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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20231013BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20231013BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20231013BHJP
   H02K 5/24 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B25F5/00 G
B24B23/02
H02K9/06 A
H02K5/24 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019175934
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021049629
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】沼田 文年
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-075703(JP,A)
【文献】特開2011-104765(JP,A)
【文献】特開2007-152526(JP,A)
【文献】特開2011-010530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00 - 5/02
B24B 23/02
H02K 5/24
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを収容するハウジングと、
前記モータの駆動に伴って回転し、前記ハウジング内に前記モータの冷却風を生成するファンと、
前記ハウジングに形成され、前記ファンを収容する筒状部と、
前記ファンに対向して前記冷却風の上流側に設けられる整流部と、を含み、
前記整流部は、前記筒状部の径方向で内外に分割されて、前記径方向の外側が前記筒状部で形成され、前記径方向の内側が、前記ハウジングに組み付けられるバッフルプレートにより形成されると共に、
前記整流部における前記径方向の外側は、前記筒状部に形成され、前方へ行くに従って大径となるリング状の外側テーパ部であり、前記整流部における前記径方向の内側は、前記バッフルプレートに形成され、前方へ行くに従って大径となって前記外側テーパ部と連続状に繋がるリング状の内側テーパ部であり、前記外側テーパ部と前記内側テーパ部とにより、前方へ拡開するすり鉢状の前記整流部が形成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記バッフルプレートは、前記モータのステータに前記ステータの軸方向から当接する当接部を有することを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記バッフルプレートは、前記ハウジングにネジ止めされることで前記当接部により前記ステータを固定することを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記バッフルプレートをネジ止めするネジを通過させるネジ通過部が、前記整流部に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記ネジ通過部は、前記筒状部と前記バッフルプレートとに跨がって形成される貫通孔であることを特徴とする請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記バッフルプレートのネジ止め後に前記ネジ通過部を塞いで前記筒状部と前記バッフルプレートとの連続面を形成するスペーサが、前記ハウジングへ着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載の電動工具。
【請求項7】
前記ハウジングの外側に、弾性体を介して連結されるアウタハウジングを有し、前記スペーサは、前記弾性体の一部として形成されていることを特徴とする請求項6に記載の電動工具。
【請求項8】
前記スペーサは、前記弾性体に対して前記ハウジングを位置決めすることを特徴とする請求項7に記載の電動工具。
【請求項9】
前記ネジは、前記ハウジングの軸線と平行に前記ネジ通過部を通過し、前記バッフルプレートを貫通して前記ハウジングへねじ込まれることを特徴とする請求項4乃至8の何れかに記載の電動工具。
【請求項10】
前記ネジ及び前記ネジ通過部は、前記軸線を中心とした点対称位置に一対設けられることを特徴とする請求項9に記載の電動工具。
【請求項11】
前記弾性体はリング状であることを特徴とする請求項7に記載の電動工具。
【請求項12】
前記アウタハウジングは、一対の半割ハウジングに分割されることを特徴とする請求項7に記載の電動工具。
【請求項13】
前記ハウジングは、所定方向に延びる連結軸を介して前記アウタハウジングへ相対回転可能に連結されることを特徴とする請求項12に記載の電動工具。
【請求項14】
前記連結軸は、前記ハウジングを貫通し、両端が第2の弾性体を介して前記アウタハウジングに保持されていることを特徴とする請求項13に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ冷却用のファンを備えたグラインダ等の電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
グラインダ等の電動工具では、モータの出力軸に、モータ冷却用のファンを取り付けて、モータの駆動に伴うファンの回転により、ハウジングの外部から空気を取り込んでモータの冷却風を生成し、モータを冷却するようになっている。ファンは、ハウジングに設けられた筒状部に収容される。
