(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】光コネクタ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
G02B6/36
(21)【出願番号】P 2020026022
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231936
【氏名又は名称】日本通信電材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】為國 芳享
(72)【発明者】
【氏名】西岡 大造
(72)【発明者】
【氏名】竹山 吉洸
(72)【発明者】
【氏名】清田 光政
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/142677(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0277059(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0018606(US,A1)
【文献】特表2018-518718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0003963(US,A1)
【文献】国際公開第2018/003776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/36 - 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端及び前記前端の第1方向における反対側の後端を有し、前記後端から光ファイバを挿入可能な光コネクタであって、
前記光ファイバを保持可能なフェルールを有し、前記フェルールの先端が前記前端において外部に露出するように前記フェルールを収納するハウジング本体と、
前記ハウジング本体に連結されるアウターハウジングと、
前記アウターハウジングの外側に設けられると共に前記アウターハウジングとの連結部のある基端から前記第1方向に沿って前記前端に向かって延在し、その先端部分に外部装置に係合可能な係合部が設けられたラッチと、
前記ラッチの少なくとも一部を覆うように前記ラッチの外側に配置されると共に前記アウターハウジングに対して前記第1方向に沿って移動可能なように前記アウターハウジングに連結され、前記第1方向に沿って前記前端から前記後端に向かう方向への移動に応じて前記ラッチの前記係合部を前記第1方向と交差する第2方向である前記ハウジング本体に向けて押し下げるように構成されているタブと、を備え、
前記ラッチの先端部分は、通常状態において、前記ハウジング本体から離間して浮いており、
前記タブの内側には、前記ラッチの前記基端よりも前記前端側に位置する第1突部が設けられており、前記ラッチの前記係合部を前記外部装置に係合させる際に前記ラッチの内側が前記第1突部に接触し前記第1突部を支点として前記係合部が前記ハウジング本体に向かって押し下げられるように構成された、光コネクタ。
【請求項2】
前記ラッチと前記アウターハウジングとが一体に形成されている、
請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記ラッチは、前記第1方向に対して傾斜する第1傾斜面を内側に有し、
前記第1傾斜面は、前記通常状態において前記第1突部から離間しており、且つ、前記係合部を前記外部装置に係合させる際に前記第1突部に接触する、
請求項1または請求項2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記ラッチは、前記第2方向に凹む凹部と、前記凹部の前記後端側の一部を為す第2傾斜面とを外側に有し、
前記タブは、前記前端側に前記第2方向に突出する第2突部を有し、
前記タブの前記第2突部は、通常状態において前記ラッチの外面から離れた状態で前記凹部内に位置しており、前記タブが前記第1方向に沿って前記前端から前記後端に向けて移動した際には前記第2傾斜面に沿って移動し、前記ラッチの前記係合部を前記第2方向に沿って前記ハウジング本体に向けて押し下げる、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記基端での前記ラッチの板厚は、前記第1傾斜
面が位置する領域での前記ラッチの板厚よりも薄い、
請求項
3に記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記基端での前記ラッチの板厚は、前記第2傾斜面が位置する領域での前記ラッチの板厚よりも薄い、
請求項4に記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記ハウジング本体は、
それぞれが前記フェルールを有する一対のフロントハウジングと、
