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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】検出装置及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/042 20060101AFI20231013BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231013BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20231013BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20231013BHJP
   G02B 5/22 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
G06F3/042 472
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
H01L31/02 D
G02B5/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020089227
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021184171
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 一秀
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-003650(JP,A)
【文献】国際公開第2019/097795(WO,A1)
【文献】特表2019-512762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/042
H05B 33/14
H01L 31/02
G02B 5/22
A61B 5/1172
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の光センサと、
前記複数の光センサによる光の検出面側に設けられる光フィルタとを備え、
前記光フィルタは、光を透過しない基部と、前記基部に設けられて光を通過させる複数のアパーチャとを備え、
前記基部における前記複数のアパーチャの配置は、所定の一点側から外側に向かって右周りの渦巻き状に並ぶ配置と、前記所定の一点側から外側に向かって左周りの渦巻き状に並ぶ配置と、を含む
検出装置。
【請求項2】
前記複数のアパーチャのうち最も近接した位置にある2つのアパーチャ同士のピッチは、隣接する2つの光センサ同士のピッチ以下である
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記複数のアパーチャのうち最も離れた位置にある2つのアパーチャ同士のピッチは、隣接する2つの光センサ同士のピッチ以下である
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記複数のアパーチャの配置は、前記右周りの渦巻き状に並ぶアパーチャの列を円周方向に第1所定数並べた配置であり、かつ、前記左周りの渦巻き状に並ぶアパーチャの列を円周方向に第2所定数並べた配置であり、
前記第1所定数と前記第2所定数の関係は、フィボナッチ数列において連続する2つの異なる値の関係である
請求項1から3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記光フィルタは、前記光の検出面に沿って配置される複数の部分領域を有し、
1つの部分領域における前記複数のアパーチャの配置は、当該1つの部分領域の中心点側から外側に向かって右周りの渦巻き状に並ぶ配置と、前記中心点側から外側に向かって左周りの渦巻き状に並ぶ配置と、を含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の検出装置と、
前記検出装置の検出面側に配置される表示パネルと、を有する
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指紋のような面状の被検出物を対象として複数の光センサが配置された検出装置において、光センサと被検出物との間に光フィルタが設けられた構成が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-003650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光フィルタには、被検出物から光センサに向かう光を透過させる複数のアパーチャが設けられる。ここで、複数の光センサの並び方向と複数のアパーチャの並び方向との関係によっては、複数の光センサの各々の検出結果を統合して得られた検出画像にモアレが生じることがある。このため、検出装置の製造工程等において意図せず複数の光センサの並び方向と複数のアパーチャの並び方向との関係にずれが生じた場合、意図しないモアレが生じる。従来の検出装置は、このような意図しないモアレへの対策が不十分であった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、意図しないモアレをより確実に抑制できる検出装置及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による検出装置は、マトリクス状に配置された複数の光センサと、前記複数の光センサによる光の検出面側に設けられる光フィルタとを備え、前記光フィルタは、光を透過しない基部と、前記基部に設けられて光を透過させる複数のアパーチャとを備え、前記基部における前記複数のアパーチャの配置は、所定の一点側から外側に向かって右周りの渦巻き状に並ぶ配置と、前記所定の一点側から外側に向かって左周りの渦巻き状に並ぶ配置と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る検出装置を備える電子機器の模式図である。
図2図2は、検出領域における積層構造の主要構成例を示す模式図である。
図3図3は、部分検出領域の回路構成例を示す図である。
図4図4は、複数の光センサの配置と複数のアパーチャの配置との第1方向Dx-第2方向Dy平面視点での関係の一例を示す模式図である。
図5図5は、検出領域における複数のアパーチャの配置例を示す模式図である。
図6図6は、図5における中心点付近の拡大図である。
図7図7は、図6において中心点側から外側に向かって右周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ同士を結ぶ線を示す図である。
図8図8は、図6において中心点側から外側に向かって左周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ同士を結ぶ線を示す図である。
図9図9は、複数のアパーチャの配置が図5に示す例とは異なる光フィルタの例を示す模式図である。
図10図10は、参考例による光フィルタと光センサとの関係を示す模式図である。
図11図11は、回転角度の大きさに応じて生じる検出画像のモアレをアパーチャピッチ毎に例示する表である。
図12図12は、アパーチャピッチと回転角度の組み合わせ条件に応じた光の分布を参考例と実施形態とで比較した例を示す表である。
