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特許7365961ターボチャージャ用コンプレッサハウジング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ターボチャージャ用コンプレッサハウジング
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20231013BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
F02B39/00 G
F02B39/00 B
F04D29/58 S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020080370
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021173266
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 智己
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145831(JP,A)
【文献】特開2018-184928(JP,A)
【文献】特開2019-078215(JP,A)
【文献】国際公開第2013/132577(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F04D 29/44
F04D 29/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサインペラが収容されるとともに、センタハウジングに取り付けられるように構成されたターボチャージャ用コンプレッサハウジングであって、
上記コンプレッサインペラに向けて空気を吸い込む吸気口を形成する吸気口形成部と、
上記コンプレッサインペラを周方向に囲むとともに該コンプレッサインペラに対向するシュラウド面を有するシュラウド部と、
上記コンプレッサインペラの外周側において周方向に形成され、上記コンプレッサインペラから吐出される空気を圧縮するディフューザ通路を形成するディフューザ部と、
上記ディフューザ通路を通過した圧縮空気を外部へ導くスクロール室を形成するスクロール室形成部と、
上記ディフューザ部に沿って周方向に形成されるとともに、上記ディフューザ部を冷却する冷媒を流通させる冷媒流路と、
を有し、
上記ターボチャージャ用コンプレッサハウジングは、少なくとも上記スクロール室形成部の一部及び上記吸気口形成部を有するスクロールピースと、少なくとも上記スクロール室形成部の一部、上記シュラウド部の一部及び上記ディフューザ部を有するシュラウドピースと、を含む複数のピースに分割されてなり、
上記冷媒流路は、上記スクロールピースに形成されるとともに少なくとも上記冷媒流路の内周側壁面の一部と上記冷媒流路の吸気口側壁面とを有する第1流路形成部と、上記シュラウドピースにおける上記第1流路形成部に対向する位置に形成されるとともに少なくとも上記冷媒流路の外周側壁面と上記冷媒流路のセンタハウジング側壁面とを有する第2流路形成部と、により区画された環状の空間として形成され、
上記第1流路形成部と上記第2流路形成部とは、上記冷媒流路の内周側をシールする内周シール部と、上記冷媒流路の外周側をシールする外周シール部とにおいて互いに嵌合しており、
上記内周シール部は、上記スクロールピースに形成された内周圧入部が、上記シュラウドピースに形成された内周被圧入部の内周側に圧入されてなり、
上記外周シール部は、上記スクロールピースに形成された外周圧入部が、上記シュラウドピースに形成された外周被圧入部の内周側に圧入されてなる、ターボチャージャ用コンプレッサハウジング。
【請求項2】
上記スクロールピース及び上記シュラウドピースは、軸方向に対向して互いに接することにより、上記圧入をする際の位置決めをする当接部を形成している、請求項1に記載のターボチャージャ用コンプレッサハウジング。
【請求項3】
