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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ワンタッチ固定式ロックボルト
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
E21D20/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020046308
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021147802
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】三河内 永康
(72)【発明者】
【氏名】末松 幸人
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-169394(JP,A)
【文献】特開平05-059897(JP,A)
【文献】特開平08-193320(JP,A)
【文献】実開昭54-115704(JP,U)
【文献】国際公開第2006/014073(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワンタッチ固定式ロックボルトであって、
前記ワンタッチ固定式ロックボルトは、ロックボルト本体と、前記ロックボルト本体の長手方向の一方の端部である基部が挿通される中心孔を有する中空状のロック部材とを備え、
前記ロックボルト本体の前記基部の外周部には、前記基部の半径方向外方に突出しつつ前記基部の周方向に延在する雄型歯部が前記基部の長手方向に並べられて複数設けられ、
前記中心孔の内周部に係止部が設けられ、
前記係止部は弾性変形可能で、複数の前記雄型歯部を乗り越え前記基部の長手方向に沿って前記基部と反対に位置する前記ロックボルト本体の他方の端部である先部に向かう方向への前記ロック部材の移動を許容し、かつ、前記雄型歯部に係止し前記先部から離れる方向への前記ロック部材の移動を不能とするように構成されている、
ことを特徴とするワンタッチ固定式ロックボルト。
【請求項2】
前記係止部は、前記中心孔の内周面の周方向に間隔をおいて互いに切り離された状態で複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載のワンタッチ固定式ロックボルト。
【請求項3】
前記各係止部は前記中心孔の内周面から突出し、前記内周面からその半径方向内方に離れるにつれて前記先部から離れる方向に向かって変位する傾斜を有している、
ことを特徴とする請求項2記載のワンタッチ固定式ロックボルト。
【請求項4】
前記各係止部の先端は、前記雄型歯部に係合可能な円弧状を呈している、
ことを特徴とする請求項3記載のワンタッチ固定式ロックボルト。
【請求項5】
前記係止部は、前記中心孔の軸心方向に間隔をおいて複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項記載のワンタッチ固定式ロックボルト。
【請求項6】
前記中心孔の内周部には、前記雄型歯部に滑動可能に接触に前記中心孔の軸心を前記基部の中心軸に合致させるガイド面が設けられている、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載のワンタッチ固定式ロックボルト。
【請求項7】
前記ガイド面は、前記中心孔の周方向で前記係止部と位相をずらした複数箇所に前記中心孔の軸心方向に延在して設けられている、
ことを特徴とする請求項2,3,4の何れか1項を引用する請求項6記載のワンタッチ固定式ロックボルト。
【請求項8】
前記ガイド面は、前記中心孔の軸心方向で前記係止部と位相をずらした箇所に前記中心孔の周方向に延在して設けられている、
ことを特徴とする請求項2~5の何れか1項を引用する請求項6記載のワンタッチ固定式ロックボルト。
【請求項9】
前記ロックボルト本体は異径鉄筋であり、前記基部は前記異径鉄筋のリブが削り取られた均一外径の円形断面で形成され、前記雄型歯部はこの円形断面の箇所に設けられている、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載のワンタッチ固定式ロックボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネル工事の支保工などに用いられて好適なワンタッチ固定式ロックボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、NATM工法で掘削される山岳トンネルでは、図10(A)に示すように、地山が掘削されることで形成された地山内面50にコンクリートC1が吹き付けられる。
