1搬送部において相対的に下流側に配置された前記第1検査部と、前記第2搬送部において相対的に上流側に配置された前記第2検査部の少なくとも一方が、前記搬送面に平行な被検査物の幅方向について移動可能であることを特徴とする請求項2に記載の画像検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の被検査物を2台の搬送部で一方向に搬送しつつ、被検査物の表裏両面に形成された画像を高精度で検査できる画像検査装置と、この画像検査装置に好適に適用できる搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シートの表裏両面に画像を形成する機能を備えた画像形成装置においては、シートを搬送しながらシートの表裏両面の画像を検査する必要性が生じる場合がある。そのような場合、シートに形成された画像を撮像するカメラやセンサを1台とし、シートを搬送する経路に反転部を設け、センサで表の画像を検査した後、シートを反転させて再びセンサを通過させて裏面を検査する構成をとることができる。しかし、このように反転部でシートを搬送して裏返す手法は、機構が複雑かつ大型になるという問題がある。
【0003】
特許文献1には画像形成装置の発明が開示されている。この画像形成装置はジャムリカバリ装置を備えており、先頭のジャムシートが、シート検査装置150よりも下流側にある場合は、ユーザからの印刷再開の指示を条件に、先頭のジャムシートに形成されていた画像から印刷を再開させるものである。
【0004】
この画像形成装置は、カメラユニット230を有しているが、このカメラユニット230には、上流から下流へ一方向にシートを搬送するシート搬送パス223が設けられ、その上下の同一位置に2台のカメラ231,232が対向するように配置されている。すなわち、1台のカメラと搬送経路の反転部でシートの表裏両面を検査する構成とは異なり、カメラユニット230では、シートは反転することなく一方向に搬送され、その間に2台のカメラ231,232が、搬送されるシートの上面及び下面の各画像をそれぞれ読み取る。シート検査装置150はカメラユニット230から送られたシートの撮影画像を用いてシートに印刷された画像を検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-31963号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された画像形成装置のカメラユニットでは、シート搬送パスを挟んで上下の同一位置に2台のカメラが対向して配置されており、シートの同一箇所の表裏両面を2台のカメラで撮像するようになっている。このため、シート搬送パスのカメラが設けられた位置では、シートの表裏両面をカメラに対して十分な面積で露出させる必要がある。ところが、搬送されているシートの表裏両面を大きく露出した状態にするため、シート搬送パスのカメラが配置された箇所の上下両面に大きな開口を設けると、搬送されるシートの案内・保持が不十分となり、シートの位置が搬送中に変動するため、カメラによる撮像の精度が低下する可能性があるという問題があった。
【0007】
本願発明者等は、このような従来の技術及びその課題を発見した後、この課題を解決するため、鋭意研究を続行した。その結果、シート状の被検査物を反転させる複雑な機構を用いる必要がなく、被検査物を一方向に安定して搬送することができ、かつその間に被検査物の表裏両面を必要な精度で検査できる従来にない新規な画像検査装置についての着想を得た。
【0008】
この画像検査装置は、シート状の被検査物を搬送する搬送面を上面側にして配置された上流側の第1搬送部と、被検査物を搬送する搬送面を下面側にして第1搬送部の搬送面に隣接して配置された第2搬送部と、第1搬送部に搬送される被検査物の表面を検査する第1検査部と、第2搬送部に搬送される被検査物の裏面を検査する第2検査部とを有している。
【0009】
しかしながら、本願発明者等は、この画像検査装置の研究をさらに進めた結果、この画像検査装置について、さらなる解決すべき課題を発見するに至った。それは、この画像検査装置において、上流側の第1搬送部から下流側の第2搬送部に被検査物を受け渡す時に、被検査物の先端部が下方に垂れ下がり、下流側の第2搬送部に被検査物を受け渡すことに失敗する場合があるという課題である。
【0010】
本発明は、従来の技術の課題を解決した本発明者等の画像形成装置の発明において、本発明者等が発見したさらなる課題を解決すべく、これをさらに改良したものであって、シート状の被検査物を2台の搬送部で一方向に搬送しつつ、被検査物の表裏両面に形成された画像を2台の検査部によって高精度で検査できる画像検査装置において、2台の搬送部における被検査物の受け渡しを確実にすることを目的としている。また、シート状の被検査物を2台の搬送部で一方向に搬送する搬送装置において、2台の搬送部における被検査物の受け渡しを確実にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された搬送装置は、
シート状の被搬送物を搬送する搬送面が上面側となるように配置された第1搬送部と、
シート状の被搬送物を搬送する搬送面が下面側となるように被搬送物の搬送方向に沿って前記第1搬送部の前記搬送面と間をおいて隣り合うように配置された第2搬送部と、
前記第1搬送部と前記第2搬送部の間に設けられた中間ガイド板と、
前記第1搬送部に近い前記第2搬送部の一方の端部の下方に設けられ、被搬送物の先端部が垂れ下がらないように搬送方向の上流側から下流側へ被搬送物を受け渡す垂れ下がり防止部材と、
を具備することを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載された画像検査装置は、
シート状の被検査物を搬送する搬送面が上面側となるように配置された第1搬送部と、シート状の被検査物を搬送する搬送面が下面側となるように被検査物の搬送方向に沿って前記第1搬送部の前記搬送面と間をおいて隣り合うように配置された第2搬送部と、前記第1搬送部に搬送される被検査物の表面を検査する第1検査部と、前記第2搬送部に搬送される被検査物の裏面を検査する第2検査部とを有する画像検査装置であって、
前記第1搬送部と前記第2搬送部の間に設けられた中間ガイド板と、前記第1搬送部に近い前記第2搬送部の一方の端部の下方に設けられ、被検査物の先端部が垂れ下がらないように搬送方向の上流側から下流側へ被検査物を受け渡す垂れ下がり防止部材と、有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された搬送装置によれば、
被搬送物は、第1搬送部の上面側に例えば、吸着や接着で保持されて安定的に搬送される。第1搬送部の下流側の端部と、第2搬送部の上流側の端部との間では、被搬送物は垂れ下がり防止部材によって上流側から下流側へ受け渡され、被搬送物の先端部は垂れ下がることがない。このため、被搬送物の先端部は、第2搬送部の搬送面に確実に保持されて下流へ向けてそのまま安定的に搬送される。このように、被搬送物は第1搬送部から第2搬送部にかけて連続的に安定して搬送される。
【0014】
請求項2に記載された画像検査装置によれば、
被検査物は、第1搬送部の上面側に例えば、吸着や接着で保持されて安定的に搬送される。第1搬送部の下流側の端部と、第2搬送部の上流側の端部との間では、被検査物は垂れ下がり防止部材によって上流側から下流側へ受け渡され、被検査物の先端部は垂れ下がることがない。このため、被検査物の先端部は、第2搬送部の搬送面に確実に保持されて下流へ向けてそのまま安定的に搬送される。このように、被検査物は第1搬送部から第2搬送部にかけて連続的に安定して搬送されるため、第1検査部及び第2検査部における検査では所期の精度が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の画像検査装置を含む画像形成システムの全体構成図である。
図2】実施形態の画像検査装置の模式的構造図である。
図3図2の模式構像図にさらに検査部の支持部を加えて表した画像検査装置の模式的構造図である。
図4】実施形態の画像検査装置の正面図である。
図5】実施形態の画像検査装置を斜め上方から見た斜視図である。
図6】実施形態の画像検査装置を斜め下方から見た斜視図である。
図7】実施形態の画像検査装置の上流側の吸着搬送部及び検査部等を斜め上方から見た斜視図である。
