(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】表面材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/12 20060101AFI20231013BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20231013BHJP
D06M 23/16 20060101ALI20231013BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B32B27/12
D06M15/263
D06M23/16
B60R13/02 B
(21)【出願番号】P 2020007812
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野口 健吾
【審査官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-315232(JP,A)
【文献】特開2003-193312(JP,A)
【文献】特開2020-044683(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212245(WO,A1)
【文献】特開2013-060674(JP,A)
【文献】特開2014-173195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/12
D06M 15/263
D06M 23/16
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛、粒子を含有するプリント、ならびに、樹脂層を備える表面材であって、
前記布帛の少なくとも一方の主面上に前記プリントが部分的に存在しており、
前記プリント上全体に前記樹脂層が存在しており、
前記樹脂層側の主面に前記布帛の露出している部分が存在する、表面材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用内装材などを調製可能な表面材の構成材料には、従来から布帛(例えば、繊維ウェブ、不織布、織物、編物など)が使用されている。
そして、このような従来技術にかかる表面材として、例えば、特開2015-104848(特許文献1)や特開2016-147466(特許文献2)などには、布帛の少なくとも一方の主面上に粒子を含有するプリントを施すと共に、プリントが存在する側の主面全体を樹脂層で覆ってなる表面材が開示されている。このような構成を満たす表面材、ならびに、当該表面材を成形加工してなる内装材では、当該樹脂層の存在によってプリントが脱落し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-104848
【文献】特開2016-147466
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したような従来技術にかかる表面材は、無孔板のような態様の樹脂層を備えているため、柔軟性に乏しく成形性が劣るという問題を有していた。
そのため、プリントが脱落し難いと共に成形性に優れる表面材の提供が求められた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は「布帛、粒子を含有するプリント、ならびに、樹脂層を備える表面材であって、
前記布帛の少なくとも一方の主面上に前記プリントが部分的に存在しており、
前記プリント上全体に前記樹脂層が存在しており、
前記樹脂層側の主面に前記布帛の露出している部分が存在する、表面材。」である。
【発明の効果】
【0006】
本願出願人が検討を続けた結果、「布帛、粒子を含有するプリント、ならびに、樹脂層を備える表面材であって、前記布帛の少なくとも一方の主面上に前記プリントが部分的に存在しており、前記プリント上全体に前記樹脂層が存在して」いるという構成を備える表面材において発生する、成形性が劣るという問題は、樹脂層側の主面に布帛の露出している部分が存在することによって、解決できることを見出した。
つまり、樹脂層側の主面に布帛の露出している部分が存在している表面材は、無孔板のような態様の樹脂層を備えているのではなく、多孔板のような態様あるいは非連続的な態様の樹脂層を備えている。その結果、当該構成を満足する表面材は、柔軟性に富み成形性に優れている。
また、プリント上全体に前記樹脂層が存在していることによって、表面材を前記樹脂層側から見た際に当該主面上にプリントが露出することなく存在しており、プリントの脱落が防止されている。
そのため、本発明によって、プリントが脱落し難いと共に成形性に優れる表面材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本発明にかかる表面材を主面側からみた模式平面図である。
【
図4】交点の無い菱形の格子柄を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、大気圧下のもと測定を行った。また、25℃温度条件下で測定を行った。そして、本発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、少数第一位までが求める値である場合、測定によって少数第二位まで値を求め、得られた少数第二位の値を四捨五入することで少数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。
【0009】
本発明の表面材について、主として、本発明にかかる表面材の模式断面図である
図1、ならびに、本発明にかかる表面材を主面側からみた模式平面図である
図2を用いて説明する。
図1および
図2に例示されている表面材(10)は、布帛(1)の一方の主面上に、平行をなす二本線の柄で粒子を含有するプリント(2、以降、プリント(2)と略すことがある)が存在していると共に、当該プリント(2)上全体に存在する樹脂層(3)が存在している。また、表面材(10)における樹脂層側の主面(
