(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】歯切り盤の測定プローブを較正する方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
G01B5/00 P
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020029101
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10 2019 104 891.5
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594012634
【氏名又は名称】リープヘル-フェアツァーンテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハウトゥ ヨハネス ファン
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-215090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯切り盤の加工物ホルダに受け取られた加工物を用いて、該歯切り盤の測定プローブを較正する方法であって、
前記測定プローブは、測定プローブ基部上に移動可能に配置される測定プローブ先端部を含み、
前記測定プローブ先端部の前記測定プローブ基部に対する振れ
及び/又は前記測定プローブ先端部の前記測定プローブ基部に対する振れの達成は、前記測定プローブの少なくとも1つのセンサを介して決定することができ、
前記測定プローブは、前記歯切り盤の少なくとも2つの移動軸を介して前記加工物ホルダに対して相対的に横断可能であり、
測定プローブ及び/又は加工物を、前記測定プローブ先端部が前記加工物の歯面に接触する相対位置へと横断させるステップと、
前記加工物を前記加工物ホルダの回転軸を介して回転させ、そして前記測定プローブを、前記歯切り盤の前記少なくとも2つの移動軸を介して、
完全な較正の場合には、前記測定プローブ先端部の前記歯面上のタッチポイントが変わらないままであるように、また
完全な較正の場合には、前記測定プローブ先端部の振れ又は振れ量が少なくとも1つの特定値を採用及び/又は維持するように、
横断させるステップと、
少なくとも1つの測定ポイントでの前記測定プローブ先端部の振れ
又は振れ量の前記少なくとも1つの特定値からの偏差を決定するステップと、
前記偏差に基づいて、較正の少なくとも1つの補正値を決定するステップと、を含む方法。
【請求項2】
歯切り盤の加工物ホルダに受け取られた加工物を用いて、該歯切り盤の測定プローブを較正する方法であって、
前記測定プローブは、測定プローブ基部上に移動可能に配置される測定プローブ先端部を含み、
前記測定プローブ先端部の前記測定プローブ基部に対する振れ及び/又は前記測定プローブ先端部の前記測定プローブ基部に対する振れの達成は、前記測定プローブの少なくとも1つのセンサを介して決定することができ、
前記測定プローブは、前記歯切り盤の少なくとも2つの移動軸を介して前記加工物ホルダに対して相対的に横断可能であり、
測定プローブ及び/又は加工物を前記測定プローブ先端部が前記加工物の歯面に接触する相対位置へと横断させるステップと、
前記加工物を前記加工物ホルダの回転軸を介して回転させ、そして前記測定プローブを、前記歯切り盤の前記少なくとも2つの移動軸を介して、
完全な較正の場合には、前記測定プローブ先端部の前記歯面上のタッチポイントが変わらないままであるように、また
前記測定プローブ先端部の振れ又は振れ量が少なくとも1つの特定値を採用及び/又は維持するように、
横断させるステップと、
少なくとも1つの測定ポイントで、前記加工物ホルダの前記回転軸及び/又は前記歯切り盤の前記少なくとも2つの移動軸の実際の位置と、完全な較正の場合のこれらの位置との間の偏差を決定するステップと、
前記偏差に基づいて、較正の少なくとも1つの補正値を決定するステップと、を含む方法。
【請求項3】
前記偏差は、複数の測定ポイントに対して決定され、
前記少なくとも1つの補正値は、前記複数の偏差に基づいて決定され
る、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記偏差及び/又は前記偏差の曲線は、前記較正の少なくとも1つの補正値を決定するために、様々な較正誤差に対して決定される複数の理論的偏差及び/又は前記偏差の理論的曲線と比較される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1回の第1の測定動作で加工物の第1の歯面との接触での偏差、そして少なくとも1回の第2の測定動作で加工物の第2