図8】実施形態の画像検査装置の吸着搬送部と検査部を斜め下方から見た斜視図である。
図9】実施形態の画像検査装置の上流側の保持部及び検査部を斜め下方から見た斜視図である。
図10】実施形態の画像検査装置の上流側の保持部及び吸着搬送部を斜め上方から見た分解拡散斜視図である。
図11】実施形態の画像検査装置において、吸着搬送部による被検査物の検査部に対する搬送方向を調整する搬送方向調整手段の模式的斜視図である。
図12】実施形態の画像検査装置において、吸着搬送部による被検査物の検査部に対する搬送方向を調整する搬送方向調整手段の模式的平面図である。
図13】実施形態の画像検査装置の第1の変形例を示す模式的正面図である。
図14】実施形態の画像検査装置の第2の変形例を示す模式的正面図である。
図15】実施形態の画像検査装置の第3の変形例を示す模式的正面図である。
図16】実施形態の画像検査装置の第4の変形例を示す模式的正面図である。
図17】実施形態の画像検査装置の第5の変形例を示す模式的正面図である。
図18】実施形態の画像検査装置の第6の変形例を示す模式的正面図である。
図19】実施形態の画像検査装置の第7の変形例において上流側の吸着搬送部及び検査部等を斜め上方から見た斜視図である。
図20】実施形態の画像検査装置の第8の変形例を示す模式的構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《画像形成システムの基本構造について》
本発明の実施形態を図1図12を参照して説明する。
図1に構造を簡略化して模式的に示すように、本発明の実施形態は、印刷装置100と、画像検査装置200と、後処理装置300を含む画像形成システムに関するものであり、特に、後に詳述するように画像検査装置200の構造に特徴を有している。
【0017】
印刷装置100は、インク色が異なる複数のインクジェットヘッド101と、画像検査装置200の被検査物であるシート状の媒体(印刷用紙)を搬送する搬送経路102と、インクジェットヘッド101の直下に搬送経路102と接続して設けられた吸着搬送部103とを有している。印刷用紙の供給手段等、その他の構成の図示は省略している。後処理装置300は、印刷装置100で画像が印刷され、画像検査装置200で当該画像が検査された印刷用紙に対し、種々の後処理を加えて排出する装置である。後処理の内容としては、ソート・スタック等の仕分け作業、ステープル、合紙の挿入、各種態様の紙折り、封筒への挿入等があり、目的に応じて必要な機能を備えた後処理装置300を設けることができる。
【0018】
《画像検査装置の基本構造について》
まず、図2及び図3を参照して画像検査装置200の基本的構成を説明する。
この画像検査装置は、シート状の被検査物(シート状の媒体、すなわち印刷用紙)の搬送手段として2台の吸着搬送部(第1吸着搬送部1及び第2吸着搬送部2)を有している。まず図2に示す範囲で、第1吸着搬送部1を簡易に説明する。第1吸着搬送部1は、下流側の駆動ローラ3と、上流側の従動ローラ4と、その他の2個の小従動ローラ5に搬送ベルト6を掛け回したベルトコンベアを有している。第1吸着搬送部1の上側の搬送ベルト6の下面には、後に他図に示すように(例えば図5参照)、樹脂製の中間板7が接しており、この中間板7の下面には板材であるプラテン8が接している。搬送ベルト6と中間板7とプラテン8には、それぞれ多数の貫通孔が形成されている。さらに、プラテン8の下面には図示しないチャンバが取り付けられ、チャンバの内部は、チャンバ下部に取り付けられた図示しないファンで吸引されて負圧を維持するようになっている。従って、ファンが駆動されれば、空気は搬送ベルト6の上方から、搬送ベルト6と中間板7とプラテン8の各貫通孔を経てチャンバに吸い込まれるため、被検査物は搬送ベルト6の搬送面に吸着され、搬送ベルト6を駆動すれば被検査物を搬送することができる。
なお、前述した上流側及び下流側とは、吸着搬送部による被検査物の搬送方向における上流側及び下流側の意味で使用しており、以下の説明でも同様である。
このように、この画像検査装置200の吸着搬送部では、印刷用紙等のシート状の媒体である枚葉紙を搬送対象としている。2枚の枚葉紙が重なった構造を有する袋物などとは異なり、枚葉紙は搬送ベルト6に全面で吸着して搬送ベルト6に対して上下方向の位置が搬送面内に固定され、安定した状態で搬送ベルト6の移動によって搬送される。このため、搬送される枚葉紙は高さ方向の位置が変動することはなく、その位置精度は高い。従って、吸着搬送部によって搬送される枚葉紙を検査する手段として、カメラ等に比べて被写界深度が浅く、所期の読取精度を得るために高い配置精度が求められるCIS等を採用した場合には、CIS本来の高い読取精度を十分に発揮できる。カメラ及びCISについては後述する。
【0019】
図2に示すように、図中左から右に向かう被検査物の搬送方向において、上流側にあるのが第1吸着搬送部1であり、下流側にあるのが第2吸着搬送部2である。第1吸着搬送部1及び第2吸着搬送部2は機能的に同一の構造であるが、第1吸着搬送部1は、被検査物を吸着して搬送する搬送面が上面側となるように水平に配置されている。従って、第1吸着搬送部1によって搬送される被検査物は表面を上方に向けて搬送される。これに対し、第2吸着搬送部2は、第1吸着搬送部1とは上下が逆となるように配置されている。すなわち、第2吸着搬送部2は、被検査物を吸着して搬送する搬送面が下面側となるように水平に配置されている。従って、第2吸着搬送部2によって搬送される被検査物は裏面を下方に向けて搬送される。第1吸着搬送部1と第2吸着搬送部2は、各搬送面が略一致するように互いに隣接して配置されており、被検査物を水平な一搬送経路に沿って連続的に搬送することができる。
【0020】
図2に示すように、この画像検査装置は、被検査物の検査手段として2台の検査部(第1検査部11及び第2検査部12)を有している。第1検査部11は、第1吸着搬送部1の上流側の端部の上方に、搬送ベルト6に対向するよう下向きに設けられている。第2検査部12は、第2吸着搬送部2の上流側の端部の下方に、搬送ベルト6に対向するよう上向きに設けられている。これら第1検査部11及び第2検査部12は同じ仕様のCIS(密着イメージセンサ、Contact Image Sensor)であるが、被検査物に形成された画像を検査のために読み取る検査部としては、CISに限らず、その他の原理又は構造のセンサでもよいし、後述するようにカメラを用いることもできる。
【0021】
図2に示すように、この画像検査装置200は、第1吸着搬送部1の上流側の隣に、上流の印刷装置100から送られた被検査物を搬送面に導く導入ガイド板13を備えている。また、第1吸着搬送部1の従動ローラ4の上方には、導入ガイド板13を経て導入された被検査物の先端の浮き上がりを押さえ込む押さえローラ14が設けられている。押さえローラ14は、搬送ベルト6に従動して回転している。
【0022】
図2に示すように、この画像検査装置200は、第1吸着搬送部1と第2吸着搬送部2の間に、第1吸着搬送部1から送られた被検査物を第2吸着搬送部2の搬送面に導く中間ガイド板15を備えている。また、第2吸着搬送部2の従動ローラ4の下方には、中間ガイド板15を経て導入された被検査物の先端の垂れ下がり防止する垂れ下がり防止部材として、後に他図を参照して説明するように(例えば図6及び図8等参照)、垂れ下がり防止ローラ16が設けられている。
【0023】
図2に示すように、この画像検査装置200は、第2吸着搬送部2の下流側の隣に、第2吸着搬送部2で搬送された被検査物を排出する排出ガイド板17が設けられている。
【0024】