この場合、ファンに吸引される冷却風をスムーズに流すために、ハウジングの筒状部には、特許文献1にも開示されているように、ファンの上流側と対向するすり鉢状の整流部を備えたバッフルプレートが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-111185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファンを収容するハウジングの筒状部は、バッフルプレートを保持するために拡開して形成される場合がある。この場合、拡開部分とバッフルプレートとが軸方向に重なる格好となってハウジングの軸長が長くなり、無駄なスペースも生じる。ハウジングに整流部を直接設けることも考えられるが、ハウジングの内面から中心側へ整流部を伸ばす必要があり、成形が困難となってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、軸方向にコンパクト且つ省スペースとなる構造で整流部を形成可能な電動工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、モータを収容するハウジングと、
モータの駆動に伴って回転し、ハウジング内にモータの冷却風を生成するファンと、
ハウジングに形成され、ファンを収容する筒状部と、
ファンに対向して冷却風の上流側に設けられる整流部と、を含み、
整流部は、筒状部の径方向で内外に分割されて、径方向の外側が筒状部で形成され、径方向の内側が、ハウジングに組み付けられるバッフルプレートにより形成されると共に、
整流部における径方向の外側は、筒状部に形成され、前方へ行くに従って大径となるリング状の外側テーパ部であり、整流部における径方向の内側は、バッフルプレートに形成され、前方へ行くに従って大径となって外側テーパ部と連続状に繋がるリング状の内側テーパ部であり、外側テーパ部と内側テーパ部とにより、前方へ拡開するすり鉢状の整流部が形成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上記構成において、バッフルプレートは、モータのステータにステータの軸方向から当接する当接部を有することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、上記構成において、バッフルプレートは、ハウジングにネジ止めされることで当接部によりステータを固定することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、上記構成において、バッフルプレートをネジ止めするネジを通過させるネジ通過部が、整流部に設けられていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、上記構成において、ネジ通過部は、筒状部とバッフルプレートとに跨がって形成される貫通孔であることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、上記構成において、バッフルプレートのネジ止め後にネジ通過部を塞いで筒状部とバッフルプレートとの連続面を形成するスペーサが、ハウジングへ着脱可能に設けられていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、上記構成において、ハウジングの外側に、弾性体を介して連結されるアウタハウジングを有し、スペーサは、弾性体の一部として形成されていることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、上記構成において、スペーサは、弾性体に対してハウジングを位置決めすることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、上記構成において、ネジは、ハウジングの軸線と平行にネジ通過部を通過し、バッフルプレートを貫通してハウジングへねじ込まれることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、上記構成において、ネジ及びネジ通過部は、軸線を中心とした点対称位置に一対設けられることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、上記構成において、弾性体はリング状であることを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、上記構成において、アウタハウジングは、一対の半割ハウジングに分割されることを特徴とする。
請求項13に記載の発明は、上記構成において、ハウジングは、所定方向に延びる連結軸を介してアウタハウジングへ相対回転可能に連結されることを特徴とする。
請求項14に記載の発明は、上記構成において、連結軸は、ハウジングを貫通し、両端が第2の弾性体を介してアウタハウジングに保持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハウジングの一部とバッフルプレートとを利用してすり鉢状の整流部が形成でき、ハウジングの軸長が長くなったり、無駄なスペースが生じたりすることがなくなる。よって、軸方向にコンパクト且つ省スペースとなる構造で整流部が形成可能となる。
特に、バッフルプレートに、ステータの軸方向からステータに当接する当接部を設ければ、バッフルプレートを利用してステータの位置決めが行える。
また、バッフルプレートを、ハウジングにネジ止めされることで当接部によりステータを固定するようにすれば、バッフルプレートの固定と同時にステータも固定できる。
また、バッフルプレートをネジ止めするネジを通過させるネジ通過部を、整流部に設ければ、ネジをハウジング及びステータに近い位置に配置でき、ハウジングのコンパクト化を維持できる。
また、ネジ通過部を、筒状部とバッフルプレートとに跨がって形成される貫通孔とすれば、整流部の形状を大きく変えることなくネジ通過部が形成可能となる。
また、バッフルプレートのネジ止め後にネジ通過部を塞いで筒状部とバッフルプレートとの連続面を形成するスペーサを、ハウジングへ着脱可能に設ければ、ネジ通過部を設けても整流部の機能を低下させることがない。
また、ハウジングの外側に、弾性体を介して連結されるアウタハウジングを設け、スペーサを、弾性体の一部として形成すれば、弾性体と共にスペーサを容易に組み付け可能となる。