の歯面との接触での偏差が決定される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つの移動方向及び/又は移動軸に対して補正値が決定され
る、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記加工物の回転は、前記加工物ホルダの前記回転軸を介して行われ、
前記測定プローブの横断は、前記歯切り盤の前記少なくとも2つの移動軸を介して同時に及び/又は連続して行われる、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記加工物の回転は、前記加工物ホルダの前記回転軸を介して行われ、
前記測定プローブの横断は、前記歯切り盤の前記少なくとも2つの移動軸を介して交互に及び/又は断続的に行われる、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
較正のためのタッチポイントを予め選択するために及び/又は補正値を決定するとき許容誤差の変化及び/又はタッチポイント周囲の歯形を考慮に入れるために、チェックすべき前記歯面をトレースすることによって、前記歯面及び/又は前記歯形上の許容誤差の変化が決定される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記加工物の歯形及び/又は前記歯切り盤及び/又は前記測定プローブの制約に応じて、タッチポイントが位置する半径及び/又は前記加工物ホルダの前記回転軸の回転角の範囲がトレースされ、決定される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記測定プローブ先端部は、球体の形状を有する、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記歯切り盤は、前記少なくとも2つの移動軸を介して前記加工物ホルダに対して横断可能である加工ヘッドを含み、
前記測定プローブ及び工具ホルダは、前記加工ヘッド上に配置される、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つの移動軸は直線軸である、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
加工物を受け取
り、前記加工物を回転させる回転軸を有する加工物ホルダと測定プローブとを備えた歯切り盤であって、
前記測定プローブは、測定プローブ基部上に移動可能に配置される測定プローブ先端部を含み、
前記測定プローブ先端部の前記測定プローブ基部に対する振れ及び/又は前記測定プローブ先端部の前記測定プローブ基部に対する振れの達成は、前記測定プローブの少なくとも1つのセンサを介して決定することができ、
前記測定プローブは、前記歯切り盤の少なくとも2つの移動軸を介して前記加工物ホルダに対して相対的に横断可能であり、
請求項1~13のいずれかに記載の方法によって前記測定プローブを較正するように構成される制御ユニットを含む、歯切り盤。
【請求項15】
前記制御ユニットは、前記方法が製造サイクルの一部として完全に自動で実行されるように構成される、請求項14に記載の歯切り盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工物、特に歯車を用いて、歯切り盤の測定プローブを較正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
盤内で製造した加工物のチェック(例えば、歯厚チェック、ピッチチェック、歯形チェック、歯すじチェック)を可能にするために測定プローブが設置されている歯切り盤において、温度変動などの外的影響が盤内に微小な変形を引き起こす場合があり、このためこれらのチェックが不正確となる。従って、常に良好な試験結果を確実に得るために、結果として生じる測定プローブの歯部に対する位置(以下、単に測定プローブの位置と呼ぶ)の変化を定期的に決定し、また、較正によって補償しなければならない。
【0003】
測定プローブの仮定位置と実際の位置との差を、ここでは位置誤差と呼ぶ。位置誤差がゼロのとき、測定プローブは完全に較正されている。本発明に記載する方法によって決定される測定プローブの位置の補正を、位置補正と呼ぶ。
【0004】