次に、図3を参照して、図2には示していない画像検査装置200の基本的構成を説明する。前述した第1検査部11及び第2検査部12は、第1吸着搬送部1及び第2吸着搬送部2に対してそれぞれ位置決めされる第1支持部21及び第2支持部22に取り付けられている。第1支持部21及び第2支持部22は機能的には実質的に同じ構造であるが、互いに上下を逆にして配置された第1吸着搬送部1と第2吸着搬送部2の各搬送面に対向するように、互いに上下を逆にして第1吸着搬送部1と第2吸着搬送部2の各搬送面に対面するように配置されている。また、後に他図を参照して説明するように(例えば図5等参照)、第1支持部21及び第2支持部22は、それぞれ長支持軸23の両端において、装置の図示しないフレームに支持点A,Bで回動可能に支持されている。図3において長支持軸23の中心軸は紙面に垂直であり、第1支持部21及び第2支持部22はこの中心軸を中心として左右両方向に回動可能な状態でフレームに支持されている(図5に示す矢印を参照して後に説明する)。また、第1支持部21及び第2支持部22は、それぞれ短支持軸24によって、装置の図示しないフレームに支持点Cで回動可能に支持されている。図3において短支持軸24の中心軸は紙面に平行かつ略水平であり、第1支持部21及び第2支持部22はこの中心軸を中心として紙面手前方向及び奥行き方向の両方向に回動可能な状態でフレームに支持されている(図5に示す矢印を参照して後に説明する)。詳細は後述するが、第1支持部21及び第2支持部22の支持点A、B、Cにおける支持状態は固定的なものではなく、フレームに外力が加わって変形した場合には、第1支持部21及び第2支持部22が前述した2つの方向に回動可能であることにより、第1支持部21及び第2支持部22が変形したり、両者の配置関係に有害な変化が生じないようになっている。
【0025】
以上説明した基本構造を備えた実施形態の画像検査装置200によれば、被検査物は、第1吸着搬送部1の上面側である搬送面に吸着保持されて安定的に搬送され、次に第2吸着搬送部2に受け渡され、その下面側である搬送面に吸着保持されて安定的に搬送される。このように被検査物は吸着搬送されるので搬送中に位置や姿勢が不安定化することがなく、被検査物を反転させる複雑な機構を用いずとも、被検査物を一方向に安定して搬送しながら、その表裏両面を2台の検査部11,12によって必要な精度で検査することができる。
【0026】
また、この画像検査装置200によれば、各検査部11,12は各吸着搬送部1,2の上流側端部の近傍に配置されているため、各吸着搬送部1,2の搬送面の大部分は開放された状態にあり、障害物がない。このため、この装置を管理する管理者又はこの装置の保守等を行う作業者は、各吸着搬送部1,2の搬送面に容易にアクセスできる。従って、「従来の技術」の項で説明したように、特許文献1に開示された画像形成装置のカメラユニットのように被検査物の搬送経路102が検査部に挟まれていないので、搬送中の被検査物にジャムが発生しても問題箇所に容易に手を差し入れて詰まった被検査物を除去することができる。
【0027】
また、この画像検査装置200によれば、各検査部11,12は各吸着搬送部1,2の上流側端部の近傍に配置されているため、検査部11,12による画像の検出結果を下流側で利用する場合には時間的な余裕が得られて好都合である。例えば、画像検査装置200の後段にある後処理装置300において、検査結果が好ましくない被検査物をNG品として選別する場合には、NG品か否かを判定するために検査部11,12からの情報はなるべく早く得たい。本実施形態によれば、検査部11,12が吸着搬送部1,2の上流側にあるため、これらが下流側にある場合に比べれば、制御部はより早く検査結果を取得して必要な後処理を遅滞なく実行することができる。
【0028】
《画像検査装置の構造の詳細について》
次に、以上説明した基本構造を有する画像検査装置200のさらに具体的な構成を図4図12を参照して説明する。まず、第1検査部11及び第2検査部12がそれぞれ取り付けられた第1支持部21及び第2支持部22と、これら支持部21,22を吸着搬送部1,2に位置決めする構造等について、図4図9を参照して説明する。
【0029】
特に図5及び図9に表れるように、第1支持部21は、第1吸着搬送部1の平面形状に略合致した略正方形状の外形を有する枠体である。第1支持部21の4つの壁部のうち、搬送方向に直交する上流側の壁部の内側には、搬送方向と直交する方向(被検査物の幅方向)を長手方向とする第1検査部11が取り付けられている。第1検査部11の検査素子は搬送ベルト6の方向に向けられている。
【0030】
特に図9に表れるように、第1支持部21の4つの隅部には、第1吸着搬送部1と対向する側に、所定の寸法に設定された支持脚部25が、それぞれ突出して設けられている。支持脚部25には、縦方向に溝26が形成されている。特に図4及び図5に表れるように、第1支持部21の4本の支持脚部25は、第1吸着搬送部1の中間板7からはみ出したプラテン8の上面であって搬送ベルト6を挟む各2カ所の位置(合計4カ所)にそれぞれ当接している。そして第1支持部21は、以下に説明し、特に図4に距離Dで示すように、第1吸着搬送部1を支持脚部25に押し付けて保持することにより、前記第1検査部11と第1吸着搬送部1の搬送面との距離を一定に保持している。
【0031】
特に図4図5及び図7に表れるように、まず第1支持部21には、第1吸着搬送部1と反対側であって、搬送方向と平行な一方の壁部に、搬送方向と平行に巻き取り軸27が設けられている。特に図5及び図7に表れるように、巻き取り軸27の両端には、各2個の滑車28a,28bが設けられている。また第1支持部21には、第1吸着搬送部1と反対側であって、搬送方向と平行な他方の壁部の2つの隅部に、それぞれ滑車29,29が設けられている。巻き取り軸27の滑車28a,28bには吊線30が基端部を連結されて巻かれている。巻き取り軸27の両端の各2個の滑車のうち、外側の2つの滑車28a,28aの2本の吊線30,30は、搬送方向と直交する方向に引き出され、巻き取り軸27と反対にある2つの滑車29,29にそれぞれ掛け回され、2本の支持脚部25,25に形成された2本の溝26,26に沿って下方の第1吸着搬送部1に導かれ、2本の支持脚部25,25が当接しているプラテン8の2カ所に、その各先端部で連結されている。また、巻き取り軸27の両端の各2個の滑車のうち、内側の2つの滑車28b,28bの2本の吊線30,30は、直下にある2本の支持脚部25,25に形成された2本の溝26,26に沿って下方に導かれ、2本の支持脚部25,25が当接しているプラテン8の2カ所に、その各先端部で連結されている。
【0032】
第1支持部21には、巻き取り軸27が設けられた壁とは搬送ベルト6を挟んで反対側の壁部に、360度回動自在のハンドル31が設けられている。詳細は図示しないが、このハンドル31の回転軸は、ベルト、プーリ、ウォーム及びホイール等の伝達機構を介して巻き取り軸27に連動連結されている。従って、ハンドル31の操作によって巻き取り軸27を所定方向に回動させれば、吊線30を滑車28a,28bに巻き取ってプラテン8を持ち上げ、第1支持部21の4本の支持脚部25の先端に所要の力で押し付けて位置決めすることができる。ここで、吊線30は支持脚部25の溝26内に配置されてプラテン8に連結されているため、吊線30がプラテン8を引き上げる力は、支持脚部25が当接している位置に直接働く。このため、プラテン8(すなわち第1吸着搬送部1)を支持脚部25に固定する作用は確実となる。なお、吊線30で第1吸着搬送部1を持ち上げる力は、各部の重量等にもよるが、例えば、1本の吊線30について7N、4本で合計28Nとすることができる。
【0033】
このように、第1検査部11を搭載した第1支持部21は、4本の支持脚部25の先端で規定される仮想平面と一致するようにプラテン8を位置決めし、これを所要の力で当該位置に固定している。このため、第1支持部21の所定位置に取り付けられた第1検査部11と、これに対向する被検査物の搬送面とは平行になり、両者間の距離は予め定めた一定の値となる。また、仮にプラテン8が本来の平坦面でなく、平面度に若干の問題があったとしても、プラテン8を吊線30で引っ張って支持脚部25に当接させる力により、プラテン8の平面度を矯正することも可能である。
【0034】
本実施形態の検査部はCISであるものとしたが、一般にCISは被写界深度が浅く、所期の読取精度を得るために高い配置精度が求められる。例えば、12mmの距離に設定する際の許容誤差は±0.2mm程度である。従って、CISと被検査物の搬送面の位置決めには高い精度が必要となる。しかしながら、本実施形態によれば、第1支持部21に設けた4本の支持脚部25の各先端面で構成される仮想平面に対し、これと平行となるように第1検査部11を第1支持部21に取り付けておき、その第1支持部21の各支持脚部25をプラテン8に突き当てて仮想平面内に固定すれば、プラテン8と第1検査部11とは平行になり、第1吸着搬送部1によって搬送される被検査物の第1検査部11による画像検査は所期の精度で適正に行うことができる。
【0035】
