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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
B60J5/00 501E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019233212
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021102354
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小原 義弘
(72)【発明者】
【氏名】小田 廣
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特許第2636596(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3031068(JP,U)
【文献】特開2008-113687(JP,A)
【文献】特開2019-164274(JP,A)
【文献】特開2006-342922(JP,A)
【文献】特開2006-069428(JP,A)
【文献】特開昭60-151125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00-5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアのドアインナーパネルに取付けられるドアホールシールの一部を構成するシートであって、
前記ドアインナーパネルのサービスホールを取り囲む周縁部分と、前記周縁部分に取り囲まれた中側部分と、を含み、
前記中側部分と前記周縁部分との境界に沿って、複数の孔が形成されており、
前記複数の孔のそれぞれは、第1グループと第2グループとを含む複数のグループから成っており、
前記第1グループは、前記第2グループよりも前記境界に近い側に形成されており、
前記第1グループに属する隣り合う2つの前記孔の間に形成された領域の面積が、前記第2グループに属する隣り合う2つの前記孔の間に形成された領域の面積よりも小さい、シート。
【請求項2】
前記第1グループに属する前記孔の大きさは、前記第2グループに属する前記孔の大きさよりも大きい、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記第1グループに属する隣り合う2つの前記孔における、前記境界に沿う方向の間隔が、前記第2グループに属する隣り合う2つの前記孔における、前記境界に沿う方向の間隔よりも狭い、請求項1または2に記載のシート。
【請求項4】
前記孔の形状が、円形状または楕円形状である、請求項1から3までの何れか1項に記載のシート。
【請求項5】
前記孔の形状が、スリット形状である、請求項1から3までの何れか1項に記載のシート。
【請求項6】
前記複数の孔のそれぞれが、前記境界に沿って規則的に並んでいる、請求項1から5までの何れか1項に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアのドアインナーパネルに取付けられるドアホールシールの一部を構成するシートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両のドアは、車外側に配置されるドアアウターパネルと、ドアトリムと、ドアアウターパネルとドアトリムとの間に設けられるドアインナーパネルと、を主に備えて構成されている。また、従来、ドアインナーパネルとドアトリムとの間にドアホールシールが取付けられたものがある。
【0003】
また、近年、車外からの音を遮断するために、EPDM(エチレン‐プロピレン‐ジエン系三元共重合体ゴム)などのエラストマーの発泡体をドアホールシールとして使用するケースがある(特許文献1参照)。図6の符号602で示す図は、このタイプのドアホールシールの構造を示す模式図である。同図に示すように、このタイプのドアホールシールは、第1シート100および第2シート200を備える。なお、第1シート100は、第2シート200に対して溶着部120を介して溶着されている。
【0004】
次に、図6の符号601で示す図は、車両のドアへの装着前の第1シート100の構造を示す模式図である。車両のドアへの装着前は、第1シート100は、中側部分101と、周縁部分102と、を含み、中側部分101と、周縁部分102との間に環状のミシン目ライン104が形成されている。なお、中側部分101は、周縁部分102に取り囲まれた部分である。また、周縁部分102は、ドアインナーパネルのサービスホールを取り囲む部分である。さらに、第2シート200は、主にEPDMなどのエラストマーの発泡体から構成されている。
