IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 上野製薬株式会社の特許一覧

特許7365861フィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】フィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20231013BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231013BHJP
   H01B 3/42 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C08L67/02
C08J5/18 CFD
H01B3/42 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019201528
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021075598
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】石津 忍
(72)【発明者】
【氏名】木原 正博
(72)【発明者】
【氏名】北林 賢一
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-144421(JP,A)
【文献】特開2017-171800(JP,A)
【文献】特開2017-214460(JP,A)
【文献】特開2015-183159(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181525(WO,A1)
【文献】特表平08-510784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08G 63/00- 64/42
C08J 5/00- 5/02
C08J 5/12- 5/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、結晶融解温度が300℃以下である全芳香族液晶ポリエステル~99質量部を含有し、
ここで、全芳香族液晶ポリエステルは、式[I]および式[II]
【化1】
【化2】
で表される繰返し単位から構成され、
JIS C2565に準拠して測定される1GHzにおける誘電正接が0.0099以下である、フィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項2】
全芳香族液晶ポリエステルは、式[I]で表される繰返し単位を全繰返し単位中20モル%以上含む、請求項に記載のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
長さ80.0mm、幅10.0mm、厚さ4.0mmの短冊状試験片において、飽和水蒸気下、121℃、2気圧の条件で50時間処理した後に、ISO-178に準拠して測定された曲げ強度が30MPa以上である、請求項1または2に記載のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物から構成されるフィルム。
【請求項5】
請求項に記載の電気絶縁用フィルム。
【請求項6】
請求項に記載の電気絶縁用フィルムを含む電気電子部品。
【請求項7】
モーター、トランスおよびフィルムコンデンサーからなる群から選択される、請求項に記載の電気電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐加水分解性、耐熱性および誘電正接が改良されたフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物、該樹脂組成物から構成されるフィルム、および該フィルムを電気絶縁用フィルムとして含む電気電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モーター(電動機)においては、複数のコイル(電磁コイル)を互いに電気的に絶縁することを目的として、樹脂フィルムがスロットやウェッジの形に成形されてコイル間に挿入されている。また、トランス(変圧器)やコンデンサーについても、モーターと同じ目的で、コイル用巻線内や金属薄膜内の層間絶縁材やスペーサーとして樹脂フィルムが利用されている。これらの樹脂フィルムとしては、電気絶縁性、成形加工性に優れている点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが広く使用されている。
【0003】
近年、モーターやトランスさらにはフィルムコンデンサーの実用的な耐久性を高めるべく、これらに使用する樹脂フィルムに耐熱性および耐加水分解性が要求されている。例えば、冷蔵庫やエアコンディショナー、自動車などに用いられるモーターの樹脂フィルムとしては、このモーターの使用時の発熱に耐えられるだけの耐熱性が求められている。また、環境上の問題から、特定フロン全廃に関連して各種のフロン代替冷媒が次々と提案されているが、これらの冷媒およびそれに対応する潤滑油は水分を吸着しやすいため、耐加水分解性が求められている。さらに、自己発熱抑制の観点から、誘電正接の低い樹脂フィルムが求められている。
【0004】
これらの要求に応えるべく、電気絶縁用樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートと半芳香族液晶ポリエステルを含有してなる電気絶縁用フィルム(特許文献1)や、フィルムの厚み方向に多数の空洞を含有する電気絶縁用フィルム(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-130476号公報
