(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20231013BHJP
B05B 11/00 20230101ALN20231013BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B65D47/34 200
B05B11/00 101K
B05B11/00 101E
B05B11/00 101H
(21)【出願番号】P 2020094653
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏太郎
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-338788(JP,A)
【文献】特開2004-322037(JP,A)
【文献】特開2012-116527(JP,A)
【文献】特開平8-26322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体における口部に、上方付勢状態で下方移動可能に配設されるステムと、
前記ステムが上下動可能に挿入された筒状のシリンダと、
前記シリンダ内で前記ステムの上下動に連係するとともに、前記シリンダの内周面に上下摺動可能に嵌合されたピストンと、
前記ステムの上端部に取り付けられ、内容物を吐出する吐出孔を有する吐出ヘッドと、
前記ステムを上方付勢する合成樹脂製の付勢部材と、
前記ステム内を上方移動可能に前記ステム内に嵌合され、前記ステム内を介した前記シリンダ内と前記吐出ヘッド内との連通を遮断する栓体と、
前記シリンダ内に設けられ、前記栓体が前記ステム内に嵌合された状態において、前記ステムの下降に伴い前記栓体を上方に押し上げる当接部と、を備え、
前記ステムには、前記当接部に押し上げられた前記栓体が係止される係止部が設けられ、
前記栓体には、前記栓体が前記係止部に係止された状態で、前記ステム内を介した前記シリンダ内と前記吐出ヘッド内との連通を可能とする連通部が形成されている吐出器。
【請求項2】
前記シリンダが取り付けられるとともに、前記口部に装着される装着キャップを備え、
前記付勢部材は、前記ステムの外側において前記装着キャップと前記吐出ヘッドとの間に介在している請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記ステムのうち前記栓体よりも上方に位置する部分には、前記ステム内と前記吐出孔との連通及び遮断を切り替える上部弁体が設けられている請求項1又は請求項2に記載の吐出器。
【請求項4】
前記シリンダには、前記シリンダ内と前記容器体内との連通及び遮断を切り替える下部弁体が設けられ、
前記下部弁体は、前記当接部に一体に形成されている請求項1から請求項3の何れか1項に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、内容液が収容された容器体の口部に上方付勢状態で下方移動可能に設けられたステムを有するポンプと、ステムの上端部に装着された装着筒部を有するとともに、吐出孔が形成された吐出ヘッドと、ポンプを口部に装着する装着キャップと、を備えた吐出器が知られている。この種の吐出器では、口部に装着した状態で、吐出ヘッドを押下してステムを下方に移動させポンプを作動させることにより、ステム内を通過した内容物が吐出孔から吐出される。
一般に、ステムを上方付勢する付勢部材は、金属材料で形成されるとともに、ポンプのシリンダ内に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の吐出器では、廃棄に際し、付勢部材をシリンダから取り出しにくく、金属材料からなる付勢部材と、合成樹脂材料からなるその他の部材と、を分別することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、廃棄時の分別を不要にすることができる吐出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を採用した。