吸着搬送部1,2を吊線30で引いて支持部21,22の支持脚部25に突き当てて位置決めする機構として、第1支持部21及び第1吸着搬送部1を説明したが、第2支持部22及び第2吸着搬送部2も機能的には略同一の機構であるため、第1支持部21等の説明を援用してその説明は省略する。但し、図5の右方に示すように、第2支持部22では、上方にある第2吸着搬送部2を4本の吊線30で下方に引き下げ、上方に突出した4本の支持脚部25の上端面に突き当てている点で、第1支持部21等とは力の方向等が異なる。なお、実施形態の支持部21,22は、4本の支持脚部25の先端で規定される仮想平面と一致するようにプラテン8を位置決めしたが、支持脚部25の先端を通過する面で仮想平面を一義的に決定できればよいので、支持脚部25は3本以上あればよい。また、5本以上としてプラテン8の位置決め精度をさらに高めてもよい。
【0036】
特に図4図7に表れるように、第1支持部21において、搬送方向と平行な一対の壁部の上流側には、搬送方向に直交する長支持軸23が渡設されている。長支持軸23の両端は壁部の外方に突出しており、図5中において長支持軸23の周囲に両方向の矢印で示すように、画像検査装置200の図示しないフレームに回動可能に連結されている。すなわち、第1支持部21は、この長支持軸23を中心として搬送ベルト6の下流側又は上流側が上下に揺れるような向きで回動可能となるように取り付けられている。また、第1支持部21において、搬送方向と直交する一対の壁部の下流側の中央部には、上方に延びる連結板32の下端が固定されている。当該連結板32の上端は、画像検査装置200の図示しないフレームに対し、搬送方向と平行な短支持軸24によって回動可能に連結されている。短支持軸24の中心軸は長支持軸23の中心軸と直交しており、かつ略水平であって、図5中において短支持軸24の周囲に両方向の矢印で示すように、第1支持部21は短支持軸24を中心として紙面斜め手前方向及び斜め奥行き方向の両方向に回動可能な状態でフレームに支持されている。従って、長支持軸23の両端が、フレームに対して第1支持部21を回動可能に支持する前記支持点A,B(図3参照)であり、短支持軸24が、フレームに対して第1支持部21を回動可能に支持する前記支持点C(図3参照)である。第2支持部22も機能的には第1支持部21と略同一の構造でフレームに取り付けられているため、第1支持部21等の説明を援用してその説明は省略する。このように、第1支持部21の支持点A、B、Cにおける支持状態は固定的なものではない。従って、フレームに何らかの力が外力が加わって変形した場合には、第1支持部21は、図5中に示した直交する2つの面内でそれぞれ回動可能な支持状態であることによって、フレームから伝達される力を逃がして可及的に姿勢を維持し、第1支持部21が変形したり、第2支持部22との配置関係に有害な変化が生じないようになっている。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、検査部11,12を搭載した支持部21,22が、本体のフレームに対して回動可能な非固定の状態で3点において支持されているが、この構造によれば次のような効果が得られる。すなわち、平面度が低い床面に画像検査装置200を設置した場合や、平面度が低い床面に設置したことに対応して画像検査装置200の4本の支持脚のアジャスタにより高さ調整を行ったが、これが完全ではなく支持脚の高さに差が生じたような場合には、何れの場合も画像検査装置200は必要な水平状態から外れた傾斜姿勢となる。このため、装置のフレームには外力が加わり、歪みが生じる。フレームが歪めば、支持部21,22をフレームに直接固定している場合には、第1に、支持部21,22にも歪みが生じ、支持部21,22に取り付けた検査部11,12と、被検査物の搬送面との位置関係が変化してしまう。また、第2に、第1検査部11と第2検査部12の相互的な位置関係も変化してしまう。その結果、検査部11,12が被検査部を誤検知するという問題が生じる。
【0038】
しかしながら、本実施形態によれば、検査部11,12を搭載した支持部21,22が、本体のフレームに対して非固定の状態で3点支持されているため、仮に装置のフレームに無用な外力が加わって歪みが生じたとしても、支持部21,22にはこの歪みが伝達されにくく、支持部21,22に取り付けた検査部11,12と吸着搬送部1,2との正規の位置関係は保持され、また適正に設定されている第1検査部11と第2検査部12の相互的な位置関係にも変化は生じにくい。その結果、検査部11,12が被検査物を誤検知するという問題は生じない。
【0039】
特に図6及び図8に表れるように、第2吸着搬送部2の従動ローラ4の下方に相当する位置、すなわち第2吸着搬送部2の上流側の端部の下方の位置には、垂れ下がり防止ローラ16が設けられている。垂れ下がり防止ローラ16は、図2を参照して先に説明したように、中間ガイド板15を経て導入された被検査物の先端の垂れ下がり防止する垂れ下がり防止部材である。垂れ下がり防止ローラ16は、被検査物の搬送方向と直交する軸方向について櫛歯状に分割されたローラ部を有している。上流の第1吸着搬送部1から第2吸着搬送部2に被検査物が送り込まれてきたとき、被検査物の先端が自重又は下方へのカールによって垂れ下がる前に、当該先端は垂れ下がり防止ローラ16に突き当たってこれに乗り上げ、搬送ベルト6との間に挟まれて第2吸着搬送部2による吸着搬送が開始される。又は被検査物の先端が垂れ下がる前に、当該先端は垂れ下がり防止ローラ16と搬送ベルト6の間に挟まれて第2吸着搬送部2による吸着搬送が開始される。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、第1吸着搬送部1と第2吸着搬送部2の間における被検査物の受け渡し位置に垂れ下がり防止ローラ16が設けられているが、この構造によれば次のような効果が得られる。すなわち、本実施形態の画像検査装置200では、第1吸着搬送部1の入口において第1検査部11が被検査物の上面の画像を読み取り、その読み取りタイミングとそれ以降の搬送長さから、第2検査部12が下面の画像を読み込み始めるタイミングを設定している。検査部11,12であるCISで検出した画像は、元の画像データと照合して適否を判断するが、CISで検出する画像の精細度は300~600dpiと高精細度である。このため、第1吸着搬送部1と第2吸着搬送部2の間で被検査物を受け渡す際に、被検査物の先端に垂れ下がりが生じると、第2吸着搬送部2に被検査物が進入するタイミングにずれが生じ、第2検査部12で読み取りの誤検知が発生してしまう。しかしながら、本実施形態によれば、第2吸着搬送部2の入口に垂れ下がり防止ローラ16が設けられているため、被検査物の先端が自重で垂れ下がるという問題は生じず、第1検査部11での読み取りタイミング等を基準にした第2検査部12での読み取りタイミング設定にずれが生じることはなく、誤検知の問題は生じない。
【0041】
また、被検査物の先端部を、搬送方向と平行な視線で見た場合、波打ち状の変形(コックリング)が認められる場合がある。このような変形はCIS等の検査部による検査の精度を低下させ、誤検知を誘発するため、なるべく矯正することが好ましい。この実施形態では、垂れ下がり防止ローラ16が櫛歯状のローラ部で被検査物を搬送ベルト6との間に挟むため、被検査物のコックリングは、その山が潰されて谷の深さが小さくなる方向に形状が補正され、結果として、その変形を周期のより小さい波状に変えるため、コックリングが矯正されたのと同様の結果となり、検査部11,12による誤検知を防ぐ効果が得られる。
【0042】
特に図9図12に表れるように、第1支持部21には、第1吸着搬送部1による被検査物の搬送方向を調整する第1搬送方向調整手段が設けられている。第1支持部21において、搬送方向と平行な一対の壁部の一方側には固定ピン35が下方に突出して設けられている。固定ピン35は、プラテン8に設けられた位置決め孔36に挿入される。また、搬送方向と平行な一対の壁部の他方側には可動ピン37が下方に突出して設けられている。可動ピン37は、第1支持部21に回動可能に取り付けられた円筒形の操作部材38の下面に偏芯して取り付けられており、プラテン8に設けられた長孔39に挿入される。操作部材38の周面には、操作部材38を回動させる操作ハンドル40が設けられている。操作部材38の周囲には、操作部材38が回動した角度を示す目盛り板41が取り付けられている。
【0043】