その後、トンネルの周方向および長手方向に間隔をおいた複数箇所において、硬化状態のコンクリートC1の上から地山内面50に孔52が削孔され、各孔52にモルタルなどの定着材が注入される。
そして、各孔52にロックボルト54が挿入され、コンクリートC1から突出するロックボルト54の基部が、角型プレートや丸型プレートなどからなる鋼板製のベアリングプレート56の中心孔5602に挿通され、このベアリングプレート56をコンクリートC1の表面に当て付け、ロックボルト54の基部の雄ねじにナット58を螺合し、ナット58を締結してベアリングプレート56をコンクリートC1の表面に押し付けることで各ロックボルト54の設置作業が終了し、岩盤の固定作業がなされている。
その後、図10(B)に示すように、必要に応じて地山の水がトンネル内に侵入しないようにコンクリートC1の表面に防水シートが敷設され、この防水シートに対向させてコンクリート打設型枠が配置され、防水シートとコンクリート打設型枠の型枠面との間にコンクリートC2が打設されて覆工コンクリートが行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-167774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、トンネル工事の支保工のうちロックボルト工では、ロックボルト54の基部の雄ねじにナット58を螺合し、ナット58を回転させてベアリングプレート56をコンクリートC1の表面に押し付ける作業は、作業員が足場に乗って行なうことから無理な姿勢となる場合が多く、手間取る作業となっている。
また、ナット58を回転させる作業であるため時間が掛り、コンクリートC1が吹き付けられた岩盤付近に長時間いなければならないため、危険性を伴う作業となっている。
特に、トンネル断面が大きく、トンネルの長さが大きくなると、ロックボルト54の本数は数千、数万本の単位となり、ナット58の締結作業に多くの時間を要し、危険性も増大し、トンネル工事の施工期間を短縮化し、コストダウンを図る観点から何らかの改善が望まれていた。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、ナットの締結作業を省略し、ワンタッチでベアリングプレートをコンクリートの表面に押し付けることができ、危険性を減少する上で有利となり、トンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利で、トンネル工事の支保工などに用いられて好適なワンタッチ固定式ロックボルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、ワンタッチ固定式ロックボルトであって、前記ワンタッチ固定式ロックボルトは、ロックボルト本体と、前記ロックボルト本体の長手方向の一方の端部である基部が挿通される中心孔を有する中空状のロック部材とを備え、前記ロックボルトの前記基部の外周部には、前記基部の半径方向外方に突出しつつ前記基部の周方向に延在する雄型歯部が前記基部の長手方向に並べられて複数設けられ、前記中心孔の内周部に係止部が設けられ、前記係止部は弾性変形可能で、複数の前記雄型歯部を乗り越え前記基部の長手方向に沿って前記基部と反対に位置する前記ロックボルト本体の他方の端部である先部に向かう方向への前記ロック部材の移動を許容し、かつ、前記雄型歯部に係止し前記先部から離れる方向への前記ロック部材の移動を不能とするように構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記係止部は、前記中心孔の内周面の周方向に間隔をおいて互いに切り離された状態で複数設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記各係止部は前記中心孔の内周面から突出し、前記内周面からその半径方向内方に離れるにつれて前記先部から離れる方向に向かって変位する傾斜を有していることを特徴とする。
また、本発明は、前記各係止部の先端は、前記雄型歯部に係合可能な円弧状を呈していることを特徴とする。
