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特許7365902治療用タンパク質を有するEVの負荷の改善
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】治療用タンパク質を有するEVの負荷の改善
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20231013BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20231013BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20231013BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20231013BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K47/64
A61K47/69
C07K14/47
C12N15/12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019545783
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2018051359
(87)【国際公開番号】W WO2018153581
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】1702863.0
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518259431
【氏名又は名称】エヴォックス・セラピューティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ノルディーン・ヨエル
(72)【発明者】
【氏名】グプタ・ダヌ
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516768(JP,A)
【文献】特表2016-508147(JP,A)
【文献】特表2008-538905(JP,A)
【文献】特表2003-526323(JP,A)
【文献】特表2013-513656(JP,A)
【文献】特表2004-535755(JP,A)
【文献】Fang, Yi, et al.,PLoS biology,2007年,Vol. 5, No. 6, e158,pp. 1267-1283
【文献】NAMBIN YIM, et al.,NATURE COMMUNICATIONS,2016年07月22日,Vol. 7, Article No. 12277,pp. 1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの目的の治療用タンパク質(POI)、ポリペプチド構築物を細胞外小胞(EV)に輸送することができるエキソソームタンパク質、ならびに少なくとも1つのホモ多量体化ドメインを含む融合ポリペプチドであって、POI、エキソソームタンパク質及びホモ多量体化ドメインが、天然には同一のタンパク質中に存在しない、融合ポリペプチド。
【請求項2】
前記ホモ多量体化ドメインが、ホモ二量体化ドメイン、ホモ三量体化ドメイン、ホモ四量体化ドメイン、またはより高次のホモ多量体化ドメインであり、高次のホモ多量体化ドメインが、少なくとも2つのドメイン間の相互作用を促進することができる、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項3】
前記エキソソームタンパク質が、CD9、CD53、CD63、CD81、CD54、CD50、FLOT1、FLOT2、CD49d、CD71、CD133、CD138、CD235a、トランスフェリン受容体、トランスフェリン受容体エンドソームドメイン、ALIX、シンテニン-1、シンテニン-2、Lamp2b、ならびにそれらの領域、ドメイン、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項4】
前記ホモ多量体化ドメインが、ロイシンジッパー、フォールドオンドメイン、ヒトRSウイルスA由来のリン酸化タンパク質の断片Xホモ四量体化ドメイン、コラーゲンドメイン、2G12 IgGホモ二量体、ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質CARDフィラメント、心臓ホスホランバン膜貫通五量体、副甲状腺ホルモン二量体化ドメイン、グリコホリンA膜貫通、HIV Gp41三量体化ドメイン、HPV45癌タンパク質E7C末端二量体ドメイン、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記POIが、
i.gp130、TNFR、IL17R、IL23R、IL1βR、IL6R、CD55、IL12R、CCR6、デコイ受容体またはデコイ結合剤(IL1α、IL1β、IL6、IL6-ILR複合体、IL12、IL17、IL23、TNFα、MCP-1、CCL20、補体タンパク質(複数可)、アクチビン、もしくはミオスタチンのいずれか1つに結合する
ii.標的化ペプチドもしくはタンパク質、
iii.リソソーム蓄積症の治療のためのタンパク質、の群のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項6】
標的化ペプチドもしくはタンパク質が、RVGペプチド、VSVペプチド、p-セレクチン結合ペプチド、およびe-セレクチン結合ペプチドから選択される、請求項5に記載の融合ポリペプチド。
【請求項7】
前記融合ポリペプチドが、配列番号48~58、61、62、68および87からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドおよび/または請求項8に記載のポリヌクレオチド構築物を含むEV。
【請求項10】
前記EVが、請求項1~7のいずれか一項に記載の複数の融合ポリペプチドを含む、請求項9に記載のEV。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド、請求項に記載のポリヌクレオチド構築物、および/または請求項9または10に記載のEV、を含む、細胞。
【請求項12】
請求項9または10に記載の複数のEV、および/または請求項1~7のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド、および/または請求項8に記載のポリヌクレオチド構築物、を含む、組成物。
【請求項13】
請求項9または10に記載の複数のEV、および/または請求項1~7のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド、および/または請求項8に記載のポリヌクレオチド構築物、ならびに薬学的に許容される賦形剤または希釈剤、を含む、薬学的組成物。
【請求項14】
治療用POIをEVに負荷するための方法であって、
i.請求項8に記載のポリヌクレオチド構築物を提供するステップと、
ii.EV産生細胞において前記融合構築物を発現させるステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的の様々な種類のタンパク質を細胞外小胞(EV)に負荷するための改善された方法に関する。より具体的には、本発明は、多量体化ドメイン(複数可)を含む融合構築物を用いたEVの負荷、ならびにとりわけ融合構築物それ自体およびそのような融合構築物を保有するEVに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外小胞(EV)は、小分子剤およびRNA治療薬から抗体および他のタンパク質の生物製剤に及ぶ様々な治療様式のための送達ビヒクルとしてのそれらの有用性についてますます注目を集めている。エキソソームの助けを借りたポリペプチドベースの薬剤の送達は、将来性のある特許出願WO2013/084000に記載されており、外因性および内因性の両方の負荷技術を介してポリペプチドベースの治療薬をエキソソームにどのように負荷することができるかを記載している。WO2013/084000において、エキソソームの外因性負荷は、親細胞から単離後に、目的のポリペプチドのエキソソームへのエレクトロポレーションまたはトランスフェクションを使用して行われ、一方、内因性負荷は、目的のポリペプチドをコードする構築物による親細胞のトランスフェクションと、それに続く構築物の過剰発現および生物療法用ポリペプチドを含むエキソソームの採取に基づいている。
【0003】
別の画期的な特許出願(WO2014/168548)は、少なくとも1つの治療用ポリペプチドに融合した少なくとも1つのキャリアポリペプチドを含むポリペプチド構築物をその膜に付着させたエキソソームなどの治療的送達小胞を開示し、それは少なくとも部分的に小胞の外側に存在するため、小胞環境に提示される。他の特許出願は、タンパク質生物製剤の送達のためにエキソソームを使用することを試みており、それは、例えば、WO2015/138878の場合では、ヘパリン結合上皮増殖因子(HB-EGF)である。
【0004】
特に、WO2014/168548は、親EV産生細胞の遺伝子改変が、EVの産生、典型的には、治療的に適切かつ高活性なタンパク質ポリペプチドベースの生物製剤を示すエキソソームの産生を有意な臨床的有用性によっていかに可能にするかの優れた例を表す。近年の2つの研究(Yim et al.,Nature Communications,7:12277,2016およびLainscek et al.,BBRC,2017)において、著者らは、光遺伝的ヘテロ二量体化ドメインを用いてエキソソーム中で2つの別々のタンパク質構築物を二量体化できる方法を示している。これら2つの研究は、エキソソーム中の2つのタンパク質構築物を特異的に二量体化するために遺伝子工学をどのように適用できるかということの優れた例であるが、両研究は、タンパク質工学によって単一種類のポリペプチド構築物の負荷効率をいかに改善し得るかについては完全に沈黙している。したがって、親細胞の遺伝子改変後にEV内またはEV上で発現される目的のタンパク質の数をさらに最適化し、標的化と治療の両方の目的で、そのような目的の治療用タンパク質の効力および/または親和性ならびに結合力を増加させることには、当技術分野における大きな可能性が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2013/084000
【文献】WO2014/168548
【文献】WO2015/138878
【非特許文献】
【0006】
【文献】Yim et al.,Nature Communications,7:12277,2016