前記一対のフロントハウジングの後端に連結され、前記アウターハウジングに収納されるインナーハウジングと、を有し、
前記インナーハウジングが前記アウターハウジングに対して着脱可能に連結されている、
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項8】
前記一対のフロントハウジングの第1の極性を第2の極性に極性変更可能なように前記ハウジング本体が前記第1方向に沿った中心軸を中心として前記アウターハウジングに対して所定角度で回転可能なように構成されている、請求項
7に記載の光コネクタ。
【請求項9】
前記アウターハウジングと前記タブとの間に設けられた弾性部材を更に備え、
前記弾性部材は、前記タブを前記アウターハウジングに対して
前記光コネクタの前記後端側に移動した場合に前記タブを前記通常状態に復帰させる、
請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光コネクタが開示されている(例えば
図5から
図8Bを参照)。この光コネクタは、それぞれがフェルールを収納する一対のフェルールハウジング部を含むハウジング本体と、アダプター等の外部装置に係合するための一対の係合部を有するラッチと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0341069号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された光コネクタは、アダプターに取り付ける前の通常状態においてラッチ先端がハウジング本体のフェルールハウジング部の上面に接触するよう構成されている。この光コネクタをアダプターに取り付けようとすると、アダプターの係合部によってラッチの係合部付近が下方に押し下げられるが、ラッチの先端部分がフェルールハウジング部の上面によって支持されているため、ラッチ係合部がアダプターの係合部を乗り越える際にしっかりと下方に沈みこむように変形できる。このような構成により、この光コネクタでは、変形の際の弾性力を強くして、使用者に所望のクリック感を付与できる。このようなクリック感により、使用者は光コネクタがアダプターに確実に取り付けられたことを感覚的に確認できる。
【0005】
ところで、このような光コネクタを用いて光ケーブルを相互に接続する作業においては、作業効率の観点から光コネクタの更なる軽量化が望まれている。このような状況において、例えば特許文献1に記載された光コネクタのラッチ係合部から先の部分はクリック感の付与に用いることはできるもののその他の用に供する部分ではないため、軽量化の観点から削減することが望まれる。しかしながら、この部分を単に削減すると光コネクタをアダプターに取り付ける際に所望のクリック感を付与することが難しくなってしまう。そこで、光コネクタにおいて、部材の軽量化を図りつつ、アダプター等の外部装置に取り付ける際に使用者に所望のクリック感を付与できることが望まれている。
【0006】
本開示は、部材の軽量化を図ると共に、外部装置に取り付ける際に使用者に所望のクリック感を付与できる光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、前端及び前端の第1方向における反対側の後端を有し、後端から光ファイバを挿入可能な光コネクタを提供する。この光コネクタは、光ファイバを保持可能なフェルールを有し、フェルールの先端が前端において外部に露出するようにフェルールを収納するハウジング本体と、ハウジング本体に連結されるアウターハウジングと、アウターハウジングの外側に設けられると共にアウターハウジングとの連結部のある基端から第1方向に沿って前端に向かって延在し、その先端部分に外部装置に係合可能な係合部が設けられたラッチと、ラッチの少なくとも一部を覆うようにラッチの外側に配置されると共にアウターハウジングに対して第1方向に沿って移動可能なようにアウターハウジングに連結され、第1方向に沿って前端から後端に向かう方向への移動に応じてラッチの係合部を第1方向と交差する第2方向であるハウジング本体に向けて押し下げるように構成されているタブと、を備えている。ラッチの先端部分は、通常状態において、ハウジング本体から離間して浮いている。タブの内側には、ラッチの基端よりも前端側に位置する第1突部が設けられており、ラッチの係合部を外部装置に係合させる際にラッチの内側が第1突部に接触し第1突部を支点として係合部がハウジング本体に向かって押し下げられるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、部材の軽量化を図ると共に、外部装置に取り付ける際に使用者に所望のクリック感を付与できる光コネクタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態の光コネクタを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す光コネクタがアダプターに結合された状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、光コネクタの一構成部品であるラッチ付きのアウターハウジングを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、光コネクタの一構成部品であるタブを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1に示す光コネクタからタブを除いた構成の側面図である。
