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  • 特許-電気機器収納用箱体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】電気機器収納用箱体
(51)【国際特許分類】
   E05D 7/10 20060101AFI20231013BHJP
   H02B 1/30 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
E05D7/10
H02B1/30 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020024632
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021127668
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】富田 寿彦
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】実公昭40-031371(JP,Y1)
【文献】実開昭57-032473(JP,U)
【文献】実開平02-113676(JP,U)
【文献】米国特許第06205616(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D1/00-9/00
H02B1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口を有する箱本体と、前記開口を開閉する扉体と、前記箱本体と前記扉体との間に介在され、前記扉体を前記箱本体に対して上下方向を軸に片開き可能とするための上下2つの蝶番とを備えた電気機器収納用箱体であって、
上側に配される第1の前記蝶番が、前記扉体に固定された本体、及び前記本体から上方へ突出する第1の蝶着ピンを有する第1のピン部材と、前記箱本体に固定された固定部、及び前記第1の蝶着ピンを下方から差し込み可能な第1のピン孔が設けられた第1のピン受け部を有する第1のピン受け部材とを備えており、
前記第1のピン孔内に、前記第1の蝶着ピンの先端が当接可能な押圧部材と、前記押圧部材を下方へ付勢する付勢部材とが設けられている一方、
下側に配される第2の前記蝶番が、前記扉体に固定された本体、及び前記本体から下方へ突出する第2の蝶着ピンを有する第2のピン部材と、前記箱本体に固定された固定部、及び前記第2の蝶着ピンを上方から差し込み可能な第2のピン孔が設けられた第2のピン受け部を有する第2のピン受け部材とを備えており、
両前記蝶着ピンが夫々対応する前記ピン孔に差し込まれ、前記扉体が前記箱本体に取り付けられた状態においては、前記第1の蝶着ピンが、前記付勢部材により前記押圧部材を介して下方へ付勢されているとともに、
前記付勢部材の付勢力に抗して前記扉体を上方へ移動させることで、前記第2の蝶着ピンが前記第2のピン孔から抜け出ることを特徴とする電気機器収納用箱体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば分電盤や配電盤、制御盤等の各種電気機器を収納するための電気機器収納用箱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分電盤や配電盤等の各種電気機器を収納するための電気機器収納用箱体としては、前面に開口を有する箱本体の前面側に、その開口を開閉するための扉体を、左右何れか一方の側部を軸として片開き自在に蝶着したものが従来一般的に知られている。