図1における紙面上の上方向側の主面、
図2における紙面上の手前側の主面)には、布帛(1)の露出している部分(4)が存在している。なお、
図1および
図2では、同一の構成物については番号の付与を省略している。また、
図1および
図2では、布帛の露出している部分について、樹脂層(3)間に露出している部分のみに番号4を付与している。
【0010】
本発明でいう布帛(1)とは、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などの、シート状の繊維集合体である。本発明の表面材(10)は、布帛(1)を含んでいるため、柔軟性に富み金型への追従性に優れるなど成形性に優れる。なお、全ての構成繊維がランダムに絡合してなる布帛(1)(特に、不織布)を備えた表面材(10)は、より柔軟性に富み成形性に優れ好ましい。
【0011】
布帛(1)の構成繊維は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の樹脂を用いて構成できる。
【0012】
なお、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0013】
表面材(10)に難燃性が求められる場合には、布帛(1)の構成繊維が難燃性の樹脂を含んでいるのが好ましい。このような難燃性の樹脂として、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などを挙げることができる。また、顔料を練り込み調製された繊維や、染色された繊維などの原着繊維であってもよい。また、バインダ等を用いることで難燃剤を担持してもよい。
【0014】
構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0015】
構成繊維は、一種類の樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の樹脂から構成されてなるものでも構わない。複数種類の樹脂から構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
【0016】
また、構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0017】
布帛(1)が構成繊維として熱融着性繊維を含んでいる場合には、繊維同士を熱融着することによって、布帛(1)に強度と形態安定性を付与でき好ましい。このような熱融着性繊維は、全融着型の熱融着性繊維であっても良いし、上述した複合繊維のような態様の一部融着型の熱融着性繊維であっても良い。熱融着性繊維において熱融着性を発揮する成分(樹脂)として、例えば、低融点ポリオレフィン系樹脂や低融点ポリエステル系樹脂を含む熱融着性繊維などを適宜選択して使用することができる。
【0018】
布帛(1)が捲縮性繊維を含んでいる場合には、伸縮性が増して金型への追従性に優れ好ましい。このような捲縮性繊維として、例えば、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現した捲縮性繊維やクリンプを有する繊維などを使用することができる。また、布帛(1)が加熱することで捲縮を発現する潜在捲縮性繊維を含んでいてもよい。
【0019】
布帛(1)が繊維ウェブや不織布である場合、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法、などによって調製できる。
【0020】
調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製できる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどしてバインダあるいは接着繊維によって構成繊維同士を接着一体化あるいは溶融一体化させる方法などを挙げることができる。
【0021】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0022】
布帛(1)を構成する繊維同士を接着するため、バインダを用いても良い。使用可能なバインダの種類は適宜選択するが、例えば、ポリオレフィン(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体(スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)など)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、アクリル系樹脂(アクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合体樹脂など)、ポリウレタン樹脂などを使用できる。
バインダがアクリル系樹脂を含有していると、金型を用いたヒートプレス等の熱成形時に適度に軟化するため、金型への追従性に優れる表面材(10)を提供でき好ましい。
【0023】
また、バインダは上述した樹脂以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0024】
布帛(1)に含まれるバインダの目付は適宜選択するが、バインダ量が多いほど主面が平滑な表面材(10)を提供し易いことから、バインダの目付は、1g/m2以上であるのが好ましい。一方、バインダ量が過剰に多い場合には、柔軟性が劣る表面材(10)となるおそれがあることから、バインダの目付は、50g/m2以下であるのが好ましく、30g/m2以下であるのが好ましく、10g/m2以下であるのが好ましい。なお、前記の下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0025】
布帛(1)が織物や編物である場合、上述のようにして調製した繊維を織るあるいは編むことで、織物や編物を調製できる。
【0026】
なお、繊維ウェブ以外にも不織布あるいは織物や編物など布帛(1)を、上述した構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法へ供しても良い。