また、スペーサを、弾性体に対してハウジングを位置決めするようにすれば、弾性体を利用したハウジングの位置決めが容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】グラインダの斜視図である。
図2】グラインダの平面図である。
図3】グラインダの左側面図である。
図4】グラインダの中央縦断面図である。
図5図4におけるグラインダの前側部分の拡大図である。
図6図5のA-A線断面図である。
図7】インナハウジングの弾性保持構造を示す分解斜視図である。
図8】ステータ及びバッフルプレートを組み付けたインナハウジングの説明図で、(A)は正面、(B)は中央縦断面をそれぞれ示す。
図9】(A)は図5のB-B線断面図、(B)はC-C線断面図である。
図10】(A)は図5のD-D線断面図、(B)はE-E線断面図である。
図11図5のF-F線断面図である。
図12】アウタハウジングとインナハウジングとの位置決め構造の変更例を示すグラインダの前側部分(アウタハウジングは省略)の斜視図である。
図13】アウタハウジングとインナハウジングとの位置決め構造の変更例を示すD-D線に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、グラインダの一例を示す斜視図である。図2は、グラインダの平面図である。図3は、グラインダの左側面図である。図4は、グラインダの中央縦断面図である。
グラインダ1は、前後方向に延びる工具本体1aを有している。工具本体1aの前部には、スピンドル6が下向きに設けられている。スピンドル6の下端には、円盤状砥石等の先端工具97が装着可能となっている。
工具本体1aは、筒状のアウタハウジング2と、アウタハウジング2の前側に保持される筒状のインナハウジング3とを有している。インナハウジング3は、図5にも示すように、ブラシレスモータ4を保持してアウタハウジング2から前方に突出している。また、工具本体1aは、インナハウジング3の前側に連結されるギヤハウジング5をさらに有している。ギヤハウジング5は、スピンドル6を下向きに突出させている。
【0010】
アウタハウジング2は、大径の前筒部7と、小径の後筒部8と、バッテリー装着部9とを一体形成した樹脂製である。前筒部7がインナハウジング3を保持している。後筒部8は、前筒部7の後方で上方へ偏心した位置に形成されている。後筒部8は、メインハンドルとして使用される。バッテリー装着部9は、後筒部8の後端に形成されている。アウタハウジング2は、左右一対の半割ハウジング2a,2bをネジによって組み付けて形成されている。前筒部7の前端は、前方へ向けてさらに拡開した大径部10となっている。バッテリー装着部9には、電源となるバッテリーパック11が上方からスライド装着可能となっている。
【0011】
アウタハウジング2の後筒部8には、下向きにプランジャ13を突出させたメインスイッチ12が配置されている。メインスイッチ12は、ON動作によって後述する端子台25から制御回路基板21まで導通させる機械的接点である。また、メインスイッチ12の前側で後筒部8には、下向きにボタン部15を突出させたマイクロスイッチ14が配置されている。マイクロスイッチ14は、ON動作によって制御回路基板21からブラシレスモータ4まで導通させる電気的接点である。アウタハウジング2の下側には、スイッチレバー16が、上下方向へ揺動可能に設けられている。スイッチレバー16は、前端が支点となって前筒部7から後筒部8の下面形状に合わせて折曲しながら後方に延びる。スイッチレバー16は、その後部と後筒部8の下面との間に設けられたコイルバネ17により、常態では下方への突出位置に付勢されている。
【0012】
スイッチレバー16には、押圧板18が設けられている。押圧板18は、スイッチレバー16の上方への押し込み操作によってメインスイッチ12のプランジャ13を押し込む。押圧板18の前方でスイッチレバー16には、ロックオフレバー19が設けられている。ロックオフレバー19は、常態では図4の縦向き姿勢に回転付勢されてスイッチレバー16の押し込みを規制する。そして、ロックオフレバー19は、図4で左回転させることでスイッチレバー16の押し込みを許容する。よって、後筒部8を把持した手指でロックオフレバー19を左回転させてからスイッチレバー16を握り込むと、スイッチレバー16の押圧板18がメインスイッチ12のプランジャ13を押し込む。その後、ロックオフレバー19がマイクロスイッチ14のボタン部15を押し込むことになる。
【0013】
メインスイッチ12の後方には、コントローラ20が収容されている。コントローラ20は、アウタハウジング2の後筒部8の軸線に対して、下端が上端よりも前方に位置する傾斜姿勢で支持されている。コントローラ20は、アルミ製で皿状のケース22に制御回路基板21を収容してなる。制御回路基板21は、ブラシレスモータ4の各コイル45に対応する6つのFET(図示略)や、コンデンサ、マイコン(図示略)等を搭載している。
また、制御回路基板21は、加速度センサ23を搭載している。加速度センサ23は、3軸加速度センサ素子を含む。この3軸加速度センサ素子は、例えば、可動電極部と検出電極部とを備えるMEMS(Micro Electro Mechanical System)型である。ここでは、外部から加えられた加速度に応じて可動電極部が揺動して検出電極部との間隙が変化する。すると、その間隙の変化に応じて両電極部間に生じる静電容量の変化に基づいて加速度の検出が行われる。
【0014】
コントローラ20の後方でバッテリー装着部9の左右には、スリット状の複数の吸気口24,24・・が形成されている。吸気口24の後方には、端子台25が縦向き姿勢で保持されている。端子台25は、上方からスライド装着されたバッテリーパック11と電気的に接続される。
このように、ブラシレスモータ4を除く電材部品は、インナハウジング3の後方でアウタハウジング2内に収容されている。
【0015】
インナハウジング3は、アウタハウジング2の前筒部7よりも小径となって前筒部7内に収まる樹脂製である。インナハウジング3の前端は、アウタハウジング2から前方へ突出している。インナハウジング3の前端には、図6にも示すように、前方へ行くに従って大径となるテーパ部30と、テーパ部30の前端から前方へ延びる拡開部31とが形成されている。拡開部31は、正面視が略正方形状を有している。