上記吸気口形成部の内周面は、センタハウジング側の位置に、上記吸気口から吸い込まれた空気を上記コンプレッサインペラに導くように、センタハウジング側に向かうにつれて縮径してなるインデューサトリートメント部を有する、請求項1に記載のターボチャージャ用コンプレッサハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャ用コンプレッサハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関に搭載されるターボチャージャは、コンプレッサインペラとタービンインペラとを有し、これらがハウジングに収容されている。コンプレッサインペラはハウジングの内部に形成された空気流路に配されている。空気流路には、コンプレッサインペラに向けて空気を吸い込む吸気口と、コンプレッサインペラから吐出された空気が通過して圧縮されるディフューザ通路と、ディフューザ通路を通過した圧縮空気が流れ込んで当該圧縮空気を内燃機関側に吐出するスクロール室と、が設けられている。
【0003】
そして、自動車等の内燃機関には、クランクケース内に発生したブローバイガスを吸気通路に還流させ、クランクケース内やヘッドカバー内を浄化させるブローバイガス還流装置(以下、PCVという)を備えたものがある。この場合、ブローバイガスに含まれるオイル(オイルミスト)がPCVからターボチャージャにおけるコンプレッサの上流側の吸気通路に流出することがある。
【0004】
このとき、コンプレッサの出口空気圧力が高いとその空気温度も高くなるため、PCVから流出したオイルが蒸発を起因とする濃縮・高粘度化によってコンプレッサハウジングのディフューザ面やそれに対向するセンタハウジングの表面等にデポジットとなって堆積することがある。そして、堆積したデポジットによってディフューザ通路が狭められ、ターボチャージャの性能低下を招き、さらには内燃機関の出力低下を招くおそれがある。
【0005】
従来は、上述したようなディフューザ通路におけるデポジットの堆積を防止するため、コンプレッサの出口空気温度をある程度抑制していた。そのため、ターボチャージャの性能を充分に発揮することができず、また内燃機関の出力を充分に高めることができなかった。
【0006】
特許文献1には、ディフューザ通路におけるデポジットの堆積を防止するために、ターボチャージャ用コンプレッサハウジング内に設けた冷媒流路に冷媒を流通させることにより、ハウジング内の空気流路を通過する圧縮空気の温度上昇を抑制する構成が開示されている。特許文献1に開示の構成では、ターボチャージャ用コンプレッサハウジングをスクロールピースとシュラウドピースとによって分割形成してアンダーカットのない形状にしてダイキャスト成形可能としており、両ピースの組付けにより両ピースの間に冷媒流路が形成されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-184928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示の構成では、冷媒流路は、スクロールピースに形成された第1流路形成部とシュラウドピースに形成された第2流路形成部とにより区画された環状の空間として形成される。第1流路形成部と第2流路形成部とは、冷媒流路の内周側をシールする内周シール部と、冷媒流路の外周側をシールする外周シール部とにおいて互いに嵌合している。そして、内周シール部はスクロールピースの第1被圧入部にシュラウドピースの第1圧入部が圧入されてなり、外周シール部はスクロールピースの第2被圧入部にシュラウドピースの第2圧入部が圧入されてなる。そして、冷却効果を高めるためにシュラウドピースの第2流路形成部を深い溝状にして冷媒流路をディフューザ面に近づけている。しかし、ダイキャスト成形の鋳抜き深さには制約があることから、第2流路形成部を深い溝状に成形するために鋳抜き後に機械加工をしており、製造コストが増加する。
【0009】
一方、冷媒流路の幅を拡大して、ダイカスト成形における鋳抜き深さの制約を受けないようにすることも考えられる。しかしながら、特許文献1に開示の構成では、冷媒流路における内周シール部及び外周シール部は、いずれもスクロールピースの被圧入部の内周側にシュラウドピースの圧入部が圧入されてなるため、鋳抜き深さの制約を受けない程度まで冷媒流路の幅を拡大すると、スクロールピースにおいて圧入のための肉厚を十分に確保することができない。従って、冷媒流路をディフューザ面に十分に近づけるには、鋳抜き後の機械加工を要し、製造コストが増加する。