本発明の一態様に係る吐出器は、容器体における口部に、上方付勢状態で下方移動可能に配設されるステムと、前記ステムが上下動可能に挿入された筒状のシリンダと、前記シリンダ内で前記ステムの上下動に連係するとともに、前記シリンダの内周面に上下摺動可能に嵌合されたピストンと、前記ステムの上端部に取り付けられ、内容物を吐出する吐出孔を有する吐出ヘッドと、前記ステムを上方付勢する合成樹脂製の付勢部材と、前記ステム内を上方移動可能に前記ステム内に嵌合され、前記ステム内を介した前記シリンダ内と前記吐出ヘッド内との連通を遮断する栓体と、前記シリンダ内に設けられ、前記栓体が前記ステム内に嵌合された状態において、前記ステムの下降に伴い前記栓体を上方に押し上げる当接部と、を備え、前記ステムには、前記当接部に押し上げられた前記栓体が係止される係止部が設けられ、前記栓体には、前記栓体が前記係止部に係止された状態で、前記ステム内を介した前記シリンダ内と前記吐出ヘッド内との連通を可能とする連通部が形成されている。
【0007】
本態様によれば、付勢部材が合成樹脂材料で形成されているので、吐出器の廃棄に際し、付勢部材と、合成樹脂材料からなる他の部材と、を分別する必要をなくすことができる。
特に、本態様では、ステム内に嵌合され、ステム内を介したシリンダ内と吐出ヘッド内との連通を遮断する栓体と、ステムの下降に伴い栓体を上方に押し上げる当接部と、を備える構成とした。
この構成によれば、栓体が当接部によって押し上げられると、栓体がステムの係止部に係止される。その結果、シリンダ内と吐出ヘッド内とが連通部を通じて連通可能な状態を維持することで、吐出器を開封することができる。
そして、本態様では、未開封状態において、ステム内を介したシリンダ内と吐出ヘッド内との連通を栓体により遮断できるので、容器体内の内容液がステムを通じて吐出孔から漏れるのを抑制できる。
【0008】
しかも、本態様では、付勢部材が自然長に近い状態で、吐出器の未開封状態を維持できる。そのため、付勢部材を合成樹脂製にしたとしても、例えば付勢部材を圧縮した状態で未開封状態を維持する場合に比べ、開封後の付勢部材のへたり(塑性変形)を抑制できる。その結果、開封後において、付勢部材に所望の復元力を発揮させることができる。この場合には、内容液の詰め替えや吐出器の付け替え等により、使用期間が長期にわたる吐出器であっても、圧縮変形の癖が付きやすい合成樹脂製の付勢部材を採用することができる。また、付勢部材の復元力の低下に起因する吐出量の低下が早期に生ずるのを抑制できる。
【0009】
また、例えば未開封状態においてステムと栓体とを弱化部を介して一体に形成する場合に比べ、容易に成形できるので、寸法精度の向上や製造効率の向上を図ることができる。
さらに、寸法精度の向上を図ることで、ステムと栓体とのはめあい公差を小さくできるので、ステムと栓体とを安定して組み付けることができる。その結果、開封時にステムに作用させる押下力を安定させることができ、開封時の操作性を良好にすることができる。
【0010】
上記態様の吐出器において、前記シリンダが取り付けられるとともに、前記口部に装着される装着キャップを備え、前記付勢部材は、前記ステムの外側において前記装着キャップと前記吐出ヘッドとの間に介在していることが好ましい。
本態様によれば、付勢部材が内容液に付着するのを抑制できるので、付勢部材や内容液の変質等を抑制できる。
【0011】
上記態様の吐出器において、前記ステムのうち前記栓体よりも上方に位置する部分には、前記ステム内と前記吐出孔との連通及び遮断を切り替える上部弁体が設けられていることが好ましい。
本態様によれば、吐出器の開封後、吐出孔を通じて内容液が漏れるのを抑制できる。
【0012】
上記態様の吐出器において、前記シリンダには、前記シリンダ内と前記容器体内との連通及び遮断を切り替える下部弁体が設けられ、前記下部弁体は、前記当接部に一体に形成されていることが好ましい。
本態様によれば、部品点数を少なくし、吐出器の組立工程を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、廃棄時の分別を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】開封操作を説明するための吐出器の断面図である。
【
図3】ステムが下降端位置にある状態を示す吐出器の断面図である。