インナハウジング3の内面には、図7及び図9(B)、図10に示すように、軸心側へ突出する4つの受け部32,32・・が形成されている。各受け部32は、周方向に等間隔をおいて前後方向に形成されている。各受け部32の後部には、図10(B)に示すように、前部よりも軸心側への突出量が大きくなる横断面三角形状の係止部33がそれぞれ形成されている。
【0016】
インナハウジング3において、軸線を中心とする上下の点対称位置には、一対のスリット34,34が形成されている。各スリット34は、テーパ部30から前端が切り込まれて後方へ延びている。各スリット34の後方でスリット34の前端の延長上には、インナハウジング3の外面へ突出するネジボス部35がそれぞれ形成されている。
また、インナハウジング3の右側面には、嵌合凸部36が形成されている。嵌合凸部36は、上下に所定幅を有する帯状で、テーパ部30からインナハウジング3の後端まで前後方向に形成されている。
さらに、インナハウジング3の後部内には、後部を閉塞した軸受保持部37が設けられている。軸受保持部37は、インナハウジング3の内面と連結する放射状の4つの連結板38,38・・によってインナハウジング3の軸心に保持されている。軸受保持部37は、後部をインナハウジング3から後方へ突出させている。軸受保持部37の後部には、上下に貫通する貫通孔39が形成されている。
【0017】
ブラシレスモータ4は、円筒状のステータ40とその内側を貫通するロータ41とからなるインナロータ型である。ステータ40は、複数の積層鋼板から形成される筒状のステータコア42を有する。また、ステータ40は、ステータコア42の軸方向前後の端面に前インシュレータ43及び後インシュレータ44を有する。また、ステータ40は、前後インシュレータ43,44を介してステータコア42に巻回される複数のコイル45,45・・を有する。前インシュレータ43の上下面には、図7及び図9(B)に示すように、横断面が円弧状に凹む一対の前切欠部46,46が形成されている。
後インシュレータ44には、ロータコア61に挿入された永久磁石62の位置を検出するセンサ回路基板47が設けられている。センサ回路基板47の後側で後インシュレータ44には、結線部材48が取り付けられている。結線部材48は、各コイル45をヒュージング端子50を介して結線する端子金具49を備えている。また、後インシュレータ44には、図7及び図10(B)に示すように、インナハウジング3の4つの係止部33の位相に合わせて、4つの後切欠部51,51・・が形成されている。
【0018】
ここではステータ40を、4つの後切欠部51をそれぞれ4つの係止部33に位相を合わせてインナハウジング3の前方から挿入する。すると、図10(B)に示すように、各後切欠部51へ各係止部33が係止してステータ40が回り止めされると共に、後退が規制される。この状態で係止部33を除く各受け部32の内面は、ステータコア42の外面に当接してステータ40を保持する。
ステータ40の前側でインナハウジング3内には、バッフルプレート55が前方から組み付けられている。バッフルプレート55は、前面がテーパ部30の前面と連続状に繋がるテーパ面となるリング状である。バッフルプレート55の上下には、一対の小筒部56,56が、径方向外側へ向けて突設されている。小筒部56,56は、インナハウジング3のスリット34,34に嵌合してネジボス部35,35に前方から当接する。各小筒部56の径方向内側には、図5及び図9(B)に示すように、インナハウジング3の内周面よりも径方向内側へ突出する横断面円弧状の前押さえ部57,57が一体に形成されている。
【0019】
このバッフルプレート55は、ステータ40を挿入したインナハウジング3に、前方から組み付けられる。このとき、上下の小筒部56,56をスリット34,34を介してネジボス部35,35の前側に位置させて後方へ押し込む。すると、図5及び図8に示すように、前押さえ部57,57が前インシュレータ43の前切欠部46,46に嵌合してステータコア42の前面に当接し、ステータ40を前方から位置決めする。
この位置決め状態でテーパ部30とバッフルプレート55とは、後述する遠心ファン66の後側で、インナハウジング3の径方向外側に位置するテーパ部30と、径方向内側に位置するバッフルプレート55とからなるすり鉢状の整流部67を形成する。
【0020】
整流部67において、テーパ部30とバッフルプレート55とに跨がる位置で、ネジボス部35,35及び前押さえ部57,57の前方には、正面視が円形の貫通孔68,68が形成されている。貫通孔68,68は、テーパ部30に切欠き形成されるスリット34,34の正面視半円状の前端と、バッフルプレート55の外周面に設けた正面視半円状の凹部55a,55aとにより形成される。バッフルプレート55の前端右側には、図6,7にも示すように、嵌合凸部36によってテーパ部30の前面に形成される切欠きを塞ぐ突起55bが形成されている。
この状態で貫通孔68,68を介して前方から小筒部56,56を貫通させたネジ58,58をネジボス部35,35にねじ込む。すると、バッフルプレート55は、前面がテーパ部30の前面と連続状に繋がって整流部67を形成する位置で固定される。同時にバッフルプレート55は、係止部33との間でステータ40を挟持固定する。
【0021】
ロータ41は、軸心に位置する回転軸60と、回転軸60の周囲に配置されるロータコア61とを有する。ロータコア61は、複数の鋼板を積層してなり、略円筒状を有している。また、ロータ41は、ロータコア61の内部に固定される4つの板状の永久磁石62,62・・を有する。
回転軸60の後端は、軸受保持部37に保持された軸受63によって軸支される。回転軸60の前端は、ギヤハウジング5とインナハウジング3の拡開部31との間に組み付けられる仕切板64に、軸受65を介して軸支される。この状態で回転軸60の先端はギヤハウジング5内に突出する。仕切板64の後方で回転軸60には、遠心ファン66が取り付けられている。遠心ファン66は、バッフルプレート55の前側でインナハウジング3のテーパ部30から拡開部31に跨がって収容されている。整流部67は、遠心ファン66の後面外周に対向している。
【0022】