較正に必要な測定プローブの位置の決定は、測定対象、例えば測定ブロック上で実行することができる。しかしながら、盤内に固定された加工物、特に歯車上で直接決定を行うと、いくつかの利点が得られる。特に、作業者が測定ブロックを盤内に取り付け、これを較正後再び取り外すための費用が省かれる。大きな加工物製造用の歯切り盤では、測定プローブ用の横断経路が測定ブロックに到達し得るには十分でないこともあり得る。このこともまた、加工物上で測定することによって避けられる。
【0005】
特許文献1には、加工物を用いて歯切り盤の測定プローブを較正する方法が知られており、ここでは、異なる測定ステップによって加工物の歯形が2度決定される。第1の測定ステップでは、測定プローブは、加工物が回転する間に接線方向に横断するが、第2の測定ステップでは非接線方向又は半径方向に横断する。それぞれの測定ステップで決定される歯形勾配誤差間の違いを参照して、測定ヘッドの位置誤差が決定され、較正に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加工物を使って歯切り盤の測定プローブを較正する改良された方法を提供することである。
【0008】
第1の局面では、本目的は、請求項1に記載の方法によって解決され、第2の局面では請求項2に記載の方法によって解決される。
【0009】
本発明の各好適な実施形態は、各従属項の内容である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の局面では、本発明は、歯切り盤の加工物ホルダに受け取られた加工物を用いて、該歯切り盤の測定プローブを較正する方法であって、前記測定プローブは、測定プローブ基部上に移動可能に配置される測定プローブ先端部を含み、前記測定プローブ先端部の前記測定プローブ基部に対する振れは前記測定プローブの少なくとも1つのセンサを介して決定することができ、また前記測定プローブは前記歯切り盤の少なくとも2つの移動軸を介して前記加工物ホルダに対して相対的に横断可能であり、
測定プローブ及び/又は加工物を前記測定プローブ先端部が前記加工物の歯面に接触する相対位置へと横断させるステップと、
前記加工物を前記加工物ホルダの回転軸を介して回転させ、そして前記測定プローブを、前記歯切り盤の前記少なくとも2つの移動軸を介して、
完全な較正の場合には前記測定プローブ先端部の前記歯面上のタッチポイントが変わらないままであるように、また
完全な較正の場合には前記測定プローブ先端部の振れ又は振れ量が少なくとも1つの特定値を採用及び/又は維持するように、
横断させるステップと、
少なくとも1つの測定ポイントでの前記測定プローブ先端部の振れの前記少なくとも1つの特定値からの偏差を決定するステップと、
前記偏差に基づいて較正の少なくとも1つの補正値を決定するステップと、を含む方法を含む。
【0011】
第2の局面によれば、本発明は、歯切り盤の加工物ホルダに受け取られた加工物を用いて、該歯切り盤の測定プローブを較正する方法であって、前記測定プローブは、測定プローブ基部上に移動可能に配置される測定プローブ先端部を含み、前記測定プローブ先端部の前記測定プローブ基部に対する振れ及び/又は前記測定プローブ先端部の前記測定プローブ基部に対する振れの達成は、前記測定プローブの少なくとも1つのセンサを介して決定することができ、また前記測定プローブは前記歯切り盤の少なくとも2つの移動軸を介して前記加工物ホルダに対して相対的に横断可能であり、
測定プローブ及び/又は加工物を前記測定プローブ先端部が前記加工物の歯面に接触する相対位置へと横断させるステップと、
前記加工物を前記加工物ホルダの回転軸を介して回転させ、そして前記測定プローブを、前記歯切り盤の前記少なくとも2つの移動軸を介して、
完全な較正の場合には前記測定プローブ先端部の前記歯面上のタッチポイントが変わらないままであるように、また
前記測定プローブ先端部の振れ又は振れ量が少なくとも1つの特定値を採用及び/又は維持するように、
横断させるステップと、
少なくとも1つの測定ポイントで、前記加工物ホルダの前記回転軸及び/又は前記歯切り盤の前記少なくとも2つの移動軸の実際の位置と、完全な較正の場合のこれらの位置との間の偏差を決定するステップと、
前記偏差に基づいて較正の少なくとも1つの補正値を決定するステップと、を含む方法を含む。
【0012】
本発明の上記2つの局面では、特許文献1とは異なり、歯形角及び/又は歯形角偏差は測定されない。さらに、測定プローブ先端部の基礎円に対して接線方向の移動も行われない。むしろ測定プローブ先端部の中心(可能であれば測定される偏差を除く)が円軌道上を移動する。この結果、かなり簡単な方法が提供され、またより総合的な較正が可能となる。
