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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20231013BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20231013BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B60C11/13 A
B60C11/03 300E
B60C11/12 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019211365
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021079903
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生野 裕亮
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-160195(JP,A)
【文献】特開2009-090680(JP,A)
【文献】特開2010-274695(JP,A)
【文献】国際公開第2015/011964(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/171554(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる主溝とタイヤ周方向に間隔をおいて配された横溝とにより区画されたブロックがタイヤ周方向に並んで設けられたブロック列を備えるタイヤにおいて、
前記主溝における前記ブロック列側の側壁に設けられた棚部と、前記横溝における前記主溝側の端部において溝底を隆起させて設けられてタイヤ周方向で隣り合うブロック同士を連結する底上げ部と、を備え、
前記棚部が、前記主溝の溝底から立ち上がる立上り面と、上面である棚面とを備え、
前記底上げ部が前記棚部上に延在して前記棚部の前記棚面に対して上方に突出して設けられた、タイヤ。
【請求項2】
前記主溝の前記側壁が前記棚面よりもタイヤ径方向外側の部分でタイヤ周方向にジグザグ状に形成された、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ブロックにタイヤ幅方向に延びるサイプが設けられ、前記サイプの前記主溝側の端部が前記ブロック内で終端している、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トレッド部に、主溝と横溝により区画されたブロックをタイヤ周方向に並べて設けてなるブロック列を備えたタイヤにおいて、その横溝に溝底を隆起させた底上げ部を設けることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、横溝の主溝側への端部に底上げ部を設け、該底上げ部を主溝内に突出させることにより、ブロック剛性を高めて耐偏摩耗性や操縦安定性を向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-001921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような主溝内に突出した底上げ部は雪道においてエッジ効果を発揮することができ、雪道での走行性能であるスノー性能を向上させることができる。しかしながら、上記従来のように、横溝に設けた底上げ部をそのまま主溝内に突出させると、該突出部によって主溝の排水性が低下してしまう。
【0006】
本発明の実施形態は、上記の点に鑑み、排水性の低下を抑えながらスノー性能を向上することができるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るタイヤは、タイヤ周方向に延びる主溝とタイヤ周方向に間隔をおいて配された横溝とにより区画されたブロックがタイヤ周方向に並んで設けられたブロック列を備えるタイヤにおいて、前記主溝における前記ブロック列側の側壁に設けられた棚部と、前記横溝における前記主溝側の端部において溝底を隆起させて設けられてタイヤ周方向で隣り合うブロック同士を連結する底上げ部と、を備え、前記底上げ部が前記棚部上に延在して前記棚部の棚面に対して突出して設けられたものである。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、主溝の側壁に棚部を設けた上で、該棚部上に底上げ部を延在させて棚面から突出した形状としたことにより、排水性の低下を抑えながら、エッジ効果を持たせることができ、スノー性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るタイヤのトレッドパターンを示す展開図