また、本発明は、前記係止部は、前記中心孔の軸心方向に間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記中心孔の内周部には、前記雄型歯部に滑動可能に接触に前記中心孔の軸心を前記基部の中心軸に合致させるガイド面が設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記ガイド面は、前記中心孔の周方向で前記係止部と位相をずらした複数箇所に前記中心孔の軸心方向に延在して設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記ガイド面は、前記中心孔の軸心方向で前記係止部と位相をずらした箇所に前記中心孔の周方向に延在して設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記ロックボルト本体は異径鉄筋であり、前記基部は前記異径鉄筋のリブが削り取られた均一外径の円形断面で形成され、前記雄型歯部はこの円形断面の箇所に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のワンタッチ固定式ロックボルトによれば、トンネル工事の支保工のうちロックボルト工において、従来のナットを回転していく手間取る作業を省略でき、単にロック部材を基部に沿ってロックボルト本体の先部に向けて移動させるワンタッチ作業で済むため、ロックボルトの設置作業の効率化を図る上で有利となる。
また、ロックボルトの設置作業を短時間で行なうことができることから、トンネル工事の支保工工事では、コンクリートが吹き付けられた岩盤付近に短時間いれば足り、危険性を減少する上で有利となる。
また、短時間で地山を支保できるため、地山を早期に安定させる上で有利となる。
特に、トンネル断面が大きく、トンネルの長さが大きくなり、ロックボルトの本数が数千、数万本の単位となった場合でも、ロックボルトの設置作業に要する時間を大幅に短縮でき、トンネル工事の施工期間を短縮化し、コストダウンを図る上で有利となる。
また、係止部を切り離された状態で複数設けると、ロック部材のロックボルト本体の先部から離れる方向への移動を確実に阻止する上で有利となり、また、係止部は弾性変形し易くなり、先部に向かう方向へのロック部材の移動をより円滑に行なう上で有利となる。
また、係止部に傾斜を持たせると、ロックボルト本体の先部に向かう方向へのロック部材の移動をより円滑に行なう上で有利となり、同時に、ロックボルト本体の先部から離れる方向へのロック部材の移動を簡単に不能とする上で有利となる。
また、係止部の先端を、雄型歯部に係合可能な円弧状に形成すると、係止部を雄型歯部に確実に係止させる上で有利となり、ロックボルト本体の先部から離れる方向へのロック部材の移動を不能とする上で有利となる。
また、ロック部材の中心孔の内周部に、雄型歯部に滑動可能に接触に中心孔の軸心をロックボルト本体の基部の中心軸に合致させるガイド面を設けると、雄型歯部と係止部の形状や寸法によって雄型歯部上でロック部材ががたつく場合であっても、雄型歯部上でのロック部材のがたつきを防止し、ロック部材の移動をより円滑に行なう上で有利となる。
このようなガイド面は、中心孔の周方向で係止部と位相をずらした中心孔の内周部の箇所でもよく、あるいは、中心孔の軸心方向で係止部と位相をずらした中心孔の内周部の箇所でもよく、何れの場合も、雄型歯部上でのロック部材のがたつきを防止し、ロック部材の移動をより円滑に行なう上で有利となる。
また、ロックボルト本体に異形鉄筋を用いた場合には、リブを削り取ることで簡単に基部を形成でき、雄型歯部を簡単に形成する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ロックボルト本体の説明図で、(A)はロックボルト本体の平面図、(B)は基部の拡大断面図である。
図2】ロック部材の説明図で、(A)はロック部材の正面図、(B)は断面側面図である。
図3】(A)は係止部が雄型歯部を乗り越えロック部材がベアリングプレートに向かって移動する説明図、(B)はロック部材がベアリングプレートに押し当てられ、係止部が雄型歯部に係止し、ロック部材の移動が阻止された状態の説明図である。
図4】第2の実施の形態のロック部材の断面側面図である。
図5】(A)は第3の実施の形態のロック部材の正面図、(B)は同断面側面図である。
図6】第3の実施の形態のロック部材の説明図で、(A)は係止部が雄型歯部を乗り越えているロック部材の断面側面図、(B)はガイド面が雄型歯部に接触しているロック部材の断面側面図である。
図7】(A)は第4の実施の形態のロック部材の正面図、(B)は同断面側面図である。
図8】第4の実施の形態の説明図で、係止部が雄型歯部を乗り越え、ガイド面が雄型歯部に接触しているロック部材の断面側面図である。
図9】本実施の形態のロックボルトを用いた支保工の説明図である。
図10】従来工法の説明図で(A)は支保工の説明図、(B)は覆工コンクリートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、従来の箇所、部材に同一の符号を付し、その説明を省略する。
図9に示すように、ワンタッチ固定式ロックボルト10は、コンクリートC1の上から地山内面50に削孔された孔12に挿入されるロックボルト本体14と、コンクリートC1からトンネル内に突出するロックボルト本体14の基部1402に結合されるロック部材16とを備えている。