【0013】
第1の局面及び第2の局面による方法の好適な実施形態を以下に詳細に述べる。特に記載のない限り好適な実施形態は両局面を展開させるために用いることができる。
【0014】
好ましくは、本発明は参照測定ブロックなどの参照物体を必要とせず行うことができる。すなわち較正は完全に歯状加工物のみを介して行われる。
【0015】
加工物の歯部は任意に選択することができる。特に、加工物の歯部は、円筒状設計でも円錐状設計でもよい直線状又は螺旋状歯列の内歯部又は外歯部(ベベロイド歯部)であり得る。歯部は対称でも非対称でもよい。すなわち左右歯面の歯形角は異なってもよいが異なる必要はない。歯形は任意に選択することができ、特にインボリュートとしてもよい。
【0016】
本発明による較正方法は好ましくは製造サイクルにおいて完全に自動で行われる。
【0017】
第1の局面による方法では、測定プローブ先端部の振れを制御ユニットに提供することができる、すなわち走査測定に適した測定プローブが用いられる。
【0018】
一方で第2の局面による方法の実行に対しては、単に測定プローブ先端部の測定プローブ基部に対する特定の振れの達成度を出力可能な、すなわち切り替え測定のみに適した測定プローブもまた用いることができる。
【0019】
本発明によれば、振れ量のみを出力可能な(切り替えプローブでは接触の有無のみを出力可能な)測定プローブを用いることができる。しかし、加えて傾斜方向も出力可能な測定プローブを用いることもできる。ただしこの情報は絶対に必要であるというわけではない。
【0020】
本発明の可能な実施形態によれば、前記偏差は複数の測定ポイントに対して決定され、また前記少なくとも1つの補正値は前記複数の偏差に基づいて決定される。特に、前記偏差の曲線を複数の測定ポイントにわたって決定することができる。
【0021】
本発明の可能な実施形態によれば、前記偏差及び/又は前記偏差の曲線は、前記較正の少なくとも1つの補正値を決定するために、様々な較正誤差に対して決定される複数の理論的偏差及び/又は前記偏差の理論的曲線と比較される。
【0022】
本発明の可能な実施形態によれば、加工物の第1の歯面との接触での偏差が少なくとも1回の第1の測定動作で決定され、加工物の第2の、好ましくは反対側の歯面との接触での偏差が少なくとも1回の第2の測定動作で決定される。好ましくは、偏差はそれぞれいくつかの測定ポイントで両歯面に対して決定される。2つの歯面での測定により較正に対して追加の情報が得られる。
【0023】
本発明の可能な実施形態によれば、少なくとも2つの移動方向及び/又は移動軸に対して補正値が決定され、好ましくは前記移動方向及び/又は移動軸により前記加工物ホルダの前記回転軸に垂直な平面での移動が可能となる。好ましくは、それらに対して少なくとも2つの測定動作が実行され、それぞれにおいて偏差が決定される。
【0024】
先行技術と比べると、2回の測定により第1の方向の誤差のみではなく第2の方向の誤差も補正可能であるという利点が得られる。2つの較正経路は好ましくは2つの異なる歯面側に配備される。
【0025】
本発明の可能な実施形態によれば、前記加工物の回転は前記加工物ホルダの前記回転軸を介して行われ、また前記測定プローブの横断は前記歯切り盤の少なくとも2つの移動軸を介して同時に及び/又は連続して行われる。特に、このような手順は、測定プローブが測定プローブ先端部の測定プローブ基部に対する振れを出力可能なときに採用することができる。
【0026】
本発明の別の可能な実施形態によれば、前記加工物の回転は前記加工物ホルダの前記回転軸を介して行われ、また前記測定プローブの横断は前記歯切り盤の前記少なくとも2つの移動軸を介して交互に及び/又は断続的に行われる。このような方法は、測定プローブが単に測定プローブ先端部の測定プローブ基部に対する振れの達成度を出力可能なとき、すなわち切り替え測定のみに適するときに採用することができる。
【0027】
本発明の可能な実施形態によれば、較正のためのタッチポイントを予め選択するために及び/又は補正値を決定するとき許容誤差の変化及び/又はタッチポイント周囲の歯形を考慮に入れるために、チェックすべき前記歯面をトレースすることによって、前記歯面及び/又は前記歯形上の許容誤差の変化が決定される。特に、計算の基になる目標形状からの偏差ができるだけ小さくなるように、歯面上の許容誤差の変化ができるだけ小さいタッチポイントを選択することができる。
【0028】
