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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20231013BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20231013BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B01D39/20 D ZAB
B01D46/00 302
F01N3/022 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020063566
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021159854
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 文哉
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-260530(JP,A)
【文献】特開2016-172223(JP,A)
【文献】特開2017-127803(JP,A)
【文献】特開2015-029937(JP,A)
【文献】特開2011-167641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
B01D 46/00-46/90
F01N 3/01- 3/038
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部と、前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部を封止するように配置された目封止部と、を備え、
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面において、複数の前記セルは、一の方向及び前記一の方向に直交する他の方向に沿って前記隔壁を挟んで格子状に配置されており、
複数の前記セルのうちの一の前記セルを第一セルとし、前記一の方向において前記第一セルと隣接配置された他の前記セルを第二セルとし、前記第一セルと前記第二セルとを区画する部位に配設された前記隔壁を第一隔壁部とした場合に、
前記第一セルの形状は、四角形の4つ辺のうちの少なくとも前記第二セルに対向する側の辺が前記第二セル側に向かって折れ曲がった変形四角形であり、
前記第二セルの形状は、四角形の4つ辺のうちの少なくとも前記第一セルに対向する側の辺が前記第一セル側に向かって折れ曲がった変形四角形であり、且つ、
前記第一セルの前記第二セル側に向かって折れ曲がった辺の一端を頂点A1とし、当該辺の他端を頂点A2とし、当該辺の折れ曲がった頂部を頂点A0とし、前記頂点A1と隣接する四角形における他の頂点を頂点A3とし、前記頂点A2と隣接する四角形における他の頂点を頂点A4とし、
前記第二セルの前記第一セル側に向かって折れ曲がった辺の一端を頂点B1とし、当該辺の他端を頂点B2とし、当該辺の折れ曲がった頂部を頂点B0とし、前記頂点B1と隣接する四角形における他の頂点を頂点B3とし、前記頂点B2と隣接する四角形における他の頂点を頂点B4とし、
前記頂点A1と前記頂点B1との距離をT[mm]とし、
前記頂点A1と前記頂点A2を結ぶ線分L1と、前記頂点B3と前記頂点B4を結ぶ線分L3との距離をP[mm]とし、
前記頂点B1と前記頂点B2を結ぶ線分L2と、前記頂点A3と前記頂点A4を結ぶ線分L4との距離をP[mm]とし、
前記頂点A0から前記線分L1に下ろした垂線の長さをX1[mm]とし、
前記頂点B0から前記線分L2に下ろした垂線の長さをX2[mm]とし、
前記線分L1の中点N1から、前記頂点A0から前記線分L1に下ろした垂線の足N2までの距離をY1[mm]とし、
前記線分L2の中点N3から、前記頂点B0から前記線分L2に下ろした垂線の足N4までの距離をY2[mm]とした場合に、
前記中点N1と前記中点N3とを結ぶ線分L0を挟んで、前記頂点A0と前記頂点B0とが相互に反対側の位置に存在し、
前記線分L1の長さと、前記距離P1から前記距離Tを減じた距離P1-Tの長さとが等しく、且つ、前記線分L2の長さと、前記距離P2から前記距離Tを減じた距離P2-Tの長さとが等しく、
下記式(1)~式(4)のそれぞれの関係を満たすように構成されている、ハニカムフィルタ。
式(1):T/3≦X1<T/2
式(2):T/3≦X2<T/2
式(3):(P1-T)/4≦Y1<3(P1-T)/8
式(4):(P2-T)/4≦Y2<3(P2-T)/8
【請求項2】
前記一の方向に沿って配置されたそれぞれの前記セルが、隣接配置された2つの前記セル相互間において、前記式(1)~式(4)のそれぞれの関係を満たすように構成されている、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記他の方向に沿って配置されたそれぞれの前記セルが、隣接配置された2つの前記セル相互間において、前記式(1)~式(4)のそれぞれの関係を満たすように構成されている、請求項2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記頂点A0と前記頂点B0とが、前記中点N1と前記中点N3とを結ぶ線分L0の中点N0を対称点とした点対称の位置に存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記距離Tが、0.15~0.35mmである、請求項1~4のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記距離P1及び前記距離P2が、1.35~2.10mmである、請求項1~5のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記距離P1と前記距離P2が等しい値である、請求項1~6のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。