【文献】Lainscek et al.,BBRC,2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当技術分野における問題を克服し、異なる種類の目的のタンパク質を保有する非常に強力なEV(典型的にはエキソソーム)の発生を可能にするために、本発明は、少なくとも1つの目的のタンパク質(POI)、少なくとも1つのエキソソーム選別ドメイン、および少なくとも1つの多量体化ドメインを含む、高度な融合ポリペプチド構築物を開示する。驚くべきことに、本発明の設計は、EVにまたはEV上に負荷することができる数桁高い密度の目的のタンパク質をもたらし、同様に驚くべきことに、それはまた、EV収率の増加およびその標的に対する目的のタンパク質の結合活性の増大(すなわち、標的分子に対する、例えば、デコイ受容体の総親和性、または標的細胞もしくは組織上の受容体に対する標的リガンドの総親和性)ももたらす。上述のように、EVへの可溶性タンパク質の負荷戦略としての2つの別々の融合タンパク質構築物の二量体化は、YimらおよびLainscekらによって記載されている。しかし、本発明は、多量体化ドメイン、特にホモ多量体化ドメインを使って、単一種類の融合ポリペプチド構築物、すなわち、エキソソームタンパク質、単一のポリペプチド構築物中のPOIおよび多量体化ドメインを含む1種類の融合タンパク質の複数コピーの負荷を増強する、まったく新規なアプローチを表す。重要なことに、したがって、本発明は、完全に異なる問題、すなわち可溶性タンパク質自体の負荷だけでなく、既に機能している負荷の改善および任意選択的に目的のタンパク質の表面提示の問題に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は、少なくとも1つのPOI、少なくとも1つのエキソソーム選別ドメイン、および少なくとも1つの多量体化ドメインを含む融合ポリペプチドに関する。好ましい実施形態では、本発明の多量体化ドメインは、単一種類の融合ポリペプチド構築物の、いくつかのそのようなポリペプチド構築物を含む多量体へのホモ多量体化を誘導する。種々の多量体化ドメインがインビトロおよびインビボで評価および試験されており、ポリヌクレオチド構築物および融合ポリペプチドをコードするベクターの賢明な遺伝子操作によって、この戦略が広く応用され得ることを示している。
【0009】
本発明は、EVの表面およびEVの内部への目的のタンパク質の負荷に等しく適用可能であり、これによって、内腔に負荷したEV治療薬の創製、ならびに標的化EVおよび表面提示された治療用タンパク質(例えば、デコイ受容体、NPC1タンパク質、LAMP2タンパク質、GM2活性化タンパク質、シスチノシン、CLN3またはCLN6などの輸送タンパク質、ムコリピン-1、Gタンパク質共役受容体、抗体もしくは一本鎖抗体またはその断片、あるいは本質的に任意の目的の膜貫通タンパク質)を含むEVの開発の両方を提供する。重要なことに、EVは、2つ以上のPOI、例えば、(i)表面に提示された標的ペプチド/タンパク質(すなわち、標的POI)と、(ii)表面またはEV内側に提示された治療用POIとの組み合わせを含み得る。EV表面上に提示され得る治療用POIの非限定的な例は、いわゆるデコイ受容体、すなわち、例えばサイトカインまたは他の因子に結合してこれを阻害するタンパク質である。内腔に(内部に)負荷されたPOIの非限定的な例としては、例えば、酵素補充療法のための酵素、またはDNAに結合してそれを調節するためのヌクレアーゼを挙げることができる。
【0010】
別の態様では、本発明は、融合ポリペプチド保有EVそれ自体、すなわち本発明による融合ポリペプチドを含むEVに関する。上述のように、単一のEVは、1つ以上の異なる種類の融合ポリペプチド構築物、ならびに各種類の融合ポリペプチド構築物の複数のコピーを含み得る。好ましい実施形態では、単一のEV(エキソソームなど)は、EVあたり、50コピーを超える所望の融合ポリペプチド(すなわち、POIの性質にかかわらず、50コピーを超えるPOI)、好ましくは75コピーを超える融合ポリペプチド、さらにより好ましくは100を超える、またはさらに300を超える融合ポリペプチドを含み得る。さらに、本発明はまた、EV起源細胞、ならびにポリヌクレオチド構築物およびポリヌクレオチド構築物によってコードされる融合ポリペプチドを含む細胞の両方を含む細胞に関する。
【0011】
さらに他の態様では、本発明は、本発明による複数の融合ポリペプチド保有EVを含む組成物に関する。典型的には、これらの組成物はインビボで使用するための薬学的組成物であるが、インビトロで使用するための組成物および製剤もまた本発明の範囲内にある。
【0012】
別の態様では、本発明は、POIをEVに負荷するための方法に関する。そのような方法は、(i)少なくとも1つの多量体化ドメイン、少なくとも1つのエキソソーム選別タンパク質、およびPOIをコードする融合ポリヌクレオチド構築物を提供する工程、ならびに(ii)融合ポリペプチド、したがってPOIでEVを負荷するために、EV産生細胞において上記融合ポリヌクレオチド構築物を発現する工程を含むことができる。EV産生のための細胞は、初代細胞または細胞株であり、ポリヌクレオチド構築物は、融合ポリペプチドの発現を実行できる、本質的に任意の適切な種類の構築物であり得る。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、本発明によるEVの製造および精製方法に関する。また、本発明によるEVは、特に癌、炎症および自己免疫、神経炎症および神経変性障害、遺伝性疾患、リソソーム蓄積症、臓器損傷および臓器不全、DMDなどの筋ジストロフィー、感染症などの多数の疾患および病気の予防および/または治療に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】多量体化ドメインを含まない融合ポリペプチドを含むEVと比較して、多量体化ドメインの包含、フォールドオンが、用量依存的にEVの負荷および効果をどのように増加させるかを示す。
図2】多量体化ドメイン挿入後のGP130デコイ受容体エキソソームのインビトロでの活性の増加を示す。
図3】多量体化ドメインを含む融合ポリペプチド(それぞれ薄灰色の丸および下向き三角形)を含むEVと、多量体化ドメインを含まない融合ポリペプチドを含むEV(上向き三角形)とを比較した、GP130-GCN4ロイシンジッパーシンテニンデコイEVおよびTNFR1フォールドオンシンデカンデコイEVで処置したLPS誘導した全身性炎症の動物実験の結果を示す。
図4】多量体化ドメインと共にエキソソーム選別ドメインを安定に発現する細胞からの粒子放出の増加を示すNTAデータ。
図5】IL6活性化のためのレポーターを安定に発現するHeLa細胞を、ハイパーIL6で処置し、POIとしてのgp130デコイ受容体、多量体化ドメインとしての2G12 IgGホモ二量体ドメイン、およびエキソソーム選別ドメインとしてのALIXを含む融合タンパク質構築物を備えたEV(骨髄由来間葉系間質細胞から得た)で処置した。2G12 IgGホモ二量体ドメインを含む融合タンパク質は、IL6媒介シグナル伝達の阻害においてGP130-ALIXのみを備えたEVよりも明らかに優れており、融合タンパク質構築物のEVへの負荷の増大を促進する多量体化ドメインの重要性を示す。
図6】4つの異なるガウシアレポーター構築物で安定に形質導入された脂肪組織MSCを示す。ガウシアは、多量体化ドメインの有無にかかわらずCD63およびCD81と融合した。EVを馴化培地(48時間インキュベートした)から採取し、接線流およびCapto-core液体クロマトグラフィーカラムで精製した。ガウシアルシフェラーゼシグナルは、CD63/81負荷の測定として、採取したEVについて測定した。図Xから明らかに分かるように、心臓ホスホランバン膜貫通五量体ドメインを有するCD63/81構築物はより高いシグナルを有するので、EVタンパク質の負荷が増大している。
図7】IL6活性化のためのレポーターを安定に発現するHeLa細胞を、ハイパーIL6で処置し、POIとしてgp130デコイ受容体、多量体化ドメインとしてのロイシンジッパーホモドメイン、および様々な異なるエキソソーム選別ドメインを含む融合タンパク質構築物を備えたEV(骨髄由来間葉系間質細胞から得た)で処置したことを示す。ロイシンジッパードメインを含む融合タンパク質は、エキソソーム選別ドメインに融合されたGP130のみを装備したEVよりも明らかにIL6媒介シグナル伝達の阻害に優れており、多量体化ドメインの重要性および実質的に全種類のエキソソームポリペプチドにおけるその適用可能性を証明している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、少なくとも3つのドメイン:(i)少なくとも1つの目的のタンパク質(POI)、(ii)少なくとも1つの多量体化ドメイン、および(iii)少なくとも1つのエキソソーム選別ドメイン、を含むポリペプチド構築物に関する。さらに、本発明はまた、そのようなトリドメインポリペプチド構築物を含むEVに関し、該ポリペプチド構築物は、外側または内側あるいはその両方で、本質的にEVの内腔中またはEV膜との会合(例えばEV膜内)のいずれかに存在する。さらに、本発明は、以下でより詳細に記載されるような種々の隣接する態様、例えば、そのようなポリペプチド構築物をコードするポリヌクレオチド構築物、そのようなポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド構築物を含むベクターおよび細胞、産生方法、複数のそのようなポリペプチド含有EVを含む組成物、ならびにそのようなEVの医学的用途およびそのようなEVを含有する薬学的組成物に関する。
【0016】
利便性と明確さのために、本明細書で使用される特定の用語をまとめて以下に記載する。特に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的かつ科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0017】
本発明の特徴、態様、実施形態、または代替形態がマーカッシュグループとして記載される場合、当業者は、それによって本発明がマーカッシュグループの個々の任意のメンバーまたはメンバーのサブグループとても記載されることを認識するであろう。当業者はさらに、本発明が、マーカッシュグループの個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの任意の組み合わせとしても記載されることを認識するであろう。さらに、本発明の態様および/または実施形態のうちの1つに関連して記載された実施形態および特徴はまた、本発明の他のすべての態様および/または実施形態に準用することに注意すべきである。例えば、EVに関して記載された様々な少なくとも1つの目的のポリペプチド(PoI)は、ポリペプチド構築物の文脈において、もしくはEVを含む薬学的組成物の文脈において、または本発明によるポリヌクレオチド構築物の発現産物として、開示されかつ関連すると理解されるべきである。さらに、特定の態様に関連して記載された特定の実施形態は、例えば、特定の医学的適応症の治療に関する態様に関して記述されたEVの投与経路はまた、本発明の薬学的組成物または細胞内送達方法に関する態様/実施形態などの、他の態様および/または実施形態に関連して、当然関連し得る。総説として、目的のタンパク質(POI)、エキソソーム選別ドメイン(例えば、「EV選別ドメイン」または「エキソソームポリペプチド」または「EVタンパク質」または「EVポリペプチド」同じ意味で呼ばれる)、多量体化ドメイン、および標的化部分、細胞源、ならびに本発明による他のすべての態様、実施形態、および代替形態は、本発明の範囲と要旨から逸脱することなく、ありとあらゆる可能な組み合わせで自由に組み合わせることができる。さらに、本発明の任意のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドまたは任意のポリペプチド配列もしくはポリヌクレオチド配列(それぞれアミノ酸配列またはヌクレオチド配列)は、所与の任意の分子がそれに関連する技術的効果を実行する能力を保持する限り、元のポリペプチド、ポリヌクレオチド、および配列からかなり逸脱し得る。それらの生物学的特性が保持されている限り、本出願によるポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチド配列は、できるだけ高い配列同一性であることが好ましいが、天然配列と比較して50%も(例えばBLASTまたはClustalWを使用して計算)逸脱し得る。例えば、少なくとも1つのPOIと、少なくとも1つの多量体化ドメインと、少なくとも1つのエキソソーム選別ドメインとの組み合わせ(融合)は、それぞれのポリペプチドの特定のセグメントが置換および/または修飾され得ることを意味し、重要な特性が保存されている限り、天然配列から著しく逸脱し得ることを意味する。したがって、同様の推論はそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列にも当然当てはまる。
