(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】密封システム、密封方法、および判定プログラム
(51)【国際特許分類】
B65B 57/02 20060101AFI20231013BHJP
G01M 3/02 20060101ALI20231013BHJP
B65B 57/00 20060101ALI20231013BHJP
G01M 3/38 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B65B57/02 F
G01M3/02 M
B65B57/00 D
G01M3/38 H
(21)【出願番号】P 2020130193
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤井 浩生
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-191426(JP,A)
【文献】特開平06-144415(JP,A)
【文献】特開2012-173204(JP,A)
【文献】特開2005-265812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 57/00
G01M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲーブルトップ容器を密封可能な密封システムであって、
前記ゲーブルトップ容器に内容物を充填可能な充填装置と、
前記ゲーブルトップ容器の頂部に設けられた圧着面を加熱可能な加熱装置と、
前記圧着面を圧着可能な圧着装置と、
前記充填装置、前記加熱装置、および前記圧着装置の順に前記ゲーブルトップ容器を搬送可能な搬送装置と、
温度測定装置と、
撮像装置と、
前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定可能な判定プログラムを実行可能なコンピュータと、を備え、
前記温度測定装置は、前記搬送装置によって前記加熱装置から前記圧着装置に向けて搬送されている前記ゲーブルトップ容器の前記圧着面の温度を、前記圧着面が延在する方向に沿う複数の点について同時に測定可能に構成されており、
前記撮像装置は、前記搬送装置によって前記加熱装置から前記圧着装置に向けて搬送されている前記ゲーブルトップ容器の前記圧着面を撮影可能に構成されており、
前記判定プログラムは、前記温度測定装置によって測定した前記圧着面上の前記複数の点の温度
、および、前記撮像装置によって撮影された前記圧着面の画像、に基づいて前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定可能に構成されている密封システム。
【請求項2】
前記撮像装置は、前記圧着装置によって圧着される前の前記ゲーブルトップ容器の前記頂部に開口している矩形開口の、少なくとも一つの角部分を撮像可能に構成されている請求項
1に記載の密封システム。
【請求項3】
前記角部分は前記圧着面の角部分である、請求項2に記載の密封システム。
【請求項4】
前記角部分は前記圧着面の前記搬送装置の進行方向の前方側に位置する角部分である、請求項3に記載の密封システム。
【請求項5】
前記判定プログラムは、前記温度測定装置による温度測定の対象となる前記圧着面の複数の点の総数のうち所定の基準温度以上である点の数が占める割合である占有率に基づいて前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定可能に構成されている請求項1
~4のいずれか一項に記載の密封システム。
【請求項6】
前記コンピュータは、少なくとも前記搬送装置を制御可能な制御プログラムをさらに実行可能であり、
前記制御プログラムは、前記ゲーブルトップ容器の密封がなされていないと判定したときに、少なくとも前記搬送装置の駆動を停止させる制御を実行するように構成されている請求項1~
5のいずれか一項に記載の密封システム。
【請求項7】
ゲーブルトップ容器を密封する密封方法であって、
前記ゲーブルトップ容器に内容物を充填する充填工程と、
前記充填工程の後において、前記ゲーブルトップ容器の頂部に設けられた圧着面を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後において、前記圧着面を圧着する圧着工程と、
を備え、
前記加熱工程の後かつ前記圧着工程の前において、前記圧着面の温度を測定する温度測定工程と、
前記加熱工程の後かつ前記圧着工程の前において、前記圧着面を撮影する撮影工程と、
前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定する判定工程と、をさらに備え、
