(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】コンデンサのバスバー構造
(51)【国際特許分類】
H01G 4/228 20060101AFI20231013BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20231013BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01G4/228 Q
H01G2/10 K
H01G4/32 531
H01G4/32 540
(21)【出願番号】P 2020052977
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】森 隆志
(72)【発明者】
【氏名】村上 耕之
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-251400(JP,A)
【文献】特開2010-225970(JP,A)
【文献】特開2008-288242(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027462(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0149472(US,A1)
【文献】特開2017-195285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/228
H01G 2/10
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向両端に異極一対の電極を有するコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子の前記各電極に接続される基端部を延出して前記コンデンサ素子の側面に沿って配設される側面板部、前記側面板部から立ち上げ状態で延出される対向板部、および前記対向板部から延出される外部接続端子部をそれぞれ有する板状の第1および第2のバスバーと、
前記両バスバーにおける一対の対向板部どうしが互いに近接して対向する状態で、両対向板部どうし間に介在される絶縁体と、
前記コンデンサ素子の全体と前記一対のバスバーにおける基端部および側面板部を覆うモールド樹脂とを有するコンデンサのバスバー構造であって、
前記絶縁体は、前記一対のバスバーのうち一方のバスバーに対してのみ一体化されていて、その一体化は、前記一方のバスバーにおける対向板部をインサート部品として前記絶縁体のもとになる樹脂材料を充填するインサート成形で構成され、
前記インサート成形の樹脂材料が、前記一方の対向板部の他方のバスバーの対向板部に面していない表面側から裏面側に回り込む状態で、前記一方の対向板部を全体的に包み込むように囲繞し、
前記一方の対向板部から延出される前記外部接続端子部は前記絶縁体の端部から上方に突出し、
前記一対のバスバーのうち他方のバスバーにおける対向板部は一方のバスバーに面する対向面が前記絶縁体の前記裏面側に当接していることを特徴とするコンデンサのバスバー構造。
【請求項2】
前記絶縁体は、前記一方の対向板部の裏面側に位置して前記他方の対向板部との間に介在された絶縁実効部分と、前記一方の対向板部の表面側に位置する補強部分と、前記絶縁実効部分と前記補強部分とを一体的につなぐ繋ぎ部分とから構成され、
前記絶縁体において前記絶縁実効部分、補強部分および繋ぎ部分の前記コンデンサ素子に近い下端近傍領域は、前記モールド樹脂の内部に埋入されていることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサのバスバー構造。
【請求項3】
前記繋ぎ部分は、前記一方の対向板部の上側方のエッジ部、左右両側方のエッジ部および前記一方の対向板部から側面板部に連続する屈曲部を覆っている請求項2に記載のコンデンサのバスバー構造。
【請求項4】
前記繋ぎ部分は、その底面が前記コンデンサ素子の上側面に当接して支持されている請求項2または請求項3に記載のコンデンサのバスバー構造。
【請求項5】