【文献】特開2006-352470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の電気絶縁用フィルムでは、誘電正接の低減効果が乏しく、耐加水分解性の改善効果も不十分であった。また、特許文献2に記載の電気絶縁用フィルムは、誘電正接の低減効果は高いものの、空洞を安定的に形成させながら品質のバラつきの少ないフィルムを作製することが難しく、またフィルム内に空洞を形成することによって強度や耐熱性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、単独のポリエチレンテレフタレート樹脂と比較して、耐加水分解性および耐熱性に優れ、誘電正接が低いフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、単独のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムと比較して、耐加水分解性および耐熱性に優れ、誘電正接が低いポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、該フィルムをモーター、トランス、フィルムコンデンサー等の電気絶縁用フィルムとして用いることにより、装置寿命が延長し、省エネ性能が向上した電気電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ポリエチレンテレフタレート樹脂の耐加水分解性、耐熱性および誘電正接の改良について鋭意検討した結果、ポリエチレンテレフタレート樹脂に特定の結晶融解温度を有する全芳香族液晶ポリエステルを配合することにより、耐加水分解性、耐熱性および誘電特性に優れたフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、結晶融解温度が300℃以下である全芳香族液晶ポリエステル0.1~99質量部を含有し、JIS C2565に準拠して測定される1GHzにおける誘電正接が0.0099以下である、フィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
〔2〕全芳香族液晶ポリエステルは、
【化1】
【化2】
で表される繰返し単位を含む、〔1〕に記載のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。〔3〕全芳香族液晶ポリエステルは、式[I]で表される繰返し単位を全繰返し単位中20モル%以上含む、〔2〕に記載のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
〔4〕全芳香族液晶ポリエステルは、式[I]および式[II]で表される繰返し単位から構成される、〔2〕または〔3〕に記載のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
〔5〕長さ80.0mm、幅10.0mm、厚さ4.0mmの短冊状試験片において、飽和水蒸気下、121℃、2気圧の条件で50時間処理した後に、ISO-178に準拠して測定された曲げ強度が30MPa以上である、〔1〕~〔4〕に記載のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物。
〔6〕〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物から構成されるフィルム。
〔7〕〔6〕に記載の電気絶縁用フィルム。
〔8〕〔7〕に記載の電気絶縁用フィルムを含む電気電子部品。
〔9〕モーター、トランスおよびフィルムコンデンサーからなる群から選択される、〔8〕に記載の電気電子部品。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物および該樹脂組成物から構成されるフィルムは、耐加水分解性、耐熱性および誘電特性に優れる。また、該フィルムを電気絶縁用フィルムとして用いた電気電子部品は、装置寿命が延長し省エネ性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と1,2-エタンジオールまたはそのエステル形成性誘導体との縮合反応またはエステル交換反応により得られる重合体であり、他のモノマーに由来する構成成分を含んでいてもよい。
【0014】
他のモノマーに由来する構成成分としては、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分が挙げられる。
【0015】
他のモノマーに由来するジカルボン酸構成成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
【0016】
また、他のモノマーに由来するジオール構成成分としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3-ベンゼンジメタノール,1,4-ベンセンジメタノール、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、芳香族ジオール類等のジオール、もしくはそのエステル誘導体、上述のジオールが複数個連なったものなどが挙げられる。
【0017】
本発明に用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂にこれらの他のモノマーに由来する構成成分を含む場合、一種単独または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明に用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂の結晶融解温度は特に制限されないが、耐熱性に優れる点で、180℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、220℃以上であることが特に好ましく、通常は300℃以下である。
【0019】
本発明において「単独のポリエチレンテレフタレート樹脂」とは、樹脂成分として上記のポリエチレンテレフタレート樹脂のみを含むものであり、これはポリエチレンテレフタレート樹脂が他モノマーに由来する構成成分を含むものも包含する。
【0020】
本発明において、ポリエチレンテレフタレート樹脂に配合される全芳香族液晶ポリエステルは、異方性溶融相を形成するポリエステルであり、当業者にサーモトロピック液晶ポリエステルと呼ばれるものであって、結晶融解温度が300℃以下である全芳香族液晶ポリエステルであれば、特に制限されない。
【0021】
異方性溶融相の性質は直交偏向子を利用した通常の偏向検査法、すなわちホットステージにのせた試料を窒素雰囲気下で観察することにより確認できる。
【0022】
本発明において、300℃以下の結晶融解温度範囲を満たす全芳香族液晶ポリエステルとして、式[I]および式[II]で表される繰返し単位を含む全芳香族液晶ポリエステルが好適に使用される。さらに、式[I]および式[II]で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステルが特に好適に使用される。
【化3】
【化4】
【0023】
前者の場合、「式[I]および式[II]で表される繰返し単位を含む全芳香族液晶ポリエステル」は、全芳香族液晶ポリエステルがその構成成分として式[I]および式[II]で表される繰返し単位の他に、全芳香族液晶ポリエステルの結晶融解温度が300℃以下となる限り、他の繰返し単位を含有していてもよいことを意味する。この場合、その構成成分として式[I]および式[II]で表される繰返し単位を合計量で90モル%以上含む全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0024】