そして、そのように扉体を片開き自在に蝶着する構造としては、たとえば特許文献1に記載されているように、ピン受け部を有し、箱本体側に固定される第1受け部材と、同様にピン受け部を有しており、扉体側に固定される第2受け部材と、両ピン受け部に挿通されるヒンジピンとを有する蝶番を用いる構造が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-327569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の蝶番構造では、箱本体への扉体の着脱作業(特に取付作業)が煩わしいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、従来よりも簡易に箱本体に対して扉体を着脱することができる電気機器収納用箱体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、前面に開口を有する箱本体と、前記開口を開閉する扉体と、前記箱本体と前記扉体との間に介在され、前記扉体を前記箱本体に対して上下方向を軸に片開き可能とするための上下2つの蝶番とを備えた電気機器収納用箱体であって、上側に配される第1の前記蝶番が、前記扉体に固定された本体、及び前記本体から上方へ突出する第1の蝶着ピンを有する第1のピン部材と、前記箱本体に固定された固定部、及び前記第1の蝶着ピンを下方から差し込み可能な第1のピン孔が設けられた第1のピン受け部を有する第1のピン受け部材とを備えており、前記第1のピン孔内に、前記第1の蝶着ピンの先端が当接可能な押圧部材と、前記押圧部材を下方へ付勢する付勢部材とが設けられている一方、下側に配される第2の前記蝶番が、前記扉体に固定された本体、及び前記本体から下方へ突出する第2の蝶着ピンを有する第2のピン部材と、前記箱本体に固定された固定部、及び前記第2の蝶着ピンを上方から差し込み可能な第2のピン孔が設けられた第2のピン受け部を有する第2のピン受け部材とを備えており、両前記蝶着ピンが夫々対応する前記ピン孔に差し込まれ、前記扉体が前記箱本体に取り付けられた状態においては、前記第1の蝶着ピンが、前記付勢部材により前記押圧部材を介して下方へ付勢されているとともに、前記付勢部材の付勢力に抗して前記扉体を上方へ移動させることで、前記第2の蝶着ピンが前記第2のピン孔から抜け出ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上側に配される第1の蝶番が、扉体に固定された本体、及び本体から上方へ突出する第1の蝶着ピンを有する第1のピン部材と、箱本体に固定された固定部、及び第1の蝶着ピンを下方から差し込み可能な第1のピン孔が設けられた第1のピン受け部を有する第1のピン受け部材とを備えている一方、下側に配される第2の蝶番が、扉体に固定された本体、及び本体から下方へ突出する第2の蝶着ピンを有する第2のピン部材と、箱本体に固定された固定部、及び第2の蝶着ピンを上方から差し込み可能な第2のピン孔が設けられた第2のピン受け部を有する第2のピン受け部材とを備えている。また、第1のピン孔内に、第1の蝶着ピンの先端が当接可能な押圧部材と、押圧部材を下方へ付勢する付勢部材とが設けられている。そして、両蝶着ピンが夫々対応するピン孔に差し込まれ、扉体が箱本体に取り付けられた状態においては、第1の蝶着ピンが、付勢部材により押圧部材を介して下方へ付勢されるようにした。また、付勢部材の付勢力に抗して扉体を上方へ移動させることで、第2の蝶着ピンが第2のピン孔から抜け出るようにした。したがって、第1の蝶着ピンを第1のピン孔内へ差し込んだ状態で、扉体を上下動させるだけで、第2の蝶着ピンを第2のピン孔へ差し込んだり、第2のピン孔から抜き出したりすることができるため、従来よりも簡易に箱本体に対して扉体を着脱することができる。また、扉体が箱本体に取り付けられた状態においては、第1の蝶着ピンが、付勢部材により押圧部材を介して下方へ付勢されるため、扉体が箱本体から不用意に脱落してしまう事態を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】扉体が開放された状態にある電気機器収納用箱体を示した斜視説明図である。
図2図1における上蝶番部分を拡大して示した斜視説明図である。
図3】扉体の右上隅部を拡大して示した斜視説明図である。
図4】上蝶番のピン受け部材を下方から示した斜視説明図である。
図5】扉体が箱本体に取り付けられた状態おける上蝶番のピン受け部内を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となる電気機器収納用箱体(以下、単に収納箱と称す)について、図面をもとに説明する。
【0010】