【0027】
布帛(1)の構成繊維の繊度は特に限定するものではないが、剛性に優れる表面材(10)を提供できるように、1dtex以上であるのが好ましく、1.5dtex以上であるのがより好ましく、2dtex以上であるのがより好ましい。他方、成形性に優れる表面材(10)となるように、100dtex以下であるのが好ましく、50dtex以下であるのがより好ましく、30dtex以下であるのがより好ましく、10dtex以下であるのが更に好ましい。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0028】
また、布帛(1)の構成繊維の繊維長も特に限定するものではないが、剛性の観点から、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのが更に好ましい。他方、繊維長が110mmを超えると、布帛(1)の調製時に繊維塊が形成される傾向があり、成形性が劣る表面材(10)となるおそれがあることから、110mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好ましい。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0029】
布帛(1)の、例えば、厚さ、目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。布帛(1)の厚さは、0.5~5mmであることができ、1~3mmであることができ、1.1~1.9mmであることができる。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。また、布帛(1)の目付は、例えば、50~500g/m2であることができ、80~300g/m2であることができ、100~250g/m2であることができる。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。なお、本発明において厚さとは主面と垂直方向へ20g/cm2圧縮荷重をかけた時の当該垂直方向の長さをいい、目付とは測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1m2あたりの質量をいう。
【0030】
本発明でいうプリント(2)とは、布帛(1)の少なくとも一方の主面上に存在し、主として表面材(10)の意匠性および/または触感を向上させる役割を担う、粒子を含有する樹脂の部分を指す。
【0031】
プリント(2)を構成する樹脂は、布帛(1)の少なくとも一方の主面上に粒子を担持する役割を担う。その種類は適宜選択でき、上述したバインダと同様の樹脂を採用することができる。特に、金型を用いたヒートプレス等の熱成形時に適度に軟化するため、金型へ追従し、成形性に優れる表面材(10)を提供できることから、プリント(2)を構成する樹脂がアクリル系樹脂を含んでいるのが好ましい。
【0032】
なお、プリント(2)は樹脂以外に、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0033】
本発明にかかるプリント(2)は粒子を含有している。当該粒子はプリント(2)に色彩を付与して表面材(10)の意匠性を向上する役割や、表面材(10)の主面に凹凸を与え触感を向上する役割を担うことができる。
【0034】
プリント(2)に含有されている粒子の平均粒子径は適宜調整するが、触感に優れる表面材(10)となるように粒子の平均粒子径は106μm以下であるのが好ましく、平均粒子径は85μm以下であるのが好ましい。なお、平均粒子径の下限は適宜選択できるが、30μm以上であるのが現実的であり、35μmよりも大きいのが好ましい。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0035】
本発明において粒子の平均粒子径は以下の方法で算出される値をいう。
(平均粒子径の算出方法)
(1)室温(25℃)雰囲気下に置いた複数の粒子の200倍の光学顕微鏡写真を撮影する、あるいは、室温(25℃)雰囲気下に置いた表面材(10)の両主面の200倍の光学顕微鏡写真を各々撮影する。
(2)撮影した写真のうち粒子の存在が認められた写真から、ランダムに10個の粒子を選出する。
(3)選出した10個の粒子の粒子径を各々算出し、算出した値の平均値を平均粒子径とする。なお、写真に写る粒子の面積と同じ面積を有する円の直径を算出し、その直径の値を粒子の粒子径とみなす。
【0036】
なお、測定対象となる粒子の種類が判明しており、その平均粒子径がカタログや仕様書などに記載されている場合は、記載されている値を粒子の平均粒子径と判断できる。
【0037】
プリント(2)に含有されている粒子の粒子径における変動係数(以降、CV値と略称することがある)は、適宜選択できるが、CV値が小さいほど粒子の分布が狭いことで、より意匠性や触感に優れる表面材(10)を意図したとおり効率良く提供することができる。そのため、粒子の粒子径におけるCV値は、17%以下であるのが好ましく、16%以下であるのが好ましい。なお、下限値は適宜選択できるが、理想的には0%である。なお、前記の下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0038】
本発明にかかる表面材(10)が備える粒子の種類は適宜選択でき、中実粒子であっても中空粒子であってもよいが、触感が向上した表面材(10)を提供し易いことから、中空粒子を採用するのが好ましい。また、粒子の構成成分も適宜選択でき、例えば、シリカやアルミナなどの無機成分で構成された無機粒子や樹脂で構成された有機粒子、あるいは、樹脂と無機成分を含んだ構成を備える粒子であってもよい。
【0039】
ここでいう中空粒子とは、内部に空洞を有する粒子を意味する。中空粒子は中実粒子よりも粒子径方向へ変形し易いため、人は中空粒子を含有する表面材(10)の主面を触った際に、人は硬質なものを触った際の触感ではなく弾性を有するものを触った際の触感を感じる。その結果、表面材(10)の主面を触った際に柔軟性が感じられ易くなることに起因して、触感が向上した表面材(10)を提供できる。