また、後者の場合、「式[I]および式[II]で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステル」は、全芳香族液晶ポリエステルがその構成成分として式[I]および式[II]で表される繰返し単位の他に他の繰返し単位を含有することなく、全芳香族液晶ポリエステルの結晶融解温度が300℃以下であることを意味する。
【0025】
これらの各繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステルは、その構成成分およびポリマー中の組成比、シークエンス分布によって、異方性溶融相を形成するものと異方性溶融相を形成しないものとが存在するが、本発明に使用される全芳香族液晶ポリエステルは異方性溶融相を形成するものに限られる。
【0026】
本発明の一実施形態において、全芳香族液晶ポリエステルは、式[I]で表される繰返し単位を全繰返し単位中、好ましくは20モル%以上含み、より好ましくは25~45モル%含む。式[I]で表される繰返し単位が全繰返し単位中20モル%未満である場合、全芳香族液晶ポリエステルの結晶融解温度が高くなる傾向がある。
【0027】
式[I]で表される繰返し単位を与える単量体としては、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ならびに、そのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0028】
式[II]で表される繰返し単位を与える単量体としては、4-ヒドロキシ安息香酸ならびに、そのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
【0029】
本発明に用いる全芳香族液晶ポリエステルを構成する、式[I]および式[II]で表される繰返し単位以外の繰返し単位として、(1)芳香族オキシカルボニル繰返し単位、(2)芳香族ジカルボニル繰返し単位および(3)芳香族ジオキシ繰返し単位が挙げられる。
【0030】
(1)芳香族オキシカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、3-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、5-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸、4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0031】
(2)芳香族ジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル等の芳香族ジカルボン酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中では、得られる液晶ポリエステルの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから、テレフタル酸および2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0032】
(3)芳香族ジオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエ-テル等の芳香族ジオール、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中では、重合時の反応性や得られる液晶ポリエステルの機械物性や結晶融解温度を適度なレベルに調整しやすいことから、ハイドロキノンおよび4,4’-ジヒドロキシビフェニルが好ましい。
【0033】
本発明にかかる全芳香族液晶ポリエステルは、本発明の目的を損なわない範囲で、アミド結合やチオエステル結合を含むものであってもよい。このような結合を与える単量体としては、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよびヒドロキシ芳香族チオール、およびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0034】
以上、本発明に用いる全芳香族液晶ポリエステルに含まれる繰返し単位とそれを与える単量体について説明したが、本発明において用いる全芳香族液晶ポリエステルとしては、示差走査熱量計により測定される結晶融解温度が300℃以下のものが使用される。
【0035】
尚、本明細書および特許請求の範囲において、「結晶融解温度」とは、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、以下DSCと略す)によって、昇温速度20℃/分で測定した際の結晶融解温度ピーク温度から求めたものである。より具体的には、全芳香族液晶ポリエステルの試料を、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1より20~50℃高い温度で10分間保持し、次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を全芳香族液晶ポリエステルの結晶融解温度とする。測定機器としては、例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製Exstar6000等を用いることができる。
【0036】
本発明に用いる全芳香族液晶ポリエステルの結晶融解温度は300℃以下であり、好ましくは160~300℃、より好ましくは190~295℃、さらに好ましくは210~290℃、特に好ましくは240~285℃である。
【0037】
全芳香族液晶ポリエステルの結晶融解温度が300℃を上回る場合、混練時や成形加工時にポリエチレンテレフタレート樹脂の分解が進行するため、ポリエチレンテレフタレート樹脂が有すべき優れた機械物性、耐熱性、成形性などが得られない。
【0038】
また、ポリエチレンテレフタレート連続相中での全芳香族液晶ポリエステル相の分散を均一なものとする点で、全芳香族液晶ポリエステルの結晶融解温度は160℃以上であることが好ましい。
【0039】
本発明で好ましく用いられる全芳香族液晶ポリエステルは、式[I]および式[II]で表される繰返し単位を含むものであって、その結晶融解温度が300℃以下である。
【0040】