更に詳しくは、フィルタ内に一旦捕集されたススの剥離によるセル内の閉塞を有効に抑制することが可能なハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の各種内燃機関から排出される排ガスの中には、塵、スス、及びカーボン微粒子等の多くの粒子状物質(パティキュレートマター:Particulate Matter)が含まれている。このため、例えば、ディーゼルエンジンを動力源とするディーゼル車から排出される排ガスを浄化する浄化装置として、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)が用いられている。以下、粒子状物質を「PM」ということがある。また、ディーゼルパティキュレートフィルタを「DPF」ということがある。
【0003】
従来、DPFとしては、ハニカム構造体を用いたハニカムフィルタが知られている(特許文献1及び2参照)。ハニカム構造体は、コージェライトや炭化珪素などの多孔質セラミックスによって構成された隔壁を有し、この隔壁によって複数のセルが区画形成されたものである。ハニカムフィルタは、上述したハニカム構造体に対して、複数のセルの流入端面側の開口部と流出端面側の開口部とを交互に目封止するように目封止部を配設したものである。
【0004】
欧州における自動車排出ガス規制のEuro5以降、ディーゼル車は、その排出ガス規制をクリアするために後処理システムとして、キャタライズドスートフィルタ(CSF:Catalyzed Soot Filte)の搭載が主流となっている。CSFは、DPFに酸化触媒成分を付加して、フィルタ機能と同時に酸化機能も持たせたフィルタである。
【0005】
CSFは、フィルタ機能によって排ガス中のPMの除去しつつ、フィルタの内部に捕集されたスス等のPMを、酸化触媒成分の酸化機能によって燃焼させることができる。CSFの内部に堆積したPMを酸化触媒などによって燃焼させることを、「フィルタ再生」ということがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-164712号公報
【文献】特開2010-221189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CSFに使用される従来のハニカムフィルタは、その使用環境や保管環境、また、自動車の走行モードによって、ハニカムフィルタの隔壁表面に堆積したススがセル内に詰まってしまうことがある。上記したようにハニカムフィルタのセル内にススが詰まることを、以下「スス詰まり」ということがある。
【0008】
CSFに使用されるハニカムフィルタにおいて、スス詰まりが生じる原因の1つとして、自動車のエンジン停止後に、排ガスの後処理システム内で発生する凝縮水による影響が考えられている。例えば、CSFに使用される従来のハニカムフィルタは、フィルタ内部が凝縮水に浸った場合に、フィルタ内に捕集されたススが隔壁表面から剥がれ落ち、剥がれ落ちたススがセル内を閉塞することとなる。特に、一旦凝縮水によって湿気を帯びたススは固まりやすく、セル内を閉塞する障害物となりやすい。
【0009】
例えば、従来のハニカムフィルタにおいて、一旦隔壁表面にて捕集したススが隔壁表面から剥がれ落ち、そのススがセル内を閉塞する過程として、例えば、以下のような事象が挙げられている。ここで、図10は、隔壁表面にて捕集したススが剥がれ落ちてセル内を閉塞する過程を説明するための模式図である。なお、図10において(a)~(d)は、順次、セル内を閉塞する過程を示し、(a)~(d)の各図の左側は、セルの延びる方向に直交する断面を拡大した拡大断面図を示し、右側は、セルの延びる方向に平行な断面を拡大した拡大断面を示す。図10において、隔壁によって区画されたセルの断面形状は、四角形となっている。
【0010】
図10の(a)に示すように、ハニカムフィルタ900の隔壁101によって排ガスの浄化を行うと、排ガスの流路となるセル102を区画する隔壁101の表面にスス109が堆積する。このように隔壁101の表面にスス109が堆積すると、図10の(b)に示すように、隔壁101に担持された触媒によるフィルタ再生により、隔壁101の表面に堆積したスス109が燃焼する。フィルタ再生におけるスス109の燃焼は、主に触媒と接触する部位にて進行するため、隔壁101の表面に多量のスス109が堆積していると、隔壁101の表面にスス109の一部が燃焼した隙間ができ、その隙間を介してスス109の燃え残りが生じることがある。このようなスス109の燃え残りは隔壁101から浮いた状態となるため、隔壁101の表面から剥がれやすくなる。また、ディーゼルエンジン等から排出される排ガスは水蒸気を含んでいるため、冷却等によって凝縮水が生成されることがある。このような凝縮水によりスス109が収縮して固まった場合には、隔壁101から浮いた状態のスス109は特に剥がれやすくなる。そして、図10の(c)に示すように、隔壁101から浮いた状態のスス109が収縮すると、収縮したスス109にひび割れ等が生じる。そして、図10の(d)に示すように、セル102を区画するそれぞれの隔壁101から剥離したスス109は、ひび割れ等によって四角形のセル102の各辺の中間付近で折れ曲がり、2つに折れ曲がったスス109が、セル102内の中央部分に集中して当該セル102内を閉塞する。