【0018】
「多量体化ドメイン」という用語は、本明細書に記載の融合ポリペプチド構築物の数コピーの多量体化(すなわち、生体分子複合体の形成)を可能にする任意のポリペプチドまたはタンパク質に関すると理解され得る。有利な好ましい実施形態では、そのような融合ポリペプチドをEVに負荷する効率を高めるために、その主な機能は同一の融合ポリペプチド構築物をまとめることであるので、多量体化ドメインはホモ多量体化ドメインである。他の実施形態では、このような多量体化ドメインは、FosおよびJunロイシンジッパーヘテロ二量体などのヘテロ多量体化ドメインであり得る。本発明の好ましいホモ多量体化ドメインの一部は、以下の非限定的な例を含む:S.セレビシエ由来のGCN4のロイシンジッパーホモ二量体化ドメイン、S.セレビシエ由来のGCN4のレトロロイシンジッパーホモ二量体化ドメイン、(T4バクテリオファージ由来)フィブリチンのフォールドオンホモ三量体化ドメイン、ヒトRSウイルスA由来のリン酸化タンパク質の断片Xホモ四量体化ドメイン、コラーゲンスーパーファミリーのヒトαらせんコイルドコイルオリゴマー化ドメイン、心臓ホスホランバン(ヒト)の膜貫通ホモ五量体ドメイン、ヒト副甲状腺ホルモンのホモ二量体ドメイン、ヒトグリコホリンAの膜貫通ホモ二量体ドメイン、(HIV由来)Gp41の三量体化ドメイン、癌タンパク質E7のC末端ホモ二量体ドメイン、血管拡張刺激リン酸化タンパク質のEVH2ホモ四量体ドメイン(ヒト)、ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質CARDフィラメント、および/またはそれらの任意の組み合わせ。本明細書における多量体化ドメインは、ドメインが少なくとも2つのドメイン(およびそれらが部分を形成するポリペプチド)間の相互作用を促進することができる限り、二量体化ドメイン、三量体化ドメイン、四量体化ドメイン、または本質的により高次の任意の多量体化ドメインのいずれかであり得る。
【0019】
「細胞外小胞」または「EV」または「エキソソーム」という用語は、例えば、微小胞(例えば、細胞の原形質膜から脱落する任意の小胞)エキソソーム(例えば、エンドリソソーム経路に由来する任意の小胞)、アポトーシス体(例えば、アポトーシス細胞から得ることができる)、ミクロ粒子(例えば、血小板に由来し得る)、エクトソーム(例えば、血清中の好中球および単球から誘導できる)、プロスタトソーム(prostatosome)(例えば、前立腺癌細胞から得ることができる)、またはカルディオソーム(cardiosome)(例えば、心臓細胞から誘導できる)などの細胞から得ることができる任意の種類の小胞に関連すると理解されるべきである。さらに、上記用語は、細胞外小胞模倣物、細胞膜放出によって得られる細胞膜小胞、または他の技術と同様に、LDL、VLDL、HDLおよびカイロミクロンなどのリポタンパク質粒子にも関連すると理解されるべきである。エキソソームは1つの有利な種類のEVを表すが、本明細書で言及されるすべてのEVは本発明の範囲内である。本質的に、本発明は、POI、多量体化ドメイン、およびエキソソーム選別ドメインを含むポリペプチド構築物のための送達または輸送ビヒクルとして作用することができる(小胞形態または他の任意の種類の適切な形態を有する)任意の種類の脂質系構造に関する。EVの医学的かつ科学的な使用および応用を説明する場合、本発明は通常、複数のEV、すなわち数千、数百万、数十億、さらには数兆のEVを含むことができるEVの集団に関することは当業者には明らかであろう。同じ意味で、例えば、特定の種類のPOIを含むEVに関連し得る「集団」という用語は、そのような集団を構成する複数の実体を包含するものと理解されたい。言い換えれば、個々のEVは、複数存在する場合、EV集団を構成する。したがって、当然のことながら、本発明は、当業者には明らかなように、様々なPOIを含む個々のEV、および様々なPOIを含むEVを含む集団の両方に関する。
【0020】
「エキソソーム選別ドメイン」、「EV選別ドメイン」、「EV選別タンパク質」、「EVタンパク質」、「EVポリペプチド」、「エキソソームポリペプチド」および「エキソソームタンパク質」などの用語は、本明細書では同じ意味で使用され、(エキソソーム選別タンパク質に加えて、少なくとも1つのPOIおよび少なくとも1つのポリペプチドベースの多量体化ドメインを典型的に含む)ポリペプチド構築物を適切な小胞構造、すなわち適切な小胞EVに輸送するために利用できる任意のポリペプチドに関すると理解されるべきである。より具体的には、「エキソソーム選別ドメイン」という用語は、エキソソームなどの小胞構造への(上述のとおり典型的には、少なくとも1つのPOIおよび少なくとも1つの多量体化ドメインを含むが、他の種類のポリペプチドドメインも含むことができる)ポリペプチド構築物の運搬、輸送または往復を可能にする任意のポリペプチドを含むと理解されるべきである。典型的には、そのようなエキソソーム選別ドメインは、EVに天然に存在するタンパク質、特にエキソソーム中に天然に存在するタンパク質および/またはエキソソームの形成に寄与するタンパク質である。そのようなエキソソーム選別ドメインの例は、例えば、CD9(配列番号1)、CD53(配列番号2)、CD63(配列番号3)、CD81(配列番号4)、CD54(配列番号5)、CD50(配列番号6)、FLOT1(配列番号7)、FLOT2(配列番号8)、CD49d(配列番号9)、CD71(配列番号10)、CD133(配列番号11)、CD138(配列番号12)、CD235a(配列番号13)、ALIX(配列番号14)、シンテニン-1(配列番号15)、シンテニン-2(配列番号16)、Lamp2b(配列番号17)、シンデカン1~4(配列番号72~75)、TSG101(配列番号83)、HIV Gag p6-1(配列番号86)、およびポリペプチド構築物をEVに輸送することができる他の多数のポリペプチドは、本発明の範囲内に含まれる。特定の有利な実施形態では、エキソソーム選別ドメインは可溶性エキソソームポリペプチドである。このような可溶性EVタンパク質は、POIをEVに輸送するのに非常に有効であり、本発明の多量体化ドメインを付加することにより、種々のPOIの小胞(EV)膜への非常に活性な輸送体となり得る。
【0021】
「目的のタンパク質」、「目的のポリペプチド」、「POI」、「目的の治療用ポリペプチド」、「生物療法的」、「生物学的」、および「タンパク質生物学的」という用語は、本明細書では同じ意味で使用され、例えば、標的を結合することによって、および/または相互作用パートナーと相互作用する、および/またはタンパク質を置換する、および/または既存の細胞内タンパク質を補完または捕捉する他の任意の方法で、治療目的のために利用できる任意のポリペプチドに関するものとして理解されるべきであり、それによってその治療効果を発揮する。上記用語は、以下の非限定的な、目的の治療用ポリペプチドの例:抗体、細胞内抗体、一本鎖可変断片(scFv)、アフィボディ、bi-och多特異性抗体または結合剤、受容体、デコイ受容体、シグナル伝達物質、リガンド、例えば酵素補充療法または遺伝子編集のための酵素、腫瘍抑制剤、ウイルスまたは細菌阻害剤、細胞成分タンパク質、DNAおよび/またはRNA結合タンパク質、DNA修復阻害剤、ヌクレアーゼ、プロテイナーゼ、インテグラーゼ、転写因子、増殖因子、アポトーシス阻害剤および誘導剤、毒素(例えば、シュードモナス外毒素)、構造タンパク質、NT3/4などの神経栄養因子、脳由来神経栄養因子(BDNF)および神経成長因子(NGF)ならびに2.5Sベータサブユニットなどのその個々のサブユニット、イオンチャネル、膜輸送体、タンパク質恒常性因子、細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質、翻訳および転写関連タンパク質、ヌクレオチド結合タンパク質、タンパク質結合タンパク質、脂質結合タンパク質、グリコサミノグリカン(GAG)およびGAG結合タンパク質、代謝タンパク質、細胞ストレス調節タンパク質、炎症および免疫系調節タンパク質、ミトコンドリアタンパク質、ならびに熱ショックタンパク質などを表すことができる。好ましい一実施形態では、POIは、EVによって送達された後、標的細胞においてCasポリペプチドがそのヌクレアーゼ活性を実行させるRNA鎖に関連する(すなわち、それと共に運ばれる)無傷のヌクレアーゼ活性を有するCRISPR関連(Cas)ポリペプチドである。あるいは、Casポリペプチドは、標的遺伝子工学を可能にするために触媒的に不活性であり得る。さらに別の方法は、単一のRNA誘導エンドヌクレアーゼCpf1などの他の任意の種類のCRISPRエフェクターであり得る。PoIとしてのCpf1の包含は、スタッガードな二本鎖切断を介して標的DNAを切断するので、本発明の特に好ましい実施形態であり、Cpf1は、AcidaminococcusまたはLachnospiraceaeなどの種から得ることができる。さらに別の方法では、Casポリペプチドはまた、遺伝子発現を特異的に誘導するために、転写活性化因子(P3330コアタンパク質など)に融合され得る。さらなる好ましい実施形態は、リソソーム蓄積症のための酵素、例えば、イミグルセラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、α-L-イズロニダーゼ、イズロネート-2-スルファターゼおよびイズルファターゼ、などのグルコセレブロシダーゼ、アリールスルファターゼ、ガルスルファーゼ、酸-αグルコシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、ガラクトシルセラミダーゼ、セラミダーゼ、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リソソーム酸リパーゼ、酸性スフィンゴミエリナーゼ、NPC1、NPC2、ヘパランスルファミダーゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、ヘパラン-α-グルコサミニド-N-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、ヒアルロニダーゼ、α-N-アセチルノイラミニダーゼ、GlcNAcホスホトランスフェラーゼ、ムコリピン1、パルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ、トリペプチジルペプチダーゼI、パルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ1、トリペプチジルペプチダーゼ1、バテニン、リンクリン、α-D-マンノシダーゼ、β-マンノシダーゼ、アスパルチルグルコサミニダーゼ、α-L-フコシダーゼ、シスチノシン、カテプシンK、シアリン、LAMP2、およびヘキソサミニダーゼ、を含む群から選択されるPOIを含む。他の実施形態では、POIは、例えば、炎症反応を修飾する細胞内タンパク質(例えば、メチラーゼおよびブロモドメインなどのエピジェネティックタンパク質)、または筋肉機能を修飾する細胞内タンパク質(例えば、MyoDまたはMyf5などの転写因子)、筋肉収縮性を調節するタンパク質(例えば、ミオシン、アクチン、トロポニンなどのカルシウム/結合タンパク質)、または構造タンパク質(ジストロフィン、ウトロフィン、チチン、ネブリン)、ジストロフィン関連タンパク質(ジストロブレビン、シントロフィン、シンコイリン、デスミン、サルコグリカン、ジストログリカン、サルコスパン、アグリン、および/またはフクチンなど)であり得る。別の好ましい実施形態では、POIはいわゆるデコイ受容体、すなわちその標的タンパク質を「デコイ」し、それによって標的タンパク質が特定の効果を発揮するのを遮断するタンパク質である。デコイ受容体の非限定的な例としては、TNF受容体1および2、IL23R、IL17R、またはIL1βRなどのインターロイキン受容体、および場合によってはIL6/sIL6R複合体をデコイし、それによってIL6媒介性シグナル伝達を阻害または減少させるgp130などのインターロイキンシグナル伝達物質、好ましくはトランスシグナル伝達が含まれる。