【0005】
このドアホールシールは、取付けの際には、または取付ける前には、ミシン目ライン104において切断されることで中側部分101が抜き取られ、周縁部分102が、ドア本体部分に残るように構成されている。図6の符号602で示す図では、ミシン目ライン104に沿って中側部分101と、周縁部分102とが切り離されることで中側部分101が抜き取られた状態を示している。このため、図6の符号602で示す図では、ミシン目ライン104は見られない。
【0006】
また、図6の符号602で示す図のドアホールシール、具体的には第1シート100は、ドアインナーパネルPにブチルシーラ等の粘着剤によって取り付けられる(図6の符号604で示す図参照)。この、第1シート100とドアインナーパネルPとを粘着する粘着剤から成る部分が粘着部130である。粘着部130は、周縁部分102に設けられている(図6の符号601で示す図参照)。さらに、図6の符号604で示す図のように、周縁部分102の粘着部130が設けられた面と反対側の面における、粘着部130の配置箇所よりも中側の箇所には、溶着部120が設けられている。この溶着部120によって、第1シート100と第2シート200とが溶着されている(図6の符号604で示す図参照)。なお、特許文献2に開示されたドアホールシールは、図6の符号602で示す図のドアホールシールと同様の構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3890568号明細書
【文献】特許第2636596号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
次に、図6の符号603および符号604で示す図は、符号602で示す図のドアホールシールにおけるA-A断面の矢視断面図である。同図に示すように、第1シート100の溶着部120よりも中側(紙面に対して下側)は、未溶着部分60となる。
【0009】
このため、図6の符号604で示す図ように、車両の振動やスピーカーの振動でドアホールシールの未溶着部分60(第1シート100の一部)が振動し、ドアインナーパネルPに干渉することで異音が発生し易くなる。また、上述したように、前記特許文献2に開示されたドアホールシールは符号602で示す図のドアホールシールと同様の構造を有しているため、符号602で示す図のドアホールシールと同様の問題点を有している。
【0010】
本発明の一態様は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、中側部分をシートから境界の際(キワ)に沿ってきれいに抜き取り易くし、シートの一部の振動に起因した異音の発生を低減させることができるシートを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシートは、車両のドアのドアインナーパネルに取付けられるドアホールシールの一部を構成するシートであって、前記ドアインナーパネルのサービスホールを取り囲む周縁部分と、前記周縁部分に取り囲まれた中側部分と、を含み、前記中側部分と前記周縁部分との境界に沿って、複数の孔が形成されており、前記複数の孔のそれぞれは、第1グループと第2グループとを含む複数のグループから成っており、前記第1グループは、前記第2グループよりも前記境界に近い側に形成されており、前記第1グループに属する隣り合う2つの前記孔の間に形成された領域の面積が、前記第2グループに属する隣り合う2つの前記孔の間に形成された領域の面積よりも小さい構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、中側部分をシートから境界の際に沿ってきれいに抜き取り易くし、シートの一部の振動に起因した異音の発生を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1に係るドアホールシールが取り付けられたフロントドアの車内側の構造を示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係るドアホールシールを構成するシートの上面図である。
図3】符号301で示す図は、前記シートにおける境界の周辺を部分的に拡大した部分拡大図であり、符号302で示す図は、変形例1のシートにおける境界の周辺を部分的に拡大した部分拡大図である。
図4】符号401で示す図は、図2に示すB-B断面の中側部分抜き取り前の矢視断面図であり、符号402で示す図は、図2に示すB-B断面の中側部分抜き取り後の矢視断面図である。
図5】符号501で示す図は、本発明の実施形態2に係るドアホールシールを構成するシートにおける境界の周辺を部分的に拡大した部分拡大図であり、符号502で示す図は、変形例3のシートにおける境界の周辺を部分的に拡大した部分拡大図である。