前記繋ぎ部分は、前記他方のバスバーにおける側面板部の下面を支持する水平支持部を有している請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載のコンデンサのバスバー構造。
【請求項6】
前記繋ぎ部分は、前記他方の対向板部の相対変位を規制する係止部を有している請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載のコンデンサのバスバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ素子と、基端部でコンデンサ素子に接続される板状の第1および第2のバスバーと、これら両バスバー間に介在される絶縁体と、前記コンデンサ素子の全体と前記基端部を含む前記一対のバスバーの一部を覆うモールド樹脂とを有し、両バスバーが対向配置される一対の対向板部どうし間に前記絶縁体が介在されたコンデンサのバスバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
P極(陽極)とN極(陰極)の一対のバスバーは導電性金属の薄板からなるもので、低インダクタンス化および小型化の観点から近時では一対のバスバーの対向板部どうしが近接して配置される傾向にある。両対向板部の遊端側のP極・N極一対の外部接続端子部は外部の電気機器からのケーブル接続端子に対して機械的かつ電気的に接合されるが、これら対向板部どうしは確実に絶縁されていなければならない。そこで、一対の対向板部どうし間に絶縁部材を挟み込んでいるが、絶縁破壊を防止する観点から沿面距離を充分に確保しておく必要性がある。
【0003】
しかし、ケーブル接続端子に接合される外部接続端子部はバスバーのモールド樹脂への埋め込み基部の位置からかなり離れており、接合作業などに際して外力が作用したときに受けるモーメントが大きい。しかも、バスバーは相当に薄い板状体である。
【0004】
そのため、導電性金属の薄板からなるバスバーは、板面に垂直な方向で反り、曲がりなどの変形を受けやすい。
【0005】
従来、一対のバスバーおよび絶縁板との間の位置精度を確保するために、絶縁板の表裏両面に設けた凸部(突起部)を一対の対向板部の穴部の各々に差し込んで、これら3部品を位置決めする技術が知られている。
【0006】
絶縁部材として絶縁紙や絶縁シートを用いたものがある(特許文献1、2参照)。これら特許文献1、2には、一対のバスバーのうちいずれか一方の極性を担うバスバーに絶縁紙を巻き付けたバスバー間の絶縁構造が開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-288242号公報(特許第4946618号)
【文献】特開2010-225970号公報(特許第5239989号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、絶縁紙や絶縁シートはごく薄くて柔らかく形が変わりやすいものであるため、取り扱いが非常に難しい。絶縁紙(絶縁シート)を対向板部の外周に沿わせて貼り付ける作業は作業員の手の指先作業によるが、所定の相対位置関係で貼り付けることは相当に難しいものである。貼り付け作業においては、絶縁紙(絶縁シート)に皺が寄ったり、たるみが出たり、波打ちしたり、歪みが生じたり、平行性が狂ったり、所定のポイントからずれたりと、取り扱いに難渋することがしばしばである。
【0009】
その結果、相対位置精度や寸法精度が悪いと、一対の対向板部間に所定の沿面距離が確保できず、絶縁破壊の恐れを招いたり、所望の低インダクタンスを得られなくなったりする。
【0010】
高い位置精度、寸法精度を確保するには、熟練者による慎重な作業が要求されるが、それには作業効率や生産コスト上の問題が生じる。
【0011】
加えて、絶縁紙(絶縁シート)は薄く柔らかくて保形性に劣り、一対の対向板部からなる近接部の耐応力強度の増強にはほとんど寄与しない。そのため、経年的な継続使用によって近接部に変形・劣化が発生し、コンデンサの故障を招く恐れもある。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、低インダクタンス化の要件として、対向板部と絶縁体との相対位置関係、位置精度、寸法精度を高精度化して近接部の耐応力強度を向上し、併せて、生産性の向上と生産コストの低減とを図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0014】