【0022】
「起源細胞」または「EV起源細胞」または「親細胞」または「細胞源」または「EV産生細胞」または他の任意の類似の用語は、適切な細胞培養条件下で、EV、例えばエキソソーム、を産生することができる任意の種類の細胞に関連すると理解されるべきである。そのような条件は、懸濁細胞培養または付着培養または他の種類の培養系のいずれでもよい。中空繊維バイオリアクターおよび他の種類のバイオリアクターは、非常に適した細胞培養基盤を表す。本発明による起源細胞は、広範囲の細胞および細胞株、例えば、間葉系幹細胞もしくは間質細胞または線維芽細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、ホホウォートンゼリー、周産期組織、歯芽、臍帯血、皮膚組織などから得ることができる)、羊膜細胞、より具体的には様々な初期マーカーを任意選択的に発現する羊膜上皮細胞、骨髄抑制細胞から選択され得る。特に目的とする細胞株には、ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)、ヒト胚腎臓(HEK)細胞、微小血管またはリンパ内皮細胞などの内皮細胞株、軟骨細胞、MSC、気道または肺胞上皮細胞、および様々な他の非限定的な細胞源の例が含まれる。
【0023】
第1の態様において、本発明は本質的にトリドメインポリペプチド構築物であるものに関する。典型的には、そのようなポリペプチド構築物は、(i)少なくとも1つの目的のタンパク質(POI)、(ii)少なくとも1つの多量体化ドメイン、および(iii)少なくとも1つのエキソソーム選別ドメインを含む。トリドメインポリペプチド構築物の設計は、エキソソームなどのEVへのPOIの高効率な負荷を可能にし、またEV起源細胞からのEV産生の増加を推進する。
【0024】
多量体化ポリペプチドドメインは、得られるEVのこの増大する負荷を達成するための重要な構成要素であり、このような多量体化ドメインは、興味深いことに多種多様な種から選択され、比較的異なる作用機序(例えば、それはヘテロ二量体化ドメインであってもよく、またはそれはホモ三量体化ドメイン、もしくはホモ五量体ドメインであってもよい、など)も呈し得る。しかしながら、好ましい実施形態では、多量体化ドメインはホモ多量体化ドメインである。なぜなら、これらは融合タンパク質の単純な設計を可能にし、(複数の融合構築物とは対照的に)単一種類の融合ポリペプチド構築物のEVへの制御負荷を重要に支持するからである。上記から明らかなように、多量体化ドメインは、ドメインが少なくとも2つのドメイン(およびそれらが部分を形成するポリペプチド)の相互作用を促進できる限り、二量体化ドメイン、三量体化ドメイン、四量体化ドメイン、または本質的により高次の任意の多量体化ドメインのいずれかであり得る。例えば、多量体化ドメインの非限定的なリストは、以下のドメインを含む:S.セレビシエ由来のGCN4のロイシンジッパーホモ二量体化ドメイン(配列番号18)、S.セレビシエ由来のGCN4のレトロロイシンジッパーホモ二量体化ドメイン(配列番号19)、フィブリチンのフォールドオンホモ三量体化ドメイン(T4バクテリオファージ由来)(配列番号20)、リン酸化タンパク質の断片Xホモ四量体化ドメイン(ヒトRSウイルスA由来)(配列番号21)、コラーゲンスーパーファミリーのヒトαらせんコイルドコイルオリゴマーオリゴマー化ドメイン(配列番号22)、Fos(配列番号69)およびJun(ヒト)(配列番号23)のロイシンジッパーヘテロ二量体化ドメイン、心臓ホスホランバン(ヒト)の膜貫通ホモ五量体ドメイン(配列番号24)、副甲状腺ホルモン(ヒト)のホモ二量体化ドメイン(配列番号25)、グリコホリンA(ヒト)の膜貫通ホモ二量体ドメイン(配列番号26)、Gp41の三量体化ドメイン(HIV由来)(配列番号27)、癌タンパク質E7のC末端ホモ二量体ドメイン(HPV45由来)(配列番号28)、および血管拡張刺激リンタンパク質(ヒト)のEVH2ホモ四量体ドメイン(配列番号29)、ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質CARDフィラメント(配列番号85)、ならびに/またはそれらの任意の組み合わせ。
【0025】
多量体化ドメインは、ポリペプチド構築物中のいくつかの異なる位置に配置され得る。例えば、多量体化ドメインは、エキソソーム選別ドメイン配列内もしくはエキソソーム選別ドメイン配列に隣接して、および/またはPOI配列内もしくはPOI配列に隣接して、POI配列とエキソソーム選別ドメイン配列との間に配置され得る。全体として、(多量体化ドメインの選択および構築物中のその位置の両方に関して、ならびにエキソソーム選別ドメインの選択および構築物中のその位置の両方に関して)トリドメインポリペプチド構築物の設計は、EV起源細胞内での産生後にポリペプチドがEV内のどこで終了するかを決める上で重要である。例えば、テトラスパニンエキソソーム選別タンパク質(例えば、CD9、CD63、もしくはCD81)または他の任意のEV膜タンパク質(例えばLamp2b)を選択することによって、EV表面上のPOIを濃縮することが可能である。逆に、ALIXまたはシンテニンなどの、EV内腔に典型的に存在するエキソソーム選別タンパク質を選択することは、本質的にEV内部のポリペプチド構築物(したがってPOI)を濃縮することを可能にする。当然のことながら、ポリペプチド構築物は、EVの外側および内側に、ならびにEV膜中に同時に存在してもよい。さらに、好ましい実施形態では、融合ポリペプチド構築物は、異なるドメイン間、すなわち少なくとも1つのPOI、少なくとも1つの多量体化ドメイン、および少なくとも1つのエキソソーム選別ドメインの間に様々な種類のリンカーを含み得る。リンカーは、例えば、GS(すなわちグリシン-セリン)リンカー、すなわちアミノ酸グリシンおよびセリンを含むリンカーであり、またはそれらが融合ポリペプチド構築物中に存在する場合、異なるドメインの活性が制限されないことを確実にする他の任意の種類の適切なリンカードメインであり得る。
【0026】
本発明による典型的なトリドメイン融合ポリペプチド構築物は、以下のように概略的に説明できる(以下の表記は、任意のCおよび/またはN末端方向を説明するものとして解釈されるべきでなく、単に説明目的のために過ぎない)。
POI-多量体化ドメイン-エキソソーム選別ドメイン
【0027】
さらなる態様において、本発明は、本発明のトリドメインポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物に関する。そのようなポリヌクレオチド構築物は、様々な種類のベクターおよび発現構築物、例えば、プラスミド、ミニサークル、アデノウイルスなどのウイルス(組み込み型または非組み込み型)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス等、直鎖状DNAもしくはRNA、または一本鎖もしくは二本鎖のDNAストレッチ、またはmRNAもしくは修正mRNA等などの、直鎖状または環状核酸に存在し得る。重要なことに、そのようなベクターおよび発現構築物は、様々な場合にそれ自体で治療薬として使用することができる。これは、AAV、アデノウイルス、レンチウイルス、mRNA、および修飾された合成mRNAの文脈において特に関連があり、これらはすべて患者に直接投与することができる。これらのベクターおよび/または発現構築物は、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンまたは他の任意の種類の誘導物質などの外部因子によって誘導可能であり制御され得る。さらに、本発明のポリペプチドを含むポリヌクレオチド構築物は、上記のように本質的に任意の種類のEV起源細胞に存在し得る。起源細胞(典型的にはEVの産生のための適切なEV産生細胞型を含む細胞培養物)への導入は、トランスフェクション、ウイルス媒介形質転換、エレクトロポレーション等などの様々な従来技術を用いて達成され得る。トランスフェクションは、リポソーム、CPP、カチオン性脂質またはポリマー、リン酸カルシウム、デンドリマー等などの従来のトランスフェクション試薬を使用して実施することができる。ウイルス媒介形質導入も非常に適した方法であり、アデノウイルスまたはレンチウイルスベクターなどの従来のウイルスベクターを使用して実施することができる。ウイルス媒介形質導入は、細胞バンクのための安定な細胞株、すなわちEV産生細胞源のマスター細胞バンク(MCB)および作業細胞バンク(WCB)の作製に特に関連する。
【0028】
本発明のエキソソーム選別ドメインは、以下のタンパク質のうちのいずれか1つから選択され得る:CD9(配列番号1)、CD53(配列番号2)、CD63(配列番号3)、CD81(配列番号4)、CD54(配列番号5)、CD50(配列番号6)、FLOT1(配列番号7)、FLOT2(配列番号8)、CD49d(配列番号9)、CD71(配列番号10)、CD133(配列番号11)、CD138(配列番号12)、CD235a(配列番号13)、ALIX(配列番号14)、シンテニン-1(配列番号15)、シンテニン-2(配列番号16)、Lamp2b(配列番号17)、TSPAN8、TSPAN14、CD37、CD82(配列番号77)、CD151、CD231、CD102、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、DLL1、DLL4、JAG1、JAG2、CD49d/ITGA4、ITGB5、ITGB6、ITGB7、CD11a、CD11b、CD11c、CD18/ITGB2、CD41、CD49b、CD49c、CD49e、CD51、CD61、CD104、Fc受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン、MHC-IまたはMHC-II成分、CD2、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD13、CD18、CD19(配列番号79)、CD30(配列番号80)、CD34、CD36、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD45RA、CD47、CD86、CD110、CD111、CD115、CD117、CD125、CD135、CD184、CD200、CD279、CD273、CD274、CD362、COL6A1、AGRN、EGFR、GAPDH、GLUR2、GLUR3、HLA-DM、HSPG2、L1CAM、LAMB1、LAMC1、LFA-1、LGALS3BP、Mac-1アルファ、Mac-1ベータ、MFGE8(配列番号78)、SLIT2、STX3、TCRA、TCRB、TCRD、TCRG、VTI1A、VTI1B、およびそれらの任意の組み合わせ。