【
図8】
図8は、光コネクタの上部を拡大した断面図であり、光コネクタをアダプターに挿入する際の動作を示す断面図である。
【
図9】
図9は、光コネクタの上部を拡大した断面図である。
【
図10】
図10は、光コネクタの上部を拡大した断面図であり、光コネクタをアダプターから抜去する際の動作を示す断面図である。
【
図11】
図11は、光コネクタの一部を構成するハウジング本体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
一実施形態に係る光コネクタは、前端及び前端の第1方向における反対側の後端を有し、後端から光ファイバを挿入可能な光コネクタである。この光コネクタは、光ファイバを保持可能なフェルールを有し、フェルールの先端が前端において外部に露出するようにフェルールを収納するハウジング本体と、ハウジング本体に連結されるアウターハウジングと、アウターハウジングの外側に設けられると共にアウターハウジングとの連結部のある基端から第1方向に沿って前端に向かって延在し、その先端部分に外部装置に係合可能な係合部が設けられたラッチと、ラッチの少なくとも一部を覆うようにラッチの外側に配置されると共にアウターハウジングに対して第1方向に沿って移動可能なようにアウターハウジングに連結され、第1方向に沿って前端から後端に向かう方向への移動に応じてラッチの係合部を第1方向と交差する第2方向であるハウジング本体に向けて押し下げるように構成されているタブと、を備えている。ラッチの先端部分は、通常状態においてハウジング本体から離間して浮いている。タブの内側には、ラッチの基端よりも前端側に位置する第1突部が設けられており、ラッチの係合部を外部装置に係合させる際にラッチの内側が第1突部に接触し第1突部を支点として係合部がハウジング本体に向かって押し下げられるように構成されている。
【0012】
この光コネクタでは、ラッチの係合部が設けられた先端部分が通常状態においてハウジング本体から離間して浮く構成になっている。このため、従来のラッチの先端部分に相当する領域を削減して光コネクタの軽量化を図ることができる。これに加え、この光コネクタでは、ラッチの基端よりも光コネクタの前端側に位置する第1突部をタブの内側に設け、ラッチの係合部を外部装置に係合させる際にラッチの内側が第1突部に接触し第1突部を支点としてラッチの係合部がハウジング本体に向かって押し下げられるようになっている。この構成によれば、ラッチの係合部を外部装置に係合させる際に、基端を支点としてラッチをハウジング本体に向けて変形させるよりも、その基端よりも光ファイバの先端側に位置する第1突部を支点としてラッチをハウジング本体に向かって変形させることができる。その結果、変形の支点から距離が短くなるため変形されたラッチ(係合部)の弾性力が強くなり、ラッチの係合部を外部装置に係合させる際のクリック感を向上できる。このように、この光コネクタによれば、部材の軽量化を図ると共に、外部装置に取り付ける際に使用者に所望のクリック感を付与することが可能となる。なお、ここでいう「通常状態」とは、光コネクタをアダプター等の外部装置に取り付ける前の状態、あるいは外部装置から取り外した後の状態であって、ラッチが外部装置に係合していない状態を意味する。
【0013】
一実施形態として、ラッチとアウターハウジングとが一体に形成されていてもよい。この場合、部品点数を削減して、更なる軽量化を行うことが可能となる。
【0014】
一実施形態として、ラッチは、第1方向に対して傾斜する第1傾斜面を内側に有し、 第1傾斜面は、通常状態において第1突部から離間しており、且つ、係合部を外部装置に係合させる際に第1突部に接触してもよい。この場合、光コネクタをアダプター等の外部装置から抜去する際に第1突部がラッチの動作を阻害してしまうといったことを防止できる。
【0015】
一実施形態として、ラッチは、第2方向に凹む凹部と、凹部の後端側の一部を為す第2傾斜面とを外側に有し、タブは、前端側に第2方向に突出する第2突部を有してもよい。タブの第2突部は、通常状態においてラッチの外面から離れた状態で凹部内に位置しており、タブが第1方向に沿って前端から後端に向けて移動した際には第2傾斜面に沿って移動し、ラッチの係合部を第2方向に沿ってハウジング本体に向けて押し下げてもよい。この場合、光コネクタをアダプター等の外部装置から抜去する際の動作をスムーズなものとすることができる。