本発明によるコンデンサのバスバー構造は、
軸方向両端に異極一対の電極を有するコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子の前記各電極に接続される基端部を延出して前記コンデンサ素子の上側面に沿って配設される側面板部、前記側面板部から立ち上げ状態で延出される対向板部、および前記対向板部から延出される外部接続端子部をそれぞれ有する板状の第1および第2のバスバーと、
前記両バスバーにおける一対の対向板部どうしが互いに近接して対向する状態で、両対向板部どうし間に介在される絶縁体と、
前記コンデンサ素子の全体と前記一対のバスバーにおける基端部および側面板部を覆うモールド樹脂とを有するコンデンサのバスバー構造であって、
前記絶縁体は、前記一対のバスバーのうち一方のバスバーに対してのみ一体化されていて、その一体化は、前記一方のバスバーにおける対向板部をインサート部品として前記絶縁体のもとになる樹脂材料を充填するインサート成形で構成され、
前記インサート成形の樹脂材料が、前記一方の対向板部の他方のバスバーの対向板部に面していない表面側から裏面側に回り込む状態で、前記一方の対向板部を全体的に包み込むように囲繞し、
前記一方の対向板部から延出される前記外部接続端子部は前記絶縁体の端部から上方に突出し、
前記一対のバスバーのうち他方のバスバーにおける対向板部は一方の対向板部に面する対向面が前記絶縁体の前記裏面側に当接していることを特徴とする。
【0015】
本発明の上記の構成によれば、次のような作用が発揮される。
【0016】
モールド樹脂からなる絶縁体は絶縁紙や絶縁シートに比べて充分強い硬さを有し、良好な保形性があって変形しにくいものである。絶縁体を一方のバスバーにおける対向板部に一体化するのに、人手作業による必要はなく、インサート成形によって実現するものであるので、対向板部と絶縁体との相対位置関係、位置精度、寸法精度は所期通りの正確なものとなる。
【0017】
絶縁体に他方の対向板部の一方の対向板部に面する対向面を当接させる構成は、エレメントの組み付けの際にその当接の前段階で、絶縁体に絶縁不良の原因となる充填樹脂のボイドや欠損が存在していないか、チェックを容易に行える。
【0018】
そして、樹脂材料を起源とする絶縁体は保形性が高いので、その絶縁体と一方の対向板部とが一体となったエレメントについて取り扱い性がすぐれたものになる。また、インサート成形によって作製することができるので、作業員の指先作業に比べて生産性が非常にすぐれ、生産コストの抑制に有利である。もちろん、絶縁紙(絶縁シート)の場合のような皺、たるみ、波打ち、歪み、ずれなどの支障については、これを生じさせないですむ。
【0019】
上記構成の本発明のコンデンサのバスバー構造には、次のようないくつかの好ましい態様ないし変化・変形の態様がある。
【0020】
〔1〕前記絶縁体は、前記一方の対向板部の裏面側に位置して前記他方の対向板部との間に介在された絶縁実効部分と、前記一方の対向板部の表面側に位置する補強部分と、前記絶縁実効部分と前記補強部分とを一体的につなぐ繋ぎ部分とから構成され、
前記絶縁体において前記絶縁実効部分、補強部分および繋ぎ部分の下端近傍領域は、前記モールド樹脂の内部に埋入されていること。
【0021】
この構成によれば、一方の対向板部の裏面側にくる絶縁実効部分に対して対向板部の表面側の補強部分が繋ぎ部分を介して一連一体につながっており、しかも、繋ぎ部分の一部は絶縁実効部分と補強部分とをつないでいる。加えて、一対のバスバーにおける基端部および側面板部を覆うモールド樹脂に対して、絶縁実効部分、補強部分および繋ぎ部分の下端近傍領域を埋入させている。したがって、両対向板部どうしの位置決めのみならず各対向板部と絶縁体との位置決めをも所期通り高精度に実現でき、しかも両対向板部の根元部に対する取り付けの固定強度を充分高いものにすることができる。その結果として、近接部の耐応力強度を向上させ、経年的な継続使用によっても近接部の変形・劣化ひいてはコンデンサの故障を防止する上で大いに有効性が発揮される。
【0022】