【0029】
本発明によるEVおよびエキソソームの中および上に負荷される目的のタンパク質(POI)は、本質的にタンパク質および/またはペプチド任意の群から選択され得る。POIは、例えば、以下の通りであり得る。
-疾患を引き起こす標的タンパク質に結合するためのデコイタンパク質(デコイ受容体と同じ意味で呼ばれる)。
-エンドソーム脱出を誘導するためのペプチドまたはタンパク質、例えばHA2。
-EVを目的の組織または器官または細胞型に標的化するためのペプチドまたはタンパク質。
-核酸標的への結合および/または切断および/または修飾のためのヌクレアーゼ。
-抗体および/または細胞内抗体。
-酵素補充療法用のアルファ-グルコシダーゼおよび/またはグルコセレブロシダーゼなどの酵素。
-NPC1またはシスチノシンなどの輸送タンパク質。
-EVのインビボ挙動(例えば、その循環時間または免疫系認識)を最適化するためのペプチドまたはタンパク質、例えば、CD47および/もしくはCD55またはこれらのタンパク質の一部。
【0030】
当業者には理解されるように、本発明は、本質的に任意の目的のタンパク質および/またはペプチドをEV内および/またはEV上に高効率に分類することを可能にする。明らかに、POIはその全体に存在してもよく、あるいはそのようなPOIのドメイン、領域、または誘導体が代わりに利用されてもよい。したがって、以下のリストは、本発明の範囲から逸脱することなく本明細書で採用され得るPOIの非限定的な例示的実施形態を単に含むだけである:
-gp130(配列番号30)、TNFR1(配列番号31)、TNFR2(配列番号71)、IL17受容体A(配列番号32)、IL17受容体B(配列番号33)、IL17受容体C(配列番号34)、IL17受容体D(配列番号35)、IL17受容体E(配列番号36)、IL22受容体サブユニットα-1(配列番号70)、IL23R(配列番号37)、IL1受容体1型(配列番号38)、IL1受容体2型(配列番号39)、IL12受容体サブユニットβ1(配列番号40)、IL12受容体サブユニットβ2(配列番号41)、他の任意のデコイ受容体またはデコイ結合剤(IL1α、IL1β、IL6、IL6-ILR複合体、IL12、IL17、IL23、TNFα、MCP-1、CCL20、補体タンパク質(複数可)、アクチビン、またはミオスタチンのうちのいずれか1つに結合する)、
-RVGペプチド(配列番号84)、VSV-Gペプチド(配列番号42)、VSV-Gタンパク質(配列番号43)、p-セレクチン結合ペプチド(配列番号44)、e-セレクチン結合ペプチド(配列番号45)などの標的化ペプチドもしくはタンパク質、および/または他の任意の標的化ペプチドもしくはタンパク質、
-細胞透過性ペプチド(CPP)(例えば、Tat(配列番号46)、ペネトラチン、TP10、CADY)、エンドソーム脱出増強特性を有するペプチド(例えば、HA2タンパク質HA2サブユニット(配列番号47)もしくはHA2融合サブユニット(配列番号82))、または核局在化シグナルNLSペプチド(例えば、配列PKKKRKV)、
-転写因子などの核酸結合タンパク質、またはCas、Cas9などのヌクレアーゼ、
-リソソーム蓄積症の治療のためのタンパク質、例えば、イミグルセラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、α-L-イズロニダーゼ、イズロネート-2-スルファターゼおよびイズルファターゼ、などのグルコセレブロシダーゼ、アリールスルファターゼ、ガルスルファーゼ、酸-αグルコシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、ガラクトシルセラミダーゼ、セラミダーゼ、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リソソーム酸リパーゼ、酸性スフィンゴミエリナーゼ、NPC1、NPC2、ヘパランスルファミダーゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、ヘパラン-α-グルコサミニド-N-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、ヒアルロニダーゼ、α-N-アセチルノイラミニダーゼ、GlcNAcホスホトランスフェラーゼ、ムコリピン1、パルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ、トリペプチジルペプチダーゼI、パルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ1、トリペプチジルペプチダーゼ1、バテニン、リンクリン、α-D-マンノシダーゼ、β-マンノシダーゼ、アスパルチルグルコサミニダーゼ、α-L-フコシダーゼ、シスチノシン、カテプシンK、シアリン、LAMP2、およびヘキソサミニダーゼ、
-抗体、細胞内抗体、一本鎖可変断片(scFv)、アフィボディ、bi-och多重特異性抗体、または結合剤、受容体など、
-p53、pVHL、APC、CD95、ST5、YPEL3、ST7、およびST14などの腫瘍抑制因子、
-Fc結合ドメイン、Lingo-1(配列番号81)、NgR1、FC5、カスパーゼ、Fc融合タンパク質、神経突起増殖抑制物質(Nogo、OMgp、MAG)、および神経突起増殖抑制物質受容体複合体などの様々なPOI(例:Nogo-NgR1複合体)
【0031】
上記の包括的でないリストから分かるように、POIは非常に幅広い群のペプチドおよび/またはタンパク物質から選択することができる。以下は、様々な疾患モデルにおいてかなりの治療活性を示す、特に興味深い一部の融合ポリペプチドの非限定的なリストを表す。
-配列番号48(hTNFR1-フォールドオン-N末端シンテニン):フォールドオン三量体化ドメインに融合したヒトTNFR1受容体細胞外部分、膜貫通および細胞質尾部の部分断片(シグナル伝達能力のある細胞質尾部部分は除去されている)。TNF受容体は三量体としてそのリガンド(すなわちTNFα)と結合し、それゆえ、三量体形態で存在する場合には、受容体はフォールドオン多量体化ドメインの存在を通じて、リガンドと結合するように既にプライミングされている。フォールドオン多量体化ドメインは、シンテニンのN末端ドメインとさらに融合し、またシンデカンとは別のポリペプチド構築物中で融合している。シンテニンのN末端ドメインは、重要なESCRTおよびALIXなどのESCRTアクセサリータンパク質に対する結合および相互作用部位を有する。これは、POIのEVへの選別を向上させ、また遺伝子操作されたEV起源細胞における小胞産生を増加させる中心としても機能し得る。この融合ポリペプチド、およびシンデカン系ポリペプチド構築物を含むEVは、TNFαを効率的に隔離し、それによって炎症を減少させる。
-配列番号49(hGP130-LZ-N末端シンテニン):ヒトGP130細胞外-膜貫通、およびその細胞質尾部の一部(シグナル伝達ドメインを除く)は、ロイシンジッパー(LZ)二量体化ドメインに融合している。GP130は細胞表面上に二量体として存在し、2分子のIL6/sIL-6Rヘテロ二量体複合体と六量体複合体を形成し、それゆえ、この強制的な二量体化はリガンド結合親和性の増加を促進するだろう。二量体化ドメインはシンテニンのN末端ドメインに融合している。この融合ポリペプチドを含むEVは、IL6/IL6R複合体を効率的に隔離し、炎症を軽減する。同一の融合ポリペプチドもまた設計および試験したが、その構築物においてエキソソームドメインのシンテニンをAlixと交換交換した。これはまたエキソソーム表面にgp130デコイ受容体を表面提示するのに高効率な構築物であることを証明し、IL6シグナル伝達の低減をもたらした。
-配列番号50(hGP130-断片X-N末端シンテニン):負荷を増大させ、そのリガンド(すなわち、IL6とIL6Rとの間の複合体)に対して受容体親和性を向上するために、断片Xの四量体化ドメインに融合した、ヒトGP130細胞外膜貫通およびその細胞質尾部の一部(シグナル伝達ドメインを除く)。四量体化ドメインはシンテニンのN末端ドメインに融合している。ポリペプチド保有EVがIL6媒介炎症を阻害することを可能にするための融合ポリペプチド構築物の別の例。
-配列番号51(hGP130-LZ-トランスフェリン受容体エンドソームドメイン):LZ二量体化ドメインに融合した、ヒトGP130細胞外-膜貫通およびその細胞質尾部の部分(シグナル伝達ドメインを除く)。LZドメインは、それをエンドソームに向けるドメインを有するトランスフェリン受容体の細胞質尾部の一部(すなわち、配列番号76、トランスフェリン受容体の一部を形成し、CD71(配列番号10)としても知られる)に融合する。これは、エンドソームへの、およびその後に放出されるEV(エキソソーム)への構築物の選別を増強するであろう。ポリペプチド保有EVがIL6媒介炎症を阻害することを可能にするための融合ポリペプチド構築物の別の例。
-配列番号52(P-セレクチン結合ペプチド-hGP130-断片X-N末端シンテニン):断片Xの四量体化ドメイン(四量体化ドメインは負荷を増大させ、そのリガンドに対する受容体親和性を向上させるために選ばれた)に融合した、ヒトGP130細胞外-膜貫通およびその細胞質尾部の部分(シグナル伝達ドメインを除く)に融合した、(炎症部位への標的化、ならびに炎症の影響を受ける組織へのリンパ球浸潤を減少させる方法の両方に使用できる)P-セレクチン結合ペプチド。四量体化ドメインはシンテニンのN末端ドメインに融合し、やはりエキソソーム選別を増加させてエキソソーム産生の増大を刺激する。そのような融合ポリペプチドを保有するEVは、炎症部位を標的とし、リンパ球浸潤を減少させ、インビボで全体的に炎症を減少させることが示された。CD9もエキソソーム選別ドメインとして評価され、同じ融合ポリペプチドを用いて試験した場合(すなわち、シンテニンを置換した場合)中程度の有効性を示した。
-配列番号53(断片X-トランスフェリン受容体-p-セレクチン結合ペプチド):断片Xの四量体化ドメイン(四量体化ドメインは負荷を増大させ、そのリガンドに対する受容体親和性を向上するために選択された)に融合した、ヒトトランスフェリン受容体-膜貫通およびその細胞質尾部の部分に融合した、(炎症部位への標的化ならびに炎症に冒された組織へのリンパ球浸潤を減少させる方法の両方のための)P-セレクチン結合ペプチド。
-配列番号54(P-セレクチン結合ペプチド-hGp130-LZ-N末端シンテニン):LZ二量化ドメインに融合した、ヒトGP130細胞外-膜貫通およびその細胞質尾部の部分(シグナル伝達部分を除く)に融合した、(炎症部位への標的化ならびに炎症に冒された組織へのリンパ球浸潤の減少の両方のための)P-セレクチン結合ペプチド。やはり、Pセレクチン融合ポリペプチドを保有するEVは、マウスの炎症部位への標的化および全体的な炎症の減少を示した。
-配列番号55(hTNFR-Zドメイン-TNFR膜貫通ドメイン-フォールドオン-N末端シンテニン):ヒトTNFR1受容体細胞外部分(細胞外部分にはZ-ドメインもまた導入されている)。Zドメインは抗体のFC部分に結合し、それゆえオプソニン化の過程を利用することによりEVの循環時間を増加させるだろう。膜貫通部分および細胞質尾部の部分断片(細胞質尾部のシグナル伝達能力のある部分は除去されている)は、フォールドオン三量体(TNF受容体が三量体としてリガンドに結合し、それゆえ受容体はリガンドに結合するように既にプライミングされているので、フォールドオン三量体化ドメインが選択された)に融合される。フォールドオンドメインは、シンテニンのN末端ドメインとさらに融合している(シンテニンのN末端ドメインは、一部のESCRTおよびALIXなどのESCRTアクセサリータンパク質に対する結合および相互作用部位を有する。これはEVへの選別を増加させ、TNFαへの結合を介して治療効果を発揮して、それにより炎症過程を減少させることに加えて、遺伝子操作された細胞における小胞生産を増加させる中心としても機能し得る。ALIXは、いくつかの実験において、シンテニンの代わりに使用されており、すなわち、以下の融合タンパク質構築物:hTNFR-Zドメイン-TNFR膜貫通ドメイン-フォールドオン-ALIXを生成した。