前記温度測定工程において、前記圧着面の温度を、前記圧着面が延在する方向に沿う複数の点について同時に測定し、
前記判定工程において、前記温度測定工程において測定した前記圧着面上の前記複数の点の温度
、および、前記撮影工程において撮影された前記圧着面の画像、に基づいて前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定する密封方法。
【請求項8】
ゲーブルトップ容器に内容物を充填する充填工程と、
前記充填工程の後において前記ゲーブルトップ容器の頂部に設けられた圧着面を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後において前記圧着面を圧着する圧着工程と、を
、経てなされる前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定可能な判定プログラムであって、
前記加熱工程の後かつ前記圧着工程の前における、前記圧着面の、前記圧着面が延在する方向に沿う複数の点における温度
、および、前記圧着面の画像、が入力されると、
入力された前記複数の点の温度
、および、前記圧着面の画像、に基づいて前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定し、当該判定の結果を出力する判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定可能に構成されている密封システム、密封方法、および判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲーブルトップ容器は、飲料などの液体製品を収容する容器として汎用されている。ゲーブルトップ容器に液体製品を充填した製品を製造する際には、シート状のカートンブランクを立体的に組み立てて形成される、頂部が開口した状態のゲーブルトップ容器に対して液体製品を充填し、その後、頂部を密封する、という手順が汎用される。この手順に鑑み、ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定する方法が従来提案されている。
【0003】
たとえば、特開2007-71568号公報(特許文献1)には、ゲーブルトップ製品のトップ部分を撮像するカメラを備え、該カメラで撮像した画像の解析においてトップ部分の幅が規定値を満たすか否かによって密封の成否を判定するシール不良検査装置が開示されている。また、特開平10-9994号公報(特許文献2)には、密封された容器に負圧を掛け、当該負圧に起因する容器の変形の有無を検出し、当該変形の有無に基づいて密封の成否を判定する容器シール不良検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-71568号公報
【文献】特開平10-9994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および2に開示された技術は、いずれも、一連の密封工程が完了した後の容器に対して事後的に検査を行う技術であった。そのため特許文献1および2に開示された技術を適用してゲーブルトップ容器の密封の成否を判定する場合、密封不良が検出された時点においてすでに相当数の不良品が発生している場合があった。また、事後的な検査であることから、一連の密封工程のどの部分が密封不良の原因となっているのかを解析しにくい場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、一連の密封工程の中途における測定に基づいて、ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定可能に構成されている密封システム、密封方法、および判定プログラムの実現が求められる。
【0007】
本発明に係る密封システムは、ゲーブルトップ容器を密封可能な密封システムであって、前記ゲーブルトップ容器に内容物を充填可能な充填装置と、前記ゲーブルトップ容器の頂部に設けられた圧着面を加熱可能な加熱装置と、前記圧着面を圧着可能な圧着装置と、前記充填装置、前記加熱装置、および前記圧着装置の順に前記ゲーブルトップ容器を搬送可能な搬送装置と、温度測定装置と、撮像装置と、前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定可能な判定プログラムを実行可能なコンピュータと、を備え、前記温度測定装置は、前記搬送装置によって前記加熱装置から前記圧着装置に向けて搬送されている前記ゲーブルトップ容器の前記圧着面の温度を、前記圧着面が延在する方向に沿う複数の点について同時に測定可能に構成されており、前記撮像装置は、前記搬送