(インナハウジングの弾性保持構造の説明)
ブラシレスモータ4を保持するインナハウジング3は、アウタハウジング2によって弾性的に保持されている。以下、この弾性保持構造について詳述する。
インナハウジング3の軸受保持部37の貫通孔39には、上下方向に金属製の連結ロッド70が貫通している。この連結ロッド70は、図7及び図11に示すように、アウタハウジング2の半割ハウジング2a,2bにそれぞれ形成された上下一対のロッド受け部71,71によって上下両端が支持される。各ロッド受け部71は角筒状である。左右で対向するロッド受け部71,71の合わせ面には、連結ロッド70の挿入孔72,72が形成されている。各挿入孔72の内部には、連結ロッド70の端部を受けるラバーキャップ73がそれぞれ保持されている。
よって、インナハウジング3は、軸受保持部37の後部を貫通する連結ロッド70がロッド受け部71に支持されることで、連結ロッド70を中心に左右へ揺動可能に保持される。支点となる連結ロッド70は、上下両端がラバーキャップ73,73を介してロッド受け部71,71へ弾性的に保持されることになる。
【0023】
インナハウジング3の外周には、テーパ部30から後方部分に掛けて筒状ラバー74が着脱可能に外装されている。筒状ラバー74は、アウタハウジング2の大径部10とインナハウジング3との間に介在される。筒状ラバー74の前端の上下には、図5及び図7に示すように、テーパ部30の後面に沿った円弧状のフランジ部75,75が形成されている。筒状ラバー74の前端の左右には、フランジ部75,75よりもテーパ部30との接触面積が少なくなる逃がし部76,76が形成されている。
よって、連結ロッド70を中心に左右へ揺動可能なインナハウジング3は、前部全周が筒状ラバー74を介してアウタハウジング2に弾性保持されることになる。ここではラバーキャップ73の方が筒状ラバー74よりも硬度が低くなっている。
【0024】
筒状ラバー74において、内周面の上下で前端寄りの位置には、一対の内位置決め突起77,77が形成されている。内位置決め突起77,77は、整流部67に設けた貫通孔68,68に嵌合する。この状態で内位置決め突起77,77は、バッフルプレート55を固定するネジ58,58の前方を塞ぐスペーサとなる。同時に内位置決め突起77,77の前面77a,77aは、図5に示すように、テーパ部30及びバッフルプレート55の前面と連続する。各内位置決め突起77の後方で筒状ラバー74の内周面には、溝部78が前後方向にそれぞれ形成されている。各溝部78は、インナハウジング3のネジボス部35と嵌合している。
筒状ラバー74の右側の内周面には、位置決め溝79が全長に亘って形成されている。位置決め溝79は、インナハウジング3の嵌合凸部36と嵌合している。
筒状ラバー74の後端で左右の側面には、径方向外側へ突出する一対の外位置決め突起80,80が形成されている。アウタハウジング2の左右の内面には、外位置決め突起80,80が嵌合する一対の受け凹部81,81が形成されている。
【0025】
テーパ部30の後方で筒状ラバー74には、固定リング82が外装されている。固定リング82は、大径部10と同じ外径を有する金属製である。固定リング82の左右両側面には、上下方向に一対の平面部83,83が形成されている。
アウタハウジング2の前端で左右の側面には、図2及び図6等に示すように、一対のハンドル取付部84,84が一体に形成されている。ハンドル取付部84,84は、アウタハウジング2から左右外側へ張り出してギヤハウジング5の外側まで前方へ延びる。各ハンドル取付部84は、サイドハンドル26(図1,2等)の取付用である。各ハンドル取付部84は、上下及び前後方向で規定される平面に沿った板状に形成されて、インナハウジング3及び仕切板64の外面と非接触となっている。このハンドル取付部84は、図9(A)に示すように、ハンドル取付部84,84の各内面が固定リング82の平面部83,83に当接した状態で、左右外側から上下一対のネジ85,85によって固定リング82にネジ止めされている。こうしてアウタハウジング2の左右の半割ハウジング2a,2bは、互いのネジ止め連結の他、ハンドル取付部84,84を介して固定リング82にもネジ止め連結されることになる。
各ハンドル取付部84において、上下のネジ85,85の間には、枠部86が突設されている。枠部86の内側には、図6に示すように、サイドハンドル26の先端に設けたネジ部27をねじ込んで固定するためのネジ孔87が左右方向に貫通形成されている。
【0026】
一方、ギヤハウジング5は、図1及び図2に示すように、正面視の四隅において前方から貫通させた4本のネジ90,90・・を、仕切板64を介してインナハウジング3にねじ込むことで固定される。ギヤハウジング5内へ突出する回転軸60の前端には、ベベルギヤ91が固着されている。ベベルギヤ91は、図4に示すようにスピンドル6の上端に固着したベベルギヤ92と噛合している。ギヤハウジング5の前面には、複数の排気口93,93・・が形成され、仕切板64に設けた図示しない透孔を介してインナハウジング3内と連通している。排気口93の前方には、押し込み操作によってベベルギヤ92を介してスピンドル6の回転をロック可能なシャフトロック94が設けられている。
スピンドル6は、ギヤハウジング5と、ギヤハウジング5の下部に組み付けられたベアリングボックス95とに保持される上下の軸受96,96に軸支される。スピンドル6は、ベアリングボックス95から下方へ突出し、その下端に先端工具97が装着可能となっている。ベアリングボックス95の外周には、先端工具97の後半部を覆うホイールカバー(図示略)が装着可能となっている。
【0027】
(グラインダの動作の説明)
以上の如く構成されたグラインダ1においては、後筒部8を把持した指でロックオフレバー19を回転させてロックを解除する。この状態でスイッチレバー16を握り込む。すると、前述のように押圧板18がプランジャ13を押し込んでメインスイッチ12を先にON動作させる。これによりバッテリーパック11からの電源がコントローラ20の制御回路基板21に供給される。