図13図13は、変形例に係る表示装置の概略断面構成を示す断面図である。
図14図14は、変形例に係る検出装置を示す平面図である。
図15図15は、変形例に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。
図16図16は、変形例に係る検出装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
図1は、実施形態に係る検出装置90(図2参照)を備える電子機器50の模式図である。電子機器50は、例えばスマートフォンのように情報処理装置として機能する電子機器である。図示しないが、係る情報処理装置として機能するための演算回路等は、筐体51内に設けられている。
【0010】
電子機器50は、表示部60を備える。表示部60は、画像を表示する。表示部60は、画像の表示領域内に検出領域SAを含む。なお、表示部60における検出領域SAの大きさ及び位置は図1に示すものに限定されるものでない。例えば、表示部60全体が検出領域SAとして機能してもよい。また、表示部60は、複数の検出領域SAを含んでいてもよい。
【0011】
実施形態に係る説明において、互いに直交する2方向のうち一方を第1方向Dxとし、他方を第2方向Dyとする。第1方向Dx及び第2方向Dyは、表示部60の表示面に沿う。また、第1方向Dx及び第2方向Dyに直交する方向を第3方向Dzとする。
【0012】
図2は、検出領域SAにおける積層構造の主要構成例を示す模式図である。検出領域SAには、表示部61と、赤外線カットフィルタ62と、光フィルタ70と、センサ部80と、が設けられている。これらの構成は、図2に示すように、第3方向Dzに積層される。実施形態の検出装置90は、少なくとも光フィルタ70と、センサ部80とを含む。
【0013】
表示部61は、例えばOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイのような、自発光型の表示パネル61aを備える。すなわち、表示パネル61aは、可視光を発光する機能を有する。具体的には、表示パネル61aは、複数の画素VPixを備える。複数の画素VPixは、例えば第1方向Dx及び第2方向Dyに沿ってマトリクス状に配置される。なお、複数の画素VPixの配置はこれに限られるものでなく、例えば千鳥状に配置されてもよいし、他の並びで配置されてもよい。
【0014】
各画素VPixは、第1副画素SPix1、第2副画素SPix2及び第3副画素SPix3のような複数の副画素を含む。第1副画素SPix1と、第2副画素SPix2と、第3副画素SPix3は、例えば赤、青、緑のように、それぞれ異なる色の可視光を発する。各副画素から発せられる光は、表示パネル61aが備える図示しない有機発光層から発せられる光である。
【0015】
図示しないが、表示パネル61aは、有機発光層に対して赤外線カットフィルタ62側に設けられたガスバリア層を有する。ガスバリア層は、有機発光層の安定性をより高める。検出領域SAにおけるガスバリア層は、有機発光層が発する可視光の少なくとも一部分を透過させる透光性のガスバリア層である。透光性のガスバリア層は、例えばPET(Poly Ethylene Terephthalate)のような合成樹脂を用いて形成された薄膜層である。なお、透光性のガスバリア層の具体的な組成はこれに限られるものでなく、他の合成樹脂を用いたものであってもよいし、合成樹脂以外の透光性の素材を用いたものであってもよい。
【0016】
また、表示部60のうち検出領域SAでない部分には、ガスバリア層として有機発光層が発する可視光を透過させない不透光性のガスバリア層が設けられる。不透光性のガスバリア層は、例えば金属の酸化物を用いて形成された薄膜層である。当該金属として利用可能なものとして、例えばケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)又はスズ(Sn)のいずれかが挙げられるが、これに限られるものでない。当該金属は、不透光性のガスバリア層として機能できる酸化物となる金属であればよい。
【0017】
各副画素から発せられた光L1は、表示面側に出射される。表示面側は、表示パネル61aから見て赤外線カットフィルタ62の反対側である。ここで、検出領域SAにおいて表示パネル61aの表示面側に指Fgのような被検出物がある場合、光L1の少なくとも一部は被検出物によって反射された光L2として表示パネル61aを透過して赤外線カットフィルタ62側に向かう。
【0018】
表示パネル61aの赤外線カットフィルタ62側には、接着層61bが設けられる。表示部61と赤外線カットフィルタ62とは、接着層61bを介して接着されて積層される。
【0019】
赤外線カットフィルタ62は、例えば、ガラス基板62aと、接着層62bと、干渉層62cとを備える。ガラス基板62aは、接着層61bを介して表示パネル61aと接着される透光性の基板である。接着層62bは、赤外線カットフィルタ62の光フィルタ70側に設けられる。赤外線カットフィルタ62と光フィルタ70とは、接着層62bを介して接着されて積層される。干渉層62cは、ガラス基板62aと接着層62bとの間に設けられる。干渉層62cは、例えば、表示面側から入射する光L2及び外光のうち赤外線を表示面側に反射するために設けられる薄膜フィルムからなる。係る干渉層62cは、赤外線の入射によるセンサ部80の温度上昇を抑制する。具体的には、当該薄膜フィルムは、例えば銀(Ag)の薄膜層を含む。当該薄膜層を含む薄膜フィルムは、光L2のような可視光の少なくとも一部を透光させる。なお、干渉層62cの具体的な構成はこれに限られるものでなく、同様に機能する他の構成であってもよい。
【0020】
光フィルタ70は、第3方向Dzに沿って光L2を透過させて、第3方向Dz以外の迷光を抑制する光学要素である。具体的には、光フィルタ70は、基部73と、複数のアパーチャ72と、を備える。基部73は、光を透過しない遮光性の部材として機能する。これにより、後述する複数の部分検出領域PAAにおいて隣り合う部分検出領域PAAの間のクロストークが抑制される。
【0021】
複数のアパーチャ72は、基部73の第1方向Dx-第2方向Dy平面に沿って配置される。各アパーチャ72は、例えば基部73を第3方向Dz方向に貫通する孔である。アパーチャ72の径は、例えば15[μm]であるが、これに限られるものでなく、適宜変更可能である。アパーチャ72は、コリメートアパーチャ、あるいは、コリメータとも言う。アパーチャ72は、内周面が第3方向Dz方向に沿うよう基部73に形成された円筒状の貫通孔であってもよい。この場合、内周面の第3方向Dz方向の長さは、赤外線カットフィルタ62側のある一点からセンサ部80側に向かって放射状に照射されてアパーチャ72に進入する光のうち、第3方向Dzに向かう光及びほぼ第3方向Dzに向かう光がセンサ部80側に到達する程度とされる。言い換えれば、内周面の第3方向Dz方向の長さは、当該内周面によって第3方向Dzに交差する方向の光が遮光される程度の長さとされる。また、透光性のある材料が孔に埋められていてもよい。この場合、孔の内周面形状は、例えば赤外線カットフィルタ62側からセンサ部80側に向かって末広がりの形状になる。
【0022】