装置によって前記加熱装置から前記圧着装置に向けて搬送されている前記ゲーブルトップ容器の前記圧着面を撮影可能に構成されており、前記判定プログラムは、前記温度測定装置によって測定した前記圧着面上の前記複数の点の温度、および、前記撮像装置によって撮影された前記圧着面の画像、に基づいて前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る密封方法は、ゲーブルトップ容器を密封する密封方法であって、前記ゲーブルトップ容器に内容物を充填する充填工程と、前記充填工程の後において、前記ゲーブルトップ容器の頂部に設けられた圧着面を加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後において、前記圧着面を圧着する圧着工程と、を備え、前記加熱工程の後かつ前記圧着工程の前において、前記圧着面の温度を測定する温度測定工程と、前記加熱工程の後かつ前記圧着工程の前において、前記圧着面を撮影する撮影工程と、前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定する判定工程と、をさらに備え、前記温度測定工程において、前記圧着面の温度を、前記圧着面が延在する方向に沿う複数の点について同時に測定し、前記判定工程において、前記温度測定工程において測定した前記圧着面上の前記複数の点の温度、および、前記撮影工程において撮影された前記圧着面の画像、に基づいて前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る判定プログラムは、ゲーブルトップ容器に内容物を充填する充填工程と、前記充填工程の後において前記ゲーブルトップ容器の頂部に設けられた圧着面を加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後において前記圧着面を圧着する圧着工程と、を、経てなされる前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定可能な判定プログラムであって、前記加熱工程の後かつ前記圧着工程の前における、前記圧着面の、前記圧着面が延在する方向に沿う複数の点における温度、および、前記圧着面の画像、が入力されると、入力された前記複数の点の温度、および、前記圧着面の画像、に基づいて前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定し、当該判定の結果を出力することを特徴とする。
【0010】
これらの構成によれば、一連の密封工程の中途における温度測定に基づいて、ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定できる。特に、密封不良の原因となりやすい圧着面の昇温不良を直接的に検出しうるので、加熱装置などの運転条件を変更して密封不良を回避する運転管理を行いやすい。また、これらの構成によれば、温度測定装置の測定結果に加えて撮像装置の撮像結果を加味して密封の成否を判定できるので、誤判定を生じにくい。
【0011】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0012】
本発明に係る密封システムは、一態様として、前記判定プログラムは、前記温度測定装置による温度測定の対象となる前記圧着面の複数の点の総数のうち所定の基準温度以上である点の数が占める割合である占有率に基づいて前記ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、複数の点に係る温度測定の結果を総合的に加味して密封の成否を判定できるので、誤判定を生じにくい。
【0016】
本発明に係る密封システムは、一態様として、前記撮像装置は、前記圧着装置によって圧着される前の前記ゲーブルトップ容器の前記頂部に開口している矩形開口の、少なくとも一つの角部分を撮像可能に構成されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、死角になりやすい角部分を撮像可能に構成されているので、角部分に密着不良の原因が存在する場合であっても、これを見落としにくい。
【0018】
本発明に係る密封システムは、一態様として、前記コンピュータは、少なくとも前記搬送装置を制御可能な制御プログラムをさらに実行可能であり、前記制御プログラムは、前記ゲーブルトップ容器の密封がなされていないと判定したときに、少なくとも前記搬送装置の駆動を停止させる制御を実行するように構成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、不良品の流出を防止しやすい。
