(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ステンシルプレートの取り付け方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20231013BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20231013BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2019200867
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇根 愛理沙
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-031519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0009485(US,A1)
【文献】登録実用新案第3182945(JP,U)
【文献】特開平08-261512(JP,A)
【文献】特開2016-031131(JP,A)
【文献】特表2005-508771(JP,A)
【文献】特開2000-202832(JP,A)
【文献】特開2014-133402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ加硫金型のタイヤ成型面に対して凹状に形成された取り付け凹部に、標識形成部が形成されたステンシルプレートを取り付ける、タイヤ加硫金型へのステンシルプレートの取り付け方法において、
前記取り付け凹部の底面に形成された下穴と、前記ステンシルプレートに形成された貫通孔とにリベットを通すことにより、前記取り付け凹部に前記ステンシルプレートを固定
し、
前記リベットとして、胴部の少なくとも一部が前記下穴の内径より大きいものを使用し、前記リベットを前記下穴に圧入する、ステンシルプレートの取り付け方法。
【請求項2】
タイヤ加硫金型のタイヤ成型面に対して凹状に形成された取り付け凹部に、標識形成部が形成されたステンシルプレートを取り付ける、タイヤ加硫金型へのステンシルプレートの取り付け方法において、
前記取り付け凹部の底面に形成された下穴と、前記ステンシルプレートに形成された貫通孔とにリベットを通すことにより、前記取り付け凹部に前記ステンシルプレートを固定し、
前記底面と前記ステンシルプレートとの間に座金を入れ、
前記座金の高さを、前記取り付け凹部の前記底面から、前記ステンシルプレートの前記底面側の面までの高さと一致させる、ステンシルプレートの取り付け方法。
【請求項3】
前記リベットの頭部と前記座金とを前記リベットの長手方向に重ねる、請求項
2に記載のステンシルプレートの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステンシルプレートの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのサイド部には、メーカー名、製造工場、サイズ、製造週、製造年等を表す標識が形成されている。標識は空気入りタイヤのサイド部の表面上に凹又は凸として形成されている。
【0003】
このような標識を形成するために、標識を形成するための凹凸のあるステンシルプレートが、タイヤ加硫金型に設けられている。具体的には、タイヤ加硫金型を構成しているサイドプレート等のタイヤ成型面に取り付け凹部が形成され、その取り付け凹部内にステンシルプレートが配置されている。特許文献1や特許文献2に記載されているように、ステンシルプレートはねじ(通常、ビスのような小ねじ)で取り付け凹部に固定されている。詳細には、ステンシルプレートの長手方向両側に貫通孔が形成され、取り付け凹部の長手方向両側にねじ穴が形成され、前記貫通孔と前記ねじ穴とにねじが通されてねじ止めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-172660号公報
【文献】特開2014-133402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、作業者がねじを強く締めることがあり、そのためにステンシルプレートのねじの周囲の部分が変形することがあった。また作業者が、ステンシルプレートの長手方向の一方のねじを強く、他方のねじを弱く締めることがあり、弱く締めた方でステンシルプレートが浮くこともあった。このようにステンシルプレートが変形したり浮いたりすると、加硫成型時にゴムがステンシルプレートの下に侵入し、加硫成型後の空気入りタイヤの表面に不要なゴムの突起が形成されてしまうことがあった。