センサ部80には、複数の部分検出領域PAAが設けられる。複数の部分検出領域PAAは、第1方向Dx及び第2方向Dyに沿ってマトリクス状に配置される。なお、実施形態では、画素VPixのマトリクス状の並び方向と、部分検出領域PAAのマトリクス状の並び方向と、が一致しているが、不一致であってもよい。
【0023】
図3は、部分検出領域PAAの回路構成例を示す図である。図3に示すように、部分検出領域PAAは、フォトダイオードPDと、容量素子Caと、スイッチング素子Trとを含む。スイッチング素子Trは、フォトダイオードPDに対応して設けられる。スイッチング素子Trは、薄膜トランジスタにより構成されるものであり、この例では、nチャネルのMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のTFT(Thin Film Transistor)で構成されている。スイッチング素子Trのゲートはゲート線GCLに接続される。スイッチング素子Trのソースは信号線SGLに接続される。スイッチング素子Trのドレインは、フォトダイオードPDのアノード及び容量素子Caに接続される。
【0024】
フォトダイオードPDのカソードには、電源信号SVSが供給される。また、容量素子Caには、容量素子Caの初期電位となる基準信号VR1が供給される。電源信号SVS及び基準信号VR1を供給する構成は、後述する変形例における電源回路103(図14参照)と同等の構成であってもよいし、実施形態で設けられた図示しない専用の構成であってもよい。図16に示すように、ゲート線GCLは、第1方向Dxに延在し、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAと接続される。信号線SGLは、第2方向Dyに延在し、第2方向Dyに配列された複数の部分検出領域PAAに接続される。
【0025】
部分検出領域PAAに光が照射されると、フォトダイオードPDには光量に応じた電流が流れ、これにより容量素子Caに電荷が蓄積される。ゲート線GCLを介して伝送された駆動信号に応じてスイッチング素子Trがオンになると、容量素子Caに蓄積された電荷に応じて、信号線SGLに電流が流れる。信号線SGLに流れた電流により、センサ部80は、部分検出領域PAAごとに、フォトダイオードPDに照射される光の光量に応じた信号を検出できる。なお、駆動信号をゲート線GCLに供給する構成は、後述する変形例におけるゲート線駆動回路15(図14等参照)と同等の構成であってもよいし、実施形態で設けられた図示しない専用の構成であってもよい。
【0026】
なお、実施形態においてマトリクス状に配置された複数の部分検出領域PAAに個別に設けられたフォトダイオードPDは、第1方向Dx及び第2方向Dyに所定ピッチでマトリクス状に配置されたマイクロフォトダイオードである。所定ピッチは、例えば50[μm]である。当該所定ピッチは、指Fgの指紋を検出することを想定して設定されているが、これに限られるものでない。所定ピッチは、主要な被検出対象に対応するよう適宜決定される。
【0027】
図2に示す基板85は、図3に示す各種構成が実装される基板である。基板85は、不透光性の基板である。すなわち、複数の部分検出領域PAAが構成する光の検出面は、光フィルタ70側に面する。なお、当該光の検出面は、複数の部分検出領域PAAがマトリクス状に設けられる第1方向Dx-第2方向Dy平面に沿う。
【0028】
図2に基づいて、指Fgの指紋検出の流れを説明する。指紋を表示部61に対向させるよう指Fgが検出領域SAに位置した状態で、画素VPixを構成する各副画素から光L1が表示部61から照射される。当該光L1の一部は、指Fgによって反射された光L2として表示部61を透過して赤外線カットフィルタ62側に向かう。光L2は、赤外線カットフィルタ62を透過して光フィルタ70に向かう。赤外線カットフィルタ62を透過した光L2のうち第3方向Dzに沿う光がアパーチャ72を通過し、フォトダイオードPDによって検出される。複数の部分検出領域PAAが個別に有する複数のフォトダイオードPDによる光の検出パターンは、指紋のパターンに対応する。係る光の検出パターンに応じて、容量素子Caに蓄積される電荷及び信号線SGLに流れる電流が決定される。実施形態では、係る電流に基づいて二次元画像を生成する各種の処理を行う構成が設けられる。係る構成は、当該二次元画像を指紋の検出画像として出力する。このようにして、センサ部80の出力に基づいた指紋検出が行われる。なお、係る構成は、例えば後述する変形例における検出部40と同等の構成であってもよいし、実施形態で設けられた図示しない専用の構成であってもよい。
【0029】
拡散光や迷光等、指紋の検出に不要な光がフォトダイオードPDに検出されてしまった場合、意図しないクロストークが発生することがある。係るクロストークは、検出画像にぼやけを生じさせる原因になりうる。実施形態では、部分検出領域PAAで検出される光を、アパーチャ72を通過した光に限定することによって、係るクロストークの発生を抑制できる。すなわち、実施形態では、クロストークによる検出画像のぼやけを良好に抑制できる。
【0030】
次に、複数の部分検出領域PAAの配置と複数のアパーチャ72の配置との関係について、図4から図8を参照して説明する。図4は、複数の部分検出領域PAAの配置と複数のアパーチャ72の配置との第1方向Dx-第2方向Dy平面視点での関係の一例を示す模式図である。図5は、検出領域SAにおける複数のアパーチャ72の配置例を示す模式図である。図6は、図5における中心点C付近の拡大図である。図7は、図6において中心点C側から外側に向かって右周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ72同士を結ぶ線T01,T02,…,T21を示す図である。図8は、図6において中心点C側から外側に向かって左周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ72同士を結ぶ線A01,T02,…,T34を示す図である。
【0031】
上述のように、複数の部分検出領域PAAの配置は、マトリクス状である。これに対し、複数のアパーチャ72の配置は、中心点C側から外側に向かって右周りの渦巻き状に並ぶ配置(図6図7参照)と、中心点C側から外側に向かって左周りの渦巻き状に並ぶ配置(図6図8参照)と、を含む。所定の一点として機能する中心点Cは、複数のアパーチャ72の配置における第1方向Dx-第2方向Dy平面の中心となる点であり、複数のアパーチャ72の配置の決定に際して予め定められる。
【0032】
なお、図4に示す部分検出領域PAAの配置は、図6に示す部分検出領域PAAのうち、検出領域SAに対応した矩形状の範囲に含まれる一部の部分検出領域PAAの配置である。図4では、中心点Cと検出領域SAの中心とが重なるように、図6における部分検出領域PAAの配置と図4における検出領域SAとの位置関係が決定されている。
【0033】