【
図4】ステムが上昇端位置にある状態を示す吐出器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の吐出器1は、ステム21を有するポンプ2と、ステム21に装着された吐出ヘッド5と、ポンプ2を容器体Aに装着する装着キャップ7と、を備えている。
吐出器1を構成する全ての部品は、合成樹脂材料により形成されている。
【0016】
ステム21及び装着キャップ7は、共通軸と同軸に配設されている。以下、この共通軸を中心軸線Oといい、中心軸線Oに沿って吐出ヘッド5側を上側といい、容器体Aの底部側を下側という。また、中心軸線Oに沿う方向を上下方向といい、上下方向から見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0017】
容器体Aは、中心軸線Oと同軸に配設された有底筒状に形成されている。容器体Aにおいて口部A1の外周面には、雄ねじが形成されている。
装着キャップ7は、環状の天壁及び周壁を有する有頂筒状に形成されている。装着キャップ7の天壁の内側に、ステム21が上下動可能に挿入されている。装着キャップ7の周壁の内周面に、口部A1の雄ねじに螺合する雌ねじが形成されている。なお、装着キャップ7の周壁は、口部A1に、例えばアンダーカット嵌合等されてもよい。
【0018】
装着キャップ7は、天壁の内周縁部から上方及び下方の双方向に向けて突出した案内筒31を備えている。案内筒31は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
案内筒31は、装着キャップ7の天壁の内周縁部から上方及び下方の双方向に向けて突出した上部32と、上部32より下方に設けられ、かつ上部32より内径及び外径が小さい下部34と、上部32の下端部と下部34の上端部とを連結した環状の段部33と、を備えている。
【0019】
ポンプ2は、ステム21、シリンダ22、ピストン23、下部弁体24、当接部25、上部弁体26、栓体27及び付勢部材28を備えている。
【0020】
シリンダ22は、環状の底壁及び周壁を有し、中心軸線Oと同軸に配設された有底筒状に形成されている。シリンダ22の底壁における内周縁部には、下方に向けて延びる取付筒35が設けられている。取付筒35には、吸上筒36の上端部が嵌合されている。吸上筒36の下端開口部は、容器体Aの底部に向けて開口している。
【0021】
シリンダ22の周壁の上端部には、径方向の外側に向けて突出するとともに、周方向に延びる固定フランジ部29が形成されている。固定フランジ部29は、装着キャップ7の周壁内に嵌合されている。固定フランジ部29は、パッキン9を介して容器体Aの口部A1の上端開口縁に配置される。すなわち、固定フランジ部29は、パッキン9を間に挟んで装着キャップ7の天壁と口部A1の上端開口縁との間に挟みこまれている。このように、ポンプ2は、シリンダ22(固定フランジ部29)を介して装着キャップ7に取り付けられた状態で、容器体Aに取り付けられている。
【0022】
ステム21は、上ステム51と下ステム52とが上下方向に組み付けられた構成である。上ステム51は、上方に位置するものほど縮径された多段筒状に形成されている。具体的に、上ステム51は、第1筒部56、第2筒部57、第3筒部58及び第4筒部59が上方から下方に順に連なった構成である。上ステム51の上部(第1筒部56及び第2筒部57)は、ステム21の上昇端位置において、シリンダ22の上端開口部よりも上方に突出している。上ステム51の下部(第3筒部58の一部及び第4筒部59)は、シリンダ22内に収容されている。
【0023】
第3筒部58の上部には、径方向の内側に突出する規制リブ60が形成されている。規制リブ60は、上下方向に沿って延びている。規制リブ60は、上端において第2筒部57に連なっており、下端が第3筒部58の中間部分に位置している。規制リブ60は、周方向に間隔をあけて複数形成されている。第3筒部58のうち規制リブ60の下方に位置する部分には、係止部61が形成されている。係止部61は、第3筒部58から径方向の内側に突出するとともに、第3筒部58の全周に亘って延びている。但し、係止部61は、周方向に間欠的に設けられていてもよい。
【0024】