-配列番号56(シグナル伝達ドメインを含まないIL23受容体-Fos LZ-シンテニン):ロイシンジッパーFosに融合した、シグナル伝達ドメインを含まないヒトIL23受容体。FosはそのパートナーであるJunと二量体化してヘテロ二量体複合体を形成する。IL23受容体は、IL12受容体サブユニットベータ1とヘテロ二量体複合体を自然に形成するので、以下のIL12受容体はJunを備えている。IL23-Fosタンパク質はさらにシンテニンに、そして別の融合ポリペプチド中でシンデカンに融合される。両方の融合ポリペプチドは、LPS誘導した炎症モデルにおいてインビボでIL23の用量依存的な減少を達成した。
-配列番号57(インターロイキン-12受容体サブユニットβ-1-JunLZ-シンテニン):ロイシンジッパーJunを融合させた、シグナル伝達ドメインを含まないヒトIL-12受容体サブユニットβ-1受容体。JunはそのパートナーFosと二量体化してヘテロ二量体複合体を形成する。IL12受容体は、IL23受容体とヘテロ二量体複合体を自然に形成するので、IL23受容体はFosを備えている。IL12-Junタンパク質はさらにN末端シンテニンに融合される。
-配列番号58(IL17C受容体-LZ-N末端シンテニン):LZ二量体化ドメインに融合した、ヒトIL17C受容体細胞外-膜貫通およびその細胞質尾部の部分(シグナル伝達部分を除く)。二量体化ドメインはシンテニンのN末端ドメインに融合している。シンデカンは多くの実験においてシンテニンの代わりに使用されてきた、すなわち以下の融合タンパク質構築物:IL17C受容体-LZ-シンデカンを生成した。
-配列番号59(CD63-BBK32 FBN BR 2L):第2のループに挿入されたPOIとしてBBK32を有するヒトCD63。BBK32はBorrelia菌に由来し、内皮細胞に結合し、これが血中のBBK32被覆エキソソームの半減期を増加させる。
-配列番号60(DGPSGFP):DGPSはホスファチジルセリン(PS)結合ペプチドであり、これはEVをPOI、この場合はモデルPOIとしてのGFPで被覆するために使用される。
-配列番号61(VP1 AAV PHP.A-GP130膜貫通-LZ-N末端シンテニンにおけるアミノ酸520~610):LZ二量体化ドメインに融合した、ヒトGP130細胞外-膜貫通におよびその細胞質尾部の部分(シグナル部分を除く)に融合した、アデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシドのVP1のアミノ酸520~610(挿入されたものは、AAVウイルスの肝臓への取り込みを減少させるアミノ酸の7-merストレッチである)(GP130は細胞表面上に二量体として存在し、2分子のIL-6/sIL-6Rヘテロ二量体複合体を有する六量体複合体を形成するので、したがってこの強制的二量体化はリガンド結合親和性の増加を促進するであろう)。二量体化ドメインは、シンテニンのN末端ドメインに、またCD63およびCD81にも融合され、すべての構築物は活性を示し、肝臓への取り込み減少を示した。
-配列番号62(VP1 AAV PHP.B-GP130膜貫通-LZ-N末端シンテニンにおけるアミノ酸520~610):LZ二量体化ドメインに融合した、ヒトGP130細胞外-膜貫通およびその細胞質尾部の部分(シグナル伝達部分を除く)に融合した、AAVウイルスキャプシドのVP1のアミノ酸520~610(挿入されたものは、AAVウイルスの脳への取り込みを増加させることを示す7merであり、これによって、この構築物を含むEVの脳への取り込みは増加されるだろう)(GP130は細胞表面上に二量体として存在し、2分子のIL-6/sIL-6Rヘテロ二量体複合体を有する六量体複合体を形成するので、したがってこの強制的二量体化はリガンド結合親和性の増加を促進するであろう)。二量体化ドメインは、シンテニンのN末端ドメインに融合されたが、別の実験ではFLOT1にも融合して、融合ポリペプチドの他の成分の一般的な適用性を検証した。
-配列番号63(脳標的化ペプチドAAV-PHP.Bを有するCD63):CD63の第2のループに挿入されたAAV脳標的化ペプチド、この融合ポリペプチドを含むEVの脳内への取り込みの増加をもたらす。
-配列番号64(脳標的化ペプチドAAV-PHP.Aを有するCD63):肝臓の取り込みを減少させるAAVペプチドがCD63の第2のループに挿入され、肝臓への取り込みの減少をもたらす。
-配列番号65(トランスフェリン受容体-VP1 AAV PHP.B中のアミノ酸520~610):AAV脳標的化ペプチドに融合したヒトトランスフェリン受容体は、上記融合ポリペプチドを保有するEVの脳内への取り込みを増加させる。
-配列番号15に融合した配列番号66(ロイシンジッパー、フォールドオン、および断片Xなどの様々な異なるホモ多量体化ドメインを使用してシンテニンに融合したCD47):N末端シンテニンに融合したCD47。EVの表面上の複数コピーのCD47、あるいは複数コピーのCD55(配列番号67)の提示は、そのようなEVの循環時間の増加をもたらし、EVがそれらの治療効果を発揮するためのより長い時間枠を可能にする。この融合ポリペプチドは、他の融合ポリペプチドを含むコンビナトリアルEVにうまく組み合わされ、この融合ポリペプチドの循環促進効果を他のPOI、例えば、デコイ受容体の治療効果と組み合わせた。
-配列番号68(IL17A受容体-LZ-N末端シンテニン):LZ二量体化ドメインに融合した、ヒトIL17A受容体細胞外-膜貫通およびその細胞質尾部の部分(シグナル伝達部分を除く)。二量体化ドメインは、シンテニンまたはシンデカンのN末端ドメインに融合している。
-配列番号87(hTNFR-Zドメイン-TNFR膜貫通ドメイン-フォールドオン-HIV Gag p6):Zドメインに融合され、HIV Gag p6エキソソーム選別ドメインに融合されたフォールドオンドメインと組み合わされたヒトTNFR受容体、および別の融合ポリペプチド構築物においてもエキソソーム選別ドメインCD81に融合されたヒトTNFR受容体。TNFRのEV表面への輸送においてCD81はHIV Gag p6ほど効率的ではなかったが、それでもなお抗TNFα活性が両方の融合ポリペプチドで見られた。
-配列番号88(インターロイキン-1受容体1型-HIV Gag p6):ヒトIL1受容体1型はHIV Gag p6エキソソーム選別ドメインに融合されており、別の融合ポリペプチド構築物においてもエキソソーム選別ドメインシンデカンに融合されている。HIV Gag p6およびシンデカンはどちらも、IL1R POIをエキソソームの表面に輸送するのに非常に効率的であり、インビトロでかなりの抗IL1シグナル伝達効果を発揮した。
【0032】
好ましい実施形態では、融合ポリペプチドのいかなるタンパク質分解的切断も回避するために、POIのアミノ酸配列、エキソソーム選別ドメイン、および/または多量体化ドメイン(すなわち、融合ポリペプチドの本質的にどこでも)中の任意のプロテアーゼ切断部位が突然変異または除去される(部分的または完全に)。(除去または突然変異によって)マスクすることが重要である1つの特定のタイプのプロテアーゼ切断部位は、PMNエラスターゼなどのプロテアーゼ、MMP-2などのマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、およびMMP-13、ADAM17、ADAM10、および他のエンドペプチダーゼによって認識される切断部位である。したがって、本発明の例示的実施形態では、融合ポリペプチドは変異プロテアーゼ切断部位を含むか、あるいは融合ポリペプチドはプロテアーゼ切断部位を完全に欠いている。例えば、ヒトTNFR1のIENVKストレッチ(残基198~203)の除去または突然変異は、ADAM17切断に対する耐性を提供し、それによってEVへの負荷効率および結果として生じる治療効果を増強する。プロテアーゼ切断部位の除去または突然変異は、インビトロおよびインビボで少なくとも2倍、場合によっては5倍または10倍もの量で治療活性を増加させることができることが示され、この戦略は一貫して融合ポリペプチドを安定化するために適用された。
【0033】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの多量体化ドメインと組み合わされたエキソソーム選別ドメインは、EV細胞源からのEVの放出を増加させるのに寄与し得る。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、親細胞によるEV産生におけるこの増加は、エキソソーム選別ドメインとESCRT選別システムとの相互作用に起因すると推定される。多量体化ドメインは、ESCRT複合体との相互作用点を増加させる可能性があるので、EV起源細胞における小胞(例えば、エキソソーム)産生をさらに増加させる。エキソソーム選別ドメインは、ESCRT成分と相互作用し、小胞形成を誘導し、それゆえ小胞放出を増加させるだろう。多量体化ドメインは、いくつかのエキソソーム選別ドメイン(例えば、シンテニン、シンデカン、CD63、CD81、CD133など)を互いに非常に接近させるので、小胞形成の誘導をさらに促進するALIXなどのESCRT成分との相互作用を増大させる。このアプローチを利用して、エキソソーム選別ドメインおよび目的のタンパク質のみを含む対応する構築物を含むように遺伝子改変された細胞からのEVの産生と比較した場合、小胞放出は10倍も増加し得る。したがって、やはり特定の理論に縛られることを望むものではないが、少なくとも1つのエキソソーム選別ドメイン、少なくとも1つの多量体化ドメイン、および少なくとも1つの目的のタンパク質の新規の組み合わせを含むポリペプチド構築物をコードするポリヌクレオチド構築物を含むEV起源細胞の遺伝子操作は、治療効果の高いEVだけでなく、EV収量の大幅な増加ももたらす。
【0034】
本発明による起源細胞は、広範囲の細胞、例えば、間葉系幹細胞もしくは間質細胞または線維芽細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、ウォートンゼリー、周産期組織、歯芽、臍帯血、皮膚組織等から得られる)、羊膜細胞、より具体的には羊膜上皮細胞、骨髄抑制細胞から選択され得る。一般に、初代細胞および細胞株の両方がエキソソームおよびEVの適切な供給源である。非限定的な例としては、例えば、以下のものが挙げられる:ヒト胚性腎臓(HEK)細胞、周皮細胞、内皮細胞、リンパ球、内皮細胞、および気管、肺、消化管、尿路などの異なる臓器由来の上皮細胞、樹状細胞(DC)または造血系由来の他の細胞、例えば、マクロファージ、単球、B細胞もしくはT細胞、NK細胞、好中球、好酸球、マスト細胞もしくは好塩基球、赤血球もしくは赤血球前駆細胞、血小板および巨核球など、胎盤由来細胞(例えば、脱落膜胎盤細胞)、合胞体栄養細胞および羊膜上皮細胞などのような異なる起源由来の細胞、ならびにミクログリア、星状細胞、オリゴデンドロサイトおよびシュワン細胞などのCNSおよびPNS由来の細胞、上衣細胞および神経細胞など、褐色または白色脂肪由来の脂肪細胞、平滑筋および骨格筋起源の両方の筋細胞、ならびに心筋細胞、など。一般に、EVおよびエキソソームは、それが初代細胞源または細胞株であれば、本質的に任意の細胞源に由来し得る。EV起源細胞は、誘導多能性幹細胞(iPSC)および任意の方法によって誘導された他の幹細胞または前駆細胞を含む、任意の胚、胎児、および成体の体性幹細胞型であり得る。神経学的疾患を治療する場合、起源細胞、例えば、一次ニューロン、星状細胞、オリゴデンドロサイト、ミクログリア、および神経前駆細胞を利用することを企図し得る。起源細胞は、治療される患者にとって同種異系、自己、またはさらに異種の性質のいずれであってもよく、すなわち、細胞は患者自身からのものでも、または無関係の、適合の、もしくは不適合のドナーからのものでもよい。特定の状況において、同種異系細胞は、特定の適応症を患っている患者の自己由来細胞からは得られないかもしれない免疫調節効果を提供する可能性があるので、医学的観点から好ましいとすることができる。