【0040】
粒子を構成する成分は適宜選択できる。粒子が中空粒子である場合、粒子径方向へ変形し易い中空粒子であるよう、中空粒子を構成する成分は樹脂を含んでいるのが好ましい。また、中空粒子として、樹脂と無機成分を含んだ構成を備える中空粒子を採用すると、分散媒に中空粒子が均一に分散してなるプリント液を調製し易くなる。その結果、当該プリント液を布帛(1)へ付与することで、中空粒子が均一に分布してなるプリント(2)を備えた、より意匠性や触感に優れる表面材(10)を意図したとおり効率良く提供でき好ましい。
【0041】
中空粒子の具体例として、松本油脂製薬株式会社のMFL-81GTA、MFL-81GCA、MFL-SEVEN、MFL-HD30CA、MFL-HD60CA、MFL-100MCA、MFL-110CAL、また、日本フィライト株式会社の920DU40、909DU80、930DU120などを挙げることができる。
【0042】
プリント(2)は複数種類の粒子を含有していても良いが、より意匠性や触感に優れる表面材(10)を提供できるよう、意匠性向上や触感向上に寄与する粒子として上述した構成を備えた中空粒子のみを含有するプリント(2)を備えた表面材(10)であるのが好ましい。
【0043】
なお、プリント(2)の露出する主面上のみに粒子が存在している態様や、プリント(2)の内部および露出する主面上に粒子が存在している態様であることができる。
【0044】
プリント(2)に含有されている粒子の量は適宜選択するが、15g/m2以下であることができ、12g/m2以下であることができ、9g/m2以下であることができ、6g/m2以下であることができる。一方、含有量の下限値は適宜調整するが、本発明に係る特性を有する表面材(10)を提供できるよう、1g/m2よりも多いのが好ましい。なお、前記の下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0045】
プリント(2)を構成する樹脂の固形分質量に占める粒子の固形分質量の百分率は適宜調整できるが、25質量%以上であるのが好ましい。当該百分率が25質量%以上であることによって、より意匠性や触感に優れる表面材(10)を提供できる。
そのため、当該百分率は30質量%以上であるのが好ましく、35質量%以上であるのが好ましく、40質量%以上であるのが好ましい。また、当該百分率の上限値は適宜選択でき、400質量%以下であることができ、200質量%以下であることができ、100質量%以下であることができる。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0046】
なお、上述した固形分質量の百分率は、以下の方法で算出できる。
A=100×B/C
A:プリントを構成する樹脂の固形分質量に占める粒子の固形分質量の百分率(単位:質量%)
B:プリントを構成する粒子の固形分質量(単位:g/m2)
C:プリントを構成する樹脂の固形分質量(単位:g/m2)
【0047】
また、表面材(10)が備えるプリント(2)を構成している、粒子および樹脂の固形分質量を測定することが困難である場合には、表面材(10)の製造工程においてプリント(2)を構成するため布帛(1)の一方の主面上へ付与する、プリント液中に含まれる粒子の固形分質量をBとして上述の式へ代入すると共に、プリント液中に含まれる樹脂の固形分質量をCとして上述の式へ代入することで、プリント(2)を構成する樹脂の固形分質量に占める粒子の固形分質量の百分率(単位:質量%)を算出する。
【0048】
布帛(1)の一方の主面上に存在するプリント(2)の態様は、布帛(1)の少なくとも一方の主面上にプリント(2)が部分的に存在するよう(主面の一部を覆い存在している態様となるよう)適宜調整でき、平行線や格子状などのパターンを有する柄、ドット状あるいは不定形状などの柄であることができる。なお、本発明でいう、プリント(2)が部分的に存在しているとは、布帛(1)のプリント(2)が存在している側の主面において、プリント(2)の存在していない部分があることを意味する。
また、プリント(2)は一種類の樹脂を含有する層を備えていても、一種類あるいは複数種類の樹脂を含有する層を複数備えていても良く、具体的には、柄あるいは樹脂や含有物が同一あるいは異なるプリント(2)を複数備えていても良い。
【0049】
プリント(2)は布帛(1)の一方の主面上に存在するのであれば、布帛(1)の両主面上にプリント(2)が存在していても良い。なお、プリント(2)は布帛(1)の主面上にのみ存在する態様以外にも、プリント(2)を構成する成分(樹脂や粒子など)の一部が布帛(1)を構成する構成繊維間に侵入している態様であってもよい。
【0050】
プリント(2)の目付は適宜選択するが、例えば、2~50g/m2であることができ、5~30g/m2であることができる。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0051】
本発明の表面材(10)は、布帛(1)の少なくとも一方の主面上に粒子を含有するプリント(2)を備えていると共に、当該プリント(2)における布帛(1)が存在する側と反対側の主面上に樹脂層(3)を備えている。
【0052】
樹脂層(3)は、表面材(10)からプリント(2)が脱落する、および/または、表面材(10)を成形加工してなる内装材からプリント(2)が脱落するのを防止する役割を担う、樹脂を含有する層である。なお、プリント(2)の構成成分と樹脂層(3)の構成成分(例えば、粒子の有無など)は異なっている。
【0053】
樹脂の種類は適宜選択でき、上述したバインダと同様の樹脂を採用することができる。特に、金型を用いたヒートプレス等の熱成形時に適度に軟化するため、金型への追従性に優れる成形性に優れる表面材(10)を提供できることから、樹脂層(3)は樹脂としてアクリル系樹脂を含んでいるのが好ましい。なお、本発明にかかる効果が効果的に発揮されるよう、樹脂層(3)を構成する樹脂はアクリル系樹脂のみであるのが好ましい。