【0006】
また、作業者がねじを強く締めた結果、ねじ穴が早期に潰れてしまうという問題もあった。
【0007】
そこで本発明は、作業者がねじを強く締めることに起因する不具合を無くすことができる、ステンシルプレートの新しい取り付け方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、タイヤ加硫金型のタイヤ成型面に対して凹状に形成された取り付け凹部に、標識形成部が形成されたステンシルプレートを取り付ける、タイヤ加硫金型へのステンシルプレートの取り付け方法において、前記取り付け凹部の底面に形成された下穴と、前記ステンシルプレートに形成された貫通孔とにリベットを通すことにより、前記取り付け凹部に前記ステンシルプレートを固定し、前記リベットとして、胴部の少なくとも一部が前記下穴の内径より大きいものを使用し、前記リベットを前記下穴に圧入することを特徴とする。
また、本発明のある態様は、タイヤ加硫金型のタイヤ成型面に対して凹状に形成された取り付け凹部に、標識形成部が形成されたステンシルプレートを取り付ける、タイヤ加硫金型へのステンシルプレートの取り付け方法において、前記取り付け凹部の底面に形成された下穴と、前記ステンシルプレートに形成された貫通孔とにリベットを通すことにより、前記取り付け凹部に前記ステンシルプレートを固定し、前記底面と前記ステンシルプレートとの間に座金を入れ、前記座金の高さを、前記取り付け凹部の前記底面から、前記ステンシルプレートの前記底面側の面までの高さと一致させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この方法によれば、ステンシルプレートの取り付けにリベットを使用するため、作業者がねじを強く締めることに起因する不具合を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施形態のサイドプレートを金型内側から見た図。
【
図3】実施形態のステンシルプレート等の断面図。
図2のX-X断面図。なおこの図において標識形成凹部の数及び形状は
図2に対して簡略化してある。
【
図4】
図3のステンシルプレート等を分解して示した図。
【
図5】実施形態のタイヤ加硫金型で成型された空気入りタイヤの部分側面図。
【
図6】(a)は実施形態のリベット及び下穴の拡大図。(b)は(a)のX-X断面図。
【
図7】変更例のリベットを示す図。(a)は胴部が先端に向かって拡径しているリベットの正面図、(b)は胴部が先端に向かって縮径しているリベットの正面図、(c)は断面が楕円形のリベットの断面図(
図6(a)のX-Xに相当する位置での断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に本実施形態のタイヤ加硫金型10を示す。タイヤ加硫金型10は、円周状に並べられた複数のセクター12と、複数のセクター12が形成する円周の軸方向両側に設けられた一対のサイドプレート14と、同じく一対のビードリング16とを備えている。サイドプレート14及びビードリング16は前記軸方向から見て円形である。
【0012】
セクター12、サイドプレート14及びビードリング16は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とする)を成型するための成型面12a、14a、16aを有する成型部材である。複数のセクター12の成型面12aは主にタイヤのトレッド部を、一対のサイドプレート14の成型面14aは主にタイヤのサイド部を、一対のビードリング16の成型面16aは主にタイヤのビード部を、それぞれ成型する。
【0013】
セクター12の材質は、限定されないが、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金(例えばAl-Cu系、Al-Mg系、Al-Mn系、Al-Si系の合金)である。またサイドプレート14及びビードリング16の材質は、限定されないが、例えば、一般構造用圧延鋼材(例えばSS400)等の鋼材である。セクター12、サイドプレート14、ビードリング16は、加硫成型時には、図示しない電気ヒータや高温蒸気により加硫温度(例えば130~200℃)に熱せられる。
【0014】
図1~
図4に示すように、サイドプレート14にはステンシルプレート30が設けられている。ステンシルプレート30の取り付けのための構造として、サイドプレート14には、成型面14aに対して凹状の取り付け凹部20が形成されている(