【0020】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る密封システムの概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る密封システムのブロック図である。
【
図3】密封されたゲーブルトップ容器の斜視図である。
【
図5】密封前のゲーブルトップ容器の斜視図である。
【
図6】温度測定装置および撮像装置の撮像範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る密封システム、密封方法、および判定プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る密封システム、密封方法、および判定プログラムを、ゲーブルトップ容器に飲料を充填した後に当該ゲーブルトップ容器の頂部を密閉する密封システム1に適用した例について説明する。
【0023】
〔ゲーブルトップ容器〕
まず、本実施形態に係る密封システム1において密封する対象とするゲーブルトップ容器100について説明する。ゲーブルトップ容器100は、切妻屋根状の頂部101と、有底角筒状の胴部102と、を有する紙製の容器である(
図3)。頂部101は、胴部102の側面107のそれぞれに連接されている第一頂部面104および第二頂部面105を含む。二つの第一頂部面104の先端同士は、圧着されて圧着面103を形成している。一方、第二頂部面105のそれぞれは、二つの第一頂部面104の内側に形成される空間に向けて折り畳まれている。なお、二つの第一頂部面104の一方には、プラスチック製の注出口106が取り付けられている。また、底面108は、平面状に接着されている。
【0024】
ゲーブルトップ容器100は、カートンブランク100a(
図4)を組み立てることによって形成する。カートンブランク100aにおいて、四面の側面107が連接され、その延長方向にサイドフラップ109がさらに連接されている。側面107から一方側には、底面108を形成するフラップが延出しており、側面107から他方側には、第一頂部面104を形成するフラップと第二頂部面105を形成するフラップとが交互に延出している。ここで、第一頂部面104を形成するフラップのうちの一つには、注出口106を取り付けるための取付孔104aが設けられており、第二頂部面105を形成する各フラップには、第一頂部面104の内側に形成される空間に向けて第二頂部面105を折り畳むための折曲線105aが設けられている。また、第一頂部面104を形成するフラップから延出する圧着面103aは、第二頂部面105から延出する圧着面103bよりその延出する長さが長い。なお、以上に説明した各部の間には、折曲線が形成されている。
【0025】
カートンブランク100aを組み立ててゲーブルトップ容器100を形成するときは、まず、
図4紙面の縦方向に延びる各折曲線を折り曲げて角筒状に形成し、サイドフラップ109を、
図4紙面において左端に位置する側面107と接着する。次に、底面108を形成する四つのフラップを折り曲げて接着し、底面108を形成する。続いて、取付孔104aに注出口106を取り付ける。以下では、以上の手順まで組み立てを進めた段階のゲーブルトップ容器を、区別のため、ゲーブルトップ容器半製品100bと称する。
図5に示すように、ゲーブルトップ容器半製品100bは、頂部101が矩形に開口した有底角筒状体である。ゲーブルトップ容器半製品100bに上記の矩形開口から内容物を充填した後に、頂部101を切妻屋根状に形成すれば、ゲーブルトップ容器100の密封が完成する。
【0026】
ゲーブルトップ容器100の各面(カートンブランク100a)は、紙製の基材に対して樹脂層が積層された構造を有する。ゲーブルトップ容器100の外側には商品名などが印刷され、その上からポリエチレン製のラミネート層が形成されている。また、ゲーブルトップ容器100の内側は内容物(液体)と接触するため、バリア層(シリカ)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなどが多層に形成された耐水処理が施されている。このうち、内容物に直接接触する層はポリエチレン製の層であり、この層はポリエチレンの融点である110℃以上に加熱することによって軟化する。本実施形態に係る密封システム1では、内容物を充填したゲーブルトップ容器半製品100bの頂部を加熱して圧着面103a、103bのポリエチレン製の層を軟化させた後に、圧着面103a、103bを圧着することによってポリエチレン製の層同士を融着させて、ゲーブルトップ容器100の密封を完成する。
【0027】
〔密封システムの構成〕