【0011】
図10の(d)に示すような、スス109によってセル102内が閉塞したハニカムフィルタ900は、自動車のエンジン始動直後に急激に圧力損失が上昇することがある。ここで、近年、排ガスの後処理システムには、CSFの圧力損失を測定し、CSFへのススの堆積状況の診断などを行う制御機構などが組み込まれている。このため、ススによってセル内が閉塞して急激に圧力損失が上昇した場合などは、排ガスの後処理システムにおいて、ススの過捕集エラーとなる現象などが発生するという問題があった。
【0012】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、フィルタ内に一旦捕集されたススの剥離によるセル内の閉塞を有効に抑制することが可能なハニカムフィルタが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、以下に示す、ハニカムフィルタが提供される。
【0014】
[1] 流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造部と、前記セルの前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部を封止するように配置された目封止部と、を備え、
前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面において、複数の前記セルは、一の方向及び前記一の方向に直交する他の方向に沿って前記隔壁を挟んで格子状に配置されており、
複数の前記セルのうちの一の前記セルを第一セルとし、前記一の方向において前記第一セルと隣接配置された他の前記セルを第二セルとし、前記第一セルと前記第二セルとを区画する部位に配設された前記隔壁を第一隔壁部とした場合に、
前記第一セルの形状は、四角形の4つ辺のうちの少なくとも前記第二セルに対向する側の辺が前記第二セル側に向かって折れ曲がった変形四角形であり、
前記第二セルの形状は、四角形の4つ辺のうちの少なくとも前記第一セルに対向する側の辺が前記第一セル側に向かって折れ曲がった変形四角形であり、且つ、
前記第一セルの前記第二セル側に向かって折れ曲がった辺の一端を頂点A1とし、当該辺の他端を頂点A2とし、当該辺の折れ曲がった頂部を頂点A0とし、前記頂点A1と隣接する四角形における他の頂点を頂点A3とし、前記頂点A2と隣接する四角形における他の頂点を頂点A4とし、
前記第二セルの前記第一セル側に向かって折れ曲がった辺の一端を頂点B1とし、当該辺の他端を頂点B2とし、当該辺の折れ曲がった頂部を頂点B0とし、前記頂点B1と隣接する四角形における他の頂点を頂点B3とし、前記頂点B2と隣接する四角形における他の頂点を頂点B4とし、
前記頂点A1と前記頂点B1との距離をT[mm]とし、
前記頂点A1と前記頂点A2を結ぶ線分L1と、前記頂点B3と前記頂点B4を結ぶ線分L3との距離をP[mm]とし、
前記頂点B1と前記頂点B2を結ぶ線分L2と、前記頂点A3と前記頂点A4を結ぶ線分L4との距離をP[mm]とし、
前記頂点A0から前記線分L1に下ろした垂線の長さをX1[mm]とし、
前記頂点B0から前記線分L2に下ろした垂線の長さをX2[mm]とし、
前記線分L1の中点N1から、前記頂点A0から前記線分L1に下ろした垂線の足N2までの距離をY1[mm]とし、
前記線分L2の中点N3から、前記頂点B0から前記線分L2に下ろした垂線の足N4までの距離をY2[mm]とした場合に、
前記中点N1と前記中点N3とを結ぶ線分L0を挟んで、前記頂点A0と前記頂点B0とが相互に反対側の位置に存在し、
前記線分L1の長さと、前記距離P1から前記距離Tを減じた距離P1-Tの長さとが等しく、且つ、前記線分L2の長さと、前記距離P2から前記距離Tを減じた距離P2-Tの長さとが等しく、
下記式(1)~式(4)のそれぞれの関係を満たすように構成されている、ハニカムフィルタ。
【0015】
式(1):T/3≦X1<T/2
式(2):T/3≦X2<T/2
式(3):(P1-T)/4≦Y1<3(P1-T)/8
式(4):(P2-T)/4≦Y2<3(P2-T)/8
【0016】
[2] 前記一の方向に沿って配置されたそれぞれの前記セルが、隣接配置された2つの前記セル相互間において、前記式(1)~式(4)のそれぞれの関係を満たすように構成されている、前記[1]に記載のハニカムフィルタ。
【0017】
[3] 前記他の方向に沿って配置されたそれぞれの前記セルが、隣接配置された2つの前記セル相互間において、前記式(1)~式(4)のそれぞれの関係を満たすように構成されている、前記[2]に記載のハニカムフィルタ。
【0018】
[4] 前記頂点A0と前記頂点B0とが、前記中点N1と前記中点N3とを結ぶ線分L0の中点N0を対称点とした点対称の位置に存在する、前記[1]~[3]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0019】
[5] 前記距離Tが、0.15~0.35mmである、前記[1]~[4]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0020】
[6] 前記距離P1及び前記距離P2が、1.35~2.10mmである、前記[1]~[5]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0021】
[7] 前記距離P1と前記距離P2が等しい値である、前記[1]~[6]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【発明の効果】
【0022】