上ステム51のうち、第3筒部58と第4筒部59との境界面は、ステム21が上昇端位置にあるときに案内筒31の下部34に下方から当接する。これにより、装着キャップ7に対するステム21の上方移動が規制される。
【0025】
下ステム52は、上ステム51に対して下方から組み付けられている。下ステム52は、嵌合筒65と、環状の内フランジ部66と、を備えている。
嵌合筒65は、中心軸線Oと同軸に配設されている。嵌合筒65は、第4筒部59内に嵌合されている。
内フランジ部66は、嵌合筒65の下端開口縁から径方向の内側に張り出している。なお、上ステム51及び下ステム52は、一体で形成されていてもよい。
【0026】
ピストン23は、上ステム51に一体に形成されている。具体的に、ピストン23は、第4筒部59から径方向の外側に延びる連結部を介して連なっている。ピストン23は、上下両側に向かうに従い漸次拡径する筒状に形成されている。ピストン23の上下両端部は、ステム21の上下動に伴い、シリンダ22の内周面上を摺動可能である。なお、ピストン23は、ステム21の上下動に連係する構成であれば、ステム21と別体で形成されていてもよい。
【0027】
下部弁体24は、弁筒部71、弁本体72及び連結片73を備えている。
弁筒部71は、シリンダ22の周壁の下端部内に嵌合されている。弁本体72は板状に形成され、シリンダ22の底壁の開口周縁部に上方から着座し、シリンダ22の底壁の開口部を閉塞している。連結片73は、弁本体72の外周縁と弁筒部71の内周面とを連結している。弁本体72は、連結片73の弾性変形に伴い上下方向に弾性変位することで、シリンダ22の底壁の開口部を開閉する。すなわち、下部弁体24は、シリンダ22内の加圧時に、シリンダ22の底壁の開口部を閉塞した状態に保持し、シリンダ22内の減圧時に、シリンダ22の底壁の開口部を開放する逆止弁となっている。これにより、下部弁体24は、シリンダ22内の加圧時に、シリンダ22内の内容液がシリンダ22の底壁の開口部を通じて容器体Aに戻ることを阻止する一方、シリンダ22内の減圧時に、容器体A内の内容液をシリンダ22の底壁の開口部の内側を通じてシリンダ22内に流入させる。
【0028】
当接部25は、下部弁体24と一体に形成されている。当接部25は、頂板部100と、突出部101と、を備えている。なお、当接部25は、下部弁体24と別体で形成されていてもよい。
【0029】
頂板部100は、弁筒部71の上端開口部に架設されている。頂板部100には、シリンダ22内のうち頂板部100の上下両側の空間を連通させる貫通部(不図示)が形成されている。
突出部101は、頂板部100のうち中心軸線O上に位置する部分から上方に向けて突出している。本実施形態の突出部101は、平面視でX字状に形成されている。但し、突出部101は、円柱状や角柱状等であってもよい。
【0030】
栓体27は、吐出器1の未開封状態において、ステム21内を介したシリンダ22内と吐出ヘッド5内との連通を遮断している。栓体27は、中心軸線Oと同軸に配置された有底筒状に形成されている。具体的に、栓体27は、閉塞部110と、閉塞部110の上方に位置する開封筒111と、を備えている。
閉塞部110は、有底筒状に形成されている。閉塞部110において周壁の上端部は、下ステム52の内フランジ部66内に嵌合されている。これにより、ステム21の下端開口部を通じたステム21内とシリンダ22内との連通が遮断されている。閉塞部110の周壁において、内フランジ部66よりも下方に位置する部分には、乗り越え突起113が形成されている。乗り越え突起113は、閉塞部110の周壁から径方向の外側に膨出している。
【0031】
閉塞部110の底壁は、下ステム52よりも下方に位置している。閉塞部110の底壁は、上述した突出部101に上下方向で隙間を空けて対向している。本実施形態において、閉塞部110において底壁の下面は、中心軸線Oと直交する平坦面に形成されている。但し、閉塞部110において底壁の下面には、突出部101の上端部を収容する収容部が形成されていてもよい。なお、閉塞部110の底壁は、吐出器1の未開封状態において、突出部101の上端に上下方向で当接していてもよい。
【0032】