【0035】
さらに別の態様では、本発明は、本発明によるEVを含む薬学的組成物に関する。典型的には、本発明による薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化された少なくとも1種類の治療用EV(すなわち、少なくとも1つの所望のPOIを含むポリペプチド構築物を含むEVの集団)を含む。少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、任意の薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクル、例えば、固体もしくは液体充填剤、希釈剤、賦形剤、担体、溶媒、またはカプセル化材料を含む群から選択され得る。それらは、例えば、ある臓器もしくは体の一部から、別の臓器もしくは体の一部へと(例えば、血液から任意の目的の組織および/または臓器および/または体へと)治療用送達小胞の活性を停止、維持、または治療的送達小胞を運搬もしくは輸送することに関与し得る。1つの特に好適な薬学的に許容され潜在的に活性な賦形剤は、ヘパリンまたはその任意の類似体および/または誘導体である。ヘパリンは、部分的にはEVの肝臓への取り込みを減少させることによって、本発明によるEVの半減期および有効性を増加させるために使用され得る。本明細書に記載されるようにインビボ実験に使用されるEV集団は、通常、液体形態で製剤化され、それは主に適切な添加剤を含むHEPES緩衝液に基づく。他の塩および/または糖含有溶液もまた、本発明によるEVを含む薬学的組成物として使用されてきた。
【0036】
本発明はまた、POIを含むEVの美容応用に関する。したがって、本発明はまた、乾燥肌、しわ、ひだ、隆起、および/または肌のしわなどの症状および問題を改善および/または軽減するために、適切なEVを含むクリーム、ローション、ゲル、エマルジョン、軟膏、ペースト、粉末、リニメント剤、日焼け止め剤、シャンプーなどのスキンケア製品にも関する。美容的性質および治療的性質の両方の一実施形態において、本発明によるEVは、PoIとしてボツリヌス毒素(例えば、ボトックス、例えばボツリヌス毒素A~G型)を含むことができる(ボツリヌス毒素は必ずしも美容用途のみに使用されるわけではなく、例えば、片頭痛やジストニアの治療にも適用可能である)。好ましい実施形態では、再生特性を有する適切なエキソソーム産生細胞(間葉系幹細胞または羊膜上皮細胞など)から入手可能なEV(少なくとも1種類のPOIを含む)は、しわ、線、ひだ、隆起および/または皮膚のしわの美容的緩和または治療的緩和に使用するための美容クリーム、ローション、またはゲルに含まれる。
【0037】
さらに別の態様では、本発明は、医学における使用のための本発明によるEVに関する。当然のことながら、EVが医薬に使用される場合、実際には通常、典型的には、EV集団および何らかの形態の薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物の形態で使用されるEVの集団である。患者に投与されるEVの用量は、EVに負荷されたPOIの量、治療または軽減されるべき疾患または症状、投与経路、POI自体の薬理学的作用、ならびに様々な関連性のある他のパラメータに依存するであろう。本発明のEVは、予防および/または治療目的、例えば、様々な疾患および障害の予防および/または治療および/または軽減における使用のために使用することができる。本発明によるEVが適用され得る疾患の非限定的な例としては、クローン病、潰瘍性大腸炎、強直性脊椎炎、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス、特発性肺線維症、乾癬、腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS)、インターロイキン-1受容体拮抗薬(DIRA)の欠乏、子宮内膜症、自己免疫肝炎、強皮症、筋炎、脳卒中、急性脊髄損傷、血管炎、ギランバレー症候群、急性心筋梗塞、ARDS、敗血症、髄膜炎、脳炎、肝不全、腎不全、移植片対宿主病、Duchenne型筋ジストロフィーおよびその他の筋ジストロフィー、リソソーム蓄積症(α-マンノシド症、β-マンノシド症、アスパルチルグルコサミン尿、コレステリルエステル蓄積症、シスチン症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコイドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病I型、ゴーシェ病II型、ゴーシェ病III型、GM1ガングリオシド症I型、GM1ガングリオシド症II型、GM1ガングリオシド症III型、GM2-サンドホフ病、GM2-テイ-サックス病、GM2-ガングリオシド症、AB変異型、ムクリピドーシスII、クラッベ病、リソソーム酸リパーゼ欠乏症、変色性白質ジストロフィー、MPSIハーラー症候群、MPSIシャイエ症候群、MPSIハーラーシャイエ症候群、MPSIIハンター症候群、MPSIIIAサンフィリッポ症候群タイプA、MPSIIIBサンフィリッポ症候群タイプB、MPSIIIBサンフィリッポ症候群タイプC、MPSIIIBサンフィリッポ症候群タイプD、MPSIVモルキオA型、MPSIVモルキオB型、MPSIXヒアルロニダーゼ欠損症、MPSVIマロトーラミー、MPSVIIスライ症候群、ムコリピドー症I-シアリドーシス、ムコリピドーシスIIIC、ムコリピドーシスIV型、多発性スルファターゼ欠損症、神経セロイドリポフスチン症T1、神経セロイドリポフスチン症T2、神経セロイドリポフスチン症T3、神経セロイドリポフスチン症T4、神経セロイドリポフスチン症T5、神経セロイドリポフスチン症T6、神経セロイドリポフスチン症T7、神経セロイドリポフスチン症T8、神経セロイドリポフスチン症T9、神経セロイド性リポフスチン症T10、ニーマンピック病A型、ニーマンピック病B型、ニーマンピック病C型、ポンペ病、濃化異骨症、サラ病、シンドラー病、およびウォルマン病など)、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、および他のトリヌクレオチド反復関連疾患を含む神経変性疾患、認知症、ALS、癌性悪液質、拒食症、2型糖尿病、および様々な癌が含まれる。
【0038】
実質的にすべての種類の癌、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、小脳基底細胞癌、または大脳基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨腫、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、脳腫瘍(小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽細胞腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、神経路および視床下部神経膠腫)、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(小児期、消化管)、原発不明癌、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、大腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌(眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、胆嚢癌、胃癌、消化管(カルチノイド)腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST))、胚細胞腫瘍(頭蓋外、性腺外、または卵巣)、妊娠性絨毛性腫瘍、神経膠腫(脳幹の神経膠腫、大脳星細胞腫、視経路および視床下部神経膠腫)、胃カルチノイド、有毛細胞白血病、頭頸部癌、心臓癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、膵島細胞癌(内分泌膵臓)、カポジ肉腫、腎臓癌(腎細胞癌)、喉頭癌、白血病(急性リンパ芽球性(急性リンパ性白血病とも呼ばれる))、急性骨髄性(急性骨髄性白血病とも呼ばれる)、慢性リンパ性(慢性リンパ性白血病とも呼ばれる)、慢性骨髄性(慢性慢性骨髄性白血病とも呼ばれる)、有毛細胞白血病)、口唇癌および口腔癌、脂肪肉腫、肝癌(原発)、肺癌(非小細胞、小細胞)、リンパ腫((AIDS関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキン(ホジキンリンパ腫を除くすべてのリンパ腫の古い分類)リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫髄芽腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明転移性頸部扁平上皮癌、口腔癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、菌状息肉腫、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病(急性、慢性)、骨髄腫、鼻腔癌および副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、卵巣癌、卵巣上皮癌(表面上皮間質性腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、膵島細胞癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体星状細胞腫、松果体胚細胞腫、松果体芽細胞腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腺腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、腎臓癌、腎細胞癌(腎臓癌)、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫(ユーイング腫瘍肉腫、カポジ肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫)、セザリー症候群、皮膚癌(非黒色腫、メラノーマ)、小腸癌、扁平上皮細胞癌、扁平上皮頸部癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽頭癌、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行上皮癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、および/またはウィルムス腫瘍は、本発明の関連標的である。