本発明の可能な実施形態によれば、前記加工物の歯形及び/又は前記歯切り盤及び/又は前記測定プローブの制約に応じて、タッチポイントが位置する半径及び/又は前記加工物ホルダの前記回転軸の回転角の範囲がトレースされ、決定される。特に、決定は、できるだけ大きな回転角範囲にわたって及び/又は特定の精度で測定することができるように行われる。
【0029】
本発明の可能な実施形態によれば、前記測定プローブ先端部は球体の形状を有する。
【0030】
本発明の可能な実施形態によれば、前記歯切り盤は、前記少なくとも2つの移動軸を介して前記加工物ホルダに対して横断可能である加工ヘッドを含み、前記測定プローブ及び工具ホルダは前記加工ヘッド上に配置される。従って加工ヘッドの移動軸もまた測定プローブの横断に用いることができる。
【0031】
本発明の可能な実施形態では、測定プローブはまた一方、工具ホルダを含む加工ヘッド以外の他の移動軸を介しても全体的に又は部分的に横断可能である。
【0032】
本発明の可能な実施形態によれば、前記少なくとも2つの移動軸は直線軸である。好ましくは、これらの軸により加工物ホルダの回転軸に垂直な面において移動が可能となる。好ましくは、両移動軸は本発明の方法によって較正される。
【0033】
本発明はさらに、加工物を受け取る工具ホルダと測定プローブとを備えた歯切り盤であって、前記測定プローブは測定プローブ基部上に移動可能に配置される測定プローブ先端部を含み、前記測定プローブ先端部の前記測定プローブ基部に対する振れ及び/又は前記測定プローブ先端部の前記測定プローブ基部に対する振れの達成は前記測定プローブの少なくとも1つのセンサを介して決定することができ、また前記測定プローブは前記歯切り盤の少なくとも2つの移動軸を介して前記加工物ホルダに対して横断可能である歯切り盤を含む。前記歯切り盤は、上述の方法によって測定プローブを較正するように構成される制御ユニットを含む。
【0034】
特に、制御ユニットは、マイクロプロセッサとプログラムが保存される不揮発性メモリとを含む。プログラムがマイクロプロセッサ上で実行されると、歯切り盤は本発明の方法を実行する。制御ユニットは歯切り盤の移動軸を作動させることができ、そして/又は測定プローブの信号及び/又は測定データを評価することができる。
【0035】
本発明の可能な実施形態によれば、前記制御ユニットは、前記方法が製造サイクルの一部として完全に自動で実行されるように構成される。
【0036】
以下に、本発明を図面及び例示的実施形態を参照して詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明による方法の例示的実施形態の概略図であって、加工物回転軸が回転しこれに同期して測定プローブが横断する場合に、測定プローブ先端部と歯面との間のタッチポイントがたどる円軌道を示す。
【
図2】左歯面での較正測定中のプローブ振れの記録の実測値(21)及び計算値(22)の過程を、加工物回転角にわたってプロットした一例を示す図である。
【
図3】右歯面での較正測定中のプローブ振れの記録の測定値(31)及び計算値(32)の過程を、加工物回転角にわたってプロットした一例を示す図である。
【
図4】計算上のタッチポイント(41)と、測定プローブ先端部の歯面との位置誤差(43)の存在下でのタッチポイントの実際の過程を示す概略図である。
【
図5】測定プローブの位置を計算するための一連の変換(51~54)を示す概略図である。
【
図6】測定プローブの構成及び動作モードに対する例示的実施形態を示す図である。
【
図7】本発明による歯切り盤の構成及び動作モードに対する例示的実施形態を示す図である。
【
図8】歯切り盤で用いられる測定プローブを備えた加工ヘッドに対する例示的実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明による歯切り盤の構成及び動作モードに対する例示的実施形態を、
図7に示す。
図8は、歯切り盤で用いることができる測定プローブ74を備えた加工ヘッド73に対する例示的実施形態を示す。
【0039】
本例示的実施形態では、歯切り盤は、加工物ホルダ71と、工具ホルダ72とを備える。加工物ホルダ及び工具ホルダは、対応する駆動装置を介して、これらの回転軸C2及びB1回りに駆動することができる。
【0040】
工具ホルダは、移動軸を介して加工物ホルダに対して横断可能な加工ヘッド73上に配置される。本例示的実施形態では、第1の直線軸Y1が提供され、これを介して、工具ホルダ72は、中心間距離を変更するために、加工物ホルダの回転軸C2に垂直の方向に横断可能である。さらに、第2の直線軸Z1が提供され、これを介して工具ホルダ72は加工物ホルダの回転軸C2に平行な方向に横断可能である。さらに第3の直線軸V1が提供され、これを介して工具ホルダ72は自体の回転軸B1に平行な方向に横断可能である。直線軸V1と工具ホルダ72との調整は、Y1軸に平行に延びる旋回軸A1を介して変更することができる。