〔2〕前記繋ぎ部分は、前記一方の対向板部の上側方のエッジ部、左右両側方のエッジ部および前記一方の対向板部から側面板部に連続する屈曲部を覆っていること。これによれば、絶縁実効部分、補強部分および繋ぎ部分からなる絶縁体の全体的な強度を充分に高いものにすることができる。
【0023】
〔3〕前記繋ぎ部分は、その底面が前記コンデンサ素子の上側面に当接して支持されていること。これによれば、絶縁体における繋ぎ部分をコンデンサ素子の上側面に支持させることにより、両対向板部の姿勢安定性をより確実なものにすることができる。
【0024】
〔4〕前記繋ぎ部分は、前記他方のバスバーにおける側面板部の下面を支持する水平支持部を有していること。これによれば、他方のバスバーの姿勢安定性についても、より確実なものにすることができる。
【0025】
〔5〕前記繋ぎ部分は、前記他方の対向板部の相対変位を規制する係止部を有していること。この場合も、他方のバスバーの姿勢安定性をより確実なものにすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、低インダクタンス化にとって重要な要件として、絶縁体における欠損(ボイドなど)のチェックを容易化するとともに、対向板部と絶縁体との相対位置関係、位置精度、寸法精度について信頼性を向上し、近接部の耐応力強度を向上し、併せて、生産性の向上と生産コストの低減とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施例におけるコンデンサの主要部の構成を示す斜視図
【
図2】本発明の実施例におけるコンデンサ素子と第2のバスバーを示す斜視図
【
図3】本発明の実施例における絶縁体付きの第1のバスバーの側面視断面図
【
図4】本発明の実施例における絶縁体付きの第1のバスバーの正面視断面図(a)と第2のバスバーの正面視断面図(b)
【
図5】本発明の実施例におけるアセンブリ(部品集合体)の側面視断面図
【
図6】本発明の実施例におけるコンデンサの側面視断面図
【
図7】本発明の別の実施例におけるコンデンサの側面視断面図
【
図8】本発明のさらに別の実施例における第2の対向板部と絶縁体付きの第1の対向板部とを示す要部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、上記構成の本発明のコンデンサのバスバー構造につき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
【0029】
図1~
図6において、1はコンデンサ素子、1a,1bはコンデンサ素子1における異極一対の電極、2は第1のバスバー、3は第2のバスバー、2b,3bは両バスバー2,3における側面板部、2a,3aは接続用小突片、2c,3cは対向板部、2d,3dは外部接続端子部、4は絶縁体、4aは絶縁体4における絶縁実効部分、4bは補強部分、4cは繋ぎ部分、5はモールド樹脂、6は外装ケースである。
【0030】
金属化フィルムを主要素とするコンデンサ素子1は、その軸方向両端に異極一対の電極1a,1bを有している。コンデンサ素子1には薄い板状の導電体で構成された第1および第2の両バスバー2,3が電気的かつ機械的に接続されている。第1のバスバー2は接続用小突片2a、側面板部2b、対向板部2cおよび外部接続端子部2dを有している。第2のバスバー3は接続用小突片3a、側面板部3b、対向板部3cおよび外部接続端子部3dを有している。第1および第2の両バスバー2,3において、それぞれの側面板部2b,3bはコンデンサ素子1の上側面1cに沿って配設される部分である。側面板部2b,3bはコンデンサ素子1の上側面1cに平行(水平方向)に延設されることが好ましい。側面板部2b,3bの始端側のエッジ部から鉛直方向下向きに折り曲げられて延出された接続用小突片2a,3aがコンデンサ素子1の異極一対の各電極1a,1bにハンダ付けにより接続されている。両バスバー2,3において、側面板部2b,3bから鉛直方向上向きに折り曲げた立ち上げ状態でそれぞれ対向板部2c,3cが延出され、さらに対向板部2c,3cそれぞれの上側方のエッジ部2c1 ,3c1 から外部接続端子部2d,3dが上方に延出されている。第1のバスバー2と第2のバスバー3とは、外部接続端子部2d,3dの位置を除いて対称的な形状を呈している。
【0031】