本実施形態に係る密封システム1は、上記に説明したような、ゲーブルトップ容器100の組立、内容物充填、および密封を実施可能なシステムである。密封システム1は、二つの搬送ホイール(第一搬送ホイール11、第二搬送ホイール12)に沿って、ゲーブルトップ容器100の組立、内容物充填、および密封を実施する各種装置が工程順に設けられた構造を有する(
図1)。第一搬送ホイール11には、カートンブランク100aを折り曲げて、サイドフラップ109を側面107と接着し、次いで底面108を接着するまでの工程に係るカートン組立装置13が割り当てられている。第二搬送ホイール12(搬送装置の例)には、それ以降の工程に係る装置が割り当てられており、キャップ取付装置14、一次くせ折り装置15、充填装置2、加熱装置3、検査装置5、二次くせ折り装置16、および圧着装置4が、第二搬送ホイール12の回転方向に沿ってこの順で設けられている。
【0028】
また、以上の各装置はコンピュータ6と電気的に接続されている(
図2)。コンピュータ6は、検査装置5による検査結果に係る電気信号およびその他の各装置の運転状態に係る電気信号の入力を受付可能であるともに、上記の各装置の運転を制御する制御信号を発信可能に構成されている。
【0029】
第一搬送ホイール11は、周方向の一点(
図1では第一搬送ホイール11の三時方向)に設けられたブランク受容点11aにおいてカートンブランク100aを受容し、受容したカートンブランク100aを回転搬送する(
図1では反時計回り)。第一搬送ホイール11に沿って設けられたカートン組立装置13は、カートンブランク100aに対して、折り曲げ、側面接着、底面接着の加工を順次行う。その後、第一搬送ホイール11は、周方向の一点(
図1では第一搬送ホイール11の六時方向)に設けられた受け渡し点11bにおいて、底面接着までの工程を終えたカートンブランク(
図5のゲーブルトップ容器半製品100bに注出口106が取り付けられていない状態)を第二搬送ホイール12に受け渡す。第二搬送ホイール12は、受け渡し点11bにおいてカートンブランクを受容し、受容したカートンブランクを回転搬送する(
図1では反時計回り)。第二搬送ホイール12に沿って設けられたキャップ取付装置14は、カートンブランクの取付孔104aに注出口106を取り付けた後にこれを接着し、ゲーブルトップ容器半製品100bを形成する。
【0030】
一次くせ折り装置15は、ゲーブルトップ容器半製品100bの折曲線105aを折り曲げて第二頂部面105に折り癖をつける装置であり、第二搬送ホイール12の回転方向に沿って充填装置2の直前に設けられている。なお、二次くせ折り装置16は圧着装置4の直前に設けられており、その機能は一次くせ折り装置15と同様である。
【0031】
充填装置2は、ゲーブルトップ容器半製品100bに内容物を充填可能に構成された装置である。充填装置2としては、公知の充填装置を使用できる。充填対象とする内容物は、流動性を有する限り特に限定されず、たとえば、清涼飲料水(ミネラルウォーター、コーヒー、ココア、茶、果汁など)、アルコール飲料、乳飲料などの飲料、スープや生クリームなどの液体状食品、ソースや醤油などの液体調味料、などでありうる。
【0032】
加熱装置3は、内容物が充填されたゲーブルトップ容器半製品100bの、少なくとも圧着面103a、103bを加熱可能に構成された装置である。本実施形態における加熱装置3は、ゲーブルトップ容器半製品100bの頂部101に対して上方から熱風を吹き付ける装置であり、熱風を生じさせるための熱源である電気ヒーターの温度は300~400℃に設定されている。なお、かかる装置は公知の物を使用できる。ゲーブルトップ容器半製品100bの頂部101は、加熱装置3による加熱を受けて、およそ200℃に加熱される。
【0033】
圧着装置4は、内容物が充填され、圧着面103a、103bを加熱されたゲーブルトップ容器半製品100bの、圧着面103a、103bを圧着可能に構成された装置である。具体的には、二次くせ折り装置16において折り癖を付けられたゲーブルトップ容器半製品100bを受容し、二つの圧着面103aの間に二つの圧着面103bを挟み込んだ状態で、二つの圧着面103aの外側から挟み込んで圧縮力を付す。このとき、圧着面103a、103bが加熱装置3によってあらかじめ加熱されているため、圧着面103a、103bの内側(内容物に接する側)の面は、ポリエチレン製の層が軟化した状態になっている。そして、対向する面の軟化したポリエチレン層同士を突き合わせた状態で圧縮力を付すため、対向する面同士のポリエチレンが互いに融着して、圧着がなされる。これによって、ゲーブルトップ容器100の密封が完成する。
【0034】
圧着装置4において密封が完成されたゲーブルトップ容器100は、第二搬送ホイール12の周方向の一点(
図1では第二搬送ホイール12の三時方向)に設けられた製品排出点12aから下流工程に排出される。そして、下流工程における製品検査、梱包などを経て出荷される。