図6】符号601で示す図は、従来のドアホールシールを構成するシートの構造を示す模式図であり、符号602で示す図は、従来のドアホールシールの構造を示す模式図であり、符号603および604で示す図は、符号602で示す図におけるA-A断面の矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図1図4を用いて詳細に説明する。
【0015】
<ドアホールシールの取付け例>
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係るドアホールシール30が取り付けられたフロントドア(車両のドア)Dの車内側の構造について説明する。なお、図1の例において、紙面向かって右側が前側(フロント側)に、左側が後側(リヤ側)に、それぞれ対応している。
【0016】
図1に示すように、車両のフロントドア用開口部(図示せず)に開閉可能に設けられるフロントドアDは、ドアアウターパネル(図示せず)およびドアインナーパネルPを備える。ドアインナーパネルPには、ガラスやレギュレータを組み付けたり、補修したりするためのサービスホールP1が形成されている。
【0017】
また、第1シート10aは、ドアインナーパネルPにブチルシーラ等の粘着剤によって取り付けられる(図4の符号402で示す図参照)。この、第1シート10aとドアインナーパネルPとを粘着する粘着剤から成る部分が粘着部13である。粘着部13は、周縁部分2に設けられている(図2参照)。さらに、図4の符号402で示す図のように、周縁部分2の粘着部13が設けられた面と反対側の面における、粘着部13の配置箇所よりも中側の箇所には、溶着部12が設けられている。この溶着部12によって、第1シート100と第2シート200とが溶着されている(図4の符号402で示す図参照)。
【0018】
ドアホールシール30は、ドアインナーパネルPに形成されたサービスホールP1等を車内側から塞ぐことで、ドアガラス(図示せず)とドアアウターパネルとの間から浸入した雨水等が、サービスホールP1を通ってさらに車内に浸入するのを防止する。
【0019】
なお、上述したドアホールシール30の取付けはあくまで一例であり、例えば、ドアホールシール30はリアドア(図示せず)に取り付けてもよい。このように、本発明の一実施形態に係るドアホールシールが取り付けられる車両のドアについて、その種類は限定されない。また、本発明の一実施形態に係るドアホールシールの取付け対象となる車両についても、ハードトップ車あるいはコンバーチブル車など、その種類は限定されない。
【0020】
<第1シートの構造>
次に、図2図4に基づき、本発明の実施形態1に係る第1シート(シート)10aおよびドアホールシール30の構造について説明する。第1シート10aは、フロントドアDのドアインナーパネルPに取付けられるドアホールシール30の一部を構成するシートである。本実施形態の第1シート10aは、透明性を有する樹脂材料で構成される。この樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等を例示することができる。
【0021】
図2に示すように、第1シート10aは、周縁部分2と、周縁部分2に取り囲まれた中側部分1と、を含む。周縁部分2は、ドアインナーパネルPに形成されたサービスホールP1を取り囲む部分である。また、第1シート10aでは、中側部分1と周縁部分2との境界50に沿って、複数の孔3aおよび孔4aが形成されている。境界50は、中側部分1と周縁部分2とを概念的に分ける仮想的な境目、言い換えれば設計上の境目のことである。
【0022】
孔3aおよび孔4aは、第1シート10aから中側部分1を抜き取るための孔であり、本実施形態では、円形状の孔となっている。なお、孔3aおよび孔4aの形状は、円形状に限定されない。例えば、孔3aおよび孔4aの形状は楕円形状であっても良い。これにより、孔の形状を円形状または楕円形状にしない場合と比較して、シート全体における未溶着部分が占める範囲をより小さくすることができる。このため、第1シート10aの一部の振動に起因した異音の発生をより低減させることができる。
【0023】
本実施形態では、複数の孔3aおよび孔4aを含む複数の孔のそれぞれは、第1グループG1に属する孔と、第2グループG2に属する孔とから成っている。また、本実施形態では、これらのグループは、境界50に近いグループから順に帯状の複数の列を為している。
【0024】
また、複数の孔3aは、第1グループG1に属している。一方、複数の孔4aは、第2グループG2に属している。第1グループG1に属する孔、および第2グループG2に属する孔は、ともに中側部分1に形成されており、かつ、第1グループG1は、第2グループG2と比較して境界50に近い側に存在している。