本発明のハニカムフィルタは、フィルタ内に一旦捕集されたススの剥離によるセル内の閉塞を有効に抑制することができる。特に、本発明のハニカムフィルタは、セルの断面形状の輪郭線の少なくとも一辺が、外側に向かって折れ曲がっているため、捕集されたススが収縮して固まり隔壁から浮いた状態となっても、固まったススがセル内に移動し難い。更に、本発明のハニカムフィルタは、上記式(1)~式(4)を満たすように構成されている。即ち、本発明のハニカムフィルタは、上記したセルの輪郭線が折れ曲がる箇所が、その輪郭線の一辺の中点からズレるように配置されている。このため、仮に隔壁からススが剥離したとしても、隔壁表面から剥離したススは、セルの輪郭線の少なくも一辺において、当該辺の中点からズレた箇所で折れ曲がり易くなり、隔壁から剥離したススがセル内の中央寄りに移動し難くなる。すなわち、上述したような輪郭線の一辺の中点からズレた箇所で折れ曲がったススが、他の輪郭線を構成する隔壁から剥離したススの障害となり、セル内中央部分へのススの集中を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すハニカムフィルタの流入端面側を示す平面図である。
図3図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
図4図1に示すハニカムフィルタのセルの延びる方向に直交する断面の一部を拡大した拡大断面図である。
図5】本発明のハニカムフィルタの一の実施形態におけるセルの配列を説明するための模式図である。
図6】本発明のハニカムフィルタの他の実施形態におけるセルの配列を説明するための模式図である。
図7】本発明のハニカムフィルタの更に他の実施形態におけるセルの配列を説明するための模式図である。
図8】比較例3のハニカムフィルタにおけるセルの配列を説明するための模式図である。
図9】比較例4のハニカムフィルタにおけるセルの配列を説明するための模式図である。
図10】隔壁表面にて捕集したススが剥がれ落ちてセル内を閉塞する過程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0025】
(1)ハニカムフィルタ:
本発明のハニカムフィルタの一の実施形態は、図1図4に示すようなハニカムフィルタ100である。ここで、図1は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すハニカムフィルタの流入端面側を示す平面図である。図3は、図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。図4は、図1に示すハニカムフィルタのセルの延びる方向に直交する断面の一部を拡大した拡大断面図である。
【0026】
図1図3に示すように、ハニカムフィルタ100は、ハニカム構造部4と、目封止部5と、を備えたものである。ハニカム構造部4は、流入端面11から流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を取り囲むように配置された多孔質の隔壁1を有する。ハニカム構造部4は、流入端面11及び流出端面12を両端面とする柱状の構造体である。本発明において、セル2とは、隔壁1によって取り囲まれた空間のことを意味する。以下、「セル2を取り囲むように配置された隔壁1」のことを「セル2を区画する隔壁1」ということがある。ハニカムフィルタ100を構成するハニカム構造部4は、その外周側面に、隔壁1を囲繞するように配設された外周壁3を更に有している。
【0027】
目封止部5は、セル2の流入端面11側の端部又は流出端面12側の端部のいずれか一方に配設され、セル2の開口部を目封止するものである。目封止部5は、多孔質材料によって構成された多孔質のものである。図1図3に示すハニカムフィルタ100は、流入端面11側の端部に目封止部5が配設されている所定のセル2と、流出端面12側の端部に目封止部5が配設されている残余のセル2とが、隔壁1を挟んで交互に配置されている。以下、目封止部5が流入端面11側の端部に配設されたセル2を「流出セル」ということがある。目封止部5が流出端面12側の端部に配設されたセル2を「流入セル」ということがある。
【0028】
図4に示すように、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面において、複数のセル2は、一の方向及び一の方向に直交する他の方向に沿って隔壁1を挟んで格子状に配置されている。例えば、一の方向とは、図4の紙面の左右方向であり、他の方向とは、図4の紙面の上下方向である。
【0029】
本実施形態のハニカムフィルタ100は、ハニカム構造部4の上記した断面におけるセル2の形状に関して重要な構成を有している。以下、複数のセル2のうちの一のセル2を第一セル2aとし、一の方向において第一セル2aと隣接配置された他のセル2を第二セル2bとする。そして、第一セル2aと第二セル2bとを区画する部位に配設された隔壁1を第一隔壁部1aとする。
【0030】
第一セル2aの形状は、四角形の4つ辺のうちの少なくとも第二セル2bに対向する側の辺が第二セル2b側に向かって折れ曲がった変形四角形である。また、第二セル2bの形状は、四角形の4つ辺のうちの少なくとも第一セル2aに対向する側の辺が第一セル2a側に向かって折れ曲がった変形四角形である。本明細書において、変形四角形とは、上述したように、四角形の4つ辺のうちの少なくとも一辺が、その四角形の外側に向かって折れ曲がった略四角形のことを意味する。なお、四角形の外側に向かって折れ曲がる辺は、四角形の4つ辺のうちの少なくとも1つの辺(即ち、一辺)であればよく、四角形の4つ辺のうちの2つの辺(ニ辺)、3つの辺(三辺)、全ての辺(四辺)が折れ曲がっていてもよい。以下、第一セル2aの形状及び第二セル2bの形状である変形四角形のことを、単に四角形という場合がある。