【0035】
検査装置5は、第二搬送ホイール12の回転方向に沿って、加熱装置3と二次くせ折り装置16との間(加熱装置3と圧着装置4との間でもある。)に設けられている。検査装置5は、温度測定装置51と撮像装置52とを含む。
図6に示すように、温度測定装置51および撮像装置52は、いずれも第二搬送ホイール12の半径方向外側に設けられている。
【0036】
本実施形態では、温度測定装置51がデジタルサーモカメラとして実装されており、画像データと、当該画像データの画素ごとの地点における温度の値と、の組を含むデータセットを出力可能である。温度測定装置51は、その撮像範囲51aに、第二搬送ホイール12によって搬送されるゲーブルトップ容器半製品100bが含まれるように配置されている。特に、ゲーブルトップ容器半製品100bの二つの第一頂部面104のうちの一方(第二搬送ホイール12の半径方向内側の一方)に連接された圧着面103aのほぼ全体が、撮像範囲51a含まれている。
【0037】
図7を用いて、温度測定装置51が取得するデータセットを詳細に説明する。
図7では、ゲーブルトップ容器半製品100bの圧着面103a上の六つの点について点ごとの温度の値を示している。このように、温度測定装置51は、ゲーブルトップ容器半製品100bの圧着面103aの温度を、圧着面103aが延在する方向(
図7では左右方向)に沿う複数の点について同時に測定可能である。ただし、
図7中に温度の値を示した六つの点は単なる代表であり、温度測定装置51が出力するデータセットは、実際には、圧着面103aのほぼ全体の画像データと、当該画像データの画素ごとの地点における温度の値との組を含む。
【0038】
なお、撮像範囲51aに到達したゲーブルトップ容器半製品100bは、一次くせ折り装置15によって折り癖が付けられたものであるため、ゲーブルトップ容器半製品100bの矩形開口の内側に向けて第二頂部面105(および圧着面103b)が迫り出した状態になっている。そのため、温度測定装置51は、圧着面103aの両端部分(特に、紙面右奥側の角部分103c)が第二頂部面105(圧着面103b)の陰になり、当該部分の温度を測定できない場合がある。
【0039】
本実施形態では、撮像装置52は静止画および動画を撮影可能なデジタルカメラとして実装されており、撮像範囲52aの画像データを出力可能である。撮像装置52は、その撮像範囲52aに、第二搬送ホイール12によって搬送されるゲーブルトップ容器半製品100bが含まれるように配置されている。特に、ゲーブルトップ容器半製品100bの二つの第一頂部面104のうちの一方(第二搬送ホイール12の半径方向内側の一方)に連接された圧着面103aの、第二搬送ホイール12の回転方向に沿う前方側(すなわち、ゲーブルトップ容器半製品100bの進行方向の前方側である。)に位置する角部分103cが、撮像範囲52aに含まれている(
図8)。
【0040】
〔密封の成否を判定する方法〕
次に、本実施形態に係る密封システム1において、ゲーブルトップ容器100の密封の成否を判定する方法について説明する。
【0041】
判定方法を説明する前提として、ゲーブルトップ容器100の密封不良が生じる代表的な機構について説明する。前述の通り、ゲーブルトップ容器100の密封は、容器の内側の面に露出しているポリエチレン層を加熱して軟化させたのちに、対向する面の軟化したポリエチレン層同士を突き合わせて突き合わせた状態で圧縮力を付すことによって、対向する面同士のポリエチレンが互いに融着して、圧着による密封が完成されるものである。この原理上、典型的な密封不良は、ポリエチレン層の昇温不足により発生する。すなわち、ポリエチレン層が十分に軟化する温度に到達していない状態で圧着を行った場合に、対向するポリエチレン同士が十分に融着するに至らず、密封が完成しないのである。
【0042】
かかる昇温不足を引き起こす典型的な態様として、圧着面103a、103bに対する内容物の付着が挙げられる。圧着面103a、103bの一部に内容物が付着することで付着した部分の熱容量が局所的に高くなり当該部分の昇温が妨げられること、および、内容物に含まれる水などの気化熱により当該部分の温度が低下すること、が昇温不足の原因となるためである。また、そのような付着がなくとも、たとえば加熱装置3の電気ヒーターが故障するなどの原因によって加熱が不十分である場合は、昇温不足になる。
【0043】