【0054】
樹脂層(3)は上述した樹脂以外に、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。なお、樹脂層(3)から粒子を含んだプリント(2)が脱落し難いように、樹脂層(3)はプリント(2)に含有されている粒子を含有していないのが好ましい。
【0055】
樹脂層(3)の存在態様は、布帛(1)の一方の主面上に存在するプリント(2)上全体に存在しており、また、表面材(10)における樹脂層(3)側の主面に布帛(1)の露出している部分が存在する態様である限り、適宜選択でき、平行線や格子状などのパターンを有する柄、ドット状あるいは不定形状などの柄であることができる。
【0056】
なお、本発明でいう、樹脂層(3)がプリント(2)上全体に存在しているとは、表面材(10)におけるプリント(2)が存在している側の主面を、その主面の垂直方向から観察した際に、樹脂層(3)の存在によって当該主面にプリント(2)の露出している部分が存在していないことを意味する。また、本発明でいう、樹脂層(3)側の主面に布帛(1)の露出している部分が存在するとは、表面材(10)におけるプリント(2)および樹脂層(3)が存在している側の主面を、その主面の垂直方向から観察した際に、当該主面に布帛(1)の露出している部分が存在することを意味する。
【0057】
また、樹脂層(3)は表面材(10)の両主面上に存在していても良い。また、樹脂層(3)は布帛(1)上やプリント(2)上にのみ存在する態様以外にも、布帛(1)を構成する構成繊維間に侵入している態様であってもよい。
【0058】
樹脂層(3)の目付は適宜選択するが、樹脂層(3)の目付は1~80g/m2であることができ、3~70g/m2であることができ、5~55g/m2であることができる。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0059】
表面材(10)の、例えば、厚さ、目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。表面材(10)の厚さは、0.5~5mmであることができ、1~3mmであることができ、1.1~1.9mmであることができる。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。また、布帛(1)の目付は、例えば、50~500g/m2であることができ、80~300g/m2であることができ、100~250g/m2であることができる。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。なお
【0060】
表面材(10)における一方の主面(A、本発明の構成を満足する表面材(10)においては、プリント(2)や樹脂層(3)が存在する側の主面)およびもう一方の主面(B)の、剛軟度(単位:cm)の値は、成形性に優れる表面材(10)を提供できるよう適宜調整する。
【0061】
なお、剛軟度は以下の測定方法により求めることができる。
(剛軟度の測定方法)
JIS L1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)8.21.1のA法(45°カンチレバー法)に則って測定した。具体的には、測定対象から採取した試料における一方の主面(A)が測定装置の斜面側に向くよう設置し、測定した結果を一方の主面(A)における剛軟度(単位:cm)とした。また、調製した試料におけるもう一方の主面(B)が測定装置の斜面側に向くよう設置し、測定した結果をもう一方の主面(B)における剛軟度(単位:cm)とした。
【0062】
表面材(10)における各主面の剛軟度は適宜選択するが、主面の剛軟度が高過ぎると成形性に優れる表面材(10)を提供するのが困難なおそれがある。そのため、表面材(10)における各主面の剛軟度は、15cm以下であるのが好ましく、13cm以下であるのが好ましく、11cm以下であるのが好ましい。また、各主面の剛軟度が低過ぎると取扱い性に優れる表面材(10)を提供するのが困難なおそれがある。そのため、本発明に係る表面材(10)における各主面の剛軟度は、1cm以上であるのが好ましく、3cm以上であるのが好ましく、5cm以上であるのが好ましい。
【0063】
なお、一方の主面(A)の剛軟度と前記主面に対向して存在するもう一方の主面(B)の剛軟度の差が小さいほど、トリミング性にも優れる表面材(10)を実現できる傾向がある。そのため、当該剛軟度の差は1.5cm以下であるのが好ましく、0cmが理論的には最も好ましい。下限値は適宜選択できるが、0cm以上の値となる。
【0064】
表面材(10)におけるタテ方向およびヨコ方向の、20%引張強度(単位:N/3cm)の値は、成形性に優れる表面材(10)を提供できるよう適宜調整する。
【0065】
なお、各値は以下の測定方法により求めることができる。
(20%引張強度の測定方法)
(1)測定対象から短冊状の試料C(長辺:200mm、短辺(長辺と垂直をなす):3cm)を、合計3枚採取した。なお、測定対象の生産方向と長辺方向が平行となるようにした。
(2)前記試料Cを引張り強さ試験機(オリエンテック製、テンシロンUTM-III-100(登録商標))のチャック(チャック間距離:100mm)に固定し、引張り速度200mm/min.で引っ張り、チャック間距離が120mmとなった20%伸長時の応力を測定した。調製した3枚の試料Cについて各々当該応力を測定し、その算術平均を測定対象におけるタテ方向の20%引張強度(単位:N/3cm)とした。
(3)測定対象から短冊状の試料D(長辺:200mm、短辺(長辺と垂直をなす):3cm)を、合計3枚採取した。なお、測定対象の生産方向と短辺方向が平行となるようにした。
(4)前記試料Dを上述(2)と同じ測定へ供することで、20%伸長時の応力を測定した。調製した3枚の試料Dについて各々当該応力を測定し、その算術平均を測定対象におけるヨコ方向の20%引張強度(単位:N/3cm)とした。