互いに接近する状態でコンデンサ素子1の上側面1cに沿って配設された側面板部2b,3bは、コンデンサ素子1の軸方向中央箇所から上方に向けて折れ曲がり一対の対向板部2c,3cを形成している。両対向板部2c,3cは互いに近接して平行な姿勢で対向している。そして、両対向板部2c,3cどうし間の隙間に絶縁体4における絶縁実効部分4aが介在している。
【0032】
絶縁体4は、その絶縁実効部分4aのほかに補強部分4bと繋ぎ部分4cとを一連一体の状態で備えており、これら3つの部分の協働によって第1のバスバー2(第1の対向板部2cの部分)に対して絶縁体4が一体化されている。
【0033】
第1のバスバー2に対する絶縁体4の一体化は次のようにして行われる。すなわち、第1のバスバー2における対向板部2cをインサート部品として絶縁体4のもとになる樹脂材料を充填してインサート成形を行う。これによって絶縁体4が構成されるが、具体的には次のとおりである。
【0034】
射出成形装置の金型のキャビティ内に第1のバスバー2における対向板部2cをセットし、型締めしたのちにキャビティ内に樹脂材料を注入充填し、インサート部品である対向板部2cの周りを樹脂材料で囲繞する。樹脂材料は対向板部2cの表面側(第2のバスバー3における対向板部3cに対向しない面)から裏面側に回り込み、かつ、その対向板部2cに連なる側面板部2bの上面側から下面側に回り込む状態で、対向板部2cを全体的に包み込む。
【0035】
このようなインサート成形によって作製される樹脂材料からなる絶縁体4は、第1の対向板部2cの裏面側に位置して第2の対向板部3cとの間に介在されるべき絶縁実効部分4aと、第1の対向板部2cの表面側に位置する補強部分4bと、絶縁実効部分4aと補強部分4bとを一体的につなぐ繋ぎ部分4cとから構成されることになる。繋ぎ部分4cは第1の対向板部2cのエッジ部の全周を巡るものとなる。
【0036】
絶縁体4における絶縁実効部分4aは対向板部2cの裏面に密着し、補強部分4bは対向板部2cの表面に密着し、絶縁実効部分4aと補強部分4bとをつなぐ繋ぎ部分4cは対向板部2cの上側方のエッジ部2c1 、左右両側方のエッジ部2c2 ,2c3 および対向板部2cから側面板部2bに連続する部分の屈曲部2eを覆っている。
【0037】
このように第1のバスバー2における対向板部2cにおいて、外部接続端子部2dの基部側部分および側面板部2bとの連接一部分を含めて対向板部2cのほぼ全体を、絶縁実効部分4a、補強部分4bおよび繋ぎ部分4cからなる絶縁体4によって囲み込んでいる。このようなインサート成形において充填樹脂が硬化したのちの絶縁体4は、従来例の場合の絶縁紙や絶縁シートと比べて比較にならないぐらい高い強度、保形性を充分に有している。絶縁体4は強い結合力で対向板部2cの全外周面に密着し、強力な接合力で一体化している。
【0038】
なお、第1の対向板部2cの上側方のエッジ部2c1 から延出される外部接続端子部2dは絶縁体4の上側面4dから上方に突出している。
【0039】
一対のバスバー2,3のうち第2のバスバー3における対向板部3cはその側面(板面)が絶縁体4の絶縁実効部分4aの側面(板面)に当接している。
【0040】
第1のバスバー2に絶縁体4が上記のように一体化されたエレメントと絶縁体を付設していない第2のバスバー3とコンデンサ素子1とを組み付ける際に、絶縁体4付きの第1のバスバー2の側面板部2bをコンデンサ素子1の上側面1cに載置し、接続用小突片2aをコンデンサ素子1の電極1aにはんだ付けする。次いで、第2のバスバー3の側面板部2bをコンデンサ素子1の上側面1cに載置しながら、その対向板部3cの対向面(板面)を第1の対向板部2cと一体の絶縁実効部分4aの対向面(板面)に密着させる。この密着作業に際しては、絶縁実効部分4aに絶縁不良の原因となる充填樹脂のボイドや欠損が存在していないか、容易にチェックすることができる。そして、接続用小突片3aをコンデンサ素子1の電極1bにはんだ付けする。
【0041】
次いで、絶縁体4付きの第1のバスバー2と第2のバスバー3とコンデンサ素子1との3つのエレメントが組付けられたアセンブリ(部品集合体)を外装ケース6の内部に収容し、モールド樹脂5によってモールド成形する。この場合に、モールド樹脂5はコンデンサ素子1の全体、両バスバー2,3における接続用小突片2a,3aおよび側面板部2b,3bの全体を被覆する状態とする。第1のバスバー2に一体化された絶縁体4について、側面板部2bの上面側から下面側に回り込む部分であって絶縁実効部分4a、補強部分4bおよび繋ぎ部分4cのコンデンサ素子1に近い下端近傍領域はモールド樹脂5の内部に埋入される。