本発明に用いる全芳香族液晶ポリエステルは、キャピラリーレオメーターを用いて融点+20℃、せん断速度1000s-1の条件で測定された溶融粘度が1~1000Pa・sであることが好ましく、5~300Pa・sであることがより好ましい。
【0041】
本発明に用いる全芳香族液晶ポリエステルの製造方法に特に限定はなく、前記の単量体成分によるエステル結合を形成させる公知のポリエステルの重縮合法、たとえば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などを用いることができる。
【0042】
溶融アシドリシス法とは、本発明に用いる全芳香族液晶ポリエステルを製造するのに適した方法であり、この方法では、最初に単量体を加熱して反応物質の溶融液を形成し、反応を継続することにより溶融ポリマーを得る。なお、縮合の最終段階で副生する揮発物(たとえば酢酸、水など)の除去を容易にするために真空を適用してもよい。
【0043】
スラリー重合法とは、熱交換流体の存在下で反応させる方法であって、固体生成物は熱交換媒質中に懸濁した状態で得られる。
【0044】
溶融アシドリシス法およびスラリー重合法のいずれの場合においても、全芳香族液晶ポリエステルを製造する際に使用する重合性単量体成分は、常温において、ヒドロキシル基をアシル化した変性形態、すなわち低級アシル化物として反応に供することもできる。低級アシル基は炭素原子数2~5のものが好ましく、炭素原子数2または3のものがより好ましい。特に好ましくは、前記単量体成分のアセチル化物を反応に用いる方法が挙げられる。
【0045】
単量体の低級アシル化物は、別途アシル化して予め合成したものを用いてもよいし、全芳香族液晶ポリエステルの製造時にモノマーに無水酢酸等のアシル化剤を加えて反応系内で生成せしめることもできる。
【0046】
溶融アシドリシス法またはスラリー重合法のいずれの場合においても反応時、必要に応じて触媒を用いてもよい。
【0047】
触媒の具体例としては、例えば、有機スズ化合物(ジブチルスズオキシドなどのジアルキルスズオキシド、ジアリールスズオキシドなど)、二酸化チタン、三酸化アンチモン、有機チタン化合物(アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなど)、カルボン酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩(酢酸カリウム、酢酸ナトリウムなど)、ルイス酸(BFなど)、ハロゲン化水素などの気体状酸触媒(HClなど)などが挙げられる。
【0048】
触媒の使用割合は、通常モノマーに対し10~1000ppm、好ましくは20~200ppmである。
【0049】
このような重縮合反応によって得られた全芳香族液晶ポリエステルは、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工され、ポリエチレンテレフタレート樹脂との混合に供される。
【0050】
本発明のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物における、ポリエチレンテレフタレート樹脂と全芳香族液晶ポリエステルの配合比は、ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、全芳香族液晶ポリエステル0.1~99質量部、好ましくは1~70質量部、より好ましくは3~50質量部、さらに好ましくは5~30質量部である。
【0051】
ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対する全芳香族液晶ポリエステルの比率が0.1質量部を下回ると、耐加水分解性、耐熱性および誘電正接の改良効果が十分に得られない。全芳香族液晶ポリエステルの比率が99質量部を上回ると、ポリエチレンテレフタレート樹脂の有する柔軟性や靭性などのしなやかな機械特性が損なわれると共に、フィルム加工性が悪化する。
【0052】
本発明のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、混合すべき全芳香族液晶ポリエステルの結晶融解温度が300℃以下であるという特徴を備える。この特徴により、マトリクス樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂の熱分解を抑制しながら溶融混練や成形加工が可能となり、フィルム成膜時に特に問題となり得る樹脂の炭化によって生じる異物の混入を防ぐとともに、本発明の目的である耐加水分解性、耐熱性および誘電特性に優れた樹脂組成物となり得る。したがって、混合に際して相溶化剤は特に必要ないが、ポリエチレンテレフタレート樹脂および全芳香族液晶ポリエステルの相溶性をより向上させる目的で、相溶化剤を添加してもよい。ここで、相溶化剤とは、混合ポリマーを構成する各ポリマーの相の界面に局在し、それらの相間の界面張力を低下させる機能を有するものをいう。相溶化剤としては、本発明の目的が達成される限り特にその種類は限定されないが、従来知られているもの、例えば特開2014-148616、特開2000-256517等に記載のものを用いることができる。相溶化剤を添加する場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.5~10質量部、好ましくは1~5質量部の量で添加することができる。
【0053】
本発明のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、JIS C2565に準拠して測定した1GHzにおける誘電正接が0.0099以下であり、誘電特性に優れるものである。誘電正接は0.0095以下であることが好ましく、0.0090以下であることがより好ましい。1GHzにおける誘電正接が0.0099を上回ると、フィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を電気絶縁用樹脂フィルムとして用いた場合に、電気電子部品の自己発熱抑制効果が得られにくくなる。
【0054】
本発明のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物には、ポリエチレンテレフタレート樹脂および全芳香族液晶ポリエステル以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに他の樹脂成分や添加剤を配合してもよい。他の樹脂成分としては、たとえばポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、非晶性ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、他のポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどの熱可塑性樹脂やその変性物、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。添加剤としては、酸化防止剤、塩酸吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、核剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物などの流れ性改良剤、ウェルド強度改良剤などが挙げられる。