具体的には、アパーチャ72の各々の位置は、x座標を式(1)で求め、y座標を式(2)で求めた第1方向Dx-第2方向Dy平面における(x,y)座標系の座標として表せる。なお、x座標は、第1方向Dxの座標である。また、y座標は、第2方向Dyの座標である。ここで、中心点Cの座標は、(x,y)=(0,0)である。なお、式(1)及び式(2)におけるaは、0でない任意の定数である。また、式(1)及び式(2)におけるtは、媒介変数である。媒介変数とは、配置されるアパーチャ72の数に応じて1から順次設定される自然数である。例えば、式(1)及び式(2)におけるtに1を代入することで1番目のアパーチャ72の座標が求められる。また、式(1)及び式(2)におけるtに2を代入することで2番目のアパーチャ72の座標が求められる。以降、同様に、式(1)及び式(2)におけるtにmを代入することでm番目のアパーチャ72の座標が求められる。ここで、mは3以上の自然数である。また、式(1)及び式(2)におけるαは、黄金角を示す。αは、式(3)のように表せる。式(3)を解くと、α=137.507764…[°]である。また、式(1)及び式(2)におけるΦは、黄金比を示す。Φは、式(4)のように表せる。式(4)を解くと、Φ=1.618…である。また、式(1)及び式(2)における(α/180)nは、黄金角をラジアン単位で示したものである。(α/180)nは、式(5)のように表せる。式(5)を解くと、(α/180)nは、約2.4である。
【数1】
【0034】
上述の式(1)から式(5)及び予め定められたaに基づいて、tに代入される値を漸増させながら複数のアパーチャ72の各々の配置を順次決定する演算を進行させることで、複数のアパーチャ72の各々の具体的な配置を決定できる。このようにして配置が決定された複数のアパーチャ72は、図5に示すように、中心点Cを中心した円状の範囲を形成するように配置される。ここで、より小さなtの値が代入されることで配置が決定されたアパーチャ72は、中心点Cにより近い配置になる。従って、図5に示す円状の範囲の円周を縁取るように配置された最外周のアパーチャ72は、より内側に配置されたアパーチャ72に比してより大きなtの値が代入されることで配置が決定されたアパーチャ72である。なお、図5では、代表的に1つの黒点に符号72を付しているが、実際には、図5で図示された全ての黒点がアパーチャ72である。なお、図1で例示する検出領域SAは矩形である。基部73が検出領域SAに対応した形状となるよう設けられる場合、当該基部73に設けられるアパーチャ72は、例えば、図5に示す検出領域SA内のアパーチャ72となる。なお、図5に示すアパーチャ72の大きさ及び配置の密度は、図4に示すアパーチャ72の大きさ及び配置の密度に比して実際のものにより近いが、実際のアパーチャ72の大きさ及び配置の密度は、図5に比してより細密になる。
【0035】
図6に示す複数のアパーチャ72のうち、最も近接する2つのアパーチャ72同士のピッチをピッチP1とする。この場合、ピッチP1は、所定ピッチ以下である。すなわち、ピッチP1は、第1方向Dxに隣接する2つのフォトダイオードPD同士のピッチ以下である。また、ピッチP1は、第2方向Dyに隣接する2つのフォトダイオードPD同士のピッチ以下である。
【0036】
図6に示す複数のアパーチャ72のうち、最も離隔された2つのアパーチャ72同士のピッチをピッチP2とする。この場合、ピッチP2は、所定ピッチ以下である。すなわち、ピッチP2は、第1方向Dxに隣接する2つのフォトダイオードPD同士のピッチ以下である。また、ピッチP2は、第2方向Dyに隣接する2つのフォトダイオードPD同士のピッチ以下である。
【0037】
ピッチP1及びピッチP2を所定ピッチ以下とすることで、第1方向Dx-第2方向Dy平面視点で各フォトダイオードPDに対して1つ以上のアパーチャ72を配置しやすくなる。
【0038】
図7では、図6に示す中心点C側を開始点として、外側に向かって右周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ72の並びをなぞる線分T1,T2,…,T21を示している。線分T1,T2,…,T21は、円周方向に並ぶ。すなわち、光フィルタ70における複数のアパーチャ72の配置は、右周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ72の列を円周方向に第1所定数並べた配置であるといえる。図7に示す例の場合、第1所定数は、21である。
【0039】
図8では、図6に示す中心点C側を開始点として、外側に向かって左周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ72の並びをなぞる線分A1,A2,…,A34を示している。線分A1,A2,…,A34は、円周方向に並ぶ。すなわち、光フィルタ70における複数のアパーチャ72の配置は、左周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ72の列を円周方向に第2所定数並べた配置であるといえる。図7に示す例の場合、第2所定数は、34である。
【0040】
ここで、第1所定数と第2所定数の関係は、フィボナッチ数列において連続する2つの異なる値の関係である。フィボナッチ数列は、F=0,F=1,F(n+2)=F+F(n+1)(n≧0)の漸化式で定義される。フィボナッチ数列のうちF,F,F,…,F10までを列挙すると、0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55である。図7に示す例の場合、第1所定数は、F(=21)である。図8に示す例の場合、第2所定数は、F(=34)である。すなわち、第1所定数は、フィボナッチ数列において連続する2つの異なる値のうち一方(例えば、小さい方)の値に対応する。また、第2所定数は、フィボナッチ数列において連続する2つの異なる値のうち他方(例えば、大きい方)の値に対応する。なお、図6から図8に示すアパーチャ72の配置を鏡面反転させた場合、第1所定数と第2所定数との大小関係は逆転する。このように、図6に示す複数のアパーチャ72の配置は、図7に示すような右周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ72の列を円周方向に第1所定数並べた配置であり、かつ、図8に示すような左周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ72の列を円周方向に第2所定数並べた配置である。
【0041】
なお、図7では、中心点Cの図示を省略している。これは図7における線分T1,T2,…,T21と、中心点Cの引き出し線との交錯を避けることを目的としている。実際には、図6に示す中心点Cと同様、図7に示す複数のアパーチャ72の中心側に中心点Cが位置する。図8で中心点Cの図示を省略していることに関しても同様である。また、図7及び図8を参照して説明した第1所定数と第2所定数の具体的な値はあくまで一例であってこれに限られるものでない。第1所定数と第2所定数の組み合わせは、フィボナッチ数列において連続する2つの異なる値であって、より小さな値を含む組み合わせであってもよいし、より大きな値を含む組み合わせであってもよい。
【0042】
また、図7では、線分T1,T2,…,T21のうち、円周方向に隣接する2つの線分同士の間隔が外周側に向かうほど大きくなる傾向がある。また、図8では、線分A1,A2,…,A34のうち、円周方向に隣接する2つの線分同士の間隔が外周側に向かうほど大きくなる傾向がある。このように、上述の式(1)から式(5)及び予め定められたaに基づいて決定された複数のアパーチャ72の配置では、外周側に向かうほど渦巻き状に並ぶアパーチャ72の列同士の間隔が大きくなる傾向がある。すなわち、当該配置では、外周側に向かうほど円周方向に隣接するアパーチャ72同士の間隔が大きくなる傾向がある。円周方向に隣接するアパーチャ72同士の間隔は、内周側の最小間隔に対する外周側の最大間隔の比を1.1以下にすることが望ましい。