図2】同トレッドパターンの要部拡大図
図3図2の要部を更に拡大して示す図
図4図3のIV-IV線断面図
図5図3のV-V線断面図
図6】同実施形態のトレッド部の要部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
一実施形態に係るタイヤは、空気入りタイヤであり、左右一対のビード部及びサイドウォール部と、左右のサイドウォール部のタイヤ径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール部間に設けられたトレッド部とを備えて構成されている。タイヤの内部構成は、特に限定されず、例えば、ビード部に埋設された環状のビードコアと、一対のビード部間にトロイダル状に延びるラジアル構造のカーカスプライと、トレッド部においてカーカスプライのタイヤ径方向外側に設けられたベルト及びトレッドゴム等を有して構成される。本実施形態では、トレッドパターン以外については一般的なタイヤ構造を採用することができる。
【0012】
なお、本明細書における各形状及び寸法等は、特に断らない限り、タイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態でのものである。正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」である。正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の「最大値」、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」である。
【0013】
図1は、一実施形態に係るタイヤのトレッド部10の一部展開図である。図中、符号CLは、タイヤ幅方向中心に相当するタイヤ赤道面を示す。符号WDは、タイヤ幅方向(タイヤ軸方向とも称される。)を示し、タイヤ幅方向WD内側とはタイヤ赤道面CLに近づく方向をいい、タイヤ幅方向WD外側とはタイヤ赤道面CLから離れる方向をいう。符号CDは、タイヤ回転軸を中心とした円周上の方向であるタイヤ周方向を示す。また、図4~6において、符号RDは、タイヤ径方向(タイヤ回転軸に垂直な方向)を示し、タイヤ径方向RD内側とはタイヤ回転軸に近づく方向をいい、タイヤ径方向RD外側とはタイヤ回転軸から離れる方向をいう。
【0014】
符号TEは、トレッド部10の接地端を示す。接地端TEは、接地面10Aにおけるタイヤ幅方向WDの最外位置である。接地面10Aは、タイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド部10の表面を指す。正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば"LOAD CAPACITY"であるが、タイヤが乗用車用である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
【0015】
図1に示すタイヤは、車両に装着される際の表裏の指定があるタイヤであり、すなわち、車両に装着する際に外側に装着される面と内側に装着される面とが指定されている。そのため、タイヤの例えばサイド部には、車両への装着向きを指定するための表示が設けられている。図1中、符号OUTで示す側が車両装着姿勢において外側(車両外側)に向き、符号INで示す側が車両装着姿勢において内側(車両内側)に向くように、車両に装着される。
【0016】
トレッド部10の表面には、タイヤ周方向CDに延びる複数の主溝12がタイヤ幅方向WDに間隔をおいて設けられている。この例では、主溝12は3本、即ち、タイヤ赤道面CL上に位置するセンター主溝12Aと、その両側に配された一対のショルダー主溝12B,12Bが設けられており、いずれもタイヤ周方向CDに平行に延びるストレート状である。なお、主溝12は、一般に5mm以上の溝幅(開口幅)を持つ周方向溝である。
【0017】