【0066】
20%引張強度が低いほど、柔軟性に富む柔らかいものであることを意味している。そのため、20%引張強度が低い表面材(10)は成形工程へ供した際に、表面材(10)が伸びながら型の内部形状に沿って追従し易いことで、意図した形状に成形した内装材を製造でき成形性に優れている。
このことから、20%引張強度はタテ方向およびヨコ方向とも100N/3cm以下であるのが好ましく、75N/3cm以下であるのが好ましく、55N/3cm以下であるのが好ましい。下限値は適宜選択するが、20%引張強度が低過ぎると取扱い性に優れる表面材(10)を提供するのが困難なおそれがある。そのため、20%引張強度はタテ方向およびヨコ方向とも5N/3cm以上であるのが好ましい。
【0067】
本発明の表面材(10)は、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を備えていてもよい。これらの構成部材は表面材(10)における、プリント(2)および樹脂層(3)が存在している側の主面とは異なる主面側に積層して設けるのが好ましい。
【0068】
次に、本発明の表面材(10)の製造方法について説明する。なお、上述の表面材(10)について説明した項目と構成を同じくする点については説明を省略する。
本発明にかかる表面材(10)の製造方法は適宜選択することができるが、一例として、
1.布帛(1)を用意する工程、
2.プリント(2)を構成可能な樹脂と粒子を溶媒あるいは分散媒に混合して、プリント液を調製する工程、
3.布帛(1)の少なくとも一方の主面上に、部分的にプリント液を付与する工程、
4.プリント液を付与した布帛(1)を加熱することで溶媒あるいは分散媒を除去して、少なくとも一方の主面上にプリント(2)が部分的に存在する布帛(1)を調製する工程、
5.樹脂層(3)を構成可能な樹脂を含んだ成分を溶媒あるいは分散媒に混合して、樹脂層形成液を調製する工程、
6.プリント(2)を備える布帛(1)におけるプリント(2)側の主面上に、プリント(2)の全てが樹脂層形成液で覆われると共に、布帛(1)におけるプリント(2)側の主面上に布帛(1)の露出する部分が存在するようにして、樹脂層形成液を付与する工程、
7.樹脂層形成液を付与した、プリント(2)を備える布帛(1)を加熱することで、溶媒あるいは分散媒を除去して、表面材(10)を調製する工程、
を備える、表面材(10)の製造方法を挙げることができる。
【0069】
工程1について説明する。
布帛(1)として、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などの、シート状の布帛(1)を用意する。なお、布帛(1)における構成繊維の繊度や繊維長、布帛(1)の厚さや目付は上述した数値のものを採用することができる。
【0070】
工程2について説明する。
溶媒あるいは分散媒の種類は適宜選択できるが、布帛(1)の一方の主面上へ好適にプリント液を付与できるよう、プリント(2)を構成可能な樹脂が溶解すると共に、粒子が溶解せず分散可能な溶媒を採用する、あるいは、プリント(2)を構成可能な樹脂粒子および粒子が溶解せず分散可能な分散媒を採用するのが好ましい。また、プリント液には粒子以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を溶解あるいは分散させ、含有させてもよい。特に、プリント液が顔料を含んでいると、意匠性に優れる表面材(10)を提供でき好ましい。
【0071】
工程3について説明する。
布帛(1)の一方の主面上に、部分的にプリント液を付与する方法は適宜選択できるが、布帛(1)の一方の主面にプリント液をそのまま、あるいは泡立てた状態で、スプレーやグラビアロールなどを用いて、柄を形成するようにプリント(2)や捺染して付与する方法などを選択できる。なお、一種類のプリント液を付与する、あるいは、複数種類のプリント液を付与しても良い。また、複数種類のプリント液を付与する場合には、各プリント液の付与態様(含有されている粒子の組成、柄、プリント液の組成)は異なっていても良い。
【0072】
工程4について説明する。
溶媒あるいは分散媒を除去してプリント(2)を備える布帛(1)を調製する方法は適宜選択できるが、例えば、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する、室温雰囲気下や減圧雰囲気下に静置するなどして、溶媒あるいは分散媒を蒸発させ除去できる。溶媒あるいは分散媒を除去する際の加熱温度は溶媒あるいは分散媒が揮発可能な温度であると共に、布帛(1)や中空粒子など構成部材の形状や機能などが意図せず低下することがないよう、加熱温度の上限を選択する。なお、布帛(1)が繊維ウェブの場合には、本工程によって構成繊維同士を接着する(溶融したバインダで接着する、あるいは、構成繊維に含まれる熱可塑性成分を溶融させ接着する)ことで、不織布を形成してもよい。
【0073】
工程5について説明する。
溶媒あるいは分散媒の種類は適宜選択できるが、好適に樹脂層形成液を付与できるよう、樹脂層(3)を構成可能な樹脂が溶解すると共に布帛(1)やプリント(2)の構成成分が溶解しない溶媒あるいは分散媒、または、樹脂層(3)を構成可能な樹脂ならびに布帛(1)やプリント(2)の構成成分が溶解しない溶媒あるいは分散媒を採用するのが好ましい。また、樹脂層形成液には上述した添加剤を溶解あるいは分散させ、含有させてもよい。なお、樹脂層(3)は、プリント(2)に含有されている粒子を含有していない態様となるように調製されるのが好ましい。
【0074】
工程6について説明する。
プリント(2)を備える布帛(1)におけるプリント(2)側の主面上に、プリント(2)の全てが樹脂層形成液で覆われると共に、布帛(1)におけるプリント(2)側の主面上に布帛(1)が露出する部分が存在するようにして、樹脂層形成液を付与する。その付与方法は適宜選択できるが、例えば、工程3で挙げた手段を採用できる。
なお、一種類の樹脂層形成液を付与する、あるいは、複数種類の樹脂層形成液を付与しても良い。また、複数種類の樹脂層形成液を付与する場合には、各樹脂層形成液の付与態様(柄、樹脂層形成液の組成)は異なっていても良い。