図1は、扉体3が開放された状態にある収納箱1を示した斜視説明図である。図2は、図1における上蝶番10A部分を拡大して示した斜視説明図である。図3は、扉体3の右上隅部を拡大して示した斜視説明図である。図4は、上蝶番10Aのピン受け部材12を下方から示した斜視説明図である。図5は、扉体3が箱本体2に取り付けられた状態おける上蝶番10Aのピン受け部24内を示した説明図である。
【0011】
収納箱1は、前面に開口を有する箱本体2と、箱本体の開口を開閉する扉体3とを備えてなる。箱本体2は、天板、左右両側板、背板、及び底板を有して前面を除く5面(上面、左右両側面、後面、及び下面)が閉塞された箱体であり、その内部空間に、分電盤等の各種電気機器を収納可能となっている。また、箱本体2の前面には、箱本体2の開口を開閉するための扉体3が取り付けられている。そして、箱本体2と扉体3との間には、それらの右側部の上部及び下部において夫々蝶番(上蝶番10A、下蝶番10B)が介在されており、扉体3は、箱本体2に対し右側部を軸として片開き自在となっている。
【0012】
ここで、本発明の要部となる上蝶番10A及び下蝶番10Bについて詳述する。
上側に配される上蝶番10Aは、扉体3側に設置されるピン部材11と、箱本体2側に設置されるピン受け部材12とを備えてなる。ピン部材11は、本体21と、本体21から突出する蝶着ピン22とを有する。該ピン部材11は、蝶着ピン22が本体21から上方へ突出する姿勢とされ、当該姿勢のまま扉体3の前面における右上隅部に本体21を固定することで、扉体3側に設置されることになる。
【0013】
また、ピン受け部材12は、箱本体2の開口周縁に固定される固定部23と、上蝶番10Aを組み立てた際に蝶着ピン22が差し込まれるピン受け部24と、固定部23とピン受け部24とを連結する側壁部25及び上壁部26とを有する。固定部23は、前後方向が厚み方向となる板状で上下方向に長く形成されており、自身を箱本体2にネジ止めするためのネジ孔27、27が穿設されている。ピン受け部24は、上下方向に延びる円筒状に形成されており、該ピン受け部24の底面には、蝶着ピン22を差し込み可能なピン孔28が開口している。また、ピン孔28の内部には、上下方向が厚み方向となる押圧板30が設けられているとともに、該押圧板30を下方へ付勢するコイルバネ29が設置されている。そして、ピン受け部24は、固定部23から前方へ所定距離だけ離れた位置に設けられている。さらに、側壁部25は、左右方向が厚み方向となる板状に成形され、固定部23の右端から前方へ延びて固定部23とピン受け部24とを連結している。加えて、上壁部26は、上下方向が厚み方向となる板状に成形され、固定部23の上端から前方へ延びて固定部23とピン受け部24とを連結している。そして、このようなピン受け部材12は、ピン受け部24が固定部23の前方に位置し、且つ、ピン孔28が下方へ開口するような姿勢で、固定部23を箱本体2の右上隅部における開口周縁に固定することにより、箱本体2側に設置されることになる。
【0014】
一方、下側に配される下蝶番10Bは、扉体3側に設置されるピン部材13と、箱本体2側に設置されるピン受け部材14とを備えてなる。ピン部材13は、上蝶番10Aを構成するピン部材11同様に、扉体3の前面に固定される本体や本体から突出する蝶着ピン等を有するものであって、ピン部材11とは上下逆さ、すなわち蝶着ピンが本体から下方へ突出する姿勢で設置される。また、ピン受け部材14は、ピン受け部材12同様に、箱本体2の開口周縁に固定される固定部やピン部材13を支持するためのピン受け部等を有するものであって、ピン受け部材12と上下逆さ、すなわちピン受け部が固定部の前方に位置するものの、ピン孔は上方へ開口するような姿勢で設置される。なお、ピン受け部材14のピン受け部内に、押圧板は設けられておらず、同様にコイルバネも設けられていない。また、ピン受け部材12のピン孔28の開口位置からピン受け部材14のピン孔の開口位置までの上下距離は、ピン部材12の本体21上端面からピン部材13の本体下端面までの上下距離よりは長く、且つ、ピン部材12の蝶着ピン22先端からピン部材13の本体下端面までの上下距離よりは短くなっている。
【0015】