【0041】
本例示的実施形態では、加工物ホルダ71は、工具台75上に配置される。工具台75は、Y1軸によって直線的に横断可能な工具スタンド76を載置する。工具スタンドには、軸Z1を介して横断可能なキャリッジが配置され、これに工具ホルダ72を備えた加工ヘッドがA1軸及びV1軸を介して配置される。
【0042】
歯切り盤は、例えば、ホブ盤及び/又はホブ研削盤であり得る。しかしながら、本発明は、いかなる他の歯切り盤にも使用することができる。
【0043】
図8は、加工ヘッド73に対する例示的実施形態を示す。加工ヘッドには、測定プローブ74が配置されている。測定プローブは、測定プローブ基部83を含み、測定プローブ74の測定プローブ先端部の測定プローブ基部83に対する振れを少なくとも1つのセンサを介して決定することができる。
【0044】
測定プローブ基部83を介して、測定プローブ74は、静止位置から測定位置へ、そして、その逆へと駆動装置82を介して旋回可能な旋回アーム81上に配置される。
【0045】
本明細書に従って選択される方向X、Y及びZの定義はまた、
図1からも行うことができ、ここで、Zは、X及びYに直交であり、これら3つの軸が右手系を形成する。Z軸は、歯部の回転軸(加工物回転軸)に平行に延びる。C軸は、ここでは加工物ホルダの回転軸を指し、加工物を加工物回転軸回りに回転させる。X、Y及びZ軸は、測定プローブを歯部に対して方向X、Y及びZに横断させる盤軸を指す。これらの軸は、必ずしも物理的な軸である必要はない。これらの移動はまた、2つ又はそれ以上の軸の補間によって実現することもできる。
【0046】
特に、Y方向の移動は、本例示的実施形態では、Y1方向を介して実現することができ、X方向の移動は、本例示的実施形態では、V1軸がX方向に平行であるA1軸の位置ではV1軸のみを介して、そして他の位置ではV1軸及びZ1軸の移動の重ね合わせによって実現することができる。しかし、歯切り盤の別の実施形態では、常にX方向に平行に調整されるX1軸を備えることもできる。これは、例えばX1軸がA1軸を担い、従ってA1軸によって旋回されないときに可能である。
【0047】
測定プローブ74のトレーサーピン62の端部の測定プローブ先端部61は、好ましくは球体(測定プローブ球体)、例えばルビー球体である。
図6はここで使用可能な走査測定プローブの可能な変形例の構成を示す。
【0048】
本発明による方法では、好ましくは走査測定に適した測定プローブが用いられる。すなわち、トレーサーピン及び/又は測定プローブ先端部の振れを制御ユニットに提供することができる測定プローブである。本発明の1つの変形例ではまた、単に切り替え測定に適した測定プローブをむしろ使用することを提供する。さらに、測定プローブを、振れ量のみを出力可能か(切り替えプローブでは、接触の有無のみを出力可能か)又は傾斜方向もまた出力可能かどうかという点によって区別することができる。ここに提示する方法は、傾斜方向を出力できない測定プローブによっても実行することができる。以下では本方法はこのような測定プローブに対して説明する。
【0049】
第1の例示的実施形態では、方法の基本順序は以下の通りである。
【0050】
測定プローブ先端部を歯部の隙間に特定の深さ(例えば、歯形の中央)まで移動させる。
【0051】
次に、C軸(加工物回転軸)を、トレーサーピンが所望の振れに到達するまで、すなわち、好ましくは、可能な振れの半分に到達するように回転させる。この状況を
図1の右側に示す。
【0052】
次に、C軸を連続して回転させ、また完全な較正が行われた場合に、歯面上の測定プローブ先端部のタッチポイント及びプローブ振れ量が同じままであるように、X、Y及びZ軸を同期して横断させる。測定プローブ先端部と歯部との間のタッチポイントは、中心が歯部の回転軸にある円軌道上を移動する。
【0053】
この回転中、トレーサーピンの振れをいくつかの離散ポイントで、特にできるだけ多くの離散ポイントでC回転角にわたって記録する。
【0054】
本手順を、他方の歯面に対して繰り返し、左歯面でのポイントに対する振れの記録及び右歯面でのポイントに対する振れの記録を得る。このような記録の例を左歯面に対しては
図2(曲線21)、右歯面に対しては
図3(曲線31)に示す。
【0055】