【0031】
そして、第一セル2aの形状及び第二セル2bの形状について、以下のように規定した場合、本実施形態のハニカムフィルタ100は、下記式(1)~式(4)のそれぞれの関係を満たすように構成されている。
【0032】
まず、第一セル2aの形状及び第二セル2bの形状に関する規定について説明する。第一セル2aの第二セル2b側に向かって折れ曲がった辺の一端を頂点A1とし、当該辺の他端を頂点A2とし、当該辺の折れ曲がった頂部を頂点A0とする。また、頂点A1と隣接する四角形における他の頂点を頂点A3とし、頂点A2と隣接する四角形における他の頂点を頂点A4とする。
【0033】
また、第二セル2bの第一セル2a側に向かって折れ曲がった辺の一端を頂点B1とし、当該辺の他端を頂点B2とし、当該辺の折れ曲がった頂部を頂点B0とする。頂点B1と隣接する四角形における他の頂点を頂点B3とし、頂点B2と隣接する四角形における他の頂点を頂点B4とする。
【0034】
頂点A1と頂点B1との距離をT[mm]とする。頂点A1と頂点A2を結ぶ線分L1と、頂点B3と頂点B4を結ぶ線分L3との距離をP[mm]とする。頂点B1と頂点B2を結ぶ線分L2と、頂点A3と頂点A4を結ぶ線分L4との距離をP[mm]とする。
【0035】
頂点A0から線分L1に下ろした垂線の長さをX1[mm]とする。頂点B0から線分L2に下ろした垂線の長さをX2[mm]とする。
【0036】
線分L1の中点N1から、頂点A0から線分L1に下ろした垂線の足N2までの距離をY1[mm]とする。線分L2の中点N3から、頂点B0から線分L2に下ろした垂線の足N4までの距離をY2[mm]とする。ここで、中点N1と中点N3とを結ぶ線分L0を挟んで、頂点A0と頂点B0とが相互に反対側の位置に存在するものとする。
【0037】
式(1):T/3≦X1<T/2
式(2):T/3≦X2<T/2
式(3):(P1-T)/4≦Y1<3(P1-T)/8
式(4):(P2-T)/4≦Y2<3(P2-T)/8
【0038】
本実施形態のハニカムフィルタ100は、フィルタ内に一旦捕集されたススの剥離によるセル2内の閉塞を有効に抑制することができる。特に、ハニカムフィルタ100は、セル2の断面形状の輪郭線の少なくとも一辺が、外側に向かって折れ曲がっているため、捕集されたススが収縮して固まり隔壁1から浮いた状態となっても、固まったススがセル2内に移動し難い。更に、上記式(1)~式(4)を満たすことにより、セル2の輪郭線が折れ曲がる箇所が、その輪郭線の一辺の中点からズレるように配置される。このため、仮に隔壁1からススが剥離したとしても、隔壁1表面から剥離したススは、セル2の輪郭線の少なくも一辺において、当該辺の中点からズレた箇所で折れ曲がり易くなり、隔壁1から剥離したススがセル2内の中央寄りに移動し難くなる。すなわち、輪郭線の一辺の中点からズレた箇所で折れ曲がったススが、他の輪郭線を構成する隔壁1から剥離したススの障害となり、セル2内中央部分へのススの集中を有効に抑制することができる。
【0039】
ハニカムフィルタ100において、頂点A0と頂点B0の双方が、中点N1と中点N3とを結ぶ線分L0に対して同じ側に存在すると、第一隔壁部1aが局所的に薄くなり、ハニカムフィルタ100の機械的強度が低下してしまう。
【0040】
また、式(1)及び式(2)において、X1及びX2の値が、「T/3」未満であると、第一隔壁部1aの折れ曲がりの深さが小さすぎて、剥離したススの折れ曲がり箇所の誘導が十分に行えないことがある。この場合、セル2内中央部分へのススの集中の抑制が困難になる。一方、式(1)及び式(2)において、X1及びX2の値が、「T/2」以上であると、第一隔壁部1aが局所的に薄くなり、ハニカムフィルタ100の機械的強度が低下してしまう。
【0041】
また、式(3)において、Y1の値が、「(P1-T)/4」未満であると、第一隔壁部1aの双方の折れ曲がり箇所が近すぎて、第一隔壁部1aが局所的に薄くなり、ハニカムフィルタ100の機械的強度が低下してしまう。同様に、式(4)において、Y2の値が、「(P2-T)/4」未満であると、第一隔壁部1aが局所的に薄くなり、ハニカムフィルタ100の機械的強度が低下してしまう。
【0042】
また、式(3)において、Y1の値が、「3(P1-T)/8」以上であると、ハニカムフィルタ100の機械的強度が低下してしまう。同様に、式(4)において、Y2の値が、「3(P2-T)/8」以上であると、ハニカムフィルタ100の機械的強度が低下してしまう。
【0043】
ハニカムフィルタ100は、図5に示すように、一の方向に沿って配置されたそれぞれのセル2が、隣接配置された2つのセル2相互間において、上記式(1)~式(4)のそれぞれの関係を満たすように構成されていてもよい。例えば、図5に示すハニカムフィルタ100は、1つのセル2の形状は、四角形の4つ辺のうちの対向する2つの辺のそれぞれが外側に向かって折れ曲がるように構成された変形四角形である。そして、このような変形四角形のセル2が、一の方向に沿って配列している。ここで、図5は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態におけるセルの配列を説明するための模式図である。
【0044】
図5に示すようなセル2の配列の場合、複数のセル2のうちの任意のセル2を第一セル2aとした場合、その第一セル2aの一の方向における両隣りのセル2が、第二セル2bの要件を満たすこととなる。そして、上述した両隣りのセル2としての第二セル2bを、第一セル2aと見做した場合、見做された第一セル2aの両隣りのセル2が、第二セル2bの要件を更に満たすこととなる。このように構成することによって、セル2内中央部分へのススの集中をより有効に抑制することができる。