【0010】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、ダイカストにより容易に成形が可能であって、低コストでディフューザ面の冷却効果を高めてデポジットの付着防止効果の向上が図られるターボチャージャ用コンプレッサハウジングを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、コンプレッサインペラが収容されるとともに、センタハウジングに取り付けられるように構成されたターボチャージャ用コンプレッサハウジングであって、
上記コンプレッサインペラに向けて空気を吸い込む吸気口を形成する吸気口形成部と、
上記コンプレッサインペラを周方向に囲むとともに該コンプレッサインペラに対向するシュラウド面を有するシュラウド部と、
上記コンプレッサインペラの外周側において周方向に形成され、上記コンプレッサインペラから吐出される空気を圧縮するディフューザ通路を形成するディフューザ部と、
上記ディフューザ通路を通過した圧縮空気を外部へ導くスクロール室を形成するスクロール室形成部と、
上記ディフューザ部に沿って周方向に形成されるとともに、上記ディフューザ部を冷却する冷媒を流通させる冷媒流路と、
を有し、
上記ターボチャージャ用コンプレッサハウジングは、少なくとも上記スクロール室形成部の一部及び上記吸気口形成部を有するスクロールピースと、少なくとも上記スクロール室形成部の一部、上記シュラウド部の一部及び上記ディフューザ部を有するシュラウドピースと、を含む複数のピースに分割されてなり、
上記冷媒流路は、上記スクロールピースに形成されるとともに少なくとも上記冷媒流路の内周側壁面の一部と上記冷媒流路の吸気口側壁面とを有する第1流路形成部と、上記シュラウドピースにおける上記第1流路形成部に対向する位置に形成されるとともに少なくとも上記冷媒流路の外周側壁面と上記冷媒流路のセンタハウジング側壁面とを有する第2流路形成部と、により区画された環状の空間として形成され、
上記第1流路形成部と上記第2流路形成部とは、上記冷媒流路の内周側をシールする内周シール部と、上記冷媒流路の外周側をシールする外周シール部とにおいて互いに嵌合しており、
上記内周シール部は、上記スクロールピースに形成された内周圧入部が、上記シュラウドピースに形成された内周被圧入部の内周側に圧入されてなり、
上記外周シール部は、上記スクロールピースに形成された外周圧入部が、上記シュラウドピースに形成された外周被圧入部の内周側に圧入されてなる、ターボチャージャ用コンプレッサハウジングにある。
【発明の効果】
【0012】
上記一形態のターボチャージャ用コンプレッサハウジングによれば、冷媒流路における内周シール部及び外周シール部は、スクロールピースに形成された内周圧入部及び外周圧入部が、シュラウドピースに形成された内周被圧入部の内周側及び外周圧入部の内周側に圧入されてなる。そして、冷媒流路の内周側壁面の少なくとも一部はスクロールピースにより形成され、冷媒流路の外周側壁面はシュラウドピースに形成されており、両者が径方向に対向している。これとともに冷媒流路の吸気側壁面はスクロールピースにより形成され、冷媒流路のセンタハウジング側壁面はシュラウドピースに形成されており、両者が軸方向Yに互いに対向している。これらにより、冷媒流路を径方向に幅広にすることができることにより、冷媒流路をダイカスト成形における鋳抜き深さの制約を受けない形状でディフューザ面に近い位置に形成することができる。その結果、鋳抜き後に溝を掘る必要がなく、ダイカスト成形において製造コストの低減が図られる。そして、当該冷媒流路を備えることにより、ディフューザ面におけるデポジットの堆積が抑制されてエンジンの高回転側で高過給化を図ることができ、エンジンの最高出力の向上を図ることができる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、ダイカストにより容易に成形が可能であって、低コストでデポジットの付着防止のためのディフューザ面の冷却効果を高めることができるターボチャージャ用コンプレッサハウジングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1における、ターボチャージャ用コンプレッサハウジングの断面図。
図2】実施例1における、ターボチャージャ用コンプレッサハウジングの断面一部拡大図。
図3】実施例1における、スクロールピースの断面斜視図。