完全な較正が行われ測定プローブ及び盤の軸の両方に誤りがない場合、2つの歯面それぞれに対するすべてのC位置に対するプローブの記録された振れは、それぞれのプローブ開始振れで一定である。測定プローブ先端部の2つの歯面とのタッチポイントは変わらないままである。
【0056】
完全な較正が行われなかった場合、測定開始時での測定プローブ先端部の歯面上の実際のタッチポイント(42)は、計算上のタッチポイント(41)に対応しない。計算上のC角は、トレーサーピンの所望の振れに到達する測定開始時に仮定されたものであり、正確には到達しない。さらに、計算上の運動経路(43)を横断するとき、トレーサーピンの振れ及び歯面上のタッチポイントは変化する。C位置を介してトレーサーピンの振れをプロットすると、両歯面に対してそれぞれ1つの曲線が得られる。従ってこれらの曲線を振れ曲線と呼び、例として左歯面に対しては
図2に、そして右歯面に対しては
図3に示す。一般に、これらの記録された振れ曲線は、一定のノイズを持ち、これは、測定プローブ及び盤の軸の誤りに起因する。
【0057】
計算上の軸経路及び一連の座標変換を使って、X及びY方向の特定の誤差に対して及び2つのC開始位置の特定の角偏差に対して、振れ曲線がどのようであるかを計算及び/又はシミュレートすることができる。その際に、既に計算したX、Y及びZ位置を用い、また誤差をX及びY方向に加える。さらに、C角度補正を両経路に対してそれぞれ加える。次に、トレーサーピンの振れを対応する座標変換を使って計算する。タッチポイントもまた未知数である。このようにして、左右歯面での振れに対して一連の曲線が得られる。ここで、X及びY方向の誤差ならびに左右歯面のC角度補正は、この一連の曲線の自由パラメータである。
【0058】
左右歯面に対する計算上の振れ曲線[22/32]が左右歯面に対する記録された振れ曲線[21/31]からどれ位離れているかの距離を示す標準が用いられる。例えば、有用な標準としては、Lp標準(又はその離散化型)がある。補償計算を適用することによって、左右歯面に対する振れ曲線は、一連の曲線(従ってまたX及びY方向の誤差)から見出すことができ、これらが記録された振れ曲線に最も近似する。
【0059】
この目的のために、X及びY方向の特定の誤差ならびにC角度補正を変動させてこの標準の最小値を求める。これは、数値最適化法(例えば、勾配法又は離散微分係数を伴うニュートン法)によって実現することができる。
図2及び
図3に示す曲線22及び32では、一連の曲線から、この最小値に達する位置であるこれらの曲線が描かれる。
【0060】
プローブに誤りがなくまた歯車が左右歯面のタッチポイントの周囲において正確に製造されるときは、X及びY方向の計算上の誤差は、所望の位置補正の負数、従って測定プローブを較正するための補正値に対応する。
【0061】
もしくは、行った移動の計算の基となる、測定動作にわたって一定であるプローブ開始振れの代わりに、特定のプローブ振れ過程を用いてもよい。
【0062】
一方、第2の例示的実施形態においては、単に切り替え測定に適した測定プローブもまた用いることができる。すなわち確実に特定された振れにより、測定プローブは「非接触」状態から「接触」状態へと切り替わる。
【0063】
このような測定プローブでは、手順は、上記の方法に類似し得る。
【0064】
小さないくつかのステップにおいて、測定プローブ先端部の位置を交互に変え、次に加工物を接触が生じるまで回転させる。
【0065】
測定プローブ先端部の位置の変化を、完全な較正が行われた場合に歯面上の測定プローブ先端部のタッチポイントが同じままであるように、X、Y及びZ軸を横断させることによって実現し、このとき、加工物の回転軸を確実に特定した角度差だけ回転させる。対応する計算は、上記と同じように行う。
【0066】
完全な較正が行われなかった場合は、特定の角度差は、プローブが接触するまでをカバーする角度差に対応しない。これらの角度差の相違を、C位置にわたって左歯面上の測定及び右歯面上の測定に対して記録する。
【0067】
ここで左右歯面上の最初の接触でのX及びY位置での誤差ならびにC角度補正に応じて、角度差に対して一連の曲線をシミュレートすることができる。これからパラメータを、測定された角度差の記録の最小値に到達するように決定する。次にこれから補正値を決定する。
【0068】
もしくは、加工物も交互に回転させ、次に測定プローブ先端部の位置を接触が生じるまで追跡してもよい。この場合は、プローブの接触した位置を記録及び評価することができる。
【0069】
本発明の方法の両変形例において、以下のさらなる局面が考慮される。
【0070】