【0055】
他の樹脂成分および添加剤はそれぞれ、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0056】
他の樹脂成分を配合する場合、該樹脂成分の配合量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂および全芳香族液晶ポリエステルの合計量100質量部に対して0.1~100質量部
であることが好ましく、0.1~80質量部であることがより好ましい。
【0057】
添加剤を配合する場合、該添加剤の配合量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂および全芳香族液晶ポリエステルの合計量100質量部に対して0.001~5質量部であることが好ましく、0.01~3質量部であることがより好ましい。
【0058】
本発明のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、上記のポリエチレンテレフタレート樹脂および全芳香族液晶ポリエステルを、必要により上記の相溶化剤、他の樹脂成分、添加剤と共に、混練機で溶融混練することにより製造することができる。相溶化剤、他の樹脂成分および添加剤は、予めポリエチレンテレフタレート樹脂または全芳香族液晶ポリエステルのいずれかに配合してもよく、また、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を成形加工する際に配合してもよい。
【0059】
混練機としては、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出し機などが使用される。例えば、二軸押出し機を用いた場合などは、ベントポートを真空にしながら混練を行うのがよいが、これに限らず、不活性ガス雰囲気下で混練を行ってもよい。
【0060】
本発明のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、長さ80.0mm、幅10.0mm、厚さ4.0mmの短冊状試験片において、飽和水蒸気下、121℃、2気圧の条件で50時間処理した後に、ISO-178に準拠して測定された曲げ強度が30MPa以上であることが好ましく、35MPa以上であることがより好ましく、40MPa以上であることがさらに好ましい。曲げ強度は、通常150MPa以下である。
【0061】
本発明のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、公知の押出成形、例えば、Tダイ法、インフレーション法やカレンダー法などによってフィルムに成形される。フィルムに成形する際、延伸されていてもよく、無延伸であってもよい。
【0062】
フィルムの厚さは、好ましくは0.5μm~10mm、より好ましくは0.5μm~5mm、さらに好ましくは0.5μm~2mmである。
【0063】
本発明のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物から構成されるフィルムは、単独のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムと比較して、耐加水分解性および耐熱性に優れ、誘電正接が低いという特徴を有するため、モーター、トランス、フィルムコンデンサー等の電気電子部品の電気絶縁用フィルムとして好適に用いることができる。本発明の電気絶縁用フィルムを用いた電気電子部品は、装置寿命が延長し省エネ性能が向上するという効果を奏する。
【0064】
電気絶縁用フィルムの好適な厚さは用途により異なり、モーターに用いる場合は100μm~500μmが好ましく、トランスに用いる場合は10μm~200μmが好ましく、フィルムコンデンサーに用いる場合は0.5μm~10μmが好ましい。
【実施例
【0065】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例における各物性値は以下の方法によって測定した。
【0066】
<結晶融解温度>
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製Exstar6000)を用いて、試料を室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)を測定した後、Tm1より50℃高い温度で10分間保持する。次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却し、さらに再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を結晶融解温度(Tm)とした。
【0067】
<曲げ強度>
日精樹脂工業(株)製射出成形機(UH1000-110)を用いて、長さ80.0mm、幅10.0mm、厚さ4.0mmの短冊状試験片に成形し、これを用いてISO-178に準拠し、万能試験機(インストロンジャパンカンパニイリミテッド製、INSTRON5567)で曲げ強度を測定した。
【0068】
<PCTにて50時間処理後の曲げ強度>
日精樹脂工業(株)製射出成形機(UH1000-110)を用いて、長さ80.0mm、幅10.0mm、厚さ4.0mmの短冊状試験片に成形し、これを(株)平山製作所製の高加速寿命試験装置(PCT装置)PC-242HSにセットし、飽和水蒸気下、121℃、2気圧の条件で50時間処理した後に、23℃、湿度50%の恒温恒湿装置内で48時間静置し、ISO-178に準拠して、万能試験機(インストロンジャパンカンパニイリミテッド製、INSTRON5567)で曲げ強度を測定した。
【0069】
<1GHzにおける誘電正接>
試料を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製NEX-15-1E)を用いて、長さ85mm、幅1.70mm、厚さ1.70mmのスティック状試験片に成形した。その試験片を用いて、ネットワークアナライザー(アジレントテクノロジー社製PNAシリーズE8361A)にて1GHzにおける誘電率をJIS C2565に準拠する空洞共振器摂動法により測定した。