開封筒111は、閉塞部110の上端部に外フランジ部115を介して接続されている。開封筒111は、外フランジ部115の外周縁から上方に向かうに従い漸次拡径するテーパ状に形成されている。開封筒111の上端部には、係止爪116が形成されている。係止爪116は、上面が径方向の外側に向かうに従い下方に延びる傾斜面とされている。なお、開封筒111は、吐出器1の未開封状態において、少なくとも上端部(係止爪116)が第3筒部58内に位置している。但し、栓体27は、未開封状態において、ステム21の内外の連通を遮断している構成であれば、開封筒111の上端部が第3筒部58よりも下方に位置していてもよい。
【0033】
開封筒111には、開封筒111を径方向に貫通する連通部117が形成されている。連通部117は、上下方向に延びるスリット状に形成されている。連通部117は、周方向に間隔をあけて複数形成されている。吐出器1の未開封状態において、連通部117は、内フランジ部66よりも上方でステム21内に開放されている。したがって、吐出器1の未開封状態において、連通部117を通じたシリンダ22内と吐出ヘッド5内との連通は遮断されている。また、開封筒111のうち、隣り合う連通部117間に位置する部分には、栓体リブ118が形成されている。栓体リブ118は、開封筒111から径方向の内側に突出するとともに、上下方向に延びている。
【0034】
上部弁体26は、弁筒部120、弁本体121及び連結片122を備えている。
弁筒部120は、中心軸線Oと同軸に配設されている。弁筒部120内には、上ステム51の第1筒部56が下方から嵌合されている。
弁本体121は、上ステム51(第1筒部56)の上端開口縁に上方から着座し、上ステム51の上端開口部を閉塞している。連結片122は、弁本体121の外周縁と弁筒部120の内周面とを連結している。弁本体121は、連結片122の弾性変形に伴い上下方向に弾性変位することで、上ステム51の上端開口部を開閉する。すなわち、上部弁体26は、ステム21内の減圧時に、上ステム51の上端開口部を閉塞した状態に保持し、シリンダ22内の加圧時に、上ステム51の上端開口部を開放する逆止弁となっている。これにより、上部弁体26は、ステム21内(シリンダ22内)の加圧時に、ステム21内の内容液を吐出ヘッド5内に流入させ、ステム21内(シリンダ22内)の減圧時に、ステム21内の内容液が吐出ヘッド5内に流入するのを阻止する。
【0035】
吐出ヘッド5は、押下部130と、内筒131と、外筒132と、ノズル筒133と、を備えている。
押下部130は、中心軸線Oと同軸に配設された有頂筒状に形成されている。
内筒131は、押下部130の天壁から下方に延在している。内筒131内には、上述した第2筒部57が下方から嵌合されている。内筒131の上部には、規制リブ134が形成されている。規制リブ134は、第2筒部57が内筒131内に嵌合された状態で、第2筒部57の上端面との間に弁筒部120を上下方向で挟持している。なお、内筒131の外径は、第3筒部58の外径と同等になっている。
【0036】
外筒132は、押下部130の天壁のうち、内筒131よりも径方向の外側に位置する部分から下方に延在している。外筒132の内径は、案内筒31の上部32の外径よりも大きくなっている。ステム21が上昇端位置にあるとき、外筒132の内側には、案内筒31の上部32の一部が進入している。外筒132と内筒131との間には、外筒132及び内筒131間を接続する接続壁135が形成されている。接続壁135は、例えば中心軸線Oに対して放射状に延びている。
ノズル筒133は、内筒131の上端部から径方向の外側に延在し、外筒132及び押下部130を貫いている。ノズル筒133の先端には、径方向の外側かつ下方に向けて開口する吐出孔133aが形成されている。
【0037】
付勢部材28は、中心軸線Oを中心に一定の内径で螺旋状に上下方向に延びている。付勢部材28は、ステム21及び内筒131の周囲を取り囲んでいる。付勢部材28の下端は、案内筒31の段部33に上方から当接している。付勢部材28の上端は、接続壁135又はノズル筒133の下端に下方から当接している。これにより、付勢部材28は、吐出ヘッド5を介してステム21を上方に付勢している。なお、付勢部材28は、ステム21を直接付勢していてもよい。