図10に示す状態から、吊線30(図10には不図示)で第1吸着搬送部1を吊り上げて第1支持部21の4本の支持脚部25に当接させると、固定ピン35は位置決め孔36に挿入され、可動ピン37は長孔39に挿入されて図7に示す状態となる。これは第2吸着搬送部2及び第2検査部12も含めた全体としては図5に示す状態であり、通常使用時を示している。このような通常使用時において、第1検査部11と第1吸着搬送部1の平行度が不十分である等の原因で第1検査部11の検査精度に問題が生じた等の場合には、第1吸着搬送部1による被検査物の搬送方向を修正する必要が生じる。
【0044】
第1搬送方向調整手段を用いて第1吸着搬送部1による被検査物の搬送方向を修正する場合には、まず吊線30が第1吸着搬送部1を吊り上げている力を適当に減じ、支持脚部25に対してプラテン8が滑動可能な状態とする。そして、図11及び図12に示すように、操作ハンドル40によって操作部材38を必要な角度だけ回転させ、可動ピン37を必要量だけ旋回させる。操作ハンドル40の操作量に応じた角度の変動は目盛り板41から読み取ることができる。このような操作により、第1吸着搬送部1のプラテン8は固定ピン35を中心として最大角度θだけ向きを調整することができる。調整後、吊線30による吊り上げ力を適当に増して支持脚部25に対してプラテン8を固定する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、検査部11,12を搭載した支持部21,22に対する吸着搬送部1,2の向きを調整し、被検査物の搬送方向を変える機構が設けられている。このため、何らかの原因で検査部11,12と搬送方向の位置関係に問題が生じた場合、操作ハンドル40の操作によって検査部11,12と搬送方向の位置関係を修正し、誤検知の発生を防止することができる。また、第1吸着搬送部1で被検査物の斜行が発生していると、第2吸着搬送部2に被検査物を受け渡す際に被検査物の先端が垂れ下がり防止ローラ16に到達するタイミングが遅れ、前述した垂れ下がり防止ローラ16による垂れ下がり防止の効果が減殺される可能性がある。しかし、操作ハンドル40の操作で上流側である第1吸着搬送部1の搬送方向を調整して被検査物の斜行を修正し、第1吸着搬送部1と第2吸着搬送部2の各搬送方向を一致させておけば、前述した垂れ下がり防止ローラ16による垂れ下がり防止の効果を確実に担保することができる。
【0046】
なお、第2支持部22にも、第1支持部21と同様、第2吸着搬送部2による被検査物の搬送方向を調整する第2搬送方向調整手段が設けられているが、第1搬送方向調整手段と機能上同一の構成であるため、第1搬送方向調整手段の記述を援用して繰り返しの説明を避けるものとする。
【0047】
《実施形態の画像検査装置の変形例について》
本発明の実施形態における変形例を図13図18を参照して説明する。
図13は第1の変形例を示す模式的正面図である。この画像検査装置200aは、第1吸着搬送部1及び第2吸着搬送部2が、被検査物の搬送方向に沿ってそれぞれ上流側及び下流側に配置されている点は、実施形態と同様であるが、第2吸着搬送部2の搬送面が、第1吸着搬送部1の搬送面に対して下流側に向けた下方への傾斜角度を有している。
【0048】
実施形態では、第1吸着搬送部1と第2吸着搬送部2の各搬送方向は一致しているものとしたが、そのような構成では受け渡される被検査物の先端が垂れて第2吸着搬送部2に適正に吸着されず、受け渡しがうまくいかない場合がありうる。そのような場合には、第1変形例のように、第2吸着搬送部2の下流側の端部を若干下方に下げて前記傾斜角度を設けるものとする。傾斜角度を設定するためには、第2吸着搬送部2を吊っている吊線30の張力を、上流側に比べて下流側を弱めることで、傾斜角度の調整を行うことができる。
【0049】
具体的な傾斜角度の例を説明する。例えば坪量が200g/cm2 以上の厚めの用紙等は腰が強いため、受け渡し時に垂れにくい。このため、第1吸着搬送部1の搬送面と第2吸着搬送部2の搬送面の間の角度を、両吸着搬送部の下方について測定した角度で、180度以下の約177度とすることが好ましい。すなわち、この場合に第2吸着搬送部2の下流側の端部を下げる角度は3度程度である。例えば坪量が40g/cm2 程度の薄紙の場合は、腰が弱いため受け渡し時に垂れやすい。このため、第1吸着搬送部1の搬送面と第2吸着搬送部2の搬送面の間の角度を、両吸着搬送部の下方について測定した角度で、約170度とすることが好ましい。すなわち、第2吸着搬送部2の下流側の端部を下げる角度は10度程度である。
【0050】
この画像検査装置200aによれば、第1吸着搬送部1から第2吸着搬送部2へ搬送されてきた被検査物の先端部は、仮に紙質等の理由で第1吸着搬送部1の搬送面から下方に垂れ下がっていたとしても、下流下方に向けて傾斜している第2吸着搬送部2の搬送面に押し付けられるので確実に吸着されて保持され、安定して下流に搬送される。
【0051】
また、この画像検査装置200aにおいて、第2吸着搬送部2の搬送面の下流側に向けた下方への傾斜角度を、被検査物に画像を形成する際の画像形成条件に応じて設定するものとしてもよい。ここで、画像形成条件としては、前述した坪量で表される被検査物の種類の他、被検査物の向き、印字量、被検査物の画像形成面内における印字範囲の配置バランス等が例示できる。これらの画像形成条件に応じて、前記傾斜角度を手動又は自動で適当な値に設定するようにしてもよい。
【0052】
図14は第2の変形例を示す模式的正面図である。
この画像検査装置200bは、第1吸着搬送部1の下流側の端部の搬送面と、第2吸着搬送部2の上流側の端部の搬送面とが、互いに重なり合っている。その他の構成は実施形態と同一である。2つの搬送面が重なり合っている部分では、2枚の搬送ベルト6,6は上下方向に0.5mm以下の間隔をおいて対面している。一例を述べれば、画像形成装置で画像が形成される用紙の厚さは厚い紙で0.2mm程度であることが多いので、仮にそのような場合であって、2枚の搬送ベルト6,6の間隔が0.5mm以下であれば被検査物の受け渡しに支障はないことになる。第2変形例によれば、上流側の第1吸着搬送部1と、下流側の第2吸着搬送部2との間に受け渡しのための機構(例えば図2に示した中間ガイド板15)が不要であり、かつ受け渡しが円滑になるという効果がある。
【0053】
図15は第3の変形例を示す模式的正面図である。
この画像検査装置200cでは、第1吸着搬送部1と第2吸着搬送部2には、それぞれ検査部としてカメラ11a,12aとCIS11b,12bが設けられているが、何れの吸着搬送部1,2においても、求められる配置精度が相対的に高い(被写界深度の浅い)CIS11b,12bを被検査物の搬送方向に関して相対的に下流側に配置し、求められる配置精度が相対的に低い(被写界深度の深い)カメラ11a,12aを同上流側に配置している。その他の構成は実施形態と同一である。吸着搬送部1,2では、搬送中の被検査物の吸着力は、搬送ベルト6の上流側だけに被検査物が吸着され、大半の孔が塞がれていないで搬送されている状態よりも、被検査物が搬送ベルト6の下流側まで吸着され、大半の孔が塞がれて搬送されている状態の方が高い。つまり、用紙にコックリングやカールがある場合、前者の方が用紙は搬送ベルトに密着し難く、後者の方が用紙は搬送ベルトに密着し易い。このため、各吸着搬送部1,2において、相対的に精度のひくい(被写界深度の深い)カメラ11a,12aと、相対的に精度の高い(被写界深度の浅い)CIS11b,12bを上述のように配置することにより、種類の異なる検査部をそれぞれの検査精度で機能させるために必要な配置精度で配置することができ、各検査部の検査精度の水準を担保することができる。
【0054】
図16は第4の変形例を示す模式的正面図である。
この画像検査装置200dは、第1吸着搬送部1と第2吸着搬送部2の間に、中間ガイド板15の下側の板体42を第2吸着搬送部2の上流側端部の下方まで延長した垂れ下がり防止部材42を有している。その他の構成は実施形態と同一である。この垂れ下がり防止部材42によれば、前述した垂れ下がり防止ローラ16(図2及び図6等参照)と同様、第1吸着搬送部1から第2吸着搬送部2に受け渡される被検査物の先端部が重力やカール等で垂れ下がるのを防止する効果が得られる。
【0055】
図17は第5の変形例を示す模式的正面図である。