【0043】
図9は、複数のアパーチャ72の配置が図5に示す例とは異なる光フィルタ70Aの例を示す模式図である。実施形態では、光フィルタ70に代えて光フィルタ70Aを設けてもよい。光フィルタ70Aは、複数の部分領域75を有する。各部分領域75には個別に中心点Cが設定される。各部分領域75には複数のアパーチャ72が配置される。各部分領域75における複数のアパーチャ72の配置は、中心点C側から外側に向かって右周りの渦巻き状に並ぶ配置(図6図7参照)と、中心点C側から外側に向かって左周りの渦巻き状に並ぶ配置(図6図8参照)と、を含む。
【0044】
具体的には、各部分領域75における複数の部分領域75の配置は、上述の光フィルタ70における複数のアパーチャ72の配置と同様である。すなわち、各部分領域75における複数の部分領域75の配置は、上述の式(1)から式(5)及び予め定められたaに基づいて決定された複数のアパーチャ72の配置である。
【0045】
なお、図9では、正六角形状の部分領域75がハニカム状に敷き詰められている。各部分領域75は、図5に示すように複数の部分領域75が配置された円状の範囲のうち正六角形状の範囲を抽出したものである。光フィルタ70Aは、正六角形状の部分領域75がハニカム状に敷き詰められるように複数のアパーチャ72が形成された基部73を検出領域SAに対応する形状となるように切り出したものである。
【0046】
図9では、隣接する部分領域75同士の境界を分かりやすくする目的で当該境界に空白状の隙間を設けているが、実際には当該隙間が生じないように隣接する部分領域75同士が近接して配置される。光フィルタ70Aは、このように複数の部分領域75を隙間なく敷き詰めることで、各部分領域75における内周側(中心点C側)の最小間隔に対する外周側の最大間隔の比をより1に近くしやすくなる。従って、隣接する部分領域75同士の間隔をより均一化しやすくなる。
【0047】
なお、各部分領域75の形状は正六角形状に限られるものでない。例えば、正方形状等、隙間なく配置可能な他の形状であってもよい。
【0048】
以下、実施形態の光フィルタ70及び光フィルタ70Aによる作用効果について、参考例と比較しながら説明する。
【0049】
図10は、参考例による光フィルタ170と部分検出領域181との関係を示す模式図である。参考例による光フィルタ170は、基部173に複数のアパーチャ172が設けられている。複数のアパーチャ172の配置は、マトリクス状である。基部173は、基部73と同様の構成である。アパーチャ172の各々は、アパーチャ72と同様である。部分検出領域181の各々は、部分検出領域PAAと同様である。部分検出領域181の配置は、マトリクス状である。
【0050】
図10に示すアパーチャ172のピッチは、部分検出領域181におけるフォトダイオードPDの所定ピッチと同様である。従って、理想的にアパーチャ172の配置と部分検出領域181の配置とが一致した場合、1つの部分検出領域181に1つのアパーチャ172が重なり、かつ、重なり合う部分検出領域181と基部173との位置関係が統一される。しかしながら、実際には、部分検出領域181が設けられたセンサ基板と光フィルタ170とを積層する製造工程で、センサ基板と光フィルタ170との間に回転角度θが生じることがある。図10では、回転軸oを中心として、部分検出領域181のマトリクス状の並び方向に対してアパーチャ172のマトリクス状の並び方向が誤差を生じるように回転した場合の回転角度θを示している。例えば、複数の部分検出領域181が第1方向Dx及び第2方向Dyに沿うマトリクス状の配置であるとすると、回転軸oを中心として、アパーチャ172の並びが第1方向Dx及び第2方向Dyに交差する方向になるように回転することで回転角度θが0度(°)よりも大きくなる。
【0051】
図11は、回転角度の大きさに応じて生じる検出画像のモアレをアパーチャピッチ毎に例示する表である。なお、図11におけるアパーチャピッチとは、アパーチャ172のピッチである。また、図11及び後述する図12における回転角度は、図10に示す回転角度θをさす。
【0052】
理想的には、図10に示す回転角度θは0度(°)である。従って、参考例であっても、アパーチャピッチが25[μm]又は50[μm]であって、回転角度θが0度(°)である理想的な状況の場合、モアレはほとんど生じない。なお、図11に示す例では、回転角度θが0度(°)であってもアパーチャピッチが30[μm]又は40[μm]である場合、モアレのようなパターンが生じている。ただし、これは回転角度θが0度(°)である場合に生じる設計上想定されたパターンであるものとして扱える。
【0053】
一方、回転角度θが0度(°)でない場合、上述の理想的な状況の場合には生じなかったモアレが生じる。図11では、回転角度θが0度(°)でない場合の例として、回転角度θが15度(°)、30度(°)又は45度(°)である場合を例示しているが、いずれの場合であってもモアレが生じている。なお、回転角度θの大きさとモアレの顕著さとの間には特に相関は見られず、回転角度θが0度(°)でないことによってモアレが生じているものと考えられる。
【0054】
図12は、アパーチャピッチと回転角度の組み合わせ条件に応じた光の分布を参考例と実施形態とで比較した例を示す表である。係る光の分布とは、実施形態のアパーチャ72又は参考例のアパーチャ172のようなアパーチャが通過させる光を限定することによって生じるものである。検出画像には、係る光の分布の影響が現れる。参考例のアパーチャ配列は例えばマトリックス状に配置される。実施形態のアパーチャ配置は例えば左右渦巻き状とされる。ここでいう左右渦巻き状とは、図7を参照して説明した「外側に向かって右周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ72の並び」と及び図8を参照して説明した「外側に向かって左周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ72の並び」の両方に該当する実施形態のアパーチャ配置をさす。
【0055】
なお、図12におけるアパーチャピッチのうち、参考例のアパーチャピッチについては、図11におけるアパーチャピッチと同様、アパーチャ172のピッチである。また、実施形態のアパーチャピッチとは、複数のアパーチャ72の配置において隣接するアパーチャ72同士の平均的なピッチをさす。図12では、回転角度θが0度(°)である場合と、回転角度θが0度(°)でない場合とを対比可能に示している。また、回転角度θが0度(°)でない場合として、回転角度θが3度(°)である場合と、回転角度θが5度(°)である場合とを示している。
【0056】
なお、実施形態において回転角度θが0度(°)である場合とは、設計上意図された光フィルタ70とセンサ部80との第1方向Dx-第2方向Dy平面視点での理想的な重なりが得られた場合をさす。また、実施形態において回転角度θが0度(°)でない場合とは、係る理想的な重なりが得られず、光フィルタ70とセンサ部80の少なくとも一方が第1方向Dx、第2方向Dyに対して傾くように配置されることで光フィルタ70とセンサ部80との間に第1方向Dx-第2方向Dy平面視点で角度のずれが生じた場合をさす。係る角度のずれの大きさとして、回転角度θが3度(°)である場合と、回転角度θが5度(°)である場合とが示されている。