【0016】
一実施形態として、基端でのラッチの板厚は、第1傾斜面又は第2傾斜面が位置する領域でのラッチの板厚よりも薄くてもよい。この場合、基端を支点とするラッチの動作がスムーズになるため、光コネクタをアダプター等の外部装置から抜去する際の動作をスムーズなものとすることができる。
【0017】
一実施形態として、ハウジング本体は、それぞれがフェルールを有する一対のフロントハウジングと、一対のフロントハウジングの後端に連結され、アウターハウジングに収納されるインナーハウジングと、を有してもよい。インナーハウジングがアウターハウジングに対して着脱可能に連結されていてもよい。この場合、一対の光ファイバに対して上述した光コネクタの構成を適用することができる。また、ハウジング本体をアウターハウジングから取り外すといったことが可能となる。
【0018】
上記の実施形態において、一対のフロントハウジングの第1の極性(ここで、極性とは、ラッチが上方となるように置いた時の2つのフロントハウジングの並び順のことをいう。)を第2の極性に極性変更可能なようにハウジング本体が第1方向に沿った中心軸を中心としてアウターハウジングに対して所定角度で回転可能なように構成されていてもよい。この場合、光コネクタの極性を容易に変更することができるため、使用者の作業を更に効率的にすることが可能となる。なお、ここでいう所定の角度には、例えば180度が含まれてもよい。
【0019】
一実施形態において、光コネクタは、アウターハウジングとタブとの間に設けられた弾性部材を更に備え、弾性部材は、タブをアウターハウジングに対して後端側に移動した場合にタブを通常位置に復帰させてもよい。この場合、光コネクタをアダプター等から抜去する際、抜去作業をスムーズに行うことができ、作業効率を改善させることができる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、一実施形態に係る光コネクタを示す斜視図である。
図1に示すように、光コネクタ1は、長手方向X(第1方向)に横長形状のコネクタであり、前端1a及び後端1bを有する。後端1bは、前端1aの長手方向Xの反対側に位置する。光コネクタ1が保持する光ケーブルKは、光コネクタ1の後端1bから挿入される。光ケーブルKに内包される一対の光ファイバ(不図示)は、光コネクタ1内では被覆樹脂が取り除かれて、一対のフェルール14,15それぞれに収納されて保持される。光コネクタ1は、例えば二連LCタイプの光コネクタ(Duplex LC Connector)であり、ユニブーツタイプ(Uniboot Type)の光コネクタである。
【0022】
図2は、光コネクタ1がアダプター100(外部装置)に挿入された状態を示す図である。
図1及び
図2に示すように、光コネクタ1は、ラッチ40の先端部分に設けられた係合部43,44(詳細は後述する)がアダプター100内に設けられた係合部(不図示)に係合することにより、アダプター100における所定の位置に収納されてロックされる。アダプター100の光コネクタ1とは逆側の取付口101には別の光コネクタ(不図示)が挿入され、光コネクタ1は、アダプター100により別の光コネクタと光結合される。なお、光コネクタ1は、外部装置としての光トランシーバ等の連結部に挿入される構成であってもよい。
【0023】
図3は、
図1に示す光コネクタの分解斜視図である。
図1及び
図3に示すように、光コネクタ1は、一対のフロントハウジング10及び11、インナーハウジング20、アウターハウジング30、ラッチ40、タブ50、ブーツ60、弾性部材70、及び、ケーブル保持部材80を備えている。本実施形態では、一対のフロントハウジング10及び11とインナーハウジング20とからハウジング本体M(
図11及び
図12を参照)が構成される。
【0024】
一対のフロントハウジング10及び11は、本体12及び13と、フェルール14及び15とを有している(
図11も参照)。本体12及び13は、合成樹脂から形成され、内部に丸孔12a及び13aが設けられた四角柱形状の外形を有する。本体12及び13は、それぞれが光ファイバを保持可能なフェルール14及び15を、それぞれの先端14a及び15aが光コネクタ1の前端1aにおいて外部に露出するように、丸孔12a及び13a内に収納する。フェルール14及び15の先端14a及び15aからは、保持された光ファイバの先端が露出する。フェルール14及び15の先端14a及び15aは、長手方向に直交(交差)する上下方向(第2方向)に対して平行な面であってもよいし、傾斜した面であってもよい。本体12及び13の後端には、それぞれの四隅に突起12b及び13bが設けられている。これら突起12b及び13bは、フロントハウジング10及び11がインナーハウジング20の前端に連結される場合に、相互の位置関係を規定する。フロントハウジング10の両側面には、長方形状の一対の開口部16が設けられており、フロントハウジング11の両側面には、長方形状の一対の開口部17が設けられている。