この画像検査装置200eは、第1吸着搬送部1の上流側の隣部に、その上流から送られてくる被検査物の斜行を補正する斜行補正ローラ43が設けられている。斜行補正ローラ43は、停止した状態で待機しており、被検査物(印刷用紙)が突き当たった時に搬送方向に回転を開始する。被検査物の先端を検知するトップエッジセンサ44(図4及び図5参照)が斜行補正ローラ43の上流側直近に設けられており、トップエッジセンサ44が被検査物の先端を検出すると、トップエッジセンサ44からの検知信号を受けた制御部が斜行補正ローラ43を駆動する。その他の構成は実施形態と同一である。この斜行補正ローラ43によれば、上流の印刷装置100から送り込まれてくる印刷用紙(被検査物)が斜行していても、これを修正して第1検査部11に対して適正な姿勢で送り込むことができる。
【0056】
図18は第6の変形例を示す模式的正面図である。
この画像検査装置200fによれば、第1吸着搬送部1と第2吸着搬送部2には、それぞれ検査部としてCIS11b,12bが設けられているが、何れの吸着搬送部1,2においても、検査部としてのCIS11b,12bは、下流側の端部付近に配置されている。その他の構成は実施形態と同一である。吸着搬送部1,2では、搬送される被検査物の吸着力は、搬送ベルト6の上流側だけに被検査物が吸着され、大半の孔が塞がれていない状態よりも、搬送ベルト6の下流側まで被検査物が吸着され、大半の孔が塞がれている状態の方が高い。つまり、吸着搬送部1,2では、下流側に向けて搬送が進むほど、搬送されている被検査物が搬送ベルトに保持される力は高くなり、保持が安定する。このため、検査部としてのCIS11b,12bは、所期の検査精度で機能させるために必要な配置精度が高いことに鑑み、上述のように各吸着搬送部1,2の下流側に配置することとした。これによって、吸着搬送部1,2で下流側まで搬送された被検査物は十分な吸引力で搬送ベルト6に安定して保持され、CIS11b,12bによって所期の高い精度で画像を検出することができる。
被検査物の先端が搬送ベルト6の上流側にあって負圧等の吸着が低い場合には、被検査物の後端も吸着搬送部1に入っていないため吸着接着がされておらず、被検査物の搬送としては不安定状態である。しかし、被検査物の先端が吸着搬送部1の後端に達するころには、被検査物全体が吸着接着され、搬送が安定し、被検査物が高さ方向にばたつく可能性は低くなる。そして、被検査物の後端が第1吸着搬送部の下流にある第1検査部11に到着すると、例えば、被検査物の後端に働く負圧は低くなるが、被検査物の先端は下流側の第2吸着搬送部2で吸着されており、かつ、ここに達する直前まで負圧の高い状態で安定搬送がされていた状態の慣性に助けられ、被検査物の後端でのみ負圧が低くなっても、搬送としては安定した状態を維持することができる。但し、上記の慣性の助けだけでも安定した状態を維持することは可能である。
【0057】
図19は第7の変形例を示す模式的正面図である。
この画像検査装置200gは、第1吸着搬送部1と第2吸着搬送部2を備えているが、図19においては、正面の下流側の斜め上方から斜め下方を見る視線で、上流側の第1吸着搬送部1のみを示しており、下流側の第2吸着搬送部2は図示を省略している。また、第1吸着搬送部1の構成は、図19では一部の構造の図示を変更又は省略し、さらに構成部分に付すべき符合の記載を適宜省略しているが、検査部以外(例えば第1支持部21、搬送方向調整手段を構成する各部等)は先に説明した実施形態及びその変形例と実質的に同一であるため、これらの部分については原則として先行する記述を援用して説明の繰り返しを避けるものとする。なお、図19において、被検査物の搬送面は、被検査物が吸着接着される搬送ベルト6の表面であり、被検査物の搬送方向は搬送面と平行な矢印Yで示す。また、被検査物の搬送方向Yと直交する被検査物の幅方向は矢印Xで示す。
【0058】
図19に示すように、画像検査装置200gの第1吸着搬送部1では、被検査物の搬送方向Yに関して相対的に上流側(図中左側)に、第1検査部としてのCIS11bが設けられている。このCIS11bは、幅方向Xに平行な被検査物上の線状検査領域において被検査物の表面を検査する装置であり、その検査範囲は、検査対象である被検査物の画像の幅方向の長さを十分にカバーしており、搬送方向Yに並んだ多数の線状検査領域ごとに読み取った画素データから被検査物に形成された画像全体のデータを取得することができる。その被写界深度や配置高さ等は先述した通りである。
【0059】
図19に示すように、画像検査装置200gの第1吸着搬送部1では、被検査物の搬送方向Yに関してCIS11bよりも下流側(図中右側)に、第3検査部としてのカメラ11aが設けられている。このカメラ11aは、搬送面に平行な面状検査領域において被検査物の表面を検査する装置であり、例えばQRコード(登録商標)のように、搬送方向Y及び幅方向Xの両方向について目視的に有効な寸法のある所定面積の画像(例えば50mm×100mm程度の矩形の範囲)を読み取れる矩形の検査範囲を有している。その被写界深度や配置高さ等は先述した通りである。
【0060】
図19に示すように、カメラ11aはスライド式の移動機構に搭載されており、被検査物の幅方向X、すなわち被検査物の表面の線状検査領域と平行な方向に移動可能とされている。以下、この移動機構について説明する。画像検査装置200gのフレームには、第1吸着搬送部1の上方において、幅方向Xと平行に案内レール50が固定されている。案内レール50には幅方向Xに沿って移動体51が移動自在に設けられている。移動体51は、手動により任意の位置に設定される。但し、図示しない駆動源によって移動体51を移動させてもよく、その場合には上流のCIS11bからの検出情報又は制御部からの各種制御情報等により、検出すべき面状検査領域の画像の幅方向Xの位置に応じて駆動源により自動的に任意の位置に設定されるものとすることができる。さらに、操作者が通電スイッチを閉とした時のみ駆動源が作動して移動体51が移動する半自動式でもよい。移動体51の側面には固定板52の上端が取り付けられており、固定板52は案内レール50よりも下方に垂下されている。固定板52の前面の略中央には、前述したカメラ11aが取り付けられている。カメラは、フォーカスリングを回してピントを調節するレンズ部53と、矢印Zで示す回転方向にレンズ部53を回転させる回転機構部54を備えている。回転機構部54によるレンズ部53の回転可能な角度は90度である。レンズ部53のフォーカスリング及び回転機構部54は何れも手動式であり、これらを操作する際には、画像検査装置200gのフレームの前面にある開閉扉を開いて操作員が当該箇所に手を差し入れて作業を行う。カメラ11aが取り付けられた固定板52には、屈曲自在のケーブルキャリア55の一端が連結されている。ケーブルキャリア55は屈曲して180度向きを変え、その他端側は案内レール50に沿って案内レール50の一端部へ向けて配設されている。カメラ11aの制御線56はケーブルキャリア55に沿って引き回されており、図示しない制御部に接続されている。
【0061】
図示はしないが、第1吸着搬送部1に隣接して第1吸着搬送部1と上下が逆となるように第2吸着搬送部2が配置されており、この第2吸着搬送部2においても、第1吸着搬送部1のCIS11b及びカメラ11aと同様の配置で、第2検査部としてのCIS12bが相対的に上流側に配置され、第4検査部としてのカメラ12aが相対的に下流側に配置されている。なお、第2吸着搬送部2では、CIS12bと、移動機構に搭載されたカメラ12aは、第1吸着搬送部1とは逆に第2吸着搬送部2の下側に上向きに配置されており、被検査物の裏面を検査する。
【0062】
第7の変形例の画像検査装置200gによれば、被検査物の印刷画像に対する線状検査領域ごとの検査を、上流側のCIS11bによって行い、被検査物の特定位置に形成された2次元の面状検査領域の画像(例えば、バーコード画像など)の検査を、下流側のカメラ11aによって行うことができる。この場合、被検査物上に形成された面状検査領域の幅方向Xに関する位置に応じて、前述したような手動、自動又は半自動の操作によりカメラ11aの幅方向Xに関する位置を予め適切に設定しておく必要がある。また、カメラ11aの回転機構部54を操作し、被検査物上の面状検査領域の画像の形状に応じて、カメラ11aの矩形の検査範囲を縦長又は横長のうち適切な配置に予め設定しておく必要がある。なお、カメラ11aの搬送面からの高さは一定であり、しかもシート状の被検査物(枚葉紙)は搬送ベルト6の搬送面に全面で吸着して固定され、安定した状態にあるため、一度合わせたカメラ11aのピントがずれる可能性は低いが、必要に応じてカメラ11aのピントを確認してもよい。
【0063】