【0025】
また、本実施形態では、境界50に近い順に、別の見方をすれば溶着部12に近い順に、第1グループG1および第2グループG2の2つのグループが存在している形態について説明するがこれに限定されない。例えば、第1シート10aに形成された複数の孔のそれぞれは、3つ(または3列)以上の複数のグループから成っていても良い。
【0026】
さらに、本実施形態の第1シート10aのように、複数の孔のそれぞれは、境界50に沿って規則的に並んでいることが好ましい。例えば、図2に示す例では、複数の孔3aのそれぞれが、第1グループG1内において、境界50に沿って一定の間隔で並んでいる。また、複数の孔4aのそれぞれが、第2グループG2内において、境界50に沿って一定の間隔で並んでいる。これにより、複数の孔が規則的に並んでいない形態と比較して、第1シート10aに複数の孔を形成する際の加工が容易になる。
【0027】
<溶着部の周辺の構造>
次に、図3の符号301で示す図に基づき、本発明の実施形態1に係る第1シート10aにおける境界50の周辺の構造について説明する。同図に示すように、本実施形態の第1シート10aでは、境界50に近い順に、別の見方をすれば溶着部12に近い順に、複数の孔のそれぞれは、第1グループG1と第2グループG2とから成っている。
【0028】
第1グループG1は、第2グループG2よりも溶着部12に近い。第1グループG1には、複数の孔3aが属しており、第2グループG2には、複数の孔4aが属している。また、第1シート10aにおける、本実施形態の第1グループG1に属する隣り合う2つの孔3aの間に形成された領域の面積S1は、第2グループG2に属する隣り合う2つの孔4aの間に形成された領域の面積S2よりも小さい。
【0029】
このように、第1グループG1に属する隣り合う2つの孔3aの間に形成された領域の面積S1を、第2グループG2に属する隣り合う2つの孔4aの間に形成された領域の面積S2よりも小さくすることで、境界50に近い程、隣り合う孔の間の連結部の連結力が小さくなる。これにより、中側部分1を第1シート10aから境界50の際に沿ってきれいに抜き取り易くすることができる。
【0030】
ここで、第1グループG1の範囲と第2グループG2の範囲とは、共に同一の幅(溶着部12に対して垂直な方向の幅)となる仮想的な帯状の範囲(図3中の破線で囲まれた範囲)であるとする。このとき、図3の符号301で示す図のように、隣り合う2つの孔3aの間に形成された領域は、下記(1)~(3)に示す各線で囲まれた領域となる。
(1)第1グループG1の前記仮想的な帯状の範囲を形成する、溶着部12に近い側の線(図3中の破線)。
(2)第1グループG1の前記仮想的な帯状の範囲を形成する、溶着部12から遠い側の線(図3中の破線)。
(3)隣り合う孔3aの対向する頂点から溶着部12に沿う方向に垂直な方向に沿って引いた2つの接線。
【0031】
ここで、第1グループG1の前記仮想的な帯状の範囲を形成する、溶着部12に近い側の線が、境界50に相当する。この線、すなわち境界50と、第1グループに属する孔3aとの距離は特に限定されない。但し、周縁部分2が意図する大きさにより近づくように中側部分1を抜き取るために、前記距離は短ければ短いほど好ましい。なお、「境界50と第1グループに属する孔3aとの距離」とは、図示しないものの、孔3aの外形を形成する曲線上の点のうちで最も境界50に近い位置にある点と境界50とを結ぶ、該境界50と直交する直線の長さを指す。
【0032】
また、隣り合う2つの孔4aの間に形成された領域は、下記(1)~(3)に示す各線で囲まれた領域となる。
(1)第2グループG2の前記仮想的な帯状の範囲を形成する、溶着部12に近い側の線(図3中の破線)。
(2)第2グループG2の前記仮想的な帯状の範囲を形成する、溶着部12から遠い側の線(破線)。
(3)隣り合う孔4aの対向する頂点から溶着部12に沿う方向に垂直な方向に沿って引いた2つの接線。
【0033】
また、観点を変えれば、本実施形態の第1シート10aでは、第1グループG1に属する隣り合う孔3aの境界50に沿う方向の間隔w1が、第2グループG2に属する隣り合う孔4aの境界50に沿う方向の間隔w2よりも狭くなっている。
【0034】
前記構造によれば、中側部分1と、周縁部分2と、を切り離して第1シート10aから中側部分1を抜き取った場合、孔3aおよび孔4aの範囲は、第1シート10aの未溶着部分(図4の符号401で示す図の未溶着部分6参照)が存在しない範囲となる。このため、シート全体における未溶着部分が占める範囲が小さくなる。これにより、第1シート10aの一部(未溶着部分)の振動に起因した異音の発生を低減させることができる。