図4】実施例1における、シュラウドピースの断面斜視図。
図5】実施例1における、シュラウドピースの斜視図。
図6】実施例1における、ターボチャージャ用コンプレッサハウジングの製造方法を説明するための概念図。
図7】実施例1における、ターボチャージャ用コンプレッサハウジングの製造方法を説明するための他の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において「周方向」とはコンプレッサインペラの回転方向、「軸方向」とはコンプレッサインペラの回転軸の方向、「径方向」とは、コンプレッサインペラの回転軸を中心とする仮想円の半径方向であって、径方向外側とは当該仮想円の中心から円周に向かって延びる直線の方向をいうものとする。
【0016】
上記スクロールピース及び上記シュラウドピースは、軸方向に対向して互いに接することにより、上記圧入をする際の位置決めをする当接部を形成していることが好ましい。この場合には、当接部によってスクロールピース及びシュラウドピースの圧入方向となる軸方向Yの位置決めがなされるため、スクロールピースとシュラウドピースとの組み付け精度を向上することができる。
【0017】
上記吸気口形成部の内周面は、センタハウジング側の位置に、上記吸気口から吸い込まれた空気を上記コンプレッサインペラに導くように、センタハウジング側に向かうにつれて縮径してなるインデューサトリートメント部を有することが好ましい。従来は上記吸気口形成部のセンタハウジング側の位置には、スクロールピースに圧入されたシュラウドピースの先端が位置しており、スクロールピースの吸気口形成部の内周面と当該シュラウドピースの先端との間に段差が形成されていたが、上記スクロールピースでは、吸気口形成部のセンタハウジング側の位置にはシュラウドピースの先端が位置しないため、当該位置にインデューサトリートメント部を設けることができる。当該インデューサトリートメント部により、吸気口から吸い込まれた空気をコンプレッサインペラに導くことにより、空気を最適な角度でコンプレッサインペラに向かわせることができる。これにより、吸気の圧縮効率を向上することができる。
【実施例
【0018】
(実施例1)
以下、上記ターボチャージャ用コンプレッサハウジングの実施例について、図1図7を用いて説明する。
図1に示すように、ターボチャージャ用コンプレッサハウジング1には、コンプレッサインペラ13が収容され、吸気口形成部10、シュラウド部20、ディフューザ部30、スクロール室形成部120及び冷媒流路5が備えられる。
吸気口形成部10は、コンプレッサインペラ13に向けて空気を吸い込む吸気口11を形成している。
シュラウド部20は、コンプレッサインペラ13を周方向に囲むとともにコンプレッサインペラ13に対向するシュラウド面21を有する。
ディフューザ部30は、コンプレッサインペラ13の外周側において周方向に形成され、コンプレッサインペラ13から吐出される空気を通過させて圧縮するディフューザ通路15を形成している。
スクロール室形成部120は、ディフューザ通路15を通過した圧縮空気を外部へ導くスクロール室12を形成している。
冷媒流路5は、ディフューザ部30に沿って周方向に形成されるとともに、ディフューザ部30を冷却する冷媒を流通させる。
【0019】
そして、ターボチャージャ用コンプレッサハウジング1は、少なくともスクロール室形成部120の一部及び吸気口形成部10を有するスクロールピース2と、少なくともスクロール室形成部120の一部、シュラウド部20の一部及びディフューザ部30を有するとともにスクロールピース2の内側に軸方向Yに圧入されるシュラウドピース3と、を含む複数のピースに分割されてなる。
【0020】
また、図1に示すように、冷媒流路5は、スクロールピース2に形成された第1流路形成部51と、シュラウドピース3における第1流路形成部51に対向する位置に形成された第2流路形成部52とにより区画された環状の空間50として形成されている。第1流路形成部51は、少なくとも冷媒流路5の内周側壁面55の一部と冷媒流路5の吸気口側壁面57とを有する。第2流路形成部52は、少なくとも冷媒流路5の外周側壁面56と冷媒流路5のセンタハウジング側壁面58とを有する。そして、第1流路形成部51と第2流路形成部52とは、冷媒流路5の内周側をシールする内周シール部53と、冷媒流路5の外周側をシールする外周シール部54とにおいて互いに嵌合している。