【0025】
インナーハウジング20は、光ファイバを収納することができる空間が内部に形成されたハウジングであり、合成樹脂から形成される。インナーハウジング20は、前端部21とテーパ部22と後端部23とを有し、後端から前端に向かってそれぞれの内部空間が徐々に広がるように形成されている。インナーハウジング20は、光ケーブルKに内包される一対の光ファイバをフェルール14及び15に分岐させるための領域であり、一対のフロントハウジング10及び11の後端に連結される。インナーハウジング20の前端部21には一対のラッチ24及び一対のラッチ25が設けられており、一対のラッチ24がフロントハウジング10の一対の開口部16に内側から挿入されて係合し、一対のラッチ25がフロントハウジング11の一対の開口部17に内側から挿入されて係合する。これにより、一対のフロントハウジング10及び11がインナーハウジング20に連結される。また、インナーハウジング20には、表面20a及び20bのそれぞれの中心やや前方付近に突起26及び27が設けられている(
図11及び
図12を参照)。インナーハウジング20がアウターハウジング30に収納された際には何れか一方の突起26又は27がアウターハウジング30の下面30bに設けられた孔38(
図14を参照)に係合することで、インナーハウジング20はアウターハウジング30の内部に着脱可能に連結される。なお、突起26及び27は、着脱可能なように、傾斜面を有している。
【0026】
アウターハウジング30は、インナーハウジング20を内部に収納すると共に、インナーハウジング20に連結されるハウジングである。
図4は、アウターハウジング30を示す斜視図である。
図4に示すように、本実施形態では、アウターハウジング30は、後述するラッチ40と一体になるように合成樹脂から形成されているが、アウターハウジング30とラッチ40とを別体として形成し、所定の手段(接着や嵌合など)により両者を連結してもよい。
図4では、連結部Aにおいて、ラッチ40がアウターハウジング30に連結している。
図4に示すように、アウターハウジング30は、前方及び後方それぞれに開口31及び32を有するハウジング本体33を有している。
【0027】
アウターハウジング30の上面30aには、弾性部材70を収納する部分36aをその内側に画定する一対の壁部36と、壁部36の外側に位置する一対のガイド突起37とが設けられている。部分36aに収納される弾性部材70は、アウターハウジング30と後述するタブ50との間に配置されることになり(
図10を参照)、タブ50をアウターハウジング30に対して後端1b側に移動した場合にタブ50を通常位置に復帰させるように機能する。弾性部材70は例えばバネである。各ガイド突起37は、タブ50がアウターハウジング30に連結された場合にタブ50のスリット55及び56内に位置し、タブ50の長手方向Xに沿った移動をガイドする。アウターハウジング30は、タブ50との連結構造として、前方側に設けられた突出部34と、各ガイド突起37の下方に設けられた連結用のスリット35とを更に備えている。また、アウターハウジング30の下面30bには、孔38と開口部39とが設けられている(
図14を参照)。孔38には、インナーハウジング20の突起26又は27が入り込むようになっており、これにより、インナーハウジング20がアウターハウジング30に着脱可能で連結される。
【0028】
ラッチ40は、アウターハウジング30の外側に設けられると共に連結部Aのある基端40aから長手方向Xに沿って前端1aに向かって延在する部材41及び42を含む部材である。ラッチ40の部材41及び42は、その先端部分40bにアダプター100等の外部装置に係合可能な係合部43及び44が設けられている。各係合部43及び44は、例えば長手方向Xに対して直行する外側方向に向かってそれぞれが突出する一対の突起を含んで構成されている。係合部43及び44のこれら突起がアダプター100内の係合部に係合されることにより、光コネクタ1がアダプター100に取り付けられる。ラッチ40の先端部分40b、即ち係合部43及び44は、通常状態において、フロントハウジング11及び12から離間して浮くような状態になっている。
【0029】
ラッチ40の部材41及び42には、その中央付近において、傾斜面41a及び42a(第1傾斜面)と、傾斜面41b及び42b(第2傾斜面)と、凹部41c及び42cとが設けられている(
図7も参照)。傾斜面41a及び42aは、ラッチ40の内側に設けられている。傾斜面41b及び42bは、ラッチ40の外側に設けられており、凹部41c及び42cの一部を為している。なお、ラッチ40の部材41及び42においては、全体が同じ厚みとなるように形成されていてもよいし、基端40aの板厚が傾斜面41a及び42a又は41b及び42bが位置する領域での板厚よりも薄くてもよい。この場合、基端40aを支点としたラッチ40の先端部分40b、即ち係合部43及び44の上下方向の移動がよりスムーズになる。なお、ここでいう板厚は、各箇所における面に対して垂直な方向における厚さを意味する。