以上に説明した密封不良の代表的な機構に鑑みて、圧着面103a、103bの温度が十分に上昇していることを確認できれば、密封が完成する蓋然性が高いと言える。これは、直接的には圧着面103a、103bの温度の測定によって、間接的には圧着面103a、103bに対する内容物の付着の有無によって、判定できる。本実施形態に係る密封システム1では、温度測定装置51から出力されるデータセットが、圧着面103aのほぼ全体の各地点における温度の値を含み、前者の直接的な判定材料となる。また、撮像装置52から出力される画像データが、後者の間接的な判定材料となる。
【0044】
本実施形態に係る密封システム1では、コンピュータ6において実行される判定プログラムが、温度測定装置51から出力されるデータセット、および、撮像装置52から出力される画像データ、に基づいて、ゲーブルトップ容器100の密封の成否を判定可能に構成されている。判定プログラムのフローチャートを
図9に示す。
【0045】
温度測定装置51から出力されるデータセットに基づく判定を行う第一段階(S10)では、まず、データセットから、圧着面103aに対応する領域内の各画素における温度の値を抽出する。次に、抽出した各画素における温度の値について、所定の管理範囲である120±10℃の範囲内にあるか否かを判定する。続いて、圧着面103aに対応する領域内の画素の総数に対する、温度の値が所定の管理範囲内にある画素の数が占める割合(百分率)である占有率を算出する。最後に、占有率が所定の閾値である90%以上であるか否かを判定する。ここで、占有率が90%未満の場合(S10:いいえ)は、密封不良と判定する。一方、占有率が90%以上の場合(S10:はい)は、第二段階(S20)に進む。
【0046】
撮像装置52から出力される画像データに基づく判定を行う第二段階(S20)では、まず、画像データから、圧着面103aに対応する領域内の各画素の色情報を抽出する。なお、色情報は任意の色空間(RGB、CMYKなど)に基づくものであってよい。次に、抽出した各画素の内に、周囲の画素の平均的な色情報から逸脱する色情報を有する画素があるか否かを判定する。たとえば内面が白色のゲーブルトップ容器100に赤ワイン(内容物の例)を充填する場合、画像データにおいて、赤ワインが付着していない箇所は白色で表され、赤ワインが付着した箇所は赤紫色等で表されるので、両者の色情報は明確に異なる。したがって、周囲の画素の平均的な色情報から逸脱する色情報を有する画素がある場合は、付着物が存在すると判断でき、密着不良と判定する(S20:いいえ)。反対に、そのような画素が存在しない場合は、付着物が存在しないと判断でき、密着正常と判定する(S20:はい)。なお、付着物の存在を表す画素が存在するか否かは、画像データに対して、二値化、特徴抽出、パターンマッチなどの公知の画像解析手法を適用することによって判定できる。
【0047】
前述のように、温度測定装置51は、ゲーブルトップ容器半製品100bの角部分103cの温度を測定できない場合がある。そのため、角部分103cに内容物が付着して当該部分の昇温が不十分であっても、第一段階(S10)において占有率が90%以上と判断される可能性がある。しかし、本実施形態では第一段階(S10)に加えて第二段階(S20)を設けてあり、第二段階(S20)では角部分103cが撮像範囲に含まれる画像データに基づく判定を行うので、密着不良品を密着正常と判定する誤判定を防ぎうる。
【0048】
本実施形態に係るコンピュータ6では、上記の判定プログラムに加えて、判定プログラムによる密着の成否の判定結果に基づいて密封システム1を構成する各装置を制御する制御プログラムも実行される。たとえば、判定プログラムが密封不良と判定した場合、制御プログラムは、不良品の流出を防ぐため、第一搬送ホイール11、第二搬送ホイール12、カートン組立装置13、キャップ取付装置14、充填装置2、および圧着装置4の駆動を停止させる制御を実行する。なお、加熱装置3については、熱源の温度を維持したまま駆動部分のみを停止した待機状態に入らせる制御を行う。そのほか、たとえば、温度測定装置51から出力されるデータセットに基づいて加熱装置3の熱源温度および風量を調節するなどの制御を実行してもよい。
【0049】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る密封システム、密封方法、判定プログラムのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0050】
上記の実施形態では、温度測定装置51と撮像装置52とを含む検査装置5が設けられた密封システム1を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係る密封システムは、少なくとも温度測定装置を備えていればよい。ただし、上記の例のように温度測定装置と撮像装置とを併用する構成は、温度測定装置のみを用いた場合に生じうる誤判定を防ぎうる点で好ましい。
【0051】