図4参照)。この取り付け凹部20内にステンシルプレート30が設けられている。
【0015】
ステンシルプレート30は、タイヤの表面を成型する表面33と、その裏面34とを有する、板状の部材である。ステンシルプレート30の材質は、限定されないが、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金である。ステンシルプレート30の厚みt1(
図4参照)は、限定されないが、例えば0.5~0.6mmである。
図2に示すように、ステンシルプレート30は、表面33側から見ると、サイドプレート14の周方向に沿って湾曲するように延長された細長い形状をしている。
【0016】
ステンシルプレート30の延長方向中央付近の表面33には、標識形成部としての複数の凹部(以下「標識形成凹部31」)が並べて形成されている。これらの標識形成凹部31は、
図5に示すようにタイヤTのサイド部に標識Mを形成するための凹部である。標識Mは、文字、記号、図形等が並べられて形成されたもので、全体でメーカー名、製造工場、サイズ、製造週、製造年等の一部又は全部を表すものである。
図2に示すように、ステンシルプレート30を表面33側から見たときの複数の標識形成凹部31は、全体として、標識Mが反転した形となっている。
【0017】
標識形成凹部31はプレス加工によって平坦な板状部材の一部を陥没させる形で形成されている。そのため、ステンシルプレート30の裏面34側には、標識形成凹部31に対応する膨出部32が現れている。標識形成凹部31の深さt2(
図4参照)は例えば0.2~0.8mmであり、膨出部32の膨出の高さは標識形成凹部31の深さと同等である。
図3には膨出部32が取り付け凹部20の底面21に接触した形態を示してある。しかし、膨出部32と取り付け凹部20の底面21との間に隙間がある形態もあり得る。
【0018】
図4に示すように、ステンシルプレート30の延長方向両側には、ステンシルプレート30を貫通する貫通孔35が形成されている。貫通孔35は表面33側から見て円形である。貫通孔35は、ステンシルプレート30の表面33から裏面34まで一定の内径を保ちながら、表面33及び裏面34に直交する方向へ延びている。
【0019】
ステンシルプレート30が設けられている取り付け凹部20は、その底面21に直交する方向から見て、ステンシルプレート30と同じ形をしている。底面21に直交する方向から見て、取り付け凹部20の面積は、常温(5~35℃)においてステンシルプレート30の面積と同じでも良いし、ステンシルプレート30の面積と僅かに異なっても良い。取り付け凹部20の面積とステンシルプレート30の面積とが異なる場合、その差はステンシルプレート30の面積の3%以下であることが好ましい。
【0020】
常温において取り付け凹部20の面積がステンシルプレート30の面積より僅かに小さい場合、作業者がステンシルプレート30を取り付け凹部20に力を入れて押し込むことになる。押し込まれたステンシルプレート30は塑性変形して取り付け凹部20に入ることとなり、ステンシルプレート30と取り付け凹部20の側壁22との間に隙間が生じないことになる。
【0021】
一方、常温において取り付け凹部20の面積がステンシルプレート30の面積より僅かに大きい場合、常温では取り付け凹部20の側壁22とステンシルプレート30との間に僅かな隙間が生じることとなる。しかし、加硫温度においては、ステンシルプレート30が膨張し、取り付け凹部20の面積とステンシルプレート30の面積とが同じになる。それにより、常温において生じていた取り付け凹部20の側壁22とステンシルプレート30との隙間が、加硫温度において閉じることになる。
【0022】
図4に示すように、取り付け凹部20の延長方向両側の底面21には下穴25が形成されている。これらの下穴25は、ステンシルプレート30の貫通孔35と上下方向に(つまり底面21に直交する方向に)一致する場所に形成されている。下穴25の内径面は、ねじ山のような凹凸のない平滑面である。
【0023】
ステンシルプレート30の貫通孔35及び取り付け凹部20の下穴25には、リベット50が通されている。それにより、ステンシルプレート30が取り付け凹部20に固定されている。
【0024】
図4及び
図6に示すように、リベット50は、直円柱の胴部53と、胴部53より直径の大きな頭部52とからなる。胴部53の外径面は、ねじ山のような凹凸のない平滑面である。貫通孔35及び下穴25に通される前(以下「使用前」とする)のリベット50においては、胴部53の外径d1が、下穴25の内径d2より大きい。使用前のリベット50の胴部53の外径d1と下穴25の内径d2との比は