画像検査装置200gによれば、第1吸着搬送部1と第2吸着搬送部2の間の被検査物の受け渡し部(垂れ下がり防止ローラ16又は図16に示したような垂れ下がり防止部材42)でジャムが発生したとしても、少なくとも第1吸着搬送部1の下流側の検査部は幅方向Xに移動可能なカメラ11aであるため、当該ジャムがカメラ11aの近傍で発生した場合には、このカメラ11aを幅方向Xに移動させることによって作業スペースを確保し、手作業によるジャムの解除作業をより容易に行うことができる。
【0064】
また、画像検査装置200gによれば、吸着搬送部が搬送対象としている被検査物はシート状の枚葉紙である。従って、内部に空間を設けるために2枚の枚葉紙が重なった構造を有する袋物などを搬送する場合とは異なり、画像検査装置200gではシート状の被検査物が搬送ベルト6の搬送面に全面で吸着され、上下方向の位置が固定された状態で搬送される。従って、カメラ11aに比べて被写界深度が浅く、所期の読取精度を得るために高い配置精度が求められるCIS11bの高い読取精度を十分に発揮できる。
【0065】
また、画像検査装置200gの第1吸着搬送部1における被検査物の検査は、まず上流側において線状検査領域ごとの検査をCIS11bで行い、その後に面状検査領域の検査を下流側のカメラ11aで行う順序になっているので、上流側におけるライン単位の画像検査において被検査物の挙動異常や画像異常が検出された場合には、この異常検出をトリガーとして下流における面状検査領域の検査工程を中止し、当該被検査物に対する無駄な検査を省略することができる。異常検出があった被検査物については、画像検査装置200gの下流に分別装置又は振り分け装置を設けておき、問題のない被検査物とは別経路に分別又は振り分けして回収すればよい。なお、CIS11bによる検査で異常が検出された場合に、カメラ11aによる検査はそのまま続行させ、異常検出があった被検査物についてはその旨を検査記録として残し、後に異常検出があった被検査物を再度検査ラインに投入して画像検査をやり直してもよい。
【0066】
さらに、画像検査装置200gにおいて、被検査物が搬送中に幅方向Xについて位置ずれを起こすと、面状検査領域(例えばQRコード(登録商標))の位置に合わせて設定しておいたカメラ11aの検査範囲に面状検査領域が入ってこなくなり、検査できなくなるという問題が考えられる。しかしながら、この画像検査装置200gによれば、第1吸着搬送部1のCIS11bは、線状検査領域の両端において被検査物の幅方向Xの端縁の位置を検出することができる。従って、CIS11bが線状検査領域の検査を複数回行い、幅方向Xの同じ側にある前記端縁の位置のデータを複数個取得すれば、これらデータを入力された制御部は、これら複数のデータを比較することによって、被検査物の幅方向Xの位置がずれているか否かを直ちに判断でき、またずれている場合にはそのずれの量を直ちに算出することができる。そして、このずれ量に応じて下流にあるカメラ11aの移動機構を制御部が制御することにより、カメラ11aの幅方向Xの位置を修正し、新たな面状検査領域の位置とカメラ11aの検査範囲を合致させて面状検査領域の検査を適正に行わせることができる。
【0067】
図20は第8の変形例を示す模式的正面図である。
この画像検査装置200hによれば、第1吸着搬送部1及び第2吸着搬送部2を中心とする搬送機構の構成は、図2に示す実施形態の画像検査装置200と同一であり、対応する構成部分には図2と同一の符合を付して実施形態の記載を援用し、説明を省略する。また、検査部の種類及び数は図15に示す実施形態の第3の変形例と同一であるが、被検査物の搬送方向に沿った検査部の種類別の並び方は図15と異なる。
【0068】
すなわち、図20に示すように、この画像検査装置200hでは、搬送方向の上流側にある第1吸着搬送部1においては、先に図19を参照して説明したように上流側からCIS11b、カメラ11aの順に並んでいるが、下流側の第2吸着搬送部2においては、上流側からカメラ12a、CIS12bの順に並んでいる。すなわち、垂れ下がり防止ローラ16(又は図16に示したような垂れ下がり防止部材42)の上流側と下流側の直近に配置された2つの検査部は何れもカメラである。これらCIS11b,12bとカメラ11a,12aの構成は、本変形例よりも前で説明した通りである。但し、検査部のより具体的な配置例として、CIS11b,12bは搬送ベルト6の搬送面からの高さを24mmとし、カメラ11a,12aは広角の検査範囲を有するエリアカメラであることに鑑み搬送ベルト6の搬送面からの高さを120mmとした。また、カメラ11a,12aは、図19に示した第7の変形例と同様、スライド式の移動機構に搭載されている。移動機構の説明は、第7の変形例の説明を援用する。
【0069】
この画像検査装置200hによれば、被検査物の受け渡し部である垂れ下がり防止ローラ16(又は図16に示したような垂れ下がり防止部材42)の上流側と下流側の直近に配置された2つの検査部が何れもカメラ11a,12aであるため、垂れ下がり防止ローラ16(又は図16における垂れ下がり防止部材42)の付近でジャムが発生した場合には、垂れ下がり防止ローラ16(又は垂れ下がり防止部材42)の上流側と下流側の両方の搬送経路からカメラを装置奥側に移動させ、作業者が手を差し入れるスペースを大きくとることができるため、ジャムの解除作業は第7の変形例の画像検査装置200g(図19)の場合よりも一層容易になる。
【0070】
なお、本実施形態及びその変形例においては、第1搬送部は搬送面が上面側となるように配置されており、第2搬送部は搬送面が下面側となるように、かつ被検査物の搬送方向に沿って第1搬送部の搬送面に隣接して配置されたものとしているが、これら搬送部に対する用紙の搬送方向は特に限定していない。すなわち、例えば図2では被検査物が左から右へと搬送されるものとしているが、右から左へ搬送されてもよい。また図2において、第1搬送部1と第2搬送部2の配置を左右入れ換えてもよく、その場合においても、用紙の搬送方向は右向きと左向きの何れでもよい。
【0071】
なお、本実施形態及びその変形例における被検査物の搬送手段としては、ファンによるベルト吸引搬送を説明したが、静電による吸着搬送、ローラ搬送を用いた接着による接着搬送、その他、何らかの接着手段を用いた接着搬送を用いることもできる。接着搬送の一例であるローラ搬送を用いた接着搬送としては、例えば、自重で落下しない程度の接着力を有する接着材をローラ表面に塗布したローラ搬送手段でローラに用紙を接着させて搬送することが可能であり、これを本実施形態の吸着搬送部に代替することもできる。さらに、他の接着手段を用いた接着搬送としては、搬送ベルトに前記接着剤を塗布して搬送するベルト搬送を用いた接着搬送も使用できる。なお、これら接着搬送の場合には、搬送ベルトやローラの接着材から用紙を引き剥がす引き剥がし部を設けてもよい。このように、被検査物の搬送手段は、本実施形態のようなファンによるベルト吸引搬送に限定されない。また、搬送部1,2において、静電による吸着搬送や接着搬送の場合であっても下流側に検査部を配置するようにしてもよい。例えば、静電による吸着搬送の場合でも、下流の方が、静電吸着面積が広くなり、吸着が安定するからである。また、搬送部1,2において、複数のローラで接着搬送する場合でも、上流側においてローラ1つで接着して搬送する状態よりは、下流側においてローラ2つ以上で接着して搬送する状態の方が、吸着が安定して搬送が確実となる。
なお、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさを考慮したため、便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについては実物から変更し、模式的に表現される場合があるが、これはあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。従って、添付した図面を用いて説明する実施形態及びその変形例により、本発明が限定されることはなく、この実施形態及びその変形例に基づいて当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などの一切は全て本発明の範疇に含まれるものである。
【0072】
《実施形態及びその変形例における各態様の給紙装置とその効果について》
第1態様の吸着搬送装置は、
シート状の被搬送物を搬送する搬送面が上面側となるように配置された第1吸着搬送部と、