【0030】
タブ50は、ラッチ40のうち先端部分40bを除く部分を覆うようにラッチ40の外側に配置される。
図5は、タブ50を一方から示す斜視図であり、
図6は、タブを他方から示す斜視図である。
図3、
図4、
図5及び
図6に示すように、タブ50の前端50aの内側にある突出部58がアウターハウジング30の上面30aにある突出部34に連結すると共に、タブ50の内側の左右にある一対のラッチ59が、アウターハウジング30の上面30aの左右にあるスリット35に内側から引っかかる。これにより、タブ50は、アウターハウジング30に対して長手方向に沿って移動可能なようにアウターハウジング30に連結される。タブ50は、長手方向に沿って前端1aから後端1bに向かう方向への移動に応じてラッチ40の係合部43及び44を長手方向と直交(交差)する上下方向(第2方向)であるフロントハウジング10及び11に向けて押し下げるように構成されている。より具体的には、タブ50の前端50aには下方に突出する突起51及び52が設けられており、タブ50が後方に移動すると、これら突起51及び52がラッチ40の傾斜面41b及び42bに沿って後方に向かって移動し、これにより、ラッチ40の係合部43及び44が下方に押し下げられる。
【0031】
タブ50の内側には、一対の突起53及び54が更に設けられている。これら突起53及び54は、通常状態においてはラッチ40の内側に僅かに接触しない位置に設けられているが、光コネクタ1をアダプター100に取り付ける際、即ちラッチ40の係合部43及び44をアダプター100の係合部に係合させる際にラッチ40の係合部43及び44が僅かに下方に移動すると、ラッチ40の内側に接触するようになっている。そして、ラッチ40は、これら突起53及び54との接触点を支点として、係合部43及び44がフロントハウジング10及び11に向かって押し下げられるように構成されている。
【0032】
タブ50の中央部には、一対のスリット55及び56が設けられている。これらスリット55及び56には、上述したアウターハウジング30の一対のガイド突起37が配置される。一対のガイド突起37のそれぞれがこれらスリット55及び56内をスライドすることにより、タブ50の長手方向に沿った移動がガイドされる。また、タブ50の後端50bには、把持部57が設けられている。アダプター100に取り付けられた光コネクタ1をアダプター100から取り外す際には把持部57を使用者が把持して後方に引っ張ることにより、突起51及び52が上述した動作を行い、ラッチ40の係合が解除される。本実施形態における把持部57は、上下方向及び左右方向の何れにおいても使用者が把持できるように一周回る筒形状になっているが、上下方向及び左右方向の少なくとも一方の方向で把持できる構成であればよい。この把持部57の内部には、後述するブーツ60が収納される。
【0033】
ブーツ60及びケーブル保持部材80は、光ケーブルKを光コネクタ1に対して導入させると共に、光コネクタ1内の所定の位置で光ケーブルKを固定するための部材である。ブーツ60の一部及びケーブル保持部材80は、アウターハウジング30等の内部に収納される。
【0034】
ここで、上述した構成の光コネクタ1において、光コネクタ1をアダプター100に取り付ける際のコネクタ内部の動作について、
図7及
図8を参照して、説明する。
図7は、光コネクタ1からタブを除いた構成の側面図である。
図8は、光コネクタ1の上部を拡大した断面図であり、光コネクタ1をアダプター100に挿入する際の内部動作を示す断面図である。
図7及び
図8に示すように、光コネクタ1は、アダプター100に取り付けられる前の通常状態においては、タブ50の内部に設けられた突起53及び54は、ラッチ40の傾斜面41a及び42aから僅かに離れて位置している。そして、光コネクタ1をアダプター100に挿入すると、まず係合部43及び44がアダプター100の係合部により僅かに矢印S1方向である下方に押し下げられる。この際のラッチ40の動作の支点は基端40aに位置している。但し、この動作によりラッチ40の傾斜面41a及び42aが突起53及び54に接触する。
【0035】
その後、係合部43及び44がアダプター100の係合部により更に下方に(矢印S1方向に)押し下げられると、以後は、突起53及び54との接触点を支点としてラッチ40(係合部43及び44)が下方に押し下げられることになる。つまり、ラッチ40に対して荷重が付与される点に対してより近い位置に支点が移動したことになる。その結果、この近い支点を中心としてラッチ40が変形することになり、ラッチ40における弾性力がより強くなって、使用者にフィードバックされることになる。その結果、光コネクタ1をアダプター100に挿入して互いに係合部を係合完了した際のクリック感を向上させることができる。