【0070】
<100μmフィルム引張伸び>
厚さ0.1mmのTダイ無延伸フィルムを製膜し、押出方向に対して長尺になるように幅25mm、長さ150mmの試験片を切り出し、チャック間距離100mm、引張速度5mm/分で引張試験を行い、降伏点もしくは破断点のいずれか早い点を引張伸びとして測定した。
【0071】
<荷重撓み温度(DTUL)>
日精樹脂工業(株)製射出成形機(UH1000-110)を用いて、長さ80.0mm、幅10.0mm、厚さ4.0mmの短冊状試験片に成形し、これを用いてISO-75に準拠して、荷重0.46MPa、昇温速度2℃/分で測定した。
【0072】
実施例において、下記の略号は以下の化合物を表す。
PET :ポリエチレンテレフタレート
LCP :全芳香族液晶ポリエステル
POB :4-ヒドロキシ安息香酸
BON6:6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸
HQ :ハイドロキノン
TPA :テレフタル酸
【0073】
(ポリエチレンテレフタレート樹脂)
実施例において、ポリエチレンテレフタレート樹脂として以下のものを使用した。
PET-1:ユニチカ社製 SA-1206(ホモPET、融点247℃)
PET-2:ユニチカ社製 SA-8339P(イソフタル酸共重合PET、融点230℃)
PET-3:ユニチカ社製 MA-8942(共重合PET、融点190℃)
【0074】
(LCP-1の合成)
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた2Lの反応容器にPOBおよびBON6を、下記に示す組成比で、総量6.5モルとなるように仕込み、全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
POB :655.4g(73モル部)
BON6:330.2g(27モル部)
【0075】
窒素ガス雰囲気下に室温から150℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去させつつ210℃まで速やかに昇温し、同温度にて30分間保持した。その後、325℃まで5時間かけて昇温した後、90分かけて20mmHgにまで減圧を行い、所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕を行い、全芳香族液晶ポリエステルのペレット(LCP-1)を得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。
【0076】
得られたLCP-1のDSCにより測定された結晶融解温度は278℃であった。
【0077】
(LCP-2の合成)
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた2Lの反応容器にBON6、POB、HQおよびTPAを、下記に示す組成比で、総量5モルとなるように仕込み、次いで酢酸カリウム0.05g(全モノマーに対し67モルppm)および全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.025倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
POB :276.23g(40モル部)
BON6:376.34g(40モル部)
HQ :55.05g(10モル部)
TPA :83.06g(10モル部)
【0078】
窒素ガス雰囲気下に室温~150℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去させつつ210℃まで速やかに昇温し、同温度にて30分間保持した。その後、335℃まで3時間かけて昇温した後、30分かけて20mmHgにまで減圧を行い、所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕を行い、全芳香族液晶ポリエステルのペレット(LCP-2)を得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。
【0079】
得られたLCP-2のDSCにより測定された結晶融解温度は221℃であった。
【0080】
[実施例1]
PET-1およびLCP-1を、表1に記載の質量比となるようにブレンドし、2軸押出機((株)池貝製、PCM-30)を用いて、290℃のシリンダ温度にて溶融混錬を行い、LCPが均一に分散されたフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを得た。
【0081】
得られたペレットについて、上記の方法により、曲げ強度、PCTにて50時間処理後の曲げ強度、1GHzにおける誘電正接、100μmフィルム引張伸びおよびDTULを測定した。結果を表1に示す。
【0082】
[実施例2~6および比較例1~3]
ポリエチレンテレフタレート樹脂およびLCPを、表1~2に示す種類および比率に変更したこと以外は実施例1と同様にしてフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを取得し、同様の測定を行った。結果を表1~2に示す。
【0083】
[実施例7~9(参考例)および比較例4]
ポリエチレンテレフタレート樹脂およびLCPを、表3に示す種類および比率に変更し、2軸押出機のシリンダ温度を230℃としたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを取得し、同様の測定を行った。結果を表3に示す。

【0084】
表1~3から明らかなように、実施例1~9の本発明によるフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、単独のポリエチレンテレフタレート樹脂(比較例1、3および4)と比較して、耐加水分解性および耐熱性に優れ、誘電正接が低いものであった。
【0085】
また、本発明のフィルム用ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなるフィルムは、単独のポリエチレンテレフタレート樹脂からなるフィルムと比較して、同等程度の引張伸びを示し、フィルムとしての性能を満足するものであった。
【0086】
ポリエチレンテレフタレート樹脂に対する全芳香族液晶ポリエステルの質量部が過剰である比較例2は、引張伸びが著しく低く、フィルムとしての性能を損なうものであった。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】