なお、ロックボルト本体14の長手方向の一方の端部を先部1401と呼び、他方の端部を基部1402と呼ぶ。
ロックボルト本体14は鋼材製で、ロックボルト本体14には異形鉄筋や丸棒鉄筋が用いられ、本実施の形態では異径鉄筋が用いられている。
【0009】
図1に示すように、ロックボルト本体14の基部1402は、異径鉄筋のリブが削り取られた均一外径の円形断面で形成され、この基部1402に雄型歯部18が設けられている。
雄型歯部18は、基部1402の半径方向外方にV字状に突出しつつ基部1402の周方向全周に延在して設けられ、この雄型歯部18は基部1402の長手方向に並べられて複数設けられている。
【0010】
図2に示すように、ロック部材16は、金属製または合成樹脂製である。本実施の形態では合成樹脂製で中空状を呈している。
ロック部材16は、ロックボルト本体14の基部1402が挿通される中心孔1601を有している。
ロック部材16の中心孔1601の内周部に、複数の雄型歯部18上で基部1402の長手方向に沿ってロックボルト本体14の先部1401に向かう方向へのロック部材16の移動を許容し、かつ、ロックボルト本体14の先部1401から離れる方向への移動を不能とする弾性変形可能な係止部20が設けられている。
【0011】
詳細に説明すると、ロック部材16の内周面1602は、雄型歯部18の外径よりも若干大きな寸法の内径で形成され、係止部20はこの内周面1602から突設されている。
係止部20は、内周面1602の周方向に間隔をおいた複数箇所に互いに切り離された状態で設けられている。
本実施の形態では、係止部20は内周面1602の周方向に90度の間隔で4つ設けられ、それぞれ円筒状の弾性変形可能な片体で形成され、係止部20の先端は、雄型歯部18に確実に係止されるように雄型歯部18に係合可能な円弧状を呈している。
各係止部20は、基部1402がロック部材16の中心孔1601に挿通された状態で、内周面1602からその半径方向内方に離れるにつれてロックボルト本体14の先部1401から離れる方向に向かって変位する傾斜を有している。
したがって、基部1402が前記ロック部材16の中心孔1601に挿通され、ロック部材16をロックボルト本体14の先部1401方向に移動させると、図3(A)に示すように、複数の係止部20が内周面1602に近づく方向に弾性変形して複数の雄型歯部18を乗り越え、ロックボルト本体14の先部1401方向へのロック部材16の移動を許容する。
また、ロック部材16をロックボルト本体14の先部1401から離れる方向に移動させようとすると、図3(B)に示すように、複数の係止部20が雄型歯部18に係止し、ロックボルト本体14の先部1401から離れる方向へのロック部材16の移動を不能とする。
【0012】
次に、本実施の形態のワンタッチ固定式ロックボルト10を用いたトンネル工事について説明する。
図9に示すように、地山が掘削されることで形成された地山内面50にコンクリートC1が吹き付けられる。
次に、トンネルの周方向および長手方向に間隔をおいた複数箇所において、コンクリートC1の上から地山に孔12が削孔され、各孔12にモルタルなどの定着材が注入される。
次に、コンクリートC1の上から各孔12にロックボルト本体14が挿入される。
ロックボルト本体14が挿入されたならば、ロックボルト本体14の基部1402をベアリングプレート56の中心孔5602に挿通させ、ベアリングプレート56をロックボルト本体14の基部1402に配置する。
【0013】
次に、図3(A)に示すように、各係止部20の先端がロックボルト本体14の先部1401から離れる方向に向くようにしてロックボルト本体14の基部1402をロック部材16の中心孔1601に挿通させ、ロック部材16をロックボルト本体14の先部1401に向けて基部1402上を移動させる。
この場合、複数の係止部20は、内周面1602に近づく方向に弾性変形して複数の雄型歯部18を乗り越え、ロック部材16のロックボルト本体14の先部1401方向への移動が支障なく行なわれる。
ロック部材16がベアリングプレート56に至ったならば、ロック部材16の平坦な環状の端面によりベアリングプレート56をコンクリートC1の表面に押し付け、作業員はロック部材16から手を離す。
この状態で、ロック部材16がロックボルト本体14の先部1401から離れる方向に移動しようとしても、図3(B)に示すように、複数の係止部20が雄型歯部18に係止するため、ロックボルト本体14の先部1401から離れる方向へのロック部材16の移動は阻止され、ベアリングプレート56がコンクリートC1の表面に押し付けられた状態が保持される。