【0075】
工程7について説明する。
溶媒あるいは分散媒を除去して表面材(10)を調製する方法は適宜選択できるが、例えば、工程4で挙げた手段を採用できる。
【0076】
上述の製造方法を用いることで、本発明に係る表面材(10)を製造することができる。
【0077】
上述の表面材(10)の製造方法では、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層する工程、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工する工程、などの、各種二次工程を備えた表面材(10)の製造方法であってもよい。
なお、これらの構成部材は表面材(10)における、樹脂層(3)側の主面とは異なる主面側に積層して備えることができる。また、リライアントプレス処理などの、表面を平滑とするための加圧処理工程へ供してもよい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0079】
(布帛の調製)
原着ポリエステル繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:38mm)を100%用いて、カード機により開繊して繊維ウェブを形成した後、片面から針密度400本/m2でニードルパンチ処理を行った。その後、熱ロール間(ギャップ間隔:0.6mm、ロール加熱温度:165℃)へ供することで、ニードルパンチ不織布(目付:180g/m2、厚さ:1.5mm)を調製した。
次いで、ニードルパンチ不織布のニードリングを施した面とは反対の面から、以下に記載の割合で配合したバインダ液を泡立てた状態で付与し、ロール間(ギャップ間隔:0.25mm)へ供した。その後、温度160℃のキャンドライヤーで乾燥することで、バインダ接着不織布(目付:185g/m2、厚さ:1.6mm、全ての構成繊維がランダムに絡合してなる不織布)を調製した。
【0080】
(バインダ液の組成)
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョンA(アクリル酸エステル樹脂のTg:-40℃、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンの固形分質量:50質量%):4.8部
・界面活性剤:0.5部
・25%アンモニア水:0.1部
・水:94.6部
【0081】
(プリント液の調製)
以下に記載の割合で配合したプリント液を調製した。
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョンB(アクリル酸エステル樹脂のTg:-5℃、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンの固形分質量:45質量%):17.8部
・中空粒子:3部
・黒色顔料:5部
・増粘剤:21.7部
・消泡剤:0.5部
・25%アンモニア水:0.7部
・水:51.3部
なお、プリント液に配合した中空粒子920DU40(EXPANCELマイクロスフェア(EXPANCELは登録商標である)、日本フィライト株式会社)は、液状ガスを内包した樹脂殻からなる熱膨張中空粒子であった。
【0082】
(樹脂層形成液の調製)
以下に記載の割合で配合した樹脂層形成液を調製した。
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョンA(アクリル酸エステル樹脂のTg:-40℃、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンの固形分質量:50質量%):5部
・増粘剤:29部
・消泡剤:0.4部
・離型剤:2部
・25%アンモニア水:1部
・水:62.6部
【0083】
(参考例)
バインダ接着不織布を表面材(目付:185g/m2)とした。
【0084】
(比較例1)
バインダ接着不織布のバインダ液を付与した側の主面に対して、シリンダを用いてプリント液を、
図3に例示する菱形の格子柄となるように付与した。その後、温度160℃のドライヤーで乾燥することで、バインダ接着不織布の一方の主面上にプリント液由来のプリントを備えた表面材(目付:193g/m
2、うちプリントの目付:8g/m
2)を調製した。
なお、当該表面材の一方の主面に形成されたプリントは、
図3に例示する菱形の格子柄(以降、柄1と称することがある)を有するものであった。
【0085】
(比較例2)
比較例1で調製した表面材におけるプリント液を付与した側の主面全面に対して、樹脂層形成液を付与した。その後、温度160℃のドライヤーで乾燥することで、プリント上全体に樹脂層が存在している表面材(目付:203g/m2、うちプリントの目付:8g/m2、うち樹脂層の目付:10g/m2)を調製した。
なお、当該表面材における樹脂層側の主面には、バインダ接着不織布が露出している部分は存在していなかった。
【0086】
(実施例1)
比較例1で調製した表面材におけるプリント液を付与した側の主面に対して、シリンダを用いて、プリント側の主面上にバインダ接着不織布の露出している部分が存在するようにして樹脂層形成液をプリント上全体に付与(
図3に例示する菱形の格子柄となるように付与)した。その後、温度160℃のドライヤーで乾燥することで、プリント上全体に樹脂層が存在している表面材(目付:203g/m
2、うちプリントの目付:8g/m
2、うち樹脂層の目付:10g/m
2)を調製した。
なお、当該表面材における樹脂層側の主面には、バインダ接着不織布が露出している部分が存在していた。
【0087】
(比較例3)
シリンダを用いてプリント液を、
図4に例示する交点の無い菱形の格子柄となるように付与したこと以外は、比較例1と同様にして、バインダ接着不織布の一方の主面上にプリント液由来のプリントを備えた表面材(目付:193g/m
2、うちプリントの目付:8g/m
2)を調製した。
なお、当該表面材の一方の主面に形成されたプリントは、