そして、上下両蝶番10A、10Bの組み立て、ひいては扉体3の箱本体2への取り付けは、ピン受け部材12、14を箱本体2側に、ピン部材11、13を扉体3側に夫々設置した上で、次のようにして行えばよい。
まず扉体3を鉛直方向から少し傾けた姿勢とし、ピン部材11の蝶着ピン22をピン受け部材12のピン孔28へ差し込む。それから扉体3を持ち上げて、蝶着ピン22の先端によりコイルバネ29の付勢力に抗して押圧板30を押し込む。そして、そのように押し込んだ状態のまま、ピン部材13の蝶着ピンをピン受け部材14のピン孔の上方に位置させた後、扉体3に対する持ち上げ方向への負荷を解除すれば、扉体3が下方へ移動してピン部材13の蝶着ピンがピン受け部材14のピン孔に差し込まれるとともに、ピン部材11の蝶着ピン22はピン受け部材12のピン孔28内に差し込まれたままとなって、上下両蝶番10A、10Bの組み立て、ひいては扉体3の箱本体2への取り付けは完了となる。また、当該取付状態において上蝶番10Aでは、コイルバネ29により押圧板30を介して蝶着ピン22が下方へ付勢されており、扉体3の上方への移動、すなわち取り外される方向への移動が規制されている(図5)。なお、扉体3を取り外すには、コイルバネ29の付勢力に抗して扉体3を持ち上げ、ピン部材13の蝶着ピンをピン受け部材14のピン孔から抜き出せばよい。
【0016】
以上のような構成を有する収納箱1によれば、上蝶番10Aとして、扉体3に固定された本体21、及び本体21から上方へ突出する蝶着ピン22を有するピン部材11と、箱本体2に固定された固定部23、及び蝶着ピン22を下方から差し込み可能なピン孔28が設けられたピン受け部24を有するピン受け部材12とを備えた。また、下側に配される下蝶番10Bとして、扉体3に固定された本体、及び本体から下方へ突出する蝶着ピンを有するピン部材13と、箱本体2に固定された固定部、及び蝶着ピンを上方から差し込み可能なピン孔が設けられたピン受け部を有するピン受け部材14とを備えた。さらに、上蝶番10Aでは、ピン孔28内に、蝶着ピン22の先端が当接可能な押圧板30と、押圧板30を下方へ付勢するコイルバネ29とを設けた。そして、上下両蝶番10A、10Bが組み立てられ、扉体3が箱本体2に取り付けられた状態においては、蝶着ピン22が、コイルバネ29により押圧板30を介して下方へ付勢されるようにした。したがって、箱本体2へ取り付けられた状態にある扉体3が不用意に脱落してしまう事態を効果的に防止することができる。
【0017】
また、コイルバネ29の付勢力に抗して扉体3を上方へ移動させることにより、下蝶番10Bにおいて、ピン部材13の蝶着ピンがピン受け部材14のピン孔から抜き出されるようになっている。すなわち、扉体3を上下動させるだけで、蝶着ピンがピン孔へ差し込まれたり、第2のピン孔から抜き出されたりするため、従来よりも簡易に箱本体2に対して扉体3を着脱することができる。
【0018】
なお、本発明の収納箱に係る構成は、上記実施形態に記載の態様に何ら限定されるものではなく、箱本体、扉体、及び蝶番に係る構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0019】
たとえば、扉体の蝶番として、上下方向での中央部に別タイプの蝶番(たとえば箱本体に第1のピン受け部材を、扉体に第2のピン受け部材を夫々固定するとともに、両ピン受け部材を貫通するようにピン部材を差し込んでなる従来周知の蝶番等)を設けることも当然可能である。
また、上記実施形態では、蝶着ピンを下方へ付勢する付勢部材としてコイルバネを採用しているが、板バネ等の他の付勢部材を採用しても何ら問題はない。
加えて、上記実施形態では扉体を右開きに設けているが、本発明は、言うまでもなく扉体が左開きするように取り付けられてなる収納箱に対しても好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1・・収納箱(電気機器収納用箱体)、2・・箱本体、3・・扉体、10A・・上蝶番、10B・・下蝶番、11、13・・ピン部材、12、14・・ピン受け部材、21・・本体、22・・蝶着ピン、23・・固定部、24・・ピン受け部、28・・ピン孔、29・・コイルバネ(付勢部材)、30・・押圧板(押圧部材)。
図1
図2
図3
図4
図5