このようなロックボルト本体14の基部1402をロック部材16に挿通させ、ロック部材16をコンクリートC1に向けて基部1402上で移動させる作業が、各ロックボルト本体14毎に行なわれ、ワンタッチ固定式ロックボルト10の設置作業が終了する。
【0014】
したがって、本実施の形態のワンタッチ固定式ロックボルト10によれば、単にロック部材16を基部1402上でロックボルト本体14の先部1401に向けて移動させ、ロック部材16から手を離すといったワンタッチ作業で済むため、従来のロックボルト54の基部の雄ねじにナット58を螺合し、ナット58を回転していく手間取る作業に比べて短時間でベアリングプレート56をコンクリートC1の表面に押し付ける作業を行なえ、ロックボルトの設置作業の効率化を図る上で有利となる。
また、本実施の形態のワンタッチ固定式ロックボルト10によれば、ロックボルトの設置作業を短時間で行なうことができることから、コンクリートC1が吹き付けられた岩盤付近に短時間いれば足り、危険性を減少する上で有利となる。
また、短時間で地山を支保できるため、地山を早期に安定させる上で有利となる。
特に、トンネル断面が大きく、トンネルの長さが大きくなり、ロックボルトの本数が数千、数万本の単位となった場合でも、ロックボルトの設置作業に要する時間を大幅に短縮でき、トンネル工事の施工期間を短縮化し、コストダウンを図る上で有利となる。
【0015】
また、本実施の形態では、係止部20を切り離された状態で複数設けているので、ロック部材16のコンクリートC1の表面から離れる方向への移動を確実に阻止する上で有利となり、また、係止部20は弾性変形し易くなり、コンクリートC1の表面に向かう方向へのロック部材16の移動をより円滑に行なう上で有利となる。
また、係止部20を傾斜を持たせて形成しているので、ロックボルト本体14の先部1401に向かう方向へのロック部材16の移動をより円滑に行なう上で有利となり、同時に、先部1401から離れる方向へのロック部材16の移動を簡単に不能とする上で有利となる。
また、係止部20の先端は、雄型歯部18に係合可能な円弧状を呈しているので、係止部20を雄型歯部18に確実に係止させる上で有利となり、ロックボルト本体14の先部1401から離れる方向へのロック部材16の移動を不能とする上で有利となる。
また、ロックボルト本体14に異形鉄筋を用いた場合には、リブを削り取ることで簡単に基部1402を形成でき、雄型歯部18を簡単に形成する上で有利となる。
【0016】
(第2の実施の形態)
次に、図4を参照して第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付してその説明を省略し、異なった箇所を重点的に説明する。
第1の実施の形態では、雄型歯部18と係止部20の形状や寸法によっては、雄型歯部18上でロック部材16ががたつくことが考えられる。
そこで、係止部20を中心孔1601の軸心方向に間隔をおいて複数設けたものである。
第2の実施の形態では、中心孔1601の軸心方向に間隔をおいた2箇所において、それぞれ90度の間隔で係止部20を4つ設けている。
【0017】
このような第2の実施の形態によれば、雄型歯部18と係止部20の形状や寸法の如何に拘らず、雄型歯部18上でのロック部材16のがたつきを防止でき、コンクリートC1の表面に向かう方向へのロック部材16の移動をより円滑に行なう上で有利となる。
なお、本実施の形態では、4つの係止部20が設けられた2箇所において、中心孔1601の軸心方向から見て、2箇所における4つの係止部20の位相を同一とした場合について説明したが、一方の箇所の4つの係止部20と他方の箇所の4つの係止部との中心孔1601の周方向の位相を異ならせるなど任意であり、また、係止部20を中心孔1601の内周面1602上に千鳥状に配置するなども任意である。
【0018】
(第3の実施の形態)
次に、図5図6を参照して第3の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態では、雄型歯部18上でのロック部材16のがたつきを防止するため、係止部20を中心孔1601の軸心方向の異なる箇所に複数設けたが、第3の実施の形態では、係止部20を増やさずに、中心孔1601の内周部に、雄型歯部18に滑動可能に接触に中心孔1601の軸心をロックボルト本体14の基部1402の中心軸に合致させるガイド面30Aを設けたものである。
詳細に説明すると、ロック部材16の中心孔1601の周方向で複数の係止部20と位相をずらした内周面1602の複数箇所に、内周面1602の半径方向内側に突出しつつ中心孔1601の軸心方向に延在する凸条32が設けられている。
凸条32は、中心孔1601の全長にわたって延在し、ガイド面30Aは、各凸条32の頂部に、雄型歯部18に滑動可能に接触する円筒面で形成され、このガイド面30Aも中心孔1601の全長にわたって延在している。