【0035】
また、第1グループG1に属する隣り合う孔3aの間隔w1を第2グループG2に属する隣り合う孔4aの間隔w2よりも狭くすることで、境界50に近い程、隣り合う孔の間の連結部の連結力が小さくなる。これにより、中側部分1を第1シート10aから境界50の際(キワ)に沿ってきれいに抜き取り易くすることができる。
【0036】
〔変形例1〕
次に、図3の符号302で示す図に基づき、本発明の変形例1の第1シート10bにおける境界50の周辺の構造について説明する。同図に示すように、本変形例の第1シート10bでは、境界50に近い順に、別の見方をすれば溶着部12に近い順に、複数の孔のそれぞれが、第1グループG1と第2グループG2とから成っている。第1グループG1は、第2グループG2よりも境界50に近い。第1グループG1には、複数の孔3bが属しており、第2グループG2には、複数の孔4bが属している。
【0037】
ここで、孔3bおよび孔4bは、第1シート10aから中側部分1を抜き取るための孔であり、本実施形態では、円形状の孔となっている。なお、孔3bおよび孔4bの形状は、円形状に限定されない。例えば、孔3bおよび孔4bの形状は楕円形状であっても良い。
【0038】
また、本実施形態の第1グループG1に属する隣り合う2つの孔3bの間に形成された領域の面積S1は、第2グループG2に属する隣り合う2つの孔4bの間に形成された領域の面積S2よりも小さい。
【0039】
このように、第1グループG1に属する隣り合う2つの孔3bの間に形成された領域の面積S1を、第2グループG2に属する隣り合う2つの孔4bの間に形成された領域の面積S2よりも小さくすることで、境界50に近い程、別の見方をすれば溶着部12に近い程、隣り合う孔の間の連結部の連結力が小さくなる。これにより、中側部分1を第1シート10bから境界50の際に沿ってきれいに抜き取り易くすることができる。
【0040】
ここで、第1グループG1の範囲と第2グループG2の範囲とは、共に同一の幅(溶着部12に対して垂直な方向の幅)となる仮想的な帯状の範囲であるとする(図3中の破線で囲まれた範囲)。このとき、図3の符号302で示す図のように、隣り合う2つの孔3bの間に形成された領域は、以下の(1)~(3)の各線で囲まれた領域となる。
(1)第1グループG1の前記仮想的な帯状の範囲を形成する、溶着部12に近い側の線(図3中の破線)。
(2)第1グループG1の前記仮想的な帯状の範囲を形成する、溶着部12から遠い側の線(図3中の破線)。
(3)隣り合う孔3bの対向する頂点から溶着部12に沿う方向に垂直な方向に沿って引いた2つの接線。
【0041】
また、隣り合う2つの孔4bの間に形成された領域は、以下の(1)~(3)の各線で囲まれた領域となる。
(1)第2グループG2の前記仮想的な帯状の範囲を形成する、溶着部12に近い側の線(図3中の破線)。
(2)第2グループG2の前記仮想的な帯状の範囲を形成する、溶着部12から遠い側の線(図3中の破線)。
(3)隣り合う孔4bの対向する頂点から溶着部12に沿う方向に垂直な方向に沿って引いた2つの接線。
【0042】
また、観点を変えれば、本変形例の第1シート10bでは、第1グループG1に属する孔3bの大きさ(サイズh1)は、第2グループG2に属する孔4bの大きさ(サイズh2)よりも大きくなっている。なお、本変形例においては、サイズh1は、円形状の孔3aの直径である。また、サイズh2は、円形状の孔4aの直径である。
【0043】
前記構造によれば、中側部分1と、周縁部分2と、を切り離して第1シート10bから中側部分1を抜き取った場合、孔3bおよび孔4bの範囲は、第1シート10bの未溶着部分が存在しない範囲となる。このため、シート全体における未溶着部分が占める範囲が小さくなる。これにより、第1シート10bの一部の振動に起因した異音の発生を低減させることができる。
【0044】
また、第1グループG1に属する孔3aのサイズh1を第2グループG2に属する孔4bのサイズh2よりも大きくすることで、境界50に近い程、別の見方をすれば溶着部12に近い程、隣り合う孔の間の連結部の連結力が小さくなる。これにより、中側部分1を第1シート10bから境界50の際に沿ってきれいに抜き取り易くすることができる。また、第1グループG1に属する孔3bのサイズh1を第2グループG2に属する孔4bのサイズh2よりも大きくすることで、境界50に近い程、別の見方をすれば溶着部12に近い程、未溶着部分が占める範囲が小さくなる。これにより、第1シート10bの一部の振動に起因した異音の発生をより低減させることができ、外観も良くなる。
【0045】
〔変形例2〕