【0021】
そして、図1図2に示すように、内周シール部53は、スクロールピース2に形成された内周圧入部53aが、シュラウドピース3に形成された内周被圧入部53bの内周側に圧入されてなる。
また、外周シール部54は、スクロールピース2に形成された外周圧入部54aが、シュラウドピース3に形成された外周被圧入部54bの内周側に圧入されてなる。
【0022】
本例では、スクロールピース2は、コンプレッサインペラ13の回転軸13aを含む軸断面において、図2に示すように内周圧入部53aが冷媒流路5における吸気口側壁面57の径方向内側端部57aからセンタハウジング側Y2に延びて、内周圧入部53aと吸気口側壁面57とが、符号L1で示すようにL字状をなすように形成されている。
また、シュラウドピース3は、コンプレッサインペラ13の回転軸13aを含む軸断面において、外周被圧入部54bが冷媒流路5におけるセンタハウジング側壁面58の径方向外側端部58aから吸気口側Y1に延びて、符号L2で示すように外周被圧入部54bとセンタハウジング側壁面58とがL字状をなすように形成されている。
【0023】
以下、本例のターボチャージャ用コンプレッサハウジング1について、詳述する。
図1に示すように、ターボチャージャ用コンプレッサハウジング1は、互いに別部材として形成されたスクロールピース2、シュラウドピース3及び外周環状ピース4により分割形成されている。そして、ターボチャージャ用コンプレッサハウジング1は、コンプレッサインペラ13が一端に取り付けられたシャフト14を軸受けする軸受機構が収納されたセンタハウジングのシールプレートに取り付けられる。
【0024】
スクロールピース2は、図1図3に示すように、吸気口形成部10、インデューサトリートメント部17、第1スクロール室形成部121、外周部125及び第1流路形成部51を有する。吸気口形成部10は筒状をなすとともにスクロールピース2を軸方向Yに貫通するように形成されている。第1スクロール室形成部121は、スクロール室12における吸気口側Y1の壁面を構成している。図1に示すように、外周部125は、第1スクロール室形成部121の吸気口側Y1と反対のセンタハウジング側Y2に位置しており、ターボチャージャ用コンプレッサハウジング1の外周部125を形成している。そして、外周部125の内側には、外周環状ピース4が取り付けられている。
【0025】
図1図2に示すように、スクロールピース2における第1流路形成部51は、後述する第2流路形成部52とともに冷媒流路5を形成するように構成されている。そして、第1流路形成部51は、内周側壁面55、吸気口側壁面57、内周圧入部53a及び外周圧入部54aを有している。スクロールピース2における内周側壁面55は、円環状の冷媒流路5における径方向内側に位置する内周側の壁面である。吸気口側壁面57は、冷媒流路5における吸気口側Y1の壁面である。本例では、スクロールピース2における内周側壁面55は、図2に示すように吸気口側壁面57の径方向内側端部57aからセンタハウジング側Y2に延びており、図3に示すように円筒状をなしている。吸気口側壁面57は径方向Xに延びた平坦面であって、図3に示すように円環状をなしている。なお、吸気口側壁面57は必ずしも平面でなくてもよく、吸気口側Y1に凹んだ凹状であってもよい。
【0026】
また、図1図2に示すように、内周圧入部53aはスクロールピース2の内周側壁面55からセンタハウジング側Y2に延びている。これにより、図2に示すように、内周圧入部53aと吸気口側壁面57とは符号L1で示すようにL字状をなすように形成されている。内周圧入部53aは径方向外側に面する円筒状面を形成しており、後述の内周被圧入部53bの内側に圧入されている。内周圧入部53aと内周被圧入部53bとは全周方向で当接して、内周シール部53を形成している。なお、内周圧入部53aの径方向の内側は、コンプレッサインペラ13に対向するシュラウド面21の一部を構成している。
【0027】
また、図1図2に示すように、外周圧入部54aは吸気口側壁面57の径方向外側端部57bから吸気口側Y1に延びている。これにより、図2に示すように、外周圧入部54aと吸気口側壁面57もL字状をなすように形成されている。外周圧入部54aは径方向外側に面する円筒状面を形成しており、後述の外周被圧入部54bの内側に圧入されている。外周圧入部54aと外周被圧入部54bとは全周方向で当接して、外周シール部54を形成している。