d1/d2=1.005~1.05
であることが好ましい。なお、使用前のリベット50の胴部53の外径d1は、限定されないが、例えば2~3mmである。
【0025】
この胴部53は、下穴25に圧入されており、塑性変形することにより直径が小さくなって下穴25に嵌まっている。リベット50はサイドプレート14よりも硬度の低い材料で出来ていることが好ましく、例えばステンレスのうち比較的硬度の低いもの又はアルミニウムで出来ている。
【0026】
なお、ステンシルプレート30の貫通孔35の内径は、リベット50の胴部53が通過できる内径であれば良い。ステンシルプレート30のがたつきが生じないようにするためには、ステンシルプレート30の貫通孔35の内径が、使用前のリベット50の胴部53の直径と同じであることが好ましい。しかし、ステンシルプレート30の貫通孔35の内径と、使用前のリベット50の胴部53の直径とのうち一方が、他方より若干長くても良い。
【0027】
リベット50の頭部52については、その頂部52aが平面であることが好ましい。頂部52aが平面である場合の頭部52の厚みt3(
図6参照)は、限定されないが、例えば0.7~1.0mmである。ただし、頭部がいわゆる丸頭等で、頂部が曲面になっていても良い。頭部52の直径d3(
図6参照)は、限定されないが、例えば4~6mmである。
【0028】
図3及び
図4に示すように、取り付け凹部20の底面21とステンシルプレート30との間には座金54が設けられている。座金54はリング状の部材で、リベット50の胴部53を囲むように配置されている。座金54の高さは、取り付け凹部20の底面21からステンシルプレート30の裏面34までの高さと一致している。ここで高さとは、取り付け凹部20の底面21からの、底面21に直交する方向の長さのことである。また、リベット50の頭部52と座金54とは、リベット50の長手方向(底面21に直交する方向)に重なっている。
【0029】
図3に示すように、取り付け凹部20に取り付けられているステンシルプレート30の表面33は、サイドプレート14の成型面14aに対して凹んだ位置にある。換言すれば、ステンシルプレート30の表面33はサイドプレート14の成型面14aより低い位置にある。このとき、リベット50の頭部52の頂部52aは、サイドプレート14の成型面14aと同一平面上に位置していても良い(換言すれば、同じ高さにあっても良い)が、サイドプレート14の成型面14aと同一平面上になくても良い。
【0030】
なお、
図3の形態とは異なるが、ステンシルプレート30の表面33と、サイドプレート14の成型面14aとが面一となっていても良い。
【0031】
サイドプレート14にステンシルプレート30を取り付ける際、まず、作業者は、取り付け凹部20の2つの下穴25の場所にそれぞれ座金54を入れる。このとき、作業者は、座金54の中心の孔55(
図4参照)と下穴25とが上下方向に一致するように、座金54を配置する。
【0032】
次に、作業者は、ステンシルプレート30を取り付け凹部20の内側に入れる。このとき、ステンシルプレート30の長手方向両側で、ステンシルプレート30の貫通孔35、座金54の孔55、及び取り付け凹部20の下穴25が上下方向に一致する。
【0033】
次に、作業者は、ステンシルプレート30の貫通孔35、座金54の孔55、及び取り付け凹部20の下穴25にリベット50の胴部53を通す。このとき、胴部53の外径d1が下穴25の内径d2より大きいため、作業者は、リベット50を下穴25に圧入する。ここで圧入とは、圧を加えて入れることを意味し、その具体的な方法は限定されない。例えば、作業者は、金槌でリベット50の頭部52を上から叩くことにより胴部53を下穴25に圧入する。作業者は、リベット50の頭部52がステンシルプレート30の表面33に当たったところで圧入を止める。
【0034】
圧入が完了すると、ステンシルプレート30は
図3に示す態様にて取り付け凹部20に固定される。
【0035】
以上の構造のタイヤ加硫金型10で空気入りタイヤの加硫成型が行われる際は、
図1のようなタイヤ加硫金型10の内部に未加硫タイヤ(不図示)がセットされる。そして、セットされた未加硫タイヤの内側に配置されているブラダー(不図示)が膨張し、未加硫タイヤの表面が金型内面(成型部材の成型面)に押し当てられる。この状態でタイヤ加硫金型10のサイドプレート14等が上記の加硫成型温度に保持され、未加硫タイヤが加硫成型される。