なお、上述した第1シート10aの孔の形態と、第1シート10bの孔の形態とを組合せても良い。例えば、第1グループG1に属する隣り合う孔の間隔が、第2グループG2に属する隣り合う孔の間隔より狭く、かつ第1グループG1に属する孔の大きさが、第2グループG2に属する孔の大きさよりも大きくても良い。前記構造によれば、中側部分1をシートから境界50の際に沿ってきれいに抜き取り易くすることができ、かつ、シートの一部の振動に起因した異音の発生をより低減させることができる。
【0046】
<ドアホールシールの構造>
次に、本発明の一実施形態に係るドアホールシール30について説明する。ドアホールシール30は、上述したように、フロントドアDのドアインナーパネルPに取り付けられる。また、図4に示すように、ドアホールシール30は、第1シート10aと、第2シート20とを備える。
【0047】
第1シート10aは、第1シート10aから中側部分1を抜き取った場合、ドアインナーパネルPに形成されたサービスホールP1を取り囲む開口部が形成されたシートとなる。一方、第2シート20は、第1シート10aに溶着された、サービスホールP1を車内側から塞ぐためのシートである。
【0048】
第2シート20の材料としては、エラストマー、例えば、EPDMなどのゴムが挙げられる。また、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)およびABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)などの樹脂や、熱可塑性エラストマー(TPE)であってもよい。さらに、これらのゴム、樹脂、または熱可塑性エラストマーは、発泡体であっても繊維であっても良く、これらの複合体や、その他の材料との複合体であっても良い。
【0049】
前記のような構造の第1シート10aにおける第1グループG1の際において、中側部分1と、周縁部分2と、を切り離して第1シート10aから中側部分1を抜き取る。なお、図4に示すように、第1シート10aと第2シート20とは、溶着部12を介して溶着されている。また、ドアインナーパネルPは、粘着部13を介して第1シート10aに粘着されている。
【0050】
次に、図4の符号401で示す図は、図2に示すB-B断面の中側部分1の抜き取り前の矢視断面図である。一方、符号402で示す図は、前記B-B断面の中側部分1の抜き取り後の矢視断面図である。図4の符号401で示す図の断面の場合、第1シート10aの溶着部12よりも中側(紙面向って下側)は、未溶着部分6となっている。一方、符号402で示す図の断面の場合、第1シート10aから中側部分1を抜き取ることにより、上述した未溶着部分6が除去されている。
【0051】
なお、G1,G2で示す部分は、上述した孔3aが属する第1グループG1、および孔4aが属する第2グループG2が存在する範囲を示している。前記の構造によれば、第1シート10a全体における未溶着部分6が占める範囲が小さくなるため、第1シート10aの一部(未溶着部分6)の振動に起因した異音の発生を低減させることができる。
【0052】
<ドアホールシールの製造方法>
前記のドアホールシール30は、例えば、以下の工程(1)~(3)を含む製造方法により、製造することができる。
【0053】
(1)図2に示すように、第1シート10aに、第1グループG1に属する孔3a、および第2グループG2に属する孔4aのそれぞれを複数形成することにより、第1シート10aに、中側部分1と、周縁部分2と、を形成する工程(孔形成工程)。
【0054】
(2)図4に示すように、孔3aおよび孔4aのそれぞれを複数形成した第1シート10aに、第2シート20を、第1シート10aの中側部分1を車内側から覆うように溶着する工程(溶着工程)。
【0055】
(3)第2シート20を溶着した第1シート10aから中側部分1を抜き取って開口部を形成する工程(抜き取り工程)。
【0056】
〔実施形態2〕
次に、図5の符号501で示す図に基づき、本発明の実施形態2に係るドアホールシールを構成する第1シート10cにおける境界50の周辺の構造について説明する。同図に示すように、本実施形態の第1シート10cでは、境界50に近い順に、別の見方をすれば溶着部12に近い順に、複数の孔のそれぞれが、第1グループG1と第2グループG2とから成っている。第1グループG1は、第2グループG2よりも境界50に近い。第1グループG1には、複数の孔3cが属しており、第2グループG2には、複数の孔4cが属している。また、本実施形態の第1シート10cでは、第1グループG1に属する隣り合う孔3cの境界50に沿う方向の間隔w1が、第2グループG2に属する隣り合う孔4cの境界50に沿う方向の間隔w2よりも狭くなっている。
【0057】