【0057】
図12に示す例のうち、参考例に係る例では、回転角度θが0度(°)である場合に生じる規則的な格子状のパターンに対して、回転角度θが0度(°)でない場合に当該規則的なパターンのくずれが生じている。例えば、アパーチャピッチが25[μm]であるとき、係るパターンのくずれによって意図しない黒ずんだぼやけがマトリクス状に現れる。また、アパーチャピッチが37.5[μm]であるとき、係るパターンのくずれによって段差を生じさせるように噛み合った意図しないパターンが現れる。また、50[μm]であるとき、係るパターンのくずれによって意図しない格子状の黒ずんだパターンが現れる。これらのようなパターンのくずれは、検出画像におけるモアレとして現れる。
【0058】
これに対し、実施形態では、回転角度θが0度(°)であるか否かかに関わらず、光の分布がほとんど変わらない。従って、回転角度θが0度(°)でないことによるモアレは実施形態ではほとんど生じない。なお、図12に示す実施形態の光の分布のうち、アパーチャピッチが25[μm]である場合の光の分布は、黒く塗りつぶされた縁取り部の内周側に示す円状の範囲内のものである。係る縁取り部は、実際の光の分布として生じるものでない。
【0059】
以上説明したように、実施形態の検出装置90は、マトリクス状に配置された複数の部分検出領域PAAが個別に有する光センサ(例えば、フォトダイオードPD)と、複数の光センサによる光の検出面側に設けられる光フィルタ70とを備える。光フィルタ70は、光を透過しない基部73と、基部73に設けられて光を透過させる複数のアパーチャ72とを備える。基部73における複数のアパーチャ72の配置は、所定の一点(例えば、図4から図6に示す中心点C)側から外側に向かって右周りの渦巻き状に並ぶ配置(図7参照)と、所定の一点側から外側に向かって左周りの渦巻き状に並ぶ配置(図8参照)と、を含む。これによって、回転角度θが0度(°)でないことによるモアレの発生を抑制できる。従って、意図しないモアレをより確実に抑制できる。
【0060】
また、複数のアパーチャ72のうち最も近接した位置にある2つのアパーチャ72同士のピッチ(ピッチP1)は、隣接する2つの光センサ(例えば、フォトダイオードPD)同士のピッチ以下であることが望ましい。また、複数のアパーチャ72のうち最も離れた位置にある2つのアパーチャ72同士のピッチ(ピッチP2)は、隣接する2つの光センサ同士のピッチ以下であることが望ましい。これらによって、各光センサに対して1つ以上のアパーチャ72を配置しやすくなる。
【0061】
また、複数のアパーチャ72の配置は、右周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ72の列を円周方向に第1所定数並べた配置(図7参照)であり、かつ、左周りの渦巻き状に並ぶアパーチャ72の列を円周方向に第2所定数並べた配置(図8参照)である。記第1所定数と第2所定数の関係は、フィボナッチ数列において連続する2つの異なる値の関係である。これによって、意図しないモアレをより確実に抑制できる複数のアパーチャ72の配置を規則的に決定できる。
【0062】
また、アパーチャ72を、光の検出面に沿って配置される複数の部分領域75を有する構成としてもよい(図9参照)。この場合、各部分領域75における複数のアパーチャ72の配置は、各部分領域75の中心点C側から外側に向かって右周りの渦巻き状に並ぶ配置と、中心点C側から外側に向かって左周りの渦巻き状に並ぶ配置と、を含む。これによって、各部分領域75における内周側(中心点C側)の最小間隔に対する外周側の最大間隔の比をより1に近くしやすくなる。従って、隣接する部分領域75同士の間隔をより均一化しやすくなる。
【0063】
なお、本発明の実施形態は上述のものに限られない。以下、実施形態の変形例について、図13から図16を参照して説明する。
【0064】
(変形例)
図13は、変形例に係る表示装置の概略断面構成を示す断面図である。図13に示すように、表示装置120は、センサ部1と、表示パネル121と、タッチパネル122と、カバーガラス123とを有する。表示パネル121は、例えば、表示素子として発光素子を用いた有機ELディスプレイパネル(OLED:Organic Light Emitting Diode)や無機ELディスプレイ(マイクロLED、ミニLED(Mini-LED))であってもよい。或いは、表示パネル20は、表示素子として液晶素子を用いた液晶表示パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や、表示素子として電気泳動素子を用いた電気泳動型表示パネル(EPD:Electrophoretic Display)であってもよい。また、センサ部1に用いる光電変換素子としてアモルファスシリコン材料を用いていたが、代わりに有機材料等を用いてもよい。
【0065】
表示パネル121は、第1主面121aと、第1主面121aと反対側の第2主面121bとを有する。第1主面121aは、表示素子からの光L1をカバーガラス123に向けて照射して、画像を表示する面である。第1主面121aは、画像を表示する表示領域DAを有する。
【0066】
タッチパネル122は、例えば静電容量方式により、カバーガラス123の表面に接触又は近接する指Fgを検出する。タッチパネル122は、透光性を有し、光L1及びカバーガラス123と空気との界面で反射した光L2を透過できる。なお、表示装置120は、タッチパネル122を有さない構成であってもよい。また、表示パネル121は、タッチパネル122と一体化されていてもよく、タッチパネル122の機能を内蔵してもよい。
【0067】
カバーガラス123は、表示パネル121等を保護するための部材であり、表示パネル121等を覆っている。カバーガラス123は、例えばガラス基板である。なお、カバーガラス123に限定されず、樹脂基板等がタッチパネル122の上に設けられていてもよい。
【0068】
センサ部1は、表示パネル121の第2主面121bと対向して設けられる。センサ部1は、カバーガラス123と空気との界面で反射した光L2を検出することで、指Fgの表面の凹凸を検出できる。センサ部1は大面積化が容易であるため、センサ部1の検出領域AAは、表示パネル121の表示領域DAの全体と対向して設けられる。なお、これに限定されず、検出領域AAは、表示パネル121の表示領域DAの一部と対向していてもよい。
【0069】
図14は、変形例に係る検出装置を示す平面図である。図15は、変形例に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。図14に示すように、センサ部1は、絶縁基板21と、センサ部10と、ゲート線駆動回路15と、信号線選択回路16と、アナログフロントエンド回路(以下、AFE(Analog Front End)と表す)48と、制御回路102と、電源回路103と、を有する。
【0070】
図14に示すように、絶縁基板21には、フレキシブルプリント基板71を介して制御基板101が電気的に接続される。フレキシブルプリント基板71には、AFE48が設けられている。制御基板101には、制御回路102及び電源回路103が設けられている。制御回路102は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)である。制御回路102は、センサ部10、ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16に制御信号を供給して、センサ部10の検出動作を制御する。電源回路103は、電源信号SVS(図3参照)等の電圧信号をセンサ部10及びゲート線駆動回路15に供給する。