【0036】
図5に示すように、加硫成型後のタイヤTには、ステンシルプレート30によって標識Mが形成される。上記のようにステンシルプレート30の標識形成凹部31は凹部であるため、加硫成型後のタイヤTには標識Mが凸部として形成される。
【0037】
タイヤTの標識Mを変更するときは、作業者は、ステンシルプレート30の貫通孔35、座金54の孔55、及び取り付け凹部20の下穴25からリベット50を引き抜き、ステンシルプレート30を取り外す。そして、作業者は、新しいステンシルプレート30を取り付け凹部20に配置し、新しいリベット50をステンシルプレート30の貫通孔35及び座金54の孔55に通し、下穴25に圧入する。それにより新しいステンシルプレート30が取り付け凹部20に固定される。
【0038】
以上のように、本実施形態では、作業者がステンシルプレート30の貫通孔35及び取り付け凹部20の下穴25にリベット50を通して、ステンシルプレート30を取り付け凹部20に固定するため、従来のような作業者がねじを強く締めることに起因する不具合を無くすことができる。
【0039】
ステンシルプレート30をねじ止めする従来の方法では、作業者が、ねじを締める作業を終了すべき時点を判断しにくい。それに対し、ステンシルプレート30をリベット50で止める本実施形態の方法では、作業者が、リベット50の押し込みを終了すべき時点を判断しやすい。そのため、作業者がリベット50を押し込み過ぎることがなく、また2つのリベット50の押し込み量を均等にしやすいため、ステンシルプレート30が変形したり、ステンシルプレート30の長手方向の一方が浮いたりしにくい。
【0040】
特に、リベット50が胴部53と頭部52とからなり、作業者がリベット50をその長手方向に押し込むため、リベット50の頭部52がステンシルプレート30の表面33に当たったことが作業者にわかりやすく、作業者がリベット50を押し込み過ぎることがない。
【0041】
また、従来のようにステンシルプレートをねじ止めする場合には、ねじを締める方向にねじりモーメントが生じ、その力がステンシルプレートに伝わる。しかし本実施形態ではリベット50をその長手方向に押し込むため、リベット50にねじりモーメントが生じず、ステンシルプレート30がねじりモーメントの力で変形することがない。
【0042】
このように、ステンシルプレート30が変形したり浮いたりしにくいため、加硫成型時にゴムがステンシルプレート30の下に侵入しタイヤTの表面に不要なゴムの突起が形成されてしまうということが起こりにくい。
【0043】
また、本実施形態の下穴25にはねじが切られていないため、従来のようにねじ穴が早期に潰れてしまうという問題も生じない。
【0044】
また、リベット50として、胴部53の外径d1が下穴25の内径d2より大きいものを使用し、作業者がリベット50を下穴25に圧入することによってステンシルプレート30を取り付けるため、リベット50が下穴25から抜けにくくステンシルプレート30が外れにくい。
【0045】
ここで、(胴部53の外径d1)/(下穴25の内径d2)≧1.005であれば、作業者が力でリベット50を下穴25から抜こうとしない限り、リベット50が下穴25から抜けにくい。
【0046】
また、(胴部53の外径d1)/(下穴25の内径d2)≦1.05であれば、ステンシルプレート30を交換するときに、作業者がリベット50を下穴25から引き抜くことが比較的容易にできる。
【0047】
また、リベット50の胴部53が直円柱であり、その胴部53の全体において外径d1が下穴25の内径d2より大きいため、リベット50が下穴25から抜けにくい。
【0048】
また、取り付け凹部20の底面21とステンシルプレート30との間に座金54を入れるため、作業者がリベット50を圧入するときにリベット50を押し過ぎたとしても、ステンシルプレート30が裏面34側から座金54によって支えられて変形しにくい。特に、リベット50の頭部52と座金54とをリベット50の長手方向に重ねれば、その効果が大きい。
【0049】
ここで、ステンシルプレート30の標識形成凹部31の裏側には膨出部32が現れるため、標識形成凹部31の裏側には座金54を配置することができない。そのため座金54が大きいと標識形成凹部31を形成できる部分の面積が小さくなってしまう。しかし本実施形態で使用するリベット50は、ねじのようにねじ山がなく、ねじと比べて小径にすることができる。そのため、リベット50を囲むリング状の座金54も小径にすることができる。このようにリベット50及び座金54を小径にすることができるため、標識形成凹部31を形成できる部分の面積を大きく確保できる。