ここで、孔3cおよび孔4cは、第1シート10cから中側部分1を抜き取るための孔であり、本実施形態では、スリット形状の孔となっている。例えば、図5の符号501で示す図では、孔3cおよび孔4cのそれぞれが、右上がりの切れ込み状のスリット形状となっている。より具体的には、孔3cおよび孔4cの形状は、右上がりに斜めに延在する略平行四辺形状となっている。これにより、孔の形状をスリット形状にしない場合と比較して、第1シート10cに複数の孔を形成する際の加工が容易になる。なお、シートに形成する孔の形状は、スリット形状に限定されない、例えば、孔の形状は、矩形形状等であっても良い。
【0058】
前記構造によれば、中側部分1と、周縁部分2と、を切り離して第1シート10cから中側部分1を抜き取った場合、孔3cおよび孔4cの範囲は、第1シート10aの未溶着部分が存在しない範囲となる。このため、シート全体における未溶着部分が占める範囲が小さくなる。これにより、第1シート10cの一部の振動に起因した異音の発生を低減させることができる。また、第1グループG1に属する隣り合う孔3cの間隔w1を第2グループG2に属する隣り合う孔4cの間隔w2よりも狭くすることで、境界50に近い程、別の見方をすれば溶着部12に近い程、隣り合う孔の間の連結部の連結力が小さくなる。これにより、中側部分1を第1シート10cから境界50の際に沿ってきれいに抜き取り易くすることができる。
【0059】
〔変形例3〕
次に、図5の符号502で示す図に基づき、本発明の変形例3の第1シート10dにおける境界50の周辺の構造について説明する。同図に示すように、本変形例の第1シート10dでは、境界50に近い順に、別の見方をすれば溶着部12に近い順に、複数の孔のそれぞれが、第1グループG1と第2グループG2とから成っている。第1グループG1は、第2グループG2よりも境界50に近い。第1グループG1には、複数の孔3dが属しており、第2グループG2には、複数の孔4dが属している。
【0060】
また、本変形例の第1シート10dでは、第1グループG1に属する孔3dの大きさ(サイズh1)は、第2グループG2に属する孔4dの大きさ(サイズh2)よりも大きくなっている。ここで、本実施形態では、サイズh1は、孔3dの溶着部12に沿う方向に対して垂直な方向の高さである。また、サイズh2は、孔4dの溶着部12に沿う方向に対して垂直な方向の高さである。
【0061】
また、孔3dおよび孔4dは、第1シート10dから中側部分1を抜き取るための孔であり、本実施形態では、スリット形状の孔となっている。例えば、図5の符号502で示す図では、孔3dおよび孔4dのそれぞれが、右上がりの切れ込み状のスリット形状となっている。これにより、孔の形状をスリット形状にしない場合と比較して、第1シート10dに複数の孔を形成する際の加工が容易になる。なお、シートに形成する孔の形状は、スリット形状に限定されない、例えば、孔の形状は、矩形形状等であっても良い。
【0062】
前記構造によれば、中側部分1と、周縁部分2と、を切り離して第1シート10dから中側部分1を抜き取った場合、孔3dおよび孔4dの範囲は、第1シート10dの未溶着部分が存在しない範囲となる。このため、シート全体における未溶着部分が占める範囲が小さくなる。これにより、第1シート10dの一部の振動に起因した異音の発生を低減させることができる。
【0063】
また、第1グループG1に属する孔3dのサイズh1を第2グループG2に属する孔4dのサイズh2よりも大きくすることで、境界50に近い程、別の見方をすれば溶着部12に近い程、隣り合う孔の間の連結部の連結力が小さくなる。これにより、中側部分1を第1シート10dから境界50の際に沿ってきれいに抜き取り易くすることができる。また、第1グループG1に属する孔3dのサイズh1を第2グループG2に属する孔4dのサイズh2よりも大きくすることで、境界50に近い程、別の見方をすれば溶着部12に近い程、未溶着部分が占める範囲が小さくなる。これにより、第1シート10dの一部の振動に起因した異音の発生をより低減させることができ、外観も良くなる。
【0064】
〔変形例4〕
なお、上述した第1シート10cの孔の形態と、第1シート10dの孔の形態とを組合せても良い。例えば、第1グループG1に属する隣り合う孔の間隔が、第2グループG2に属する隣り合う孔の間隔より狭く、かつ第1グループG1に属する孔の大きさが、第2グループG2に属する孔の大きさよりも大きくても良い。前記構造によれば、中側部分1をシートから境界50の際に沿ってきれいに抜き取り易くすることができ、かつ、シートの一部の振動に起因した異音の発生をより低減させることができる。