【0045】
なお、図6に示すように、1つのセル2の形状は、四角形の4つ辺のうちの一つ辺のみが外側に向かって折れ曲がった変形四角形であってもよい。図6は、本発明のハニカムフィルタの他の実施形態におけるセルの配列を説明するための模式図である。図6に示すハニカムフィルタ200は、複数のセル2のうちの任意のセル2を第一セル2aとした場合、その第一セル2aの一の方向における片方の隣りのセル2のみが、第二セル2bの要件を満たすこととなる。例えば、図6において、1つの第一セル2aの左隣りセル2が、上記式(1)~式(4)の関係を満たす上での第二セル2bとなる。このような第一セル2aの右隣りのセル2は、一の方向における更に右隣りのセル2(図示せず)を第一セル2a(図示せず)とした場合に、第二セル2bの要件を満たすものであってもよい。図6に示すハニカムフィルタ200は、一の方向におけるセル2の配列が異なることが以外は、図1図5に示すハニカムフィルタ100と同様に構成されていることが好ましい。
【0046】
以下、本明細書において、隣接する2つのセル2,2において、以下のように構成されたセル2,2を「特定関係セル」ということがある。一のセル2において、その形状の1つ辺が隣接する他のセル2に向かって折れ曲がっており、更に、この隣接する他のセル2においても、その形状の1つ辺が上記一のセル2に向かって折れ曲がっている。このような関係にある2つのセル2,2を「特定関係セル」という。また、一のセル2において、特定関係セルとなり得る他のセル2が1個の場合、特定関係セルの組数を、一組とする。例えば、一のセル2に対して、特定関係セルとなり得る他のセル2が2個存在する場合、特定関係セルの組数は、二組となる。
【0047】
また、図7に示すようなハニカムフィルタ300であってもよい。図7は、本発明のハニカムフィルタの更に他の実施形態におけるセルの配列を説明するための模式図である。図7に示すハニカムフィルタ300は、まず、一の方向に沿って配置されたそれぞれのセル2が、隣接配置された2つのセル2相互間において、上記式(1)~式(4)のそれぞれの関係を満たすように構成されている。更に、このハニカムフィルタ300においては、他の方向に沿って配置されたそれぞれのセル2についても、隣接配置された2つのセル2相互間において、上記式(1)~式(4)のそれぞれの関係を満たすように構成されている。即ち、ハニカムフィルタ300において、1つのセル2の形状は、四角形の4つ辺の全てが外側に向かって折れ曲がった変形四角形となっている。従って、ハニカムフィルタ300においては、図7の紙面の左右方向及び上下方向の双方において、複数のセル2のうちの任意のセル2を第一セル2aとした場合、その第一セル2aの両隣りのセル2が第二セル2bとなる。このように構成することによって、セル2内中央部分へのススの集中を更により有効に抑制することができる。図7に示すハニカムフィルタ300は、複数のセル2が配列した一の方向及び他の方向の双方にて、上記式(1)~式(4)の関係を満たすように構成されていること以外は、図1図5に示すハニカムフィルタ100と同様に構成されていることが好ましい。
【0048】
図1図5に示すハニカムフィルタ100は、頂点A0と頂点B0とが、中点N1と中点N3とを結ぶ線分L0の中点N0を対称点とした点対称の位置に存在することが好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタ100の機械的強度の低下を有効に抑制しつつ、ススの剥離によるセル2内の閉塞をより有効に抑制することができる。
【0049】
ハニカムフィルタ100における距離T[mm]の具体的な値については特に制限はないが、距離Tは、0.15~0.35mmであることが好ましく、0.25~0.30mmであることが更に好ましい。距離Tが小さすぎると、ハニカムフィルタ100の機械的強度が低下することがある。距離Tが大きすぎると、ハニカムフィルタ100の圧力損失が増大することがある。
【0050】
ハニカムフィルタ100における距離P1[mm]及び距離P2[mm]の具体的な値については特に制限はないが、距離P1及び距離P2は、1.35~2.10mmであることが好ましく、1.45~1.80mmであることが更に好ましい。距離P1及び距離P2が小さすぎると、ハニカムフィルタ100の圧力損失が増大することがある。距離P1及び距離P2が大きすぎると、ハニカムフィルタ100のフィルタとしての捕集性能が低下することがある。距離P1と距離P2は、互いに等しい値であることがより好ましい。
【0051】
隔壁1の気孔率については特に制限はないが、例えば、35~70%であることが好ましく、40~60%であることが更に好ましい。隔壁1の気孔率は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の気孔率の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。隔壁1の気孔率が35%未満であると、圧力損失増加の点で好ましくない。隔壁1の気孔率が70%を超えると、強度、捕集効率低下の点で好ましくない。
【0052】
ハニカム構造部4の外周壁3は、隔壁1と一体的に構成されたものであってもよいし、隔壁1を囲繞するように外周コート材を塗工することによって形成した外周コート層であってもよい。図示は省略するが、外周コート層は、製造時において、隔壁と外周壁とを一体的に形成した後、形成された外周壁を、研削加工等の公知の方法によって除去した後、隔壁の外周側に設けることができる。
【0053】