較正で用いることができるC位置の範囲は、以下の要因によって制限される。
【0071】
特定のC角度に対して、測定プローブ先端部のタッチポイントでの歯面に対する法線とトレーサーピンとの間の角度α_NTを計算することができる。α_NTが90°を超えると、トレーサーピンと較正が行われる歯面との衝突が起こり得る。測定プローブによっては、α-NTに対して下限があり、これより下がると測定が不正確になる。α_NTに対する範囲の限界から、C範囲に対する限界を計算することができる。
【0072】
具体的な盤にとって、測定プローブがX方向にどこまで横断可能かには限界があり得る。この結果、C軸がどこまで回転可能かについて限界が生じる。
【0073】
トレーサーピンが測定とは反対側の歯面と衝突する事態が生じ得る。従ってC範囲はこれが起こらないように選択しなければならない。
【0074】
較正のC範囲に対する上記の制約すべては、歯面と測定プローブ先端部との間のタッチポイントの位置の深さ及び/又は半径がどのように特定されるかに依存する。較正中に横切るC範囲が大きいほど位置補正においてプローブの誤りは目立たなくなる。従って、運動学的計算の前に、C範囲が最大になる半径を計算しこれにより適切な半径を選択するステップを提供することができる。
【0075】
X及びY方向の特定の誤差に対する及び2つのC開始位置の特定の角偏差に対する振れ曲線がどのようであるかを決定するとき、歯面上のタッチポイントがどのように変化するか(43)もまた計算され、そして所与の歯部が正確に製造されていると仮定しなければならない。位置誤差が大きいほど測定プローブ先端部の歯面とのタッチポイントの移動が大きい。計算上のタッチポイントの周囲における歯部の製造が正確であるほど計算上の較正補正が良好となる。
【0076】
従って、ある可能な実施形態では、先行するステップは、チェックする歯面又は歯形をトレースすることによって、歯面上の測定ポイントの小さな周囲において歯面上の許容誤差の変化ができるだけ小さいポイントを探すことを含み得る。
【0077】
歯部の種類及び測定プローブの構成に応じて、
図5に示すように可動部分の変化を一連の座標変換(51~54)によって描くことができる。
【0078】
測定を行う歯部の種類及び所望の半径(55)に応じて、測定プローブのタッチポイントが決定される(例えば、円の伸開線の方程式を介して)(変換51)。
【0079】
C位置(56)に応じてタッチポイントを回転させる(変換52)。
【0080】
タッチポイントから、歯面への法線ベクトルの方向に測定プローブ先端部の半径ほど変位することによって、測定プローブ先端部の中心に到達する(変換53)。
【0081】
測定プローブの構成に応じて、トレーサーピン(58)の振れが所望の振れでありまた測定プローブ先端部が所望の位置にあるように、測定プローブが載置される(57)X、Y及びZ軸をどのように横断させるかを決定することができる(変換54)。
【0082】
ここでより詳細な分析を
図6に示す具体的な測定プローブに対して行う。
【0083】
トレーサーピン(62)はフェースギア(63)上にある。トレーサーピンが振れると、フェースギアは、接触側とは反対の側で上向きに傾斜する(
図6右側のイメージ参照)。以下この傾斜が起こる平面を反跳平面と呼ぶ。
図6の右側のイメージでは、これは像平面である。支点(64)及び反跳平面の調整は振れの方向に依存する。
【0084】
関連した変換は、測定球体中心から傾斜方向依存の支点への変位及びフェースギアの中心(トレーサーピンの載置点)への別の変位により構成される。
【0085】
測定プローブは、トレーサーピンの振れができるだけ小さくなるようにバネが常にトレーサーピンを押し戻すように構成される。この結果、走査表面上のタッチポイントにおける法線ベクトルが反跳平面の法線ベクトルに垂直であるという条件が追加される。
【0086】
この結果、運動学的経路を計算するとき及び所与の位置誤差に対する振れを計算するときの両方で解く必要があるさらなる方程式が生じる。
【0087】
従って、運動学的経路の計算においては、各C位置に対して4つの方程式(座標変換からの3つの方程式及び上記追加の条件)ならびに4つの未知数、X、Y及びZ位置及び傾斜方向がある。
【0088】
所与の位置誤差に対する振れの計算では、各C位置に対して同じ4つの方程式があり、歯面上のタッチポイントの2つの表面パラメータ化座標、傾斜方向及びトレーサーピンの振れに従って解明を行う。
【符号の説明】
【0089】
61 測定プローブ先端部
71 加工物ホルダ
72 工具ホルダ
73 加工ヘッド
74 測定プローブ
83 測定プローブ基部