シート状の被搬送物を搬送する搬送面が下面側となるように被搬送物の搬送方向に沿って前記第1吸着搬送部の前記搬送面と間をおいて隣り合うように配置された第2吸着搬送部と、
前記第1吸着搬送部と前記第2吸着搬送部の間に設けられた中間ガイド板と、
前記第1搬送部に近い前記第2搬送部の一方の端部の下方に設けられ、被搬送物の先端部が垂れ下がらないように搬送方向の上流側から下流側へ被搬送物を受け渡す垂れ下がり防止部材と、
を具備することを特徴としている。
【0073】
第1態様の吸着搬送装置によれば、
被搬送物は、第1吸着搬送部1の上面側に吸着保持されて安定的に搬送される。第1吸着搬送部1の下流側の端部と、第2吸着搬送部2の上流側の端部との間では、被搬送物は垂れ下がり防止部材16,42によって上流側から下流側へ受け渡され、被搬送物の先端部は垂れ下がることがない。このため、被搬送物の先端部は、第2吸着搬送部2の搬送面に確実に吸着保持されて下流へ向けてそのまま安定的に搬送される。このように、被搬送物は第1吸着搬送部1から第2吸着搬送部2にかけて連続的に安定して搬送される。
【0074】
第2態様の画像検査装置200,200a~200fは、
シート状の被検査物を吸着して搬送する搬送面が上面側となるように配置された第1吸着搬送部1と、シート状の被検査物を吸着して搬送する搬送面が下面側となるように被検査物の搬送方向に沿って前記第1吸着搬送部1の前記搬送面と間をおいて隣り合うように配置された第2吸着搬送部2と、前記第1吸着搬送部1に搬送される被検査物の表面を検査する第1検査部11と、前記第2吸着搬送部2に搬送される被検査物の裏面を検査する第2検査部12とを有する画像検査装置であって、
前記第1吸着搬送部1と前記第2吸着搬送部2の間に設けられた中間ガイド板15と、前記第1吸着搬送部1に近い前記第2吸着搬送部2の一方の端部の下方に設けられ、被検査物の先端部が垂れ下がらないように搬送方向の上流側から下流側へ被検査物を受け渡す垂れ下がり防止部材16,42と、有することを特徴としている。
なお第1吸着搬送部1は、ローラで構成された吸着や接着を行わない搬送路でも良い。また、第2吸着搬送部2は第1吸着搬送部1と同様に被検査物の搬送面が上面側となるように配置されても良い。
【0075】
第2態様の画像検査装置200,200a~200fによれば、
被検査物は、第1吸着搬送部1の上面側に吸着保持されて安定的に搬送される。第1吸着搬送部1の下流側の端部と、第2吸着搬送部2の上流側の端部との間では、被検査物は垂れ下がり防止部材16,42によって上流側から下流側へ受け渡され、被検査物の先端部は垂れ下がることがない。このため、被検査物の先端部は、第2吸着搬送部2の搬送面に確実に吸着保持されて下流へ向けてそのまま安定的に搬送される。このように、被検査物は第1吸着搬送部1から第2吸着搬送部2にかけて連続的に安定して搬送されるため、第1検査部11及び第2検査部12における検査では所期の精度が保たれる。
【0076】
第3態様の画像検査装置200,200a~200c,200e,200fは、第2態様の画像検査装置において、
前記垂れ下がり防止部材が、被検査物の搬送方向と直交する軸方向について櫛歯状に分割されたローラ部を有する垂れ下がり防止ローラ16であることを特徴としている。
【0077】
第3態様の画像検査装置200,200a~200c,200e,200fによれば、
第1吸着搬送部1から第2吸着搬送部2に被検査物が送り込まれてきたとき、被検査物の先端が自重又は下方へのカール等によって垂れ下がる前に、当該先端は垂れ下がり防止ローラ16に突き当たってこれに乗り上げ、第2吸着搬送部2との間に挟まれて安定した吸着搬送が遅滞なく開始される。また、垂れ下がり防止ローラ16が櫛歯状のローラ部で被検査物を第2吸着搬送部2との間に挟むため、被検査物に波打ち状の変形(コックリング)がある場合には、被検査物のコックリングは、その山が潰されて谷の深さが小さくなる方向に形状が補正され、結果として、その変形は周期のより小さい波状に変えられ、コックリングが矯正されて検査部による誤検知を防ぐ効果が得られる。
【0078】
第4態様の画像検査装置200,200a~200fは、第2態様の画像検査装置において、
前記第1検査部11が取り付けられて前記第1吸着搬送部1に対して位置決めされる第1支持部21と、
前記第1支持部21に設けられ、前記第1検査部11に対する前記第1吸着搬送部1による被検査物の搬送方向を調整する第1搬送方向調整手段(35~40)と、
前記第2検査部12が取り付けられて前記第2吸着搬送部2に対して位置決めされる第2支持部22と、
前記第2支持部22に設けられ、前記第2検査部12に対する前記第2吸着搬送部2による被検査物の搬送方向を調整する第2搬送方向調整手段(35~40)と、
を有することを特徴としている。
【0079】
第4態様の画像検査装置200,200a~200fによれば、
第1搬送方向調整手段(35~40)により、第1支持部21に対して第1吸着搬送部1を移動させれば、第1検査部11に対する被検査物の搬送方向を調整することができる。また、第2搬送方向調整手段(35~40)により、第2支持部22に対して第2吸着搬送部2を移動させれば、第2検査部12に対する被検査物の搬送方向を調整することができる。従って、何らかの原因で第1検査部11及び第2検査部12と被検査物の搬送方向との位置関係に問題が生じた場合には、第1搬送方向調整手段(35~40)及び第2搬送方向調整手段(35~40)の操作によって当該位置関係を修正し、第1検査部11及び第2検査部12における誤検知の発生を防止することができる。
【0080】
第5態様の画像検査装置200eは、第2態様の画像検査装置において、
前記第1吸着搬送部1と前記第2吸着搬送部2のうち、被検査物の搬送方向について上流側にある吸着搬送部の上流側の端部に隣接して、前段から搬送されてくる被検査物の斜行を補正する斜行補正ローラ43を設けたことを特徴としている。
【0081】
第5態様の画像検査装置200eによれば、
上流から送り込まれてくる被検査物が斜行していても、斜行補正ローラ43で方向を修正して第1検査部11に対して適正な姿勢で送り込むことができる。
【0082】
第6態様の画像検査装置200gは、第2態様の画像検査装置において、
前記第1吸着搬送部において相対的に下流側に配置された前記第1検査部と、前記第2吸着搬送部において相対的に上流側に配置された前記第2検査部の少なくとも一方が、前記搬送面に平行な被検査物の幅方向について移動可能であることを特徴としている。
【0083】
第6態様の画像検査装置200gによれば、
第1吸着搬送部と第2吸着搬送部の間で被検査物のジャムが発生したとしても、第1吸着搬送部の下流側の前記第1検査部又は第2吸着搬送部の上流側の前記第2検査部の少なくとも一方は、被検査物の幅方向に移動可能であるため、当該検査部の近傍でジャムが発生した場合には、当該検査部を被検査物の幅方向に移動させることによって手作業によるジャムの解除作業をより容易に行える。
【符号の説明】
【0084】
1…第1搬送部としての第1吸着搬送部
2…第2搬送部としての第2吸着搬送部
11…第1検査部
12…第2検査部
11a,12a…吸着搬送部の検査部のうち相対的に低い配置精度が求められる一方の検査部(カメラ)
11b,12b…吸着搬送部の検査部のうち相対的に高い配置精度が求められる一方の検査部(CIS)
16…垂れ下がり防止部材としての垂れ下がり防止ローラ
21…第1支持部
22…第2支持部
35…吸着搬送部の搬送方向調整手段を構成する固定ピン
36…吸着搬送部の搬送方向調整手段を構成する位置決め孔
37…吸着搬送部の搬送方向調整手段を構成する可動ピン
38…吸着搬送部の搬送方向調整手段を構成する操作部材
39…吸着搬送部の搬送方向調整手段を構成する長孔
40…吸着搬送部の搬送方向調整手段を構成する操作ハンドル
42…垂れ下がり防止部材
43…斜行補正ローラ
50…カメラの移動機構を構成する案内レール
51…カメラの移動機構を構成する移動体
52…カメラの移動機構を構成する固定板
54…カメラの移動機構を構成する回転機構部
55…カメラの移動機構を構成するケーブルキャリア
200,200a~200g…画像検査装置
A,B,C…画像検査装置のフレームに支持部を回転可能に支持する支点
X…被検査物の幅方向
Y…被検査物の搬送方向
Z…回転機構部によるレンズ部の回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20