【0019】
したがって、ガイド面30Aは、ロック部材16の中心孔1601の周方向で係止部20と位相をずらした箇所に設けられているので、ガイド面30Aは係止部20の動きに干渉することがない。
すなわち、ロック部材16をロックボルト本体14の先部1401方向に移動させると、図6(A)に示すように、複数の係止部20が内周面1602に近づく方向に弾性変形して複数の雄型歯部18を乗り越え、ロックボルト本体14の先部1401方向へのロック部材16の移動を許容し、また、ロック部材16をロックボルト本体14の先部1401から離れる方向に移動させようとすると、図3(B)に示すように、複数の係止部20が雄型歯部18に係止し、ロックボルト本体14の先部1401から離れる方向へのロック部材16の移動を不能とする。
また、図6(B)に示すように、ロックボルト本体14の基部1402がロック部材16の中心孔1601に挿通さると、各ガイド面30Aが雄型歯部18に滑動可能に接触し、中心孔1601の軸心を基部1402の中心軸に合致させる。
したがって、このような第3の実施の形態によっても、第2の実施の形態と同様に、雄型歯部18と係止部20の形状や寸法の如何に拘らず、雄型歯部18上でのロック部材16のがたつきを防止でき、コンクリートC1の表面に向かう方向へのロック部材16の移動をより円滑に行なう上で有利となる。
【0020】
(第4の実施の形態)
次に、図7図8を参照して第4の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態が、ガイド面30Aをロック部材16の中心孔1601の周方向で複数の係止部20と位相をずらした箇所に設けていたのに対して、第4の実施の形態では、図7に示すように、ガイド面30Bを中心孔1601の軸心方向で係止部20と位相をずらした箇所に設けた点が異なっている。
詳細に説明すると、ロック部材16の中心孔1601の軸心方向で複数の係止部20と位相をずらした内周面1602の箇所に、内周面1602よりも内径が小さい小径部34が中心孔1601の軸心方向に延在して設けられ、ガイド面30Bはこの小径部34の内周面で形成されている。
ガイド面30Bは、中心孔1601の周方向の全周に延在し、中心孔1601の軸心方向に所定の長さで延在する円筒面で形成されている。
ガイド面30Bは、雄型歯部18に滑動可能に接触に中心孔1601の軸心を基部1402の中心軸に合致させるように形成されている。
【0021】
したがって、ガイド面30Bは、ロック部材16の中心孔1601の軸心方向で係止部20と位相をずらした箇所に設けられているので、ガイド面30Bは係止部20の動きに干渉することがない。
すなわち、ロック部材16をロックボルト本体14の先部1401方向に移動させると、図8に示すように、複数の係止部20が内周面1602に近づく方向に弾性変形して複数の雄型歯部18を乗り越え、ロックボルト本体14の先部1401方向へのロック部材16の移動を許容し、また、ロック部材16をロックボルト本体14の先部1401から離れる方向に移動させようとすると、図3(B)に示すように、複数の係止部20が雄型歯部18に係止し、ロックボルト本体14の先部1401から離れる方向へのロック部材16の移動を不能とする。
また、図8に示すように、ロックボルト本体14の基部1402がロック部材16の中心孔1601に挿通さると、ガイド面30Bが雄型歯部18に滑動可能に接触し、中心孔1601の軸心を基部1402の中心軸に合致させる。
したがって、このような第4の実施の形態によっても、第3の実施の形態と同様に、雄型歯部18と係止部20の形状や寸法の如何に拘らず、雄型歯部18上でのロック部材16のがたつきを防止でき、コンクリートC1の表面に向かう方向へのロック部材16の移動をより円滑に行なう上で有利となる。
【0022】
なお、本実施の形態では、ワンタッチ固定式ロックボルト10がトンネル工事に用いられる場合について説明したが、ワンタッチ固定式ロックボルト10の用途はトンネル工事に限定されず、従来公知の様々な用途に適用される。
【符号の説明】
【0023】
10 ワンタッチ固定式ロックボルト
12、52 孔
14 ロックボルト本体
1401 ロックボルト本体の先部
1402 ロックボルト本体の基部
16 ロック部材
1601 中心孔
1602 内周面
18 雄型歯部
20 係止部
30A、30B ガイド面
32 凸条
34 小径部
C1、C2 コンクリート
50 地山内面
52 孔
54 ロックボルト
56 ベアリングプレート
5602 中心孔
58 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10