【0028】
なお、内周シール部53及び外周シール部54の締め代は特に限定されず、内周シール部53及び外周シール部54に発生する応力等を考慮して適宜決定することができ、本例では両者の締め代は同一の大きさとしている。
【0029】
内周シール部53及び外周シール部54の一方または両方にシール材を介在させてもよい。シール材の種類は特に限定されないが、速乾性を有するものが好ましい。例えば、液体ガスケットとして使用されるシール材を使用することができる。
【0030】
図1図2に示すように、スクロールピース2は、第1流路形成部51を貫通して、冷媒流路5に連通する貫通孔からなる冷媒供給部22及び冷媒排出部23を有する。冷媒供給部22は冷媒流路5に冷媒を供給し、冷媒排出部23は排出するように構成されている。本例では、冷媒供給部22及び冷媒排出部23は、吸気口側壁面57から軸方向Yに平行に吸気口側Y1に延びている。
【0031】
図1図2に示すように、スクロールピース2は、外周シール部54の径方向外側であって、スクロール室12よりも内側の位置に、シュラウドピース3に対向するとともに径方向に平行な壁面である第1対向部16を有している。
【0032】
図1に示すように、本例では、吸気口形成部10はインデューサトリートメント部17を含んでいる。インデューサトリートメント部17は吸気口形成部10の内周面のセンタハウジング側Y2に位置しており、吸気口11から吸い込まれた空気をコンプレッサインペラ13に導くように、センタハウジング側Y2に向かうにつれて縮径している。
【0033】
一方、シュラウドピース3は、図2に示すように、第2スクロール室形成部122、シュラウド部20の一部、第1ディフューザ部35及び第2流路形成部52を有する。シュラウドピース3は全体として環状をなしている。
【0034】
図1に示すように、シュラウドピース3における第2スクロール室形成部122は、スクロール室12における内周側の壁面を形成している。シュラウド部20の一部は、コンプレッサインペラ13に対向するシュラウド面21の一部を形成している。第1ディフューザ部35はシュラウド面21からスクロール室12に向かって延びるディフューザ面34を形成している。本例では、ディフューザ面34は径方向Xに広がる平坦面となっている。第1ディフューザ部35は、センタハウジングのシールプレートに形成された第2ディフューザ部36とともにディフューザ部30を形成している。第2ディフューザ部36は、第1ディフューザ部35のディフューザ面34と所定距離をおいて対向する対向面37を有する。そして、ディフューザ面34と対向面37との間の空間がディフューザ通路15となっている。
【0035】
そして、図1に示すように、シュラウドピース3における第2流路形成部52は、上述の第1流路形成部51とともに冷媒流路5を形成するように構成されており、第2スクロール室形成部122の径方向内側に設けられている。図4図5に示すように、第2流路形成部52はセンタハウジング側Y2に凹んだ周方向に延びる環状の溝からなる空間50を有しており、外周側壁面56、センタハウジング側壁面58、内周被圧入部53b及び外周被圧入部54bを備える。シュラウドピース3における外周側壁面56は、円環状の冷媒流路5における径方向外側に位置する外周側の壁面である。本例では、シュラウドピース3における外周側壁面56は、図2に示すようにセンタハウジング側壁面58の径方向外側端部58aから吸気口側Y1に延びており、図4に示すように円筒状をなしている。センタハウジング側壁面58は空間50を形成する溝の底部をなしている。内周被圧入部53bは、当該溝の内周側壁をなしており、外周被圧入部54bは当該溝の外周側壁をなしている。内周被圧入部53b及び外周被圧入部54bは回転軸13aに平行に延びる円筒面となっている。そして、外周被圧入部54bの径方向外側面は第2スクロール室形成部122をなしている。
【0036】
図1図2に示すように、外周被圧入部54bは外周側壁面56から吸気口側Y1に延びており、図2に示すように、外周被圧入部54bとセンタハウジング側壁面58とは符号L2で示すようにL字状をなすように形成されている。
【0037】