【0065】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るシート(第1シート10a~10d)は、車両のドアのドアインナーパネル(P)に取付けられるドアホールシール(30)の一部を構成するシートであって、前記ドアインナーパネルのサービスホール(P1)を取り囲む周縁部分(2)と、前記周縁部分に取り囲まれた中側部分(1)と、を含み、前記中側部分と前記周縁部分との境界(50)に沿って、複数の孔(3a~3d,4a~4d)が形成されており、前記複数の孔のそれぞれは、第1グループ(G1)と第2グループ(G2)とを含む複数のグループから成っており、前記第1グループは、前記第2グループよりも前記境界に近い側に形成されており、前記第1グループに属する隣り合う2つの前記孔の間に形成された領域の面積(S1)が、前記第2グループに属する隣り合う2つの前記孔の間に形成された領域の面積(S2)よりも小さい構成である。
【0066】
前記構成によれば、中側部分と、周縁部分と、を切り離してシートから中側部分を抜き取った場合、孔の範囲は、シートの未溶着部分が存在しない範囲となる。このため、シート全体における未溶着部分が占める範囲が小さくなる。これにより、シートの一部(未溶着部分)の振動に起因した異音の発生を低減させることができる。
【0067】
また、第1グループに属する隣り合う2つの孔の間に形成された領域の面積を、第2グループに属する隣り合う2つの孔の間に形成された領域の面積よりも小さくすることで、境界に近い程、隣り合う孔の間の連結部の連結力が小さくなる。これにより、中側部分をシートから境界の際に沿ってきれいに抜き取り易くすることができる。
【0068】
本発明の態様2に係るシート(第1シート10b,10d)は、前記態様1において、前記第1グループ(G1)は、前記第2グループ(G2)よりも前記境界(50)に近い側に形成されており、前記第1グループに属する前記孔の大きさ(サイズh1)は、前記第2グループに属する前記孔の大きさ(サイズh2)よりも大きくても良い。
【0069】
前記構成によれば、第2グループよりも境界に近い側に形成された第1グループに属する孔の大きさを第2グループに属する孔の大きさよりも大きくすることで、境界に近い程、隣り合う孔の間の連結部の連結力が小さくなる。これにより、中側部分をシートから境界の際に沿ってきれいに抜き取り易くすることができる。
【0070】
また、第1グループに属する孔の大きさを第2グループに属する孔の大きさよりも大きくすることで、境界に近い程、未溶着部分が占める範囲が小さくなる。これにより、シートの一部の振動に起因した異音の発生をより低減させることができ、外観も良くなる。
【0071】
本発明の態様3に係るシート(第1シート10a,10c)は、前記態様1または2において、前記第1グループ(G1)に属する隣り合う2つの前記孔における、前記境界(50)に沿う方向の間隔(w1)が、前記第2グループ(G2)に属する隣り合う2つの前記孔における、前記境界に沿う方向の間隔(w2)よりも狭くても良い。
【0072】
前記構成によれば、第1グループに属する隣り合う孔の間隔を第2グループに属する隣り合う孔の間隔よりも狭くすることで、境界に近い程、隣り合う孔の間の連結部の連結力が小さくなる。これにより、中側部分をシートから境界の際に沿ってきれいに抜き取り易くすることができる。
【0073】
本発明の態様4に係るシート(第1シート10a,10b)は、前記態様1~3の何れかにおいて、前記孔(3a,3b,4a,4b)の形状が、円形状または楕円形状であっても良い。前記構成によれば、シート全体における未溶着部分が占める範囲を小さくすることができる。このため、シートの一部の振動に起因した異音の発生をより低減させることができる。
【0074】
本発明の態様5に係るシート(第1シート10c,10d)は、前記態様1~3の何れかにおいて、前記孔(3c,3d,4c,4d)の形状が、スリット形状であっても良い。前記構成によれば、シートに複数の孔を形成する際の加工が容易になる。
【0075】
本発明の態様6に係るシート(第1シート10a~10d)は、前記態様1~5の何れかにおいて、前記複数の孔(3a~3d,4a~4d)のそれぞれが、前記境界(50)に沿って規則的に並んでいても良い。前記構成によれば、複数の孔が規則的に並んでいない形態と比較して、シートに複数の孔を形成する際の加工が容易になる。
【0076】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 中側部分
2 周縁部分
3a~3d 孔
4a~4d 孔
10a~10d 第1シート(シート)
12 溶着部
50 境界
G1 第1グループ
G2 第2グループ
w1,w2 間隔
h1,h2 サイズ(大きさ)
S1,S2 面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6