【0038】
次に、上述した吐出器1の作用について説明する。以下の説明では、吐出器1の開封方法(未開封状態から開封状態への移行方法)、及び吐出方法について説明する。
上述したように未開封状態の吐出器1は、栓体27の閉塞部110が下ステム52内に嵌合されていることで、シリンダ22内とステム21内との連通が遮断されている。なお、未開封状態において、案内筒31の上部32のうち、装着キャップ7の天壁から上方に突出した部分には、ストッパ(不図示)が装着される。ストッパは、装着キャップ7の天壁と吐出ヘッド5の外筒132との間に介在し、装着キャップ7に対する吐出ヘッド5の下方移動を規制する。
【0039】
吐出器1を開封するには、まず上述したストッパを取り外す。続いて、吐出ヘッド5を押下操作して、ステム21を押し下げる。これにより、ピストン23がシリンダ22の内周面上を摺動しながら、ステム21、ピストン23及び栓体27が一体となってシリンダ22内を下方移動する。すると、閉塞部110の底壁が当接部25の突出部101に上方から当接する。これにより、栓体27の下方移動が当接部25により規制される。この状態でさらに吐出ヘッド5を押し下げると、栓体27に対してステム21が下方移動しようとする。その結果、乗り越え突起113が下ステム52の内フランジ部66を上方に乗り越えることで、栓体27と下ステム52との嵌合が外れる。これにより、ステム21(下ステム52)の下端開口が開放され、シリンダ22内とステム21内とが連通する。また、ステム21内では、栓体27に対して上下の空間が連通部117を通じて連通する。その結果、ステム21内を介してシリンダ22内と吐出ヘッド5内とが連通可能となる。
【0040】
その後、
図2に示すように、ステム21をさらに押し下げると、栓体27は当接部25によってステム21内を押し上げられる。この際、栓体27は、係止爪116が第3筒部58の内周面に案内されながらステム21内を上方に移動する。
【0041】
そして、
図3に示すように、吐出ヘッド5を下降端位置(例えば、吐出ヘッド5の外筒132と装着キャップ7の天壁とが近接する位置)まで押し下げると、栓体27の係止爪116が係止部61に係止される。これにより、吐出器1が開封状態となる。
【0042】
吐出器1の開封後、吐出ヘッド5の押下を解除すると、付勢部材28の上方付勢力によって吐出ヘッド5が押し上げられる。すると、ステム21、ピストン23及び栓体27がシリンダ22に対して上方に移動する。その結果、栓体27が係止部61に係止された状態で、ステム21が
図4に示す上昇端位置に移動する。なお、ステム21等が上方に移動することで、シリンダ22内が減圧される。この場合、上部弁体26によってステム21内と吐出ヘッド5内との連通が遮断された状態を維持する。一方、シリンダ22内の減圧に伴い、下部弁体24の弁本体72が上方に引き上げられ、シリンダ22内と容器体A内とが連通する。すると、容器体A内の内容液は、シリンダ22の底壁の内側を通じてシリンダ22内に流入する。
【0043】
続いて、吐出器1による吐出方法について説明する。なお、以下の説明では、少なくともシリンダ22内が内容液で満たされている状態を初期状態として説明する。
開封状態の吐出器1において、吐出ヘッド5を押下操作する。すると、ステム21等の下降に伴い、シリンダ22内が加圧されることで、下部弁体24によってシリンダ22内と容器体A内との連通が遮断された状態を維持する。一方、シリンダ22内の加圧によって、上部弁体26の弁本体121が押し上げられることで、ステム21の上端開口部が開放される。その結果、ステム21内と吐出ヘッド5の内筒131内とが連通する。すると、シリンダ22内の内容液は、連通部117を通過しながらステム21内を上方に流れた後、吐出ヘッド5内に流入する。吐出ヘッド5内に流入した内容液は、内筒131を通ってノズル筒133内に流入した後、吐出孔133aを通じて吐出される。
【0044】
内容液の吐出後、吐出ヘッド5の押下を解除すると、付勢部材28の上方付勢力によって吐出ヘッド5が押し上げられる。上述したようにシリンダ22内の減圧に伴い、下部弁体24の弁本体72が上方に引き上げられ、シリンダ22内と容器体A内とが連通する。すると、容器体A内の内容液は、シリンダ22の底壁の内側を通じてシリンダ22内に流入する。なお、吐出器1の吐出操作の際は、栓体27と当接部25とが接触しなくてもよい。