図2に示すように、内周被圧入部53bは外周被圧入部54bよりもセンタハウジング側Y2に位置している。そして、センタハウジング側壁面58から内周被圧入部53bの軸方向Yの先端p1までの高さh1は、センタハウジング側壁面58から外周被圧入部54bの軸方向Yの先端p2までの高さh2よりも十分に低くなっている。これにより、空間50を形成する溝の深さが十分浅くなっている。本例では、内周被圧入部53bの高さh1は、外周被圧入部54bの高さh2の半分未満としている。
【0038】
シュラウドピース3は、外周被圧入部54bよりも吸気口側Y1に位置する端部に、スクロールピース2に対向するとともに径方向に平行な壁面である第2対向部26を有している。シュラウドピース3の第2対向部26はスクロールピース2の第1対向部16に当接して、第1当接部71を形成している。そして、第1流路形成部51と第2流路形成部52との間に冷媒流路5が形成されている。
【0039】
図1に示すように、外周環状ピース4は、第3スクロール室形成部123と、外周環状ピース挿入部41とを有する。第3スクロール室形成部123は、スクロール室12における外周側の壁面を構成している。外周環状ピース挿入部41は、外周部125の内側に挿入されている。
【0040】
次に、本例のターボチャージャ用コンプレッサハウジング1の製造方法について説明する。
まず、成形工程において、図5に示すスクロールピース2とシュラウドピース前駆体3aをダイカストにより個別に作製する。シュラウドピース前駆体3aは、シュラウドピース3と外周環状ピース4とが連結部4aにより連結された状態のものである。そして、シュラウドピース前駆体3aにおける溝状の空間50は、ダイカストにより形成されている。なお、スクロールピース2の内周圧入部53a及び外周圧入部54a、シュラウドピース3の内周被圧入部53b及び外周被圧入部54bについては、成形精度を高めるために機械加工を施す。そして、本例では、図1、2に示すスクロールピース2における貫通孔からなる冷媒供給部22及び冷媒排出部23を機械加工によって形成する。一方、スクロールピース2の内周面20aは円筒状をなしており、シュラウド面21(図1参照)が未形成の状態となっている。
【0041】
次に、組付工程では、図5に示すように、スクロールピース2とシュラウドピース前駆体3aとの位相を合わせた状態で、矢印Pで示す方向に移動させて、スクロールピース2の内周圧入部53aをシュラウドピース前駆体3aの内周被圧入部53bに圧入し、スクロールピース2の外周圧入部54aをシュラウドピース前駆体3aの外周被圧入部54bに圧入するとともに、スクロールピース2の外周部125の内側にシュラウドピース前駆体3aの外周環状ピース挿入部41を圧入する。なお、第1スクロール室形成部121と第3スクロール室形成部123との間には、若干の隙間Cが存在して互いに当接しないように構成されている。これにより、第1対向部16と第2対向部26とが確実に当接することとなる。
【0042】
そして、スクロールピース2の内周圧入部53aがシュラウドピース3の内周被圧入部53bに圧入されて内周シール部53が形成されるとともに、スクロールピース2の外周圧入部54aがシュラウドピース3の外周被圧入部54bに圧入されて外周シール部54が形成される。これにより、軸断面においてL字状をなす内周圧入部53aと吸気口側壁面57を有するスクロールピース2と、L字状をなす外周被圧入部54bとセンタハウジング側壁面58を有するシュラウドピース3が、互いのL字状部分が組み合わさることで両者の間に冷媒流路5が形成され、冷媒流路5における第1流路形成部51と第2流路形成部52との間がシールされる。そして、本例では、図7に示すスクロールピース2の内周面20a及びシュラウドピース前駆体3aの一部を機械加工して、シュラウド面21を形成する。
【0043】
その後、切り離し工程として、図5に示すシュラウドピース前駆体3aの連結部4aを機械加工により取り除いて、図1に示すようにシュラウドピース3と外周環状ピース4とを互いに切り離す。これにより、ターボチャージャ用コンプレッサハウジング1が完成する。
【0044】
そして、ターボチャージャ用コンプレッサハウジング1では、図1図2に示す冷媒流路5に連通する冷媒供給部22及び冷媒排出部23に図示しない冷媒導入管及び冷媒排出管を接続して、これらを介して冷媒を冷媒流路5に流通させることにより、ディフューザ面34を冷却することができる。
【0045】