ハニカム構造部4の形状については特に制限はない。ハニカム構造部4の形状としては、流入端面11及び流出端面12の形状が、円形、楕円形、多角形等の柱状を挙げることができる。なお、ハニカム構造部4の形状が、円形や楕円形などの場合において、ハニカム構造部4の最外周に位置するセル2と、この最外周に位置するセル2に隣接するセル2とに関しては、例外的に上記式(1)~式(4)の関係を満たしていなくともよい。
【0054】
ハニカム構造部4の大きさ、例えば、流入端面11から流出端面12までの長さや、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさについては、特に制限はない。ハニカムフィルタ100を、排ガス浄化用のフィルタとして用いた際に、最適な浄化性能を得るように、各大きさを適宜選択すればよい。
【0055】
隔壁1の材料については特に制限はない。例えば、隔壁1の材料が、炭化珪素、コージェライト、珪素-炭化珪素複合材料、コージェライト-炭化珪素複合材料、窒化珪素、ムライト、アルミナ及びチタン酸アルミニウムから構成される群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0056】
目封止部5の材料についても特に制限はない。例えば、上述した隔壁1の材料と同様の材料を用いることができる。
【0057】
隔壁1に担持される排ガス浄化用触媒の種類については特に制限はないが、酸化触媒であることが好ましい。酸化触媒としては、貴金属を含有するものを挙げることができる。具体的には、白金、パラジウム及びロジウムからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものが好ましい。酸化触媒は、ハニカムフィルタ100によって捕集除去された排ガス中のスス等のPMを燃焼除去するための触媒である。
【0058】
(2)ハニカムフィルタの製造方法:
本発明のハニカムフィルタを製造する方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような方法を挙げることができる。まず、ハニカム構造部を作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカム構造部を作製するための坏土は、原料粉末として、前述の隔壁の好適な材料の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、造孔材、及び水を添加することによって調製することができる。
【0059】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及びこの隔壁を囲繞するように配設された外周壁を有する、柱状のハニカム成形体を作製する。押出成形においては、押出成形用の口金として、坏土の押出面に、成形するハニカム成形体の反転形状となるスリットが設けられた口金を用いることができる。特に、押出成形用の口金として、上記式(1)~式(4)の関係を満たすような第一セルと第二セルとが少なくとも一の方向に配列するようなセル構造を形成するためのスリットが設けられた口金を用いることが好ましい。次に、得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥する。
【0060】
次に、乾燥したハニカム成形体のセルの開口部に目封止部を配設する。具体的には、例えば、まず、目封止部を形成するための原料を含む目封止材を調製する。次に、ハニカム成形体の流入端面に、流入セルが覆われるようにマスクを施す。次に、先に調製した目封止材を、ハニカム成形体の流入端面側のマスクが施されていない流出セルの開口部に充填する。その後、ハニカム成形体の流出端面についても、上記と同様の方法で、流入セルの開口部に目封止材を充填する。
【0061】
次に、セルのいずれか一方の開口部に目封止部を配設したハニカム成形体を焼成して、ハニカムフィルタを作製する。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。
【実施例
【0062】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、及び水酸化アルミニウムを用意し、これらを混合してコージェライト化原料を得た。コージェライト化原料は、その化学組成が、SiOが42~56質量%、Alが30~45質量%、及びMgOが12~16質量%となるように、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、及び水酸化アルミニウムを、所定の割合で調合したものである。
【0064】
次に、得られたコージェライト化原料に、造孔材、バインダとしてのメチルセルロース、及び分散媒としての水を添加し、これらを混合して成形原料を得た。造孔材は、コージェライト化原料100質量部に対して、5質量部添加した。バインダは、コージェライト化原料100質量部に対して、5質量部添加した。分散媒は、コージェライト化原料100質量部に対して、37質量部添加した。
【0065】
次に、ハニカム成形体作製用の口金を用いて坏土を押出成形し、全体形状が円柱形状のハニカム成形体を得た。ハニカム成形体のセルの形状は、図6に示すように、四角形の4つ辺のうちの一つ辺のみが外側に向かって折れ曲がった変形四角形とした。表1の「参照図」の欄には、各実施例及び比較例におけるハニカムフィルタのセルの形状を参照するための図面の番号を示す。例えば、参照図が図6の場合は、上述したように、セルの形状は、四角形の4つ辺のうちの一つ辺のみが外側に向かって折れ曲がった変形四角形である。参照図が図5の場合は、セルの形状は、四角形の4つ辺のうちの対向する2つの辺のそれぞれが外側に向かって折れ曲がるように構成された変形四角形である。