【0042】
上記のように構成されたコンデンサのバスバー構造においては、絶縁実効部分4a、補強部分4bおよび繋ぎ部分4cの相互に一連一体化された3要素からなっていて立体構造を有している絶縁体4は、第1のバスバー2における対向板部2cの外周面に対して、全周にわたって密着包囲している。繋ぎ部分4cは、第1の対向板部2cの上側方のエッジ部2c1 、左右両側方のエッジ部2c2 ,2c3 および第1の対向板部2cから側面板部2bに連続する部分の屈曲部2eを覆っている。繋ぎ部分4cの一部は側面板部2bの上面側から下面側に回り込む状態で絶縁実効部分4aと補強部分4bとをつないでおり、絶縁体4の全体的な強度を充分に高いものにしている。
【0043】
繋ぎ部分4cは、その底面がコンデンサ素子1の上側面1cに当接して支持されていて、両対向板部2c,3cの姿勢安定性をより確実なものにしている。
【0044】
加えて、絶縁実効部分4a、補強部分4bおよび繋ぎ部分4cのコンデンサ素子1に近い下端近傍領域は、一対のバスバー2,3における側面板部2b,3bを覆うモールド樹脂5に埋入している。
【0045】
これらの構造の相乗の結果、両対向板部2c,3cどうしの位置決めのみならず各対向板部2c,3cと絶縁体4との位置決めをも所期通り高精度に実現することができる。併せて、コンデンサ素子1の全体を覆うモールド樹脂5に対して両対向板部2c,3cの根元部の取り付けの固定強度を充分高いものにすることができる。ひいては、外部接続端子部2d,3dおよび対向板部2c,3cからなる近接部の耐応力強度を向上させ、経年的な継続使用によっても近接部の変形・劣化ひいてはコンデンサの故障が有効的に防止される。
【0046】
エレメントの組み付け作業において、絶縁体4はモールド樹脂の硬化物からなるものであって従来例の場合の絶縁紙や絶縁シートに比べて充分強い硬さ、良好な保形性を有し、皺、たるみ、波打ち、歪み、ずれなどはその発生が防止される。立体構造を呈する絶縁体4を第1のバスバー2における対向板部2cに一体化するには、インサート成形によればよいのであって、従来例のように人手作業による必要はない。したがって、対向板部2cと絶縁体4との相対位置関係、位置精度、寸法精度は所期通りの正確なものとなる。また、生産性が非常にすぐれ、生産コストの抑制に有利である。
【0047】
図7に示す別の実施例においては、絶縁体4における繋ぎ部分4cに、第2のバスバー3における側面板部3bの下面の全面を支持する側面支持部4eを連接しており、第2のバスバー3の姿勢安定性についても、より確実なものとなっている。
【0048】
図8に示すさらに別の実施例においては、絶縁体4における繋ぎ部分4cに、第2の対向板部3cの相対変位を規制する係止部4fを連接している。係止部4fは、第2のバスバー3における対向板部3cの左右のエッジ部3c
2 ,3c
3 を係合して、板面から離れる方向の変位を規制する一対のレール部4f
1 ,4f
1 で構成されている。この構成によれば、第2のバスバー3の姿勢安定性をより確実なものにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、コンデンサのバスバー構造に関し、低インダクタンス化の要件として、対向板部と絶縁体との相対位置関係、位置精度、寸法精度を高精度化して近接部の耐応力強度を向上し、併せて、生産性の向上と生産コストの低減とを図る技術として有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 コンデンサ素子
1a,1b 電極
1c コンデンサ素子の上側面
2 第1のバスバー
3 第2のバスバー
2a,3a 接続用小突片(基端部)
2b,3b 側面板部
2c,3c 対向板部
2c1 対向板部の上側方のエッジ部
2d,3d 外部接続端子部
2e 屈曲部
4 絶縁体
4a 絶縁実効部分
4b 補強部分
4c 繋ぎ部分
4d 上側面
4e 側面支持部
4f 係止部
5 モールド樹脂