なお、成形工程の後、内周圧入部53a又は内周被圧入部53bにシール材を塗布した後、組付工程を行うことにより、内周シール部53にシール材が介在するようにしてもよい。同様に、成形工程の後、外周圧入部54a又は外周被圧入部54bにシール材を塗布した後、組付工程を行うことにより、外周シール部54にシール材が介在するようにしてもよい。
【0046】
次に、本例のターボチャージャ用コンプレッサハウジング1の作用効果について詳述する。
本例のターボチャージャ用コンプレッサハウジング1によれば、冷媒流路5における内周シール部53及び外周シール部54は、スクロールピース2に形成された内周圧入部53a及び外周圧入部54aが、シュラウドピース3に形成された内周被圧入部53bの内周側及び外周被圧入部54bの内周側に圧入されてなる。そして、冷媒流路5の内周側壁面55の一部はスクロールピース2により形成され、冷媒流路5の外周側壁面56はシュラウドピース3に形成されており、両者が径方向Xに互いに対向している。これとともに冷媒流路5の吸気口側壁面57はスクロールピース2により形成され、冷媒流路5のセンタハウジング側壁面58はシュラウドピース3に形成されており、両者が軸方向Yに互いに対向している。これらにより、冷媒流路5を幅広にしつつ、ダイカスト成形における鋳抜き深さの制約を受けない形状でディフューザ面34に近い位置に形成することができる。その結果、鋳抜き後に溝を掘る必要がなく、ダイカスト成形において製造コストの低減が図られる。そして、ターボチャージャ用コンプレッサハウジング1は冷媒流路5を備えることにより、ディフューザ通路15におけるデポジットの堆積が抑制されてエンジンの高回転側で高過給化を図ることができ、エンジンの最高出力の向上を図ることができる。
【0047】
また、本例では、スクロールピース2の第1対向部16とシュラウドピース3の第2対向部26とが、軸方向Yに対向して互いに接することにより、圧入をする際の位置決めをする第1当接部71を形成する。これにより、第1当接部71によってスクロールピース2及びシュラウドピース3の圧入方向となる軸方向Yの位置決めがなされるため、スクロールピース2とシュラウドピース3との組み付け精度を向上することができる。
【0048】
また、本例では、吸気口形成部10はインデューサトリートメント部17を含んでいる。インデューサトリートメント部17は吸気口形成部10の内周面のセンタハウジング側Y2に位置しており、吸気口形成部10の吸気口11から吸い込まれた空気をコンプレッサインペラ13に導くように、センタハウジング側Y2に向かうにつれて縮径している。そして、本例では、スクロールピース2の吸気口形成部10のセンタハウジング側Y2の位置にはシュラウドピース3の先端が位置しないことから、スクロールピース2の吸気口形成部10の内周面とシュラウドピース3の先端との間に段差が形成されない。そのため、当該位置にインデューサトリートメント部17を設けて、吸気口11から吸い込まれた空気をコンプレッサインペラ13に導くことにより、空気を最適な角度でコンプレッサインペラ13に向かわせることができる。これにより、吸気の圧縮効率を向上することができる。
【0049】
なお、本例では、ターボチャージャ用コンプレッサハウジング1は、スクロールピース2、シュラウドピース3及び外周環状ピース4からなる3ピース構造としたが、これに替えて、ターボチャージャ用コンプレッサハウジング1をスクロールピース2及びシュラウドピース3からなる2ピース構造とし、センタハウジングのシールプレートに外周環状ピース4が一体化された構成としてもよい。
【0050】
本発明は上記実施例及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施例及び変形例に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ターボチャージャ用コンプレッサハウジング
2 スクロールピース
3 シュラウドピース
30 ディフューザ部
5 冷媒流路
51 第1流路形成部
52 第2流路形成部
53 内周シール部
53a 内周圧入部
53b 内周被圧入部
54 外周シール部
54a 外周圧入部
54b 外周被圧入部
55 内周側壁面
56 外周側壁面
57 吸気口側壁面
58 センタハウジング側壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7