上記の実施形態では、温度測定装置51がデジタルサーモカメラとして実装されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係る密封システムにおける温度測定装置は、搬送装置によって加熱装置から圧着装置に向けて搬送されているゲーブルトップ容器の圧着面の温度を、圧着面が延在する方向に沿う複数の点について同時に測定可能であればよい。したがって、たとえば、複数の非接触型温度計を、圧着面が延在する方向に沿う複数の点が各々の測定点となるように配置した構成、などを採用しうる。
【0052】
上記の実施形態では、撮像装置52の撮像範囲52aに、角部分103cが含まれている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る密封システムにおいて撮像装置を設ける場合、当該撮像装置は、搬送装置によって加熱装置から圧着装置に向けて搬送されているゲーブルトップ容器の圧着面を撮影可能であればよく、必ずしも角部分を撮影可能でなくてもよい。ただし、上記の例のように、角部分が温度測定装置の測定範囲の死角になる場合、当該角部分を撮像範囲に含めるように撮像装置を設けると、誤判定を防ぎやすい。また反対に、温度測定装置の測定範囲に角部分が含まれるように温度測定装置を設け、撮像装置の撮像範囲が圧着面の角部分以外の部分を主として含むように撮像装置を設けてもよい。
【0053】
なお、ゲーブルトップ容器の頂部に開口している矩形開口は複数の角部分を有するが、このうち、搬送装置によって搬送されるゲーブルトップ容器の進行方向前方に位置する角部分に内容物が付着しやすい傾向が認められる。これは、ゲーブルトップ容器が搬送される際にゲーブルトップ容器の内部で内容物が揺れた際に、ゲーブルトップ容器の進行方向前方側に偏在しやすいためである。すなわち、内容物の付着に起因する密封不良は、ゲーブルトップ容器の進行方向前方側で特に発生しやすい。したがって、温度測定装置の測定範囲または撮像装置の撮像範囲に角部分が含まれるようにする場合、特に、ゲーブルトップ容器の進行方向前方側の角部分が当該範囲に含まれるようにすることが好ましい。
【0054】
上記の実施形態では、コンピュータ6において実行される判定プログラムの第一段階(S10)において、占有率を判定基準とする構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、判定プログラムにおける判定基準としては、上記の例における占有率のほか、圧着面が延在する方向に沿う複数の点について検出された多点温度の、最大値、最小値、平均値などのパラメータを用いることができる。なお、上記に列挙したパラメータを組み合わせた判定基準であってもよい。
【0055】
上記の実施形態では、コンピュータ6が、上記の判定プログラムに加えて制御プログラムも実行可能である構成について説明した。しかし、本発明に係る密封システムは、上記のような制御プログラムを実行しない構成でもありうる。すなわち、ゲーブルトップ容器の密封状態の判定を行うのみの構成、またはシステムの停止伴わずに当該判定に係る報知のみを行う構成、などを採用しうる。
【0056】
上記の実施形態では、注出口106が取り付けられたゲーブルトップ容器100を対象とする密封システム1を例として説明した。しかし、本発明に係る密封システム、密封方法、および判定プログラムは、抽出口の有無などの細部の構造に関わらず、ゲーブルトップ容器一般に適用できる。
【0057】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、たとえば、ゲーブルトップ容器に飲料を充填して飲料製品を製造するラインにおいて、ゲーブルトップ容器の密封の成否を判定可能な密封システム、密封方法、および判定プログラムに利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 :密封システム
11 :第一搬送ホイール
11a :ブランク受容点
11b :受け渡し点
12 :第二搬送ホイール
12a :製品排出点
13 :カートン組立装置
14 :キャップ取付装置
15 :一次くせ折り装置
16 :二次くせ折り装置
2 :充填装置
3 :加熱装置
4 :圧着装置
5 :検査装置
51 :温度測定装置
51a :温度測定装置の撮像範囲
52 :撮像装置
52a :撮像装置撮像範囲
6 :コンピュータ
100 :ゲーブルトップ容器
100a :カートンブランク
100b :ゲーブルトップ容器半製品
101 :頂部
102 :胴部
103 :圧着面
103a :圧着面
103b :圧着面
103c :角部分
104 :第一頂部面
104a :取付孔
105 :第二頂部面
105a :折曲線
106 :注出口
107 :側面
108 :底面
109 :サイドフラップ