【0036】
続いて、上記構成を備えた光コネクタ1をアダプター100から取り外す際の内部動作について、
図9及び
図10を参照して、説明する。
図9は、光コネクタ1の上部を拡大した断面図であり、アダプター100に取り付けられた状態を示す。
図10は、光コネクタ1をアダプター100から抜去する際の動作を示す断面図である。
図9及び
図10に示すように、光コネクタ1をアダプター100から取り外す際は、まずタブ50の把持部57を使用者が把持して、矢印S2の方向(後方)にタブ50を引っ張る。この動作により、タブ50が後方に移動し、タブ50の先端にある突起51及び52がラッチ40の傾斜面41b及び42bに接触して傾斜面に沿って後方に移動し、係合部43及び44を下方、即ちフロントハウジング10及び11の方向(矢印S3の方向)に向けて押し下げる。これにより、光コネクタ1がアダプター100から抜去される。なお、この際、ラッチ40は基端40aを支点とする動作を行う。また、後方に移動したタブ50は、アウターハウジング30とタブ50との間に配置された弾性部材70であるバネにより、通常状態である初期位置に自動的に復帰する。
【0037】
次に、光コネクタ1において、一対のフェルール14及び15に保持される光ファイバの極性を変更する操作について、
図11から
図14を参照して説明する。
図11は、光コネクタの一部を構成するハウジング本体を示す斜視図である。
図12は、
図11に示すハウジング本体を逆側から視た状態を示す斜視図である。
図13は、
図11及び
図12に示すハウジング本体の極性を変更するための操作を順に示す図である。
図14は、
図11及び
図12に示すハウジング本体がアウターハウジング30に収容された状態を示す平面図である。なお、ここでいるハウジング本体Mは、フロントハウジング10及び11とインナーハウジング20とを含む構成である。また、ここで、極性とは、ラッチ40が上方となるように置いた時の2つのフロントハウジング10及び11の並び順のことをいう。
【0038】
図11及び
図12に示すように、光コネクタ1は、それぞれが光ファイバを収納する一対のフェルール14及び15を有している。そして、光コネクタ1の接続作業においては、
図11に示す第1の極性でそのままアダプター100に接続したい場合だけでなく、極性変更して(例えばラッチ40の位置を基準として、送信用光ファイバと受信用光ファイバとの位置を左右逆にするようにして)、
図12に示す第2の極性でアダプター100に接続したい場合もある。そこで、
図13の(a)部に示すように、まず、フロントハウジング10及び11とインナーハウジング20とが連結されたハウジング本体Mを、矢印S4に示す方向に移動して、アウターハウジング30から取り外す。ハウジング本体Mはアウターハウジング30に突起26又は27等により着脱可能に連結されているため、容易に取り外すことが可能である。
【0039】
続いて、このハウジング本体Mを長手方向Xに平行な中心軸を中心として180度(所定角度)回転して、反転させる(矢印S5)。そして、この反転されたハウジング本体Mを矢印S6に示す方向に移動して、再びアウターハウジング30に挿入して連結させる。このように、光コネクタ1では、その極性を第1の極性から第2の極性に容易に変更することができる。
【0040】
以上、本実施形態に係る光コネクタ1では、ラッチ40の係合部43,44が設けられた先端部分40bが通常状態においてフロントハウジング10,11から離間して浮く構成になっている。このため、従来のラッチの先端部分に相当する領域を削減して光コネクタの軽量化を図ることができる。つまり、ラッチ40の長さを削減することができる。これに加え、光コネクタ1では、ラッチ40の基端40aよりも光コネクタ1の前端1a側に位置する突起53,54をタブ50の内側に設け、ラッチ40の係合部43,44をアダプター100に係合させる際にラッチ40の内側が突起53,54に接触し、突起53,54を支点としてラッチ40の係合部43,44がフロントハウジング10及び11に向かって押し下げられるようになっている。この構成によれば、ラッチ40の係合部43及び44をアダプター100に係合させる際に、基端40aを支点としてラッチ40をフロントハウジング10及び11に向けて変形させるよりも、その基端40aよりも光コネクタ1の前端1a側に位置する突起53,54を支点としてラッチ40をフロントハウジング10及び11に向かって変形させることができる。その結果、変形の支点から距離が短くなるため変形されたラッチ40(係合部43及び44)の弾性力が強くなり、ラッチ40の係合部43及び44をアダプター100に係合させる際のクリック感を向上できる。このように、光コネクタ1によれば、部材の軽量化を図ると共に、アダプター100に取り付ける際に使用者に所望のクリック感を付与することが可能となる。