トレッド部10には主溝12によって複数の陸部が区画形成されている。詳細には、センター主溝12Aとショルダー主溝12Bとの間に挟まれた左右のセンター陸部14,16と、ショルダー主溝12Bのタイヤ幅方向WD外側に位置して接地端TEを含む左右のショルダー陸部18,20が設けられている。センター陸部14,16は、タイヤ周方向CDに連続するリブとして形成されており、ショルダー陸部18,20は、タイヤ幅方向WDに延びて当該陸部を横断する横溝22,24をタイヤ周方向CDに間隔をおいて設けることにより複数のブロック26,28をタイヤ周方向CDに配設してなるブロック列として形成されている。
【0018】
この例ではトレッドパターンはタイヤ赤道面CLに関して非対称であり、4つの陸部のうち車両内側INのショルダー陸部18のトレッドパターンに特徴がある。以下、このショルダー陸部18の構成について詳細に説明する。
【0019】
ショルダー陸部18は、ショルダー主溝12Bとタイヤ周方向CDに間隔をおいて配された複数の横溝22とにより区画されたブロック(ショルダーブロック)26がタイヤ周方向CDに複数並べて設けられたブロック列であり、ショルダー主溝12Bのタイヤ幅方向WD外側に設けられている。
【0020】
図2~6に示すように、ショルダー陸部18を区画するショルダー主溝12Bには、そのブロック列側(即ち、ショルダー陸部18側)の側壁30Aに棚部32が設けられている。棚部32は、ショルダー主溝12Bの溝底から立ち上がる立上り面33と、上面である棚面34とを備え、タイヤ周方向CDに延びている。棚面34は、ショルダー主溝12Bの溝底よりも高くかつ接地面10Aよりも低い位置にあり、この例では接地面10Aに平行な平面状をなしている。図5に示すように、棚部32は、上記側壁30Aの深さ方向における途中の位置からその上部側(即ち、溝の開口側)の側壁部分30A1を、溝幅を広げるように後退させることで形成されている。すなわち、ショルダー主溝12Bのショルダー陸部18側の側壁30Aは、その上部側の側壁部分30A1が主溝中心(ショルダー主溝12Bのタイヤ幅方向における中心)から離れる方向に位置するよう形成されている。
【0021】
棚部32での溝深さD1は、特に限定されないが、ショルダー主溝12Bの深さD0に対して20~70%でもよく、40~60%でもよい。棚部32での溝深さD1とは、接地面10Aから棚面34までの距離である。
【0022】
棚部32は、ショルダー主溝12Bの長さ方向において一定の幅で形成してもよいが、この例では、図2及び図6に示すように、ショルダー主溝12Bの上記側壁30Aが棚面34よりも上側(即ち、タイヤ径方向RD外側)の側壁部分30A1でタイヤ周方向CDにジグザグ状に形成されている。換言すれば、ブロック26のショルダー主溝12Bに面する側面が、棚面34よりも上側の部分において、図2に示すトレッド表面から見て平面視ジグザグ状に形成されている。
【0023】
詳細には、側壁部分30A1は、図2に示すように、タイヤ周方向CDに対する傾斜角度が小さい長尺部36と、長尺部36よりもタイヤ周方向CDに対する傾斜角度が大きくかつ長さの短い短尺部38とを、タイヤ周方向CDに交互に設けてなるジグザグ状をなしている。そして、ショルダー主溝12B内に向かって突出する鋭角状のエッジ部40がショルダー主溝12Bの深さ方向に延びて形成されている。側壁部分30A1のジグザグ形状は、図6に示すように、タイヤ径方向RDにおいて実質上一定である。
【0024】
上記ジグザグ形状のタイヤ幅方向WDにおける振れ幅WS(図2参照)は、特に限定されず、例えば、各ブロック26のタイヤ周方向CDにおける長さ(主溝に面する部分での長さ)L1に対して10%以下でもよく、3~8%でもよく、5~8%でもよい。この例では、ジグザグ形状の振れ幅WSは棚面34の全幅にわたっており、そのため、側壁部分30A1のうち最も主溝中心側に位置する上記エッジ部40が棚部32の縁部に略一致している。なお、振れ幅WSは棚面34の全幅でなくてもよく、エッジ部40が棚部32の縁部まで延在しないように設けることで、各ブロック26のタイヤ周方向CDの全体に延びる棚面34を形成してもよい。
【0025】
図2及び図3に示すように、横溝22は、タイヤ幅方向WDに延びてショルダー陸部18を横断する溝であり、タイヤ周方向CDに所定間隔をおいて複数設けられている。横溝22は、タイヤ幅方向WDに延びる限り、タイヤ幅方向WDに平行でなくてもよく、タイヤ幅方向WDに対して傾斜して延びてもよい。横溝22は、ショルダー主溝12Bに通じるとともに、接地端TEを越えてそのタイヤ幅方向WD外側に延在している。
【0026】