【0039】
本発明によるEVは、様々な異なる投与経路、例えば、耳介(耳)、口腔内、結膜、皮膚、歯科、電気浸透、子宮頸管内、類洞外、気管内、経腸、硬膜外、羊水外、体外、血液透析、浸潤、間質、腹腔内、羊膜内、動脈内、関節内、胆管内、気管支内、骨内、心臓内、軟骨内、耳内、海綿体内、腔内、脳内、嚢内、角膜内、歯冠内(歯)、冠状内、陰核海綿体内、皮内、椎間板内、管内、十二指腸内、硬膜内、表皮内、食道内、胃内、歯肉内、回腸内、病巣内、腔内、リンパ管内、髄内、髄膜内、筋肉内、眼球内、卵巣内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、脊髄内、滑液嚢内、腱内、精巣内、くも膜下腔内、胸腔内、管内、腫瘍内、鼓室内、子宮内、血管内、静脈内、静脈内ボーラス、静脈内点滴、脳室内、膀胱内、硝子体内、イオン導入、洗浄、喉頭、鼻、経鼻胃、密封包帯法、眼、経口、口咽頭、その他、非経口、経皮、関節周囲、硬膜外、神経周囲、歯周、直腸、呼吸(吸入)、眼球後方、軟組織、くも膜下、結膜下、皮下、舌下、粘膜下、局所的、経皮、経粘膜、経胎盤性、経気管、経鼓膜(transtympanic)、尿管、尿道、および/もしくは膣投与、ならびに/または上記投与経路の任意の組み合わせを介して、ヒト対象または動物対象に投与され得る。
【0040】
さらなる態様では、本発明は、上述のように、(a)本発明による少なくとも1つのポリペプチド(すなわち、少なくとも1つのエキソソーム選別ドメイン、少なくとも1つの多量体化ドメイン、および少なくとも1つのPOIを含むポリペプチド、すなわち本明細書に開示のトリドメインポリペプチド)をコードする、1つ以上のポリヌクレオチド構築物(複数可)を細胞源(典型的には細胞株)に導入する工程と、(b)ポリヌクレオチド構築物(複数可)からそれによってコードされるポリペプチド構築物(複数可)を発現する工程と、(c)細胞によって産生されたEVを採取する工程と、を含む、EVを産生する(またはより広くEV集団を産生する)方法に関する。EVの採取および精製は、種々の適切な方法を用いて行われ得る。例えば、接線流濾過(TFF)、限外濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、ビーズ溶出クロマトグラフィー、または本質的にそれらの任意の適切な組み合わせ、例えば、限外濾過とビーズ溶出クロマトグラフィーとの逐次的組み合わせ。
【0041】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記の例示的な態様、実施形態、代替形態、および変形形態を修正することができることを理解されたい。本発明は、以降、添付の実施例を用いてさらに例示されるが、当然のことながら、本発明の範囲および要旨から逸脱することなく大きく変更することもできる。
【実施例
【0042】
実施例1:TNFR1デコイ受容体エキソソームの効率の向上
NfKb活性化のためのルシフェラーゼレポーターを安定に発現するHEK293T細胞をTNF-αで誘導した。羊膜由来EV起源細胞を、異なるTNFR1-デコイ受容体(すなわち、目的のタンパク質、POI)を有する異なる融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド構築物で安定にトランスフェクトし、それによってTNFαに結合してTNFαを「デコイ」する。異なる融合ポリペプチドを含むEVをHEK293T細胞培養物に添加して、TNFα媒介シグナル伝達の遮断においてその活性を評価した。
【0043】
ルシフェラーゼシグナル(TNFα活性化の測定値)を処置の24時間後に測定した。図1は、多量体化ドメイン、フォールドオン(配列番号20)が、(エキソソーム選別ドメインおよびPOIからなる融合ポリペプチドのみを含むEVと比較して)EVの効果を用量依存的に増大させることを明確に示す。図1において、灰色枠線付きの黒色バーは疑似EVを表し、黒色バーはTNFR-シンテニンEVを表し、薄灰色バーはTNFR-フォールドオン細胞外-シンテニンEVであり、濃灰色はTNFR-フォールドオン細胞内-シンテニンEVである。図1から分かるように、細胞外フォールドオン多量体化ドメインは、TNFα媒介シグナル伝達のほぼ完全な無効化をもたらしている。
【0044】
実施例2:融合ポリペプチドに多量体化ドメインを挿入した後のgp130デコイ受容体EVの効率の向上
IL6活性化のためのレポーターを安定に発現するHeLa細胞をハイパーIL6で処置し、EVの外表面上にgp130デコイ受容体(すなわちPOI(配列番号30))を備えたEV(骨髄由来間葉系間質細胞から得た)を添加した。誘導の24時間後にIL6活性化を測定した。GP130-LZ-N末端シンテニン構築物を備えたEVは、IL6媒介シグナル伝達の阻害において、GP130-N末端シンテニンのみを備えたEVより明らかに優れている。これは、多量体化ドメインが挿入されているデコイ受容体融合ポリペプチドを含むEVの活性の増加を強調している。
【0045】
図2の黒色バーは疑似EVを表し、濃灰色のバーは規則的なシンテニン-gp130融合ポリペプチドを含むEVを表し、薄灰色のバーはロイシンジッパーの形態で多量体化ドメインを含む融合ポリペプチドを含むEVを表す(完全融合ポリペプチドはgp130ロイシンジッパー-シンテニン(配列番号50)である)。
【0046】
実施例3:gp130デコイEVで効率的に処置されたLPS誘導した全身性炎症
マウスにLPSを与えて敗血症様状態を誘導し、誘導後、動物に、(i)エキソソーム選別ドメインおよびPOIのみ、すなわちGP130-N末端シンテニン構築物、または(ii)エキソソーム選別ドメイン、多量体化ドメイン断片X(配列番号21)、およびPOIがGP130(IL6/sILR複合体をデコイし、それによってIL6媒介シグナル伝達を阻害するため)またはTNFR(TNFαをデコイして下流のシグナル伝達を遮断するため)のいずれかであるもの、のいずれかを含む融合ポリペプチドを含むMSC由来EVを注射した。両方のデコイEVは偽処置されたマウスよりも高い活性を示したが、多量体化ドメインを備えたデコイEVは、GP130-N末端シンテニンEV(すなわち多量体化ドメインを含まない融合ポリペプチドを含むEV)と比較して優れており、デコイ受容体エキソソームによる処置は、72時間の試験の終わりに100%の生存率をもたらした。
【0047】
実施例4:エキソソーム選別ドメインと組み合わせた多量体化ドメインを安定に発現する細胞からの粒子放出の増加を示すNTAデータ
HUVECは、TNFR1-フォールドオン-N末端シンテニン融合ポリペプチド構築物をコードするウイルスによって安定に形質導入された。TNFR1-フォールドオン-N末端シンテニン融合ポリペプチドを含む対照細胞およびEVを産生する細胞を15cmプレートに播種し、全血清培地中で24時間増殖させた。24時間後、培地を無血清OptiMEM培地に交換し、細胞を48時間OptiMEMとインキュベートした。培地を回収し、培地からEVを精製し、その後、精製したEVをNTAによって分析した。
【0048】
図4は、対照細胞によって産生されたエキソソームを示す薄い線と比較して、エキソソーム(濃い線)に存在するTNFR1-フォールドオン-シンテニン融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細胞からのエキソソーム産生の30倍の増加によって明示されるように、多量体化ドメインが対照細胞よりかなり高いレベルでEV放出を誘導することを示す。
【0049】
実施例5:2G12 IgGホモ二量体ドメインは、gp130デコイ受容体エキソソームの抗IL-6トランスシグナル伝達遮断活性を増加させる。
IL6活性化のためのレポーターを安定に発現するHeLa細胞を、ハイパーIL6およびgp130デコイ受容体を備えたEV(骨髄由来MSCから得た)で処置した。誘導の24時間後にIL6活性化を測定した。GP130-2G12 IgGホモ二量体ドメイン-ALIX構築物を含むエキソソームは、GP130-ALIXのみを備えたエキソソームよりも強い抗IL-6トランスシグナル伝達活性を示した。これは、多量体化ドメインが挿入されているデコイ受容体融合ポリペプチドを含むEVの活性の増加を強調している。
【0050】
図5の黒色のバーは疑似EVを表し、灰色のバーは通常のALIX-gp130融合ポリペプチドを含むEVを表し、黒枠線付きの白いバーは2G12 IgGホモ二量体ドメインの形態で多量体化ドメインを含む融合ポリペプチドを含むEVを表す(完全融合ポリペプチドは、gp130-2G12 IgGホモ二量体ドメイン-ALIXである)。
【0051】
実施例6:心臓ホスホランバン膜貫通五量体は、テトラスパニンCD63とCD81とを組み合わせた場合にガウシアルシフェラーゼの発現を増加させる。
脂肪組織由来MSCは、4つの異なるガウシアレポーター構築物で安定に形質導入された。ガウシアは、多量体化ドメインの有無にかかわらずCD63およびCD81と融合した。EVを馴化培地(48時間インキュベートした)から採取し、接線流およびCapto-core液体クロマトグラフィーカラムで精製した。ガウシアルシフェラーゼシグナルは、CD63/81負荷の測定として、採取したEVについて測定した。図6から明らかに分かるように、心臓ホスホランバン膜貫通五量体ドメインを有するCD63/81構築物はより高いシグナルを有するので、EVタンパク質の負荷を増大させた。図7の黒色のバーはCD63-ガウシアEVを表し、黒枠線付きの点模様のバーはCD81-ガウシア融合ポリペプチドEVを表し、灰色のバーはCD63、ガウシア、および心臓ホスホランバン膜貫通五量体多量体化ドメインの形態で多量体化ドメイン(完全融合ポリペプチドはCD63-心臓ホスホランバン膜貫通五量体多量体化ドメイン-ガウシア)を含む融合ポリペプチドを含むEVを表し、黒枠線付きの白色バーはCD81-心臓ホスホランバン膜貫通五量体多量体化ドメイン-ガウシアEVを表す。
【0052】
実施例7:ロイシンジッパーホモ二量体ドメインは、gp130提示デコイ受容体エキソソームの抗IL6トランスシグナル伝達遮断活性を増加させる。
IL6活性化のためのレポーターを安定に発現するHeLa細胞を、ハイパーIL6で処置し、POIとしてのgp130デコイ受容体、多量体化ドメインとしてのロイシンジッパーホモドメイン、および様々なエキソソーム選別ドメインを含む融合タンパク質構築物を備えたEV(骨髄由来間葉系間質細胞から得た)で処置した。図7の黒色のバーは疑似EVを表し、黒枠線付きのバーは通常のシンテニン-gp130融合ポリペプチドを含むEVを表し、黒枠線付きの点模様のバーはロイシンジッパーの形態で多量体化ドメインを含む融合ポリペプチドを含むEV(完全融合ポリペプチドはgp130-ロイシンジッパー-シンテニンである)を表し、濃灰色のバーはGp130-ロイシンジッパー-CD63を表し、薄灰色のバーはGp130-ロイシンジッパー-CD81を表し、黒枠線付きの白色のバーはGp130-ロイシンジッパー-トランスフェリン受容体エンドソーム選別ドメインを表す。ロイシンジッパードメインを含む融合タンパク質は、IL6媒介シグナル伝達の阻害においてGP130-シンデカンのみを備えたEVより明らかに優れており、これは評価したエキソソーム選別ドメイン全体に適用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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