図4に例示する交点の無い菱形の格子柄(以降、柄2と称することがある)を有するものであった。
【0088】
(比較例4)
比較例3で調製した表面材におけるプリント液を付与した側の主面全面に対して、樹脂層形成液を付与した。その後、温度160℃のドライヤーで乾燥することで、プリント上全体に樹脂層が存在している表面材(目付:203g/m2、うちプリントの目付:8g/m2、うち樹脂層の目付:10g/m2)を調製した。
なお、当該表面材における樹脂層側の主面には、バインダ接着不織布が露出している部分は存在していなかった。
【0089】
(実施例2)
比較例3で調製した表面材におけるプリント液を付与した側の主面に対して、シリンダを用いて、プリント側の主面上にバインダ接着不織布の露出している部分が存在するようにして樹脂層形成液をプリント上全体に付与(
図4に例示する交点の無い菱形の格子柄となるように付与)した。その後、温度160℃のドライヤーで乾燥することで、プリント上全体に樹脂層が存在している表面材(目付:203g/m
2、うちプリントの目付:8g/m
2、うち樹脂層の目付:10g/m
2)を調製した。
なお、当該表面材における樹脂層側の主面には、バインダ接着不織布が露出している部分が存在していた。
【0090】
(比較例5)
樹脂層形成液の付与量を減らしたこと以外は、比較例4と同様にして、プリント上全体に樹脂層が存在している表面材(目付:198g/m2、うちプリントの目付:8g/m2、うち樹脂層の目付:5g/m2)を調製した。
なお、当該表面材における樹脂層側の主面には、バインダ接着不織布が露出している部分は存在していなかった。
【0091】
(実施例3)
樹脂層形成液の付与量を減らしたこと以外は、実施例2と同様にして、プリント上全体に樹脂層が存在している表面材(目付:198g/m2、うちプリントの目付:8g/m2、うち樹脂層の目付:5g/m2)を調製した。
なお、当該表面材における樹脂層側の主面には、バインダ接着不織布が露出している部分が存在していた。
【0092】
上述のようにして調製した各表面材について、以下の評価方法に基づく評価を加え、各種物性を測定した。
【0093】
(成形性の評価方法)
(1)表面材を加熱した高温炉(炉内温度:200℃)中に30秒間静置した後、成型金型を用いて表面材の加圧成形を行った。その後、室温となるまで放冷して、内装材を調製した。
(2)上述の成形工程中における表面材の態様、および、成形されてなる内装材の態様を目視で確認し、以下の基準で表面材の成形性を評価した。
○・・・成型金型に表面材が追従し、成型金型の内部形状に合わせて成形できた。そのため、当該表面材は成形性に優れると評価した。
×・・・成型金型に表面材が追従し難く、成型金型の内部形状に合わせて成形するのが困難であった。そのため、当該表面材は「○」と評価された表面材に比べ、成形性に劣ると評価した。
【0094】
(プリントの脱落性の評価方法)
プリントを有する各表面材(比較例および実施例)について、プリント液を付与した側の主面におけるプリントが存在している(粒子を含有するプリントが存在している)同一箇所について、JIS L 0849:2013「摩擦に対する染色堅ろう度試験方法」で規定する9.2「摩擦試験機II形(学振形)法」の湿潤試験へ供する前後の、色差(ΔE*ab)を測定した。
なお、本発明でいう色差とは、CIE1976L*a*b*表色系で表される色差であり、次の式から算出される値である。具体的には、JIS Z8722(2009)の分光測色方法に準じた積分球分光光度計(エックスライト(株)製、Color i5、光源:D65光源、測定方式:SCI方式)を用い、反射測定径25mmの測定範囲において、測定対象となった部分の測定結果の差(各ΔL、Δa、Δbの値の差)を、次の式から算出した値である。ここで、ΔE*abは色差、ΔLは明度差、Δaは赤み差、Δb黄み差、をそれぞれ意味する。
ΔE*ab=√[(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)2]
なお、D65光源を用いたSCI方式による本測定条件は、日中に人が目視により表面材(1)の主面を観察する環境を再現したものといえる。人の目と色差との関係をまとめた資料として、日本電色工業株式会社のウエブページに開示されていた資料(https://www.nippondenshoku.co.jp/web/japanese/colorstory/08_allowance_by_color.htm)、および、国際公開公報WO2015/076340中に開示されている資料が知られている。参考までに、表1にこれら資料の一部抜粋を示す。
【0095】
【0096】
上述のようにして測定された色差(ΔE*ab)が小さい表面材であるほど、プリントが脱落し難い表面材である。以下の基準で表面材における、プリントの脱落し難さを評価した。
○・・・色差が6.5以下の表面材(より正確には色差が6.5未満の表面材)であり、プリントが脱落し難い表面材であると評価した。
×・・・色差が6.5以上の表面材(より正確には6.5より色差が大きい表面材)であり、プリントが脱落し易い表面材であると評価した。
【0097】
上述のようにして調製した各表面材について、各種物性を表2および表3にまとめた。なお、測定対象のない項目については、表中に「-」を記載した。
【0098】
【0099】
【0100】
以上の結果から、本発明の構成を満足する表面材は、プリントが脱落し難いと共に成形性に優れる表面材であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の表面材は、天井、ドアサイド、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなど自動車用;パーティションなどのインテリア用;壁装材などの建材用に、好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0102】
10:表面材
1:布帛
2:粒子を含有するプリント
3:樹脂層
4:布帛の露出している部分