【0066】
次に、得られたハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
【0067】
次に、目封止部を形成するための目封止材を調製した。次に、ハニカム成形体の流入端面に、流入セルが覆われるようにマスクを施し、先に調製した目封止材を、ハニカム成形体の流入端面側のマスクが施されていない流出セルの開口部に充填して目封止部を形成した。その後、ハニカム成形体の流出端面についても、上記と同様の方法で、流入セルの開口部に目封止材を充填して目封止部を形成した。
【0068】
次に、各目封止部を形成したハニカム成形体を、脱脂し、焼成して、実施例1のハニカムフィルタを作製した。
【0069】
実施例1のハニカムフィルタは、距離Tの値が0.3mmであり、距離P1及び距離P2の値が1.47mmであった。また、実施例1のハニカムフィルタは、1セル当たりの特定関係セルの組数が一組であった。各結果を表1に示す。また、実施例1のハニカムフィルタにおける、式(1)のX1、式(2)のX2、式(3)のY1、及び式(4)のY2の値を、表1に示す。実施例1のハニカムフィルタは、頂点A0と頂点B0の位置関係が、線分L0を挟んで反対側に位置するものであった。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1のハニカムフィルタについて、以下の方法で、スス詰まり、及びアイソスタティック強度についての評価を行った。結果を表2に示す。
【0072】
[スス詰まり]
まず、酸化触媒成分を含む触媒スラリーを調製し、実施例1のハニカムフィルタの流出端面側から触媒スラリーを導入し、ハニカムフィルタの流出セルを区画する隔壁に触媒を担持した。その後、ハニカムフィルタの隔壁に対して、5.0g/Lのススを堆積させ、入口端面から霧吹きをし、ハニカムフィルタ内部に至るまで十分湿らせた後に130℃の定温乾燥機で十分に乾燥させた。その後、セル内のスス詰まりを確認し、以下の評価基準に基づいて評価を行った。ここで標準圧損とは、セル形状が正方形であり、隔壁厚さが各実施例の隔壁厚さの平均厚さと同じであり、材質、セル密度、セルピッチが同じであるハニカムフィルタを用いてスス詰まりを評価したときの圧力損失の値を意味する。
評価「優」:スス詰まりのない標準圧損の1.0倍以上、1.1倍未満の場合を、評価「優」とした。
評価「良」:スス詰まりのない標準圧損の1.1倍以上、1.5倍未満の場合を、評価「良」とした。
評価「不可」:スス詰まりのない標準圧損の1.5倍以上の場合を、評価「不可」とした。
【0073】
[アイソスタティック強度]
実施例及び比較例のハニカムフィルタについて、直径190.5mm実体品を作製して、アイソスタティック強度の測定を行った。そして、アイソスタティック強度の測定結果について、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
評価「優」:1.0MPa以上の場合を、評価「優」とした。
評価「良」:0.7MPa以上、1.0MPa未満の場合を、評価「良」とした。
評価「不可」:0.7MPa未満の場合を、評価「不可」とした。
【0074】
【表2】
【0075】
(実施例2~3)
実施例2~3においては、表1に示すような構成としたこと以外は、実施例1と同様にしてハニカムフィルタを作製した。実施例3のハニカムフィルタは、セルの形状が、図5に示すような、四角形の4つ辺のうちの対向する2つの辺がそれぞれ外側に向かって折れ曲がった変形四角形であった。実施例3のハニカムフィルタは、1セル当たりの特定関係セルの組数が二組であった。
【0076】
(比較例1~5)
比較例1~5においては、表1に示すような構成としたこと以外は、実施例1と同様にしてハニカムフィルタを作製した。比較例3のハニカムフィルタは、図8に示すハニカムフィルタ400のように、各セル202の形状が、四角形の1つの辺が斜辺となる台形であり、隣接する2つのセル202,202が、両者を区画する隔壁201を挟んで点対称となるような位置関係となっていた。比較例4のハニカムフィルタは、図9に示すハニカムフィルタ500のように、各セル302の形状が、四角形の4つ辺のうちの一つ辺のみが外側に向かって折れ曲がった変形四角形であった。そして、図9に示すハニカムフィルタ500のように、隣接する2つのセル302,302が、両者を区画する隔壁301を挟んで線対称となるような位置関係となっていた。
【0077】
実施例2~3及び比較例1~5のハニカムフィルタについても、実施例1と同様の方法で、スス詰まり、及びアイソスタティック強度についての評価を行った。結果を表2に示す。
【0078】
(結果)
実施例1~3のハニカムフィルタは、スス詰まり、及びアイソスタティック強度の評価において、共に良好な結果が得られた。一方で、比較例1のハニカムフィルタは、スス詰まりの評価結果が不可であった。また、比較例2~5のハニカムフィルタは、アイソスタティック強度の評価結果が不可であった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のハニカムフィルタは、排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1:隔壁、1a:第一隔壁部、2:セル、2a:第一セル、2b:第二セル、3:外周壁、4:ハニカム構造部、5:目封止部、11:流入端面、12:流出端面、100,200,300,400,500、900:ハニカムフィルタ、101、201、301:隔壁、102、202、302:セル、109:スス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10