【0071】
図14に示すように、絶縁基板21は、検出領域AAと、周辺領域GAとを有する。検出領域AAは、センサ部10が有する複数のフォトダイオードPD(図3参照)と重なる領域である。周辺領域GAは、検出領域AAの外側の領域であり、フォトダイオードPDと重ならない領域である。すなわち、周辺領域GAは、検出領域AAの外周と絶縁基板21の端部との間の領域である。ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16は、周辺領域GAに設けられる。
【0072】
図15に示すように、センサ部1は、さらに検出制御部11と検出部40と、を有する。検出制御部11の機能の一部又は全部は、制御回路102に含まれる。また、検出部40のうち、AFE48以外の機能の一部又は全部は、制御回路102に含まれる。
【0073】
センサ部10は、光電変換素子であるフォトダイオードPDを有する光センサである。センサ部10が有するフォトダイオードPDは、照射される光に応じた電気信号を、検出信号Vdetとして信号線選択回路16に出力する。また、センサ部10は、ゲート線駆動回路15から供給される駆動信号に従って検出を行う。
【0074】
検出制御部11は、ゲート線駆動回路15、信号線選択回路16及び検出部40にそれぞれ制御信号を供給し、これらの動作を制御する回路である。検出制御部11は、スタート信号STV、クロック信号CK、リセット信号RST1等の各種制御信号をゲート線駆動回路15に供給する。また、検出制御部11は、選択信号SEL等の各種制御信号を信号線選択回路16に供給する。
【0075】
ゲート線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて複数のゲート線GCL(図16参照)を駆動する回路である。ゲート線駆動回路15は、複数のゲート線GCLを順次又は同時に選択し、選択されたゲート線GCLに駆動信号を供給する。これにより、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCLに接続された複数のフォトダイオードPDを選択する。
【0076】
信号線選択回路16は、複数の信号線SGL(図16参照)を順次又は同時に選択するスイッチ回路である。信号線選択回路16は、検出制御部11から供給される選択信号SELに基づいて、選択された信号線SGLとAFE48とを接続する。これにより、信号線選択回路16は、フォトダイオードPDの検出信号Vdetを検出部40に出力する。信号線選択回路16は、例えばマルチプレクサである。
【0077】
検出部40は、AFE48と、信号処理部44と、座標抽出部45と、記憶部46と、検出タイミング制御部47と、を備える。検出タイミング制御部47は、検出制御部11から供給される制御信号に基づいて、AFE48と、信号処理部44と、座標抽出部45と、が同期して動作するように制御する。
【0078】
AFE48は、少なくとも検出信号増幅部42及びA/D変換部43の機能を有する信号処理回路である。検出信号増幅部42は、検出信号Vdetを増幅する。A/D変換部43は、検出信号増幅部42から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0079】
信号処理部44は、AFE48の出力信号に基づいて、センサ部10に入力された所定の物理量を検出する論理回路である。信号処理部44は、指が検出面に接触又は近接した場合に、AFE48からの信号に基づいて指や掌の表面の凹凸を検出できる。
【0080】
記憶部46は、信号処理部44で演算された信号を一時的に保存する。記憶部46は、例えばRAM(Random Access Memory)、レジスタ回路等であってもよい。
【0081】
座標抽出部45は、信号処理部44において指の接触又は近接が検出されたときに、指等の表面の凹凸の検出座標を求める論理回路である。座標抽出部45は、センサ部10の各フォトダイオードPDから出力される検出信号Vdetを組み合わせて、指等の表面の凹凸の形状を示す二次元情報を生成する。なお、座標抽出部45は、検出座標を算出せずにセンサ出力Voとして検出信号Vdetを出力してもよい。
【0082】
次に、センサ部1のより具体的な回路構成例について説明する。図16は、変形例に係る検出装置を示す回路図である。
【0083】
図16に示すように、センサ部10は、マトリクス状に配列された複数の部分検出領域PAAを有する。各部分検出領域PAAについては、図3を参照して説明したものと同様であるので、詳細な説明を省略する。なお、変形例では、電源信号SVS及び基準信号VR1は、電源回路103から供給される。
【0084】
図16に示すように、ゲート線GCLは、第1方向Dxに延在し、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAと接続される。また、複数のゲート線GCL1、GCL2、…、GCL8は、第2方向Dyに配列され、それぞれゲート線駆動回路15に接続される。なお、以下の説明において、複数のゲート線GCL1、GCL2、…、GCL8を区別して説明する必要がない場合には、単にゲート線GCLと表す。ゲート線GCLの数は8本であるが、あくまで一例であり、ゲート線GCLは、8本以上、例えば256本配列されていてもよい。
【0085】
信号線SGLは、信号線選択回路16を介してAFE48に接続される。信号線SGLは、第2方向Dyに延在し、第2方向Dyに配列された複数の部分検出領域PAAに接続される。また、複数の信号線SGL1、SGL2、…、SGL12は、第1方向Dxに配列されて、それぞれ信号線選択回路16及びリセット回路17に接続される。信号線SGLの数は12本であるが、あくまで一例であり、信号線SGLは、12本以上、例えば252本配列されていてもよい。また、図16では、信号線選択回路16とリセット回路17との間にセンサ部10が設けられている。これに限定されず、信号線選択回路16とリセット回路17とは、信号線SGLの同じ方向の端部にそれぞれ接続されていてもよい。
【0086】
ゲート線駆動回路15は、スタート信号STV、クロック信号CK、リセット信号RST等の各種制御信号を、レベルシフタ151を介して受け取る。ゲート線駆動回路15は、図示しない複数のスイッチング素子を有している。ゲート線駆動回路15は、係るスイッチング素子の動作により、複数のゲート線GCL1、GCL2、…、GCL8を時分割的に順次選択する。ゲート線駆動回路15は、選択されたゲート線GCLを介して、複数のスイッチング素子Trに駆動信号を供給する。これにより、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAが、検出対象として選択される。
【0087】