【0050】
また、ステンシルプレート30の標識形成凹部31が凹部であり、タイヤTには標識Mが凸部として形成されるため、標識Mの視認性が良い。また、標識Mを凸部として形成すべきという近年の要求があり、その要求に応えることができる。
【0051】
以上の実施形態は例示であり、発明の範囲は以上の実施形態に限定されない。以上の実施形態に対し、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、様々な変更を行うことができる。以下では複数の変更例について説明するが、上記実施形態に対して、複数の変更例のうちいずれか1つを適用しても良いし、複数の変更例のうちいずれか2つ以上を組み合わせて適用しても良い。
【0052】
(変更例1)
使用前のリベットの形状は上記実施形態のものに限定されない。使用前のリベットにおいて、胴部の少なくとも一部が、サイドプレート14の下穴25の内径より大きければ良い。
【0053】
例えば
図7(a)に示すリベット150では、胴部153がリベット150の先端に向かって徐々に拡径している。また
図7(b)に示すリベット250では、胴部253がリベット250の先端に向かって徐々に縮径している。これらのリベット150、250において、少なくとも胴部153、253の最大径の位置での外径が、サイドプレート14の下穴25の内径より大きければ良い。
【0054】
また、胴部の断面形状(リベットの長手方向に直交する断面での形状)は、円形に限定されない。例えば
図7(c)に示すリベット350のように、胴部353の断面形状が楕円形であっても良い。胴部353の断面形状が楕円形の場合、その楕円の長径が、サイドプレート14の下穴25の内径より大きければ良い。
【0055】
(変更例2)
図8に示すように、サイドプレート14の下穴25の中に、下穴25の底面から開口端まで延びる筒状の筒部材125が設けられていても良い。筒部材125の外径面は下穴25の内径面に接している。そして、筒部材125の内径が、リベット50を圧入するのに適した長さになっている。
【0056】
このような筒部材125が設けられていれば、ステンシルプレート30の交換のためにリベット50を圧入したり外したりすることが何度も行われた場合、筒部材125の内径が広がってしまう可能性はあるが、下穴25の内径は広がらない。そのため、筒部材125の内径が広がってしまった場合に筒部材125だけを交換すれば良く、サイドプレート14を交換する必要がない。
【0057】
(変更例3)
取り付け凹部20の底面21とステンシルプレート30との間に入れる座金は、上記実施形態のようなリング状のものに限定されない。例えば座金として、底面21に直交する方向から見てC字型のもの等を使用しても良い。また、ステンシルプレート30の長手方向両側に配置される2つの座金が連結されて1つのスペーサとなったものを使用しても良い。
【0058】
(変更例4)
ステンシルプレート30が設けられる成型部材はサイドプレート14に限定されない。例えばビードリング16に上記実施形態と同じ取り付け凹部20が形成され、その取り付け凹部20に上記実施形態と同様にステンシルプレート30が設けられても良い。
【0059】
(変更例5)
ステンシルプレートの標識形成部は、上記実施形態とは逆に凸部として形成されていても良い。ステンシルプレートの標識形成部が凸部の場合、タイヤのサイド部の標識は凹部として形成される。
【0060】
(変更例6)
金型は、上記実施形態のようにセクター12、サイドプレート14及びビードリング16を備えたものに限定されない。例えば、上型及び下型からなり、トレッド部を含むタイヤ外面の全体を上型及び下型の2つの型で成型する金型が知られている。そのような金型において、上記実施形態と同様の構成でステンシルプレートが設けられても良い。
【符号の説明】
【0061】
T…タイヤ、M…標識、10…タイヤ加硫金型、12…セクター、12a…成型面、14…サイドプレート、14a…成型面、16…ビードリング、16a…成型面、20…取り付け凹部、21…底面、22…側壁、25…下穴、30…ステンシルプレート、31…標識形成凹部、32…膨出部、33…表面、34…裏面、35…貫通孔、50…リベット、52…頭部、52a…頂部、53…胴部、54…座金、55…孔、125…筒部材、150…リベット、153…胴部、250…リベット、253…胴部、350…リベット、353…胴部