【0041】
光コネクタ1では、ラッチ40とアウターハウジング30とが一体に形成されていてもよい。この場合、部品点数を削減して、更なる軽量化を行うことが可能となる。
【0042】
光コネクタ1では、ラッチ40は、長手方向Xに対して傾斜する傾斜面41a及び42aを内側に有し、傾斜面41a及び42aは、通常状態において突起53及び54から離間しており、係合部43及び44をアダプター100に係合させる際に突起53及び54に接触するようになっている。このため、光コネクタ1をアダプター100から抜去する際に突起53及び54がラッチ40の動作を阻害してしまうといったことを防止できる。
【0043】
光コネクタ1では、ラッチ40は、長手方向に直行する上下方向に凹む凹部41c及び42cと、凹部41c及び42cの後端1b側の一部を為す傾斜面41b及び42bとを外側に有し、タブ50は、前端1a側に上下方向に突出する突起51及び52を有している。タブ50の突起51及び52は、通常状態においてラッチ40の外面から離れた状態で凹部41c及び42c内に位置しており、タブ50が長手方向Xに沿って前端1aから後端1bに向けて移動した際には傾斜面41b及び42bに沿って移動し、ラッチ40の係合部43,44を上下方向に沿ってフロントハウジング10及び11に向けて押し下げる。このため、光コネクタ1をアダプター100から抜去する際の動作をスムーズなものとすることができる。
【0044】
光コネクタ1では、基端40aでのラッチ40の板厚は、傾斜面41a及び42a又は傾斜面41b及び42bが位置する領域でのラッチ40の板厚よりも薄くてもよい。この場合、基端40aを支点とするラッチ40の動作がスムーズになるため、光コネクタ1をアダプター100から抜去する際の動作をスムーズなものとすることができる。
【0045】
光コネクタ1では、ハウジング本体Mは、それぞれがフェルール14及び15を有する一対のフロントハウジング10及び11と、一対のフロントハウジング10及び11の後端に連結され、アウターハウジング30に収納されるインナーハウジング20とを有して構成されている。そして、インナーハウジング20がアウターハウジング30に対して着脱可能に連結されている。このため、ハウジング本体Mをアウターハウジング30から取り外すといったことが可能となる。
【0046】
光コネクタ1では、一対のフロントハウジング10及び11の第1の極性を第2の極性に極性変更可能なようにハウジング本体Mが長手方向Xに沿った中心軸を中心としてアウターハウジング30に対して所定角度(例えば180度)で回転可能なように構成されていてもよい。この場合、光コネクタ1の極性を容易に変更することができるため、使用者の作業を更に効率的にすることが可能となる。
【0047】
光コネクタ1では、光コネクタ1は、アウターハウジング30とタブ50との間に設けられた弾性部材70を更に備え、弾性部材70は、タブ50をアウターハウジング30に対して後端1b側に移動した場合にタブ50を通常位置に復帰させるようになっている。このため、光コネクタ1をアダプター100から抜去する際、抜去作業をスムーズに行うことができ、作業効率を改善させることができる。
【0048】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態に適用することができる。例えば上記の実施形態では、一対の光ファイバを収納する光コネクタの例を説明したが、一本の光ファイバを収納する光コネクタに本実施形態を適用してもよいし、三本以上の光ファイバを収納する光コネクタに本実施形態を適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…光コネクタ
1a…前端
1b…後端
10,11…フロントハウジング(ハウジング本体)
12,13…本体
12a,13a…丸孔
12b,13b…突起
14,15…フェルール
14a,15a…先端
16,17…開口部
20…インナーハウジング
20a,20b…表面
21…前端部
22…テーパ部
23…後端部
24,25…ラッチ
26,27…突起
30…アウターハウジング
30a…上面
30b…下面
31,32…開口
33…ハウジング本体
34…突出部
35…スリット
36…壁部
36a…部分
37…ガイド突起
38…孔
39…開口部
40…ラッチ
40a…基端
40b…先端部分
41,42…部材
41a,42a…傾斜面(第1傾斜面)
41b,42b…傾斜面(第2傾斜面)
41c,42c…凹部
43,44…係合部
50…タブ
50a…前端
50b…後端
51,52…突起
53,54…突起(第1突部)
55,56…スリット
57…把持部
58…突出部
59…ラッチ
60…ブーツ
70…弾性部材
80…ケーブル保持部材
100…アダプター
101…取付口
A…連結部
K…光ケーブル
M…ハウジング本体
S1からS6…矢印
X…長手方向