図3及び図4に示すように、横溝22には、そのショルダー主溝12B側の端部において溝底を隆起させて溝深さをその他の部分よりも浅く形成した底上げ部42が設けられている。底上げ部42は、タイヤ周方向CDで隣り合うブロック26,26同士を連結する隆起部であり、タイバーとも称される。すなわち、底上げ部42は、横溝22の溝幅全体で形成されることにより前後のブロック26,26間を繋いでいる。
【0027】
図4に示すように、底上げ部42は、横溝22のショルダー主溝12B側の端部で最も高く隆起し、そこからタイヤ幅方向WD外側に向かって溝深さが漸次深くなって横溝22の一般部に至るように傾斜面状に形成されている。
【0028】
底上げ部42での溝深さD2は、横溝22の一般部での溝深さD3よりも浅く、また上記棚部32での溝深さD1よりも浅く設定されている。ここで、底上げ部42での溝深さD2とは、底上げ部42の頂面42A(即ち、最も溝深さの浅い上面)での接地面10Aからの深さである。底上げ部42の溝深さD2は、特に限定されず、例えば、横溝22の溝深さD3に対して10~50%でもよく、20~40%でもよい。また、棚部32での溝深さD1に対する底上げ部42での溝深さD2も特に限定されず、例えばD1を100%としてD2は20~80%でもよく、30~60%でもよい。
【0029】
底上げ部42のタイヤ幅方向WDにおける長さL2(図2参照)は、特に限定されず、ショルダー陸部18におけるショルダー主溝12B側の端からの寸法で、ショルダー陸部18の幅W0に対して10~50%でもよく、20~40%でもよい。ここで、ショルダー陸部18の幅W0とは、接地端TEよりも内側でのタイヤ幅方向WDにおける寸法である。
【0030】
図4及び図6に示すように、底上げ部42は、棚部32上に延在し、棚面34に対して突出するように設けられている。すなわち、底上げ部42は、ブロック26の側面からショルダー主溝12B内に向かって突出するとともに、棚部32の上面である棚面34に対して上方に突出する凸部44を備える。凸部44は、横溝22の底上げ部42をそのまま棚部32上に延在させることで形成されており、そのため、凸部44の上面での接地面10Aからの深さは、底上げ部42の頂面42Aでの接地面10Aからの深さと一致している。
【0031】
棚部32上に延在する上記底上げ部42は、棚部32の縁部を越えてショルダー主溝12B内に突出しないように、棚部32内で終端しており、この例では、図4及び図6に示すように、底上げ部42は、棚面34の全幅に延在しており、その延在方向における先端面42Bが棚部32の縁部に一致することで、棚部32の立上り面33と底上げ部42の先端面42Bが同一平面状に形成されている。
【0032】
図3及び図6に示すように、横溝22の溝幅全体で形成された底上げ部42は、その幅のまま棚部32上に延在している。すなわち、底上げ部42の幅はその延在方向において一定であり、上記凸部44の幅は横溝22の溝幅と一致している。
【0033】
この例では、ジグザグ状をなす側壁部分30A1の振れ幅WSが棚面34の全幅にわたっており、横溝22の両側のブロック26,26において、一方側のブロック26ではその角部46が主溝中心から最も離れた位置にあり、他方側のブロック26ではその角部48が主溝中心に最も近い位置にある。そのため、図3及び図6に示すように、底上げ部42は、上記一方側のブロック26に対しては角部46を越えてショルダー主溝12B内に突出するのに対し、上記他方側のブロック26に対しては角部48の位置で終端しており、よって、タイヤ幅方向WDにおいて角部48の位置と底上げ部42の先端面42Bの位置とが一致している。
【0034】
ブロック26には、図2に示すように、タイヤ周方向CDにおけるエッジ効果を高めるためのタイヤ幅方向WDに延びる横サイプ50が設けられている。横サイプ50のタイヤ幅方向WDにおける延在方向は、タイヤ幅方向WDに平行でもよく、タイヤ幅方向WDに対して傾斜してもよい。横サイプ50は、各ブロック26において、タイヤ周方向CDに間隔をおいて複数設けられており、この例では3本が互いに平行に設けられている。
【0035】
横サイプ50は、接地端TE近傍からタイヤ幅方向WD内側に向かって延び、図3及び図5に示すように、そのショルダー主溝12B側の端部50Aがショルダー主溝12Bに開口することなく、ブロック26内で終端している。
【0036】
ブロック26には、また、タイヤ幅方向WDにおけるエッジ効果を高めるためのタイヤ周方向CDに延びる縦サイプ52が設けられている。縦サイプ52のタイヤ周方向CDにおける延在方向は、タイヤ周方向CDに平行でもよく、タイヤ周方向CDに対して傾斜してもよい。縦サイプ52は、タイヤ幅方向WDに間隔をおいて複数設けられており、この例では3本が互いに平行に設けられている。縦サイプ52は、横サイプ50と交差するように設けられている。