信号線選択回路16は、複数の選択信号線Lselと、複数の出力信号線(例えば、出力信号線Lout1、Lout2)と、スイッチング素子TrSと、を有する。複数のスイッチング素子TrSは、それぞれ複数の信号線SGLに対応して設けられている。6本の信号線SGL1、SGL2、…、SGL6は、共通の出力信号線Lout1に接続される。6本の信号線SGL7、SGL8、…、SGL12は、共通の出力信号線Lout2に接続される。出力信号線Lout1、Lout2は、それぞれAFE48に接続される。複数の選択信号線Lselとは、図16に示す選択信号線Lsel1、Lsel2、…、Lsel6を包括した記載である。
【0088】
ここで、信号線SGL1、SGL2、…、SGL6を第1信号線ブロックとし、信号線SGL7、SGL8、…、SGL12を第2信号線ブロックとする。複数の選択信号線Lselは、1つの信号線ブロックに含まれるスイッチング素子TrSのゲートにそれぞれ接続される。また、1本の選択信号線Lselは、複数の信号線ブロックのスイッチング素子TrSのゲートに接続される。具体的には、選択信号線Lsel1、Lsel2、…、Lsel6は、信号線SGL1、SGL2、…、SGL6に対応するスイッチング素子TrSと接続される。また、選択信号線Lsel1は、信号線SGL1に対応するスイッチング素子TrSと、信号線SGL7に対応するスイッチング素子TrSと、に接続される。選択信号線Lsel2は、信号線SGL2に対応するスイッチング素子TrSと、信号線SGL8に対応するスイッチング素子TrSと、に接続される。
【0089】
制御回路102(図14参照)は、レベルシフタ161を介して、選択信号を順次選択信号線Lselに供給する。図16では、係る選択信号として、選択信号線Lsel1に供給される選択信号SEL1、選択信号線Lsel2に供給される選択信号SEL2、…、選択信号線Lsel6に供給される選択信号SEL6を示している。これにより、信号線選択回路16は、スイッチング素子TrSの動作により、1つの信号線ブロックにおいて信号線SGLを時分割的に順次選択する。また、信号線選択回路16は、複数の信号線ブロックで同時に1本ずつ信号線SGLを選択する。このような構成により、センサ部1は、AFE48を含むIC(Integrated Circuit)の数、又はICの端子数を少なくすることができる。
【0090】
図16に示すように、リセット回路17は、基準信号線Lvr、リセット信号線Lrst及びスイッチング素子TrRを有する。スイッチング素子TrRは、複数の信号線SGLに対応して設けられている。基準信号線Lvrは、複数のスイッチング素子TrRのソース又はドレインの一方に接続される。リセット信号線Lrstは、複数のスイッチング素子TrRのゲートに接続される。
【0091】
制御回路102は、リセット信号RST2を、レベルシフタ171を介してリセット信号線Lrstに供給する。これにより、複数のスイッチング素子TrRがオンになり、複数の信号線SGLは基準信号線Lvrと電気的に接続される。電源回路103は、基準信号VR1を基準信号線Lvrに供給する。これにより、複数の部分検出領域PAAに含まれる容量素子Caに基準信号VR1が供給される。
【0092】
電源回路103は、所定の電源信号をフォトダイオードPDのカソードに供給する。また、リセット期間が開始する前に、制御回路102は、高レベル電圧信号の基準信号VR1及びリセット信号RST2を、リセット回路17に供給する。制御回路102は、ゲート線駆動回路15にスタート信号STVを供給し、リセット期間を開始する。
【0093】
リセット期間において、ゲート線駆動回路15に含まれるシフトレジスタは、スタート信号STV、クロック信号CK及びリセット信号RST1に基づいて、順次ゲート線GCLを選択する。ゲート線駆動回路15は、駆動信号をゲート線GCLに順次供給する。駆動信号は、高レベル電圧と低レベル電圧を含むパルス状の波形を有する。
【0094】
リセット期間中に、全ての部分検出領域PAAの容量素子Caが順次信号線SGLと電気的に接続され、基準信号VR1が供給される。この結果、容量素子Caの容量がリセットされる。
【0095】
駆動信号256がゲート線GCLに供給された後に、部分検出領域PAAでの露光期間が開始する。なお、各ゲート線GCLに対応する各部分検出領域PAAの露光期間は、開始のタイミング及び終了のタイミングが共有するゲート線GCL毎に異なっている。露光期間は、例えば、駆動信号が高レベル電圧から低レベル電圧に変化したタイミングで開始される。また、露光期間は、駆動信号が低レベル電圧から高レベル電圧に変化したタイミングで終了する。各部分検出領域PAAの露光期間の長さは等しい。
【0096】
露光期間では、各部分検出領域PAAで、フォトダイオードPDに照射された光に応じて電流が流れる。この結果、各容量素子Caに電荷が蓄積される。
【0097】
各容量素子Caの読み出し期間が開始する前のタイミングで、制御回路102は、リセット回路17の動作を停止させるリセット期間を設ける。読み出し期間では、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCLに駆動信号を順次供給する。
【0098】
読み出し期間中、制御回路102は、選択信号SEL1、…、SEL6を、信号線選択回路16に順次供給する。これにより、駆動信号により選択された部分検出領域PAAの信号線SGLが順次、又は同時にAFE48に接続される。この結果、検出信号VdetがAFE48に供給される。同様に、各駆動信号が高レベル電圧VGHとなる期間ごとに、信号線選択回路16が順次信号線SGLを選択する。これにより、読み出し期間で、センサ部1は、全ての部分検出領域PAAの検出信号VdetをAFE48に出力することができる。
【0099】
センサ部1は、リセット期間、露光期間及び読み出し期間を、繰り返し実行して指紋検出を行ってもよい。或いは、センサ部1は、指等が検出面に接触又は近接したことを検出したタイミングで、検出動作を開始してもよい。
【0100】
表示パネル121とセンサ部1との間には、実施形態の光フィルタ70と同様の構成が設けられる。すなわち、変形例の検出装置90Aは、光フィルタ70とセンサ部1とを備える。係る光フィルタ70は、光フィルタ70Aに置換されてもよい。以上、変形例のセンサ部1について説明したが、実施形態のセンサ部80は、変形例のセンサ部1であってもよい。その場合、図2及び図3を参照して説明したセンサ部80の具体的構成が、変形例のセンサ部1に置換される。
【0101】
なお、変形例においても、表示パネル121と光フィルタ70との間に、実施形態の赤外線カットフィルタ62と同様の構成が設けられてもよい。言い換えれば、実施形態及び変形例において、赤外線カットフィルタ62は必須でない。
【0102】
また、上述の説明では、実施形態における表示部61及び変形例における表示パネル121のような表示パネルが設けられ、検出装置の光センサが検出する光の光源として当該表示パネルを利用する例を示しているが、検出装置の具体的な構成はこれに限られるものでない。検出装置は、表示パネルを備えなくてもよい。すなわち、画像を表示することを想定しない検出用の光を照射する専用の光源が設けられていてもよいし、外光を利用する想定で光源が省略されていてもよい。
【0103】
また、実施形態及び変形例において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0104】
70 光フィルタ
71 基部
72 アパーチャ
75 部分領域
90,90A 検出装置
C 中心点
PD フォトダイオード
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