【0045】
このように、本実施形態では、付勢部材28が合成樹脂材料で形成されているので、吐出器1の廃棄に際し、付勢部材28と、合成樹脂材料からなる他の部材と、を分別する必要をなくすことができる。
【0046】
特に、本実施形態では、ステム21内に嵌合され、ステム21内を介したシリンダ22内と吐出ヘッド5内との連通を遮断する栓体27と、ステム21の下降に伴い栓体27を上方に押し上げる当接部25と、を備える構成とした。
この構成によれば、栓体27が当接部25によって押し上げられると、栓体27がステム21の係止部61に係止される。その結果、シリンダ22内と吐出ヘッド5内とが連通部117を通じて連通可能な状態を維持することで、吐出器1を開封することができる。
【0047】
そして、本実施形態では、未開封状態において、ステム21内を介してシリンダ22内と吐出ヘッド5内との連通を遮断できるので、容器体A内の内容液がステム21を通じて吐出孔133aから漏れるのを抑制できる。
しかも、本実施形態では、付勢部材28が自然長に近い状態で、吐出器1の未開封状態を維持できる。そのため、付勢部材28を合成樹脂製にしたとしても、例えば付勢部材を圧縮した状態(吐出ヘッドを下降端位置で装着キャップに螺着した状態)で未開封状態を維持する場合に比べ、開封後の付勢部材28のへたり(塑性変形)を抑制できる。その結果、開封後において、付勢部材28に所望の復元力を発揮させることができる。この場合には、内容液の詰め替えや吐出器1の付け替え等により、使用期間が長期にわたる吐出器1であっても、圧縮変形の癖が付きやすい合成樹脂製の付勢部材28を採用することができる。また、付勢部材28の復元力の低下に起因する吐出量の低下が早期に生ずるのを抑制できる。
【0048】
また、例えば未開封状態においてステムと栓体とを弱化部を介して一体に形成する場合に比べ、容易に成形できるので、寸法精度の向上や製造効率の向上を図ることができる。
さらに、寸法精度の向上を図ることで、ステム21と栓体27とのはめあい公差を小さくできるので、ステム21と栓体27とを安定して組み付けることができる。その結果、開封時にステム21に作用させる押下力を安定させることができ、開封時の操作性を良好にすることができる。
【0049】
本実施形態では、付勢部材28がステム21の外側において、装着キャップ7と吐出ヘッド5との間に介在する構成とした。
この構成によれば、付勢部材28が内容液に付着するのを抑制できるので、付勢部材28や内容液の変質等を抑制できる。
【0050】
本実施形態では、シリンダ22内に、シリンダ22内と容器体A内との連通及び遮断を切り替える下部弁体24が当接部25と一体に形成されている構成とした。
この構成によれば、部品点数を少なくし、吐出器1の組立工程を簡素化することができる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
上述した実施形態では、栓体27がステム21の下端開口部を閉塞する構成について説明したが、この構成に限られない。栓体27は、ステム21内を介したシリンダ22内と吐出ヘッド5内との連通を遮断していれば、例えばステム21内における上下方向の中途部に設けられていてもよい。
上述した実施形態では、付勢部材28がステム21の外側において装着キャップ7と吐出ヘッド5との間に配置された構成について説明したが、この構成に限られない。付勢部材28は、シリンダ22内に配置されていてもよい。
上述した実施形態では、連通部117をスリット状に形成した場合について説明したが、この構成に限られない。連通部は、開封状態において、ステム21の内外を連通させる構成であれば、溝や間欠フランジ等であってもよい。
【0052】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…吐出器
5…吐出ヘッド
7…装着キャップ
21…ステム
22…シリンダ
23…ピストン
24…下部弁体
25…当接部
26…上部弁体
27…栓体
28…付勢部材
61…係止部
117…連通部
133a…吐出孔