【0037】
これらの横サイプ50及び縦サイプ52は、この例では延在方向の全体が直線状のサイプとしたが、横断面形状が波形をなす波形部を含む波形サイプとしてもよい。なお、横サイプ50や縦サイプ52などのサイプの溝幅は通常1.5mm以下であり、0.4~1.2mmでもよい。
【0038】
以上よりなる本実施形態に係るタイヤであると、ショルダー主溝12Bの側壁30Aに棚部32を設けた上で、横溝22に設けた底上げ部42を該棚部32上に延在させて棚面34から突出した形状としている。棚面34から突出した底上げ部42の凸部44により、雪道の路面をグリップするためのエッジ効果が発揮されるので、スノー性能を向上することができる。一方で、該凸部44は棚部32上に設けられており、横溝からショルダー主溝にそのまま突出することでその本来の流路の一部を遮るものではないので、排水性の低下を抑制することができる。そのため、本実施形態によれば、排水性の低下を抑えながら、スノー性能を向上することができる。
【0039】
底上げ部42はショルダー主溝12B内に大きく突出するものではないため、ショルダー主溝12B内に大きく突出させる態様と比べてブロック26の剛性低下を伴うことが考えられる。しかしながら、ブロック26には棚部32が設けられることで基部側が支えられており、また、底上げ部42により隣接するブロック26,26が連結されて支え合っている。そのため、ブロック26の剛性低下を抑えることができる。
【0040】
また、ブロック26に設けられた横サイプ50において、その主溝側、即ちショルダー主溝12B側の端部50Aをブロック26内で終端するクローズドサイプとしたことによっても、ブロック26の剛性低下を抑えることができる。そのため、横サイプ50によるエッジ効果を発揮しつつ、ブロック26の剛性低下を抑えることができる。
【0041】
また、棚部32を設けたショルダー主溝12Bの側壁30Aにおいて棚面34よりも上側の側壁部分30A1をジグザグ状に形成したことにより、上記底上げ部42の凸部44とともに、タイヤ周方向CDにおけるエッジ効果を更に高めることができ、スノー性能を向上することができる。
【0042】
以上の実施形態では、一対のショルダー陸部18,20のうち、車両内側INのショルダー陸部18について棚部32及び底上げ部42を備えた構成を適用したが、かかる構成は車両外側OUTのショルダー陸部20に適用してもよく、また、センター陸部をブロック列とした上で適用してもよい。また、上記実施形態では主溝12が3本の場合について説明したが、主溝の本数は特に限定されず、例えば、4本の主溝を持つトレッドパターンにおいて、一対のセンター主溝間に設けられるセンター陸部や、センター主溝とショルダー主溝との間に設けられる中間陸部や、ショルダー主溝の外側に設けられるショルダー陸部において、同様の棚部32及び底上げ部42を備えた構成を採用してもよい。
【0043】
本実施形態に係る空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤ、トラックやバスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック(例えば、SUV車やバン(ライトバン)、ピックアップトラック)用タイヤなど、各種車両用のタイヤが挙げられる。また、用途も特に限定されない。好ましくは、オールシーズンタイヤやウインタータイヤに用いることであり、またライトトラック用タイヤに用いることである。ここで、ライトトラックとは、ライトデューティートラックとも称され、アメリカ合衆国における自動車の分類で、貨物の積載量が4000ポンド(1815kg)未満のトラックまたはトラックベースの自動車をいう。
【0044】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
10…トレッド部、12B…ショルダー主溝(主溝)、18…ショルダー陸部(ブロック列)、22…横溝、26…ブロック、30A…ブロック列側の側壁、30A1…棚面よりもタイヤ径方向外側の側壁部分、32…棚部、34…棚面、42…底上げ部、50…横サイプ、CD…タイヤ周方向、RD…タイヤ径方向、WD…タイヤ幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6