さらにスイッチレバー16が握り込まれると、今度はロックオフレバー19がマイクロスイッチ14のボタン部15を押圧し、マイクロスイッチ14をON動作させる。すると、マイクロスイッチ14のON信号を得た制御回路基板21がバッテリーパック11から得られる電源をブラシレスモータ4に供給してブラシレスモータ4を起動させる。よって、ロータ41と共に回転軸60が回転してベベルギヤ91,92を介してスピンドル6を回転(上方から見て右回転)させる。こうして先端工具97による研磨作業等が可能となる。
【0028】
ここで、高速回転するブラシレスモータ4のロータ41と、スピンドル6に取り付けられた先端工具97とにはそれぞれアンバランスが存在するため、これが振動源となってインナハウジング3やギヤハウジング5に振動が伝わる。
しかし、インナハウジング3とアウタハウジング2との間には筒状ラバー74が介在されている。このため、振動が効果的に絶縁され、アウタハウジング2への振動が低減される。よって、メインハンドルである後筒部8を把持する作業者の手に振動が伝わりにくくなる。また、サイドハンドル26も、振動が絶縁されるアウタハウジング2のハンドル取付部84に装着されているため、サイドハンドル26を把持する作業者の手に振動が伝わりにくくなり、低振動化が達成できる。
【0029】
さらに、ブラシレスモータ4の起動時や、回転中の先端工具97に負荷が加わったりしたときには、連結ロッド70を中心にインナハウジング3が平面視で左回転方向(反力方向)に回転しようとする。しかし、インナハウジング3とアウタハウジング2との間には筒状ラバー74が介在されているため、インナハウジング3の回転が筒状ラバー74で緩衝され、アウタハウジング2及びこれに装着されるサイドハンドル26に反動が伝わりにくくなる。
【0030】
一方、回転軸60の回転に伴って遠心ファン66が回転すると、後方の吸気口24から外気が吸い込まれて、コントローラ20を下方から回り込んでアウタハウジング2内を前進する。これにより、コントローラ20及び端子台25が冷却される。
アウタハウジング2内の空気流は、メインスイッチ12及びマイクロスイッチ14を通過してそれぞれ冷却する。その後、インナハウジング3内に進入し、ブラシレスモータ4のステータ40とロータ41との間を通ってブラシレスモータ4を冷却する。その後、整流部67から拡開部31を通って仕切板64を介してギヤハウジング5に至り、排気口93から外部へ排出される。
【0031】
そして、制御回路基板21は、ブラシレスモータ4の駆動中には、加速度センサ23によって加速度を検出する。そして、検出した加速度を、ROM等の記憶部に予め記録された閾値と比較する。この閾値は、作業中に、キックバック(先端工具97が被加工材にはまり込んだり、固いものにぶつかったりした際に、工具本体1aが作業者側に勢いよく跳ね返る現象)や、振り回され(先端工具97が被加工材にロックされてスピンドル6を中心として工具本体1aが回転してしまう現象)が生じた際に発生する加速度の値が基準となっている。よって、検出した加速度が閾値を越えていると、制御回路基板21は、ブラシレスモータ4の駆動を停止させる。
ここでは振動源を有するインナハウジング3と、作業者が把持する後筒部8及びサイドハンドル26を有するアウタハウジング2との間に筒状ラバー74が介在されている。よって、通常の作業時に発生する振動が緩和されて加速度センサ23に伝わらなくなる。従って、加速度センサ23の耐久性が確保できる上、誤検知が生じにくくなり、キックバックや振り回されが生じた際の加速度を精度よく判別することができる。
【0032】
(筒状ラバーによるインナハウジング及びアウタハウジングの位置決めに係る発明の効果)
上記形態のグラインダ1は、ブラシレスモータ4(モータ)を収容するインナハウジング3と、ブラシレスモータ4の前方で下向きに配置されるスピンドル6(最終出力軸)と、インナハウジング3を内側に配置して後筒部8(ハンドル)が一体に設けられるアウタハウジング2と、を含む。また、インナハウジング3とアウタハウジング2とは、所定方向に延びる連結ロッド70(連結軸)を介して相対回転可能に連結される。一方、インナハウジング3は、連結ロッド70の前方に配置した筒状ラバー74(弾性体)を介してアウタハウジング2に保持される。そして、筒状ラバー74に、インナハウジング3を位置決めする内位置決め突起77及び内位置決め溝79(インナ用位置決め部)と、アウタハウジング2を位置決めする外位置決め突起80(アウタ用位置決め部)とをそれぞれ設けている。
この構成により、インナハウジング3とアウタハウジング2との間に筒状ラバー74を介在させても両ハウジング2,3を正しく位置決めでき、効果的な防振効果が得られる。
【0033】
特に、インナハウジング3は、前後方向に延びる筒状で、筒状ラバー74は、インナハウジング3に外装されるリング状となっている。よって、全周に亘って均等な防振効果が得られる。
また、アウタ用位置決め部は、筒状ラバー74から径方向外側へ突出し、アウタハウジング2の内面に形成した受け凹部81に係合する外位置決め突起80となっている。よって、アウタハウジング2の位置決めが簡単に行える。
また、インナ用位置決め部は、筒状ラバー74の内面に凹設され、インナハウジング3の外面に形成した嵌合凸部36が嵌合する内位置決め溝79(内位置決め凹部)となっている。また、インナ用位置決め部として、筒状ラバー74の内面に突設され、インナハウジング3に形成したスリット34に係合する内位置決め突起77,77(内位置決め突起)も採用している。よって、インナハウジング3の位置決めが簡単に行える。
【0034】
また、連結ロッド70は、インナハウジング3の後端で上下方向に配置されている。よって、インナハウジング3を左右方向へ揺動可能に支持でき、キックバックの際の緩衝に効果的となる。
また、アウタハウジング2は、左右の半割ハウジング2a,2bに分割され、外位置決め突起80,80は、左右一対で設けられて各半割ハウジング2a,2bにそれぞれ係合する。よって、半割構造のアウタハウジング2をバランスよく位置決め可能となる。
また、筒状ラバー74の前端で左右両側には、アウタハウジング2に対する接触面積を上下両側よりも少なくする逃がし部76,76が形成されている。よって、インナハウジング3の左右(先端工具97の回転面上での左右)への揺動をある程度許容しつつ筒状ラバー74による緩衝作用が得られる。
また、連結ロッド70は、インナハウジング3を貫通し、両端がラバーキャップ73(第2の弾性体)を介してアウタハウジング2に保持されている。よって、連結ロッド70も弾性支持されて防振効果の向上に繋がる。
【0035】
なお、ハウジングの位置決めに係る発明において、上記形態では、嵌合凸部と内位置決め溝とが右側に設けられているが、左側であってもよいし、左右両側にあってもよい。左右以外の箇所に設けてもよい。凸部と溝との具体的な形状も変更できる。凸部と溝との関係を逆にしてもよい。
また、インナ用位置決め部として、インナハウジングのスリットに係合する内位置決め突起も採用しているが、スリットでなく凹部とする等、この場合も具体的な形状は変更できる。但し、スリットと内位置決め突起とによるインナ用位置決め部は省略可能である。
また、アウタ用位置決め部も、外位置決め突起と受け凹部との数や配置は適宜変更できる。突起と凹部との関係を逆にしてもよい。
また、連結軸は、上記形態の連結ロッドのようにインナハウジングと別部品とせず、軸受保持部へ一体に形成してもよい。連結軸の向きも上下方向に限らない。
また、弾性体も、筒状ラバーの形状は適宜変更可能である。筒状ラバーを分割したり、別の弾性体を追加したりしてもよい。
【0036】
図12及び図13は、アウタハウジング2とインナハウジング3との位置決め構造の他の変更例を示す。
筒状ラバー74の左右の側面には、後端から前方へ向けて3つの切込み100A~100Cが、周方向へ所定間隔をおいて形成されている。インナハウジング3の左右の外面には、中央の切込み100B,100Bに係止するインナ側突起101,101が形成されている。アウタハウジング2の左右の内面には、上下の切込み100A,100Cに係止する上下一対のアウタ側突起102,102がそれぞれ形成されている。なお、嵌合凸部36及び内位置決め溝79は左側に配置されて、左側のインナ側突起101は嵌合凸部36の外面に形成されている。
よって、組み付け状態では、筒状ラバー74の左右の切込み100B,100Bにインナ側突起101,101が係止してインナハウジング3が位置決めされる。また、筒状ラバー74の左右の切込み100A,100Cにアウタ側突起102,102がそれぞれ係止してアウタハウジング2が位置決めされる。この位置決め状態では、筒状ラバー74の周方向でインナ側突起101とアウタ側突起102,102との間に筒状ラバー74が挟まれる格好となる。
【0037】
このように、この変更例では、インナ用位置決め部を、インナハウジング3から外側へ突出するインナ側突起101が係止する切込み100B(インナ側被係止部)とし、アウタ用位置決め部を、アウタハウジング2の内面から内側へ突出するアウタ側突起102,102が係止する切込み100A,100C(アウタ側被係止部)として、インナ側突起101とアウタ側突起102とが、筒状ラバー74の周方向で筒状ラバー74を挟む構造となっている。
よって、筒状ラバー74の周方向でアウタハウジング2とインナハウジング3との相対的ながたつきが規制されて信頼性の高い位置決めが可能となる。また、先の形態のように筒状ラバー74に外位置決め突起のような突起部を設けないので、突起部の損傷等による筒状ラバー74の耐久性及び位置決め機能の低下も防止できる。
なお、インナ側被係止部及びアウタ側被係止部は、切込みに限らず、透孔や凹部としてもよい。インナ側突起とアウタ側突起との形状や数も変更可能である。
【0038】
また、この発明では、ハンドル取付部をアウタハウジングに設ける構成は必須ではなく、従来のようにギヤハウジングにハンドル取付部を設けるものであっても、インナハウジングの弾性保持による一定の振動低減効果は得られる。
また、アウタハウジングは、上記形態のように半割構造でなく、インナハウジングと同様に一体の筒状であっても差し支えない。逆にインナハウジングを半割構造とする等、複数の部品から形成してもよい。
【0039】
(加速度センサが工具本体内で弾性的に支持される発明に係る効果)
上記形態のグラインダ1は、ブラシレスモータ4を収容する工具本体1aと、ブラシレスモータ4の駆動により回転し、先端工具97が装着されるスピンドル6とを含む。また、グラインダ1は、工具本体1a内に設けられる加速度センサ23と、加速度センサ23により検出される加速度を監視してブラシレスモータ4の駆動を制御するコントローラ20と、を含む。そして、加速度センサ23は、工具本体1a内で弾性的に支持されている。
この構成により、通常の使用時に発生する振動に基づく加速度を誤検知したり、キックバックや振り回されによる加速度を精度よく判別できなかったりするおそれがなくなる。また、振動によって加速度センサ23自体が故障したり破損したりするおそれも低減される。よって、加速度センサ23によってキックバックや振り回され現象を精度よく検知できて信頼性に優れる。また、加速度センサ23の耐久性も確保できる。
【0040】
特に、工具本体1aは、ブラシレスモータ4を収容するインナハウジング3(駆動側ハウジング)と、インナハウジング3を弾性的に保持するアウタハウジング2(防振側ハウジング)とを含み、加速度センサ23は、アウタハウジング2に配置されている。よって、加速度センサ23に対する振動低減効果が効果的に得られる。
また、アウタハウジング2は、インナハウジング3を前側で保持し、加速度センサ23は、インナハウジング3よりも後方に配置されている。よって、加速度センサ23を振動源から離れた位置に配置でき、振動低減に効果的となる。
【0041】
また、アウタハウジング2は、ブラシレスモータ4を駆動させるためのスイッチレバー16(操作部材)を備えた後筒部8(ハンドル)を有し、加速度センサ23は、後筒部8よりも後方に配置されている。よって、振動源よりも遠い位置に加速度センサ23を配置できる。特に、アウタハウジング2の後端に重量の大きいバッテリーパック11が配置されているので、加速度センサ23がバッテリーパック11に近くなって振動低減により効果的となる。
また、コントローラ20は、アウタハウジング2に設けられて、加速度センサ23は、コントローラ20に配置されている。よって、コントローラ20と共に加速度センサ23を防振側へ容易に配置できる。
【0042】
なお、加速度センサの弾性支持に係る発明において、加速度センサの配置は上記形態に限らない。例えば制御回路基板に加速度センサを直接搭載せず、コントローラから離して配置した加速度センサと制御回路基板とをリード線で接続してもよい。
また、加速度センサは、バッテリー装着部に限らず、後筒部や前筒部内に配置してもよい。
また、加速度センサは、アウタハウジングにおけるインナハウジングとオーバーラップする領域に配置してもよい。この場合、筒状ラバーを利用して弾性支持させることもできる。
また、防振構造を有しないグラインダでも本発明は採用できる。この場合、工具本体内で加速度センサのみ、或いは加速度センサを含むコントローラをゴム等の弾性体で弾性支持すればよい。
また、駆動側ハウジングに第2の加速度センサを配置して、コントローラに、防振側ハウジングの加速度センサと第2の加速度センサとからそれぞれ検出される加速度の差分を監視させて、その差分を閾値と比較等することでモータの駆動を制御させることも可能である。
【0043】
(径方向内外に分割される整流部に係る発明の効果)
上記形態のグラインダ1は、ブラシレスモータ4(モータ)を収容するインナハウジング3(ハウジング)と、ブラシレスモータ4の駆動に伴って回転し、インナハウジング3内にブラシレスモータ4の冷却風を生成する遠心ファン66(ファン)とを含む。また、グラインダ1は、インナハウジング3に形成され、遠心ファン66を収容するテーパ部30及び拡開部31(筒状部)と、遠心ファン66に対向して冷却風の上流側に設けられる整流部67とを含む。そして、整流部67は、テーパ部30及び拡開部31の径方向で内外に分割されて、径方向の外側がテーパ部30で形成され、径方向の内側が、インナハウジング3に組み付けられるバッフルプレート55により形成される。
この構成により、インナハウジング3の一部とバッフルプレート55とを利用して整流部67が形成でき、インナハウジング3の軸長が長くなったり、無駄なスペースが生じたりすることがなくなる。よって、軸方向にコンパクト且つ省スペースとなる構造で整流部67が形成可能となる。
【0044】
特に、バッフルプレート55は、ブラシレスモータ4のステータ40にステータ40の軸方向から当接する前押さえ部57(当接部)を有する。よって、バッフルプレート55を利用してステータ40の位置決めが行える。
また、バッフルプレート55は、インナハウジング3にネジ止めされることで前押さえ部57によりステータ40を固定する。よって、バッフルプレート55の固定と同時にステータ40も固定できる。
また、バッフルプレート55をネジ止めするネジ58を通過させる貫通孔68(ネジ通過部)が、整流部67に設けられている。よって、ネジ58をインナハウジング3及びステータ40に近い位置に配置でき、インナハウジング3のコンパクト化を維持できる。
【0045】
また、ネジ通過部を、テーパ部30とバッフルプレート55とに跨がって形成される貫通孔68としている。よって、整流部67の形状を大きく変えることなくネジ通過部が形成可能となる。
また、バッフルプレート55のネジ止め後に貫通孔68を塞いでテーパ部30とバッフルプレート55との連続面を形成する内位置決め突起77(スペーサ)が、インナハウジング3へ着脱可能に設けられている。よって、貫通孔68を設けても整流部67の機能を低下させることがない。
また、インナハウジング3の外側に、筒状ラバー74(弾性体)を介して連結されるアウタハウジング2を有し、内位置決め突起77は、筒状ラバー74の一部として形成されている。よって、筒状ラバー74と共に内位置決め突起77を容易に組み付け可能となる。
また、内位置決め突起77は、筒状ラバー74に対してインナハウジング3を位置決めする。よって、筒状ラバー74を利用したインナハウジング3の位置決めが容易に行える。
【0046】
なお、整流部に係る発明において、バッフルプレートをネジ止めするネジの数や位置は上記形態に限らない。前方からでなく、後方からバッフルプレートをネジ止めすることもできる。径方向にバッフルプレートをネジ止めしてもよい。
また、ネジ通過部は、インナハウジングのテーパ部とバッフルプレートとに跨がって設けず、何れか一方側にのみ設けてもよい。スペーサも、インナハウジングの位置決めと兼用しなくてもよいし、筒状ラバー等の弾性体と別体にしてネジ通過部を塞ぐようにしてもよい。
また、バッフルプレートはネジ止めに限らず、一体に形成した係止片をインナハウジングに係止させて固定する等、ネジを用いない構造も採用できる。
また、この発明はグラインダに限らず、ハウジングの筒状部にファンと整流部とを備えた電動工具であれば、アングルドリルやレシプロソー、マルノコ等であっても適用可能である。よって、アウタハウジングとインナハウジングとを有するものに限らない。ファンも、モータの出力軸でなく、出力軸から回転伝達される別の軸に設けても差し支えない。
【0047】
その他、各発明に共通して、グラインダの他の構成は上記形態に限らない。例えばモータはブラシレスに限らない。また、電源としてバッテリーパック(バッテリー)を複数用いてもよい。また、バッテリーを用いないAC工具であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1・・充電式グラインダ、1a・・工具本体、2・・アウタハウジング、3・・インナハウジング、4・・ブラシレスモータ、5・・ギヤハウジング、6・・スピンドル、7・・前筒部、8・・後筒部、9・・バッテリー装着部、10・・大径部、11・・バッテリーパック、20・・コントローラ、21・・制御回路基板、23・・加速度センサ、26・・サイドハンドル、36・・嵌合凸部、37・・軸受保持部、40・・ステータ、41・・ロータ、55・・バッフルプレート、60・・回転軸、67・・整流部、68・・貫通孔、70・・連結ロッド、71・・ロッド受け部、73・・ラバーキャップ、74・・筒状ラバー、77・・内位置決め突起、77a・・前面、78・・溝部、79・・内位置決め溝、80・・外位置決め突起、81・・受け凹部、84・・ハンドル取付部、97・・先端工具、100A~100C・・切込み、101・・インナ側突起、102・・アウタ側突起。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13